Let's play EggHUNT!!

マスター:鮎川 渓

シナリオ形態
イベント
難易度
易しい
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
寸志
相談期間
5日
締切
2017/05/02 07:30
完成日
2017/05/14 15:54

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「……はい、ではこの内容で依頼書を作成しますね」
「はぁ、お願いしま、す」

 辺境のハンターオフィス。
 カウンターの内側で依頼人と接しているのは、聖導士でありながら依頼に出る事もせず、『お手伝い』としてオフィスに居座っているリアルブルー出身の少年。「甘味中毒駄ハンター」こと香藤 玲(kz0220)だ。
 それでも外面は大変よろしいので、にこにこと依頼内容のヒアリングをしていたのだが、依頼人の方は始終そわそわと落ち着きがない。一応美少年の類に入る玲の0円的スマイルには目もくれず、依頼書の完成を見届けるとそそくさとオフィスを後にした。
 その背を見送りながら、玲は内心首を捻る。
(依頼内容はごくフツーの隊商警護だったのに、何か心配な事でも……?)
 けれど、オフィス内を見回しすぐにそうではないと気付く。
「あー……まぁ、そうだよねぇ」
 ひとりごち、作ったばかりの依頼書を手に、先輩職員であるモリスのデスクへ向かった。


「なーんかさぁ、最近ぴりぴりしてるよねぇ」
 書き物中だったモリスの鼻先へ、ずいっと書類を差し込む。
 モリス、驚いて手元が狂った。顔を上げ軽く玲を睨む。
「何? この間リアルブルーへ送り込んだ事まだ根に持ってるの?」
 玲は先日、モリスによって強引に函館の戦地へ送り込まれていた。
「そうじゃなくってさ。ほら、」
 軽く顎をしゃくり周囲を見渡すよう促す。
 カウンターの向こうを見やったモリスの目に、固い表情のハンター達が映った。
 近頃貼りだされる依頼は危険を伴うものが多く、強敵に挑む内容も少なくない。受けるか否か吟味していれば、自然顔も険しくなるというもの。
 ライブラリを訪ねる者も同じくだ。おそらくこれから挑む敵の情報を得、成功への糸口を見出そうと必死なのだろう。
 が、そんなハンター達の様子を見た一般人の依頼人が、落ち着かない気持ちになるのもまた致し方なく。
 モリスはペンを置くとデスクの上で指を組んだ。
「……王国では試練が、帝国では剣機が、同盟では大火が、そして蒼界ではクラスタが……今はどこも大変な時期だもの、仕方ないわよ」
「だよねぇ。あっちもこっちも、まったく忙しないったら。歪虚ももうちょっと空気読んでくれれば良いのにー」
 んな歪虚いねぇよ。モリスは目だけでツッコんだ。
 玲は大きく伸びをすると、
「ふあぁ……なーんか楽しい事ないかなー」
 間延びした声をあげた。
 ……が。次の瞬間モリスが窘めるより早く、目をきらっきらさせて身を乗り出す。

「楽しい事がないなら作っちゃえばいいじゃない!!」

「……は?」
 モリス、きょとん。
 玲が気ままで自由奔放なのはいつもの事だが、この大変な時にいきなり何を言い出すのか。
 呆れたようなモリスに対し、玲はこほんと咳払い。そして痛まし気に眉を寄せる。
「最近さ……ハンターさん達、とっても忙しいじゃない? 大変な依頼がいっぱいで、大規模作戦もあったし……ここらで一息ついたってバチ当たらないと思うんだ。人間息抜きも必要でしょ?」
「まあ、ね」
「だから何か楽しいイベントしようよ、できれば一般の人達も楽しめるようなのを! とりあえず小康状態の僕ら辺境が頑張るべきだと思わない? 思うでしょっ?」
「でも……」
 言い淀むモリスに、玲は一気に畳みかける。
「これはなにもハンターさん達の為だけじゃないんだよ。歪虚への抵抗手段を持たない一般の人達にしてみたらさ、ハンターって唯一頼れる拠り所でしょ? 身近なヒーローって言っても良いよね。そんな皆が揃いも揃っておっかない顔してたり、危ない依頼で大怪我してるのを見たらさ、どうしたって不安になるじゃない。さっきの依頼人さんみたいに」
 苦境に置かれているのは一般人も同じ事。
 だからこそ、イベントで元気に楽しむハンター達の姿を見てもらえたら、少しは安心してもらえるのではないか。
 玲はそう熱弁を振るった。

 モリスはしばらく考えていたが、ややあって短く息を吐く。
「……君にしては珍しく色々考えてるようね。でも急にイベントって言っても一体何を?」
 珍しくは余計だよと言ってから、玲はにんまり目を細める。
「リアルブルーでは今の時期、『イースター』っていうお祭りがあるんだ。そのお祭りで人気の遊びのひとつ、『エッグハント』はどうかなって」
「『エッグハント』?」
「そう! 隠されたタマゴを探す遊びだよ」
「……楽しいの、それ?」
「ただのタマゴじゃないんだよ。中にお菓子が入ってたり、見つけたタマゴに応じて景品が貰えたりする子供に人気の遊びなんだ。難しい隠し場所のタマゴを見つけたら、ちょっと良いものが貰えたりとか。ね? 楽しそうでしょ?」
 それならまあ、確かに景品次第では大人も楽しめそうではある。けれど、とモリスは首を捻った。
「ここは辺境、そんなに一般人が集まるかどうか」
「そこはリゼリオの公園でも借りようよ。リゼリオでお店開いてる人達に協力してもらってさ、出店なんかも出してもらえたらきっと盛り上がると思うんだ。景品調達とタマゴ隠すのは僕に任せて!」
「調達って、その資金はどこから?」
「それは一先ず僕のポケットマネーででも。だいじょーぶ、後でちゃーんと回収するよっ」
 意味ありげに片目を瞑って見せると、玲は自分のデスクに飛びつき、さらさらと企画書を書き上げた。そしてそれを手に転移門へ向かう。行き先は勿論、ハンターズソサエティ本部のお膝元・冒険都市リゼリオ。
「じゃ、下見やら交渉やら行ってくるねー!」
 元気に言い置き、とっとと行ってしまう。
 日頃ダラのクセに、こういう時だけはすこぶる行動が早い。

 それを見送り、モリスは呆れたように呟く。
「……アイツ、やんやかんや言っても絶対自分が楽しみたいだけでしょ……」
 けれどすぐに口の端に笑みを灯した。
 玲の動機がなんであれ、ハンター達にささやかな休息と、市民へひとときの娯楽を提供できるのならそれで良い。
 モリスは書き損じた書類を破棄すると、玲が交渉しやすいよう根回しすべく、魔導ディスプレイを立ち上げた。

リプレイ本文


「わあ、すごい人!」
 会場にやってきた央崎 遥華(ka5644)は、想像以上の盛況ぶりに声をあげた。ミィナ・アレグトーリア(ka0317)は、
「す、進めないのん」
 人波に流され難儀している。
 子供の部が開かれた後とあって家族連れが目立つ。お菓子やカラフルな卵を手に子供達が走り回っていた。
 そんな様子に微笑むのは羊谷 めい(ka0669)。元気な子供を目で追っていると人混みの中に友人を見つけた。
「レナードさんもいらしてたんですね」
 エルフの少年が振り向く。レナード=クーク(ka6613)だ。
「メイちゃんやー!」
 レナードが頬を緩めると、一緒にいた二人も振り返る。着物姿の少女が進み出た。
「お友達ですかぁ? 氷雨 柊(ka6302)ですぅ」
「……クラン・クィールス(ka6605)だ」
 その後ろでクランも目礼。ふたりを見ためいはぱちくり。
「この前氷姫の湖で、」
「あ、あの時のー」
「凍った湖綺麗やったね」
 と、そこへ魔導マイク越しのアナウンスが。
『ハンターの部を始めまーす、参加者は集まって下さーい!』

 特設ステージの上で、まるごとうさぎ姿の香藤 玲(kz0220)がルール説明をしていく。ハンス・ラインフェルト(ka6750)は思わずくすり。
「あれを着たまま卵を隠したのでしょうか……ふふふ。それにしてもイースターとは懐かしい」
 その言葉に、居合わせた穂積 智里(ka6819)が顔を上げた。
「リアルブルーご出身ですか? 私も何だか思い出しちゃって。おばぁちゃんのオスターハーゼ、美味しかったなぁ」
 オスターハーゼはドイツでイースターに食されるパンだ。その名にハンスは驚いた。
「お婆様はドイツの方で?」
「そうです!」
「奇遇ですね、私はドイツ系移民のコロニー出身なんです」
「まあ♪」
 思わぬ縁にほっこりしていると、開始を告げる笛が鳴る。
「Toi Toi Toi!」
 ふたりはドイツの幸運のおまじないを掛け合い歩き出した。



●東の森
「よ~し、探すにゃ!」
 最初に広場を飛び出したのはハヒヤ・ベリモル(ka6620)。茶色の髪がぴょこりと跳ねて猫耳のよう。口調と相まって、元気いっぱいの子猫のように東へ向かう。
「自分の行きたいところに行くにゃ! ついでに卵を探すにゃ!」
 居心地の良さそうな場所を求め、広葉樹林の散策路へやってきた。見上げれば柔らかな緑が目に優しい。ハヒヤ、思わず深呼吸。
「少しくらいだったら、寄り道しても大丈夫にゃよね……?」
 おっと木登り好きな猫娘の血が騒いだか? 樹の幹に手を当てそわそわ。
「それに樹の上に隠されているかもしれにゃいし! それにもし無くても樹の上に登って探すところの目星もつけられるし……我頭いいにゃ!」
 そう理由付けると高い枝まで登っていく。幹に背を預け足を投げ出せば、風はそよそよ葉擦れはさらさら、何ともいい気持ち。ナッツを取り出しかりりと噛めば、気持ちもお腹も満たされていく。
 そうしている内、瞼がとろんと下りて来て……おーいハヒヤさん。卵はいいの?


 頭上で猫娘がお昼寝中とは知らず、テオバルト・グリム(ka1824)と柄永 和沙(ka6481)が歩いて行く。
「景品が貰える卵探しか……和沙の世界には面白そうな催しがいっぱいあるな」
「遊園地がそんな感じのやってたなぁ。どうせ探すなら一等賞引きたいよね、テオ!」
「頑張ろうな、和沙!」
 初々しい恋人達はやる気満々。テオは壁歩きを使用し大木へ登る。するとすぐそこで歓声があがった。
「兄ちゃんすげー!」
 見ればハンター達のハント中にも関わらず、悪ガキ共がちょこまかしていた。テオは少しはにかんで手を振り、彼女へ腕を差し伸べる。登る途中、和沙は木のウロの中に卵を見つけた。
「やったな」
「金色じゃなかったけどね」
 これで勢い付いたか、ふたりはスキルを駆使して木々の間を飛び回り、立て続けに卵をゲットした。ふたりともふたつずつ。そんな所までお揃いで思わずにっこり。すると身体を動かしたせいか小腹が減ってきた。
「こんなことならおやつでも持ってくるべきだったな。あ、」
 ガムならあったと包みを開けようとする和沙を、テオが押しとどめる。
「始まる前に弁当買って来た、ガムはおやつな」
「流石テオ」
 弁当を膝の上に広げ、樹上でまったりランチタイム。大口でパンを頬張るテオ。すると、
「ついてるよ」
 和沙、テオの口許についた欠片を抓んでぱくり。一瞬遅れて自分の行為を自覚し、真っ赤になって俯く。釣られてテオもまっかっか。どちらからともなくおずおずと目を合わせ、照れたように笑い合った。


 少し先の小道を歩くドワーフの女性がひとり。踏み出す度、白い髪が木漏れ日を受け煌めく。
「辺境の支部が主催だと聞いているが、あっちにも幾つか懸念事項が……」
 ジーナ(ka1643)だ。漏れた独り言からも分かるように、ドワーフにしては慎重な性格の彼女。辺境の同胞を思う気持ちは人一倍で、先日も辺境の採掘場で果敢に戦ってきた。
 呟く彼女を、先程の悪ガキ共が追い抜いて行く。ハンター達のハント中にうろつくのはルール違反ではあるが、何とも賑やかで楽し気だ。それを見た彼女はふっと息を吐いた。
「……今日は休暇だったな。そういうのは止めだ」
 採掘場の戦い以降も蒼界に赴いたりと忙しなかった。今日はゆっくり英気を養おう。そう決め込んだ矢先、悪ガキのひとりが派手に転んだ。途端に上がる盛大な泣き声。
 駆け寄ろうとしたジーナだったが、一歩早く脇の茂みから少女が現れた。
「大丈夫ですか?」
 めいだ。めいの方もジーナに気付き、思わず会釈し合ったり。
 少年を一通り診ためいは、擦り傷どころか打ち身もない事に安堵した。どうやら転んだ事に驚いて泣いてしまったらしい。それでも少年を安心させるべく覚醒し、ヒールをかけるフリをした。
「これでもう大丈夫」
 淡い光を纏っためいに、少年はぽっと赤くなる。するとポーチから何かを取り出した。
「コレやる!」
「え?」
「お礼!」
 少年は戸惑うめいに強引にそれを押し付けると、仲間と共に駆け去ってしまった。残されたのは瑠璃色の卵。
「良いんでしょうか」
 おろおろするめいにジーナが肩を竦める。
「貰っておいたら良い、それもハンター用に隠された卵だろうからな。ハントが楽しくてつい探してしまったんだろう」
「でも」
「言ってたろう? あの子なりの感謝の気持ちだ」
 その言葉に、めいは卵を大事そうに押し抱いた。



●中央広場
 運営テントの前で、レム・フィバート(ka6552)がきょろきょろしている。
「どこ行ったんだろー?」
 探しているのは卵ではなく人。けれど目当ての人物が見つからずうろうろ。
 その背後の噴水では人々から歓声が上がっていた。ウォーターウォークを自らにかけた遥華が、水面を華麗に滑っていたのだ。ハンター達には何気ない事かもしれないが、一般人にしてみればまるで手品を見ているかのよう。マギサスカートの裾をたおやかに翻す遥華の姿に釘付けだ。
「んー、こっちかな?」
 今回の催しは市民を元気づける為のものでもある。それを心得ている遥華は、風の気を集め美しい翠色の直剣を作り出すと、噴きあがる水柱を派手に斬って見せた。飛沫が弾け飛び、子供達はこぞって手を伸べる。
「わーい! 見っけ! やっぱりここだったね」
 斬り裂いた水柱の向こう、水を噴き出す支柱の文様に挟まっていた卵を高々と掲げると、観衆から拍手が起こった。ノリの良い遥華は両手を振って応えると、噴水の縁から身軽に飛び降りる。そして大人しく待っていた黒猫ミアとダックスのケイティを撫でた。
「さあ、今度はふたりにも手伝ってもらおう! 茂みあたりを探しに行こっか。ケイティ、卵見つけたら噛まないでね?」
 ケイティ、主人の言葉に頼もしく一吠えした。



●南の出店街
 卵をふんだんに使った可愛いシフォンケーキ。頬張っているのは眼光鋭い妻崎 五郷(ka0559)。控えめに言ってギャップが凄い。卵を探していたアレクシス・ラッセル(ka6748)は頬を膨らせた。
「イサト! 食べてナイでイッショにさがす!」
「……、」
 五郷、ケーキに口の中の水分を吸われ喋れない。
「ナニ食べてるノー? ……Chiffon cake? カワイー!」
「仕方ねェだろ、一番卵使ってそうなのがコレだったんだからよ。卵食っときゃ復活祭にあやかって長生きできそうだろ」
 ようやく飲み込んだ五郷が睨むが、アレスは気にしない。
「それでcake食べてたノ? イサト、カワイーイ♪」
「な!?」
 五郷の隙をつき、アレスはちゃっかりケーキをぱくり。
「オイ!」
「へへー♪ さぁイサト、ボクのイセキタンケンシャダマシーが火をふくヨ!」
「妙なモン噴くな」
「ヒドい!」
 ぶーたれながらもアレスは右手を差し出した。首を捻る五郷に、
「ボク、イサトとイッショじゃナイとイヤだからネ。はぐれナイよーにねっ! ……手、つなぐ?」
「あのな」
「なんてネー。あ、アッチにあるカナ?」
 アレスは空の手を引っ込めるなり猛ダッシュ! だがしかし向かった先は公園の出口だ! 慌てて追いかけた五郷はアレスを確保すると、さっきは取らなかった手をむんずと握った。アレス、きょとん。五郷はぶっきらぼうに言う。
「わーったよ。迷子になられるよかマシだ。俺が探しても焼け石に水な気がすッけどな」
 アレスの顔に笑みが広がる。
「えーっぐ、はーんと!」
 アレスは五郷の手をぶんぶん振りながら卵探しを再開。程なく灌木の中に卵を見つけた。
「Lucky!! やったネ、イサトー!」
 喜ぶあまりその場で得意のストリートダンスを始めるアレス。片手で逆立ちまでして見せる。
「お前何でダンスして、」
「あっ、あのベンチの下にも! イサトGo!」
 何で俺が。ボヤきつつも素直に走る五郷。卵を入手し振り向けば、アレスがぐっと親指を立てている。
「……ま、楽しそうならいいかね」
 呟く唇は、微かな笑みを刻んでいた。


 ところで。
 園内にウサ耳カチューシャをした人がやたら多いのだが、その出所がこちら。
「卵はウサギが隠すモノ、子供は卵探しで大人はウサギにならねぇと話にならねぇ。さぁさお宅もウサギになってガキに楽しい思いさせてやんな!」
 立て板に水の売り口上で、ジャック・J・グリーヴ(ka1305)は次々にカチューシャを売りさばく。そこへ、
「ジャックおにいさぁんッ!」
 突如二足歩行の兎が猛突進して来た。否、まるごとうさぎを着た玲だ。
「何だぁ玲、運営テントに居なくて良いのか?」
「そうなんだけど……こないだの事、謝っとこうと思って」
 玲は先日の空港奪還戦で、自分を庇った為に怪我させてしまった事を気にしていたのだ。
「ガキが気ィ遣うんじゃねぇ」
「でも」
「それよかこのご時世明るい話を考えられんのは大したモンだぜ。ガワだけじゃなくちゃんとウサギしてんじゃねぇか」
 兎? と玲は首を傾げたが、彼の売り口上を思い出し照れたように笑った。
「おにいさんこそ。こっちの世界の人なのにちゃんとイースターの事調べててさ」
「当然だぜ、異世界の行事だろうと乗っかるのが商人てモンだろうよ。稼ぎがなしてのはちと面白味がねぇが、店出して俺様の顔を客共に覚えさせりゃ別の商売で儲けが出る事もあんだろ」
 サバけた物言いをしながらも楽し気な人々の様子に目を細める彼に、玲はこっそり微笑んだ。
「ともかく色々ありがと、お店頑張ってねー」
「おう」
 手を挙げ見送ったジャックだったが、ふと胸に違和感が。原因を探るべく懐に手を突っ込むと、いつの間にか桜色の卵が入っていた。


「出店! 出店いっぱいなの私のパライソなの絶対ここから離れないの~!」
 買い込んだおやつをもぐもぐしているのはディーナ・フェルミ(ka5843)。ぱくつきながらも出店周りを念入りに、けれど店主の迷惑にならぬよう卵を探していた彼女は、既に三つゲットしていた。するとそこへ美味しそうな匂いが。
「くんくん。こっちなの!」
 ディーナ、匂いの元へ走る! 辿り着いたのはシャーリーン・クリオール(ka0184)の店だった。羊肉を焼く良い香りが辺りに満ちている。同様に匂いに惹かれた客で賑わっていた。
「クレープ! 卵型のドラジェもあるの!」
 思わず声をあげた彼女にシャーリーンが微笑みかける。
「大きい方のドラジェはね、糖衣の殻の中に小さなドラジェとささやかな玩具が入っているのさ」
 すると近くで説明を耳にした智里も寄ってきた。
「可愛い仕掛けですね。それにしても良い匂い」
「本当なの」
 が、ふたりは見てしまった。鉄板の脇で回る扇風機を。肉の焼ける匂いを撒き散らさんばかりだ。
「あの」
「気のせいだ」
「それ」
「気のせいだ」
 シャーリーン、にっこり。
「クレープ食べないか? 羊肉にミネア印の芋を使ったポテトサラダ、レタスを巻いたものさ」
「あのお芋なの!」
「ミネア印?」
 ディーナは以前ミネアと会っているので知っていたが、智里の方は初耳。そんな智里に、
「ほら」
 シャーリーンは大きな芋を手に取るとナイフで切って見せた。現れた断面は色が濃く見るからに甘そうだ。ふたりは渡されたクレープをぱくり。
「ん~美味しいの!」
「腹持ちも良さそうです」
 代金を払おうとしたふたりへ、シャーリーンは悪戯っぽく笑い首を振る。
「口止め料さ」
 言って扇風機を目で示す。ふたりは笑って頷いた。と、智里が思い出したように叫ぶ。
「そうだ、私オスターハーゼを探しに来たんです!」
 紅界出身のふたりへ特徴を話した。
「兎型のパンか」
「兎は多産の象徴だと聞いたし、この時期独自の菓子パンやケーキを食べて祝うと聞いたの。きっとそれなの、私も食べてみたいのー!」
「一緒に探してみます?」
 歩き出すふたりを笑顔で送り出すシャーリーン。……と。
「見~た~よ~」
 忍び寄る二足歩行の兎。否、玲だ。売上は運営費へ回す事になっていたのを思い出し、彼女は苦笑い。
「構わないだろう、ふたつくらい」
 すると玲、にぱっと笑う。
「だよねーなら僕もふたつ貰って構わないよね♪」
 それで良いのかと内心ツッコんだが、黙って渡した方が面倒臭くなさそうだ。そうしてクレープ両手に去っていく背中を唖然と見送る。そんな彼女の傍らには、茜色の卵がちょこんと置かれていた。


 玲がクレープを手に運営テントへ戻ると、レムが待っていた。
「あれ? レムおねえさん卵探しに行かないの?」
 尋ねる玲に、彼女は勿体つけるように笑い、
「遊びたい気持ちはございますがーっ、此度のレムさんは玲ちゃんに用事なのだっ」
 後ろ手に隠していた箱を差し出した。
「ザッハトルテですよ玲ちゃん!」
「ふあぁ~♪ って、何で僕に?」
「何を隠そーお疲れ様的な! そんな感じのケーキなんだ、ぜっ♪ あ、お疲れ様ってゆーのは、今回の企画もだけどー主は前回の空港建物の一件ですなっ」
 レムも空港奪還戦に参戦しており、攻撃手段を持たぬ玲を庇いながら幾多の敵を倒したのだった。
「いっぱい回復してもらっちゃったからねっ」
「そんな、僕の方こそ守ってもらって」
「それはそれ! 感謝の気持ちとかそーいう意味で受け取ってほしいのでしたっ♪」
 玲はきょとんとレムの顔を見つめ、
「これ渡す為に、遊びたいの我慢して……?」
 ぽそり呟いてからにこっと笑う。
「なら僕もお礼! このクレープ一緒に食べよ♪」
「お、良いですなっ」
 ふたりは噴水の縁に並んで腰掛け、ぱくり。
「イケますなーっ」
「だねぇ♪」
 そして玲は食べるのに夢中なレムの隙を窺い、卵をそっとポケットへ忍ばせた。


●西の花壇
 今回のハント、探索場所選択に結構偏りがあった。最も多かったのがここ、西の花壇周辺。
 華やかでありながら激戦区と相成ったこの場所を、のんびり歩く恋人達が居た。
「久しぶりに二人で過ごすなぁ」
 骸香(ka6223)が呟けば、鞍馬 真(ka5819)は穏やかに頷く。
「こういう息抜きは久しぶりだな」
 真はこの所異世界を股にかけ飛び回っていた。骸香は冗談めかして睨む。
「真さんもちゃんと息抜きしてくれないと、うちも暴れますからね?」
「それは困るな」
 人目がないのを確かめた真はそっと彼女の手をとった。
「こんなにのんびり出来る事ないっすよねぇ。うちからも誘えば息抜きできますかねぇ」
「骸香の誘いならいつでも」
「なら今度あるフラワーフェスはどうっすか?」
「喜んで」
 じゃれるように肩寄せ合っていると突然、
「ねー付き合ってんのー?」
「ちゅーすんの?」
 どこから湧いたか悪ガキ共がニヤニヤ。真、思わぬ出現にわたわた。けれど骸香は動じない。
「あったり前っすよ、可愛い彼氏なんすから!」
 言うなり真の頬に口付けた。
「骸香!?」
「わーちゅーした!」
 悪ガキ共は囃し立てながら駆け去る。勝ち誇ったような骸香に対し、真はまだ気恥ずかしそうで。
「そ、そうだ卵! あのモニュメント怪しそうじゃないか?」
 真が指したのは戦士像。右手は剣を持ち、左手は軽く握られ宙へ掲げられている。ふたりして見て回ると、
「あっ!」
 骸香が像の左手に卵を見つけた。真は首を捻る。
「まるで最初から卵を持っていたような手の形だ。元々別の物を持っていたんじゃ」
「きっと大事な像っすよ? まさかそこまでしな……」
 視線を落とした骸香が固まった。台座の隅に卵と同じ位の大きさの水晶が転がっており、こんなメモが貼られていたのだ。
『左手の卵見つけた人、コレ戻してね 玲』
 ふたり、顔を見合わせ絶句した。


「あれ、フェリア(ka2870)さんじゃないですか」
 寄せ植えの花壇に見惚れていたフェリアは、聞き覚えのある……むしろ耳馴染んだその声に肩を跳ねさせた。けれど跳ねたのは肩ばかりではない。ほろ苦さが胸に広がる一方、とくりと跳ね上がる鼓動。返事を躊躇している間に相手がすぐ後ろまで来てしまった。観念して平静を装い振り向く。
「こんにちは、カイ(ka3770)」
 ちょっと無理をして笑顔を作ったのは、彼が元恋人だから。しかも彼の方から彼女を振ったのだ。それなのに彼から声を掛けてくるなんて。戸惑うフェリアにカイは変わらぬ笑みで言う。
「丁度良かった、ちょっと手伝って下さい」
「手伝う?」
「ほら!」
 カイは彼女の腕を掴みずんずん歩き出す。
「ちょっと!」
 振り解く事ができずにいる彼女へ、カイは言う。
「今エッグハントやってて、卵を探すと景品が貰えるんです」
「へえ」
「で、今俺その卵を探してて。主催者の玲って子、面白い場所が好きそうなんですよね」
「そう、なの」
「玲の右肘から先が汚れてたんです。どっかに腕突っ込んだんじゃないかなって」
「そう」
 カイの真意が読めず、フェリアは困惑するばかり。それでも真面目な彼女は捜索を手伝った。
 程なくして、植え込みの土に丁度人の腕ほどの幅の穴を見つけた。蛙か蛇が冬眠していた穴だろうか。カイは躊躇なく腕を突っ込むと、中から銀色の卵を掴み出した。
「フェリアさんの髪と同じ色ですよ、どうぞ!」
 そう言って差し出すカイの顔は、無邪気な少年そのもので。彼女も釣られて少しだけ口許を緩めた。 


 自由に花を摘む事ができる花摘み花壇では、三人の可憐な乙女達が談笑中。
「三人で遊べるの久々で嬉しい♪」
「本当に久しぶり。ピクニックみたいで楽しいですね」
 アルカ・ブラックウェル(ka0790)とルナ・レンフィールド(ka1565)が言い合っていると、
「アルカさん……より綺麗になった、かも」
 アルカをじぃっと見つめ、エステル・クレティエ(ka3783)がぽそり。たちまち赤くなるアルカ。
「そんな事ないよっ!」
 ルナも菫色の瞳でアルカをしげしげ。
「言われてみれば。もしかして恋、してるとか?」
「そうなんですか!?」
「そ、そんなんじゃ……っ!」
 おや、どうやら心当たりがおありのようで。アルカは大急ぎで立ち上がった。
「そうそうエッグハントだよねっ。あそこはどうだろう? ボク、ちょっと見て来るね!」
 言うなり脱兎のごとく駆けていく。向かった先は花を終えた桜の木。おてんばアルカ、木登りはお手の物だ。
「あ、逃げましたね」
「私達もちょっと探してみましょうか」
「ルナさん無理しないでね?」
 気遣うエステルに、ルナはにっこり頷いた。
 エステルはそうっと株と株の間を掻き分けて探す。花摘み花壇ではあるが、不要に花を傷めぬように。慎重にしながらも宝探しのようでわくわくする。
「緑や花の色に似せた卵があるんじゃないかって思うんですよね」
 目を凝らして探していると……マリーゴールドの花の下、そっくり同じ橙色に塗られた卵が。
「ありましたー!」
「こっちもありましたよ、ほら」
 卵を掲げるエステルに、ルナも桃色の卵を翳して見せる。
「その卵可愛いですっ」
「そちらは橙色が鮮やかですね。艶々してまるで蜜柑のよう」
 蜜柑。そのフレーズに、どちらからともなくおなかを押さえた。そこへアルカが戻ってくる。
「見て、ふたつもあったよ♪ でも木登りしたらおなか減っちゃった」
 へにゃっと笑うアルカに、
「丁度そう思った所です」
 エステルも笑顔で同意。その横でルナがぽんと手を叩く。
「美味しそうなクレープの出店がありましたよ。とっても良い匂いの……それを買ってランチは如何です?」
「さんせーい!」
「そうしましょう」
 花より団子なわけではないが、仲良しの三人が集まればなんだって楽しい。例の策士な彼女の店でクレープを求め、木陰のベンチで一休み。三人娘、揃ってばくり。
「美味しい♪」
 楽しい気分に誘われ、知らずエステルの口からハミングが零れる。アルカとルナはそれに合わせ足を揺らした。少女達を春風が包んでいた。


 さてこちら、柊・クラン・レナードの銀髪トリオ。
「金の卵、探したいですねぇ」
「そうやねー。でも、どの卵を見つけても景品が貰えるみたいなのはええなぁ」
 ねえ、とばかりに柊とレナードがクランを振り返る。が、彼は考え事の真っ最中だった。
(俺と居てそんなに楽しいんだかな、この二人は……まぁ、付き合うと言った以上付き合うが。俺も退屈はしな――)
「クィールスさん?」
「クランさん?」
 同時に呼ばれ我に返る。
「あぁ、卵探しだったな」
「探すなら皆で手分けしたら効率良さそうかしらぁ?」
「そうやね。まずは一つ、頑張らへんと!」
 クラン、若干不安になる。
(二人が迷子にならないかが懸念事項だが……)
 けれどふたりは乗り気だ。首肯し、
「適当にばらけて探すとしよう」
 そう言うと各々捜索を始めた。
 ――数分後。
「……ん?」
 生垣の根本に卵を見つけたクラン、ふと顔を上げるとふたりがいない。やっぱりいない。
「案の定じゃないかよ……」
 言っても時既に遅し。放っておくわけにもいかず、ふたりを探しに花摘み花壇へ足を向ける。
「ったく、卵よりこっちの方が余程大変だ」
 クラン、苦労性かもしれない。
 同時刻、花摘み花壇で柊は。
「見つかりませんねぇ。もう誰かが探した後かしらー?」
 他所へ行こうかと立ち上がり、ふたりも見つかりませんな状態に気付く。
「はぐれてしまったかしらー……皆で来ているのですから、一人は嫌ですよぅ」
 心細さにへにょっと眉を下げ、着物の袂を揺らしとてとてと花時計の方へ向かった。
 やっぱり同時刻、花時計前のレナードは。
「うっかり花を折らんように、そーっと……あ、あったで!」
 見て見てとばかりに振り返ったが、当然返事はない。レナード、おろおろ。
「さっきまで一緒におったはずなんやけど……ううん、折角友達と楽しめるお祭りやのに。また迷子になってしまうんはあかんで僕!」
 迷子前科のある彼、今度は自分が見つけなきゃと駆けだした。……生垣の方へ。
 見事にすれ違いまくる三人だった。


 バラのアーチが連なるトンネルを、ほてほて潜っていくのはミィナだ。青い瞳が、薄紅や黄色のバラを映しうっとり細まる。
「綺麗……散策路も気になったけど、こっちに来て正解だったのん!」
 フラワーサークレットで飾った彼女は、さながら花の精めいていて。件の悪ガキ共が通りかかったが、からかう事も忘れ見とれるばかり。視線に気付き、
「良いお天気ですのん♪」
 ちょこりと会釈。悪ガキ共は慌ててお辞儀を返すと走り去ってしまった。
「うち、何かしたん?」
 小首を傾げまたほてほて歩いて行くと、トンネルの出口へ辿り着いた。その時。
『終了十分前ー!』
 アナウンスが耳に届く。
「はぅ?! たまごの事全然探してなかったのん! まだ残ってるとええけど……!」
 ミィナは慌てて踵を返す。棘のあるバラの所なら他人が探していないだろうと考えたのだ。白い指で閉じた蕾を優しくめくってみる。現れたのは小さな翡翠色の卵だった。



●ラスト十分
 アナウンスに飛び起きたのは猫娘ハヒヤ。
「うっかり寝てしまったにゃ、今からでも本気出すにゃ!」
 と、すぐ傍で小鳥の声がした。見れば頭上の巣の中で、雛達が困ったように身を寄せ合っている。よじ登り巣を覗けば、黄色い卵がでんとお邪魔しているではないか。ハヒヤは急いで取り出し雛達に微笑む。
「狭かったにゃ、もう大丈夫だにゃー」
 雛達は嬉しそうにぴぃと鳴いた。

「やっと見つけた……」
 ようやく迷子達を捕まえたクラン。迷子捜索に慣れつつある彼は途中でもう一つ卵を見つけていたが、レナードは一つ、柊はまだゼロだった。
「ふたりを探すのに一生懸命だったんですよぅ」
 しょぼんと肩を落とす柊に、
「まだ十分あるで! それに僕も一つきりじゃ終われへん!」
「もう迷子探しは御免だ、一緒に探すぞ」
 今度は三人、揃って駆け出した。



●金の卵は誰の手に?
 ハント終了の笛が鳴ると、ハンター達は中央広場へ戻った。
『お楽しみの景品引き換えタイムだよー!』
 入手した卵を景品と引き換えていく。
「マカロン貰いましたよぅ♪」
 無事卵をゲットできた柊、お菓子を手ににこにこ。そこここで悲喜こもごもの声があがる。
「ツナ缶……?」
「アンクレット貰った、和沙にやるよ」
「いいの? じゃあチョコあげる」
「キャンディでした」
「私はスコップ」
「え、メリケン!?」
 そんな中、フェリアが受け取ったのは白い布。広げてみると……
「褌ですね」
「ふ……!?」
 カイの言葉にフェリアわたわた。
『ごめんねー、それ完全にネタ景品』
 それを見た玲がしれっと。周囲から笑いが起こる。フェリアは引き換え前の卵ごとカイに押し付けた。
「あげるっ」
「え」
「私が持っていても仕方ないでしょう!?」
「確かに」
 苦笑し、カイは貰ったお菓子を彼女に渡した。
「それからこれも」
 カイが差し出したのは黄色く可愛らしい花、レーヴェンツァーン――西洋タンポポ。彼女の一番好きな花だ。
「丁度良かったっていうのは本当ですよ、会いに行こうと思ってたんで……貴女は頑張り屋で意地っ張りなんで、困ったことがあっても俺を呼んだりしないでしょう? だから俺が定期的に聞きに行くことにします」
「カイ、」
 茶金石を思わす真摯な瞳と、揺れる碧眼が交わる。……と。
『コホン。引き換えはお早めにねー』
 玲の声が飛んできた。カイは転がるように引き換えに行く。勿論、フェリアの手を引いて。
 そして全員引き換え終わると玲が首を捻った。
『あれ、金の卵見つけた人いないのー?』
 誰からも声は上がらない。
『へへー誰も見つけられなかったみたいだねっ!』
 得意気に胸を張る玲に一同が軽くイラッとした時。
「遅れました」
 ハンスが戻ってきた。その手には――金の卵!
「どこにあったノー?」
「街灯、いえ魔導灯の中に」
 彼はハント中の事を語りだした。

 北へ向かったのは、何とハンスひとりだった。
「故郷でのエッグハントは庭の芝生や家の中で行われるものだったから、つい芝生を選んでしまいました。ここはクリムゾンウェスト、もっと柔軟な思考で探すべきだったのかもしれませんね」
 誰もいない原っぱを見渡し苦笑する。けれど独りと言えば寂しいが、原っぱを独り占めと思えば悪くない。
 故郷の歌を口ずさみながら、死者を思い祈りを捧ぐ。そうして歩く内ハンスはいつしか公園の北端、大通りに面した所までやってきた。公園と通りの境に背の高い魔導灯が並んでいる。
「これが一斉に灯る所は見物でしょうね……ん?」
 魔導灯を見上げたハンス、その内の一つの硝子ケースの中に光る物を見つけた。よじ登ってみると――

「これがあった訳です」
『おめでとー、コチラヘどうぞ!』
 玲はちょっと悔しそうに彼をステージへ招いた。
 一等と言うからには良い景品に違いない。場の期待が高まっていく中、玲は布を被せた景品を取り出した。
『一等の景品はぁー』
 勿体つけてからガバッと布を取る。
『じゃん! プレミアムチョコレートっ!』
 シンッと静まり返る会場。一瞬の後、え、ソレ? 的なざわめきが広がる。
『え、何その反応。プレミアムだよ!?』
「ふふ、イースターにお菓子は付きものですしね」
『だよねハンスおにいさん!』
「玲よぉ、もう少しマシなモンなかったのか?」
『えー!?』
 その後、玲は散々突き上げを喰ったとか喰らわなかったとか。
 めでたしめでた……おっと皆が帰路に着く中智里が玲に寄って行った。
「クリムゾンウェストでオースタンを楽しめるとは思いませんでした。本当にありがとうございます」
 お辞儀する彼女の手にはランタンとキャンディ、そして兎の形のパンが。
「ランタンはちょっとしたアタリだよ、よく見つけたね」
「オースタンには春の女神さまの到来を祝うって言う説もありましたから。春の女神さまに関わるなら、花の咲いている所を探した方がいいかと思ったんです」
 色付けた卵は花に紛れたら見つけにくいのではないか。そう思って探したと嬉しそうに話す智里に玲もにっこり。
 何やかんやあったが、エッグハントは笑顔で締めくくられたのだった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミka5843
  • 変わらぬ変わり者
    ハンス・ラインフェルトka6750

重体一覧

参加者一覧

  • 幸せの青き羽音
    シャーリーン・クリオール(ka0184
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 幸せの魔法
    ミィナ・アレグトーリア(ka0317
    エルフ|17才|女性|魔術師
  • 蒼狼奮迅
    妻崎 五郷(ka0559
    人間(蒼)|36才|男性|霊闘士
  • Sanctuary
    羊谷 めい(ka0669
    人間(蒼)|15才|女性|聖導士
  • 陽光の愛し子
    アルカ・ブラックウェル(ka0790
    人間(紅)|17才|女性|疾影士
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 光森の奏者
    ルナ・レンフィールド(ka1565
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 勝利への開拓
    ジーナ(ka1643
    ドワーフ|21才|女性|霊闘士
  • 献身的な旦那さま
    テオバルト・グリム(ka1824
    人間(紅)|20才|男性|疾影士
  • 【Ⅲ】命と愛の重みを知る
    フェリア(ka2870
    人間(紅)|21才|女性|魔術師
  • 情報屋兼便利屋
    カイ(ka3770
    人間(紅)|20才|男性|疾影士
  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • 雷影の術士
    央崎 遥華(ka5644
    人間(蒼)|21才|女性|魔術師

  • 鞍馬 真(ka5819
    人間(蒼)|22才|男性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 孤独なる蹴撃手
    骸香(ka6223
    鬼|21才|女性|疾影士
  • 一握の未来へ
    氷雨 柊(ka6302
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • 《大切》な者を支える為に
    和沙・E・グリム(ka6481
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • キャスケット姐さん
    レム・フィバート(ka6552
    人間(紅)|17才|女性|格闘士
  • 望む未来の為に
    クラン・クィールス(ka6605
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • 夜空に奏でる銀星となりて
    レナード=クーク(ka6613
    エルフ|17才|男性|魔術師
  • はんたあ倶楽部
    ハヒヤ・ベリモル(ka6620
    人間(紅)|14才|女性|霊闘士
  • みんなトモダチ!
    アレクシス・ラッセル(ka6748
    人間(蒼)|23才|男性|機導師
  • 変わらぬ変わり者
    ハンス・ラインフェルト(ka6750
    人間(蒼)|21才|男性|舞刀士
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/01 17:30:22