マゴイの猫面談。

マスター:KINUTA

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
6日
締切
2017/05/14 19:00
完成日
2017/05/20 01:53

みんなの思い出

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オープニング


●遠い、いつかのエバーグリーン


 螺旋を描く塔の天辺。
 見えるのは矩形に整備された町並み。その周囲には目の届く限り農地が広がっている。色調が違う緑色のカードを並べたように。

「β・ワーカー。休みの日にはいつもここにおるのか?」

 隣から話しかけてくるのは彼女だ。
 金髪が風になびいている。

「俺の仕事はマゴイのサポーターやからな。働いとる時はほとんど地下セクションにおんねん。せやからそれ以外の時は、上におりたいんや」

「地下セクションというのはどんなところじゃ?」

「んー、暗いなあ。ほんで静かや。マゴイらちゅうたらもそもそとしか喋らんしな」

「聞くだに眠たくなりそうなところじゃの」

「まあ、お前ならそうやろなあ。θ・ソルジャー」

 ……そういえば彼女の顔はどんな顔だったっけ。
 唐突に確かめたくなって首を横に向ける。
 するとそこには黒いうさぐるみがいた。

「ん? なんじゃβ。お主顔が猫になっとるぞ?」



●リゼリオ。朝。とあるアパート。


 洗面台で朝食後の歯磨きをしていたカチャは、鏡の中に突然、マゴイの姿を見た。

「!」

 歯ブラシを咥えたまま間髪入れずタオルをかける。続けて四隅を画鋲で留める。

『……見えないんだけど……』

「見ないでください。乗り移りたいならよそを当たってください」

 首尾よく乗っ取りを阻止したと安堵するカチャ。
 そこに背後から声が。

『……あ……見えた……』

 思わず振り向くカチャ。
 彼女の敗因は、窓ガラスにもまた顔が映るということを忘れていた点にあった。



●バシリア刑務所。


 服役者の情操教育並びに社会に対する奉仕活動の一環としてバシリア刑務所では、捨て犬捨て猫の保護育成を始めた。
 エサやり、散歩、フンの始末といった世話は持ち回りの当番制。本日はスペットの所属する組が犬当番。

「くそー、なんやあのウサギ。余計なとこ出てきくさってからに」

 彼は本日起きぬけから機嫌が悪い。変な夢を見たのだそうだ。内容については本人が言わないので分からないが。
 檻の前に来ると、たちまち犬たちの合唱が沸き起こる。

 う~うぉう! うぉう! うぉう! ワンワンワン! おうおうおう!

「ええいうるさいわ! なんでお前ら俺の顔見るたび吠えんねん!」

「猫の顔してるからだろ」

「匂いで人ちゅうて分かるはずやろ。誰が餌やってると思うてんねやホンマに」

 不満たらたら言いながら餌を配るスペット。
 彼にとって運がいいのか悪いのか、ちょうど看守がやって来た。

「おいスペット。魔術師協会から面会要請が来たぞ」

 これ幸いと求めに応じ彼は、場を離れて行く。


●面会。


 面会室。柵を挟んでこちらが囚人のスペース。向こう側が面会者のスペース。
 本日は、面会者側の人口密度が妙に高い。

「……タモンはんちょっと聞いてええか」

「ええ、何を聞きたいかは分かりますけど、どうぞ」

「さよか。ほな言わせてもらうわ――なんでしれっとその女がここにおんねん」

 スペットはタモンの横に座っている人物を指さした。
 それはカチャである――が、カチャではない。額にマゴイが憑依している証の目玉模様が浮いている。
 すなわち彼女は今、マゴイ。

「いえ、協会にいきなり訪ねて来られまして、あなたがいる所に案内してほしいと言われまして……断るわけにもいかないでしょう」

「ほうかほうか。で、ほかの奴らはなんやの」

「この人が何かしようとした場合ですね、私だけでは対処不能ですから、急遽集まっていただきました次第で」

 ハンターがいても対処不能な気がするのだがと思いつつも、口には出さないスペット。
 マゴイがのたのた話し始める。

『……あなたの……記憶が戻りつつあると聞いたから……ちょっと確認に来たまで……用が済んだらすぐ帰るわ……私もそうそうヒマではないし……』

 お前の今置かれている状況がヒマ以外の何だというのだ。亜空間とこの世界をふらふらしているだけではないか。俺は毎日肉体労働してんのやぞ。
 と言いたい気持ちをぐっと押さえてスペットは、もしまた彼女が現れたら聞いてやろうと思っていたことを口にした。

「おい、お前θ・F・92438・ソルジャーのこと知っとるか。俺の彼女のθや」

『……知ってる……あれは……市民として実に……不体裁な……案件……だと思うわ……』

「お前の感想はどうでもええねん。θどうなったんや。俺と一緒に成人再訓練所送りにされたはずやと思うねんけど、あの後どうなったんや」

 質問にマゴイは、心底不思議そうな顔をした。

『……え?……時間的に考えて……とうの昔に……存在しなくなっているけど……そんなに気になる……?』

 改めてそう言われるとスペットは、胸を突かれるような思いがした。
 自分は自分が知る時代からはるか未来に飛ばされている。今エバーグリーンに戻ったところで、彼女のいた痕跡など何一つ残っていないはずだ。
 だけど知りたい。どうしても知りたい。

「なるから言うとんのやんけ! なんか知ってることあるなら言えや!」

 マゴイは目を細めた。唄うような拍子をつけて言う。

《落ち着いて、落ち着いて》

 スペットはたちまち口を噤んだ――噤まざるを得なくなった。
 それを確認してからマゴイは、再びものを言い始める。

『……彼女も成人再訓練所に入る……所だったけど……ちょうどその時……西部エリアで……ソルジャーの大規模投入が必要な案件が発生してしまって……応急処置の調整をした上で……そちらに向かわせた……戻ってきた後で再度……ちゃんと再訓練を……行う手筈に……なっていたのだけど……』




リプレイ本文

 マゴイの口が止まった。
 どうやら話そうとしていることについての記憶を辿っているらしい。宙を眺めている。
 ソラス(ka6581)はマゴイが『生きてないから』と憑依を拒否した子狐のぬいぐるみを手に、スペットを観察する。
 メイムの猫が膝に乗ったまま、貧乏揺すりをし始めた。かなり苛ついているようだ。ここは押さえなければなるまい。

「短気は損です。マイペースなマゴイさんに感情的になっても、無駄に疲れるだけというのはおわかりでしょう」

 天竜寺 詩(ka0396)は、皆にお茶を入れることにした。話が長くなりそうだと踏んで。その前に、マゴイへ意見。

「マゴイ、スペットにも言いたい事があるんだからちゃんと言わせてあげてよ。無理に口を塞いで言えなくしちゃったらストレスが溜まってそれこそ精神が不安定になっちゃうよ? もしもの時は私がサルヴェイションで落ち着かせるから」

 聞いているのかいないのか、マゴイは宙を見たまま。
 アルス・テオ・ルシフィール(ka6245)がオカリナを吹き始めた。素朴な音色が場の空気を和ませる。柵越しに茶を受け取ったスペットは、マゴイの隣に座っているメイム(ka2290)に目を向けた。どういうわけだか今日の彼女はまるごとうさぎを着込んでいる。色は黒。瞳は赤。

「何やそのいかれた格好は」

「なんだか今回、この装備で来るべきと精霊のささやきがあってねー♪」

 と嘯いてメイムは、リナリス・リーカノア(ka5126)経由で得た情報を口にする。

「とりあえず、思い出したシータさんてどんな感じの人? 口調がぴょこに似ているらしいけど」

「あのウサギのことを持ち出すのは止めえ……」

 マゴイが視線を前に戻した。どうやら思案がまとまったようだ。
 いい機会なのでソラスは、かねてより気になっていたことを問う。

「マゴイさん、今の「落ち着いて」という猫なで声の呪文はなんですか? スペットさんも急におとなしくなってしまいましたし」

 マルカ・アニチキン(ka2542)もその点知りたく思った。今の制止、魔法の一環にしてはマテリアルに動きが見られない。たとえ異世界由来のものであろうと何らかの術を行使する場合、必ずそういった気配は感じ取れるはずなのだが。

『……呪文じゃない……『理性の声』……』

 壁に寄りかかっていたルベーノ・バルバライン(ka6752)が眉根を寄せた。この場においての『理性』という単語に、唐突感を拭えなくて。

『……反射行動を喚起させるためのキーワード……心理工学に基づいた精神訓練によって市民は……共同体社会の規範に……心理的負担なく従えるようになる……それはとても幸せなこと……』

 マゴイは自信を持って言うのだが、スペットはどう見ても幸せそうでない。腰掛けたまま柵を蹴っている。
 次の<<落ち着いて>>が来る前にアルスは、歌と目力で注意した。

「暴れちゃ駄目なの~」

 加えてルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)がスペットの意を酌み、通訳する。

「つまり又吉は、そんな事は今は関係ないですから、彼女さんについて迅速にもっと詳しくおしえてください……って言ってるんですよ、マゴイさんよろしくお願いします」

 穏やかさを意識して頼んだのがよかったのか、マゴイは本題に戻ってくれた。

『……西部エリアの事案については……エリアの20パーセントが汚染……派遣ソルジャーの50パーセントが損耗という……結果に終わった……θ・F・92438もその50パーセントの中に入っていた………死体は発見されなかったが……存在は認められなかった……ゆえに戦死と判断……という報告が上がっていたはず……』

 スペットの顔が引きつった。今度はリナリスが、彼に代わって聞く。

「何でソルジャーの大量投入をすることになったの?」

『……大型自律兵器の一団がなだれ込んできてね……』

「戦争でもしてたの?」

『……違う……人工知能の……暴走……エバーグリーン全土でそういうことが頻発して……でもユニオンは独自開発のOSを使用していたから……感染が押さえられ……内部での混乱を免れていた……よそからは……汎用性に背を向けたマニア向けOSだのなんだの……色々言われてたけど……やはり私たちの路線は正しかった……』

 やや誇らしげに言葉を締めくくるマゴイ。
 そうは言っても最終的にやはり滅んでいるのでは――と言う指摘はさておき、気になったことを聞いてみるメイム。

「異界追放の予定なら、シータさんにも指輪相当のアイテムあるんだよね? ショートソードとかバックラーかな?」

『……そんなもの渡してないけど……』

「え? 何で?」

『……だって……再訓練前で……回復の見込みがあるかどうかまだ判明してもない段階で……追放の予定も何も決められるわけがないし……アイテムも渡せるわけがない……』

 なるほど筋は通っている。回復という言い方に違和感を覚えるのは別問題として。

(やっと消息が分かっても、これじゃあ………)

 詩は、せめてシータの似顔絵でも描いてやりたいと思った。無言で毛を膨らませているスペットのために。

「シータさんてどんな顔をしてたの?」

『……どんなって……』

 言いかけてマゴイはまた黙った。説明しようと思ったがよく考えてみれば意外と難しいな――とでも言いたげな表情で。
 そこでソラスが、とてもいい提案をしてくる。

「ひょっとしてウォッチャーが、昔のスペットさんたちを映したりしていませんか?」

『……ああ……そうね……もしかしたら……』

 マゴイは天井に向け両手を広げる。天井に黒い染みが出来た。そこから、ゆっくり箱が降りてくる。
 スペットが椅子から飛び上がった。

「な、何でウォッチャーがここにおんのや!?」

 マルカは咄嗟にタモンの前に出て、魔法浄化の構えを取る。しかし、今日の箱はおとなしかった。何も仕掛けてくる様子はない。マゴイが管理しているからであろう。

『……ウォッチャー……θ・F・92438・ソルジャーの映像データを……検索してみてちょうだい……あなたの担当エリアからするに……映っている可能性がある……』

【了解しました】

 箱の表面に点滅する記号が浮かんだ。恐らく(検索中)とでも書いてあるのだろう。
 結果が出るのを待っている間、リナリスが質問する。

「ねえ、戦場でのシータさんの足取りって分かる?」

『……ソルジャー部隊の足取りなら知ってるけど……個々の動きについてはねえ……私は担当ではないのだし……』

 ウォッチャーが映像を浮かび上がらせた。
 ほの暗い廊下。数名に付き添われ歩いて行く女。ウェーブがかった金色の髪は乱れている。琥珀色の目はどこを見ているのか、まるで焦点があってない。
 スペットは机の上にあったカップを引っ繰り返し怒声を上げる。

「おいこらθに何しとんやお前ら!」

 その行動がマゴイからの制止を喚起する前に、アルスが彼を押さえる。ファントムハンドで。

「暴れちゃ駄目なの~」

 スペットは座り直しを余儀なくされた。しかしそれは、お世辞にも安定をもたらしたように見えなかった。猫の目に悔し涙が浮いている。
 スペットの感情が大揺れしていることに目を丸くするマゴイ。ソラスは『理性の声』を使わないよう頼み込む。

「感情を無理に押し込めると後で大爆発して面倒ですから。ちょっとくらいは無視した方がいいですよ」

 メイムが横から割り込む。

「ね、今のはどこで撮られたの?」

『……タワー内部……このウォッチャーはそこに取り付けられていたようだから……』

「θさん、どういう状態だったわけ?」

『……調整室からの……帰り……休憩室に送って行くところ……あの様子からするとかなり強度の調整だろうから……最低でも12時間は脳を休ませるため……睡眠を取らせなくてはならないの……』

 質問に答え終わったマゴイは、再びスペットに注意を向けようとした。それを遮るようにリナリスが、話を繋ぐ。

「シータさんがこの世界の歪虚を相手にしたとすると、どのくらい戦えたと思う?」

『何を装備しているかによるけど……4~5メートル級なら単独で破壊可能だと思う……』

「得意技は?」

『……さて……そこはよく知らないわね……担当は前衛だったから……多分近接に関する技では……何故そんなことを聞きたがるの……?』

「いや、ちょっと、なんとなく」

 会話が続いている間詩は、アルスのオカリナに合わせハミングする。少しでもスペットが落ち着けるように。
 ルンルンが手を挙げる。

「マゴイさん、質問です。ユニオンの科学水準がエバーグリーンに置いては標準的な物だったのですか?」

『……他国とは方向性が違う技術だけど……水準において引けを取らない……ことに市民の幸福に関するものについてなら……ユニオンのアーキテクチャーは間違いなくトップレベル……』

 続いてマルカも、遠慮がちに手を挙げる。

「あの、もしもですが……貴方方の憑依や結界などは、マテリアルを解明できれば、この世界の魔術師にも可能でしょうか……?」

『……それは可能……なはず……やり方さえ……あっていれば……多分……』

 やり取りを聞いていた詩は、ふと以下のことに思い至る。

「マゴイ、スペットとマゴイがこの時代のこの場所へ来たのは転送装置の暴走が原因なんだよね?」

『その通り』

「今この世界はエバーグリーンと繋がったけど、戻って転送装置を見つけられたら原因を調べて元の時代にもどれる?」

 マゴイは首を傾け、考えた。

『原因を調べるまでは出来るかも知れないけど……転送装置の使用許可は……ステーツマンだけが出せるのであって……私ではない……だから結局出来ない』

 詩は唇を引き結ぶ。
 この理屈、前にも聞いた。堂々巡りをしていることが彼女にはどうして分からないのだろうか。

「この世界では上司がいない場合今一番階級が上の人が決定権を持つの。つまり貴方だよ、マゴイ。貴方が考えて貴方が決めて。出来ないなんて言わせないよ!」

 ずっと黙って成り行きを見ていたルベーノが、そこで、初めて動いた。

「聞けば聞くほど、お前は実体の無いただの影なのだな、マゴイ。お前はもう、スペットにすがってスペットの声に反射を返すだけの、ただの木魂なのだな……」

『……なんだかえらい言われ方をされているような……』

 茶を飲むメイムは頷く。

「うん、思い切りされてるね」

 つかつかマゴイに歩み寄ったルベーノは正面から相手の顔を見据え、言った。

「この世界は多様性を支持している。お前たちのディストピアのように、人を生まれる前から形作るのもどちらかと言えば禁忌の領分だろう」

『……幸福に生まれる権利が……禁忌とされるなんて……お気の毒な世の中……』

 お前もお前でえらい物言いじゃないかと思いつつ、続ける。

「郷に入りては郷に従えという言葉を知っているか? 自前の身体も持たず、うろつき、人を拘束する技のみに長じる。お前の居た場所なら未だしも、今のようにこの世界でお前の常識を振りかざして行動し続ければ、いつか必ず討たれることになる。俺はそれを惜しむ」

『……討たれるって……どうして?……私は特に害になるようなことをしてないけど……』

 どうやら自分が騒動を引き起こしているという自覚がないらしい。
 仕方ないことではあると思いながらもルベーノは、ため息をつきたくなる。

「思考は肉体に結びつく。身体のないお前が、大きく考えを変えられないのも分かっている。だから……オートマトンの、身体を得てみないか? あれは、お前たちの世界に由来するのだろう? ハンターオフィスは、未起動のオートマトンを何体も持ち帰り起動実験を始めた。まっさらな状態ではあったが起動に成功したと聞く。お前も同じように身体を得て、きちんとこの世界で生きてみないか」

 それを聞いた瞬間、マゴイの態度が変わった。嫌悪感を声に滲ませ身震いする。

『御免蒙るわ……オートマトンは……市民の幸福を奪う……エネルギー資源を著しく枯渇させる……暴走されたら手に負えない……禁忌というなら……あれこそ禁忌物件にすべき……少なくともユニオンではそうしていた……オートマトンの製造も販売も使用も禁止していた……』

 その言葉にソラスは、以前ウォッチャーが見せてきたユニオンの光景を思い出した。
 そういえばあそこには、人間しかいなかった。製品みたいに子供が生み出されてはいたけど、オートマトンらしきものは見当たらなかった。

『……オートマトンが起動し始めたとなると……この世界もあんまり長くないかも………だとしたら早くユニオンの遺物を捜し当てなければ……そしてステーツマンを作らなきゃ……そうすれば私は……必要なことが全部決められる……』

「どう作るつもりなのか知らないけど、自分がステーツマンに昇格した方が早くない?」

 メイムの言葉をマゴイは聞いていない。一人気勢を上げている。

『……やらねば……!』

 額に浮かんだ目玉模様が薄れて行く。帰る気だと察したリナリスは、カチャの体を後ろからぎゅっと抱きしめた。マゴイが振り向く。目が合う。

『……何かしら……』

「あのね、触ったりしてもいい?」

『……いいわよ……別に……』

 お許しが出たので体を撫で唇を合わせた。マゴイは慣れた調子で口付けを返してくる。心なしひんやりした唇だった。
 それからウォッチャーとともに帰って行った。メイムが斧の柄でどつくまでもなく。




「大丈夫? マゴイは帰ったよ」

「そうですか……あの人に乗り移られると、なんだか疲れるんですよねー」

「実は取り憑かれるごとに寿命が削られてたりして……ウソウソ冗談。はい、ポーション」

 ぐんなりした様子でメイムからポーションを受け取り、一気飲みするカチャ。
 その背中にリナリスが飛びつく。

「お疲れ様♪ 一緒に食事しよ♪ 奢るから♪」

「わ、ありがとうございます! で、何を食べに行くんですか?」

「マゴイに吸われた精を取り戻すために、マムシ料理♪」

「それはちょっときついですね……」

 ソラスはぬいぐるみを撫で、ルベール、マルカと話し合う。

「マゴイさんが生き物に憑依するのは、そのマテリアルを借用したいからかも。自分の力だけで長時間この世界に干渉するのが、難しいのかも知れませんね」

「……確かに憑依先なしで具現化していたとき、短時間で退散していたなあの女」

「亜空間て休憩所なんですかね」

 側では落ち込んでいるらしき猫の頭を、アルスとルンルンが撫でている。

「スペットちゃん、泣かないで~」

「そのうちいいこともありますよ」

「泣いてえへんわ」

 強がる彼に詩は、映像を元にしたイラストを渡した。

「これ、枕の下に敷いて寝るといいよ。きっと今度こそ、シータさんの夢が見られるよ」


 この後、マゴイとのやり取りを記したマルカの報告書とアルスのメモ書きは、魔術師協会のタモンを通じ、無事魔術師協会に届けられた。


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    天竜寺 詩ka0396
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    ルベーノ・バルバラインka6752

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  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • タホ郷に新たな血を
    メイム(ka2290
    エルフ|15才|女性|霊闘士
  • ジルボ伝道師
    マルカ・アニチキン(ka2542
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • また、あなたと
    リナリス・リーカノア(ka5126
    人間(紅)|14才|女性|魔術師
  • 忍軍創設者
    ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784
    人間(蒼)|17才|女性|符術師
  • 魅惑のぷにぷにほっぺ
    アルス・テオ・ルシフィール(ka6245
    エルフ|10才|女性|霊闘士
  • 知るは楽しみなり
    ソラス(ka6581
    エルフ|20才|男性|魔術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/13 21:31:35
アイコン 相談卓だよ
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2017/05/14 16:53:21