• 郷祭1014

【郷祭】特急便よ、風より速く

マスター:えーてる

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/24 19:00
完成日
2014/11/02 01:35

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「はぁ……!?」
 商人の男は悲鳴を上げた。
「納期に間に合わない!?」
 工房側の小間使いがぺこぺこ頭を下げるのを見て、男は頭を抱えた。
 ジェオルジの村長祭といえば、商人たちの稼ぎ時だ。祭りに向けて大量の物資が流通する。特に秋の村長祭は収穫シーズンであるし、今回は一層力を入れているようであるから、乗り遅れる訳にはいかない。
 この商会も、ジェオルジへと様々な物資を輸送することになっているのだが……。
 肝心の物資の生産が遅れてしまったというのだ。
「どうする……間に合わないぞ、これじゃあ」
 納品は明日。だが輸送して納品するまでの余裕がなさすぎる。元々期日ギリギリの依頼だったのだ。街道をもたもた進んでいたのでは間に合わない……。
「……いや……だが」
 しかし、男は要らぬ発想をしてしまった。
 つまり、街道を使わなければいいのだ、と。
 男は振り返って、部下に指示を出した。
「……例のルートを使うぞ。上に許可を取れ。責任は俺が持つ。ハンターオフィスに連絡を入れろ」


「今回の依頼は、馬車の護衛となっています」
 受付嬢イルムトラウトは、机の上に地図を広げた。
 同盟の主要街道はおおよそ環状である。輪の東端に極彩色の街ヴァリオスがあり、そこから時計回りに、南東の冒険都市リゼリオ、南西の港湾都市ポルトワール、西の蒸気都市フマーレ、北の農業地域ジェオルジ、と繋がっている。
 同盟領中央部や、ポルトワール南方の半島などは、ここは置いておこう。
 イルムの細い指がフマーレを指差した。
 フマーレだけは環状からやや外れ、湾岸沿いに王国へ続く街道に入って少し進んだ地点にある。
「本来フマーレからジェオルジへと向かうルートは、こうなります」
 つつ、と指先が紙面を擦り、街道をなぞる。
 王国街道をやや戻り、環状街道へ入ってこれを北東へ走ると農業推進地域ジェオルジに辿り着くわけだが……。
「ですが今回は、先方の納期が非常に厳しい状態にあるとのことです。そのため、大胆なショートカットを行います」
 その指先が今度は不穏なルートをなぞった。
「フマーレを発するこの輸送用馬車は、出立時点から王国街道を外れて一直線に北東へと走り、環状街道の中途へ合流します。そこで別の馬車に荷を積み替え、街道を北上……という手筈のようです。そして、今回皆様に護衛して頂くのは、この街道外のルートの間のみです」
 全く使われていないルートではない。時間を少しでも短縮したい商人たちが使うこともあった。馬車が通れるだけのルートは既に判明しているし、やはり普通に街道を行くよりは早い。
 が――。
「狼や熊など、野生動物の生息区域と見事に被っています。加えて悪路の数々に、一部は崖沿いに走るルートなどもあり、事故の多いルートなのです。極めつけは、事故で馬車が消えてもおかしくないという点に目をつけた盗賊たちが待ち構えている場合もあると……」
 散々じゃねぇか、と誰かが言った。
 正気であればこんなルートを使う奴はいない。いないが、そういった抜け道はいつでもどこでも重宝されてしまうものだ。
 こういった、一刻も早く輸送せねばならないという時などは。
「危険地帯を走る馬車を護衛し、街道まで無事に送り届けるのが今回の依頼となります。なお依頼の性質上、どうしようもない危機に陥った場合は積荷の放棄が認められています。その場合でも最低限の報酬は支払うそうです」
 物資は主に包丁などの工業品と、鮮魚などの食料、そして高価な工芸品である。
 街道に着いた時点での物資の状態、馬車の損害、到着までの時間に応じて追加報酬を出すとのことだ。
「ルート上、想定されうる危険に関してはお手元の書類に纏めておきましたが、想定外の自体も起こりうるかと思います。十分留意してください。……それでは、よろしくお願い致します」
 一礼するイルムに見送られ、ハンターたちは件の商会へと向かった。

リプレイ本文


「へ、へぇ……高価な積荷、ねぇ」
 レム・K・モメンタム(ka0149)は引きつった笑みを浮かべた。
「高価っちゅうか、重要っちゅうか」
 荷物の固定を厳重にチェックする商人のアカーシャ・ヘルメース(ka0473)は、少し言葉を選んで答えた。
「信用は商人の命やで。そない怯えんでも、積荷壊したらうちらが弁償なんてことにはならへんて」
 とはいうけれど、目がくらむし恐れも抱くわけである。レムはくらくらと馬車を見上げた。
「……い、いけないいけない。ダメよ私、依頼に集中しなきゃ」
 レムは一度頬を叩いて、それから手綱を握り直した。
 馬車は既にフマーレを出発し、街道から今まさに外れようとしていた。ここから先は確実に危険が待っている。
 レムが馬車前方に馬をつけると、同じく馬車前方を走るジルボ(ka1732)が呵々と笑った。
「その通りだぜ嬢ちゃん、護衛ってのは面倒事が付き物なんだ」
 ちらりと振り返り、彼は御者の顔を見た。
「苦労する分、報酬はタンマリ貰わないとな」
 苦笑する御者に満足して、ジルボは視線を前方へ戻す。
「同盟の街道は、このようになっているのですね……」
 馬車の中では、ユージーン・L・ローランド(ka1810)は街道の様子を見て呟いた。
「他国の道をじっくりと見る機会などそうそうありませんから、実に興味深いです」
「えー、そう? 私にはどこも同じに見えるなー。退屈で飽き飽きしちゃう。スリリングな方がいいよ」
 夢路 まよい(ka1328)は馬車に寝転がって、不満そうに唇を突き出した。
「進んで危険な地域に突っ込むとか、楽しいと思わない?」
「護衛に回る身としては、勘弁して貰いたいかな」
 同じく馬車に乗るフラヴィ・ボー(ka0698)は呟いた。
「ただ、最近あちこちで歪虚の話を聞く。不安ばかりじゃ生きづらいだろうし、祭はしっかり成功させてあげたいね」
 遥か前方、斥候として偵察に出るのはシャリファ・アスナン(ka2938)。
「……商売の為とはいえ無茶するね。でも、引き受けたからには守り抜いてみせるよ」
 馬車の後方を警戒するのはエイル・メヌエット(ka2807)だ。
「幸運を味方に、さあ、行きましょう」
 馬車が街道から飛び出して、馬の蹄が野原を掴んだ。

『シャリファだよ。狼の縄張りを見つけた』
 魔導短伝話から通信があり、アカーシャは頷いた。
「数と位置はどないや?」
『3かな。個別で行動してるみたいだ。予測位置よりやや奥まってる。森の入口は安全だから、ボクはそこで待機する』
「了解や。気ぃつけてな」
 魔導短伝話を切ると、どないする?と彼女は馬車を見回した。
「手前で馬車を止め、排除してから向かうのが安全でしょうね」
「けど、あんまりもたもたしている時間はないんじゃない?」
 ユージーンの言葉にまよいが意見し、御者が頷いた。今回は急ぐ必要があるのだ。
「どう思う!」
 フラヴィが声をかけると、ジルボは即答した。
「足を止めるほうが危険だ。駆け抜けたほうがいいだろうよ」
「同感。もたもたしてると、他の奴らも来ると思う」
 レムも同意する。一同は顔を見合わせて頷いた。
「少し速度を上げて、駆け抜けましょう」
 エイルの言うとおりに、馬車は加速を始めた。
「イィーヤッホゥ! 馬なんて初めて乗るけど、中々爽快ね!」
 先導するレムは手綱を打ち鳴らして喝采する。が、次の瞬間には馬にかかった費用を思い出して項垂れた。
「でも、20万Gかぁ……あぁ、孤児院時代は100Gですら贅沢だったのに」
 ぼやくレムに並走するジルボの視界に、シャリファとその馬が映った。
 シャリファが馬を走らせ、エイルに並ぶ。
「足は止めずに突破するわ」
「分かった」
 一行は森の中へと踏み入った。
 然程深くはないが、反面浅くもない、いわば典型的な森だ。適度に光が差し、足場は比較的良好。他にもここを通った者達がいたのだと、馬車の跡から類推できる。
 ジルボは馬上で狼の足跡を見て取った。ぱっと見だが、古いものではない。
「そろそろ来るぜ」
 警戒すること数分、馬車の斜め前方の茂みががさりと鳴った。
「来ましたね!」
 ユージーンが叫ぶと同時に、狼が飛び出してきた。が、馬車は構わず速度を上げ、狼を置き去りにする。
 追いすがる狼へ、シャリファの弓が牽制。それを飛び退いた狼に向かって、エイルのホーリーライトが命中した。
「無理に殺す必要もないわ、先に行きましょう」
 痛みに足を止めた狼を置き去りにして、馬車は森中を掛ける。
「次、右前方! 来るわよ!」
 レムが声を張り上げ、拳銃で飛び出してきた狼の足を止めた。
「ナイスだ!」
 ジルボの猟銃が足を打ち抜き、その脇を馬車が駆け抜けていく。
 三匹目の気配がないまま、馬車は狼のテリトリーを抜け出した。


 シャリファの偵察と厳重な警戒、馬車自体に乗り込んだ人数の少なさもあって、御者の想定以上に進行は快調だった。
「霧中より誘われし、この世ならざる偽りよ」
 まよいは杖を構え、眠りの魔術を解き放った。
「我に仇なす咎人を汝の虜囚とせよ。果てなき夢路に迷えっ、スリープクラウド!!」
 誘導され一箇所に固まっていたコボルドたちが、軒並みその場に寝転んだ。辛うじて範囲を逃れた二匹には矢と銃弾が放たれ、その隙に馬車は猛スピードでその場を去っていく。
「なんや、うちの出番はなさそやなー」
 近接格闘が主のアカーシャは馬車の最後の砦であるが、今の所は荷物の様子を見守る係であった。
「そう言って油断していると、しっぺ返しを食らうのが世の常です」
 ユージーンの言葉にアカーシャは苦笑いで頷いた。
「さて、そろそろ川だね……」
 フラヴィは呟く。川の流れの音が、森の葉擦れに紛れて微かに聞こえていた。
「ここまでは順調だけど、休憩にしましょう。ここから先休めるとも限らないし」
 エイルの言うとおり、予定通りの休息地点で彼らは一時馬を止めた。休みなく走っていた馬たちは皆疲弊していた。
 やや遅れて先行していたシャリファも戻ってくる。
「どうだった?」
「盗賊がいるんじゃないか、とは思う」
 首を捻るシャリファに、ジルボは呟く。
「確たる証拠がなかったか」
 シャリファは頷いた。
「潜伏場所までは。橋の先も見てきたけど……」
 あまり先行し過ぎると合流にも時間がかかる。少なくとも橋近辺にはいないということで、シャリファは一旦引き返してきた。
 フラヴィは馬車の様子を見ている。丈夫に作られているらしく、少なくとも見て分かるような大きな破損はない。補強の必要はなさそうだ。
「馬車は代わりがないからな」
 破損したらそれまでである。少々神経質になるくらいがちょうどいいだろう。
 馬たちも、水や餌を口にしてしばし休息を取っている。
「おつかれさん」
 アカーシャは荷馬の背中をぽんぽんと叩いて、水をやっていた。
「いい子ね、もう少し頑張ってね」
 エイルは馬たちの怪我の有無を撫でて確認しながら、ヒールを行った。傷を癒やす術なので、疲労に対してはあくまで気休めなのだが。

 ややあって、シャリファがまた橋の先へと先行し、馬車も橋を渡り始めた。
 木材を組まれて作られた橋だが、古びている。水場故に腐食も怖い。この上での戦闘は避けたいところだ。
 レムとジルボが橋を渡りきり、馬車が橋に差し掛かった頃、背後から異音がした。
「ゴブリン……!」
 三体のゴブリンが飛び出してきた。エイルは馬を操って少し距離を取る。
 フラヴィは上空に発砲して威嚇するが、敵は怯まず仕掛けてきた。まぁ、馬車とゴブリンの間には人が1人。チャンスのように見えたのだろう。
「馬車はこのまま進めてください。こちらで対処します」
「は、はい!」
 慌てた御者をユージーンはなだめると、ホーリーライトを放った。
「二人とも、川越しに撃てない?」
「やってみるわ!」
「俺に任せろ!」
 まよいの要請にレムとジルボが銃を構え、引き金を絞った。
「そこは通さないわよ」
 馬車が橋を渡る中、エイルはゴブリンの行く手を阻むようにホーリーライトを撃ちこむ。
 それでも飛びかかってきた一匹めがけて、アカーシャの掌底が叩き込まれた。
「そら、寝とれや!」
 すげなく撃退されたゴブリンたちを尻目に、馬車が橋を渡り切る。エイルも馬を走らせて橋を渡ると、そのまま速度を上げた。

「こっちは今の所平穏や、そっちはどないや?」
 アカーシャが魔導短伝話で尋ねると、一拍置いてシャリファが答えた。
『盗賊を見つけた……崖沿いの道の中頃。数は3人見たけど、もう少しいそうだ』
「了解」
 魔導短伝話を切り、アカーシャは馬車の面々を見回す。
「一番忙しいんはこの先らしいで」
「盗賊ですか……」
 ユージーンは渋い顔をした。
 程なく、馬車は森を抜けた。
「へぇ……結構壮観ね」
 エイルが呟く。崖沿いに出来た道とも呼べない通路からは、風を受けて波打つ遠く広がる草原と、そこを一本長く伸びる街道が一望出来た。
「ここを降りればすぐか」
 フラヴィが呟く。確かに、ここから降りれればすぐに街道に入る。後は警戒することもないだろう。
 やがてシャリファが路上に現れ、一行は合流した。
「こっちの銃声を聞いて待機してる。数は5」
「なるほど……そりゃ響くからな、これは」
 ジルボが猟銃をぽんと叩いた。
「道を塞いで回りこんでくるから、馬車を止めずにっていうのは難しいかな」
「馬さんが傷ついたらまずいしねー」
「適度に叩いて追い返すのが一番かしらね」
 まよいの言葉をエイルが引き継ぎ、一行は頷いた。
「ひっ捕らえてる余裕はあらへん。ぱぱっと片付けてさっさといこか」
 アカーシャは言った。

 左手に森を見ながら、馬は崖沿いを走り続ける。森は行くごとに深くなっていき、もう馬車で通るには難しい状態だった。確かに道を塞ぐには丁度いい場所である。
 と、襲撃者に備えながら進行すること暫く。ついに件の盗賊が現れた。3人で道を塞ぐうちの1人があくどい声を上げる。
「へっ、悪いがここは通せんぼだ。命が惜しかったら――」
「続きは夢の中でどうぞ! スリープクラウド!」
 まよいの魔術が先制し、男は眠りに落ちた。
 固まっていた3人のうち2人が一斉に意識を失い、慌てて後方から盗賊たちが飛び出してくる。残った1人が血相を変えて肉薄してくるのを、レムは剣を片手に睨みつけた。
(……悪人とはいえ、相手は人。この剣を振り下ろしたら……殺す事になるの?)
 躊躇いはほんの一瞬。
「――アンタが悪いのよ、悪人ッ!」
 サーベルの一撃をエストックの切っ先が振り払い、レムの刺突が盗賊の胸を突き刺した。
 後方の盗賊たちがダーツや投擲ナイフを構え、投げ放つ。が、フラヴィの盾が機導術によって機敏に動き、ダーツを払い落とした。アカーシャもナイフを拳で打ち払う。
 続けて何かを投げようとする盗賊の機先を制するように銃声が轟いた。フラヴィは銃口をゆっくりと盗賊たちに向け直す。
「高くつく前に手を引いてくれないか。損得を考える頭はあるだろう?」
 それに合わせてエイルとユージーンが魔術を放つ構えを取り、まよいが余裕綽々と杖を構え、ジルボとシャリファが己の獲物を向けた。
「く、くそ。撤退だ」
「か、勝てねぇ……!」
 不利を悟った盗賊たちは、逃げるようにしてその場を去っていった。


 やがて馬車は坂道に差し掛かる。
「落石があるらしいから、頭上注意! 突風にも気をつけましょう!」
 エイルの忠告に皆頷いて、速度を緩めぬまま坂道を下っていく。
 所々に落ちている岩は、恐らく崩れ落ちてきたものなのだろう。馬車は余裕を持ってそれを回避する。
 崖はみるみるうちに高さを増していく。坂道は緩やかだが崖の高さは結構なもので、この高さだと小石が落ちてきても結構危険だ。特に馬に当たるとまずい。
 とその時、丁度小石が降ってきた。
「っと、危ねえ!」
 レムとジルボが馬を操ってそれを回避する。次いで幾らかの小石が馬車に降り注ごうとしていた。
「小さいけど、これくらいなら!」
「馬が危ないな……!」
 エイルの魔術が小石を一つ消し飛ばす。フラヴィも機導砲を放って小石を吹き飛ばした。が、運悪く撃ち漏らした一個が馬にめがけて落ちてくる。
 だが、小石は馬に当たることなく弾かれた。
「ここで止まってしまう訳には行きません。もう少し頑張りましょう」
「もうひと踏ん張りや、こんなとこで躓いてられへんで!」
 ユージーンとアカーシャが咄嗟に受け止めたのである。プロテクションでダメージを軽減はしたが、手の甲にちょっとした傷が入った。ユージーンはアカーシャにヒールをかける。
「デカいのが来るぜ、おい!」
 というジルボの言葉と共に、崖上から今度は大きな石が降ってきた。
「猟撃士じゃないけど……やれる!?」
 レムがデリンジャーを構えて放つが、破壊までは至らない。
「いや、やるんだよ!」
 そう叫んだジルボのマテリアルを込めた一発が、岩を直撃して叩き割った。
「わぁお! 木っ端微塵!」
「はっは~! 俺様に不可能は無い!」
 まよいの喝采をよそに、シャリファの弓とエイルの魔術が細かな破片を払いのける。
「ゴールはもうすぐよ!」
「早く安全な所まで!」
 岩の欠片は馬車の斜め後方に落着した。これには馬も少々驚いたようだが、問題なく前進できている。
 そのまま勢いを殺さず坂を駆け下りて、馬車は草原へと飛び出した。


「助かったよ。これだけ早く到着してくれれば納期には間に合う」
 依頼人の男は気前よく笑うと、報酬を手渡した。
「荷物も無事だ。追加報酬は弾んでおいた」
「ありがとうございます。ここから先、お気をつけてください」
「勿論だとも。君たちの努力はムダにしないさ」
 街道を暫く走った所の、道の駅とでも言うべき休憩所で、商会の男は荷物の積み替えを待っている。
 ハンターの出番はここまでだ。
「お手柄だぜ、相棒」
 ジルボは盗賊たちの顔を連れのパルムに記録させた。今は無理だが、神霊樹まで連れ帰れば、詳細な手配も可能だろう。
「何処に隠れようと徹底的に追い詰めてやる」
 と彼は一人暗く笑った。
 アカーシャは商会の諸々の作業を眺めながら、一つ結論を出した。
「うん、うちはこのルート使わんでおこ……」
「それがいいだろう。切羽詰まらない限り、わざわざリスクを犯す必要はない」
 危険過ぎる、と呟いたアカーシャに、依頼人は笑ってそう言った。
 少し離れた場所で、レムは平原の石に腰掛けて、自分の手を開閉しながら見つめていた。
 先程突き刺した剣が、致命傷になったかは知らない。ただ胸を貫いたのは確かだ。重傷だろう。そのまま死んだかもしれない。
「……あーあ。私、もっと強い人間だと思ってたのになぁ」
 顔を上げると、もう日が沈もうとしていた。
 オレンジ色に染まった草原に、レムは少しだけ目を細めた。

依頼結果

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MVP一覧

  • 運命の反逆者
    レム・K・モメンタムka0149

  • フラヴィ・ボーka0698
  • 森の戦士
    シャリファ・アスナンka2938

重体一覧

参加者一覧

  • 運命の反逆者
    レム・K・モメンタム(ka0149
    人間(紅)|16才|女性|闘狩人
  • 星の慧守
    アカーシャ・ヘルメース(ka0473
    人間(紅)|16才|女性|霊闘士

  • フラヴィ・ボー(ka0698
    人間(蒼)|18才|女性|機導師
  • 夢路に誘う青き魔女
    夢路 まよい(ka1328
    人間(蒼)|15才|女性|魔術師
  • ライフ・ゴーズ・オン
    ジルボ(ka1732
    人間(紅)|16才|男性|猟撃士
  • はるかな理想を抱いて
    ユージーン・L・ローランド(ka1810
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • 森の戦士
    シャリファ・アスナン(ka2938
    人間(紅)|15才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談卓
夢路 まよい(ka1328
人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2014/10/24 17:27:06
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/19 18:12:35