ゲスト
(ka0000)
【血盟】乙女、町を守る道探る
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/15 15:00
- 完成日
- 2017/05/20 16:05
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●報告書
イノア・クリシスは溜息をもらした。
兄が人間として生きている未来もあったのかと思うと不思議に思えた。
夢、希望。
「お兄様が領主になっていら……父はあんな状況にならなかった。いえ、死んだあとは問題なかったから、そのあとよね、問題は」
魔法公害を引き金に発生した魔法生物による襲撃。
仕組まれた事件であり、兄とその護衛、母親の死で終わった。
貴族として、領主一家としての自分。
ただ一人のイノアという存在としての自分。
それらの狭間で事件については怒り、嘆き、苦しみ、すべて耐えてきた。
その狭間でも耐えてこられたのは、父親が町の復興を頑張ったこと。踊らされていた商人や研究者が進んでお金や知識を出したことにある。
一人の力ではなくみんなの力である。
だから、イノアもなんとか頑張ろうと思えたのだ。
それが、兄が歪虚となって現れてくずれた。
好奇心旺盛で、甘えたがり屋で、はきはきものを言う――実際の兄と正反対の存在。
その上、兄だなぁと思った部分もある、外見とイノアに対しての言葉。
歪虚であってもどこか優しい、気のせいかもしれないが。
昨年、討伐できたはずだった。
(お父様が足を引っ張った……と思っちゃいけないのですけど)
ハンターの行動に支障が出たのではと考えてしまう。歪虚でもいいから戻ってこいとは……領主ではなく、人間の父親としての本音だっただろうとは思う。
「それに……お兄様は結局なにしたいのかしら? それより、お父様だわ!」
西方での防衛に行った父がプエルと遭遇したという。その時、相当言い負かされたのか何かで父が落ち込んでいる。
一緒にいたのはべリンガー家の長男のリシャールらしい。外見上、兄が死んだころの年頃であり、嫉妬をかったのだろうなとイノアは考えた。
「教会でひきこもり」
べリンガー家とのやり取りで聞いたが、あちらの若君は自分の無力さを痛感し、エトファリカまで修行にしに行ったという。短期間とはいえ、頑張ったらしいとも聞いた。
「はあ」
イノアは溜息をもらす。
そして、町で発生する事件に意識を戻した、プエルがかかわっているのかと想像したためであるが、違う気もする。
「やはり、ハンターにお願いしたほうが早いでしょうか? きっと見えないものも引き付けるかもしれません」
イノアは仕えてくれる騎士のジョージ・モースを呼んだ。
●事件の内容
ジョージは事件をつぶさに調べる。
町を守り、領主を守るものとして当然だからという愚直さ。
「それにしても……これは……なんというのか……」
船着き場の水が増えている。
これに関しては天変地異の前触れかと町に住む学者たちに頼む。かんばしい答えは出てこない。
川に歪虚でもいるのかという噂すらある。
「船に積んだ物資が、水に浸されたみたいだった」
幅の広い川であるからこれで上や下に運ぶ。船と言っても大きなものではないし、ものによっては舟というものだ。
「水に浸って問題ないものはいいが、船も沈む、か」
それ以外に、誰かいる気配があったとか、祠のところに誰かいたとか、冷たい手で突然触られたが誰もいないとか……。
「怪談まがいのことが頻発しすぎている」
ジョージはソサエティの支部に足を運ぶ。
「あ、モース様」
奥にいる女性陣からちょっと歓喜の声が上がる。ちょっと憂いを帯びた表情の青年はちょっとした話題の一つ。
「実は、依頼があるのです」
船着き場やその周囲での事件について語る。
「あー、それは噂に上がっていますよ。ユグディラがいるんだ、っていうのが有力視される原因です」
「……ユグディラですか」
いてもおかしくはないが、水を一気に運ぶなどできるものだろうか?
もちろん、それが幻覚ならば何か方法はあるかもしれないが、本当に船に水は上がっていたという。それに、ユグディラがいたならいたで、もっと調査すればそれらしいものは見るはずだ。
「……まあ、本当に怖いものを見たくないという理由でもありますけどね」
受付の女性は悲しい表情になる。
「イノア様の御配慮に感謝ですね」
「もっと我々が早く気づけばよかったのです」
「違いますって! 確かに領主さまは守ってくれるものかと思います。でも、限度ってあるんですから。イノア様にはもうちょっと楽させてあげたいのですよ」
「ありがとうございます」
「それで、イノア様のお婿さんは!?」
直球で情報収集する職員にジョージは苦笑した。
●???
土地にいるそれらはなぜこうも自然をないがしろにするのだろう?
成長に必要なものは与えたし、取られても気にはしなかった。
多少のことであるし、慈しむべきだと考えたから。
しかし、なぜ、あの人間の子は歪虚の手を取ったのか?
せっかく一緒にいてもいいなと思ったのに。
また、その親はああでまでして子をかばおうとするのか?
よくわからない。
人間、邪魔。
立ち退きをお願いしようかな?
いないほうが実は楽かも?
イノア・クリシスは溜息をもらした。
兄が人間として生きている未来もあったのかと思うと不思議に思えた。
夢、希望。
「お兄様が領主になっていら……父はあんな状況にならなかった。いえ、死んだあとは問題なかったから、そのあとよね、問題は」
魔法公害を引き金に発生した魔法生物による襲撃。
仕組まれた事件であり、兄とその護衛、母親の死で終わった。
貴族として、領主一家としての自分。
ただ一人のイノアという存在としての自分。
それらの狭間で事件については怒り、嘆き、苦しみ、すべて耐えてきた。
その狭間でも耐えてこられたのは、父親が町の復興を頑張ったこと。踊らされていた商人や研究者が進んでお金や知識を出したことにある。
一人の力ではなくみんなの力である。
だから、イノアもなんとか頑張ろうと思えたのだ。
それが、兄が歪虚となって現れてくずれた。
好奇心旺盛で、甘えたがり屋で、はきはきものを言う――実際の兄と正反対の存在。
その上、兄だなぁと思った部分もある、外見とイノアに対しての言葉。
歪虚であってもどこか優しい、気のせいかもしれないが。
昨年、討伐できたはずだった。
(お父様が足を引っ張った……と思っちゃいけないのですけど)
ハンターの行動に支障が出たのではと考えてしまう。歪虚でもいいから戻ってこいとは……領主ではなく、人間の父親としての本音だっただろうとは思う。
「それに……お兄様は結局なにしたいのかしら? それより、お父様だわ!」
西方での防衛に行った父がプエルと遭遇したという。その時、相当言い負かされたのか何かで父が落ち込んでいる。
一緒にいたのはべリンガー家の長男のリシャールらしい。外見上、兄が死んだころの年頃であり、嫉妬をかったのだろうなとイノアは考えた。
「教会でひきこもり」
べリンガー家とのやり取りで聞いたが、あちらの若君は自分の無力さを痛感し、エトファリカまで修行にしに行ったという。短期間とはいえ、頑張ったらしいとも聞いた。
「はあ」
イノアは溜息をもらす。
そして、町で発生する事件に意識を戻した、プエルがかかわっているのかと想像したためであるが、違う気もする。
「やはり、ハンターにお願いしたほうが早いでしょうか? きっと見えないものも引き付けるかもしれません」
イノアは仕えてくれる騎士のジョージ・モースを呼んだ。
●事件の内容
ジョージは事件をつぶさに調べる。
町を守り、領主を守るものとして当然だからという愚直さ。
「それにしても……これは……なんというのか……」
船着き場の水が増えている。
これに関しては天変地異の前触れかと町に住む学者たちに頼む。かんばしい答えは出てこない。
川に歪虚でもいるのかという噂すらある。
「船に積んだ物資が、水に浸されたみたいだった」
幅の広い川であるからこれで上や下に運ぶ。船と言っても大きなものではないし、ものによっては舟というものだ。
「水に浸って問題ないものはいいが、船も沈む、か」
それ以外に、誰かいる気配があったとか、祠のところに誰かいたとか、冷たい手で突然触られたが誰もいないとか……。
「怪談まがいのことが頻発しすぎている」
ジョージはソサエティの支部に足を運ぶ。
「あ、モース様」
奥にいる女性陣からちょっと歓喜の声が上がる。ちょっと憂いを帯びた表情の青年はちょっとした話題の一つ。
「実は、依頼があるのです」
船着き場やその周囲での事件について語る。
「あー、それは噂に上がっていますよ。ユグディラがいるんだ、っていうのが有力視される原因です」
「……ユグディラですか」
いてもおかしくはないが、水を一気に運ぶなどできるものだろうか?
もちろん、それが幻覚ならば何か方法はあるかもしれないが、本当に船に水は上がっていたという。それに、ユグディラがいたならいたで、もっと調査すればそれらしいものは見るはずだ。
「……まあ、本当に怖いものを見たくないという理由でもありますけどね」
受付の女性は悲しい表情になる。
「イノア様の御配慮に感謝ですね」
「もっと我々が早く気づけばよかったのです」
「違いますって! 確かに領主さまは守ってくれるものかと思います。でも、限度ってあるんですから。イノア様にはもうちょっと楽させてあげたいのですよ」
「ありがとうございます」
「それで、イノア様のお婿さんは!?」
直球で情報収集する職員にジョージは苦笑した。
●???
土地にいるそれらはなぜこうも自然をないがしろにするのだろう?
成長に必要なものは与えたし、取られても気にはしなかった。
多少のことであるし、慈しむべきだと考えたから。
しかし、なぜ、あの人間の子は歪虚の手を取ったのか?
せっかく一緒にいてもいいなと思ったのに。
また、その親はああでまでして子をかばおうとするのか?
よくわからない。
人間、邪魔。
立ち退きをお願いしようかな?
いないほうが実は楽かも?
リプレイ本文
●場所へ
ハンターズソサエティの支部でハンターたちは状況確認や各々の行動を決める。
ロニ・カルディス(ka0551)は仲間に声をかける。
「――ということで、連絡手段はもったな? 情報の共有、できれば領主たちにも事態の共有をしたほうがいいな」
ロニは噂の裏付けと仲間の手が足りないところ補うつもりだった。
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は聞き込みをして念のため、ユグディラの状況を調べようと罠を作る。鮮魚や干物ととったら籠が落ちるような。
「――っ! 前にプエルが作ったのと同じレベルな気がする」
頭を抱えた。
エルバッハ・リオン(ka2434)は掃除道具と菓子や花を購入し、祠に向かった。
「町の過去を考えれば雑魔の存在を疑いますが、ただの雑魔が水かさをますなんて芸当ができるとは思いえませんし……もしかしたら精霊が関わっているかもしれませんが……決めつけるのはいけませんね」
祠の周囲でまずは聞きこみを行う。
ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804)は現在わかっている範囲での推理を行う。
「触られた人はいても危害を加えられた人はいないから歪虚説は却下。ユグディラの幻術では不可能な水の移動がある……四大精霊のこともあるし……祠もあるっていうし」
町のことを知っているはずの前領主ウィリアム・クリシスがいる場所に向かった。
マリィア・バルデス(ka5848)は説明と意見を言うため領主であるイノア・クリシスのもとに向かった。
「神霊樹の記憶でしか会ったことがないけれど、ニコラスの妹だと思うとね……なるべく幸せになってほしいと思うのよ」
ぽつり、心の中でつぶやいた。
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は念のために下水のチェックに向かう。町の過去の出来事を考えると、何かいる可能性も否定はできない。
「噂に上がってもいないので、何もないとは思いますが……念のためですね」
兵士が案内してくれたところから下りる。
●掃除
エルバッハは川べりを歩く。町の中心から外れるとさすがに雰囲気が違う。
揺れる川の水を見ると、増水気味である。
雨が降った、満ち潮の時期だというわけではないから問題なのだ。
船着き場は妙な緊張感が漂っているようだった。生命の危険はないとはいえ、奇妙なことが噂として伝わっているからだろう。
聞き込みでは「ここだけの話」と皆話したがる。
本当に水浸し事件に直接かかわった人はいなかったが、誰もが商品価値の問題になるため怖がっている。
祠は船着き場のそばにひっそりとある。目立った特徴はないが、誰かしらが掃除やお供えはしているようだ。
「傷んではいるのですね」
手にしている物では直せないため、報告事項と心に留める。
「さて、始めましょうか」
掃き清め、拭き掃除をする。
「……?」
視線を感じ、エルバッハは振り返る。
そこに、誰もいなかった。
ハンスは下水道の独特の匂いに顔をしかめつつ、灯で照らす。灯が向けられると何か移動するような影がある。
町で一番メーンの下水ということになっている通路を進む。
静かに足を運んでも音がなり、反響する。
もし、雑魔がいるなら襲ってくるだろう。
ネズミや住み着いた動物なら逃げるだろう、よほどでない限り。
支道に明かりを向けるが、特に何もない。
走ってきた何かが足元を横切った。よりによってそこを通るのかと思い、回避しようとして間に合わなかった。転んだ。
灯の先にはネズミが走り去るのが見える。
「……ただのネズミですね……」
修業が足りないとため息が漏れる。
一定場所まで進み引き返す。
「何事もない確認はできました。まずは、身を清めないといけませんね」
祠の掃除に行くにしても、町の人と話すにしても、短時間でもそれなりに下水臭がするのだった。
●領主
マリィアの見たイノアはデータ上で10歳程度の少女だったが、目の前にいるのは女性の一歩手前まで成長した少女だ。
(兄と妹、似ているといえば似ているわね)
髪の色や目の色は似ているがどこか違う。顔立ちもなんとなく似ているが、男女の差、性格の差もにじみ出る。
(この子のほうが厳しい現実を歩んでいるからかしら?)
マリィアは胸が痛むが現状の説明を淡々とする。
「――というわけで、精霊ではないかと」
イノアは眉間にしわを寄せる。
「難しい顔をしないで」
「……精霊の話はなんとなく伺っていますが、まさか、うちの領地で?」
「自然の霊なんてどこにでもいるんじゃない?」
イノアは険しい顔を崩さない。
「相手が何を望んでいるかわからない。本当はあなたが精霊との交渉の場に立った方がいいと思うの。町の代表であるのはあなただし」
「……」
「代表者が祭祀の先頭に立つ方が、相手に対してもよい感情があると思うわ」
「……そうですね」
イノアは少し眉間を開いた。
エクラ教会の司祭はピアレーチェの説明に理解を示し、ウィリアムの居住場所に案内してくれた。
「まともに話をしてくださるかわかりませんが」
「そんなに状態悪いの?」
「食事はしますが、誰とも話さないのです。イノアさまも困っておいでです」
「そっか。でも、長い間領主だったウィリアム様のほうがきっとわかると思う!」
きっぱりと明るい表情で告げるピアレーチェに司祭は懇願するようにうなずいた。
「失礼しまーす! 初めまして、あたしはハンターのピアレーチェと言います!」
カーテンは開いているため、中は明るい。
しかし、空気は非常に重かった。椅子に座り窓の外を眺める男が、この場の空気を支配してしまっているから。
「実は――」
ピアレーチェは受けた依頼のこと、町で起こっていることを説明する。
「……精霊か……」
ぽつりウィリアムがつぶやいた。
「ニコラスが……見たというんだ……純粋だったからあんなことに」
ウィリアムがうめく。
「祠のこと、由来とか、領主様が知っていることを教えてください! 祭り方があるならそれも知らないと、町が大変なことになっちゃう! 伝えたいことがあるから、何かいたずらしているんだよ」
ウィリアムはピアレーチェを見た。
「ね! 一緒に来てください!」
ピアレーチェは真正面から言葉をぶつけた。
●突撃!
ロニはつぶさに目撃、噂の下を歩き確認していく。
再現もできないかと考えていた。
時間帯は日中でも朝夕でも起こっているという水飲み場に行く。水が妙に動くや飲んでいる最中に触られたとか言ったものだった。
何もなかった。
「さすがに簡単には起きないか」
いくつか現場を見たが、水場が近いという以外共通点はない。
「水の精霊なら、それに由来しているところを渡り歩いている可能性はある……としても」
それ以上特にない。
「そういえば、レイオスがユグディラ用の罠を仕掛けたというから」
祠に向かう前に覗いてみることにした。
何かがいる。
急いで近づいた。
「ただの猫か、それともユグディラなのか?」
用心しつつ罠を外す。
「どっちだ?」
「にゃあ」
抱きかかえられると逃げようと暴れ始めた。
「お」
猫はロニの顔をひっかいて、ひるんだすきに逃げた。
「……猫に擬態するのがうまいユグディラ……ということもないような」
祠に向かって歩き始めた。
レイオスは川の中を確認したかった。
水はまだ冷たく泳ぐには早い。
「……でもなあ、見ておかないと、消去法で精霊と決められないよな」
増水が続いて、洪水伝説再現みたいな自体は避けたい。
精霊の力なら鎮めてもらう、もし何かいるなら戦う必要があるのだ。
泳ぐのに邪魔な装備は外し、飛び込み【ソウルトーチ】を使う。
マテリアルに反応する存在がいれば、もうけもの。
ある程度見える水の中。息を止め、何度か潜る。
ふと視線に気づく。
船着き場で眺める周囲の人々だろうか? 違うところで見られた気がした。
「主もいるから気をつけてな」
「主って、でかい魚の主だよな?」
「おう。それ以外何があるってんだい!」
楽し気な声と笑い声が起こる。
レイオスも笑う。そして、潜る。徐々に深いところを目指して。
(ダムってわけじゃないが……これが影響するのかあ?)
と思った瞬間、腹に強い外圧を瞬間に感じ息を吐きだした。
「げふ……ぐごごごご……」
慌てて水面を目指した。
「げほっ……げほっ……なんだあ?」
なにかに腹を殴られた感覚だ。
【ソウルトーチ】がひきつけたのか、見つけた物がいけなかったのか。
「もう一度……」
「おおい、お兄さん、祠の方のハンターさんが呼んでるぞー」
「ありがと!」
上がることとなった。
●精霊、頬を膨らませる
エルバッハは祠をきれいにしたら、やることが終わった。
祠のそばでのんびりする。のんびりというより、何かがいるならそれに対して友好的に、意思疎通ができるなら何とかしたかったのだ。
ひんやりとした空気に気づいた。
「えっ!?」
エルバッハは思わず飛びのいた。
お供えものに置いた菓子を手に、水で作ったような少女と思われる存在がいたのだ。
肌も髪も、服も水のように見える。うごめき、形を変える。それでいて、色も見える。いや、水色であり、透けている。
エルバッハは魔導短伝話で仲間に連絡をしようとして、一旦手を止める。
「あなたと話したいことがあります。仲間も呼びたいのです良いですか?」
それは無表情のままエルバッハを見、鷹揚にうなずく。
「精霊、ですよね?」
それはうなずいた。
ピアレーチェはフードを目深にかぶったウィリアムを連れて歩いているときにその連絡を受ける。
「えー、急いでいくよ! ウィリアム様、精霊さまが姿を現したって」
「……まさか、本当にいたのか」
「いた、みたい」
ロニが脇道から出てきてちょうど合流する。ピアレーチェの連れを見て彼は驚いた。
「……前領主を連れてきたのか」
「うん」
「そうか、その方が早いな」
急いで船着き場に行くと、ハンターもいるということで人が多く集まっていた。
「ウィリアム様だ」
「まさか、来てくださるとは」
フードをかぶって顔が見えなくても、状況と雰囲気であっさり看破されていた。
イノアといたマリィアもエルバッハの連絡を受けた。
「どうやら、精霊がいるみたいね……報告がいいかしら? 一緒に行くかしら?」
「……行きます。ジョージ、出かけて来ます」
イノアは控えていた騎士ジョージ・モースに声をかけた。
状況は把握している彼は了承とともに、扉を開ける。
「一緒に行きます」
イノアはジョージとマリィアとともに出かける。
「……あ、マリィアさん……こちらの方は?」
身を清めて祠に向かおうとしていたハンスと出会う。
「ここの領主のイノア・クリシス」
「なるほど。初めまして」
挨拶をしながら道を急いだ。
レイオスは祠にいる精霊を見て、動きが止まる。
精霊はレイオスを見て頬を膨らませ、指をさしなにか訴える。
「……さっき、腹殴ったのお前か」
問いかけというより断定の言葉にそれは胸を張る。
「いや、それは……」
「何したんです?」
エルバッハが状況を問う。
「ダム? と思うのがあったんだ。おい、あれはお前が作ったのか!」
精霊は笑顔で手をたたく。
話進める前に、ちょうど他の者たちも集まった。
精霊はその中の人物を見て、まなじりを鋭く上げる。
どしどしというように歩くと、ウィリアムの胸倉をつかむ勢いで何か言っている。
「……これは……」
確実に何か文句を言っている、怒っている。
「お父様……何かしたんですか」
イノアは父が教会から出てきたことに驚きつつ、精霊の怒っている様子を見て無表情になる。
「わ、私が、か?」
精霊は口元をゆがめ、泣き顔になる。
イノアを指さし何か言っている。
「……わたくしですか?」
精霊は首を激しく横に振った。
「町を沈めようとダムを作っている理由は? まあ、ダムはあまり関係ないのかもしれないが」
レイオスが問う。途方に暮れた声音。
「お供えに土用餅!」
ピアレーチェはにっこり笑って差し出すと、精霊は一瞥して手を動かしかかってやめる。
「お願いします。どうすればいいんですか?」
イノアの問いかけにそれは祠に移動するとブローチを取り出した。
「それはなんでしょうか?」
ハンスは手を伸ばしかかり手をたたかれた。
「意外と痛いんですが……お借りしてもよいでしょうか?」
許可をとったところ渡してくれた。
そして、彼の頭上に透明な盥に水が入っていたらこんな感じかと思われるものが浮かんだ。非常に頭上に威圧感がある。
「何かあるとそれが降ってくるわけか」
ロニがハンスの頭の上とそれを見つつ尋ねると、精霊はうなずいた。
ハンスが仲間やイノアたちに見せる。
「なぜ、これを? ニコラスはなくしたといっていた……が」
ウィリアムが驚く。今は亡き息子、そして歪虚として存在している息子。
精霊は手を振りながら、何か説明する。胸の前で手を組んで祈るようなしぐさをしたとき、まるで恋する乙女のような表情だった。
「ニコラスが、渡したのか?」
精霊はうなずいた。
「つまり……ニコラスは知っていたということ? 精霊がいるということ」
マリィアは精霊の様子から考えるが精霊は首をかしげる。
「ひょっとして精霊が人間の若様へ恋?」
ピアレーチェはニコニコいうが、目の前の精霊の状況を見ると違うような気もする。ニコラスには興味があったというのはなんとなく感じる。
ブローチを返せと怒っているようなので、精霊の手に戻る。
「あなたは何を望むのですか?」
エルバッハが問いかける。
精霊はうなずくと手をたたき、万歳のように手をあげた。
川で水柱が上がり、悲鳴が上がる。
「待って! 土地を汚されて怒っているなら、もう少し待って!」
マリィアが声をあげる。
「精霊のこと……敬う気持ち、きっと思い出して町の人も変わっていきます」
ハンスは精霊に話しかける。まだ話をしきれていていない、怪談めいたそれが精霊の仕業で拗ねている子供のようと分かれば、町の人も変わるだろうと。
「ウィリアム様! イノア様!」
ピアレーチェが声をあげる。何かあれば守るが、たぶん話をするのは二人がいいはずだ。
「すまない、私の力が足りずに……」
ウィリアムがフードを外し、精霊に頭を下げる。
イノアも前に出る。同じく頭を下げる。
精霊はじっと二人を見つめる。
何か悔しそうに口を動かすと、水柱は消えた。
無表情に戻った精霊は川の中に戻っていった。
「……ひとまず、許していただけたのでしょうか?」
イノアは困惑する。
「……たぶん、猶予はできています」
エルバッハの言葉に誰からも異論は出なかった。
祠の傷みのことダムのことをイノアに直接報告する。
その場にいた町の人たちから噂は一気に広がる。精霊が本当に存在し、自己主張をしているということを。
土地は人間だけのものではない、と。
ハンターズソサエティの支部でハンターたちは状況確認や各々の行動を決める。
ロニ・カルディス(ka0551)は仲間に声をかける。
「――ということで、連絡手段はもったな? 情報の共有、できれば領主たちにも事態の共有をしたほうがいいな」
ロニは噂の裏付けと仲間の手が足りないところ補うつもりだった。
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は聞き込みをして念のため、ユグディラの状況を調べようと罠を作る。鮮魚や干物ととったら籠が落ちるような。
「――っ! 前にプエルが作ったのと同じレベルな気がする」
頭を抱えた。
エルバッハ・リオン(ka2434)は掃除道具と菓子や花を購入し、祠に向かった。
「町の過去を考えれば雑魔の存在を疑いますが、ただの雑魔が水かさをますなんて芸当ができるとは思いえませんし……もしかしたら精霊が関わっているかもしれませんが……決めつけるのはいけませんね」
祠の周囲でまずは聞きこみを行う。
ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804)は現在わかっている範囲での推理を行う。
「触られた人はいても危害を加えられた人はいないから歪虚説は却下。ユグディラの幻術では不可能な水の移動がある……四大精霊のこともあるし……祠もあるっていうし」
町のことを知っているはずの前領主ウィリアム・クリシスがいる場所に向かった。
マリィア・バルデス(ka5848)は説明と意見を言うため領主であるイノア・クリシスのもとに向かった。
「神霊樹の記憶でしか会ったことがないけれど、ニコラスの妹だと思うとね……なるべく幸せになってほしいと思うのよ」
ぽつり、心の中でつぶやいた。
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は念のために下水のチェックに向かう。町の過去の出来事を考えると、何かいる可能性も否定はできない。
「噂に上がってもいないので、何もないとは思いますが……念のためですね」
兵士が案内してくれたところから下りる。
●掃除
エルバッハは川べりを歩く。町の中心から外れるとさすがに雰囲気が違う。
揺れる川の水を見ると、増水気味である。
雨が降った、満ち潮の時期だというわけではないから問題なのだ。
船着き場は妙な緊張感が漂っているようだった。生命の危険はないとはいえ、奇妙なことが噂として伝わっているからだろう。
聞き込みでは「ここだけの話」と皆話したがる。
本当に水浸し事件に直接かかわった人はいなかったが、誰もが商品価値の問題になるため怖がっている。
祠は船着き場のそばにひっそりとある。目立った特徴はないが、誰かしらが掃除やお供えはしているようだ。
「傷んではいるのですね」
手にしている物では直せないため、報告事項と心に留める。
「さて、始めましょうか」
掃き清め、拭き掃除をする。
「……?」
視線を感じ、エルバッハは振り返る。
そこに、誰もいなかった。
ハンスは下水道の独特の匂いに顔をしかめつつ、灯で照らす。灯が向けられると何か移動するような影がある。
町で一番メーンの下水ということになっている通路を進む。
静かに足を運んでも音がなり、反響する。
もし、雑魔がいるなら襲ってくるだろう。
ネズミや住み着いた動物なら逃げるだろう、よほどでない限り。
支道に明かりを向けるが、特に何もない。
走ってきた何かが足元を横切った。よりによってそこを通るのかと思い、回避しようとして間に合わなかった。転んだ。
灯の先にはネズミが走り去るのが見える。
「……ただのネズミですね……」
修業が足りないとため息が漏れる。
一定場所まで進み引き返す。
「何事もない確認はできました。まずは、身を清めないといけませんね」
祠の掃除に行くにしても、町の人と話すにしても、短時間でもそれなりに下水臭がするのだった。
●領主
マリィアの見たイノアはデータ上で10歳程度の少女だったが、目の前にいるのは女性の一歩手前まで成長した少女だ。
(兄と妹、似ているといえば似ているわね)
髪の色や目の色は似ているがどこか違う。顔立ちもなんとなく似ているが、男女の差、性格の差もにじみ出る。
(この子のほうが厳しい現実を歩んでいるからかしら?)
マリィアは胸が痛むが現状の説明を淡々とする。
「――というわけで、精霊ではないかと」
イノアは眉間にしわを寄せる。
「難しい顔をしないで」
「……精霊の話はなんとなく伺っていますが、まさか、うちの領地で?」
「自然の霊なんてどこにでもいるんじゃない?」
イノアは険しい顔を崩さない。
「相手が何を望んでいるかわからない。本当はあなたが精霊との交渉の場に立った方がいいと思うの。町の代表であるのはあなただし」
「……」
「代表者が祭祀の先頭に立つ方が、相手に対してもよい感情があると思うわ」
「……そうですね」
イノアは少し眉間を開いた。
エクラ教会の司祭はピアレーチェの説明に理解を示し、ウィリアムの居住場所に案内してくれた。
「まともに話をしてくださるかわかりませんが」
「そんなに状態悪いの?」
「食事はしますが、誰とも話さないのです。イノアさまも困っておいでです」
「そっか。でも、長い間領主だったウィリアム様のほうがきっとわかると思う!」
きっぱりと明るい表情で告げるピアレーチェに司祭は懇願するようにうなずいた。
「失礼しまーす! 初めまして、あたしはハンターのピアレーチェと言います!」
カーテンは開いているため、中は明るい。
しかし、空気は非常に重かった。椅子に座り窓の外を眺める男が、この場の空気を支配してしまっているから。
「実は――」
ピアレーチェは受けた依頼のこと、町で起こっていることを説明する。
「……精霊か……」
ぽつりウィリアムがつぶやいた。
「ニコラスが……見たというんだ……純粋だったからあんなことに」
ウィリアムがうめく。
「祠のこと、由来とか、領主様が知っていることを教えてください! 祭り方があるならそれも知らないと、町が大変なことになっちゃう! 伝えたいことがあるから、何かいたずらしているんだよ」
ウィリアムはピアレーチェを見た。
「ね! 一緒に来てください!」
ピアレーチェは真正面から言葉をぶつけた。
●突撃!
ロニはつぶさに目撃、噂の下を歩き確認していく。
再現もできないかと考えていた。
時間帯は日中でも朝夕でも起こっているという水飲み場に行く。水が妙に動くや飲んでいる最中に触られたとか言ったものだった。
何もなかった。
「さすがに簡単には起きないか」
いくつか現場を見たが、水場が近いという以外共通点はない。
「水の精霊なら、それに由来しているところを渡り歩いている可能性はある……としても」
それ以上特にない。
「そういえば、レイオスがユグディラ用の罠を仕掛けたというから」
祠に向かう前に覗いてみることにした。
何かがいる。
急いで近づいた。
「ただの猫か、それともユグディラなのか?」
用心しつつ罠を外す。
「どっちだ?」
「にゃあ」
抱きかかえられると逃げようと暴れ始めた。
「お」
猫はロニの顔をひっかいて、ひるんだすきに逃げた。
「……猫に擬態するのがうまいユグディラ……ということもないような」
祠に向かって歩き始めた。
レイオスは川の中を確認したかった。
水はまだ冷たく泳ぐには早い。
「……でもなあ、見ておかないと、消去法で精霊と決められないよな」
増水が続いて、洪水伝説再現みたいな自体は避けたい。
精霊の力なら鎮めてもらう、もし何かいるなら戦う必要があるのだ。
泳ぐのに邪魔な装備は外し、飛び込み【ソウルトーチ】を使う。
マテリアルに反応する存在がいれば、もうけもの。
ある程度見える水の中。息を止め、何度か潜る。
ふと視線に気づく。
船着き場で眺める周囲の人々だろうか? 違うところで見られた気がした。
「主もいるから気をつけてな」
「主って、でかい魚の主だよな?」
「おう。それ以外何があるってんだい!」
楽し気な声と笑い声が起こる。
レイオスも笑う。そして、潜る。徐々に深いところを目指して。
(ダムってわけじゃないが……これが影響するのかあ?)
と思った瞬間、腹に強い外圧を瞬間に感じ息を吐きだした。
「げふ……ぐごごごご……」
慌てて水面を目指した。
「げほっ……げほっ……なんだあ?」
なにかに腹を殴られた感覚だ。
【ソウルトーチ】がひきつけたのか、見つけた物がいけなかったのか。
「もう一度……」
「おおい、お兄さん、祠の方のハンターさんが呼んでるぞー」
「ありがと!」
上がることとなった。
●精霊、頬を膨らませる
エルバッハは祠をきれいにしたら、やることが終わった。
祠のそばでのんびりする。のんびりというより、何かがいるならそれに対して友好的に、意思疎通ができるなら何とかしたかったのだ。
ひんやりとした空気に気づいた。
「えっ!?」
エルバッハは思わず飛びのいた。
お供えものに置いた菓子を手に、水で作ったような少女と思われる存在がいたのだ。
肌も髪も、服も水のように見える。うごめき、形を変える。それでいて、色も見える。いや、水色であり、透けている。
エルバッハは魔導短伝話で仲間に連絡をしようとして、一旦手を止める。
「あなたと話したいことがあります。仲間も呼びたいのです良いですか?」
それは無表情のままエルバッハを見、鷹揚にうなずく。
「精霊、ですよね?」
それはうなずいた。
ピアレーチェはフードを目深にかぶったウィリアムを連れて歩いているときにその連絡を受ける。
「えー、急いでいくよ! ウィリアム様、精霊さまが姿を現したって」
「……まさか、本当にいたのか」
「いた、みたい」
ロニが脇道から出てきてちょうど合流する。ピアレーチェの連れを見て彼は驚いた。
「……前領主を連れてきたのか」
「うん」
「そうか、その方が早いな」
急いで船着き場に行くと、ハンターもいるということで人が多く集まっていた。
「ウィリアム様だ」
「まさか、来てくださるとは」
フードをかぶって顔が見えなくても、状況と雰囲気であっさり看破されていた。
イノアといたマリィアもエルバッハの連絡を受けた。
「どうやら、精霊がいるみたいね……報告がいいかしら? 一緒に行くかしら?」
「……行きます。ジョージ、出かけて来ます」
イノアは控えていた騎士ジョージ・モースに声をかけた。
状況は把握している彼は了承とともに、扉を開ける。
「一緒に行きます」
イノアはジョージとマリィアとともに出かける。
「……あ、マリィアさん……こちらの方は?」
身を清めて祠に向かおうとしていたハンスと出会う。
「ここの領主のイノア・クリシス」
「なるほど。初めまして」
挨拶をしながら道を急いだ。
レイオスは祠にいる精霊を見て、動きが止まる。
精霊はレイオスを見て頬を膨らませ、指をさしなにか訴える。
「……さっき、腹殴ったのお前か」
問いかけというより断定の言葉にそれは胸を張る。
「いや、それは……」
「何したんです?」
エルバッハが状況を問う。
「ダム? と思うのがあったんだ。おい、あれはお前が作ったのか!」
精霊は笑顔で手をたたく。
話進める前に、ちょうど他の者たちも集まった。
精霊はその中の人物を見て、まなじりを鋭く上げる。
どしどしというように歩くと、ウィリアムの胸倉をつかむ勢いで何か言っている。
「……これは……」
確実に何か文句を言っている、怒っている。
「お父様……何かしたんですか」
イノアは父が教会から出てきたことに驚きつつ、精霊の怒っている様子を見て無表情になる。
「わ、私が、か?」
精霊は口元をゆがめ、泣き顔になる。
イノアを指さし何か言っている。
「……わたくしですか?」
精霊は首を激しく横に振った。
「町を沈めようとダムを作っている理由は? まあ、ダムはあまり関係ないのかもしれないが」
レイオスが問う。途方に暮れた声音。
「お供えに土用餅!」
ピアレーチェはにっこり笑って差し出すと、精霊は一瞥して手を動かしかかってやめる。
「お願いします。どうすればいいんですか?」
イノアの問いかけにそれは祠に移動するとブローチを取り出した。
「それはなんでしょうか?」
ハンスは手を伸ばしかかり手をたたかれた。
「意外と痛いんですが……お借りしてもよいでしょうか?」
許可をとったところ渡してくれた。
そして、彼の頭上に透明な盥に水が入っていたらこんな感じかと思われるものが浮かんだ。非常に頭上に威圧感がある。
「何かあるとそれが降ってくるわけか」
ロニがハンスの頭の上とそれを見つつ尋ねると、精霊はうなずいた。
ハンスが仲間やイノアたちに見せる。
「なぜ、これを? ニコラスはなくしたといっていた……が」
ウィリアムが驚く。今は亡き息子、そして歪虚として存在している息子。
精霊は手を振りながら、何か説明する。胸の前で手を組んで祈るようなしぐさをしたとき、まるで恋する乙女のような表情だった。
「ニコラスが、渡したのか?」
精霊はうなずいた。
「つまり……ニコラスは知っていたということ? 精霊がいるということ」
マリィアは精霊の様子から考えるが精霊は首をかしげる。
「ひょっとして精霊が人間の若様へ恋?」
ピアレーチェはニコニコいうが、目の前の精霊の状況を見ると違うような気もする。ニコラスには興味があったというのはなんとなく感じる。
ブローチを返せと怒っているようなので、精霊の手に戻る。
「あなたは何を望むのですか?」
エルバッハが問いかける。
精霊はうなずくと手をたたき、万歳のように手をあげた。
川で水柱が上がり、悲鳴が上がる。
「待って! 土地を汚されて怒っているなら、もう少し待って!」
マリィアが声をあげる。
「精霊のこと……敬う気持ち、きっと思い出して町の人も変わっていきます」
ハンスは精霊に話しかける。まだ話をしきれていていない、怪談めいたそれが精霊の仕業で拗ねている子供のようと分かれば、町の人も変わるだろうと。
「ウィリアム様! イノア様!」
ピアレーチェが声をあげる。何かあれば守るが、たぶん話をするのは二人がいいはずだ。
「すまない、私の力が足りずに……」
ウィリアムがフードを外し、精霊に頭を下げる。
イノアも前に出る。同じく頭を下げる。
精霊はじっと二人を見つめる。
何か悔しそうに口を動かすと、水柱は消えた。
無表情に戻った精霊は川の中に戻っていった。
「……ひとまず、許していただけたのでしょうか?」
イノアは困惑する。
「……たぶん、猶予はできています」
エルバッハの言葉に誰からも異論は出なかった。
祠の傷みのことダムのことをイノアに直接報告する。
その場にいた町の人たちから噂は一気に広がる。精霊が本当に存在し、自己主張をしているということを。
土地は人間だけのものではない、と。
依頼結果
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相談卓 レイオス・アクアウォーカー(ka1990) 人間(リアルブルー)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/05/15 03:02:11 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/14 21:51:40 |