ゲスト
(ka0000)
【初心】迷子のユキウサギ
マスター:猫又ものと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- LV1~LV20
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/17 22:00
- 完成日
- 2017/05/25 08:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●辺境の地で
辺境と呼ばれる地域は、ゾンネンシュトラール帝国の長城の外側北東部に広がり、内海沿いの温暖な東部、寒冷地の北部の二つに分けられる広大な地域である。
時に過酷な環境となる辺境には、独特の文化を先祖から継承する諸部族が生活している。霊闘士が使う霊呪や呪術師による医療行為も、こうして継承された文化の一つである。
他の者に邪魔される事なく、昔ながらの生活を送る諸部族。彼らはのんびりと、そして逞しくこの広大な大地の中で生きて来た。
――歪虚が大挙として押し寄せるあの時までは。
辺境北部、および東部から現れた歪虚によって、多くの部族の居住地域が奪われた。
そしてそれは、辺境の大地を住まいとする幻獣達にとっても同じこと。
歪虚に対抗する力を持たぬ幻獣達は、各地に結界を作り、その中でひっそりと、人々の前に姿を現すことなく生活をしていた。
――かつて、沢山のユキウサギ達が住んでいた『おばけクルミの里』も、こうした場所の一つだ。
住んでいた……と過去形になっているが、それはとある事件を境に、ユキウサギ達がハンター達に力を貸すことを約束し、大幻獣ナーランギの結界に守られた『精霊の森』へと住居を移したからである。
別にここを捨てた訳ではない。
すべてが終わったら、ここへまた戻って来るのだ。
……まあ。ユキウサギ達の中にはマイペースな者達もいて、あーでもないこーでもないと色々とやっているうちに引っ越しそびれて、残ってしまっているユキウサギ達もいたりする。
今回事件に巻き込まれた2匹も、何だかんだで引っ越しそびれていた者達だった。
●迷子のユキウサギ
その日。彼らは、延びに延びていた『幻獣の森』への引っ越しを決行した。
茶色の毛並みのユキウサギは大きなリュックを背負って、歩く度に垂れた耳がぴこぴこと揺れる。
その隣を歩く灰色の毛並みのユキウサギもまた、大きなバッグを抱えている。
荷物が重いせいか、途中何度も休憩して、周囲はすっかり暗くなってしまった。
もっと早く着く予定だったのに、きっとツキウサギ様は心配しているに違いない。
ずっと歩き続けて、足が重い。けれど、早く幻獣の森に行かなくては……!
無言で歩く2匹のユキウサギ。
不意に灰色のユキウサギが立ち止まり、ピンと立った耳をぴこりと揺らす。
――木々の向こうに、何かの気配がする。
仲間が迎えに……いや、違う。
禍々しい気配。暗がりでも分かる。あれは……雑魔だ……!!
「―――――!!!」
「―――――!!!!!!!」
声にならない声をあげる2匹。
自分達では、雑魔と戦うなんて無理だ。
だったら、出来ることは一つ……!
ユキウサギ達は、暗がりの中を全力で走り出した。
●ツキウサギからの依頼
……どうしよう。やっぱり行くべきだろうか。
あいつはシバ様がずっと追っていた……あの人の寿命を縮める原因にもなった敵だ。
正直とても気になっているのだが……でも、族長補佐の仕事を放り投げて行く訳にもいかないし――。
「……ルズさん。イェルズさんってば!」
「わあっ!? な、何!?」
「何? はこちらの台詞ですよ。ぼんやりしちゃって大丈夫です?」
ハンターズソサエティ職員のイソラに覗き込まれ、仰け反るイェルズ・オイマト(kz0143)。
こほん、と咳払いをして慌てて取り繕う。
「大丈夫だよ! で、今日の仕事は初心者さんの引率だっけ?」
「そうです。ツキウサギさんからの依頼ですよ。迷子になってるユキウサギさんを探して欲しいそうです」
「ユキウサギが迷子になったの……? 何だってまた?」
「ツキウサギさんの話によると、おばけクルミの里から幻獣の森へ引っ越して来るユキウサギさんがいるんですが、彼らが予定の日数を過ぎても到着しないそうなんです。途中で雑魔の目撃情報もあったので、恐らく雑魔に追われて迷子になったのでは、と……」
「あの。イソラさんすみません……。ツキウサギとかユキウサギとかって何ですか?」
恐る恐る挙手をして発言する初心者ハンター。
それにイソラがあ! と声をあげた。
「ああ、説明してなかったですよね。ごめんなさい。ユキウサギというのは幻獣の一種なんです。どこの眷属かは不明ですが、二足歩行のウサギの姿をしています。赤い目に、ふわふわな白い毛を持つものが最も多いんですが、他の毛色もいます。暑苦しい性格をしてる子が多いですね。ツキウサギさんはユキウサギさんの大幻獣と言われるもので、長時間マテリアルをため込んで人の言葉を話せるようになった個体のことですよ」
「……ということは、喋れる幻獣さんから、喋れない幻獣さんを保護して欲しい、と依頼があったということでしょうか」
「そうそう! そういうことです!! 周辺の雑魔はベテランハンターさんが既に駆除してくれてますが、もし出会ってしまっても今回は引率にイェルズさんが一緒にいますので大丈夫です!」
「うん。もし雑魔が出ても俺が守るから、ユキウサギの探索に専念してもらって大丈夫だよ。何か分からないことがあったらいつでも聞いてね」
「はい。分かりました! 先輩宜しくお願いします!」
「先輩なんてくすぐったいからイェルズでいいよ。よろしくね」
「うふふー。いい雰囲気ですねー。では、周辺の地形を説明しますね!」
イソラの言葉に頷く初心者ハンターとイェルズ。
かくして、初心者ハンター達による、迷子のユキウサギの救出劇が始まるのだった。
辺境と呼ばれる地域は、ゾンネンシュトラール帝国の長城の外側北東部に広がり、内海沿いの温暖な東部、寒冷地の北部の二つに分けられる広大な地域である。
時に過酷な環境となる辺境には、独特の文化を先祖から継承する諸部族が生活している。霊闘士が使う霊呪や呪術師による医療行為も、こうして継承された文化の一つである。
他の者に邪魔される事なく、昔ながらの生活を送る諸部族。彼らはのんびりと、そして逞しくこの広大な大地の中で生きて来た。
――歪虚が大挙として押し寄せるあの時までは。
辺境北部、および東部から現れた歪虚によって、多くの部族の居住地域が奪われた。
そしてそれは、辺境の大地を住まいとする幻獣達にとっても同じこと。
歪虚に対抗する力を持たぬ幻獣達は、各地に結界を作り、その中でひっそりと、人々の前に姿を現すことなく生活をしていた。
――かつて、沢山のユキウサギ達が住んでいた『おばけクルミの里』も、こうした場所の一つだ。
住んでいた……と過去形になっているが、それはとある事件を境に、ユキウサギ達がハンター達に力を貸すことを約束し、大幻獣ナーランギの結界に守られた『精霊の森』へと住居を移したからである。
別にここを捨てた訳ではない。
すべてが終わったら、ここへまた戻って来るのだ。
……まあ。ユキウサギ達の中にはマイペースな者達もいて、あーでもないこーでもないと色々とやっているうちに引っ越しそびれて、残ってしまっているユキウサギ達もいたりする。
今回事件に巻き込まれた2匹も、何だかんだで引っ越しそびれていた者達だった。
●迷子のユキウサギ
その日。彼らは、延びに延びていた『幻獣の森』への引っ越しを決行した。
茶色の毛並みのユキウサギは大きなリュックを背負って、歩く度に垂れた耳がぴこぴこと揺れる。
その隣を歩く灰色の毛並みのユキウサギもまた、大きなバッグを抱えている。
荷物が重いせいか、途中何度も休憩して、周囲はすっかり暗くなってしまった。
もっと早く着く予定だったのに、きっとツキウサギ様は心配しているに違いない。
ずっと歩き続けて、足が重い。けれど、早く幻獣の森に行かなくては……!
無言で歩く2匹のユキウサギ。
不意に灰色のユキウサギが立ち止まり、ピンと立った耳をぴこりと揺らす。
――木々の向こうに、何かの気配がする。
仲間が迎えに……いや、違う。
禍々しい気配。暗がりでも分かる。あれは……雑魔だ……!!
「―――――!!!」
「―――――!!!!!!!」
声にならない声をあげる2匹。
自分達では、雑魔と戦うなんて無理だ。
だったら、出来ることは一つ……!
ユキウサギ達は、暗がりの中を全力で走り出した。
●ツキウサギからの依頼
……どうしよう。やっぱり行くべきだろうか。
あいつはシバ様がずっと追っていた……あの人の寿命を縮める原因にもなった敵だ。
正直とても気になっているのだが……でも、族長補佐の仕事を放り投げて行く訳にもいかないし――。
「……ルズさん。イェルズさんってば!」
「わあっ!? な、何!?」
「何? はこちらの台詞ですよ。ぼんやりしちゃって大丈夫です?」
ハンターズソサエティ職員のイソラに覗き込まれ、仰け反るイェルズ・オイマト(kz0143)。
こほん、と咳払いをして慌てて取り繕う。
「大丈夫だよ! で、今日の仕事は初心者さんの引率だっけ?」
「そうです。ツキウサギさんからの依頼ですよ。迷子になってるユキウサギさんを探して欲しいそうです」
「ユキウサギが迷子になったの……? 何だってまた?」
「ツキウサギさんの話によると、おばけクルミの里から幻獣の森へ引っ越して来るユキウサギさんがいるんですが、彼らが予定の日数を過ぎても到着しないそうなんです。途中で雑魔の目撃情報もあったので、恐らく雑魔に追われて迷子になったのでは、と……」
「あの。イソラさんすみません……。ツキウサギとかユキウサギとかって何ですか?」
恐る恐る挙手をして発言する初心者ハンター。
それにイソラがあ! と声をあげた。
「ああ、説明してなかったですよね。ごめんなさい。ユキウサギというのは幻獣の一種なんです。どこの眷属かは不明ですが、二足歩行のウサギの姿をしています。赤い目に、ふわふわな白い毛を持つものが最も多いんですが、他の毛色もいます。暑苦しい性格をしてる子が多いですね。ツキウサギさんはユキウサギさんの大幻獣と言われるもので、長時間マテリアルをため込んで人の言葉を話せるようになった個体のことですよ」
「……ということは、喋れる幻獣さんから、喋れない幻獣さんを保護して欲しい、と依頼があったということでしょうか」
「そうそう! そういうことです!! 周辺の雑魔はベテランハンターさんが既に駆除してくれてますが、もし出会ってしまっても今回は引率にイェルズさんが一緒にいますので大丈夫です!」
「うん。もし雑魔が出ても俺が守るから、ユキウサギの探索に専念してもらって大丈夫だよ。何か分からないことがあったらいつでも聞いてね」
「はい。分かりました! 先輩宜しくお願いします!」
「先輩なんてくすぐったいからイェルズでいいよ。よろしくね」
「うふふー。いい雰囲気ですねー。では、周辺の地形を説明しますね!」
イソラの言葉に頷く初心者ハンターとイェルズ。
かくして、初心者ハンター達による、迷子のユキウサギの救出劇が始まるのだった。
リプレイ本文
青い空に白い雲がぽっかりと浮かんで、とてもいい天気に恵まれたその日。
初心者ハンター達とイェルズ・オイマト(kz0143)は、ユキウサギ達が逃げ込んだと思われる岩場へと向かっていた。
「茶色の子がレミ様、灰色の子がグリ様、ですね?」
「そうです。ツキウサギに聞いてきたので間違いないと思います」
歩みを進めながら、丁寧に確認する奈良田 小夜(ka6569)にイェルズが頷く。
「迷子のユキウサギ、ね……」
ぽつりと呟くアマリリス(ka5726)。
彼女の脳裏に過るのは弟の顔。
……昔、小さかった弟が迷子になり、探しに向かったことがある。
今となっては笑い話だけれど。当時は二度と弟に会えないのではないかと怖くて不安で――。
「恐ろしい魔物に追われて、見慣れぬ土地で迷子など、さぞかし心細い思いをしているだろうね……」
「心配なの。早く見つけてあげないとなの」
アマリリスの心情を察したように続けた瀬陰(ka5599)。札抜 シロ(ka6328)もこくりと頷く。
シロ自身もユニットとしてユキウサギを迎えている。今回のことも他人事とは思えなかった。
ウサギは自分の稼業である手品師の大事なパートナーだ。無事に見つけてあげたい。
「みんなイッショだからダイジョーブ! ガンバッテさがそウ!」
仲間達を励ますように明るく言うアレクシス・ラッセル(ka6748)。
周囲を注意深く見渡しながら、氷雨 柊羽(ka6767)がうーん……と考え込む。
「……雑魔、他に出ないといいな」
「もし出たとしても俺がいますから大丈夫ですよ!」
「うん。それはそうなんだけどさ」
イェルズに頷き返す柊羽。
この周辺に出た雑魔はベテランのハンターが駆除したと聞いた。
イェルズもいるし、そこまで警戒しなくてもいいのだろう、とは思うけれど。可能性があると言われると……。
それに正直、ただ守られるというのは性に合わない。自分だってハンターだ。戦える。
いざという時の為に、警戒はしておこう――。
「あたし、今日は探索に集中できるようにしてきちゃったから、戦闘の手段が乏しいの。だからイェルズさん頑張ってなの! あたしみたいな可愛い女の子にピッタリ側にいられたら、照れちゃうかもしれないけど」
「あはは。きっちり騎士役努めさせて戴きますね」
うふふと笑うシロに微笑み返すイェルズ。そこに瀬陰が笑顔で手を差し出す。
「おっと失礼。ユキウサギに夢中で挨拶が遅れた。イェルズ君も忙しい所すまないね。心強いよ。よろしく頼むね」
「こちらこそ!」
「あっ! ボクもボクも! イェルズとあくしゅ!!」
瀬陰の手を握り返すイェルズ。それにアレクシスも続いて……。
「皆さま、岩場が見えて参りましたよ」
そこに聞こえた小夜の声。それに仲間達の表情が引き締まる。
「これはまた、結構広そうだね……」
「岩も大きい。隠れられる場所が沢山ありそうだ」
「そうね……。とにかく順番に回るしかないかしら」
ごつごつとした大きな岩と木々が複雑に絡み合った地形を見て、ため息を漏らす柊羽。
腕を組む瀬陰にアマリリスが頷き……シロがはい! と挙手をする。
「ちょっと待って欲しいの! こんな時の為にトランプを持ってきたの! 『禹歩』で占いをしてみるの!」
じゃーーん! と符を掲げた彼女にアレクシスの目が輝く。
「わお! トーヨーのウラナイ!? ナニがわかるノ!?」
「どっちに進めば敵に見つからずに迷子のユキウサギまでたどり着けるか分かるかもなの。やってみるの!」
符に力をこめる彼女。
暫しの沈黙。小夜が恐る恐る声をかける。
「……どうです? 何か分かりましたか?」
「……良く分からなかったの」
しょんぼりするシロ。
『禹歩』は占いにより危難を避け、戦機を見い出すものだ。
歪虚がいる方角は分かるかもしれないが、ユキウサギのいる場所までは特定できるものではない。
「でも、シロのスキルで『分からなかった』ということは、逆に言うと歪虚は近くにいない、ということだよね」
「うん! それは間違いないと思うの!」
柊羽の確認するような声に、頷くシロ。アレクシスはビシィ! と前方を指差す。
「ウラナイすごいノーー! アンシンしてサキにすすめるネ! いこう! ユキウサギさんのモトへ……あ。ダイジなコトをわすれてたヨ!! 足元には、じゅーぶん気をつけナイとネっ! つるーってしナイよーにネ!」
「そうだね。皆、離れないように気を付けてね」
「あ、ちょっと待って」
続いた瀬陰の注意に頷いた仲間達。
アマリリスは近くの樹に『ここから侵入した』と分かる目印をつけた。
「うーさちゃん! うーさちゃん! まーいごーのうーさちゃーんはどっこだーろなー♪」
「レミ様ー……! グリ様ー……!」
「聞こえたら返事をしてくれ……!」
アレクシスの楽しそうな歌声。小夜と柊羽の音量を押さえた呼びかけが岩に吸い込まれていく。
大きな声で呼んだ方がユキウサギ達も気付きやすいだろうが、それはまさに自分達やユキウサギの元に歪虚を呼びかねない。
探しやすさよりユキウサギ達の安全を優先しながら進む。
「ここにもいないな……。そっちはどう?」
「こっちにもいないわ」
「ココにもいないヨー!」
「私が見ているところにもいませんね」
「こっちも残念ながら外れだ」
「ここにもいないのー!」
「俺の見てるところもハズレみたいです」
お互い声を掛け合いながら、1つ1つ探し、探し終わったところに印を残していくハンター達。
沢山の岩や樹を順番に、丁寧に探しているためどうしても時間がかかる。
ちなみに、生命感知も使ってみたのだが、結界内に入る10cm以上ある生命体を全て拾ってしまう為、残念ながらあまり役には立たなかった。
そんなこんなでもう数時間歩き続けているが……ユキウサギ達を早く見つけてやりたい気持ちが強いのか、誰一人弱音を吐いたり、休憩を言い出すものはいなかった。
黙々とした地味な作業だったが、アレクシスが持ち前の明るさで場を盛り上げることもあり、うまく気分転換が出来ていたこともあったのかもしれない。
「……折れてる枝を見つけたわ。茶色の毛がついてたし、あそこにぶつかったのかもしれないわね」
「比較的新しい足跡があったの。まっすぐ奥に進んでるみたいなの」
急ぎ足で戻って来たアマリリス。そして式符を飛ばし、地面すれすれを見ていたシロ。
2人の報告に瀬陰が頷く。
「僕も足跡を見つけた。この先の奥まで行ったと見て間違いないかな……」
瀬陰の指差す先に目をこらす柊羽。
木々の間から、キラキラと光るものが見える。
「……あれは水かな。沢が近いみたいだ」
「サワ! おミズながれてるトコだネ! うさちゃん、サワでおミズのんでるかもしれないネ」
「そうね……。何日も戻って来ていないならお腹空かせてるかもしれないわ」
「何か食べ物を持っていてくれると良いですが……」
アレクシスの呟きに頷くアマリリス。小夜のため息交じりの声に、シロが式符を飛ばして場所を確認する。
「うん。この先は沢で間違いないの! 言ってみるの!」
時折聞こえるそれにまず気づいたのは小夜だった。
不意に顔を上げた彼女に、柊羽が首を傾げる。
「小夜、どうかしたか?」
「……何か音がします。地面を叩くような……」
「音……?」
耳を澄ます柊羽。すると――。
だん! だんだん! だん!!
「あっ。本当だ。皆も聞こえるか?」
「ウン! ナンかダンダン! っていってるネ! タイコみたいなオト!」
「何か音が近づいてきてる気がするんだけど……」
頷くアレクシスとアマリリス。
対象がこちらに近づいているというよりは、自分たちが対象に近づいている気がする。
今、自分達は沢に向かって移動している、ということは……沢に何かいるのだろうか?
その音を聞いていたシロは、あ……と短く声をあげた。
「……あたし、この音知ってるかもしれないの」
「ん? どんな時に聞いたんだい?」
「マジックショーで使うウサギさんがこんな足踏みすることあったの」
彼女の呟きに、片側だけ残った目を見開く瀬陰。
ハンター達は顔を見合わせると、皆一斉に沢へと急ぐ。
木々と岩の間から顔を出した沢。
そこは谷間のようになっていて、ハンター達から立っている場所より一段低くなっていた。
変わらず聞こえるダンダン! という音。
音を頼りに、6人が辺りを見渡すと――沢の畔に、蹲っている茶色の垂れ耳ユキウサギと、一心不乱に地面を蹴り続けている灰色のユキウサギがいた。
「……見つけたわ!」
「グリ! レミ! 探したんだヨ!」
アマリリスとアレクシスの声に顔を上げた灰色のユキウサギ。
一瞬ビクゥ! となったものの、茶色のユキウサギを庇うように前に立つ。
「あっ。あたし達敵じゃないの! 助けに来たの!!」
「……君が迷子のレミとグリかな。ツキウサギから君達を捜してほしいって頼まれたんだ」
黒い円らな瞳をシロと柊羽に向けた灰色のユキウサギ。
『ツキウサギ』という単語を聞いた途端、滂沱の涙を流し始める。
「怖かったんですね……。もう大丈夫ですよ」
「キュウ! キュッ!」
優しく声をかける小夜。グリと呼ばれたユキウサギは、茶色のユキウサギを指差した後、足をおさえてひっくり返る。
「……レミが怪我をしたって言いたいのかしら?」
「きっとそうなの。レミ、ずっと動かないもの……」
「タイヘン! テアテしなきゃ!」
グリのジェスチャーを察したアマリリス。心配そうなシロとアレクシスに頷いた瀬陰は、下のユキウサギに向かって努めてゆっくり、優しく声をかける。
「今そちらに降りる。そこで待っているんだ。大丈夫。必ず助けるよ。……イェルズ君、申し訳ないがロープを樹に括りつけるのを頼んでいいかな」
「了解です!」
「……ええと。歪虚に驚いて岩場に逃げ込んだまでは良かったが、勢いよく走っていたから沢があることに気付かず、落ちてしまったってことか?」
「その時に、レミは足を挫いて動けなくなって、グリはずっと、足踏みで救難信号を出し続けてたってことね。合ってる?」
柊羽とアマリリスの確認するような声にこくこくと頷く2匹のユキウサギ。
あれから瀬陰は4往復して、沢からユキウサギ達と彼らの荷物を引っ張り上げて、足を怪我したレミの手当てをして……今この状況がある。
「そっかー! タイヘンだったネ! カワイソウだったネ! もうダイジョーブ! イタイのイタイのとんでけーっ」
「あたし達がきちんと幻獣の森まで送ってあげるの」
シオシオしている2匹をぎゅーっと抱きしめるアレクシスとシロ。
そこに小夜がパンと水を持ってやってくる。
「お二人とも、お腹が空いていませんか? 宜しければ召し上がってください」
それに目を輝かせるグリとレミ。飛びつくと一瞬で平らげて……。
それでようやく落ち着いて、自分達が助けて貰ったのだと気が付いたらしい。
2匹はハンター達にコメツキバッタのように頭を下げる。
「ははは。いいんだよ、気にしないで。当然のことをしただけだからね」
「そうなの。ユキウサギさん達はハンターに協力してくれてるの。助け合うのは当たり前なの!」
「そうよ。貴方達が無事で良かったわ」
ぺこぺこしているユキウサギ達を宥める瀬陰とシロ、アマリリス。
柊羽はその様子に微かに目を細める。
「ツキウサギも心配してる。一緒に戻るとしようか」
「でも、レミ様、この足では歩けませんね……」
「ああ、僕が背負おう。レミ君、それでいいかな?」
心配そうな小夜の言葉を受けて請け負う瀬陰。レミはこくこくと頷く。
「ぜのん、ダイジョーブ? ボクせおおうか?!」
「大丈夫さ。これでも娘を育てた身だ。ユキウサギを抱えるくらい造作もないよ」
「エッ。ぜのんムスメいるノ!? どんな子!? かわいい!?」
「アレクシス様、その話は後にしましょうか?」
「ソウだった! グリ、ボクとおててつないでうたいながらかえろうヨ!」
「あたし荷物持ってあげるの」
「私も手伝うわ」
小夜の諭すような声にアッと声をあげたアレクシス。シロとアマリリスが2匹の荷物を抱えると、彼はその勢いのままグリの手を取って……。
アレクシスの変わり身の早さに、仲間達から笑いが漏れた。
皆で楽しく歌ったり、話したりしながら歩き、見えて来た幻獣の森。
ツキウサギが心配そうにウロウロしているのが目に入る。
「ツキウサギさん! ただいまだヨーー!」
「あっ……! ハンターさん! すみませんッス。うちのが迷惑かけたッス……!」
ぶんぶんと手を振るアレクシス。深々と頭を下げるツキウサギに、シロがぷるぷると首を振る。
「いいの。それよりレミちゃん怪我してるの。手当てはしたけど、念のためもう一度診てあげてなの」
「グリもすごく疲れてると思うわ。しっかり休ませてあげて」
「迷子になっている間、何も召し上がっていらっしゃらなかったようなので、お食事を差し上げてください」
アマリリスと小夜の気遣いに、もう一度頭を下げたツキウサギ。
グリと瀬陰の背から降ろして貰ったレミが、くいくい、とツキウサギの服を引っ張る。
「ん? お前達どうしたッス?」
「キュー」
「キュキュ」
何事か話し合っている3匹。
話がまとまったのか、ツキウサギがハンター達に向き直る。
「ハンターさん達、この後ご予定あるッスか?」
「ん? ハンターズソサエティに報告を入れて帰るだけだけど」
「なら、ごはん食べていかないッスか? これから巫女達と一緒に夕飯作るとこだったッスよ」
「それは有り難いけど……いいのか?」
「はいッス! レミもグリもハンターさんにお礼したいって言ってるッス。是非寄ってって下さいッス」
「ヤッター!! ミンナでごはん!! ミンナでごはんーーーー!!」
ツキウサギの申し出にそれじゃあ……と頷く瀬陰と柊羽。
万歳して喜ぶアレクシスに釣られて、レミとグリも万歳していた。
こうして、ハンター達は迷子のユキウサギを見つけ出し、無事に幻獣の森まで送り届けることが出来た。
レミとグリは深くハンター達に感謝し、『自分達はこの先幻獣の森に住むので、近くに来ることがあったら寄って欲しい』とツキウサギを通じて懇願され、ツキウサギが採って来たという果物をお土産に貰った。
彼らの心遣いと、新たに繋がった縁。それに暖かなものを感じながら、ハンター達は帰路についたのだった。
初心者ハンター達とイェルズ・オイマト(kz0143)は、ユキウサギ達が逃げ込んだと思われる岩場へと向かっていた。
「茶色の子がレミ様、灰色の子がグリ様、ですね?」
「そうです。ツキウサギに聞いてきたので間違いないと思います」
歩みを進めながら、丁寧に確認する奈良田 小夜(ka6569)にイェルズが頷く。
「迷子のユキウサギ、ね……」
ぽつりと呟くアマリリス(ka5726)。
彼女の脳裏に過るのは弟の顔。
……昔、小さかった弟が迷子になり、探しに向かったことがある。
今となっては笑い話だけれど。当時は二度と弟に会えないのではないかと怖くて不安で――。
「恐ろしい魔物に追われて、見慣れぬ土地で迷子など、さぞかし心細い思いをしているだろうね……」
「心配なの。早く見つけてあげないとなの」
アマリリスの心情を察したように続けた瀬陰(ka5599)。札抜 シロ(ka6328)もこくりと頷く。
シロ自身もユニットとしてユキウサギを迎えている。今回のことも他人事とは思えなかった。
ウサギは自分の稼業である手品師の大事なパートナーだ。無事に見つけてあげたい。
「みんなイッショだからダイジョーブ! ガンバッテさがそウ!」
仲間達を励ますように明るく言うアレクシス・ラッセル(ka6748)。
周囲を注意深く見渡しながら、氷雨 柊羽(ka6767)がうーん……と考え込む。
「……雑魔、他に出ないといいな」
「もし出たとしても俺がいますから大丈夫ですよ!」
「うん。それはそうなんだけどさ」
イェルズに頷き返す柊羽。
この周辺に出た雑魔はベテランのハンターが駆除したと聞いた。
イェルズもいるし、そこまで警戒しなくてもいいのだろう、とは思うけれど。可能性があると言われると……。
それに正直、ただ守られるというのは性に合わない。自分だってハンターだ。戦える。
いざという時の為に、警戒はしておこう――。
「あたし、今日は探索に集中できるようにしてきちゃったから、戦闘の手段が乏しいの。だからイェルズさん頑張ってなの! あたしみたいな可愛い女の子にピッタリ側にいられたら、照れちゃうかもしれないけど」
「あはは。きっちり騎士役努めさせて戴きますね」
うふふと笑うシロに微笑み返すイェルズ。そこに瀬陰が笑顔で手を差し出す。
「おっと失礼。ユキウサギに夢中で挨拶が遅れた。イェルズ君も忙しい所すまないね。心強いよ。よろしく頼むね」
「こちらこそ!」
「あっ! ボクもボクも! イェルズとあくしゅ!!」
瀬陰の手を握り返すイェルズ。それにアレクシスも続いて……。
「皆さま、岩場が見えて参りましたよ」
そこに聞こえた小夜の声。それに仲間達の表情が引き締まる。
「これはまた、結構広そうだね……」
「岩も大きい。隠れられる場所が沢山ありそうだ」
「そうね……。とにかく順番に回るしかないかしら」
ごつごつとした大きな岩と木々が複雑に絡み合った地形を見て、ため息を漏らす柊羽。
腕を組む瀬陰にアマリリスが頷き……シロがはい! と挙手をする。
「ちょっと待って欲しいの! こんな時の為にトランプを持ってきたの! 『禹歩』で占いをしてみるの!」
じゃーーん! と符を掲げた彼女にアレクシスの目が輝く。
「わお! トーヨーのウラナイ!? ナニがわかるノ!?」
「どっちに進めば敵に見つからずに迷子のユキウサギまでたどり着けるか分かるかもなの。やってみるの!」
符に力をこめる彼女。
暫しの沈黙。小夜が恐る恐る声をかける。
「……どうです? 何か分かりましたか?」
「……良く分からなかったの」
しょんぼりするシロ。
『禹歩』は占いにより危難を避け、戦機を見い出すものだ。
歪虚がいる方角は分かるかもしれないが、ユキウサギのいる場所までは特定できるものではない。
「でも、シロのスキルで『分からなかった』ということは、逆に言うと歪虚は近くにいない、ということだよね」
「うん! それは間違いないと思うの!」
柊羽の確認するような声に、頷くシロ。アレクシスはビシィ! と前方を指差す。
「ウラナイすごいノーー! アンシンしてサキにすすめるネ! いこう! ユキウサギさんのモトへ……あ。ダイジなコトをわすれてたヨ!! 足元には、じゅーぶん気をつけナイとネっ! つるーってしナイよーにネ!」
「そうだね。皆、離れないように気を付けてね」
「あ、ちょっと待って」
続いた瀬陰の注意に頷いた仲間達。
アマリリスは近くの樹に『ここから侵入した』と分かる目印をつけた。
「うーさちゃん! うーさちゃん! まーいごーのうーさちゃーんはどっこだーろなー♪」
「レミ様ー……! グリ様ー……!」
「聞こえたら返事をしてくれ……!」
アレクシスの楽しそうな歌声。小夜と柊羽の音量を押さえた呼びかけが岩に吸い込まれていく。
大きな声で呼んだ方がユキウサギ達も気付きやすいだろうが、それはまさに自分達やユキウサギの元に歪虚を呼びかねない。
探しやすさよりユキウサギ達の安全を優先しながら進む。
「ここにもいないな……。そっちはどう?」
「こっちにもいないわ」
「ココにもいないヨー!」
「私が見ているところにもいませんね」
「こっちも残念ながら外れだ」
「ここにもいないのー!」
「俺の見てるところもハズレみたいです」
お互い声を掛け合いながら、1つ1つ探し、探し終わったところに印を残していくハンター達。
沢山の岩や樹を順番に、丁寧に探しているためどうしても時間がかかる。
ちなみに、生命感知も使ってみたのだが、結界内に入る10cm以上ある生命体を全て拾ってしまう為、残念ながらあまり役には立たなかった。
そんなこんなでもう数時間歩き続けているが……ユキウサギ達を早く見つけてやりたい気持ちが強いのか、誰一人弱音を吐いたり、休憩を言い出すものはいなかった。
黙々とした地味な作業だったが、アレクシスが持ち前の明るさで場を盛り上げることもあり、うまく気分転換が出来ていたこともあったのかもしれない。
「……折れてる枝を見つけたわ。茶色の毛がついてたし、あそこにぶつかったのかもしれないわね」
「比較的新しい足跡があったの。まっすぐ奥に進んでるみたいなの」
急ぎ足で戻って来たアマリリス。そして式符を飛ばし、地面すれすれを見ていたシロ。
2人の報告に瀬陰が頷く。
「僕も足跡を見つけた。この先の奥まで行ったと見て間違いないかな……」
瀬陰の指差す先に目をこらす柊羽。
木々の間から、キラキラと光るものが見える。
「……あれは水かな。沢が近いみたいだ」
「サワ! おミズながれてるトコだネ! うさちゃん、サワでおミズのんでるかもしれないネ」
「そうね……。何日も戻って来ていないならお腹空かせてるかもしれないわ」
「何か食べ物を持っていてくれると良いですが……」
アレクシスの呟きに頷くアマリリス。小夜のため息交じりの声に、シロが式符を飛ばして場所を確認する。
「うん。この先は沢で間違いないの! 言ってみるの!」
時折聞こえるそれにまず気づいたのは小夜だった。
不意に顔を上げた彼女に、柊羽が首を傾げる。
「小夜、どうかしたか?」
「……何か音がします。地面を叩くような……」
「音……?」
耳を澄ます柊羽。すると――。
だん! だんだん! だん!!
「あっ。本当だ。皆も聞こえるか?」
「ウン! ナンかダンダン! っていってるネ! タイコみたいなオト!」
「何か音が近づいてきてる気がするんだけど……」
頷くアレクシスとアマリリス。
対象がこちらに近づいているというよりは、自分たちが対象に近づいている気がする。
今、自分達は沢に向かって移動している、ということは……沢に何かいるのだろうか?
その音を聞いていたシロは、あ……と短く声をあげた。
「……あたし、この音知ってるかもしれないの」
「ん? どんな時に聞いたんだい?」
「マジックショーで使うウサギさんがこんな足踏みすることあったの」
彼女の呟きに、片側だけ残った目を見開く瀬陰。
ハンター達は顔を見合わせると、皆一斉に沢へと急ぐ。
木々と岩の間から顔を出した沢。
そこは谷間のようになっていて、ハンター達から立っている場所より一段低くなっていた。
変わらず聞こえるダンダン! という音。
音を頼りに、6人が辺りを見渡すと――沢の畔に、蹲っている茶色の垂れ耳ユキウサギと、一心不乱に地面を蹴り続けている灰色のユキウサギがいた。
「……見つけたわ!」
「グリ! レミ! 探したんだヨ!」
アマリリスとアレクシスの声に顔を上げた灰色のユキウサギ。
一瞬ビクゥ! となったものの、茶色のユキウサギを庇うように前に立つ。
「あっ。あたし達敵じゃないの! 助けに来たの!!」
「……君が迷子のレミとグリかな。ツキウサギから君達を捜してほしいって頼まれたんだ」
黒い円らな瞳をシロと柊羽に向けた灰色のユキウサギ。
『ツキウサギ』という単語を聞いた途端、滂沱の涙を流し始める。
「怖かったんですね……。もう大丈夫ですよ」
「キュウ! キュッ!」
優しく声をかける小夜。グリと呼ばれたユキウサギは、茶色のユキウサギを指差した後、足をおさえてひっくり返る。
「……レミが怪我をしたって言いたいのかしら?」
「きっとそうなの。レミ、ずっと動かないもの……」
「タイヘン! テアテしなきゃ!」
グリのジェスチャーを察したアマリリス。心配そうなシロとアレクシスに頷いた瀬陰は、下のユキウサギに向かって努めてゆっくり、優しく声をかける。
「今そちらに降りる。そこで待っているんだ。大丈夫。必ず助けるよ。……イェルズ君、申し訳ないがロープを樹に括りつけるのを頼んでいいかな」
「了解です!」
「……ええと。歪虚に驚いて岩場に逃げ込んだまでは良かったが、勢いよく走っていたから沢があることに気付かず、落ちてしまったってことか?」
「その時に、レミは足を挫いて動けなくなって、グリはずっと、足踏みで救難信号を出し続けてたってことね。合ってる?」
柊羽とアマリリスの確認するような声にこくこくと頷く2匹のユキウサギ。
あれから瀬陰は4往復して、沢からユキウサギ達と彼らの荷物を引っ張り上げて、足を怪我したレミの手当てをして……今この状況がある。
「そっかー! タイヘンだったネ! カワイソウだったネ! もうダイジョーブ! イタイのイタイのとんでけーっ」
「あたし達がきちんと幻獣の森まで送ってあげるの」
シオシオしている2匹をぎゅーっと抱きしめるアレクシスとシロ。
そこに小夜がパンと水を持ってやってくる。
「お二人とも、お腹が空いていませんか? 宜しければ召し上がってください」
それに目を輝かせるグリとレミ。飛びつくと一瞬で平らげて……。
それでようやく落ち着いて、自分達が助けて貰ったのだと気が付いたらしい。
2匹はハンター達にコメツキバッタのように頭を下げる。
「ははは。いいんだよ、気にしないで。当然のことをしただけだからね」
「そうなの。ユキウサギさん達はハンターに協力してくれてるの。助け合うのは当たり前なの!」
「そうよ。貴方達が無事で良かったわ」
ぺこぺこしているユキウサギ達を宥める瀬陰とシロ、アマリリス。
柊羽はその様子に微かに目を細める。
「ツキウサギも心配してる。一緒に戻るとしようか」
「でも、レミ様、この足では歩けませんね……」
「ああ、僕が背負おう。レミ君、それでいいかな?」
心配そうな小夜の言葉を受けて請け負う瀬陰。レミはこくこくと頷く。
「ぜのん、ダイジョーブ? ボクせおおうか?!」
「大丈夫さ。これでも娘を育てた身だ。ユキウサギを抱えるくらい造作もないよ」
「エッ。ぜのんムスメいるノ!? どんな子!? かわいい!?」
「アレクシス様、その話は後にしましょうか?」
「ソウだった! グリ、ボクとおててつないでうたいながらかえろうヨ!」
「あたし荷物持ってあげるの」
「私も手伝うわ」
小夜の諭すような声にアッと声をあげたアレクシス。シロとアマリリスが2匹の荷物を抱えると、彼はその勢いのままグリの手を取って……。
アレクシスの変わり身の早さに、仲間達から笑いが漏れた。
皆で楽しく歌ったり、話したりしながら歩き、見えて来た幻獣の森。
ツキウサギが心配そうにウロウロしているのが目に入る。
「ツキウサギさん! ただいまだヨーー!」
「あっ……! ハンターさん! すみませんッス。うちのが迷惑かけたッス……!」
ぶんぶんと手を振るアレクシス。深々と頭を下げるツキウサギに、シロがぷるぷると首を振る。
「いいの。それよりレミちゃん怪我してるの。手当てはしたけど、念のためもう一度診てあげてなの」
「グリもすごく疲れてると思うわ。しっかり休ませてあげて」
「迷子になっている間、何も召し上がっていらっしゃらなかったようなので、お食事を差し上げてください」
アマリリスと小夜の気遣いに、もう一度頭を下げたツキウサギ。
グリと瀬陰の背から降ろして貰ったレミが、くいくい、とツキウサギの服を引っ張る。
「ん? お前達どうしたッス?」
「キュー」
「キュキュ」
何事か話し合っている3匹。
話がまとまったのか、ツキウサギがハンター達に向き直る。
「ハンターさん達、この後ご予定あるッスか?」
「ん? ハンターズソサエティに報告を入れて帰るだけだけど」
「なら、ごはん食べていかないッスか? これから巫女達と一緒に夕飯作るとこだったッスよ」
「それは有り難いけど……いいのか?」
「はいッス! レミもグリもハンターさんにお礼したいって言ってるッス。是非寄ってって下さいッス」
「ヤッター!! ミンナでごはん!! ミンナでごはんーーーー!!」
ツキウサギの申し出にそれじゃあ……と頷く瀬陰と柊羽。
万歳して喜ぶアレクシスに釣られて、レミとグリも万歳していた。
こうして、ハンター達は迷子のユキウサギを見つけ出し、無事に幻獣の森まで送り届けることが出来た。
レミとグリは深くハンター達に感謝し、『自分達はこの先幻獣の森に住むので、近くに来ることがあったら寄って欲しい』とツキウサギを通じて懇願され、ツキウサギが採って来たという果物をお土産に貰った。
彼らの心遣いと、新たに繋がった縁。それに暖かなものを感じながら、ハンター達は帰路についたのだった。
依頼結果
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Question! アレクシス・ラッセル(ka6748) 人間(リアルブルー)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/05/16 23:06:15 |
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迷子のうさちゃん! アレクシス・ラッセル(ka6748) 人間(リアルブルー)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/05/17 08:47:56 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/11 23:41:28 |