ゲスト
(ka0000)
【初心】みざるいわざるきかざる
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- LV1~LV20
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/22 22:00
- 完成日
- 2017/05/04 00:32
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「では、頼んだぞ」
魔術師協会広報部長のドメニコ・カファロ(kz0017)はそれだけ言って背を向け立ち去った。
突然の展開で申し訳ないが、ここはハンターオフィス。
依頼の受付担当者と、さぼり気味ハンターの南那初華(kz0135)がその場に残された。
「ええっと……ドメさんが言いたかったことって……」
初華、ドメニコが先ほど言った言葉をまとめようと頭をひねっていた。
フマーレとかポルトワールで歪虚の騒ぎがいろいろあってー。
でもって、私の方はパルサラスとかブラブロとか大型歪虚討伐お疲れ様って言ってもらってー。
それはそれとして、いまギルドでは各地で連動した動きが活発化していて明らかに人手が不足しててー。
とはいえ、同盟ユニオンとしては同盟の騒ぎを何とかしたいから多くの人を動員したい、うんうんこれは分かる―。
そんな中、初心者依頼のバックアップをしてもらって助かる、って、わたし別に初心者依頼バックアップ専門じゃないしー。
そういえばパルサラス退治、本当は大熊の警戒依頼で行ったらしいが現地に行ったらそれ以上に大変な大型歪虚に襲われてるとはなかなかの巻き込まれ体質じゃの、って、余計なお世話ですー。
話は変わるが、いま魔術師協会で各都市の歪虚騒ぎに絡んで補給路整備をしておるんで、君には存分に才能を振るってほしい……だっけ?
とかなんとか頭の中でぐるぐる思い出しつつぶつくさ独り言として漏らす初華。
「つまり、その巻き込まれ体質を見込んで敵となる存在の潜伏する可能性のある場所に行ってもらいたい、ということね」
依頼担当者の眼鏡っ娘は遠慮なく話をまとめた。
「えーと、それってもしかして……」
「ぜひ、初華さんには巻き込まれ体質というか、はっきり言ってカモっぷりを発揮してもらって潜伏する敵に根こそぎ出て来てもらってこっぴどくやられつつ根こそぎ撃退して欲しい、と」
「んあっ! ひっどーい!」
遠慮会釈もない言い方に、さすがの初華もががん、となる。というか、そこまではっきり言われるまでピンとこない方が悪い。
「……」
ここで眼鏡っ娘係員、ジト目。
「な、なによぅ?」
さすがに初華も身を改める。移動屋台「Pクレープ」の制服でもあるカントリー風メイド服のフリルを揺らしてもじもじ。
「まったく別の依頼の報告書でもありましたが、そういった服は戦闘に向く服ではないことは自覚されてますね?」
「そ、そりゃそうよぅ。でも、営業中に戦闘に巻き込まれることもあるしもともと町で荒事があった時の警備も期待されてたから、この服で戦えなくちゃダメってことで……」
「ほら、ね」
したり、と眼鏡っ娘。
「ほへ? 何よぅ」
「それって、巻き込まれを前提とした話ですよね? 初華さん、巻き込まれのプロなんですよ。巻き込まれ女王と言ってもいいくらいですね。そんなクイーンには、はい、この依頼のバックアップで決定です」
「クイーンって……」
褒め言葉というか、釣るための単語に気を取られているうちに話をまとめられてしまった。
「同盟領のこの山道に、たまにサルの軍団が襲ってくると報告があります。まだ詳細は決まっていませんが、今後の作戦でこの道を使う可能性がありますので事前に討伐してください。……ただし、人員増と人材育成を兼ねて新人依頼にしてあります。一石二鳥も三鳥も狙ってますので、しっかりしてくださいね」
眼鏡っ娘の突き出した依頼書の内容は、次の通り。
【森の中の道でのサル軍団退治】
・新人六人の戦力で幌馬車二台を使い偽装商隊を組織。初華はバックアッパーとして参加
・まれにここを通る商隊を襲うというサル軍団に襲ってもらい、返り討ちにする
・襲われない可能性もあるが、巻き込まれのプロである初華がいるので襲われる可能性は高い
・新人は襲ってきたサル軍団を各自の武器を持って返り討ちにする
・敵の正体は、「みざる・いわざる・きかざる」。つまり、実ザル、岩ザル、着化ザル。
・実ザルは、腐った実や突起のある堅果などを投げて牽制をしてくる
・岩ザルは、岩のハンマーを振るう近接戦闘タイプ。石を投げることも
・着化ザルは、鎧で着飾り耐久力に長ける近接戦闘タイプ。ただし攻撃力は殴る蹴るで岩ザルよりは劣る
「……いいけど、ドメさんがわざわざ言いに来たっていうことは重要な依頼よね? それが新人依頼でいいの?」
「敵が歪虚ではなくケモノですからね。ただ、安全な道を確保しておくという大切な任務です。もしくは、この道を押さえておく、という行為自体がとても重要なんです」
初華、ピンと来た。
「ああ。先に注目させておく、ということね」
「……本当に、初華さんの良くも悪くも目立ってしまう体質には期待しています」
殊勝に頭を下げる眼鏡っ娘係員だった。
魔術師協会広報部長のドメニコ・カファロ(kz0017)はそれだけ言って背を向け立ち去った。
突然の展開で申し訳ないが、ここはハンターオフィス。
依頼の受付担当者と、さぼり気味ハンターの南那初華(kz0135)がその場に残された。
「ええっと……ドメさんが言いたかったことって……」
初華、ドメニコが先ほど言った言葉をまとめようと頭をひねっていた。
フマーレとかポルトワールで歪虚の騒ぎがいろいろあってー。
でもって、私の方はパルサラスとかブラブロとか大型歪虚討伐お疲れ様って言ってもらってー。
それはそれとして、いまギルドでは各地で連動した動きが活発化していて明らかに人手が不足しててー。
とはいえ、同盟ユニオンとしては同盟の騒ぎを何とかしたいから多くの人を動員したい、うんうんこれは分かる―。
そんな中、初心者依頼のバックアップをしてもらって助かる、って、わたし別に初心者依頼バックアップ専門じゃないしー。
そういえばパルサラス退治、本当は大熊の警戒依頼で行ったらしいが現地に行ったらそれ以上に大変な大型歪虚に襲われてるとはなかなかの巻き込まれ体質じゃの、って、余計なお世話ですー。
話は変わるが、いま魔術師協会で各都市の歪虚騒ぎに絡んで補給路整備をしておるんで、君には存分に才能を振るってほしい……だっけ?
とかなんとか頭の中でぐるぐる思い出しつつぶつくさ独り言として漏らす初華。
「つまり、その巻き込まれ体質を見込んで敵となる存在の潜伏する可能性のある場所に行ってもらいたい、ということね」
依頼担当者の眼鏡っ娘は遠慮なく話をまとめた。
「えーと、それってもしかして……」
「ぜひ、初華さんには巻き込まれ体質というか、はっきり言ってカモっぷりを発揮してもらって潜伏する敵に根こそぎ出て来てもらってこっぴどくやられつつ根こそぎ撃退して欲しい、と」
「んあっ! ひっどーい!」
遠慮会釈もない言い方に、さすがの初華もががん、となる。というか、そこまではっきり言われるまでピンとこない方が悪い。
「……」
ここで眼鏡っ娘係員、ジト目。
「な、なによぅ?」
さすがに初華も身を改める。移動屋台「Pクレープ」の制服でもあるカントリー風メイド服のフリルを揺らしてもじもじ。
「まったく別の依頼の報告書でもありましたが、そういった服は戦闘に向く服ではないことは自覚されてますね?」
「そ、そりゃそうよぅ。でも、営業中に戦闘に巻き込まれることもあるしもともと町で荒事があった時の警備も期待されてたから、この服で戦えなくちゃダメってことで……」
「ほら、ね」
したり、と眼鏡っ娘。
「ほへ? 何よぅ」
「それって、巻き込まれを前提とした話ですよね? 初華さん、巻き込まれのプロなんですよ。巻き込まれ女王と言ってもいいくらいですね。そんなクイーンには、はい、この依頼のバックアップで決定です」
「クイーンって……」
褒め言葉というか、釣るための単語に気を取られているうちに話をまとめられてしまった。
「同盟領のこの山道に、たまにサルの軍団が襲ってくると報告があります。まだ詳細は決まっていませんが、今後の作戦でこの道を使う可能性がありますので事前に討伐してください。……ただし、人員増と人材育成を兼ねて新人依頼にしてあります。一石二鳥も三鳥も狙ってますので、しっかりしてくださいね」
眼鏡っ娘の突き出した依頼書の内容は、次の通り。
【森の中の道でのサル軍団退治】
・新人六人の戦力で幌馬車二台を使い偽装商隊を組織。初華はバックアッパーとして参加
・まれにここを通る商隊を襲うというサル軍団に襲ってもらい、返り討ちにする
・襲われない可能性もあるが、巻き込まれのプロである初華がいるので襲われる可能性は高い
・新人は襲ってきたサル軍団を各自の武器を持って返り討ちにする
・敵の正体は、「みざる・いわざる・きかざる」。つまり、実ザル、岩ザル、着化ザル。
・実ザルは、腐った実や突起のある堅果などを投げて牽制をしてくる
・岩ザルは、岩のハンマーを振るう近接戦闘タイプ。石を投げることも
・着化ザルは、鎧で着飾り耐久力に長ける近接戦闘タイプ。ただし攻撃力は殴る蹴るで岩ザルよりは劣る
「……いいけど、ドメさんがわざわざ言いに来たっていうことは重要な依頼よね? それが新人依頼でいいの?」
「敵が歪虚ではなくケモノですからね。ただ、安全な道を確保しておくという大切な任務です。もしくは、この道を押さえておく、という行為自体がとても重要なんです」
初華、ピンと来た。
「ああ。先に注目させておく、ということね」
「……本当に、初華さんの良くも悪くも目立ってしまう体質には期待しています」
殊勝に頭を下げる眼鏡っ娘係員だった。
リプレイ本文
●
「パカさんに乗るのも久しぶりですよー」
森の中の道で、レネット=ミスト(ka6758)が気持ち良さそうに言う。騎乗するゴースロン種の馬「パカさん」の歩みは丁寧でリズミカルだ。
その前方と後方には幌馬車。
一行はすでに偽装商隊として問題の道を通っている。
「レネットちゃん、やさしーねー」
そこに、同じくゴースロン種に跨った雅・彩楓(ka6745)が寄って来た。
「それがしは神子を目指している身ですからっ」
レネット、にこぱ。
これに彩楓は目を丸くした。
「え? ええっと……どうしましたです?」
「ううん……レネットちゃん、強いねー」
彩楓、言い直した。これにわたわたするレネット。
「はわ。それがし、強いとかはではないのです……」
「いや。わたし、相手が雑魔――歪虚じゃないのは初めてなんだ」
彩楓、視線を落とした。躊躇わずに斬れるだろうか、と誰にも聞こえない呟きが漏れる。
「そりゃ……少し、可哀想な気もするですが悪い事はしちゃダメなのですよっ!」
猿が倒された場面を想像したか、レネットも少し表情を暗くしたが元気に盛り立てた。
「そうだね……私も、もっと強くならないと」
先生……とつぶやいていた彩楓、元気をもらってぐっと顔を上げた。
二人の背後には、御者を務める南那初華(kz0135)がいる。
その横に竜胆(ka6789)が寄せた。
「あ、竜担さん。今回もその馬?」
初華、にっこり指摘。
「やっぱ落ち着くからな! それより巻き込まれ体質だっけ? ってのも大変なんだなぁ」
豪快に言ったと思えばしみじみと同情したり。
「ちょ、そんなんじゃないよー」
「あたしも少しばっかしはそういうケはあるけど、アンタのはお偉いさんお墨付きだもんな……」
わたわた初華に腕組みして唸る竜胆。
賑やかなところにまた一騎、前の馬車周辺から下がって来た。
「えらく呑気ね。……確かに襲われる任務だけど」
姿勢よく騎乗している舞鶴・鈴香(ka6703)が呆れ気味に。
「あん、ごめんなさい。油断してるわけじゃないんだけど」
「まあ、用心棒は慣れてますから良いですが」
言い訳する初華に落ち着いた口調の鈴香。
「ほへ? 用心棒?」
「へー、すげぇなぁ」
「まさか用心棒の任を外され用心棒をすることになろうとは……」
涼香、二人から注目を浴びてしまい逃げるように視線を外す。
そこで初華が言い放つ。
「それじゃマルチ用心棒だね!」
「……」
あの主人は何を考えてるのやら、と思ったところに初華の声。涼香、こののんびり女性も何を考えてるのやら、な呆れ顔に。
「にぎやかだな」
ここでソティス=アストライア(ka6538)が最後方から愛馬を急かして上がって来た。
「あは……思わずいつものクレープ焼いてるような気分になっちゃって」
「いいか? 向こうは地の利と戦法で我々に勝る、敵有利と知れば襲ってくるだろう。襲い方は主に2パターンを考える、つまり包囲襲撃か陽動と本命……」
構わず今後の手筈を話すソティスだったが、初華の言葉に気付き言葉を切った。
「……今、何と?」
「え? クレープ屋台で働いてる時みたいな気分になっちゃった、って……」
「クレープ屋か!? いつ営業してる? どこでだ? 店休日は?」
くわ、と初華に問い掛けてはっとするソティス。
「その……すまない。とにかく包囲と陽動に気を付けろ」
こほん、と言い直して下がるのだった。
「ええと、ソティスさんは多分隠れ甘党、と……」
初華、しっかり覚える。
この時、先頭の馬車。
「くす……」
御者席でリュンルース・アウイン(ka1694)がこっそり微笑していた。
手綱はゆったり。のんびり進行。
背後から少し聞こえる会話が楽しそうで、こちらも楽しい気分になったのだ。
「……」
その隣へ、戦馬に乗り一番前を警備していたソレル・ユークレース(ka1693)が速度を落として下りて来た。
「あ。速度、遅すぎたかな?」
リュンルース、ソレルの顔を見上げて聞く。
「いや。このくらいのほうがいいのかもしれん」
「一番負担のかかる先頭。責任、感じてしまうよね?」
飄々と言うソレルに、おっとりしたリュンルースの声。これにふっと微笑する。
「気負いすぎてるつもりはないんだがな」
「でも、おかげで後ろはあんなに楽しそう」
「そうだな」
二人の静かなやり取り。ただ、それ以上はない。
温かい日差しを浴びながら、周りに注意を払いつつ進行する。
●
そんなこんなしてるうち、異変が。
――ひゅん……。
「え?」
「腐った果実だな」
先頭の馬車に赤くて柔らかな果実が飛んで来た。狙いは御者のソレルだったが命中はせず、ぺしゃりと馬車に当たって赤く弾けていた。
同時に――いや、すでに森の左前方ではがさがさと音がしている。
そんな木々のざわめきが津波のように物凄いスピードで押し寄せて来た!
『きっきー!』
「来たか」
「こちらへ」
ソレル、馬車の左側へと戦馬を移動させる。リュンルースは馬車を右へ。
そして驚愕するッ!
――がさっ!
「何?」
木々の間から最初に飛び出したサルの跳躍が、とても高く長いのだ。
軽く騎乗したソレルを飛び越してしまうような高さでロングジャンプ。一気に馬車の幌に体当たりし、そこをクッションにうまく着地されてしまった。
一気に取り付かれた形だ。
さらに後続が、今度は地を這うように、さらに人の目線の高さ程度の高さで飛んでくる。
もちん幅もある。六匹程度なのにそれ以上の迫力がある。上下左右に広く注意が広くなるためだ。
「襲い慣れてるな?」
ソレルの呟き。
「いけない」
背後からはリュンルースのアイスボルト。
「氷の花、咲かすといい」
かきん、と氷のかけらを散らし一瞬止まる敵のサル一匹。隊列から遅らせた。
そしてソレル。
その場で敵を待つなどということはしていないッ!
簡易防具を着込んだ中央にいるサルに狙いを定め一気に寄せる。
その途上でぐっと引いた蒼機鎌「S=Cビスカリア」の先端が、かたんかたんと変形。鎌っぽい形状になるとマテリアルの光刃を展開していた。
「あいにく防御を固めるのは得意じゃねえんだ」
振り抜く光の刃。騎乗なのでチャージングで威力が上がる!
――がきっ……。
攻撃を受けたサル、吹っ飛ぶ。ただ、健在。がっしりと身を固める構え。
「……ふん、防御を固めるのは得意のようだな」
だが、これでいいという表情。
(なぜならこいつはボスザルだ)
周りの動きは鈍ると見る――。
――がきっ!
「あっ……どうどう!」
リュンルースが一転、慌てていた。馬車の馬が落ち着きをなくしたのだ。
だが暴れたり急発進はなかった。
何と、最初に襲って来たサルが馬車の車輪にY字型の太い枝をかましたのだ。これで馬車はびくともしない。
そこへ岩ハンマーを持った岩ザルが飛び込んで来た。
狙いは馬だ!
「間に合って!」
リュンルース、銀霊剣「パラケルスス」を鞘ごと持つと咄嗟に身を投げる!
――どかっ。
『うっ、きー!』
手応えに喜ぶ岩ザル。
見事にリュンルースに入っている。
しかしその瞳はひるまない。怯えない。昂らないッ!
「心配、かけるわけにはいかないから」
淡々と話し、淡々と見詰め、そして静かに抜刀。引く岩ザルだが銀色の刃が伸びてバッサリと斬る。
ただ、次に実ザルが接近して殴り掛かって来ているぞ。
この敵なら自分でも、と舐められているッ!
時は若干遡り、アイスボルト命中時。
「多数対多数か…よかろう、焼き尽くしてくれるわ!」
最後方でブルーシルバーの狼――いや、ソティスが聖書「クルディウス」を持ち中空に魔法陣展開。青白い炎を纏った狼のエネルギー体を召喚しフレアカノン。青白い火球が飛んでいき狼は消える。
「食べ物欲しいならこれでも食らっちゃえ!」
中衛の彩楓は持参物からローストチキンを投擲。
この時、フレアカノンが敵後方で炸裂。ローストチキンはサルたちの目の前を飛んで過ぎて行った。
外れである。
いや、ソティスは会心の声で叫んでいるぞ。
「……まあいい」
「よっしゃあ! 行っくぜー!」
涼香、腰溜めの日本刀「骨喰」の柄に手を掛け出る。
同時に竜胆もグレートソード「エアリアル」を持ち上げて突撃体勢。
「プロテクションをかけるですっ」
「竜胆さん、まるで火の球ね」
レネットは急いで蒼機杖をぶんぶん派手に振って味方にプロテクション。
初華は目の前を急ぐ竜胆を見て感嘆していたり。
その時、ソティスが改めて声を張ったッ!
「引き付けはこれでいい。……後ろ! 包囲、来るぞ!」
前はわざと外し横に散るなどさせず一直線に来るよう誘って味方に任せ、自身はぐるんと百八十度向きを変えた!
「ッ横だ! 気をつけろ!」
「来てるです!」
続いて反対の横を振り向く竜胆とレネット。
「……どうしますの?」
横目で冷静に味方に聞く涼香。陽動は考えていた。だが、連携の部分で自信がない。これまでは一人で戦って来た。
「あたしが行くぜ!」
竜胆、振り返る。
先と同じように六匹程度のサルが横と上下に幅広く散り迫力を持ってひとっ飛びしてきていた。
ちなみに、竜胆も涼香も馬から下りていた。馬車に挟まれた中間地点は広いわけではない。急な展開には一番対応できる態勢だ。
「了解……」
涼香、こくと頷き迷わず前に踏み込むのだった。
「戦いはしたことがないですが……それがし、ここで皆さんを癒すことなら出来るですっ」
レネットはむやみに動かず中間点を取ることにする。
●
右後方からの一団も統制が取れていた。まずはロングジャンプした一匹が車輪をロック。
そして後続が次々と……。
『ききゃっ!』
幌馬車に憑りつこうとした一匹、青白い炎を食らって転がった。
射線の向こうに、瞳が蒼く輝き青白い炎のオーラを纏ったソティスがいる!
「……さあ、狩りの時間だ。大人しく焼かれるがいい!」
ソティス、ゆらりと籠手「魔滅」を着けた手の平をかざすと複数の魔法陣が踊るように出現。青白き炎の狼のエネルギー体複数が召喚されると火球を吐き出した。それが一つになって……。
――どぉん……。
「どうだ!」
フレイムレイン、炸裂!
一瞬の炎でサルたちが防御姿勢を取る中、新たな影が突っ込んできた。
「聞いて驚け見て驚け! これが活発・快活・火の玉ガールだ!」
竜胆である!
頭上に掲げた剣はグレートソード「エアリアル」。両手でがっちり持ち振り下ろす。
刹那、渦巻くような光を帯びる!
リーチ、長いッ!
『き……』
岩ザル、一匹昇天!
そしてソティス。
「貴様がボスか、だが焼かれて死ね!」
中央の着化ザルに再びフレイムレ……いや、少し火球が小さい。火力を下げ手数を重視したヒートシャワーだ。
どぉん、と再び炸裂した時、彩楓。
「え? そっちの方がひどいの?」
馬から下りて振り返った。
実際、ソティスの範囲攻撃を一発食らった時点でサルたちは横に移動。乱戦を狙うべく馬車と馬車の間へ位置取りを変えようとしていた。
「ちょっと、お願い!」
初華、馬車の馬を守ろうとするがお役目上、簡単に手は出せない。
「初華さん、それがしが杖で叩くですよ!」
いい位置にいたレネット、蒼機杖をぶうん、ぶうんと振り回す。確実に当てるより近付けないような動き。それでも見切られ実ザルからの投擲を食らう。その隙に他のサルが来る。
「パカさんも後ろ蹴りでお願いしますですよー!」
時間稼ぎするですよー、ととにかく馬も暴れさせる。
そこへ、試作振動刀「オートMURAMASA」の切っ先が地面を擦りながら赤く発火するッ!
「わたしが守るよ! ぐれんざ~ん!」
下段から豪快な一撃が岩ざるを吹っ飛ばす。
『ききっ』
横から着化ザルの一撃。これは大きな剣をかざして受け流し。この隙に実ザルから堅果を投げられゴツンと食らうがひるまない。いや、ゴツンゴツンと連続で来ている。
「片っ端から紅蓮斬で守るんだから!」
再び赤い炎を燃やして下段から切り上げ。果敢に戦う。
時は遡り、ソレルが最初にチャージングをした後。
ソティスのわざと外した一撃が森の奥に着弾する。彩楓の投げたローストチキンが飛んでいく。
そして涼香が馬車の影から飛び出してきた。
「舞います……」
きらん、と陽光を跳ねて日本刀「骨喰」の刀身が円弧を描く。涼香の着物「金剛力士」の袂が美しくなびく。
その軌道は着化ザルをバッサリ。
いや、さすがに簡易の鎧が切れただけ。
「もう一つ」
くるりと舞い、もう一撃。身ザルからの攻撃にも集中力を切らさずまず一匹仕留める。
この時、ソレル。
背後で騒ぐ馬に気付いた。
「ん?」
振り向くとリュンルースが襲われているではないか。
「ルース!」
踏み込みは一気だ。先ほどより鬼気迫っている!
――どしっ!
見事、リュンルースに襲い掛かっていた実ザルを吹き飛ばし昇天させ、先に攻撃を受けたがソレルに激しく打ちかかって来た岩ザルに反撃。激しい強打を見舞って止めを刺していた。
「……ありがとう」
「信頼してるさ」
見つめ合う瞳と、一見噛み合わない……いや、響きはひどくしっくりくる言葉のやり取り。
そこに、実ザルからの攻撃。
きっ、と振り返るソレル。リュンルースのアイスボルトが飛んでいくが、それを追うほどの勢いで到達し……掻っ捌いて息の根を止めた。
「…お仕置き」
その隣では、ボスの着化ザルに涼香が唐竹割りでぐっさり。
「次……」
すぐに起き上がり剣心一如の構え。そして次の敵を探す。凛とした姿で、戦闘スタイルの違いとその凛々しさにひゅっ、と口笛を鳴らすソレル。
「…はぅあぁ…っ、やっと…お、終わったのです…?」
レネットは肩で息をしている。
もう、どちらのサルもすべて討ち果たしていた。
●
「結局、ボスは簡単な指示だけだったな……猿は狼に捕食されるのがお似合いだということだ」
ソティスがこともなげに言いおにぎりに手を伸ばす。
「巣は探さなくていいかなぁ?」
彩颯は指を舐めながら周りの森を気にする。
「近くに気配はなかった」
涼香が偵察から戻り、白茶をずずず。
「皆さんの傷は、それがしが癒すのです!」
「いや、大した傷じゃない」
「いいじゃない、ソル」
横では張り切るレネットに手短に遠慮するソレル。そしてリュンルースが白茶を淹れつつくすくす。
「あ。ここらのサル、移動する習性があるんだって……そうそう、リュンルースさん。白茶はガラス器に淹れると茶葉が上下した様子が見れて楽しいの」
初華、事前の知識を伝え探索に出ようとする彩颯を止める。
「んー、やっぱり弁当って言ったらこれだよなっ」
竜胆は手作りの梅干しお握りを皆に振る舞いつつ自分もぱくぱく。
休憩後、出発したがもう襲撃はなかった。
依頼は成功である。
「パカさんに乗るのも久しぶりですよー」
森の中の道で、レネット=ミスト(ka6758)が気持ち良さそうに言う。騎乗するゴースロン種の馬「パカさん」の歩みは丁寧でリズミカルだ。
その前方と後方には幌馬車。
一行はすでに偽装商隊として問題の道を通っている。
「レネットちゃん、やさしーねー」
そこに、同じくゴースロン種に跨った雅・彩楓(ka6745)が寄って来た。
「それがしは神子を目指している身ですからっ」
レネット、にこぱ。
これに彩楓は目を丸くした。
「え? ええっと……どうしましたです?」
「ううん……レネットちゃん、強いねー」
彩楓、言い直した。これにわたわたするレネット。
「はわ。それがし、強いとかはではないのです……」
「いや。わたし、相手が雑魔――歪虚じゃないのは初めてなんだ」
彩楓、視線を落とした。躊躇わずに斬れるだろうか、と誰にも聞こえない呟きが漏れる。
「そりゃ……少し、可哀想な気もするですが悪い事はしちゃダメなのですよっ!」
猿が倒された場面を想像したか、レネットも少し表情を暗くしたが元気に盛り立てた。
「そうだね……私も、もっと強くならないと」
先生……とつぶやいていた彩楓、元気をもらってぐっと顔を上げた。
二人の背後には、御者を務める南那初華(kz0135)がいる。
その横に竜胆(ka6789)が寄せた。
「あ、竜担さん。今回もその馬?」
初華、にっこり指摘。
「やっぱ落ち着くからな! それより巻き込まれ体質だっけ? ってのも大変なんだなぁ」
豪快に言ったと思えばしみじみと同情したり。
「ちょ、そんなんじゃないよー」
「あたしも少しばっかしはそういうケはあるけど、アンタのはお偉いさんお墨付きだもんな……」
わたわた初華に腕組みして唸る竜胆。
賑やかなところにまた一騎、前の馬車周辺から下がって来た。
「えらく呑気ね。……確かに襲われる任務だけど」
姿勢よく騎乗している舞鶴・鈴香(ka6703)が呆れ気味に。
「あん、ごめんなさい。油断してるわけじゃないんだけど」
「まあ、用心棒は慣れてますから良いですが」
言い訳する初華に落ち着いた口調の鈴香。
「ほへ? 用心棒?」
「へー、すげぇなぁ」
「まさか用心棒の任を外され用心棒をすることになろうとは……」
涼香、二人から注目を浴びてしまい逃げるように視線を外す。
そこで初華が言い放つ。
「それじゃマルチ用心棒だね!」
「……」
あの主人は何を考えてるのやら、と思ったところに初華の声。涼香、こののんびり女性も何を考えてるのやら、な呆れ顔に。
「にぎやかだな」
ここでソティス=アストライア(ka6538)が最後方から愛馬を急かして上がって来た。
「あは……思わずいつものクレープ焼いてるような気分になっちゃって」
「いいか? 向こうは地の利と戦法で我々に勝る、敵有利と知れば襲ってくるだろう。襲い方は主に2パターンを考える、つまり包囲襲撃か陽動と本命……」
構わず今後の手筈を話すソティスだったが、初華の言葉に気付き言葉を切った。
「……今、何と?」
「え? クレープ屋台で働いてる時みたいな気分になっちゃった、って……」
「クレープ屋か!? いつ営業してる? どこでだ? 店休日は?」
くわ、と初華に問い掛けてはっとするソティス。
「その……すまない。とにかく包囲と陽動に気を付けろ」
こほん、と言い直して下がるのだった。
「ええと、ソティスさんは多分隠れ甘党、と……」
初華、しっかり覚える。
この時、先頭の馬車。
「くす……」
御者席でリュンルース・アウイン(ka1694)がこっそり微笑していた。
手綱はゆったり。のんびり進行。
背後から少し聞こえる会話が楽しそうで、こちらも楽しい気分になったのだ。
「……」
その隣へ、戦馬に乗り一番前を警備していたソレル・ユークレース(ka1693)が速度を落として下りて来た。
「あ。速度、遅すぎたかな?」
リュンルース、ソレルの顔を見上げて聞く。
「いや。このくらいのほうがいいのかもしれん」
「一番負担のかかる先頭。責任、感じてしまうよね?」
飄々と言うソレルに、おっとりしたリュンルースの声。これにふっと微笑する。
「気負いすぎてるつもりはないんだがな」
「でも、おかげで後ろはあんなに楽しそう」
「そうだな」
二人の静かなやり取り。ただ、それ以上はない。
温かい日差しを浴びながら、周りに注意を払いつつ進行する。
●
そんなこんなしてるうち、異変が。
――ひゅん……。
「え?」
「腐った果実だな」
先頭の馬車に赤くて柔らかな果実が飛んで来た。狙いは御者のソレルだったが命中はせず、ぺしゃりと馬車に当たって赤く弾けていた。
同時に――いや、すでに森の左前方ではがさがさと音がしている。
そんな木々のざわめきが津波のように物凄いスピードで押し寄せて来た!
『きっきー!』
「来たか」
「こちらへ」
ソレル、馬車の左側へと戦馬を移動させる。リュンルースは馬車を右へ。
そして驚愕するッ!
――がさっ!
「何?」
木々の間から最初に飛び出したサルの跳躍が、とても高く長いのだ。
軽く騎乗したソレルを飛び越してしまうような高さでロングジャンプ。一気に馬車の幌に体当たりし、そこをクッションにうまく着地されてしまった。
一気に取り付かれた形だ。
さらに後続が、今度は地を這うように、さらに人の目線の高さ程度の高さで飛んでくる。
もちん幅もある。六匹程度なのにそれ以上の迫力がある。上下左右に広く注意が広くなるためだ。
「襲い慣れてるな?」
ソレルの呟き。
「いけない」
背後からはリュンルースのアイスボルト。
「氷の花、咲かすといい」
かきん、と氷のかけらを散らし一瞬止まる敵のサル一匹。隊列から遅らせた。
そしてソレル。
その場で敵を待つなどということはしていないッ!
簡易防具を着込んだ中央にいるサルに狙いを定め一気に寄せる。
その途上でぐっと引いた蒼機鎌「S=Cビスカリア」の先端が、かたんかたんと変形。鎌っぽい形状になるとマテリアルの光刃を展開していた。
「あいにく防御を固めるのは得意じゃねえんだ」
振り抜く光の刃。騎乗なのでチャージングで威力が上がる!
――がきっ……。
攻撃を受けたサル、吹っ飛ぶ。ただ、健在。がっしりと身を固める構え。
「……ふん、防御を固めるのは得意のようだな」
だが、これでいいという表情。
(なぜならこいつはボスザルだ)
周りの動きは鈍ると見る――。
――がきっ!
「あっ……どうどう!」
リュンルースが一転、慌てていた。馬車の馬が落ち着きをなくしたのだ。
だが暴れたり急発進はなかった。
何と、最初に襲って来たサルが馬車の車輪にY字型の太い枝をかましたのだ。これで馬車はびくともしない。
そこへ岩ハンマーを持った岩ザルが飛び込んで来た。
狙いは馬だ!
「間に合って!」
リュンルース、銀霊剣「パラケルスス」を鞘ごと持つと咄嗟に身を投げる!
――どかっ。
『うっ、きー!』
手応えに喜ぶ岩ザル。
見事にリュンルースに入っている。
しかしその瞳はひるまない。怯えない。昂らないッ!
「心配、かけるわけにはいかないから」
淡々と話し、淡々と見詰め、そして静かに抜刀。引く岩ザルだが銀色の刃が伸びてバッサリと斬る。
ただ、次に実ザルが接近して殴り掛かって来ているぞ。
この敵なら自分でも、と舐められているッ!
時は若干遡り、アイスボルト命中時。
「多数対多数か…よかろう、焼き尽くしてくれるわ!」
最後方でブルーシルバーの狼――いや、ソティスが聖書「クルディウス」を持ち中空に魔法陣展開。青白い炎を纏った狼のエネルギー体を召喚しフレアカノン。青白い火球が飛んでいき狼は消える。
「食べ物欲しいならこれでも食らっちゃえ!」
中衛の彩楓は持参物からローストチキンを投擲。
この時、フレアカノンが敵後方で炸裂。ローストチキンはサルたちの目の前を飛んで過ぎて行った。
外れである。
いや、ソティスは会心の声で叫んでいるぞ。
「……まあいい」
「よっしゃあ! 行っくぜー!」
涼香、腰溜めの日本刀「骨喰」の柄に手を掛け出る。
同時に竜胆もグレートソード「エアリアル」を持ち上げて突撃体勢。
「プロテクションをかけるですっ」
「竜胆さん、まるで火の球ね」
レネットは急いで蒼機杖をぶんぶん派手に振って味方にプロテクション。
初華は目の前を急ぐ竜胆を見て感嘆していたり。
その時、ソティスが改めて声を張ったッ!
「引き付けはこれでいい。……後ろ! 包囲、来るぞ!」
前はわざと外し横に散るなどさせず一直線に来るよう誘って味方に任せ、自身はぐるんと百八十度向きを変えた!
「ッ横だ! 気をつけろ!」
「来てるです!」
続いて反対の横を振り向く竜胆とレネット。
「……どうしますの?」
横目で冷静に味方に聞く涼香。陽動は考えていた。だが、連携の部分で自信がない。これまでは一人で戦って来た。
「あたしが行くぜ!」
竜胆、振り返る。
先と同じように六匹程度のサルが横と上下に幅広く散り迫力を持ってひとっ飛びしてきていた。
ちなみに、竜胆も涼香も馬から下りていた。馬車に挟まれた中間地点は広いわけではない。急な展開には一番対応できる態勢だ。
「了解……」
涼香、こくと頷き迷わず前に踏み込むのだった。
「戦いはしたことがないですが……それがし、ここで皆さんを癒すことなら出来るですっ」
レネットはむやみに動かず中間点を取ることにする。
●
右後方からの一団も統制が取れていた。まずはロングジャンプした一匹が車輪をロック。
そして後続が次々と……。
『ききゃっ!』
幌馬車に憑りつこうとした一匹、青白い炎を食らって転がった。
射線の向こうに、瞳が蒼く輝き青白い炎のオーラを纏ったソティスがいる!
「……さあ、狩りの時間だ。大人しく焼かれるがいい!」
ソティス、ゆらりと籠手「魔滅」を着けた手の平をかざすと複数の魔法陣が踊るように出現。青白き炎の狼のエネルギー体複数が召喚されると火球を吐き出した。それが一つになって……。
――どぉん……。
「どうだ!」
フレイムレイン、炸裂!
一瞬の炎でサルたちが防御姿勢を取る中、新たな影が突っ込んできた。
「聞いて驚け見て驚け! これが活発・快活・火の玉ガールだ!」
竜胆である!
頭上に掲げた剣はグレートソード「エアリアル」。両手でがっちり持ち振り下ろす。
刹那、渦巻くような光を帯びる!
リーチ、長いッ!
『き……』
岩ザル、一匹昇天!
そしてソティス。
「貴様がボスか、だが焼かれて死ね!」
中央の着化ザルに再びフレイムレ……いや、少し火球が小さい。火力を下げ手数を重視したヒートシャワーだ。
どぉん、と再び炸裂した時、彩楓。
「え? そっちの方がひどいの?」
馬から下りて振り返った。
実際、ソティスの範囲攻撃を一発食らった時点でサルたちは横に移動。乱戦を狙うべく馬車と馬車の間へ位置取りを変えようとしていた。
「ちょっと、お願い!」
初華、馬車の馬を守ろうとするがお役目上、簡単に手は出せない。
「初華さん、それがしが杖で叩くですよ!」
いい位置にいたレネット、蒼機杖をぶうん、ぶうんと振り回す。確実に当てるより近付けないような動き。それでも見切られ実ザルからの投擲を食らう。その隙に他のサルが来る。
「パカさんも後ろ蹴りでお願いしますですよー!」
時間稼ぎするですよー、ととにかく馬も暴れさせる。
そこへ、試作振動刀「オートMURAMASA」の切っ先が地面を擦りながら赤く発火するッ!
「わたしが守るよ! ぐれんざ~ん!」
下段から豪快な一撃が岩ざるを吹っ飛ばす。
『ききっ』
横から着化ザルの一撃。これは大きな剣をかざして受け流し。この隙に実ザルから堅果を投げられゴツンと食らうがひるまない。いや、ゴツンゴツンと連続で来ている。
「片っ端から紅蓮斬で守るんだから!」
再び赤い炎を燃やして下段から切り上げ。果敢に戦う。
時は遡り、ソレルが最初にチャージングをした後。
ソティスのわざと外した一撃が森の奥に着弾する。彩楓の投げたローストチキンが飛んでいく。
そして涼香が馬車の影から飛び出してきた。
「舞います……」
きらん、と陽光を跳ねて日本刀「骨喰」の刀身が円弧を描く。涼香の着物「金剛力士」の袂が美しくなびく。
その軌道は着化ザルをバッサリ。
いや、さすがに簡易の鎧が切れただけ。
「もう一つ」
くるりと舞い、もう一撃。身ザルからの攻撃にも集中力を切らさずまず一匹仕留める。
この時、ソレル。
背後で騒ぐ馬に気付いた。
「ん?」
振り向くとリュンルースが襲われているではないか。
「ルース!」
踏み込みは一気だ。先ほどより鬼気迫っている!
――どしっ!
見事、リュンルースに襲い掛かっていた実ザルを吹き飛ばし昇天させ、先に攻撃を受けたがソレルに激しく打ちかかって来た岩ザルに反撃。激しい強打を見舞って止めを刺していた。
「……ありがとう」
「信頼してるさ」
見つめ合う瞳と、一見噛み合わない……いや、響きはひどくしっくりくる言葉のやり取り。
そこに、実ザルからの攻撃。
きっ、と振り返るソレル。リュンルースのアイスボルトが飛んでいくが、それを追うほどの勢いで到達し……掻っ捌いて息の根を止めた。
「…お仕置き」
その隣では、ボスの着化ザルに涼香が唐竹割りでぐっさり。
「次……」
すぐに起き上がり剣心一如の構え。そして次の敵を探す。凛とした姿で、戦闘スタイルの違いとその凛々しさにひゅっ、と口笛を鳴らすソレル。
「…はぅあぁ…っ、やっと…お、終わったのです…?」
レネットは肩で息をしている。
もう、どちらのサルもすべて討ち果たしていた。
●
「結局、ボスは簡単な指示だけだったな……猿は狼に捕食されるのがお似合いだということだ」
ソティスがこともなげに言いおにぎりに手を伸ばす。
「巣は探さなくていいかなぁ?」
彩颯は指を舐めながら周りの森を気にする。
「近くに気配はなかった」
涼香が偵察から戻り、白茶をずずず。
「皆さんの傷は、それがしが癒すのです!」
「いや、大した傷じゃない」
「いいじゃない、ソル」
横では張り切るレネットに手短に遠慮するソレル。そしてリュンルースが白茶を淹れつつくすくす。
「あ。ここらのサル、移動する習性があるんだって……そうそう、リュンルースさん。白茶はガラス器に淹れると茶葉が上下した様子が見れて楽しいの」
初華、事前の知識を伝え探索に出ようとする彩颯を止める。
「んー、やっぱり弁当って言ったらこれだよなっ」
竜胆は手作りの梅干しお握りを皆に振る舞いつつ自分もぱくぱく。
休憩後、出発したがもう襲撃はなかった。
依頼は成功である。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 リュンルース・アウイン(ka1694) エルフ|21才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/04/22 15:02:49 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/04/19 11:05:43 |