ゲスト
(ka0000)
【血盟】霧の島:島主は動かず
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/15 12:00
- 完成日
- 2017/05/23 22:50
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「出直してこい」
「いや……まだ……!」
ロルフ・シュトライトは苦痛に耐えながら何とか立ち上がった。その体には大量の傷があり、足元を伝う血はかなりの量に達していた。その後ろには、ロルフの様子を心配そうに見つめるグリフォンの姿も見える。だが、手出ししようとはしない。
そして、その前には宙に浮く一体のグリフォンの姿が。
「無駄だ。『双翼』でその状態では、これ以上戦っても貴公は勝てぬ」
そう言って……人の言葉を介し、地面に降り立つグリフォン。
同時に、その体を支えていた翼が砕けると同時に、地面に倒れ伏すロルフ。辺りは暗闇に包まれた。
「繰り返すぞ。貴公一人では永遠に私には勝てない……さぁ、上に運んでやれ」
その言葉と、翼のはためきは同時であり、以後その場は今まで何もなかったかのように静かになった。
●
周辺が常に霧で覆われた、グラウネーベル島。
帝国領海に存在するこの孤島は、霧に含まれたマテリアルの影響で、海面より上からではその正確な位置を知ることはできない。ハンターたちの協力で発見されたこの島はグリフォンの群生地となっており、しかも人間に対しかなり協力的であった。そのおかげで帝国軍第5師団ではグリフォン不足が解消。以後は一部戦力を置いて有事の備えとしている他は生態系の保護を理由に極力不干渉を心がけてきた。それが、昨年から状況は大きく変わってきており、第5師団では諸々の対応に追われていた。
●
「それでは、早速だが依頼の説明をさせてもらうとしよう」
グラウネーベル島の岩壁付近に停泊している軍船。その船室内において、ウェルナー・ブラウヒッチ兵長がハンターたちに説明を始めた。
依頼内容は開発事業への協力だ。
先の大規模な作戦で魚人や人魚といった水棲亜人が多数保護された。だが、それらの落ち着き先が見つからない。それを憂えた第4師団に押し切られる形で、今現在グラウネーベル島が仮の住まいとされている。
「もちろん敵対的に追い払うということはできない。言うまでもないことだとは思うがね」
このあたりは、話題になっている精霊の協力を得るためにも必要であった。これら亜人は精霊と近い存在であるからだ。
仮に場所を移すにしても、ある程度外敵への対策などを講じておくなど、努めて友好的に行う必要があるだろう。
「ただ、この島は全面が切り立った崖になっているため島に上がるというわけにもいかない。そもそも上はグリフォンばかりなので住む場所もない」
そこで現在は、グラウネーベル島に元々あった浸食洞を仮住まいとしている。ちなみにこの浸食洞は島発見以後第5師団が拠点としていた場所なのだが、人魚や魚人に追われるように引き払うことになった。こうして依頼の説明を船の上で行っているのもそのためだ。
「こういったことは専門外でな。ハンター諸君の意見も聞きたいわけだよ」
ちなみに、方針が決まったら実際の作業も手伝ってもらう、と言ってブラウヒッチ兵長は説明を終わった。
なんらかの工事が必要であれば本土からドワーフなどの専門家を連れてくる場合もあるが、今できるようなことならすぐに始めたいということなのだろう。
……血まみれのロルフがグリフォンの背に揺られ船に戻ってくるのは、そんな話し合いが行われている最中のことだった。
「出直してこい」
「いや……まだ……!」
ロルフ・シュトライトは苦痛に耐えながら何とか立ち上がった。その体には大量の傷があり、足元を伝う血はかなりの量に達していた。その後ろには、ロルフの様子を心配そうに見つめるグリフォンの姿も見える。だが、手出ししようとはしない。
そして、その前には宙に浮く一体のグリフォンの姿が。
「無駄だ。『双翼』でその状態では、これ以上戦っても貴公は勝てぬ」
そう言って……人の言葉を介し、地面に降り立つグリフォン。
同時に、その体を支えていた翼が砕けると同時に、地面に倒れ伏すロルフ。辺りは暗闇に包まれた。
「繰り返すぞ。貴公一人では永遠に私には勝てない……さぁ、上に運んでやれ」
その言葉と、翼のはためきは同時であり、以後その場は今まで何もなかったかのように静かになった。
●
周辺が常に霧で覆われた、グラウネーベル島。
帝国領海に存在するこの孤島は、霧に含まれたマテリアルの影響で、海面より上からではその正確な位置を知ることはできない。ハンターたちの協力で発見されたこの島はグリフォンの群生地となっており、しかも人間に対しかなり協力的であった。そのおかげで帝国軍第5師団ではグリフォン不足が解消。以後は一部戦力を置いて有事の備えとしている他は生態系の保護を理由に極力不干渉を心がけてきた。それが、昨年から状況は大きく変わってきており、第5師団では諸々の対応に追われていた。
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「それでは、早速だが依頼の説明をさせてもらうとしよう」
グラウネーベル島の岩壁付近に停泊している軍船。その船室内において、ウェルナー・ブラウヒッチ兵長がハンターたちに説明を始めた。
依頼内容は開発事業への協力だ。
先の大規模な作戦で魚人や人魚といった水棲亜人が多数保護された。だが、それらの落ち着き先が見つからない。それを憂えた第4師団に押し切られる形で、今現在グラウネーベル島が仮の住まいとされている。
「もちろん敵対的に追い払うということはできない。言うまでもないことだとは思うがね」
このあたりは、話題になっている精霊の協力を得るためにも必要であった。これら亜人は精霊と近い存在であるからだ。
仮に場所を移すにしても、ある程度外敵への対策などを講じておくなど、努めて友好的に行う必要があるだろう。
「ただ、この島は全面が切り立った崖になっているため島に上がるというわけにもいかない。そもそも上はグリフォンばかりなので住む場所もない」
そこで現在は、グラウネーベル島に元々あった浸食洞を仮住まいとしている。ちなみにこの浸食洞は島発見以後第5師団が拠点としていた場所なのだが、人魚や魚人に追われるように引き払うことになった。こうして依頼の説明を船の上で行っているのもそのためだ。
「こういったことは専門外でな。ハンター諸君の意見も聞きたいわけだよ」
ちなみに、方針が決まったら実際の作業も手伝ってもらう、と言ってブラウヒッチ兵長は説明を終わった。
なんらかの工事が必要であれば本土からドワーフなどの専門家を連れてくる場合もあるが、今できるようなことならすぐに始めたいということなのだろう。
……血まみれのロルフがグリフォンの背に揺られ船に戻ってくるのは、そんな話し合いが行われている最中のことだった。
リプレイ本文
●
「あれは……新しいグリフォンさんですか!?」
それを最初に見つけたのは、浸食洞から船上に戻ってきていた星野 ハナ(ka5852)だった。心底楽し気な雰囲気で声を上げたハナだったが、その様子を……血まみれの師団長を乗せたグリフォンを見て、ただ事ではないと気づいた。
「とにかく降ろそう。それから治療を」
「分かったの!」
ハナに続く形で榊 兵庫(ka0010)をはじめとしたハンターたちが集まってくる。
「……とりあえず、大丈夫そうなの。直に目を覚ますと思うの」
兵庫に促されたディーナ・フェルミ(ka5843)は、すぐさまフルリカバリーを用いて治療を施す。とりあえず、命に別状は無さそうだ。
「大丈夫そうならすぐに起こしてくれ! まず敵が歪虚か……島に危険が迫っているのか聞かないといけねぇ!」
そういってずかずかと歩み寄るボルディア・コンフラムス(ka0796)。状況を見れば当然の判断だ。だがそれをリュー・グランフェスト(ka2419)が止めた。
「まぁ待ちなって……とりあえず危険は無さそうだしな」
「なんでそんな……なるほど、そういうことか」
そういわれてボルディアも気が付いた。グリフォンの方に周囲を強く警戒する様子が無いことに。
(むしろ俺のことを警戒してる感じだな……)
場合によっては胸倉掴んでも喋らせるぐらいの勢いだった。それがグリフォンの警戒心を刺激したと思われる。
「とりあえず、寝かした方がいいだろ」
ディーナといっしょに、レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)がロルフを船室に運んでいく。
「変ね……」
「……リシャーナさんも気づきましたか」
「ええ」
リシャーナ(ka1655)とブリジット・B・バートランド(ka1800)は、運ばれるロルフとその様子を見守るグリフォンを見比べながらその違和感に気づいていた。ロルフがこれだけの怪我をしながら、グリフォンの方は無傷だったのだ。
「無意味なことをする人ではなさそうですし……」
「あるのは亜人がらみだけじゃないということみたいね」
●
グリフォンがやってくるその前。
そもそも、ハンターたちは魚人や人魚に関する意見を聴取するために集められていた。
「これはRBの難民問題に通じるところがあるかもしれないな」
そう前置いたうえで、まずは兵庫が意見を述べ始めた。結論から言うと、兵庫は浮島を新たな住処とする案を軸に調整を行いたい考えのようだ。
「新たな島を探すといっても、その場所に先住者はいる可能性は高いと思う。それらとのトラブルが生じる可能性が否定できない以上、現状の方がベターなのではないかと思う」
「俺は移転したほうがいいと思うぜ」
なるほど、と頷きながら次に意見を出したのはボルディアだ。ボルディアは移転を軸に考えているようだ。実際に別の案が採用されたとしても、移転候補を考えるだけなら無駄にもならないだろうということだ。
「もちろん、条件はあるぜ?」
そういったボルディアは3本の指を立てていた。
まず、住環境が人魚や魚人の要望にあうこと。第2に、あまり人間たちと頻繁に遭遇しない場所。そして、最後に最も重要としたのが、歪虚があまり出ない場所で、人間が定期的に目を光らせられる場所。
「人間が定期的に目を光らせられる場所……どういう意図なのでしょう?」
「あー、別に監視しようってつもりじゃないんだ。ようは、歪虚が出ても海軍なんかがすぐにフォローできるかどうかってことだな」
ブリジットの質問に答えながら、ボルディアは続けた。
「この辺りを参考にして、帝国海域だけじゃなく、同盟やリゼリオまで範囲を広げて探していけばいいと思うんだ。きっと0じゃないはずだぜ?」
「その通りだけど、仮に移転先が見つかっても、ここに永住したいという亜人もいると思うの」
そう意見を出したのはリシャーナだ。
「永住したい亜人、引っ越ししたい亜人。どちらにも対応できるように、移転先も、浮島も、どちらも用意していった方がいいと私は思うわ」
ただ、コストや人手が問題になってくるだろうと、リシャーナは締めくくった。
ブリジットはリシャーナの案に賛同しつつ、師団側が提示していた案の一つである人工的に浸食洞を作り出すという案には明確に反対を示した。
「確か、報告書によると島中央部に巨大な陥没穴がある……ですよね?」
その問いに対し、話を聞いていたブラウヒッチ兵長が頷く。
「そうなると、島の地下に雨水による浸食空洞がある恐れもあります。むやみに人工洞窟を掘るのは危険でしょう」
「なるほど。参考にさせてもらう」
意見がひと段落ついたところで、兵庫が質問を始める。
「そもそも、浮島を作るとして、どれぐらいの数が作れるんだ?」
これは、魚人と人魚とは基本的に離しておくべきとの考えからだ。この点は他の者も共通している。
「まぁリシャーナも述べた通りコストと……魚人、人魚の意向しだいといったところだ」
●
一方、ハンターの半数は浸食洞に向かい、直に意見を聞き出そうとしていた。
「怪我したりしてる人は……さすがにいなさそうだな」
小舟で移動しつつ様子を確認するレオーネ。本当のところはグリフォンを移動用に借りれたら良かったのだが、あまり住人を刺激するのは良くないと言われたので断念した。
「それにしても……」
レオーネはあたりを見回すが、特に問題がありそうな様子は見えない。のどかといえばのどかだ。
「あまり深く物事は考えない……だっけか。様子を見るとなるほどとは思うな」
同乗するリューも周囲を見ながらそう呟く。片手にはレオーネから持たされたカメラを持っている。
「本当は酒でも酌み交わしたいところだったんだけどな」
実際にリューは酒を用意しており、酌み交わしながら交流を深めようと考えていたが、これも兵長がNGを出した。酒を呑んで彼らがどうなるか分からないからと。
「警戒しすぎじゃねぇかな」
「最低限の世話はしてるみたいだけどさ。第五師団の方でもやっぱり生態とかがよくわかってないってことなんだと思うぜ」
そう言いながら、レオーネはPDAを操作しながら人数や様子などを記録していく。
「とりあえず、近くにいる人に聞いてみたけど、好きにしていいらしいの」
「了解。それじゃこっちも撮ってくぜ」
もう一艘の舟にはディーナとハナが乗っていた。カメラを使うことの許可も取れたようなので、リューがカメラで撮影をしていく。
「案外普通に話が通じるんですねぇ。もう少しお話したいですぅ」
ハナには気になっていることがあった。それは海中通路などの存在だ。
「浸食洞窟があって絶壁な場合ぃ、死火山で内部がカルデラになっている場合があるんですぅ。それが浸食洞繋がりで海水湖だったらこれ以上良い住処は無いですよねぇ」
「死火山……確かに島の中心には大穴が空いてるけど……」
実際に島の中にはいったこともあるレオーネはハナの言葉を聞いて考え込む。
「この島には霧という加護があるの」
今度はディーナが話し始める。
「私は霊闘士じゃないから感じ取れないけれど、この島には、その加護を振るえるほどの幻獣か……精霊が居ると思うの」
「あぁ……それは間違いないぜ」
それに関しては間違いないと、レオーネは断言した。なぜなら、レオーネは実際にこの島で何者かの……おそらくは島主なのだろう。その声を聞いたからだ。
こうして、調査を終えた4人は一度船に戻る。ロルフが戻ってきたのはそれからすぐのことだった。
●
「……ここは?」
「あ、良かった……みんな、気が付いたのよ!」
気が付いた時、ロルフはベッドの上で寝かされていた。その様子にいち早く気づいたディーナは、すぐに人を呼びに行った。
「さっきはびっくりしたわ」
そばにいたリシャーナがそう語りかける。
「いや、心配かけたみたいだね。申し訳ない」
「全くだぜ、師団長」
そういって、レオーネが船室に入ってきた。後に続くのはブリジット、ハナ。
「海に出てる連中にも連絡したから、すぐに戻ってくるぜ」
ディーナとともに、ボルディアも入ってきた。
この時、兵庫はリューとともに島から少し離れた海の状況を見に行っていた。波の強さや海流などから、船を浮島にするに適当な場所がないかを探したい、とはリューの談だ。
「さて、集まってきたことだし……」
「無事で何よりです! それじゃ、話してもらいますよ!」
ブリジットの言葉を遮るようにハナが詰め寄る。その言葉にはどこか確信めいた感情が見え隠れしていた。
「何と戦ってきたのか、それが何なのか……!」
「少なくとも、敵ではないし、会話が通じる相手でもある……違うの?」
ハナに続き、ディーナもそう問いただす。
「起きてすぐにそんなに質問されてもな……どうしてそう思うんだい?」
「簡単なの、あなたが……」
「この島を出ていく、という選択肢を示さないからですよぉ?」
この点、ハナとディーナの意見は一致していた。これほどの怪我を負わせるほどの脅威がこの島にいるにも関わらず、撤退しようという一言が出てこない。あるいは島の外縁に少し間借りする程度なら頓着しないということもあるかもしれないが、それでは理由として弱い。
その話を聞き、ロルフは困った顔を浮かべていた。図星だったということだろう。
「何かを一人で抱えている……そんなふうに見えるわ」
リシャーナはそう指摘した。
「自分ではそういうつもりではないんだけどね……そうか。そう見えるか……」
「あまり深くは聞かないけれど……困難には一人じゃなく、部下や……私たちハンター達と一緒に立ち向かってほしいわ」
脳裏に思い人のことを思い浮かべながら、ブリジットもそう続けた。
「……なぁ。やっぱり島の主なんだろ? 相手は」
レオーネのその言葉で、ロルフは観念したのだろう。深いため息をついた後、言った。
「あぁ。その通りだ。僕が相手をしてきたのはこの島の主さ」
●
「次回はぜひ、魚人や人魚の代表格と会談を持ちたいものだ」
「酒でも酌み交わしながらな……ってわけにはいかないんだったな」
兵庫とボルディアはそう言って笑った。
当初の依頼が忘れられたわけではない。とりあえずは現状維持しつつ、浮島なり移転先などを見つけてから順次移転という方向で話はまとまりそうだ。その他、ハンター各自から報告書の形で現状もまとめられている。
「ただ、種族が違えば価値観も違うわ。未だ諍いが無いのは相手の為に我慢してるからだと思うの」
「確かに、実際に見てみると距離があるなって感じはしたぜ」
リシャーナの言葉に続いたレオーネ。浸食洞の中は確かに平穏だった。だが、魚人と人魚は見えない線でもあるかのようにきっちりと別れている印象を受けた。
「両者を分ける、という点に関しては急いだほうがいいわ。忘れないで頂戴」
「本当は、二つの種が協力できるといいんだけどな。人も精霊も幻獣も、助け合っていかなきゃいけないってのは皆が再認識したことだし……今後、上手い落としどころを見つけたいところだな」
ブリジットとリューがそう意見を述べた。
「それにしても、話し合いにもいけないなんて……残念なの……」
「ですよねぇ……ぜひとも目に焼き付けアンドモフりアンドブラッシングさせていただきたいんですが……」
不満を述べたのはディーナとハナだった。だが、万全な準備を整えていない以上は許可できないと言われてしまった。
「まぁ、いずれ協力を頼むこともあると思うから、その時は頼むよ」
そういったロルフに見送られ、ハンターたちは島を後にしたのだった。
●
「……よろしかったのですか?」
ブラウヒッチ兵長の言葉に、ロルフは無言でうなずいた。思うところはある。師団長としての、あるいは帝国兵としての責任。
だが、周りに迷惑をかけているという自覚も同時にあった。
「それに、相棒に心配かけていると言われるとね」
去り際、リシャーナに言われた言葉を思い出しながら、ロルフは傍らに立つグリフォンを撫でた。
「まぁ元々、事はどちらかというとハンター達にも関係があることだ」
「確かに、その通りですな」
ロルフは、自分が戦った相手……島の中央、大穴の最深部に息をひそめる島主に言った言葉を思い出す。
『第五師団だけでなく、もっと多くの人にグリフォンの力を分け与えたい。その許可を』
その返答は、グリフォンに頼らず力を示せというものだった。
(だが、よくよく考えれば別にグリフォン以外に頼るなとは言われてなかったな)
自身の頭が固くなっていたかと、ロルフは苦笑する。今日の戦いでも遠回しに一人で戦う必要は無いと言ってくれていたのだろう。
「出直すとしよう。仲間を連れて、ね」
その相手の名は、大幻獣『フリーデン』
暗闇に佇む、翼無きグリフォン。
「あれは……新しいグリフォンさんですか!?」
それを最初に見つけたのは、浸食洞から船上に戻ってきていた星野 ハナ(ka5852)だった。心底楽し気な雰囲気で声を上げたハナだったが、その様子を……血まみれの師団長を乗せたグリフォンを見て、ただ事ではないと気づいた。
「とにかく降ろそう。それから治療を」
「分かったの!」
ハナに続く形で榊 兵庫(ka0010)をはじめとしたハンターたちが集まってくる。
「……とりあえず、大丈夫そうなの。直に目を覚ますと思うの」
兵庫に促されたディーナ・フェルミ(ka5843)は、すぐさまフルリカバリーを用いて治療を施す。とりあえず、命に別状は無さそうだ。
「大丈夫そうならすぐに起こしてくれ! まず敵が歪虚か……島に危険が迫っているのか聞かないといけねぇ!」
そういってずかずかと歩み寄るボルディア・コンフラムス(ka0796)。状況を見れば当然の判断だ。だがそれをリュー・グランフェスト(ka2419)が止めた。
「まぁ待ちなって……とりあえず危険は無さそうだしな」
「なんでそんな……なるほど、そういうことか」
そういわれてボルディアも気が付いた。グリフォンの方に周囲を強く警戒する様子が無いことに。
(むしろ俺のことを警戒してる感じだな……)
場合によっては胸倉掴んでも喋らせるぐらいの勢いだった。それがグリフォンの警戒心を刺激したと思われる。
「とりあえず、寝かした方がいいだろ」
ディーナといっしょに、レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)がロルフを船室に運んでいく。
「変ね……」
「……リシャーナさんも気づきましたか」
「ええ」
リシャーナ(ka1655)とブリジット・B・バートランド(ka1800)は、運ばれるロルフとその様子を見守るグリフォンを見比べながらその違和感に気づいていた。ロルフがこれだけの怪我をしながら、グリフォンの方は無傷だったのだ。
「無意味なことをする人ではなさそうですし……」
「あるのは亜人がらみだけじゃないということみたいね」
●
グリフォンがやってくるその前。
そもそも、ハンターたちは魚人や人魚に関する意見を聴取するために集められていた。
「これはRBの難民問題に通じるところがあるかもしれないな」
そう前置いたうえで、まずは兵庫が意見を述べ始めた。結論から言うと、兵庫は浮島を新たな住処とする案を軸に調整を行いたい考えのようだ。
「新たな島を探すといっても、その場所に先住者はいる可能性は高いと思う。それらとのトラブルが生じる可能性が否定できない以上、現状の方がベターなのではないかと思う」
「俺は移転したほうがいいと思うぜ」
なるほど、と頷きながら次に意見を出したのはボルディアだ。ボルディアは移転を軸に考えているようだ。実際に別の案が採用されたとしても、移転候補を考えるだけなら無駄にもならないだろうということだ。
「もちろん、条件はあるぜ?」
そういったボルディアは3本の指を立てていた。
まず、住環境が人魚や魚人の要望にあうこと。第2に、あまり人間たちと頻繁に遭遇しない場所。そして、最後に最も重要としたのが、歪虚があまり出ない場所で、人間が定期的に目を光らせられる場所。
「人間が定期的に目を光らせられる場所……どういう意図なのでしょう?」
「あー、別に監視しようってつもりじゃないんだ。ようは、歪虚が出ても海軍なんかがすぐにフォローできるかどうかってことだな」
ブリジットの質問に答えながら、ボルディアは続けた。
「この辺りを参考にして、帝国海域だけじゃなく、同盟やリゼリオまで範囲を広げて探していけばいいと思うんだ。きっと0じゃないはずだぜ?」
「その通りだけど、仮に移転先が見つかっても、ここに永住したいという亜人もいると思うの」
そう意見を出したのはリシャーナだ。
「永住したい亜人、引っ越ししたい亜人。どちらにも対応できるように、移転先も、浮島も、どちらも用意していった方がいいと私は思うわ」
ただ、コストや人手が問題になってくるだろうと、リシャーナは締めくくった。
ブリジットはリシャーナの案に賛同しつつ、師団側が提示していた案の一つである人工的に浸食洞を作り出すという案には明確に反対を示した。
「確か、報告書によると島中央部に巨大な陥没穴がある……ですよね?」
その問いに対し、話を聞いていたブラウヒッチ兵長が頷く。
「そうなると、島の地下に雨水による浸食空洞がある恐れもあります。むやみに人工洞窟を掘るのは危険でしょう」
「なるほど。参考にさせてもらう」
意見がひと段落ついたところで、兵庫が質問を始める。
「そもそも、浮島を作るとして、どれぐらいの数が作れるんだ?」
これは、魚人と人魚とは基本的に離しておくべきとの考えからだ。この点は他の者も共通している。
「まぁリシャーナも述べた通りコストと……魚人、人魚の意向しだいといったところだ」
●
一方、ハンターの半数は浸食洞に向かい、直に意見を聞き出そうとしていた。
「怪我したりしてる人は……さすがにいなさそうだな」
小舟で移動しつつ様子を確認するレオーネ。本当のところはグリフォンを移動用に借りれたら良かったのだが、あまり住人を刺激するのは良くないと言われたので断念した。
「それにしても……」
レオーネはあたりを見回すが、特に問題がありそうな様子は見えない。のどかといえばのどかだ。
「あまり深く物事は考えない……だっけか。様子を見るとなるほどとは思うな」
同乗するリューも周囲を見ながらそう呟く。片手にはレオーネから持たされたカメラを持っている。
「本当は酒でも酌み交わしたいところだったんだけどな」
実際にリューは酒を用意しており、酌み交わしながら交流を深めようと考えていたが、これも兵長がNGを出した。酒を呑んで彼らがどうなるか分からないからと。
「警戒しすぎじゃねぇかな」
「最低限の世話はしてるみたいだけどさ。第五師団の方でもやっぱり生態とかがよくわかってないってことなんだと思うぜ」
そう言いながら、レオーネはPDAを操作しながら人数や様子などを記録していく。
「とりあえず、近くにいる人に聞いてみたけど、好きにしていいらしいの」
「了解。それじゃこっちも撮ってくぜ」
もう一艘の舟にはディーナとハナが乗っていた。カメラを使うことの許可も取れたようなので、リューがカメラで撮影をしていく。
「案外普通に話が通じるんですねぇ。もう少しお話したいですぅ」
ハナには気になっていることがあった。それは海中通路などの存在だ。
「浸食洞窟があって絶壁な場合ぃ、死火山で内部がカルデラになっている場合があるんですぅ。それが浸食洞繋がりで海水湖だったらこれ以上良い住処は無いですよねぇ」
「死火山……確かに島の中心には大穴が空いてるけど……」
実際に島の中にはいったこともあるレオーネはハナの言葉を聞いて考え込む。
「この島には霧という加護があるの」
今度はディーナが話し始める。
「私は霊闘士じゃないから感じ取れないけれど、この島には、その加護を振るえるほどの幻獣か……精霊が居ると思うの」
「あぁ……それは間違いないぜ」
それに関しては間違いないと、レオーネは断言した。なぜなら、レオーネは実際にこの島で何者かの……おそらくは島主なのだろう。その声を聞いたからだ。
こうして、調査を終えた4人は一度船に戻る。ロルフが戻ってきたのはそれからすぐのことだった。
●
「……ここは?」
「あ、良かった……みんな、気が付いたのよ!」
気が付いた時、ロルフはベッドの上で寝かされていた。その様子にいち早く気づいたディーナは、すぐに人を呼びに行った。
「さっきはびっくりしたわ」
そばにいたリシャーナがそう語りかける。
「いや、心配かけたみたいだね。申し訳ない」
「全くだぜ、師団長」
そういって、レオーネが船室に入ってきた。後に続くのはブリジット、ハナ。
「海に出てる連中にも連絡したから、すぐに戻ってくるぜ」
ディーナとともに、ボルディアも入ってきた。
この時、兵庫はリューとともに島から少し離れた海の状況を見に行っていた。波の強さや海流などから、船を浮島にするに適当な場所がないかを探したい、とはリューの談だ。
「さて、集まってきたことだし……」
「無事で何よりです! それじゃ、話してもらいますよ!」
ブリジットの言葉を遮るようにハナが詰め寄る。その言葉にはどこか確信めいた感情が見え隠れしていた。
「何と戦ってきたのか、それが何なのか……!」
「少なくとも、敵ではないし、会話が通じる相手でもある……違うの?」
ハナに続き、ディーナもそう問いただす。
「起きてすぐにそんなに質問されてもな……どうしてそう思うんだい?」
「簡単なの、あなたが……」
「この島を出ていく、という選択肢を示さないからですよぉ?」
この点、ハナとディーナの意見は一致していた。これほどの怪我を負わせるほどの脅威がこの島にいるにも関わらず、撤退しようという一言が出てこない。あるいは島の外縁に少し間借りする程度なら頓着しないということもあるかもしれないが、それでは理由として弱い。
その話を聞き、ロルフは困った顔を浮かべていた。図星だったということだろう。
「何かを一人で抱えている……そんなふうに見えるわ」
リシャーナはそう指摘した。
「自分ではそういうつもりではないんだけどね……そうか。そう見えるか……」
「あまり深くは聞かないけれど……困難には一人じゃなく、部下や……私たちハンター達と一緒に立ち向かってほしいわ」
脳裏に思い人のことを思い浮かべながら、ブリジットもそう続けた。
「……なぁ。やっぱり島の主なんだろ? 相手は」
レオーネのその言葉で、ロルフは観念したのだろう。深いため息をついた後、言った。
「あぁ。その通りだ。僕が相手をしてきたのはこの島の主さ」
●
「次回はぜひ、魚人や人魚の代表格と会談を持ちたいものだ」
「酒でも酌み交わしながらな……ってわけにはいかないんだったな」
兵庫とボルディアはそう言って笑った。
当初の依頼が忘れられたわけではない。とりあえずは現状維持しつつ、浮島なり移転先などを見つけてから順次移転という方向で話はまとまりそうだ。その他、ハンター各自から報告書の形で現状もまとめられている。
「ただ、種族が違えば価値観も違うわ。未だ諍いが無いのは相手の為に我慢してるからだと思うの」
「確かに、実際に見てみると距離があるなって感じはしたぜ」
リシャーナの言葉に続いたレオーネ。浸食洞の中は確かに平穏だった。だが、魚人と人魚は見えない線でもあるかのようにきっちりと別れている印象を受けた。
「両者を分ける、という点に関しては急いだほうがいいわ。忘れないで頂戴」
「本当は、二つの種が協力できるといいんだけどな。人も精霊も幻獣も、助け合っていかなきゃいけないってのは皆が再認識したことだし……今後、上手い落としどころを見つけたいところだな」
ブリジットとリューがそう意見を述べた。
「それにしても、話し合いにもいけないなんて……残念なの……」
「ですよねぇ……ぜひとも目に焼き付けアンドモフりアンドブラッシングさせていただきたいんですが……」
不満を述べたのはディーナとハナだった。だが、万全な準備を整えていない以上は許可できないと言われてしまった。
「まぁ、いずれ協力を頼むこともあると思うから、その時は頼むよ」
そういったロルフに見送られ、ハンターたちは島を後にしたのだった。
●
「……よろしかったのですか?」
ブラウヒッチ兵長の言葉に、ロルフは無言でうなずいた。思うところはある。師団長としての、あるいは帝国兵としての責任。
だが、周りに迷惑をかけているという自覚も同時にあった。
「それに、相棒に心配かけていると言われるとね」
去り際、リシャーナに言われた言葉を思い出しながら、ロルフは傍らに立つグリフォンを撫でた。
「まぁ元々、事はどちらかというとハンター達にも関係があることだ」
「確かに、その通りですな」
ロルフは、自分が戦った相手……島の中央、大穴の最深部に息をひそめる島主に言った言葉を思い出す。
『第五師団だけでなく、もっと多くの人にグリフォンの力を分け与えたい。その許可を』
その返答は、グリフォンに頼らず力を示せというものだった。
(だが、よくよく考えれば別にグリフォン以外に頼るなとは言われてなかったな)
自身の頭が固くなっていたかと、ロルフは苦笑する。今日の戦いでも遠回しに一人で戦う必要は無いと言ってくれていたのだろう。
「出直すとしよう。仲間を連れて、ね」
その相手の名は、大幻獣『フリーデン』
暗闇に佇む、翼無きグリフォン。
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GN島開拓会議(相談スレ) レオーネ・インヴェトーレ(ka1441) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/05/14 13:48:14 |
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質問卓 ボルディア・コンフラムス(ka0796) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2017/05/12 12:33:02 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/14 10:58:49 |