• 界冥

【界冥】函館・木古内防衛

マスター:猫又ものと

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/04/12 15:00
完成日
2017/04/20 18:50

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

『交信開始。照合要請。ハロー、エンドレス。私はエンドレスです』
『交信開始。照合確認。ハロー、エンドレス。私はエンドレスです』
『区分ヴィクター緊急報告。ポイント32リマ、アンノン1』
『区分デルタ緊急報告。ポイント16マイク、アンノン1』
『報告データ受理。敵性存在のケベック、シエラと判定』
『高度情報対処マニュアルに基づき、対処要請』
『承認。戦略プランエコーからオスカーへの変更を要請』
『計画変更を審議。承認。ヴァルキリーはオスカーフェイド3を実行。ヴァルハラはフェイド2に移行』
『了解。これよりフェイド3に移行』
『幸運を、エンドレス』
『ありがとう、エンドレス。交信終了』
『交信終了』


 江差から上陸したメタ・シャングリラ。
 函館クラスタ攻略に向けて、統一連合宙軍はついに重い腰を上げた。
 松前要塞攻略を少数の精鋭とハンターによって成し遂げた事は、日本政府と統一連合宙軍に希望の灯をつけた。

 ――勝てる。
 それが統一連合宙軍を動かした動機だ。
 メタ・シャングリラの元へ集う各部隊の有志達。
 対函館クラスタに向けて、作戦は大きく前進する。

「今のところ変化はなし、か」
「何だかこの静けさが逆に不気味ね……」
「このまま何事もなく行けるといいんですが……」
「そうだな」
 不安そうな面持ちの若い自衛官を落ち着かせるよう、努めて穏やかに話すハンター達。
 松前要塞を陥落させたメタ・シャングリラは、ルートを二つに分割し進軍している。
 いわば上と下から函館クラスタを挟み込む算段だ。
 一つは海岸線に沿って函館湾を目指す海上ルート。
 そして、もう一つが江差から東へ向かい、函館クラスタの北を襲撃する陸上ルート。
 日本政府からの協力隊である自衛隊の海軍戦力とハンター達は、海岸線を通って函館湾を目指していた。
 あともう少しで木古内に到着する……と言ったところで、上空に黒い影が飛来しているのに気が付いた。
「何だアレ。カラス……にしちゃ量が多いな」
『1号機より緊急報告! 海上上空よりVOIDが高速で接近中! すごい数です!』
「狂気眷属か……!」
「やっぱりタダでは通してくれないってことかしらね」
「森山大尉の部隊も既に行動を開始している。ここで時間を割く訳にはいかんが、交戦もやむなしか……」
「そうだな。幸い歪虚は小型ばかりのようだ。CAMで掃射すれば……」
 自衛隊の指揮官の言葉に頷くハンター。その言葉は、鋭い警報音でかき消される。
『緊急報告! 海上より高エネルギー反応!』
『退避ーーー! 退避ーーーーー!!』
 次の瞬間。目に飛び込んできたのは空を走る一本の光。
 それは、空を浮遊していたVOIDを巻き込んで……海岸線の海軍戦力を貫いた。
「な……!?」
『2号機損傷! 1号機より反応ありません!』
 聞こえる爆発音。静かだった海岸戦が一気に地獄の様相と化す。
 立ち上る黒煙と炎。その向こうの海上に……ハンター達は信じられないものを見た。
「あれは……ヴァルハラ!?」
「何で……!? あれはクリムゾンウェストにいたんじゃないの!?」
「あの機体を知っているのか?」
「ああ。俺達の世界で暴れまわってたヤツだ。何だってこんなとこに……」
 海上に浮かぶ強襲揚陸艇。聞こえて来る、甲高い合成音声。

『ハロー、シチズン。私はエンドレスです。現在、フェイド2実行中。函館湾及びその周辺への侵入は禁止されています』
『ハロー、シチズン。直ちに武器を放棄し、投降してください。ハロー、シチズン。直ちに武器を放棄し、投降しなさい』

「あの野郎、ふざけやがって……!」
「さて、指揮官さん。どうする? ヴァルハラは厄介よ。進むにしても修羅の道になるわ」
「……ここにきて作戦を中止する訳にはいかん。強行突破し、別働部隊と合流する。1号隊、2号隊は被害状況の確認、人員救助! 3号隊とハンター諸君、戦闘配備につけ! 急げ!」
「よし来た。さて、紅の世界の分の恨みもぶつけさせて貰うとしますか……!!」
 緊張が走る部隊。
 ハンター達も武器を構え、飛来する狂気の歪虚を睨みつける。

リプレイ本文

『ハロー、シチズン。直ちに武器を放棄し、投降してください。ハロー、シチズン。直ちに武器を放棄し、投降しなさい』
「あれが噂のエンドレスか。一方勧告で舐めた真似してくれんね」
「帰っていたのか……。時空を行き来できるのは此方だけではないのだね。どのタイプの歪虚でも出来る事なのだろうか……」
 ヒュー! と口笛を鳴らすリコ・ブジャルド(ka6450)。
 聞こえるエンドレスの警告。遠目に見える禍々しい姿に、ルシオ・セレステ(ka0673)の淡い青の瞳が揺れる。
 ――エンドレス。今は亡き師のような友人が追っていた存在。
 その名を聞いていてもたってもいられなくなり、気づけばここに立っていた。
 シバ。あなたが旅した距離よりずっと遠くへ来てしまったよ。
 貴方の仇を討つなんて烏滸がましい。けれど、何か出来ることはないかと思って――。
 不意に頬に触れる冷たい何か。金色の毛並みのイェジドが気遣うように鼻先をつけているのに気づいて、ルシオは微笑む。
「心配してくれているのかい? ありがとう。……レオーネも申し訳ないね。縁を繋いで早々に付き合わせて」
 ぱたぱたと尻尾を振るレオーネ。
 この子も、力を貸してくれているし仲間もいる。出来る限りのことをやらなければ……。
 こうしている間も聞こえるエンドレスの甲高い声。空に浮かぶ黒い円盤と狂気の歪虚達を見上げて、米本 剛(ka0320)はふむ、と考え込む。
「なかなかの数がいますね。自分のユニットにはうってつけの状況ではあるのでしょうが……果たしてどうなるやら」
「ヴァルハラ級に、狂気の群れ……一筋縄では行かなそうな事態ですけれど。絶対無事に切り抜けましょう」
「おうよ! 任せろ!!」
「ええ、女は度胸と愛嬌! ユニットはノリと勢いよ!」
 天央 観智(ka0896)の声に拳を突き上げたエヴァンス・カルヴィ(ka0639)。続いたアルスレーテ・フュラー(ka6148)を振り返る。
「おいおい。何だ? ユニットに乗るのとノリをかけたのか? 大喜利かよ」
「あら。そんなつもりはなかったけど。アイドルにはお笑いも必要かしらね?」
「そもそもアイドルって何ですかね……」
「ええ。折角リアルブルーに来たしアイドルデビュー目指してみようかなって」
 剛のツッコミに満面の笑顔のアルスレーテ。リコはぷっと噴き出す。
「アハハ! 開始前から漫才たあ景気がいいじゃん。その調子でヨロシク頼むぜ! じゃ、観智。手筈通りにGO!」
「了解しました。行きますよ……!」
 R7エクスシアから聞こえる機動音。観智はスキルトレースを使うと、仲間達に次々と水の精霊力をに纏わせる――。


『こちら3号隊! 後方に巨大揚陸艇一基! 前方VOID多数! 黒い円盤も多数確認!』
「こちらリコ。状況確認。3号隊はそのまま現在地点で待機。デュミナス3機は左右への弾幕張りを頼む。くれぐれもエンドレスには攻撃すんなよ!」
『こちらデュナミス機。総員状況、作戦共に了解。諸君に合わせて出撃する』
「こちらエヴァンス。いいか、お前達良く聞け。……後ろの揚陸艇だが、あれは確かに巨大で強いが無敵じゃあない。“勝てる”相手だ。忘れるなよ。落ち着いて行け」
『……忠告痛み入る。ハンター諸君の武運を祈ります』
「おう、サンキュ! あんた達も気をつけな!」
「命あっての物種だ! くれぐれも死ぬんじゃねえぞ!」
 トランシーバーから聞こえて来る自衛隊海軍の声に応えるリコとエヴァンス。
 自衛隊海軍とハンター達。寄せ集めの戦力だが、お互いが出来ることをする……こういう雰囲気は嫌いじゃない。
 不意打ちを食らった1号隊、2号隊も無事でいてくれたらいいが……そっちは、ルシオが向かってくれているはずだ。
「さーて! 魔法少女まじかる☆あるすんの初舞台、行ってみましょうか!」
 操縦桿を握り、マテリアルライフルを構えるアルスレーテ。
 ちなみに、『魔法少女まじかる☆あるすん』とは彼女の愛機であるR7エクスシアである。
 確かにリボンのような装甲もついているし、ポップな可愛らしい色合いの機体は魔法少女にも見えなくはない。
 ……まあ、リアルブルーでお仕事する時は、妹4人と一緒に5人組美少女アイドルユニットとして活動したかったのだけど……っていうか、何だろう。あのふよふよと飛んで来る歪虚は。
 虫とクラゲを足しっぱなしにしたような醜悪な形に、ぎょろぎょろとした大きな目がついていて……ハッキリ言って全然可愛くない!!
「ちょっとー! 初舞台の相手がこれーー!!? ぶっちゃけキモイんだけど!!」
 ハッ!? これだけ見た目がアレなら、アイドルデビューの引き立て役として丁度いいかもしれない! うん! そういうことにしておこう!
 瞬時で思考を切り替えた彼女。ライフルを構え、空中の歪虚に向かってぶっ放す。
「やれやれ。女性は逞しいですね……。自分達も負けていられません。……さぁ。行きますよ、『不動』。貴方の真価を見せて下さい!」
 金と黒で彩られた堅牢な武者鎧から聞こえる唸るような駆動音。
 不動と呼ばれたR7エクスシアが吼えているように感じて、剛の口の端が微かに上がる。
 海の上を滑るように歩く鎧武者。観智のウォーターウォークのお陰で難無く進むことが出来る。
 が、これも現状、海が静かだからだ。
 エンドレスが海に向かってリニアカノンを発射しようものなら、きっとこうはいかなくなる。
 それだけは防がないと――。
 剛は四連装カノン砲を構えると、エンドレスが放出する黒い円盤……ドローンを集中的に狙って掃射する。
 そしてR7エクスシアに搭乗した観智もまた、手にしているロングレンジマテリアルライフルの性能を活かして、剛の届かない場所のドローンを集中的に撃ち落としていた。
「海もですが……3号隊や他の海軍を狙われると厄介ですからね……」
 ヴァルハラのリニアカノンは威力こそ高いが、命中精度はかなり低い。それを補う為にドローンを放って、弾着計算を行っている。
 要は、ドローンさえ撃ち落とせばリニアカノンはお飾り状態に出来るはずである。
 ――あくまでも計算上では、であるが。
「狂気歪虚も放置は出来ないですし、この人数でどこまで出来るか分かりませんがね……」
 独りごちる観智。
 仲間達にかけたウォーターウォークは持って10分。
 それまでに勝負がつけば良いが……かけ直すことも考慮に入れて動かなくては。
 彼は周囲を見て、注意深く仲間達との距離を測る。
 その横で、エヴァンスはR7エクスシアの操縦桿を握って一人笑っていた。
「ハハ! まさかここまで俺の身体に馴染むとはな……!」
 大型ユニットに搭乗しての実戦は初めての筈だが、自分の手足と遜色ない。
 慣れない蒼世界、敵は多数、味方への被害は出せない……。
 ギリギリの条件に血が滾って笑いが漏れる。
「俺達の初陣を飾るにはふさわしい最高の舞台じゃねぇか! おい、リコ。前に出る! 支援頼む!」
「あいよ! 精々敵を引き付けてくれよ!」
「おう! モテるとこ見せてやるぜ!」
「ハハハ! 頼むぜ色男!!」
 リコにぐっとR7エクスシアの親指を立てて答えるエヴァンス。
 槍を構えて海上を走り出す。
「デュナミス隊、弾幕始め! トラバントII、行くぜぇ!!」
 リコの声に合わせて動き出す海軍のデュナミス。
 彼女の漆黒のR7エクスシアから放たれる光弾が空を切り裂く――!


「……これは……」
 イェジドと共に救援に駆け付けたルシオ。
 3号隊の艦隊を通り抜けて彼女が見たものは――ダメージを受けて黒煙を上げる2号隊護衛艦。
 そしてエンドレスのリニアカノンに貫かれ、ほぼ両断された状態で轟々と燃える1号隊護衛艦。そこから聞こえる悲鳴とうめき声……まさに灼熱地獄だった。
「2号隊も損傷はしていますが、軽微です。ですが1号隊は……」
「……生存者がいるはずだ。1人でも多く救い出そう。相手は広く傷つけた後で確実に殺しにくる。救出、鎮火は早い方がいい」
「了解です。2号隊、このまま1号隊の鎮火に当たります」
「ああ、そうだ。あのドローンは見えるかい?」
「ええ。小さい黒い円盤がそうですよね」
「そうだよ。あれにはジャミング機能がついていてね。通信を妨害されるかもしれない。光や手旗信号で通信を試みた方がいいかもしれない」
 仲間達の手によって撃ち落とされ、こちらまで届くドローンはごく少数だ。けれど、気を付けるに越したことはない。
 ルシオの言葉に頷き、走って行く自衛隊員達。
 もう、1号隊は壊滅に近い。これ以上の被害は防がなくては……。
「動ける者は早急に陸地に避難を! レオーネ! 要救助者を探して!」
 飛んで来た艦隊の破片。足を挟まれ動けなくなっていた隊員を助け起こすルシオ。
 金色のイェジドは、主の言葉に従い果敢に黒い煙の中へ突っ込んで行く。
 しばしの間。煤で真っ黒になった隊員を引きずるようにして戻って来た。
「よし、いい子だ……! 君、大丈夫かい?」
「自分は大丈夫です……。それよりまだ、中に仲間が……!」
「……何人いるか分かるかい?」
「少なくとも15名は……」
 火傷と酷い怪我を負った隊員に応急処置を施すルシオ。続いた隊員の言葉に眉根を寄せる。
 少なくとも――ということは、もっと沢山の人達が壊れた艦内に閉じ込められているのだろう。
 このままでは蒸し焼きだ……!
「分かったよ。救助に向かう。君は自分の身体のことだけを考えるんだ」
 隊員を励まし、近くにあった海水を被る彼女。
 これでは熱を防ぎきれないだろうが、何もしないよりはマシだ。
 ルシオは意を決して煙の中に飛び込む。
「……聞こえるか!? 助けに来た! 聞こえたら声をあげてくれ!」
 煙を吸わぬよう身を低くして、叫ぶルシオ。
 あちこちから声が聞こえてきて……彼女はごくりと唾を飲み込む。
 ――落ち着け。順番に一人ずつだ。急げばまだ間に合う――!


 一方、歪虚に対応する仲間達は防戦一方の消耗戦になりつつあった。
「くっ……。リニアカノン来ますよ!」
 ヴァルハラの発射口から出る光に気付いて叫ぶ観智。
 剛がリニアカノン目掛けて射撃を試みるが、狂気の歪虚達が邪魔で上手く行かない。
 しかしドローンの数を減らしていたのが功を奏したか、ヴァルハラの放った光線は、大きく外れて空へ消えていく。
「やはりドローンがなければお飾りなんですね……」
 呟く剛。その前方で閃く琥珀色の光。
 エヴァンスの機体がスキルトレースでマテリアルの炎を纏い、敵を引き付ける。
「節操無しにうじゃうじゃ湧いて出やがって! つーか、離れろこの雑魚共!」
 わらわらと寄って来る狂気の歪虚を槍で一閃するエヴァンス。
 琥珀色の輝きに引き寄せられて、歪虚が次々と彼の機体に取りつく。
 1体1体はさほど強くない。が、とにかく数が多い。しかも近づけば狂気による精神干渉を受ける――。
「甘いんだよ! 俺にはなぁ! イニシャライズフィールドがついてんだこの野郎!!」
 身体に取りついた歪虚を引きはがすように突撃を繰り返す彼。
 剥がしても振り払ってもやってくる歪虚。
 それでも諦めずに、敵を薙ぎ払い続ける。
「……手足とのリンク、共に万全! この程度でやられる俺様じゃねえのよ!」
 操縦桿から手を離さずにニヤリと笑うエヴァンス。操縦桿に伝う赤いもの。
 敵を引き付けるのには成功しているが、度重なるダメージで装甲がミシミシと悲鳴を上げているのを感じる。
 次の瞬間、大きく揺れる機体。その衝撃で、エヴァンスの額から血が流れる。
「おーい。エヴァンスさん生きてるー?」
「当ったり前だ馬鹿野郎! おいアルスラーテ! お前も歪虚引き剥がすの手伝え!」
「分かってるわよー」
 ついー、と海上を滑るアイドルユニット。手にしたドリルで歪虚を殴る、殴る、殴る。
 うーん。魔法少女の定義は何たるやと問いたくなるが、まあこの際横に置いておこう。
「ファイアーボール行きますよ! 皆さん下がって!」
「支援します……!」
 詠唱する観智を守るように前に出る剛。彼の愛機である不動は、通常のそれと比べると動きは遅いが、その分防御に特化してある。
 歪虚が放つレーザーを幾度となく受けるも、その装甲はまだまだ健在。
 隙間を縫って放たれる火球。
 次の瞬間、巻き起こる爆発。巻き込まれた狂気の歪虚が消えて行く。
 そこ爆発の向こう側から更にやって来る歪虚達。
 それを見てリコが舌打ちをする。
「……キリがねえな。そろそろお帰り願わねえとな! おい、観智! アルスレーテ! まだ弾残ってっか?!」
「勿論ですよ」
「あと2発ならいけるー!」
「エヴァンスはもうちょっと持ちそうかー!?」
「俺は死んでも死なねえーーーー!!」
「ボコボコにされながらいう台詞ですかね……」
 リコの呼びかけに敵を攻撃しながら答える仲間達。
 剛のため息交じりの声に、リコは少し笑って……後方のヴァルハラを睨む。
「エヴァンスはそのまま敵を引き付けろ! 観智とアルスレーテはあたしとタイミング合わせて掃射! 剛! 歪虚の軍勢に穴が開いたらヴァルハラ狙え!」
「ふむ。狙いはリニアカノンの発射口ですね?」
「ったりめーだ! 残りの全弾叩き込んでやれ!」
「承知!」
 リコの言葉に強く頷く剛。
 エヴァンスのマテリアルの光に引き寄せられる狂気の歪虚。
 十分に引き付けて……ギリギリを狙って、リコが叫ぶ。
「いっくぜえ! これでXYZだーーーー!!」
「――集え。灼熱の炎。遍く全てを焼き尽くせ!!」
「まじかる☆あるすんのデビューステージ、そろそろ終了よ! 帰りなさい!!」
 響くリコの声。それに重なる観智とアルスレーテの一斉掃射。
 一瞬の間。確かに空いた穴の先に見えるはヴァルハラの――。
「これで、幕引きです……!!」
 打ち込まれる剛のミサイルランチャー。
 それは、吸い込まれるように飛んで行き――後方の大型歪虚への着弾を知らせる轟音が響き渡る。


 途端。動きを止める歪虚達。後方から、ビーッビーッという、通信音のようなものが聞こえる。

『交信開始。照合要請。ハロー、エンドレス。私はエンドレスです』
『交信開始。照合確認。ハロー、エンドレス。私はエンドレスです』
『区分ジュリエット緊急報告。機体損傷。出力低下』
『報告データ受理。戦闘の継続を審議』
『高度情報対処マニュアルに基づき、対処要請』
『戦略プランタンゴからズールーへの変更を要請』
『計画変更を審議。承認。ヴァルハラ、ヴァルキリー1は撤退せよ』
『ありがとう、エンドレス。交信終了』
『交信終了』

 エンドレスの甲高い声。それが途切れると同時に、狂気の歪虚達はふわふわと離れ、ヴァルハラを目指して去っていく。
『……どうやらお帰り戴けたようだね。皆、お疲れ様』
「ルシオさんもお疲れ様! そちらはどう……?」
「2号隊の損傷は軽微だよ。修繕すれば大丈夫そうだ。ただ、1号隊は……』
 ルシオからの通信に応えるアルスレーテ。彼女の報告に、観智は短くため息をつく。
「……そうですか。生存者は?」
『生存者は全員救助した。今手当てをしているところだ』
「おー。良かったぜ!」
「人手足りないでしょう。自分達も手伝います。これから向かいますね」
「よっしゃー! 次は救急対応か! 腕が鳴るぜ!」
「エヴァンスさんは手当される側でしょ!」
 朗報にニヤリと笑うリコに頷く剛。
 ベコベコの装甲のユニットの腕を振り回すエヴァンスに、アルスレーテがツッコんで……。


 仲間達との通信を切ったルシオ。ふう……と安堵のため息をつく。
「ルシオ殿、仲間を助けて戴き、ありがとうございました。最大限の感謝と敬意を」
「いいえ。当たり前のことをしただけですよ」
「ルシオ殿も怪我をされている。手当てを……」
「いえ、これは……私の血ではないから」
 隊員の気遣いに、微かに笑顔を還すルシオ。
 ――そう。自分は友人達の助けもあったからか、火傷をした程度であまり怪我はしていない。この血は、救助した者達のものだ。
 中には助からなかった者もいる。
 両手から零れおちて行った命に唇を噛む。
 遠くから双眼鏡で観察していたが、ヴァルハラの構造のヒントは見つけられなかった。
 ――それでも。諦める訳にはいかない。直接一矢を報いる事は出来なくても、別の形がある筈だ。
 繰り返しはしない。繋げて行く為に……そうだろう? シバ。

 誇り高き蛇の戦士。彼はもういないけれど。意志を継ぐ者は沢山いる。
 彼の為にも、この世界に住む人達の為にも、エンドレスに引導を渡さなくては――。

 空を見上げるルシオ。
 そこに傷だらけになった仲間達の機体が戻って来た。

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MVP一覧

  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィka0639
  • 《キルアイス》
    リコ・ブジャルドka6450

重体一覧

  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィka0639

参加者一覧

  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士
  • ユニットアイコン
    フドウ
    不動(ka0320unit001
    ユニット|CAM
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • ユニットアイコン
    スヴェーニ
    スヴェーニ(ka0639unit002
    ユニット|CAM
  • 杏とユニスの先生
    ルシオ・セレステ(ka0673
    エルフ|21才|女性|聖導士
  • ユニットアイコン
    レオーネ
    レオーネ(ka0673unit001
    ユニット|幻獣
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • ユニットアイコン
    アールセブンエクスシア
    R7エクスシア(ka0896unit008
    ユニット|CAM
  • お約束のツナサンド
    アルスレーテ・フュラー(ka6148
    エルフ|27才|女性|格闘士
  • ユニットアイコン
    マジカルアルスン
    魔法少女まじかる☆あるすん(ka6148unit001
    ユニット|CAM
  • 《キルアイス》
    リコ・ブジャルド(ka6450
    人間(蒼)|20才|女性|機導師
  • ユニットアイコン
    トラバント・ツヴァイ
    トラバントII(ka6450unit001
    ユニット|CAM

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
リコ・ブジャルド(ka6450
人間(リアルブルー)|20才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/04/09 16:10:24
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/04/06 21:26:04
アイコン 相談卓
アルスレーテ・フュラー(ka6148
エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2017/04/12 00:04:44