ゲスト
(ka0000)
【血盟】イクタサと一緒!
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/15 07:30
- 完成日
- 2017/05/17 06:41
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
スコール族の族長ファリフ・スコール(kz0009)は、ノアーラ・クンタウを訪れていた。
要塞管理者ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)より呼び出しを受けていた為だ。
ファリフはヴェルナーの用意した紅茶を前にやや緊張した面持ちだ。
「すいません。本来であればこちらがパシュパティ砦へ赴かなければなりませんが、帝国内の対応が立て込んでいまして。
レディを呼びつけるという無粋な真似はしたくはなかったのですが……」
「大丈夫だよ。それより、ちょっと『レディ』なんて呼ばれるのはくすぐったいんだけど」
目の前に出された紅茶に口も付けず、ファリフは照れている様子だ。
正直、ファリフはヴェルナーが苦手だった。
帝国と辺境が不仲であったことは過去の話だが、それ以上にヴェルナーがファリフを『レディ』として扱ってくるのが原因だ。
不慣れな扱いにファリフは戸惑いを隠せない。
「ふふ、いけませんね。
あなたは連合軍でも中核を担う人材の一人。今後はリアルブルーへ赴く事もあるでしょう。最低限の礼儀とマナーを学んでおくことは、損にはなりませんよ。
……そうだ。時間がある時に私がレッスンを致しましょう」
最近、ヴェルナーは部族会議首長のバタルトゥ・オイマト(kz0023)の補佐を行っている。各地で転戦する辺境の戦士達を裏から支え、時にはバタルトゥ自身も前線へと赴く。こうなれば、バタルトゥの手も足りない。
それを見かねたヴェルナーが補佐役として支援を始めていた。蛇の戦士シバは部族会議を国家形成の土台にと考えていた事はヴェルナーも理解している。その上での支援なのだが、パシュパティ砦を訪れる度にファリフの振る舞いを気にしていたようだ。
ファリフは、ヴェルナーの申し出に対して慌てて頭を振る。
「い、いいよ。大丈夫だよ。
それより、何かボクに用事があるんでしょ? ボクじゃないとダメなお仕事って聞いたけど」
「うまく話をはぐらかされたような気もしますが、まあ良いでしょう。
パシュパティ砦の近くに、突如森が出現した話……ご存知でしょうか」
ヴェルナーは、ファリフに促されるまま本題を切り出した。
クリムゾンウェストでも様々な現象は確認されてきたが、一夜にして森林地帯が形成された例はない。歪虚の仕業かと思われたが、報告によればもっと別の存在が関与しているようだ。
「ああ、確かとっても偉い精霊がいるんだよね」
「そうです。あの森にある『シンタチャシ』と呼ばれる場所に、勇気を司る精霊イクタサさんがいます。私も先日お会いしましたが、少々変わった方ですね」
四大精霊――イクタサ。
星の傷跡の地下深く。封神領域マグ・メルでシンタチャシと称された場所にいる勇気を司り、風を操る精霊。
ハンターの勇気を試すと称して戦いを挑み、四大精霊の一人として力の片鱗を示した。
イクタサの話は、ファリフの耳にも入っている。
「聞いているよ。星の傷跡の奥にいたんだって。あの森もイクタサが作ったんだよね」
「イクタサさんは正直、気難しい方です。機嫌を損ねようものなら何をしでかすか分かりません。
ですから、連合軍としては四大精霊との関係を良好に保っておきたいのです。
その為にシンタチャシへ赴き、ハンターがささやかな茶会を開きます。
そこでお願いなのですが、ハンターと一緒にイクタサさんのところへ同行していただけないでしょうか?」
ヴェルナーの話とは、イクタサとの接触にファリフを同行して欲しいという打診であった。
シンタチャシで戦ったハンターと同行してイクタサとの交流を深めるのは当然だが――。
「え? ボクが一緒に行く理由は?」
「それはイクタサさんがあなたを気に入っているからです。その、お腹のアザ……覚えがあるでしょう?」
ファリフのお腹には狼のようなアザがある。
生まれつき付いたアザだが、このアザこそファリフがスコール族の族長であると同時に大精霊の加護を受けた伝説の子として言い伝えを受けた存在だからである。
その加護を与えたのが、イクタサであると言われているのだ。
ハンターとの会話でもファリフの事を話題にしているところを見れば、イクタサがファリフを気にしているのは間違いない。
「そうなんだ。会ったこと無い人から好かれてるって事なんだよね。なんか、複雑だなぁ」
「イクタサさんはハンターと戦った際にもあなたの事を気にされていたそうです。あなたが同行してくれるなら、イクタサさんとの交流もずっと深まる事でしょう」
ヴェルナーは、小さく頷く。
ファリフが同行する事でイクタサがどのような行動を取るかは予想ができない。ただ、先の戦いの報告を聞く限り、そう悪い展開にはならないはずだ。
「いいけど、ヴェルナーは行かないの?」
「ああ、私ですか? 同行したいのは山々なのですが、先日イクタサさんの機嫌を損ねてしまったかもしれないのです。他意は無かったのですが……」
「わかった。ボクが行くよ。ついでに誤解も解いておくから」
「そう言っていただけると助かります。ハンターの皆さんもイクタサさんに聞きたいことがあると思います。多少聞きにくい話でも、ファリフさんがいればきっと答えてくれるでしょうね」
了承するファリフに、ヴェルナーは満足そうな笑みを浮かべる。
●
(聞いたでありますよ! 何やら、また新たなキャラが登場でありますな。
いや、それよりも我輩抜きでお茶会を開催とは聞き捨てならないであります!)
ヴェルナーの執務室を覗き見する小さな影。
脂肪で丸々と肥えた体を無理矢理縮めて、室内の会話を聞いていたようである。
(テルルの所へ遊びに行ったら邪魔するなと怒られたでありますが、まさかの収穫であります。
あれ? 大精霊は王より偉いでありますか? ……まあ、いいであります。ここは我輩が出向いて王との謁見を許可するであります)
●
シンタチャシにも夜は訪れる。
地下と異なり、本物の夜空。
空を覆う満天の空の下、イクタサは岩に腰掛けて佇んでいた。
「ヴェルナーって言ったっけ。良く分からない奴だったけど、お願いしていた事はやってくれたんだ。
それより、ついに『あの子』と逢えるのか……。
ふふ、楽しみだな。どうやってもてなそうかな?」
要塞管理者ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)より呼び出しを受けていた為だ。
ファリフはヴェルナーの用意した紅茶を前にやや緊張した面持ちだ。
「すいません。本来であればこちらがパシュパティ砦へ赴かなければなりませんが、帝国内の対応が立て込んでいまして。
レディを呼びつけるという無粋な真似はしたくはなかったのですが……」
「大丈夫だよ。それより、ちょっと『レディ』なんて呼ばれるのはくすぐったいんだけど」
目の前に出された紅茶に口も付けず、ファリフは照れている様子だ。
正直、ファリフはヴェルナーが苦手だった。
帝国と辺境が不仲であったことは過去の話だが、それ以上にヴェルナーがファリフを『レディ』として扱ってくるのが原因だ。
不慣れな扱いにファリフは戸惑いを隠せない。
「ふふ、いけませんね。
あなたは連合軍でも中核を担う人材の一人。今後はリアルブルーへ赴く事もあるでしょう。最低限の礼儀とマナーを学んでおくことは、損にはなりませんよ。
……そうだ。時間がある時に私がレッスンを致しましょう」
最近、ヴェルナーは部族会議首長のバタルトゥ・オイマト(kz0023)の補佐を行っている。各地で転戦する辺境の戦士達を裏から支え、時にはバタルトゥ自身も前線へと赴く。こうなれば、バタルトゥの手も足りない。
それを見かねたヴェルナーが補佐役として支援を始めていた。蛇の戦士シバは部族会議を国家形成の土台にと考えていた事はヴェルナーも理解している。その上での支援なのだが、パシュパティ砦を訪れる度にファリフの振る舞いを気にしていたようだ。
ファリフは、ヴェルナーの申し出に対して慌てて頭を振る。
「い、いいよ。大丈夫だよ。
それより、何かボクに用事があるんでしょ? ボクじゃないとダメなお仕事って聞いたけど」
「うまく話をはぐらかされたような気もしますが、まあ良いでしょう。
パシュパティ砦の近くに、突如森が出現した話……ご存知でしょうか」
ヴェルナーは、ファリフに促されるまま本題を切り出した。
クリムゾンウェストでも様々な現象は確認されてきたが、一夜にして森林地帯が形成された例はない。歪虚の仕業かと思われたが、報告によればもっと別の存在が関与しているようだ。
「ああ、確かとっても偉い精霊がいるんだよね」
「そうです。あの森にある『シンタチャシ』と呼ばれる場所に、勇気を司る精霊イクタサさんがいます。私も先日お会いしましたが、少々変わった方ですね」
四大精霊――イクタサ。
星の傷跡の地下深く。封神領域マグ・メルでシンタチャシと称された場所にいる勇気を司り、風を操る精霊。
ハンターの勇気を試すと称して戦いを挑み、四大精霊の一人として力の片鱗を示した。
イクタサの話は、ファリフの耳にも入っている。
「聞いているよ。星の傷跡の奥にいたんだって。あの森もイクタサが作ったんだよね」
「イクタサさんは正直、気難しい方です。機嫌を損ねようものなら何をしでかすか分かりません。
ですから、連合軍としては四大精霊との関係を良好に保っておきたいのです。
その為にシンタチャシへ赴き、ハンターがささやかな茶会を開きます。
そこでお願いなのですが、ハンターと一緒にイクタサさんのところへ同行していただけないでしょうか?」
ヴェルナーの話とは、イクタサとの接触にファリフを同行して欲しいという打診であった。
シンタチャシで戦ったハンターと同行してイクタサとの交流を深めるのは当然だが――。
「え? ボクが一緒に行く理由は?」
「それはイクタサさんがあなたを気に入っているからです。その、お腹のアザ……覚えがあるでしょう?」
ファリフのお腹には狼のようなアザがある。
生まれつき付いたアザだが、このアザこそファリフがスコール族の族長であると同時に大精霊の加護を受けた伝説の子として言い伝えを受けた存在だからである。
その加護を与えたのが、イクタサであると言われているのだ。
ハンターとの会話でもファリフの事を話題にしているところを見れば、イクタサがファリフを気にしているのは間違いない。
「そうなんだ。会ったこと無い人から好かれてるって事なんだよね。なんか、複雑だなぁ」
「イクタサさんはハンターと戦った際にもあなたの事を気にされていたそうです。あなたが同行してくれるなら、イクタサさんとの交流もずっと深まる事でしょう」
ヴェルナーは、小さく頷く。
ファリフが同行する事でイクタサがどのような行動を取るかは予想ができない。ただ、先の戦いの報告を聞く限り、そう悪い展開にはならないはずだ。
「いいけど、ヴェルナーは行かないの?」
「ああ、私ですか? 同行したいのは山々なのですが、先日イクタサさんの機嫌を損ねてしまったかもしれないのです。他意は無かったのですが……」
「わかった。ボクが行くよ。ついでに誤解も解いておくから」
「そう言っていただけると助かります。ハンターの皆さんもイクタサさんに聞きたいことがあると思います。多少聞きにくい話でも、ファリフさんがいればきっと答えてくれるでしょうね」
了承するファリフに、ヴェルナーは満足そうな笑みを浮かべる。
●
(聞いたでありますよ! 何やら、また新たなキャラが登場でありますな。
いや、それよりも我輩抜きでお茶会を開催とは聞き捨てならないであります!)
ヴェルナーの執務室を覗き見する小さな影。
脂肪で丸々と肥えた体を無理矢理縮めて、室内の会話を聞いていたようである。
(テルルの所へ遊びに行ったら邪魔するなと怒られたでありますが、まさかの収穫であります。
あれ? 大精霊は王より偉いでありますか? ……まあ、いいであります。ここは我輩が出向いて王との謁見を許可するであります)
●
シンタチャシにも夜は訪れる。
地下と異なり、本物の夜空。
空を覆う満天の空の下、イクタサは岩に腰掛けて佇んでいた。
「ヴェルナーって言ったっけ。良く分からない奴だったけど、お願いしていた事はやってくれたんだ。
それより、ついに『あの子』と逢えるのか……。
ふふ、楽しみだな。どうやってもてなそうかな?」
リプレイ本文
「突然森ができるって凄いよね!
この森の雰囲気っていうか、空気は故郷を思い出すから好きかも」
森林地帯を進むリューリ・ハルマ(ka0502)は、大きく空気を吸い込んだ。
適度な湿度と共に、樹木の香りが鼻腔をくすぐる。
脳裏には懐かしい光景が蘇る。
「本当に凄いね。この森が一日でできたんだよね」
スコール族のファリフ・スコール(kz0009)も、空を見上げる。
視界に広がる木々の枝が、自然の壮大さを教えてくれる。
通常であれば数百年もかけて育まれる森林のはずが、たった一日にしてパシュパティ砦の近くに現出したのだ。
「マグ・メルで見た時のまんまだ。本当に辺境に来たんだな」
八島 陽(ka1442)の脳裏に先日の記憶が蘇る。
封神領域マグ・メルにて遭遇した四大精霊。
八島にとってはあまり思い出したくない『悪夢』だったのだが、今は新たな気持ちで四大精霊の元へ向かう。
「しかし、まさか森と一緒に引っ越してくるとは……。敢えて言うなら、四大精霊は自由すぎる」
一方、ジーナ(ka1643)は八島とは別の視点で森を見つめていた。
ジーナの眼前に広がる森は、間違いなくマグ・メルで見た森である。
その森が一日にして辺境の地へ出現したとすれば、四大精霊の持つ力は想像以上に強大である。
だとするなら、彼ら四大精霊とは――何者なのだろう。
そのような疑問がジーナの脳裏に浮かび上がる。
考えを巡らせるジーナの横を、パタパタと走る人影が……。
「わふぅ? 難しい顔してどうしました?」
ジーナの顔を覗き込むように、アルマ・A・エインズワース(ka4901)が話し掛けてきた。
状況を整理するジーナと対象的に、アルマの頭には『おともだちのイクタサと会える』という想いしかない。
「いや、何でも無い」
「そうですか。では、早くイクタサに会いに行きましょう」
アルマは瞳を閉じて集中したかと思えば、森を進む一行を率先して案内している。
ハンターであればイクタサの強大なマテリアルを感じ取る事ができる。ある程度の方向は皆分かっているのだが、イクタサとの再会を待ち望むアルマを見るだけで自然とスピードが上がる。
「ここで悩んでも仕方ない。まずは本人と会ってみるか」
ジーナは、意を決して再び歩き出した。
●
さて、イクタサへ会うために進む一行と別行動を起こす者達がいた。
その原因はすべて中性脂肪をしこたま蓄えた幻獣にあった。
「チューダを捕まえた!」
ランアウトで幻獣王チューダ(kz0173)を捕まえた宵待 サクラ(ka5561)。
その中でチューダは手足をジタバタさせて必死に抵抗している。
呼び掛けても反応しなかったのだが、手持ちのナッツをちょっとチラつかせただけであっさり顔を出す辺りがチューダである。
「ぬわーっ! 我輩、幻獣王じゃないであります!
ちょっと威厳ある幻獣王に似ているだけのぷりちーなネズミであります!」
「先生っ! お久しゅうございます!」
チューダの弟子を自認する雪都(ka6604)が跪いてチューダの手をそっと握る。
「雪都! 雪都でありますな!
しかし、今日はこの森の奥にいる新キャラに謁見の許可を与えに行くであります。なので、また今度遊んでやるであります!」
先を急ごうとするチューダだが、サクラと雪都はここを通す訳にはいかない。
「先生。その事でお話がございます」
「お? 何やら真面目な雰囲気。許可するであります。申してみるであります」
「先生は主役です。そして、主役は遅れてくるものではありませんか?」
雪都は切々とチューダを説得する。
雪都とサクラの狙いは、四大精霊とファリフが会っている間にチューダを割り込ませない事であった。
この森に住む四大精霊はファリフをとにかく気に入っている。
四大精霊の前に残念幻獣のチューダがファリフへちょっかい出そうものなら、茶会も三秒で崩壊しかねない。
そのため、二人はこの場で足止めしようというのだ。
「出て行くにも順序ってものがあると思うんだ。チューダは幻獣王なんだよね?」
「そうであります。我輩、幻獣王であります!」
サクラの説得にあっさり反応するチューダ。
「だったら、向こうの支度ができてからババーンっと出て行った方が箔が付くと思うんだ。そこを待って出て行くのも王様の度量だと思うよ?」
「……ほほう。という事は、準備が終わる前に我輩が顔を出したらせっかくの茶会が台無しであります」
「さすがは先生! そこまでお察しいただけるとは!」
雪都の言葉にチューダは照れくさそうにしている。
「でも、待っている間はどうするでありますか? 我輩、ちょっとお腹が空いたであります」
「先生、ご安心下さい」
「じゃーん! これでどうだ!」
サクラが指し示した場所には一枚のシート。
その上にはナッツやチョコレート、サンドイッチなどが数多く並んでいる。
「うっひょー! 褒めて使わすであります!」
ご満悦なチューダ。
先日、自らの運動不足により辺境を危機に陥れた事から大巫女より食事制限を受けていた。目の前に広がるお菓子の山に食いつかないはずがない。
「先生、今日は楽しい会にしましょう」
●
「わふーーーーっ!」
アルマは、四大精霊の一人イクタサに抱きついた。
ハグ、というよりタックルに近い体勢。イクタサを巻き込みながら、地面へと二人で倒れ込んだ。
「元気なウタリだ。だけど、ちょっとこれは元気過ぎかな」
「ご、ごめんなさいですよ……」
慌ててアルマは立ち上がる。
嬉しさのあまり勢いに任せて飛びついたのだが、少々はしゃぎすぎたのかもしれない。「怒っている訳じゃないんだ。ボクも会えて嬉しいよ」
「こんなに早く会えるとは思わなかったですから、嬉しかったですー。この間ぶりですっ!」
イクタサが怒っていない様子を感じ取ったアルマ。
尻尾があれば大きく振っていたはずだ。
イクタサはゆっくり立ち上がると改めてハンター達へ向き直った。
「さて……どうやら、あの男は約束を守ってくれたようだね」
イクタサはファリフに視線を注ぐ。
その視線にやや恥ずかしそうな面持ちのファリフ。
「あ、あの……ボク……」
「森で歩いて疲れていないかい? もし、疲れているなら良い薬草があるよ。
それとも喉が渇いているのかい? 今日の為に美味しいお茶を用意しておいた。お腹が空いているなら言って欲しい。すぐに準備するから」
ファリフが語りかけるよりも早く、矢継ぎ早に問いかけるイクタサ。
端から見るだけで気圧されるハンター達。ファリフを溺愛している事をすぐに察する事ができた。
「初めまして。私はリューリ・ハルマ。料理だったら私が作るよ。イクタサさんとゆっくりお話したからね」
敢えて割り込むように挨拶をするリューリ。
こうでもしないと料理を始められない為に仕方ないが、ファリフからすれば感謝したいぐらいだろう。
「ああ、そうだった。今日は君達が料理してくれるとあの男から聞いているよ。
火は使って貰って構わない。魚や木の実は集めておいたから自由に使ってくれていいよ」
リューリに声をかけられ、イクタサは改めてハンターの存在に気付いたようだ。
ファリフの事になると本気を出していたイクタサ。
確かにファリフに何かあれば、大騒ぎしかねない。
「オレはサンドイッチを作る。ファリフもやってみるかい?」
「あ、いいの? 実はちょっと料理に興味あったんだ」
八島に誘い乗ってファリフは一緒に料理を作るようだ。
「火の準備を始める。少し待ってくれ」
「わふー。僕もご飯を作るです。そして、ご飯を食べてからお菓子を食べるです。
お菓子はご飯の後だって、お兄ちゃん言ってたです」
ジーナが火を起こす傍らで、アルマは早速フレンチトーストの準備に取りかかった。
●
「うわーい! ご馳走いっぱいであります!」
実はハブにされているチューダの方と言えば、目の前のご馳走で大騒ぎしていた。
チューダはサクラの膝にちょこんと座ると、早速サクラに食事の催促をする。
「我輩にそのサンドイッチを食べさせるであります」
「はいはい、これだね」
サクラは手前のサンドイッチを手に取ると、チューダの口へと運んだ。
このサンドイッチはリューリが持たせた物で、中身に柔らかくしたチーズとナッツが加えられている。
チューダでも食べられるようにという配慮だ。
「どうおいしい?」
「美味しいでありますー。次はそこのクッキーとお餅を食べたいであります」
チューダは八島が二人に持参させたおやさいクッキーと土用餅を催促する。
女子の膝に腰掛けて食べさせて貰う。まさに贅沢な光景だが、これがチューダの日常だったりする。
「先生、さすがです。茶会前でも王の威厳を忘れない食事風景。弟子として身が引き締まります」
「そうでありますか。やはり王としてのオーラが漏れ出てしまうでありますか。我輩、生まれながらの王でありますからな」
「そうでしたか。是非、先生がお生まれになったお話を俺にお聞かせいただけないでしょうか?」
雪都は本気でチューダに問いかけているのかもしれないが、実際チューダを足止めする為には寝かせるか飽きさせないかのいずれかである。
チューダを持ち上げまくって自慢話をさせれば、チューダをご機嫌のままこの場に釘付けできる。
「仕方ないでありますなぁ。では、我輩のありがたいお話を聞かせてやるであります。
……あ、今度は我輩の背中をブラッシングして欲しいであります」
「はいはい。こんな感じ?」
サクラにブラッシングを要求しながら寝そべるチューダ。
イクタサと茶会はできていないが、これはこれで良かったのかもしれない。
●
「今日は良い茶会だ。ファリフに会えただけでも良い日なのに、君達のおかげで良い会になったよ」
食後のハーブティー「リスペルン」を飲みながら、イクタサが茶会の感想を語る。
イクタサによれば精霊によって食事は必須ではなく、イクタサ自身も必ず食事をしなければいけない存在ではないらしい。だが、今日の茶会はファリフと共にできた上に、ウタリであるハンター達と交流できた事が印象深かったようだ。
「びっくりしたよ。イクタサも結構食べるんだね」
ファリフは笑顔を浮かべながら、空になった皿に視線を向ける。
そこには八島とファリフが作ったツナマヨサンド、イチゴサンド、蒲焼きサンドが並んでいた。
梅ジャムを塗ったパンの間にうなぎの蒲焼きを挟んだ前衛的なサンドイッチも含まれていたが、ファリフが作ったサンドイッチだからとイクタサは顔色変えずに食していた。
「スープとグリムブレッドも喜んでもらえたみたいだね」
リューリが作ったのは、魚の切り身と山菜と香草のスープ。
雪都が持参させたチョコレートと木の実を使ったチョコレートクリームをロングライフ・グリムブレッドに添えた品であった。
この品はファリフが気に入って食べていたのだが、ファリフが食べる様子を見るイクタサは満足沿うな様子だった。
「こちらのホットミルクもお腹に優しいのでお薦めです。
あ、そういえば精霊さんからもっとお力を借りられるようになるって聞いたですけど……」
アルマはチラッとイクタサの方を見る。
何かを期待する眼差しだ。
「イクタサさんとも一緒に戦えるようになります? だって、お友達と一緒に戦えたら、いろいろ怖くないですー。素敵ですっ」
はっきり断言するアルマ。
話によれば精霊から力を借りる事で、ハンター達は新たな力を得る事ができる。だとすれば、四大精霊と一緒に敵と戦う日が来てもおかしくはない。
「ああ、そうだろうね。その日は必ず来ると思うよ。その来たるべき日に備える為にも、君達はもっと力を付けないといけない。
君達も会ったのだろう? 『アイツ』に」
――アイツ。
イクタサの言うそれがあの邪神である事にハンター達は、すぐに気付いた。
もし、四大精霊で対処できるのであればもう既に倒しているのだろう。それが叶わないからこそ、四大精霊はハンター達に力を与えた。
「オレも聞いておきたいのだが、大精霊が壊されたら精霊達はどうなるんだ?」
八島はイクタサに問いかける。
以前、友人が敵と戦った際、その敵を精霊が歪虚化した物と幻視した事がある。八島は大精霊を失った後の精霊について気にしていた。
「うーん、壊すという概念によるかな。大精霊は言うなればクリムゾンウェストそのものだ。大精霊が破壊されれば、クリムゾンウェストは徐々に死んでしまうね」
「あ、すぐに死んでしまう訳じゃないんだ」
リューリの言葉にイクタサは頷く。
「そう。正のマテリアルが生まれなくなるから、ゆっくりと滅んでいくんだ。精霊は大精霊の末端みたいなものだから、そのままならきっとボク達は壊れると思うよ」
「わふー。壊れちゃ嫌ですー」
寂しそうな顔でイクタサを見つめるアルマ。
イクタサは、そっとアルマの頬を撫でる。
「そうならないようにボクはここに来たんだ。。
でも……まだ力の弱い君達がより力を付ける為に、ボクは敢えて君達を見守る立場を貫くつもりだよ。ボクが手を貸せば君達の胸にある勇気が消えてしまうだろうしね」
(星の意志。それが精霊という存在なのか……)
ジーナはイクタサの言葉に耳を傾ける。
許可を得て森を散策してみたが、精霊の正体について明確な答えは出せなかった。
やはり、当の精霊に多く交流を持たなければ見えてこないのかもしれない。
●
茶会が終了した頃。
八島から連絡を受けた雪都とサクラがチューダと共にイクタサの元へ押しかけた。
「……ああ、君達も来たのか。で、その丸いのは何?」
「丸いのとは何でありますか! 我輩は幻獣王チューダ! 幻獣の事なら何でも知っている偉ーい王様であります! ささ、我輩を奉って崇めまくるであります!」
チューダの登場で騒がしくなるイクタサの家。
明らかに不機嫌そうな顔を浮かべるイクタサ。
「ふぅ。仕方ないな」
イクタサは指をゆっくりと回す。
次の瞬間、チューダの周りに風の渦が発生する。
「な、なんでありますか!? うわー!」
風は瞬く間にチューダを持ち上げてグルグルとチューダを回転させる。
「先生っ!」
「せ、世界が大回転であります……」
慌てて駆け寄る雪都。
チューダは雪都の手を中で目を回している。
その傍らでイクタサは大きくため息をつく。
「うるさいのも黙ったみたいなので、改めて茶会にしようか。君達の話も聞いておきたいんだ」
この森の雰囲気っていうか、空気は故郷を思い出すから好きかも」
森林地帯を進むリューリ・ハルマ(ka0502)は、大きく空気を吸い込んだ。
適度な湿度と共に、樹木の香りが鼻腔をくすぐる。
脳裏には懐かしい光景が蘇る。
「本当に凄いね。この森が一日でできたんだよね」
スコール族のファリフ・スコール(kz0009)も、空を見上げる。
視界に広がる木々の枝が、自然の壮大さを教えてくれる。
通常であれば数百年もかけて育まれる森林のはずが、たった一日にしてパシュパティ砦の近くに現出したのだ。
「マグ・メルで見た時のまんまだ。本当に辺境に来たんだな」
八島 陽(ka1442)の脳裏に先日の記憶が蘇る。
封神領域マグ・メルにて遭遇した四大精霊。
八島にとってはあまり思い出したくない『悪夢』だったのだが、今は新たな気持ちで四大精霊の元へ向かう。
「しかし、まさか森と一緒に引っ越してくるとは……。敢えて言うなら、四大精霊は自由すぎる」
一方、ジーナ(ka1643)は八島とは別の視点で森を見つめていた。
ジーナの眼前に広がる森は、間違いなくマグ・メルで見た森である。
その森が一日にして辺境の地へ出現したとすれば、四大精霊の持つ力は想像以上に強大である。
だとするなら、彼ら四大精霊とは――何者なのだろう。
そのような疑問がジーナの脳裏に浮かび上がる。
考えを巡らせるジーナの横を、パタパタと走る人影が……。
「わふぅ? 難しい顔してどうしました?」
ジーナの顔を覗き込むように、アルマ・A・エインズワース(ka4901)が話し掛けてきた。
状況を整理するジーナと対象的に、アルマの頭には『おともだちのイクタサと会える』という想いしかない。
「いや、何でも無い」
「そうですか。では、早くイクタサに会いに行きましょう」
アルマは瞳を閉じて集中したかと思えば、森を進む一行を率先して案内している。
ハンターであればイクタサの強大なマテリアルを感じ取る事ができる。ある程度の方向は皆分かっているのだが、イクタサとの再会を待ち望むアルマを見るだけで自然とスピードが上がる。
「ここで悩んでも仕方ない。まずは本人と会ってみるか」
ジーナは、意を決して再び歩き出した。
●
さて、イクタサへ会うために進む一行と別行動を起こす者達がいた。
その原因はすべて中性脂肪をしこたま蓄えた幻獣にあった。
「チューダを捕まえた!」
ランアウトで幻獣王チューダ(kz0173)を捕まえた宵待 サクラ(ka5561)。
その中でチューダは手足をジタバタさせて必死に抵抗している。
呼び掛けても反応しなかったのだが、手持ちのナッツをちょっとチラつかせただけであっさり顔を出す辺りがチューダである。
「ぬわーっ! 我輩、幻獣王じゃないであります!
ちょっと威厳ある幻獣王に似ているだけのぷりちーなネズミであります!」
「先生っ! お久しゅうございます!」
チューダの弟子を自認する雪都(ka6604)が跪いてチューダの手をそっと握る。
「雪都! 雪都でありますな!
しかし、今日はこの森の奥にいる新キャラに謁見の許可を与えに行くであります。なので、また今度遊んでやるであります!」
先を急ごうとするチューダだが、サクラと雪都はここを通す訳にはいかない。
「先生。その事でお話がございます」
「お? 何やら真面目な雰囲気。許可するであります。申してみるであります」
「先生は主役です。そして、主役は遅れてくるものではありませんか?」
雪都は切々とチューダを説得する。
雪都とサクラの狙いは、四大精霊とファリフが会っている間にチューダを割り込ませない事であった。
この森に住む四大精霊はファリフをとにかく気に入っている。
四大精霊の前に残念幻獣のチューダがファリフへちょっかい出そうものなら、茶会も三秒で崩壊しかねない。
そのため、二人はこの場で足止めしようというのだ。
「出て行くにも順序ってものがあると思うんだ。チューダは幻獣王なんだよね?」
「そうであります。我輩、幻獣王であります!」
サクラの説得にあっさり反応するチューダ。
「だったら、向こうの支度ができてからババーンっと出て行った方が箔が付くと思うんだ。そこを待って出て行くのも王様の度量だと思うよ?」
「……ほほう。という事は、準備が終わる前に我輩が顔を出したらせっかくの茶会が台無しであります」
「さすがは先生! そこまでお察しいただけるとは!」
雪都の言葉にチューダは照れくさそうにしている。
「でも、待っている間はどうするでありますか? 我輩、ちょっとお腹が空いたであります」
「先生、ご安心下さい」
「じゃーん! これでどうだ!」
サクラが指し示した場所には一枚のシート。
その上にはナッツやチョコレート、サンドイッチなどが数多く並んでいる。
「うっひょー! 褒めて使わすであります!」
ご満悦なチューダ。
先日、自らの運動不足により辺境を危機に陥れた事から大巫女より食事制限を受けていた。目の前に広がるお菓子の山に食いつかないはずがない。
「先生、今日は楽しい会にしましょう」
●
「わふーーーーっ!」
アルマは、四大精霊の一人イクタサに抱きついた。
ハグ、というよりタックルに近い体勢。イクタサを巻き込みながら、地面へと二人で倒れ込んだ。
「元気なウタリだ。だけど、ちょっとこれは元気過ぎかな」
「ご、ごめんなさいですよ……」
慌ててアルマは立ち上がる。
嬉しさのあまり勢いに任せて飛びついたのだが、少々はしゃぎすぎたのかもしれない。「怒っている訳じゃないんだ。ボクも会えて嬉しいよ」
「こんなに早く会えるとは思わなかったですから、嬉しかったですー。この間ぶりですっ!」
イクタサが怒っていない様子を感じ取ったアルマ。
尻尾があれば大きく振っていたはずだ。
イクタサはゆっくり立ち上がると改めてハンター達へ向き直った。
「さて……どうやら、あの男は約束を守ってくれたようだね」
イクタサはファリフに視線を注ぐ。
その視線にやや恥ずかしそうな面持ちのファリフ。
「あ、あの……ボク……」
「森で歩いて疲れていないかい? もし、疲れているなら良い薬草があるよ。
それとも喉が渇いているのかい? 今日の為に美味しいお茶を用意しておいた。お腹が空いているなら言って欲しい。すぐに準備するから」
ファリフが語りかけるよりも早く、矢継ぎ早に問いかけるイクタサ。
端から見るだけで気圧されるハンター達。ファリフを溺愛している事をすぐに察する事ができた。
「初めまして。私はリューリ・ハルマ。料理だったら私が作るよ。イクタサさんとゆっくりお話したからね」
敢えて割り込むように挨拶をするリューリ。
こうでもしないと料理を始められない為に仕方ないが、ファリフからすれば感謝したいぐらいだろう。
「ああ、そうだった。今日は君達が料理してくれるとあの男から聞いているよ。
火は使って貰って構わない。魚や木の実は集めておいたから自由に使ってくれていいよ」
リューリに声をかけられ、イクタサは改めてハンターの存在に気付いたようだ。
ファリフの事になると本気を出していたイクタサ。
確かにファリフに何かあれば、大騒ぎしかねない。
「オレはサンドイッチを作る。ファリフもやってみるかい?」
「あ、いいの? 実はちょっと料理に興味あったんだ」
八島に誘い乗ってファリフは一緒に料理を作るようだ。
「火の準備を始める。少し待ってくれ」
「わふー。僕もご飯を作るです。そして、ご飯を食べてからお菓子を食べるです。
お菓子はご飯の後だって、お兄ちゃん言ってたです」
ジーナが火を起こす傍らで、アルマは早速フレンチトーストの準備に取りかかった。
●
「うわーい! ご馳走いっぱいであります!」
実はハブにされているチューダの方と言えば、目の前のご馳走で大騒ぎしていた。
チューダはサクラの膝にちょこんと座ると、早速サクラに食事の催促をする。
「我輩にそのサンドイッチを食べさせるであります」
「はいはい、これだね」
サクラは手前のサンドイッチを手に取ると、チューダの口へと運んだ。
このサンドイッチはリューリが持たせた物で、中身に柔らかくしたチーズとナッツが加えられている。
チューダでも食べられるようにという配慮だ。
「どうおいしい?」
「美味しいでありますー。次はそこのクッキーとお餅を食べたいであります」
チューダは八島が二人に持参させたおやさいクッキーと土用餅を催促する。
女子の膝に腰掛けて食べさせて貰う。まさに贅沢な光景だが、これがチューダの日常だったりする。
「先生、さすがです。茶会前でも王の威厳を忘れない食事風景。弟子として身が引き締まります」
「そうでありますか。やはり王としてのオーラが漏れ出てしまうでありますか。我輩、生まれながらの王でありますからな」
「そうでしたか。是非、先生がお生まれになったお話を俺にお聞かせいただけないでしょうか?」
雪都は本気でチューダに問いかけているのかもしれないが、実際チューダを足止めする為には寝かせるか飽きさせないかのいずれかである。
チューダを持ち上げまくって自慢話をさせれば、チューダをご機嫌のままこの場に釘付けできる。
「仕方ないでありますなぁ。では、我輩のありがたいお話を聞かせてやるであります。
……あ、今度は我輩の背中をブラッシングして欲しいであります」
「はいはい。こんな感じ?」
サクラにブラッシングを要求しながら寝そべるチューダ。
イクタサと茶会はできていないが、これはこれで良かったのかもしれない。
●
「今日は良い茶会だ。ファリフに会えただけでも良い日なのに、君達のおかげで良い会になったよ」
食後のハーブティー「リスペルン」を飲みながら、イクタサが茶会の感想を語る。
イクタサによれば精霊によって食事は必須ではなく、イクタサ自身も必ず食事をしなければいけない存在ではないらしい。だが、今日の茶会はファリフと共にできた上に、ウタリであるハンター達と交流できた事が印象深かったようだ。
「びっくりしたよ。イクタサも結構食べるんだね」
ファリフは笑顔を浮かべながら、空になった皿に視線を向ける。
そこには八島とファリフが作ったツナマヨサンド、イチゴサンド、蒲焼きサンドが並んでいた。
梅ジャムを塗ったパンの間にうなぎの蒲焼きを挟んだ前衛的なサンドイッチも含まれていたが、ファリフが作ったサンドイッチだからとイクタサは顔色変えずに食していた。
「スープとグリムブレッドも喜んでもらえたみたいだね」
リューリが作ったのは、魚の切り身と山菜と香草のスープ。
雪都が持参させたチョコレートと木の実を使ったチョコレートクリームをロングライフ・グリムブレッドに添えた品であった。
この品はファリフが気に入って食べていたのだが、ファリフが食べる様子を見るイクタサは満足沿うな様子だった。
「こちらのホットミルクもお腹に優しいのでお薦めです。
あ、そういえば精霊さんからもっとお力を借りられるようになるって聞いたですけど……」
アルマはチラッとイクタサの方を見る。
何かを期待する眼差しだ。
「イクタサさんとも一緒に戦えるようになります? だって、お友達と一緒に戦えたら、いろいろ怖くないですー。素敵ですっ」
はっきり断言するアルマ。
話によれば精霊から力を借りる事で、ハンター達は新たな力を得る事ができる。だとすれば、四大精霊と一緒に敵と戦う日が来てもおかしくはない。
「ああ、そうだろうね。その日は必ず来ると思うよ。その来たるべき日に備える為にも、君達はもっと力を付けないといけない。
君達も会ったのだろう? 『アイツ』に」
――アイツ。
イクタサの言うそれがあの邪神である事にハンター達は、すぐに気付いた。
もし、四大精霊で対処できるのであればもう既に倒しているのだろう。それが叶わないからこそ、四大精霊はハンター達に力を与えた。
「オレも聞いておきたいのだが、大精霊が壊されたら精霊達はどうなるんだ?」
八島はイクタサに問いかける。
以前、友人が敵と戦った際、その敵を精霊が歪虚化した物と幻視した事がある。八島は大精霊を失った後の精霊について気にしていた。
「うーん、壊すという概念によるかな。大精霊は言うなればクリムゾンウェストそのものだ。大精霊が破壊されれば、クリムゾンウェストは徐々に死んでしまうね」
「あ、すぐに死んでしまう訳じゃないんだ」
リューリの言葉にイクタサは頷く。
「そう。正のマテリアルが生まれなくなるから、ゆっくりと滅んでいくんだ。精霊は大精霊の末端みたいなものだから、そのままならきっとボク達は壊れると思うよ」
「わふー。壊れちゃ嫌ですー」
寂しそうな顔でイクタサを見つめるアルマ。
イクタサは、そっとアルマの頬を撫でる。
「そうならないようにボクはここに来たんだ。。
でも……まだ力の弱い君達がより力を付ける為に、ボクは敢えて君達を見守る立場を貫くつもりだよ。ボクが手を貸せば君達の胸にある勇気が消えてしまうだろうしね」
(星の意志。それが精霊という存在なのか……)
ジーナはイクタサの言葉に耳を傾ける。
許可を得て森を散策してみたが、精霊の正体について明確な答えは出せなかった。
やはり、当の精霊に多く交流を持たなければ見えてこないのかもしれない。
●
茶会が終了した頃。
八島から連絡を受けた雪都とサクラがチューダと共にイクタサの元へ押しかけた。
「……ああ、君達も来たのか。で、その丸いのは何?」
「丸いのとは何でありますか! 我輩は幻獣王チューダ! 幻獣の事なら何でも知っている偉ーい王様であります! ささ、我輩を奉って崇めまくるであります!」
チューダの登場で騒がしくなるイクタサの家。
明らかに不機嫌そうな顔を浮かべるイクタサ。
「ふぅ。仕方ないな」
イクタサは指をゆっくりと回す。
次の瞬間、チューダの周りに風の渦が発生する。
「な、なんでありますか!? うわー!」
風は瞬く間にチューダを持ち上げてグルグルとチューダを回転させる。
「先生っ!」
「せ、世界が大回転であります……」
慌てて駆け寄る雪都。
チューダは雪都の手を中で目を回している。
その傍らでイクタサは大きくため息をつく。
「うるさいのも黙ったみたいなので、改めて茶会にしようか。君達の話も聞いておきたいんだ」
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イクタサさんとお茶会を アルマ・A・エインズワース(ka4901) エルフ|26才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/05/13 17:39:50 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/10 06:40:47 |
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茶会準備質問板 ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/05/10 21:24:26 |