ゲスト
(ka0000)
猿雑魔退治と温泉祭り
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/20 09:00
- 完成日
- 2017/04/25 20:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●前準備
グラズヘイム王国ラスリド領内。普段は喧騒から置き去りにされたような数十人規模の小さな村が、ここ最近は活気に満ち溢れていた。
それというのも、年に一度開催している村自慢の温泉祭りが数日後に迫っているからだ。
この日のために村長を中心とした村人たちは、寝る間も惜しんで準備に励んできた。数少ない村の若者が音頭を取り、老人たちは優しく見守って頼まれた時に力を貸してきた。
「名物の混浴の天然温泉は問題ないし、屋台や特設ステージの準備も終わった」
村の若者の報告に、村長の老人は目を細めた。
「うむ。特設ステージでは子供向けのショーをやるんじゃったの」
「ああ。最近はどこの村でもハンターの世話になってて、憧れる子供も多いからな。ハンターマン対コボルダーっていう内容の劇をやるつもりだ」
「……そ、そうか。喜んでもらえるとよいのう」
広場にいる村長が奥を見渡すと、ニメートルはある混浴温泉の仕切り板の近くに幾つもの屋台が準備されているのが見えた。
村の住人が名物のトマト焼きを振舞うだけでなく、飛び入りの商人などが望めば予備の屋台を貸すつもりでいた。
天然の温泉は混浴であるがゆえに必ず水着を着用してもらうが、持ってない人へ貸す為の様々な種類の水着もたくさん用意できた。
とにかく参加する人達に喜んでもらいたい――。
今年の祭りを企画するにあたって、中心となった若者たちが最初に発した言葉は、いつしかこの小さな村の合言葉みたいになっていた。
あとは祭りの当日を待つばかり。開催にはまだ数日あるものの、村人は誰もが浮かれた気分になっていた。
その時だ。温泉の様子を見に行っていた若者が、泣きそうな顔で村長たちのところへ走ってきた。
「た、大変だ。なんか狂暴そうな猿がいるっ!」
報告を受けた村長は数人でこっそり温泉の様子を窺いに行く。
村の先には小さな山もあるため、温泉を目当てとした猿は前々からたまにやってきていた。しかしそこにいたのはいつも見る猿より一回りほど大きく、人間並みの筋肉を備えているものまでいた。加えて纏っている威圧感みたいなものが大違いだ。
「あ、あんな猿、見たことないぞ」
「もしかして危険な奴なんじゃないか?」
若者は畑作業に使う鍬を手に持ち、追い払おうと提案したが、村長がやめるように言った。
「万が一の場合もある。あれが普通の猿でなかったら、手を出したワシらが殺されてしまうかもしれん」
「じゃあ、どうするんだ。温泉祭りはもうすぐなんだぞ!」
詰め寄る若者を落ち着かせてから、村長は集まった全員を見渡して告げる。
「ハンターへ依頼をしよう。費用はかかっても、任せた方がよい」
●ハンターへの依頼
頭を低くして頼み込む村長や他の村人は今にも泣きそうな顔をしていた。
突然村の温泉に乱入してきた大きめの猿は、気に入ったのかその場から離れないそうなのである。不幸中の幸いというべきか、村人にはまだ被害は出ていないが、どうにも不気味で畑仕事にまで支障が出ていると村長は告げた。
「明日にはこの村で温泉祭りも開催予定となっているのです。図々しいお願いで申し訳ないのですが、今日中になんとかならないでしょうか」
普通の猿であれば、追い払うのは一般人でも可能だろう。しかし村長が危惧した通り、猿に似た他の生物だとすれば話は変わる。そしてハンター達は後者である可能性が高いと判断していた。
■
出入口から入った湯気立つ温泉の奥に、猿たちはいた。通常の猿とは違い、装備を整えたハンターを見ても怯えるどころか目をギラつかせる。
一体が猛々しく吠えると、村の奥に新たな気配が増えた。
そちらにも注意を向けつつ、ハンターたちは雑魔とおぼしき猿との戦闘に突入する。
グラズヘイム王国ラスリド領内。普段は喧騒から置き去りにされたような数十人規模の小さな村が、ここ最近は活気に満ち溢れていた。
それというのも、年に一度開催している村自慢の温泉祭りが数日後に迫っているからだ。
この日のために村長を中心とした村人たちは、寝る間も惜しんで準備に励んできた。数少ない村の若者が音頭を取り、老人たちは優しく見守って頼まれた時に力を貸してきた。
「名物の混浴の天然温泉は問題ないし、屋台や特設ステージの準備も終わった」
村の若者の報告に、村長の老人は目を細めた。
「うむ。特設ステージでは子供向けのショーをやるんじゃったの」
「ああ。最近はどこの村でもハンターの世話になってて、憧れる子供も多いからな。ハンターマン対コボルダーっていう内容の劇をやるつもりだ」
「……そ、そうか。喜んでもらえるとよいのう」
広場にいる村長が奥を見渡すと、ニメートルはある混浴温泉の仕切り板の近くに幾つもの屋台が準備されているのが見えた。
村の住人が名物のトマト焼きを振舞うだけでなく、飛び入りの商人などが望めば予備の屋台を貸すつもりでいた。
天然の温泉は混浴であるがゆえに必ず水着を着用してもらうが、持ってない人へ貸す為の様々な種類の水着もたくさん用意できた。
とにかく参加する人達に喜んでもらいたい――。
今年の祭りを企画するにあたって、中心となった若者たちが最初に発した言葉は、いつしかこの小さな村の合言葉みたいになっていた。
あとは祭りの当日を待つばかり。開催にはまだ数日あるものの、村人は誰もが浮かれた気分になっていた。
その時だ。温泉の様子を見に行っていた若者が、泣きそうな顔で村長たちのところへ走ってきた。
「た、大変だ。なんか狂暴そうな猿がいるっ!」
報告を受けた村長は数人でこっそり温泉の様子を窺いに行く。
村の先には小さな山もあるため、温泉を目当てとした猿は前々からたまにやってきていた。しかしそこにいたのはいつも見る猿より一回りほど大きく、人間並みの筋肉を備えているものまでいた。加えて纏っている威圧感みたいなものが大違いだ。
「あ、あんな猿、見たことないぞ」
「もしかして危険な奴なんじゃないか?」
若者は畑作業に使う鍬を手に持ち、追い払おうと提案したが、村長がやめるように言った。
「万が一の場合もある。あれが普通の猿でなかったら、手を出したワシらが殺されてしまうかもしれん」
「じゃあ、どうするんだ。温泉祭りはもうすぐなんだぞ!」
詰め寄る若者を落ち着かせてから、村長は集まった全員を見渡して告げる。
「ハンターへ依頼をしよう。費用はかかっても、任せた方がよい」
●ハンターへの依頼
頭を低くして頼み込む村長や他の村人は今にも泣きそうな顔をしていた。
突然村の温泉に乱入してきた大きめの猿は、気に入ったのかその場から離れないそうなのである。不幸中の幸いというべきか、村人にはまだ被害は出ていないが、どうにも不気味で畑仕事にまで支障が出ていると村長は告げた。
「明日にはこの村で温泉祭りも開催予定となっているのです。図々しいお願いで申し訳ないのですが、今日中になんとかならないでしょうか」
普通の猿であれば、追い払うのは一般人でも可能だろう。しかし村長が危惧した通り、猿に似た他の生物だとすれば話は変わる。そしてハンター達は後者である可能性が高いと判断していた。
■
出入口から入った湯気立つ温泉の奥に、猿たちはいた。通常の猿とは違い、装備を整えたハンターを見ても怯えるどころか目をギラつかせる。
一体が猛々しく吠えると、村の奥に新たな気配が増えた。
そちらにも注意を向けつつ、ハンターたちは雑魔とおぼしき猿との戦闘に突入する。
リプレイ本文
●対猿雑魔戦
むわっとした湯気が漂う温泉の出入口付近で、ミリア・エインズワース(ka1287)はふわりと金色の髪を舞わせた。
「さて温泉温泉、早いとこ片付けようぜ」
村に温泉があると聞き、半ば無理矢理誘ったジョージ・ユニクス(ka0442)とニコラス・ディズレーリ(ka2572)に目配せする。
とある事情により必要に応じて女装をしていたニコラスは、現在でもハンターとして仕事を行う際には長髪のウィッグや胸にパッドを詰め、エリス・カルディコットとして臨んでいた。
「気分よく浸かっている所を申し訳ございませんが……それは人間用です」
ただ温泉を楽しみに来ただけなら少しかわいそうなどと多少の引け目を感じつつも、村人の為にもエリスは仕留めるべき猿雑魔の数と位置を確認していく。
その猿雑魔の手前、緊張感を維持しつつも、湯気を上げる温泉を見てジョージは一言だけ小声で呟く。
「のんびり、のんびりしたい、なあ」
願望を込めつつ、同行してきたミリアの横顔をチラリと見て、ジョージはのんびりできるのだろうかと心の中で首を小さく傾げた。
「……何の罪もない村人達のせっかくの催し事を邪魔するとは無粋極まりますわね」
流麗な眉を僅かに吊り上げ、眼鏡の奥の黒曜石のような瞳に日下 菜摘(ka0881)は腹立たしげな輝きを宿していた。
「さぁって、俺の初依頼!」
鬼として筋骨隆々の恵まれた体格の柊羽(ka6811)は腕を撫して気合を入れる。
「温泉で祭りだァ!!! ……ってェ聞いてたんだがなァ……なんでェ、猿が居やがんじゃァねェか。邪魔ァするってェんならァ上等だ!! 相手ェしてやらァ!!」
「温泉には猿がいるとは聞いた事はあるが、こいつらはそれ以前みたいだな」
敵意に満ちた猿の視線を事も無げに受け流し、そう言ったのは龍崎・カズマ(ka0178)だった。
■
温泉内と村の屋台が並ぶ方を見比べ、カズマは外の敵を仕留めようと決める。
「先手必勝だが、屋台に被害を出すのはマズイか。まずはあの猿を狙う」
髪と瞳が烈火のごとき真紅に染まる。火属性の火竜票と自らのマテリアルを結び、北方の屋台に潜むようにしていた一体へ放つ。
胴に命中するや否や、悶絶する猿の隣へ磁石が引き合うかのごとき速度で移動する。カズマの影渡の効果だ。
「よう。調子はどうだ。そんなにビックリすんなよ。仲良くやろうぜ。ほんの一秒だけな」
素早く武器を持ち替え、繰り出される連撃が猿の腕を斬り落とす。二撃目が急所に命中し、宙に真っ赤な花を咲かせた刹那、猿雑魔は大地に伏して消滅した。
「さて、次だな。屋台に入り込まれたら、後ろに回り込んで蹴り出すとかしないとな」
きっちりと一体を仕留めたカズマ同様に、ミリアも屋台付近の猿に狙いを定めていた。唇をぺろりと舐め、祢々切丸を片手に標的へ迫る。
ルビーのごとく煌めく両目はどこまでも紅く、刀を振る右手の甲には剣を模った紋章が浮かんでいた。
射程距離に捉えるなり大きく踏み込み、直線上に立つ雑魔に回避すら許さず刀で貫いた。ミリアの神速刺突は、敵の頭部への致命的な一撃となった。
「これで屋台側はあと一体だな」
敵の消滅を確認し、顔を上げたミリアの視線の先にはジョージがいた。
頭から爪先まで包む全身鎧の各部位から、エメラルドを溶かして舞わせたようなオーラが噴出し、ジョージの右目が朱に染まる。
「強引にミリアに連れて来られたけど、人々を護る為になら喜んで剣を振るおう」
村の出入口付近の雑魔へ放つのは撃砲。蓄積されたマテリアルにより生まれた衝撃波が、本来なら聖剣の届かない距離にいる敵の腕を引き裂いた。
苦悶の咆哮を木霊させ、殺意を自分だけに向けてくる敵を見据え、ジョージは兜の下で狙い通りとばかりに呟く。
「屋台から離れてかかってきてください。僕が迎え撃ちましょう」
■
一方の温泉内でも、雑魔との戦いが繰り広げられていた。
「申し訳ございませんが、あなた達の好きにはさせません」
蒼炎を華奢な身体の周りに揺らめかせたエリスの髪が銀から空色に変化し、雰囲気さえも一変した。
構えたエア・スティーラーから噴出された弾丸は込められたマテリアルの力で、冷気を纏って敵の腕を貫く。
傷口を驚いたように顔を動かす雑魔。それが最期の行動となった。
「人里離れた地で人知れず温泉を愛でていたのであれば、撃たれなかったでしょうに」
消滅した猿に多少の憐れみを向けても、村人の今後の為にもエリスは一体とも逃がすつもりはなかった。
「ここは全力で排除しなくてはなりませんわね。私も尽力させて頂きます」
一体を倒されて慌て出した敵の隙を、仲間との連携を常に意識していた菜摘は見逃さない。浴場の中でも湯を浴びておらず、滑りの少ない立場からホーリーライトを発動させる。
宙を疾走する煌めきを帯びた光弾が、猿の胴を吹き飛ばした。
「その場で退治されるのをお勧めいたしますわ。近づけば魔法も近接もこなせる聖導士が器用貧乏ではないことを思い知るだけですから」
噴水のように湯が噴き上がる光景を横目に、残り一体となった浴場内の雑魔が、攻撃を終えて隙ができた菜摘を狙う。
「外は任せて俺ァ温泉の猿の相手ェしてやろうじゃねェか」
敵の接近を警戒していた柊羽が、すかさず菜摘の前に出る。
「遠距離から攻撃した直後に、猿に飛びかかられちゃァたまったもんじゃねェかんな」
斬りかかりながら踏み出す迅速な動きは、敵の逃げ場を瞬時に断つ。まさしく電光石火な苛烈な一撃が敵の急所に直撃し、瀕死にまで追い込む。
「オラァ! クソ猿共ォ! そこァ俺が! 俺達が! 楽しむ為の場所だァ! さっさと返しやがれェ!」
角に浮かんでいた銀の蔦の紋様から、昂る感情を吐き出すように炎にも似たオーラが噴き上がった。
あまりの迫力に恐れを抱いたのか、慌てて逃げようとする猿だったが体勢を変える前に狙い澄ましていたエリスことニコラスのレイターコールドショットが胴を捉えてとどめを刺した。
■
温泉の外ではジョージが接近してきた猿の胴を、丁度ソウルエッジで真っ二つにしていた。
「歪虚は一体たりとも逃がしません」
剣についた汚れをジョージは払う。これで浴場内と村内の猿歪虚は残らず倒した。
「無事に殲滅できましたね。ステージや屋台にも被害がなくて何よりです」
村を見回るエリスが微笑むと、同行していたカズマが頷いた。
「おう。これで明日は皆が楽しめるってわけだ」
「村の方々も、とても嬉しそうですわ」
菜摘が言えば、ミリアも楽しそうにはしゃぐ。
「早く明日にならないかな。まずは温泉だろ。それに温泉で、やっぱり温泉だ!」
こうして無事に猿雑魔という障害を排除したハンターたちは、早速この夜から村人達の手厚いもてなしを受けたのだった。
●温泉祭り当日
訪れた温泉を見渡し、ジョージは軽くを伸びをする。
「温泉自体は好きだし、この機会に古傷だらけの体の汚れを落とそう」
村から借りたタオルを湯に浸し、肩に当てようとしたその時だった。
「背中を流してやるよ。ほら、遠慮するな」
木椅子に腰を下ろしていたジョージの前に、ミリアが仁王立ちしたのである。
透き通るような谷間も露わなビキニは普通のデザインなのに、ミリアの上半身にあるだけで煽情的な妖しさを放つ。軽く腕を動かすだけでたゆんと弾むほど豊満でありながら、その腰つきは驚くほどキュッとくびれている。
ジョージの初恋の人にして、心友の妻でもあるのがミリアだ。いかに普通に接しようと思っていても、間近で水着姿を見せられるとどぎまぎして心臓が痛いくらいだ。おまけに普段よりもずっと近くに感じるとなれば、顔が赤くなるのは当然だった。
「落ち着け落ち着け落ち着けただの背中流しじゃないかそれだけそれだけだから」
「何、ブツブツ言ってんだ。ジョージ~気持ちいいか~? 前もやるか~?」
硬直している間にバックを取っていたミリアが、石鹸をつけたタオルを持った手をジョージの背中越しに前へ伸ばした瞬間、ふにゅんとした何かが純情な男を襲った。
「柔らかい感触……!! うひゃはひゃあわわわわわわ!!」
その勢いはまさに脱兎。目の前から走り去るジョージに小首を傾げながらも、泡塗れのタオルを振ってミリアは男の背中に声をかける。
「おーいジョージ、泡ぐらい流してけよー」
どうしたものかとポリポリ頬を掻いていると、新たな獲物ではないがよく知る人物をミリアは見つけた。
戦闘の必要もなくなり、本来の男の姿に戻っているニコラスは持参した石鹸で簡単に身体を洗う。お湯で流して、ふうと小さくため息をついた所に聞きなれた声がニコラスの名前を呼んだ。
「み、ミリアさん!? わふっ!? ん、んん~~っ!!」
振り向いた直後、身体に残っていた泡で足を滑らせたミリアが突っ込んできた。
咄嗟にミリアがニコラスの頭を抱えたので怪我はないが、呼吸が出来ないのに加え恥ずかしさもあってパニック。口は酸素を求めてパクパク。
「ニコラスすまん大丈夫か? おい、悪かったから食わないでくれって」
なんとか顔を逃がして、ニコラスの時が止まった。ミリアの水着の上があるべき場所からなくなっていたのだ。
「は、はやくなんでもいいですから隠してくださいっ!」
慌てて探すも水着は見つからない。ひたすらパニクるニコラスだが、一方でミリアは平然としていた。
「ボクの大胸筋くらい見たことあるだろ? 気にするな。それに水着が見つからないなら、くっついたまま入っちまえばいいだろ」
タイミングが良いのか悪いのか。
この場にミリアから離れて身体の泡を流し終えたジョージが戻ってきた。
「ふう。ようやく少し落ち着いた。やっとこさ湯船に――って、え?」
惨状を目にしたジョージが固まり、ミリアに押し倒されているも同然のニコラスが顔色を赤から青に変える。
「ち、違っ! これには理由が! ミ、ミリアさんも早く退い――」
ミリアを押し返そうとして、ニコラスはハっとする。
「――ああ、そうだ。水着がないんだ。こ、この状況をどうすれば……って、うわあ!」
「~~~~~~~!?!??」
血液が首から上に逆流し、そしてジョージは後ろ向きに倒れる。
騒ぎを聞きつけた村人たちがここで乱入し、ミリアとニコラスを含めた三人をまとめて温泉の外へと回収していくのだった。
■
一部始終を湯船に浸かりながら見ていた菜摘は、頬をほんのりと桜色に染めてどこか悩ましげにも見えるため息をほうとついた。
「最近の若い方は大胆といいますか、情熱的なのですわね」
菜摘が温泉へ入る際に選んで身に着けたのはビキニではなく、短パンタイプのセパレートだった。
おとなしめなデザインではあるが、それでも均整のとれたプロポーションのわかる女体は魅力に溢れ、決して菜摘自身卑下するものではなかった。
それでもこの水着を選んだのは、羞恥心がブレーキをかけたからだ。
「私はさすがにビキニでは気恥ずかしいですわね」
誰にともなく呟いたのだが、湯煙に隠れた右方から思わぬ反応があった。
「それぞれが楽しみ、ゆっくり休めればいいさ」
持参したブーメランパンツも映える見事な筋肉を誇るカズマだった。
やはり持ち込んだ手拭いを頭に乗せ、漆の杯に注いだ吟醸酒の武烈をちびちびと楽しむ。辛口で深い味わいが特徴で、名酒と言っても過言ではなかった。
「そうですわね。あ、お注ぎいたしますわ」
「すまないな。美人にお酌されて、この酒も喜んでるぜ」
軽く笑い、カズマは杯をグイと呑み干した。
「さて、俺はそろそろ上がるぜ。ふらっと見て回って、手伝ってほしそうなとこがあれば参加するつもりだ」
背中越しにヒラヒラと手を振って、浴場から出るカズマ。屋台なども魅力的ではあるが、今のうちは温泉にのんびり浸かっていようと菜摘は決めた。
軽く右手ですくったお湯を、伸ばした左腕から肩へとかけていく。体の内側からポカポカと温まってくるようで、額にはじわりと汗が滲む。
「……こちらの世界では温泉を堪能する機会はあまりありませんからね。美肌の効果があると聞きますし、せっかくならば出来るだけ生身で味わわなくては勿体ないですわね」
■
温泉よりも祭りを選んだのは柊羽だ。飛び回るように村を見て回りつつ、目にした屋台の商品を片っ端から食べていく。
「よっしゃァ! 祭りだァァァ!!! 目指せ屋台全制覇……って、見た顔がいるな」
柊羽が足を止めた屋台の中から、ひょっこりと顔を出したのはカズマだった。
「頼まれて屋台を手伝ってるとこだ。食うか? 焼きトマト。この村の名物らしいぞ」
「ったりめェよ! ……っと、おォン? 何だ何だァ? ハンターマン対コボルダーだとォ? いっちょ俺も暴れてやろうじゃねェか!」
ステージに飛び乗り、焼きトマトを一口で呑み込んだ突然の乱入者に観劇していた子供達や保護者がザワつく。
「だ、誰た、お前!」
「ハァーハッハッ! 誰だと聞かれちゃァ仕方ねェ。教えてやるぜ、ガキ共。俺様ァ、コボルダー総帥よォ!」
ポカンとするハンターマンにスライディングをかまし、倒れたところをすかさず押さえつける。その上でナレーション役の女性に子供たちを煽るように目で合図する。
「大変! 皆でハンターマンを助けてあげて!」
用意してあった木刀が子供達に配られ、わらわらとステージ上へやってくる。鍛え抜かれた本物のハンターの柊羽にダメージはないが、わざと大袈裟にやられるふりをする。子供たちは大喜びで劇は盛況のうちに幕を閉じた。
■
夜になり村の中央で火が焚かれ、祭りを締めくくる大宴会へと突入していた。
劇の役者たちに囲まれ、日中のお礼を言われているのは柊羽だ。
「いいってことよ。それによ、ガキ共がこれで大切な奴を護る為の勇気を覚えてくれりゃァ上出来だな」
俺もいい思い出になったぜと、柊羽がゲラゲラ笑う。その背中にはまだ遊び足りないのか、男児が我先にと群がっている。
女児が目をキラキラさせているのは、大人のお姉さんな雰囲気を漂わせる菜摘だ。求められるままに遊んであげ、菜摘もまた心から微笑む。
ニコラスとジョージの腕を小脇に抱え、はしゃいでいるのはミリアだ。興味のある所に片っ端から顔を出す。
なんやかんやで引きずり回されるジョージとニコラスも楽しそうだ。
日中に屋台を手伝ったからか、頼れる兄貴分みたいになって、村の若者からあれやこれやと相談を受けているのはカズマだ。口調こそぶっきらぼうだが、アドバイス自体は内容のあるものが多く、年寄り達も徐々に周りに集まり出していた。
村全体が上げているような笑い声が夜の闇に吸い込まれ、無数の星となって大地を照らす。呑めや歌えやの大騒ぎは朝まで続き、ハンターのおかげで過去に例がないほど祭りは大成功に終わったのだった。
むわっとした湯気が漂う温泉の出入口付近で、ミリア・エインズワース(ka1287)はふわりと金色の髪を舞わせた。
「さて温泉温泉、早いとこ片付けようぜ」
村に温泉があると聞き、半ば無理矢理誘ったジョージ・ユニクス(ka0442)とニコラス・ディズレーリ(ka2572)に目配せする。
とある事情により必要に応じて女装をしていたニコラスは、現在でもハンターとして仕事を行う際には長髪のウィッグや胸にパッドを詰め、エリス・カルディコットとして臨んでいた。
「気分よく浸かっている所を申し訳ございませんが……それは人間用です」
ただ温泉を楽しみに来ただけなら少しかわいそうなどと多少の引け目を感じつつも、村人の為にもエリスは仕留めるべき猿雑魔の数と位置を確認していく。
その猿雑魔の手前、緊張感を維持しつつも、湯気を上げる温泉を見てジョージは一言だけ小声で呟く。
「のんびり、のんびりしたい、なあ」
願望を込めつつ、同行してきたミリアの横顔をチラリと見て、ジョージはのんびりできるのだろうかと心の中で首を小さく傾げた。
「……何の罪もない村人達のせっかくの催し事を邪魔するとは無粋極まりますわね」
流麗な眉を僅かに吊り上げ、眼鏡の奥の黒曜石のような瞳に日下 菜摘(ka0881)は腹立たしげな輝きを宿していた。
「さぁって、俺の初依頼!」
鬼として筋骨隆々の恵まれた体格の柊羽(ka6811)は腕を撫して気合を入れる。
「温泉で祭りだァ!!! ……ってェ聞いてたんだがなァ……なんでェ、猿が居やがんじゃァねェか。邪魔ァするってェんならァ上等だ!! 相手ェしてやらァ!!」
「温泉には猿がいるとは聞いた事はあるが、こいつらはそれ以前みたいだな」
敵意に満ちた猿の視線を事も無げに受け流し、そう言ったのは龍崎・カズマ(ka0178)だった。
■
温泉内と村の屋台が並ぶ方を見比べ、カズマは外の敵を仕留めようと決める。
「先手必勝だが、屋台に被害を出すのはマズイか。まずはあの猿を狙う」
髪と瞳が烈火のごとき真紅に染まる。火属性の火竜票と自らのマテリアルを結び、北方の屋台に潜むようにしていた一体へ放つ。
胴に命中するや否や、悶絶する猿の隣へ磁石が引き合うかのごとき速度で移動する。カズマの影渡の効果だ。
「よう。調子はどうだ。そんなにビックリすんなよ。仲良くやろうぜ。ほんの一秒だけな」
素早く武器を持ち替え、繰り出される連撃が猿の腕を斬り落とす。二撃目が急所に命中し、宙に真っ赤な花を咲かせた刹那、猿雑魔は大地に伏して消滅した。
「さて、次だな。屋台に入り込まれたら、後ろに回り込んで蹴り出すとかしないとな」
きっちりと一体を仕留めたカズマ同様に、ミリアも屋台付近の猿に狙いを定めていた。唇をぺろりと舐め、祢々切丸を片手に標的へ迫る。
ルビーのごとく煌めく両目はどこまでも紅く、刀を振る右手の甲には剣を模った紋章が浮かんでいた。
射程距離に捉えるなり大きく踏み込み、直線上に立つ雑魔に回避すら許さず刀で貫いた。ミリアの神速刺突は、敵の頭部への致命的な一撃となった。
「これで屋台側はあと一体だな」
敵の消滅を確認し、顔を上げたミリアの視線の先にはジョージがいた。
頭から爪先まで包む全身鎧の各部位から、エメラルドを溶かして舞わせたようなオーラが噴出し、ジョージの右目が朱に染まる。
「強引にミリアに連れて来られたけど、人々を護る為になら喜んで剣を振るおう」
村の出入口付近の雑魔へ放つのは撃砲。蓄積されたマテリアルにより生まれた衝撃波が、本来なら聖剣の届かない距離にいる敵の腕を引き裂いた。
苦悶の咆哮を木霊させ、殺意を自分だけに向けてくる敵を見据え、ジョージは兜の下で狙い通りとばかりに呟く。
「屋台から離れてかかってきてください。僕が迎え撃ちましょう」
■
一方の温泉内でも、雑魔との戦いが繰り広げられていた。
「申し訳ございませんが、あなた達の好きにはさせません」
蒼炎を華奢な身体の周りに揺らめかせたエリスの髪が銀から空色に変化し、雰囲気さえも一変した。
構えたエア・スティーラーから噴出された弾丸は込められたマテリアルの力で、冷気を纏って敵の腕を貫く。
傷口を驚いたように顔を動かす雑魔。それが最期の行動となった。
「人里離れた地で人知れず温泉を愛でていたのであれば、撃たれなかったでしょうに」
消滅した猿に多少の憐れみを向けても、村人の今後の為にもエリスは一体とも逃がすつもりはなかった。
「ここは全力で排除しなくてはなりませんわね。私も尽力させて頂きます」
一体を倒されて慌て出した敵の隙を、仲間との連携を常に意識していた菜摘は見逃さない。浴場の中でも湯を浴びておらず、滑りの少ない立場からホーリーライトを発動させる。
宙を疾走する煌めきを帯びた光弾が、猿の胴を吹き飛ばした。
「その場で退治されるのをお勧めいたしますわ。近づけば魔法も近接もこなせる聖導士が器用貧乏ではないことを思い知るだけですから」
噴水のように湯が噴き上がる光景を横目に、残り一体となった浴場内の雑魔が、攻撃を終えて隙ができた菜摘を狙う。
「外は任せて俺ァ温泉の猿の相手ェしてやろうじゃねェか」
敵の接近を警戒していた柊羽が、すかさず菜摘の前に出る。
「遠距離から攻撃した直後に、猿に飛びかかられちゃァたまったもんじゃねェかんな」
斬りかかりながら踏み出す迅速な動きは、敵の逃げ場を瞬時に断つ。まさしく電光石火な苛烈な一撃が敵の急所に直撃し、瀕死にまで追い込む。
「オラァ! クソ猿共ォ! そこァ俺が! 俺達が! 楽しむ為の場所だァ! さっさと返しやがれェ!」
角に浮かんでいた銀の蔦の紋様から、昂る感情を吐き出すように炎にも似たオーラが噴き上がった。
あまりの迫力に恐れを抱いたのか、慌てて逃げようとする猿だったが体勢を変える前に狙い澄ましていたエリスことニコラスのレイターコールドショットが胴を捉えてとどめを刺した。
■
温泉の外ではジョージが接近してきた猿の胴を、丁度ソウルエッジで真っ二つにしていた。
「歪虚は一体たりとも逃がしません」
剣についた汚れをジョージは払う。これで浴場内と村内の猿歪虚は残らず倒した。
「無事に殲滅できましたね。ステージや屋台にも被害がなくて何よりです」
村を見回るエリスが微笑むと、同行していたカズマが頷いた。
「おう。これで明日は皆が楽しめるってわけだ」
「村の方々も、とても嬉しそうですわ」
菜摘が言えば、ミリアも楽しそうにはしゃぐ。
「早く明日にならないかな。まずは温泉だろ。それに温泉で、やっぱり温泉だ!」
こうして無事に猿雑魔という障害を排除したハンターたちは、早速この夜から村人達の手厚いもてなしを受けたのだった。
●温泉祭り当日
訪れた温泉を見渡し、ジョージは軽くを伸びをする。
「温泉自体は好きだし、この機会に古傷だらけの体の汚れを落とそう」
村から借りたタオルを湯に浸し、肩に当てようとしたその時だった。
「背中を流してやるよ。ほら、遠慮するな」
木椅子に腰を下ろしていたジョージの前に、ミリアが仁王立ちしたのである。
透き通るような谷間も露わなビキニは普通のデザインなのに、ミリアの上半身にあるだけで煽情的な妖しさを放つ。軽く腕を動かすだけでたゆんと弾むほど豊満でありながら、その腰つきは驚くほどキュッとくびれている。
ジョージの初恋の人にして、心友の妻でもあるのがミリアだ。いかに普通に接しようと思っていても、間近で水着姿を見せられるとどぎまぎして心臓が痛いくらいだ。おまけに普段よりもずっと近くに感じるとなれば、顔が赤くなるのは当然だった。
「落ち着け落ち着け落ち着けただの背中流しじゃないかそれだけそれだけだから」
「何、ブツブツ言ってんだ。ジョージ~気持ちいいか~? 前もやるか~?」
硬直している間にバックを取っていたミリアが、石鹸をつけたタオルを持った手をジョージの背中越しに前へ伸ばした瞬間、ふにゅんとした何かが純情な男を襲った。
「柔らかい感触……!! うひゃはひゃあわわわわわわ!!」
その勢いはまさに脱兎。目の前から走り去るジョージに小首を傾げながらも、泡塗れのタオルを振ってミリアは男の背中に声をかける。
「おーいジョージ、泡ぐらい流してけよー」
どうしたものかとポリポリ頬を掻いていると、新たな獲物ではないがよく知る人物をミリアは見つけた。
戦闘の必要もなくなり、本来の男の姿に戻っているニコラスは持参した石鹸で簡単に身体を洗う。お湯で流して、ふうと小さくため息をついた所に聞きなれた声がニコラスの名前を呼んだ。
「み、ミリアさん!? わふっ!? ん、んん~~っ!!」
振り向いた直後、身体に残っていた泡で足を滑らせたミリアが突っ込んできた。
咄嗟にミリアがニコラスの頭を抱えたので怪我はないが、呼吸が出来ないのに加え恥ずかしさもあってパニック。口は酸素を求めてパクパク。
「ニコラスすまん大丈夫か? おい、悪かったから食わないでくれって」
なんとか顔を逃がして、ニコラスの時が止まった。ミリアの水着の上があるべき場所からなくなっていたのだ。
「は、はやくなんでもいいですから隠してくださいっ!」
慌てて探すも水着は見つからない。ひたすらパニクるニコラスだが、一方でミリアは平然としていた。
「ボクの大胸筋くらい見たことあるだろ? 気にするな。それに水着が見つからないなら、くっついたまま入っちまえばいいだろ」
タイミングが良いのか悪いのか。
この場にミリアから離れて身体の泡を流し終えたジョージが戻ってきた。
「ふう。ようやく少し落ち着いた。やっとこさ湯船に――って、え?」
惨状を目にしたジョージが固まり、ミリアに押し倒されているも同然のニコラスが顔色を赤から青に変える。
「ち、違っ! これには理由が! ミ、ミリアさんも早く退い――」
ミリアを押し返そうとして、ニコラスはハっとする。
「――ああ、そうだ。水着がないんだ。こ、この状況をどうすれば……って、うわあ!」
「~~~~~~~!?!??」
血液が首から上に逆流し、そしてジョージは後ろ向きに倒れる。
騒ぎを聞きつけた村人たちがここで乱入し、ミリアとニコラスを含めた三人をまとめて温泉の外へと回収していくのだった。
■
一部始終を湯船に浸かりながら見ていた菜摘は、頬をほんのりと桜色に染めてどこか悩ましげにも見えるため息をほうとついた。
「最近の若い方は大胆といいますか、情熱的なのですわね」
菜摘が温泉へ入る際に選んで身に着けたのはビキニではなく、短パンタイプのセパレートだった。
おとなしめなデザインではあるが、それでも均整のとれたプロポーションのわかる女体は魅力に溢れ、決して菜摘自身卑下するものではなかった。
それでもこの水着を選んだのは、羞恥心がブレーキをかけたからだ。
「私はさすがにビキニでは気恥ずかしいですわね」
誰にともなく呟いたのだが、湯煙に隠れた右方から思わぬ反応があった。
「それぞれが楽しみ、ゆっくり休めればいいさ」
持参したブーメランパンツも映える見事な筋肉を誇るカズマだった。
やはり持ち込んだ手拭いを頭に乗せ、漆の杯に注いだ吟醸酒の武烈をちびちびと楽しむ。辛口で深い味わいが特徴で、名酒と言っても過言ではなかった。
「そうですわね。あ、お注ぎいたしますわ」
「すまないな。美人にお酌されて、この酒も喜んでるぜ」
軽く笑い、カズマは杯をグイと呑み干した。
「さて、俺はそろそろ上がるぜ。ふらっと見て回って、手伝ってほしそうなとこがあれば参加するつもりだ」
背中越しにヒラヒラと手を振って、浴場から出るカズマ。屋台なども魅力的ではあるが、今のうちは温泉にのんびり浸かっていようと菜摘は決めた。
軽く右手ですくったお湯を、伸ばした左腕から肩へとかけていく。体の内側からポカポカと温まってくるようで、額にはじわりと汗が滲む。
「……こちらの世界では温泉を堪能する機会はあまりありませんからね。美肌の効果があると聞きますし、せっかくならば出来るだけ生身で味わわなくては勿体ないですわね」
■
温泉よりも祭りを選んだのは柊羽だ。飛び回るように村を見て回りつつ、目にした屋台の商品を片っ端から食べていく。
「よっしゃァ! 祭りだァァァ!!! 目指せ屋台全制覇……って、見た顔がいるな」
柊羽が足を止めた屋台の中から、ひょっこりと顔を出したのはカズマだった。
「頼まれて屋台を手伝ってるとこだ。食うか? 焼きトマト。この村の名物らしいぞ」
「ったりめェよ! ……っと、おォン? 何だ何だァ? ハンターマン対コボルダーだとォ? いっちょ俺も暴れてやろうじゃねェか!」
ステージに飛び乗り、焼きトマトを一口で呑み込んだ突然の乱入者に観劇していた子供達や保護者がザワつく。
「だ、誰た、お前!」
「ハァーハッハッ! 誰だと聞かれちゃァ仕方ねェ。教えてやるぜ、ガキ共。俺様ァ、コボルダー総帥よォ!」
ポカンとするハンターマンにスライディングをかまし、倒れたところをすかさず押さえつける。その上でナレーション役の女性に子供たちを煽るように目で合図する。
「大変! 皆でハンターマンを助けてあげて!」
用意してあった木刀が子供達に配られ、わらわらとステージ上へやってくる。鍛え抜かれた本物のハンターの柊羽にダメージはないが、わざと大袈裟にやられるふりをする。子供たちは大喜びで劇は盛況のうちに幕を閉じた。
■
夜になり村の中央で火が焚かれ、祭りを締めくくる大宴会へと突入していた。
劇の役者たちに囲まれ、日中のお礼を言われているのは柊羽だ。
「いいってことよ。それによ、ガキ共がこれで大切な奴を護る為の勇気を覚えてくれりゃァ上出来だな」
俺もいい思い出になったぜと、柊羽がゲラゲラ笑う。その背中にはまだ遊び足りないのか、男児が我先にと群がっている。
女児が目をキラキラさせているのは、大人のお姉さんな雰囲気を漂わせる菜摘だ。求められるままに遊んであげ、菜摘もまた心から微笑む。
ニコラスとジョージの腕を小脇に抱え、はしゃいでいるのはミリアだ。興味のある所に片っ端から顔を出す。
なんやかんやで引きずり回されるジョージとニコラスも楽しそうだ。
日中に屋台を手伝ったからか、頼れる兄貴分みたいになって、村の若者からあれやこれやと相談を受けているのはカズマだ。口調こそぶっきらぼうだが、アドバイス自体は内容のあるものが多く、年寄り達も徐々に周りに集まり出していた。
村全体が上げているような笑い声が夜の闇に吸い込まれ、無数の星となって大地を照らす。呑めや歌えやの大騒ぎは朝まで続き、ハンターのおかげで過去に例がないほど祭りは大成功に終わったのだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/04/20 01:21:17 |
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【相談用】サル退治 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/04/20 01:41:53 |