ゲスト
(ka0000)
【界冥】魂の還る聖域
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/22 15:00
- 完成日
- 2017/05/25 19:31
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
英雄と呼ばれた男がいた。
彼は火星宙域で発生した対VOID戦において輝かしい戦果を残した。
その戦果に反して自軍の敗北が確定した後でも、仲間の撤退に尽力。生還する事はできなかったが、統一連合宙軍では彼の功績は今でも讃えられている。
「こちら『ソウル・サンクチュアリ(魂の還る聖域)』、貴艦の撤退を援護する」
「……申し出、感謝する」
友軍からの返信。
だが、その言葉からでも複雑な心情を感じ取れる。
撤退を援護する我々も相当なダメージを負っているのだから。
既にデュミナスの脚部の一部と左腕は喪失。電気系統にも障害が確認されている。
それでも――。
ダイモス宙域で発生した大規模な戦いは、統一連合宙軍側の敗北が確定していた。これ以上の戦いは今後の影響が出ると判断されて全軍撤退の命令が下される。
しかし、荒れ狂うVOIDが逃げる艦隊を黙って見過ごすはずもない。
先程まで激戦を繰り返していたソウル・サンクチュアリは、友軍の撤退支援へと移行しているが既に部隊の半数以上は星屑の海へと還っていった。
「貴艦は、必ず撤退させる。我が部隊の名を賭して」
「『フェネック』が護衛してくれるなら心強い」
フェネック。
彼の異名でもあった。
フェネックの特徴でもある大きな耳があるかのように、危機を察知する直感に長けている。この直感のおかげで、数多くの修羅場を潜り抜けてきた。
そして、この直感の根底にあるのは――生存への執着である事も彼自身認識していた。
生き残る為に、何をするべきか。
目の前の敵を倒しつつ、その先を見据える。
それが彼が自らに課した『任務』でもあった。
「敵影確認!猛スピードでこちらへ接近中!」
男の元へもたらされる通信。
位置から考えてこのままでは追いつかれる事は間違いない。
男は、意を決すると踵を返す。
「各機、友軍の艦隊が撤退するまでこの宙域を死守する……絶対に死ぬな」
それが――統一連合宙軍第二宇宙機動師団所属、田代誠の最期でもあった。
●
「メタ・サンクチュアリは函館クラスタの北側から進軍。突入部隊をバックアップするザマス」
メタ・シャングリラのブリッジで艦長の森山恭子(kz0216)は、今回の作戦参加者へ作戦の全体を解説していた。
函館クラスタの攻略を進めていた統一連合宙軍は、ついに函館クラスタへ王手をかけた。
二股口から函館クラスタの北側へ迫るメタ・シャングリラ。
さらに函館湾から上陸して函館クラスタ南側へ進軍する統一連合宙軍。函館クラスタを挟み込んで一気に叩くのが今回の大まかな作戦だ。
「奴は……何処だ?」
山岳猟団団長の八重樫 敦(kz0056)。
VOID『エンドレス』と因縁を持つ八重樫は、二股口でエンドレスと接触できなかった事を悔やんでいた。
エンドレスは八重樫にのし掛かる負の遺産。必ずこの手で仕留める――そう誓っていた。
「まだ確認されていないザマスが、函館クラスタ付近にいるのは間違いないザマス」
「そうか。なら、エンドレスは……」
「待つザマス。八重樫さんにはやってもらう事があるザマス」
恭子が、眼前のモニターを指し示す。
そこには函館周辺のマップ。そこへ数点のマークが表示される。
「函館湾から進軍する統一連合宙軍と海上自衛隊の艦隊の進路を確保すべく、弁天台場に設置された砲台の破壊を試みているザマス。
問題はこの攻撃を察知した『敵の機体』が弁天台場へ向かっている事ザマス」
「ヴァルキリー1か」
ヴァルキリー1。
エンドレスに遠隔操作された歪虚CAMであり、八重樫が乗機となる予定だった試作型CAMだ。二股口ではハンターによりパイロットの存在が確認。恭子の調査により、それが火星宙域で行方不明となった田代誠だと突き止める事ができた。
「そうザマス。ヴァルキリー1は弁天台場防衛の為に函館クラスタから南下を開始しているザマス。八重樫さんは出撃してこの付近でヴァルキリー1を止めるザマス。
函館クラスタへ戦力を集中する為、ヴァルキリー1対応へ回せる戦力はあまり多くないザマスが……」
この付近――函館駅から北に位置する旧一本木関門。
箱館戦争でかの英雄が倒れたとされた場所だ。
奇しくも、『火星の英雄』をこの場所で倒さなければならない。
「エンドレス本体を叩きたいところだが、やるしかないようだ。いいだろう」
「分かっていると思うザマスが、敵はエンドレスだけじゃないザマス。
『フェネック』の異名を持つCAMパイロット……堕落者となった彼も敵となっていると考えた方が良いザマス。助けようなんて……」
「思っちゃいない。俺は、そこまで器用な人間じゃない」
恭子の言葉を遮るように、八重樫は否定する。
どのような経緯で田代が堕落者になったかは分からない。
だが、敵に回ったのであれば容赦する気はない。
必ずこの手で討ち果たしてみせる。
「では、お願いするザマス」
「ああ。火星の英雄譚は、ここで終わらせる」
●
絶対に生き残らなければ。
生き残らなければ、存在する意味が無い。
声を失い、記憶を失っても覚えていた唯一の芸。
無様な戦いであっても、戦い続けるしかない。
……そう言えば、何故戦って存在を示そうとしているのだろう。
思い出せない。
ただ、その答えは戦いの中にある気がする。
なら、再び戦場へ赴くしか無い。
――ヴァルキリー1と共に。
彼は火星宙域で発生した対VOID戦において輝かしい戦果を残した。
その戦果に反して自軍の敗北が確定した後でも、仲間の撤退に尽力。生還する事はできなかったが、統一連合宙軍では彼の功績は今でも讃えられている。
「こちら『ソウル・サンクチュアリ(魂の還る聖域)』、貴艦の撤退を援護する」
「……申し出、感謝する」
友軍からの返信。
だが、その言葉からでも複雑な心情を感じ取れる。
撤退を援護する我々も相当なダメージを負っているのだから。
既にデュミナスの脚部の一部と左腕は喪失。電気系統にも障害が確認されている。
それでも――。
ダイモス宙域で発生した大規模な戦いは、統一連合宙軍側の敗北が確定していた。これ以上の戦いは今後の影響が出ると判断されて全軍撤退の命令が下される。
しかし、荒れ狂うVOIDが逃げる艦隊を黙って見過ごすはずもない。
先程まで激戦を繰り返していたソウル・サンクチュアリは、友軍の撤退支援へと移行しているが既に部隊の半数以上は星屑の海へと還っていった。
「貴艦は、必ず撤退させる。我が部隊の名を賭して」
「『フェネック』が護衛してくれるなら心強い」
フェネック。
彼の異名でもあった。
フェネックの特徴でもある大きな耳があるかのように、危機を察知する直感に長けている。この直感のおかげで、数多くの修羅場を潜り抜けてきた。
そして、この直感の根底にあるのは――生存への執着である事も彼自身認識していた。
生き残る為に、何をするべきか。
目の前の敵を倒しつつ、その先を見据える。
それが彼が自らに課した『任務』でもあった。
「敵影確認!猛スピードでこちらへ接近中!」
男の元へもたらされる通信。
位置から考えてこのままでは追いつかれる事は間違いない。
男は、意を決すると踵を返す。
「各機、友軍の艦隊が撤退するまでこの宙域を死守する……絶対に死ぬな」
それが――統一連合宙軍第二宇宙機動師団所属、田代誠の最期でもあった。
●
「メタ・サンクチュアリは函館クラスタの北側から進軍。突入部隊をバックアップするザマス」
メタ・シャングリラのブリッジで艦長の森山恭子(kz0216)は、今回の作戦参加者へ作戦の全体を解説していた。
函館クラスタの攻略を進めていた統一連合宙軍は、ついに函館クラスタへ王手をかけた。
二股口から函館クラスタの北側へ迫るメタ・シャングリラ。
さらに函館湾から上陸して函館クラスタ南側へ進軍する統一連合宙軍。函館クラスタを挟み込んで一気に叩くのが今回の大まかな作戦だ。
「奴は……何処だ?」
山岳猟団団長の八重樫 敦(kz0056)。
VOID『エンドレス』と因縁を持つ八重樫は、二股口でエンドレスと接触できなかった事を悔やんでいた。
エンドレスは八重樫にのし掛かる負の遺産。必ずこの手で仕留める――そう誓っていた。
「まだ確認されていないザマスが、函館クラスタ付近にいるのは間違いないザマス」
「そうか。なら、エンドレスは……」
「待つザマス。八重樫さんにはやってもらう事があるザマス」
恭子が、眼前のモニターを指し示す。
そこには函館周辺のマップ。そこへ数点のマークが表示される。
「函館湾から進軍する統一連合宙軍と海上自衛隊の艦隊の進路を確保すべく、弁天台場に設置された砲台の破壊を試みているザマス。
問題はこの攻撃を察知した『敵の機体』が弁天台場へ向かっている事ザマス」
「ヴァルキリー1か」
ヴァルキリー1。
エンドレスに遠隔操作された歪虚CAMであり、八重樫が乗機となる予定だった試作型CAMだ。二股口ではハンターによりパイロットの存在が確認。恭子の調査により、それが火星宙域で行方不明となった田代誠だと突き止める事ができた。
「そうザマス。ヴァルキリー1は弁天台場防衛の為に函館クラスタから南下を開始しているザマス。八重樫さんは出撃してこの付近でヴァルキリー1を止めるザマス。
函館クラスタへ戦力を集中する為、ヴァルキリー1対応へ回せる戦力はあまり多くないザマスが……」
この付近――函館駅から北に位置する旧一本木関門。
箱館戦争でかの英雄が倒れたとされた場所だ。
奇しくも、『火星の英雄』をこの場所で倒さなければならない。
「エンドレス本体を叩きたいところだが、やるしかないようだ。いいだろう」
「分かっていると思うザマスが、敵はエンドレスだけじゃないザマス。
『フェネック』の異名を持つCAMパイロット……堕落者となった彼も敵となっていると考えた方が良いザマス。助けようなんて……」
「思っちゃいない。俺は、そこまで器用な人間じゃない」
恭子の言葉を遮るように、八重樫は否定する。
どのような経緯で田代が堕落者になったかは分からない。
だが、敵に回ったのであれば容赦する気はない。
必ずこの手で討ち果たしてみせる。
「では、お願いするザマス」
「ああ。火星の英雄譚は、ここで終わらせる」
●
絶対に生き残らなければ。
生き残らなければ、存在する意味が無い。
声を失い、記憶を失っても覚えていた唯一の芸。
無様な戦いであっても、戦い続けるしかない。
……そう言えば、何故戦って存在を示そうとしているのだろう。
思い出せない。
ただ、その答えは戦いの中にある気がする。
なら、再び戦場へ赴くしか無い。
――ヴァルキリー1と共に。
リプレイ本文
函館――旧一本木関門。
かつてこの地にて一人の英雄が、散った。
蝦夷共和国陸軍奉行並。
陰謀と暴力が吹き荒れる幕末の京都にて鬼の副長と畏れられた英雄――土方歳三。
一説によれば最期まで徹底抗戦を唱えた為、仲間から暗殺されたという。
真実は、分からない。
ただ、はっきりしている事は、彼が激烈な生涯を戦いの中で終えた事だ。
――そして。
統一連合宙軍に語り継がれていたあの英雄譚にも終幕が近づいていた。
●
「さて、ボクの役割は足止めというか迎撃な訳だが。別に倒してしまっても構わないんだろう?」
しげおと共に戦場へ出たミリア・エインズワース(ka1287)は、山岳猟団の八重樫 敦(kz0056)へ問いかける。
今回の依頼は弁天台場救援へ向かうヴァルキリー1を、この一本木関門付近で待ち伏せて迎撃する事であった。
付近は瓦礫の山で隠れる所も沢山ある。
うまく誘い込めば奇襲をかける事も可能だろう。
ミリアは、迎撃するだけではない。この地でヴァルキリー1の撃破を狙っていた。
「おー、やる気十分だねぇ。その調子で一気にあいつを撃破してくれりゃあ、俺も楽ができるってもんだ。是非お願いしたいところだ」
同じくR7エクスシアの紫月・海斗(ka0788)は、操縦席のシートに思い切り体重を預けた。
海斗の脳裏には二股口で遭遇したヴァルキリー1の勇姿が蘇る。
リープテイルと呼ばれるブースターで高速移動。
挙げ句、ロングレンジVOIDライフルは軽量のデュミナスを一撃で葬り去る威力を誇っていた。幸い、ロングレンジVOIDライフルは先の戦いで破壊に成功している。周囲が瓦礫の山に囲まれている以上、遠距離から狙撃される可能性はかなり低い。
それでもヴァルキリー1が厄介な相手には違いない。
「ああ。奴は、ここで必ず撃破する。逃せば、必ず自らを強化して再び現れる。
火星の英雄も、これ以上生き恥を晒したくはあるまい」
火星の英雄。
八重樫の言う火星の英雄とは、『魂の還る聖域(ソウルサンクチュアリ)』と呼ばれた部隊に所属していたエースパイロットの田代誠の事だ。
かつて火星宙域にてVOIDと大規模な戦闘が発生した際、撤退する味方艦隊の撤退ルートの維持に奮戦。そのまま戦闘中行方不明となっている。
その田代がヴァルキリー1のパイロットとして乗り込んでいる事が二股口の戦いで判明。自らの機体を改造し続けるエンドレスにとって『生体パーツ』扱いされる田代は、既に堕落者と見るべきだろう。
「フェネック……確か、危機を感知する嗅覚と聴覚に優れた事で、そう呼ばれたパイロットね。
まさかこんな所で敵対するとは思わなかったわ」
mercenarioのマリィア・バルデス(ka5848)は、田代のあだ名を思い出した。
迫る危機に対して直感的な対応で回避する所から『フェネック』と呼ばれていた。
統一連合宙軍のフェネックは、砂漠から宇宙へとその住処を変えていたのだが――気付けば函館に拠点を移していたようだ。
「情報ではヴァルキリー1に護衛機が2機。こちらも無視できません。
……八重樫さん、こちらの対応協力をお願いしてもよろしいでしょうか?」
思わぬ形でリアルブルーへと帰還する事になったエラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)。
魔導アーマー「ヘイムダル」と共にヴァルキリー1の護衛機をターゲットに選んでいた。戦力を分断して確実にダメージを与える事が重要と考えていたエラは、デュミナスに乗る八重樫へ協力を要請。ヴァルキリー1を攻撃するに辺り、護衛機の横槍を入れない様に牽制射撃を打診していた。
「了解した。俺は護衛機を相手にしよう」
「じゃあ、俺と埴輪2号もそっちへ行こう。キャノンもしっかり磨いたし、派手にやれるといいんだがな」
人型埴輪2号の初陣となったアルト・ハーニー(ka0113)。
今日の為に磨き上げたキヅカキャノンを装備してVOIDへ一発お見舞いする為に参戦していた。足の付け根部分に装備されたキヅカキャノンが静かに黒光りを放っている。
「……そろそろ来るぞ」
八重樫の一言で、ハンター達は所定の位置につく。
因縁の相手を前に、ハンター達は呼吸を整える。
●
一方、八重樫達から少し離れた場所にルネ(ka4202)は布陣していた。
ルネの乗る機体はCAMではない――魔導トラックのはうんど。
何故、CAMを相手にして魔導トラックなのか。
それはルネなりの推理があったからだ。
「いびつな、しんかね……。
ひとのためにある、へーきを。
ひとをりよーしたへーきに、かいぞうする。
そのむじゅんが、はたんをうむ……のかも?」
メタ・シャングリラの艦長森山恭子(kz0216))によれば、エンドレスは田代のパイロット技術を手に入れようとしている。動物的直感とも言える感覚をエンドレスが入手してコピーする事ができれば、ヴァルキリー1のような機体が各地に溢れる事になる。
ルネは、田代の能力の根源が生きようとする意志にあると考えていた。
もし、推論通りであるならば――はうんどの活躍する場面は、必ずある。
「いくよ、はうんど。いっせいいちだいの、おおばくち」
ルネは、静かにアクセルを踏んだ。
戦いの幕は、こうして上がる。
血と鉄に塗れた悲劇の惨劇が始まろうとしていた。
●
旧一本木関門の周囲が瓦礫の山だった事は、不幸中の幸いだ。
おかげで警戒していなかったヴァルキリー1を奇襲する事ができたのだから。
「行くぞ、しげお! お前のパンチを見せてみろ」
開始早々、ヴァルキリー1に食らい付いたのはミリアのしげおだった。
アクティブスラスターで真っ直ぐにヴァルキリー1へ接近。高速ブースター「リープテイル」を持つヴァルキリー1に纏わり付く事でヴァルキリー1の注意をミリアに向ける事が狙いだった。
危険を察知すれば自慢のリープテイルで逃走する可能性もある。
それを防ぐ意味でもミリアは敵の目を惹く必要があった。
「行っけーーっ!」
斬魔刀「祢々切丸」を薙ぎ払いながら、しげおはヴァルキリー1へと近づく。
対してヴァルキリー1は、大太刀「スコーピオン」で斬撃を受け流す。
だが、これもミリアの狙い通り。警戒させる事でミリアを意識させるつもりだ。
「これで終わりじゃない! まだまだ行くよっ!」
再びアクティブブラスターでヴァルキリー1へ肉薄するミリア。
可能であればリープテイルに攻撃を加えたい所だが、敵も巧みに攻撃箇所を見せずに高速移動している。
ヴァルキリー1の田代も、おそらくこうした戦いに『慣れている』のだろう。
「やるね! だけど……」
ミリアは再び祢々切丸を薙いだ。
だが、その斬撃は読まれていた。
体勢を低くしたヴァルキリー1は斬撃を回避すると、スコーピオンを斬り上げる。
スコーピオンの刃が描く軌道は、しげおの右腕を捉えている。
「あーあー。人に刃物を向けるなって教わらなかったか? それもレディに向けるなんたー感心しねぇなぁ」
スコーピオンの刃は、海斗のシールド「ウムアルメン」によって阻まれる。
無理矢理R7エクスシアを割り込ませ、体を張ってミリアを攻撃から防いだのだ。
新たな敵の登場に距離を飛び退いて距離を置くヴァルキリー1。
「全開と同じ戦法は通じねぇだろうし、騙されねぇだろ? まったく、面倒ったらありゃしねぇ。
しかも、下手すりゃ俺を真っ先に落とそうとするんじゃねぇだろうな?」
海斗は、ヴァルキリー1へ呼び掛ける。
だが、ヴァルキリー1から特に返事は無い。
二股口でもそうだった。
ハンターが何度も呼び掛けても、一切の回答は無い。
代わりに返ってくるのは、沈黙と――敵意だけ。
「やっぱりやる気か」
海斗を前にヴァルキリー1はスコーピオンを構える。
リープテイルの加速に乗せて突きを繰り出されようものなら、その威力は――想像するだけで海斗は頭を抱えたくなる。
「あー……うん、仕方ねぇ。腹括るしかねぇよなぁ」
ため息をつく海斗。
次の瞬間、リープテイルによる爆発的な加速がヴァルキリー1を覆う。
一迅の風となったヴァルキリー1が海斗のR7エクスシアへと迫る。
「ちっ、これだからマジな相手は嫌なんだよ!」
海斗はR7エクスシアの装甲をフレーム「ユーバーレーベン」で向上。
さらにシールド「ウムアルメン」機体を覆う様に装備していた。
響き渡る金属音。
機体に大きなダメージこそないが、派手な衝撃が海斗の操縦席へと伝わってくる。
「海斗、無事か!」
mercenarioのマリィアがマシンガン「プレートスNH3」でヴァルキリー1を狙撃する。
その気配を察したヴァルキリー1。
素早くリープテイルで機体を後方へと移動させる。
ご丁寧に射撃で先を読まれないよう巧みに機体を動かしながら――。
「あの回避性能はムカつくわね……さすがはフェネック。だけど……」
マリィアは、戦いの中で己の勘を研ぎ澄ます。
たとえ堕落者となったとしてもエースパイロットだった田代の癖は抜けない。もし、エースパイロットの腕まで失われているのであれば、エンドレスが田代を生体パーツとして使うはずがないからだ。
癖を、見抜く。
それがマリィアに与えられた課題であった。
「止める。この一本木関門で、確実に仕留めてみせる」
mercenarioは制圧射撃を開始。
連続射撃による弾幕が、ヴァルキリー1の進路を確実に狭めていく。
マリィアの握る操縦桿に――自然と力が入る。
●
「お前らの相手は俺達なんだぞ、と。あまり時間をかけたくないんで、さくっとやられてくれないかねぇ」
アルトの人型埴輪2号は、護衛機へキヅカキャノンの砲撃を放った。
突き出された黒い砲身から、溢れ出る黄金のマテリアル光。
放物線を描く砲弾を押し出した。
砲弾は瓦礫の山を吹き飛ばしながら、護衛機の意識を人型埴輪2号へと引き付ける。
「ヴァルキリー1から離れ始めたな。間断なく撃ち込んでやれ」
「わかった。ねらいうつ」
護衛機が瓦礫の影に隠れて人型埴輪2号へ近づく瞬間、ルネのはうんどがタイヤを滑らせながら躍り出る。
既にはうんどのミサイルランチャー「レプリカント」は、護衛機を照準に収めていた。
数発のミサイルが近距離から発射。
命中精度はやや低めではあるが、この距離であればそう外す事は無い。
護衛機の右側に着弾したミサイルは、派手な爆発と共に護衛機の機体を数歩後退させる。
衝撃と共に訪れる数秒の空白。
アルトの人型埴輪2号にとって、その数秒で十分だった。
「今度は俺の番だぞ、と。パイルバンカーは抉りこむように撃つべし、だ!」
至近距離まで接近した人型埴輪2号は、パイルバンカー「エンハンブレス」を叩き込む。
高速で射出された杭が、護衛機にヒット。強力な衝撃が護衛機の体を突き押した。
――しかし。
「……簡単には倒されてくれねぇ、か」
エンハンブレスは、確実に護衛機の機体を捉えた。
だが、一撃で葬り去る事はできず、未だに護衛機は二本の足で大地に立っている。
二股口での戦いで多少はエンドレスも装甲を上げてきたとみるべきだろうか。
「いそぐ。じかん、ない」
ルネはアクセルを踏んで、急発進。
再び護衛機との距離を詰めていく。
一方、残る護衛機はエラの魔導アーマー「ヘイムダル」。
実はエラの行動はルネやアルトよりも素早く対応していた。ミリアがヴァルキリー1への突撃を行った時点で、エラは『あるポイント』を狙って護衛機を襲撃していた。
そのポイントとは、ヴァルキリー1の退路となる場所であった。
(ここで敵を抑えれば、高機動のヴァルキリー1でも逃げる事は難しいでしょう)
テールスタビライザーAを発動しながら魔導大鎌「ソウルイーター」を横に払うヘイムダル。
口金付近で殴打する事で、護衛機は体勢を崩す。
「……ヴァルキリー1は、未だ交戦中ですね。まだ撤退の素振りはありません」
エラは時折、ヴァルキリー1との距離を推し量る。
ルネとアルトも事前に打ち合わせた通り、護衛機を攻撃しながらヴァルキリー1の退路を封じながら戦っている。
すべては――エラの計算だった。
「周囲は瓦礫の山。広い二股口のような場所とは、勝手が違うでしょう? 火星の英雄さん」
「さすがだな」
後退る護衛機を横からアサルトライフルで狙撃する八重樫のデュミナス。
エラの読み通り瓦礫の山が転がる旧一本木関門では、リープテイルによる高機動を生かした行動は難しい。
それ以上に、武器が変わった事も大きな要因だ。
今まではロングレンジ系ライフルやビームマシンガンなど、遠中距離を意識した戦闘だった。だが、今回はスコーピオンとキヅカキャノン。敵を倒すのであればある程度距離を詰める必要がある。
その上で行動範囲をエラの戦略で意図的に狭められているのだ。
ヴェルキリー1の行動選択肢は限られてくる。
それ以上にヴァルキリー1は目の前の敵に意識を奪われている。
ここまでの戦いは――エラの描いた計画の通りに進んでいた。
「これで容易に奴は逃げられまい。そろそろ一気に畳み掛けた方がいい」
八重樫のデュミナスがアサルトライフルを構える。
既に何発も護衛機に撃ち込んでいる為、強烈な一撃を叩き込めば護衛機も活動を停止するはずだ。
「そうですね。罠をかけるには頃合いでしょうか。
少々名残惜しいですが……」
エラはヘイムダルが握るソウルイーターを構える。
今度は、口金じゃない。
ソウルイーターの刃が護衛機に向かって鈍く光を放つ――。
●
ハンター達の奮戦は、確実にヴァルキリー1を追い込みつつあった。
「しげお、もっとだ! もっと前へ!」
ヴァルキリー1にアクティブスラスターで食らい付くミリアのしげお。
斬魔刀「祢々切丸」で斬りつけながらも、確実に退路を断つ様に立ち回っている。
スコーピオンによる斬撃をマテリアルカーテンで防ぎながら、しげおは近距離で迫り続ける。圧迫し続ける事は、ハンター達にとって勝機に繋がると信じているからだ。
「おいおい。こっちの事も忘れるな。あんまり寂し過ぎて帰りたくなってきたよ」
海斗のR7エクスシアが側面からヴァルキリー1を急襲。
スコーピオンをミリアに向けて振り抜いた瞬間を狙っての攻撃だ。
だが、ヴァルキリー1はリープテイルを巧みに操りブーストを掛けながら海斗へ向き直る。
――両脇にVOIDキヅカキャノンを抱えながら。
「ははっ! やっぱりそれで迎撃か!
いいだろう。皆お待ちかね! 大好きなキヅカキャノンでぇすぅー!」
R7エクスシアの背面から股下に現れたのは、同じくキヅカキャノン。
黒い光を放つキヅカキャノンの砲身は、まっすぐにヴァルキリー1に向けられる。
「さぁ……『削り合い』だ」
ほぼ同時に放たれる三発の轟音。
響き渡るキヅカキャノンの咆哮。
黄金色と真紅のマテリアルに撃ち出される砲弾と小型狂気。
三本が奏でる協奏曲。
この距離で、双方に――避ける術は無い。
「……ぐっ。やっぱりVOIDに鹵獲されてもキヅカキャノンはキヅカキャノンか。いい味出してるねぇ」
海斗の体にまで伝わる大きな衝撃。
ウムアルメンで防御力を上げていた為、大きなダメージには繋がっていない。
一方、ヴァルキリー1の方は事情が異なる。
高機動性能を優先する為、装甲はそこまで高くはない。一発であってもキヅカキャノンから放たれた砲弾は、無視する事のできないダメージだ。
後方へ下がるヴァルキリー1。
その瞬間を、今度はミリアが逃さない。
「今度こそ、ブースターを壊してやる!」
斬魔刀「祢々切丸」を威嚇する様に振るったしげお。
次の瞬間、大きく踏み込み強力な突きを繰り出した。
突き刺さる刃。ヴァルキリー1の右肩部分に食い込みながら、そのまま機体を押し進める。
その行く手で待つのは――。
「……そういえば、お前にゃ盾と銃しか見せてなかったよな?
どうだ? 加速の付いた機体に貫かれる気分は」
ヴァルキリー1は海斗のR7エクスシアに挟まれていた。
剣に変形した可変機銃「ポレモスSGS」を手にしていたR7エクスシア。
刃は操縦席下部の腰部に突き刺さる。
「どうだ! これで終わりだろ!」
手応えを感じるミリア。
二人の機体が離れた後、ヴァルキリ-1は片膝を付く形で地面へ腰を下ろす。
「油断するなよ? あの時だって……」
そう言い掛けた海斗の耳にサイレン音。
その音に、海斗は聞き覚えがあった。
「ほーら、来た」
『損傷率40%。友軍2機もロスト……これより撤退を開始します』
エンドレスと思しき機械音が鳴り響き、ヴァルキリー1は再起動。
再び立ち上がると、ミリアに踵を返して移動を開始する。
「あっ、逃げた」
「来ましたね。皆さん、予定通りにお願いします」
エラは、操縦席で呟く。
エラの言っていた罠――それはヴァルキリー1が撤退する瞬間であった。
二股口でも撤退していた事から、ヴァルキリー1は危機に陥ると撤退する事が予測されていた。
リープテイルを全開にされれば追いつく事は難しい。
だが、退路を断った上で唯一残った脱出路に伏兵を配置しておけば――。
同様の事を考えていたハンター達が、早くも行動を開始する。
「待っていた、この瞬間を。……フェネック!」
逃げる砂狐を待ち伏せていたのは、マリィアのmercenario。
スナイパーライフル「オブジェクティフMC-051」を構えて飛来するヴァルキリー1を狙い撃つ。
――狙撃。
だが、ヴァルキリー1はリープテイルにより機体を揺らして回避する。
(回避性能が落ちてる……さっきの攻撃のせい?
いや、おそらくフェネックの体に負担がかかり過ぎているのか)
マリィアは次弾を装填しながら、ヴァルキリー1の動きに注視していた。
海斗やミリアと戦っていた時に比べれば、明らかに動きが鈍い。
情報によればリープテイルを使う度に操縦者に大きな負担がかかるという。二人が接近戦を繰り返した事で、回避も厳しい状態なのだろう。
「これなら行ける」
マリィアはオブジェクティフMC-051を次々と発射。
これに合わせる形でアルトも人型埴輪2号のキヅカキャノンで援護射撃を開始する。
「この距離なら……唸れ、キヅカキャノン!」
ヴァルキリー1の機体を掠めてはいるが、勢いを止める事はできない。
接近するヴァルキリー1を前にマリィアはマシンガン「プレートスNH3」へ持ち替えて迎撃を試みる。
「仲間想いの軍人だからこそ、眠るわけにはいかなかった。
それが分かるから……フェネック。私達が貴方を眠らせ、後を継ぐっ!」
プレートスNH3よりバラ撒かれた銃弾は、ヴァルキリー1の機体にも降り注ぐ。
回避を試みるが、すべてを回避する事は不可能であった。
銃弾の一発が脚部のリープテイルにヒット。
ヴァルキリー1は空中で制御を失う。
「よし! 後は頼むぜ、ルネ!」
ヴァルキリー1が進む先に布陣していたのは、魔導トラックのはうんど。
ルネは敵がエースパイロットの勘を利用としたシステムであれば、無意識に脅威を判断していると考えた。もし、そうであるならば、CAMと比較して魔導トラックの脅威はずっと下がる。
言い換えれば、ヴァルキリー1の意識外に潜む事が可能ではないか。
そう考えたルネはアルトの支援を行った後、瓦礫に機体を逃走経路に隠していた。
仲間が獲物を追い込むのを待ちながら。
「……ぜったい、はずさない。もう、おやすみ」
ミサイルランチャー「レプリカント」が上空に向かって放たれる。
命中精度の高くない武器ではあるが、複数のミサイルがヴァルキリー1に直撃。
爆発と共にヴァルキリー1は、地面へと叩き付けられた。
「終わりだ、フェネック」
マリィアがプレートスNH3を手にヴァルキリー1へ近づく。
度重なる攻撃でいつの間にか操縦席の扉は破損。中から、フェネック――田代誠の顔が見える。
傷付き、血を流す田代。
マリィアは、その顔を自分の目に焼き付ける為に敢えてmercenarioの操縦席から顔を覗かせる。
「敵に回るとこれ程厄介な……」
そう言い掛けたマリィアだったが、再びヴァルキリー1から警告音が鳴り出した。
思わず、後から追いついた海斗が怪訝そうな顔を浮かべる。
「なんだ?」
『破損率80%に到達。継続行動不可と認識。これより情報漏洩対策として機体を爆破します』
「なに? フェネック、早く脱出を!」
この距離ではマリィアが手を伸ばしても届かない事は、理解している。
だが、マリィアはそうせずには居られなかった。
「…………」
この状況でも、フェネックは操縦席から動こうとしない。
代わりにマリィアに向けて数回唇を動かす。
「!」
次の瞬間――ヴァルキリー1は巨大な火球に包まれた。
周囲に嵐のような暴風を生み出しながら。
●
ヴァルキリー1の最期を見届けたハンター達。
函館クラスタ攻略に向けて、七重浜と函館駅前から上陸した統一連合宙軍がハンターの横をすり抜けていく。
「……えんどれす、きらい」
沈黙していたハンター達の中で、ルネの口からその言葉が漏れ出していた。
フェネックは用済みと判断されてエンドレスに切り捨てられた。
ユニットのパーツとして――。
「戦闘データは既にエンドレスへ転送されていると考えるべきでしょう。
エンドレス……この借りは必ず」
エラの考えた展開通りにヴァルキリー1を追い込む事ができた。
作戦は大成功と言っても良いだろう。
だが、心からの勝利を祝う気にはなれなかった。
「……たくっ。また厄介事を背負い込まされたのか。これがタングラムからのお願いだったら喜んでやるんだがなぁ。
そういや、マリィア。あいつ……最期になんて言ってたんだ?」
海斗はマリィアに問いかける。
フェネックがマリィアに対して何かを伝えようとしていた事に気付いていたのだ。
声にはならない声。
だが、死の直前まで、唇を動かして何かを伝えようと必死だった。
「大した事じゃない」
マリィアは一呼吸置いた後、函館の空を仰ぎ見た。
フェネックの言葉を思い返しながら。
ああ、みんな生きていたのか。
良かった。これで役目は終わった。
帰ろう――みんなと共に過ごした『魂の還る聖域』に。
かつてこの地にて一人の英雄が、散った。
蝦夷共和国陸軍奉行並。
陰謀と暴力が吹き荒れる幕末の京都にて鬼の副長と畏れられた英雄――土方歳三。
一説によれば最期まで徹底抗戦を唱えた為、仲間から暗殺されたという。
真実は、分からない。
ただ、はっきりしている事は、彼が激烈な生涯を戦いの中で終えた事だ。
――そして。
統一連合宙軍に語り継がれていたあの英雄譚にも終幕が近づいていた。
●
「さて、ボクの役割は足止めというか迎撃な訳だが。別に倒してしまっても構わないんだろう?」
しげおと共に戦場へ出たミリア・エインズワース(ka1287)は、山岳猟団の八重樫 敦(kz0056)へ問いかける。
今回の依頼は弁天台場救援へ向かうヴァルキリー1を、この一本木関門付近で待ち伏せて迎撃する事であった。
付近は瓦礫の山で隠れる所も沢山ある。
うまく誘い込めば奇襲をかける事も可能だろう。
ミリアは、迎撃するだけではない。この地でヴァルキリー1の撃破を狙っていた。
「おー、やる気十分だねぇ。その調子で一気にあいつを撃破してくれりゃあ、俺も楽ができるってもんだ。是非お願いしたいところだ」
同じくR7エクスシアの紫月・海斗(ka0788)は、操縦席のシートに思い切り体重を預けた。
海斗の脳裏には二股口で遭遇したヴァルキリー1の勇姿が蘇る。
リープテイルと呼ばれるブースターで高速移動。
挙げ句、ロングレンジVOIDライフルは軽量のデュミナスを一撃で葬り去る威力を誇っていた。幸い、ロングレンジVOIDライフルは先の戦いで破壊に成功している。周囲が瓦礫の山に囲まれている以上、遠距離から狙撃される可能性はかなり低い。
それでもヴァルキリー1が厄介な相手には違いない。
「ああ。奴は、ここで必ず撃破する。逃せば、必ず自らを強化して再び現れる。
火星の英雄も、これ以上生き恥を晒したくはあるまい」
火星の英雄。
八重樫の言う火星の英雄とは、『魂の還る聖域(ソウルサンクチュアリ)』と呼ばれた部隊に所属していたエースパイロットの田代誠の事だ。
かつて火星宙域にてVOIDと大規模な戦闘が発生した際、撤退する味方艦隊の撤退ルートの維持に奮戦。そのまま戦闘中行方不明となっている。
その田代がヴァルキリー1のパイロットとして乗り込んでいる事が二股口の戦いで判明。自らの機体を改造し続けるエンドレスにとって『生体パーツ』扱いされる田代は、既に堕落者と見るべきだろう。
「フェネック……確か、危機を感知する嗅覚と聴覚に優れた事で、そう呼ばれたパイロットね。
まさかこんな所で敵対するとは思わなかったわ」
mercenarioのマリィア・バルデス(ka5848)は、田代のあだ名を思い出した。
迫る危機に対して直感的な対応で回避する所から『フェネック』と呼ばれていた。
統一連合宙軍のフェネックは、砂漠から宇宙へとその住処を変えていたのだが――気付けば函館に拠点を移していたようだ。
「情報ではヴァルキリー1に護衛機が2機。こちらも無視できません。
……八重樫さん、こちらの対応協力をお願いしてもよろしいでしょうか?」
思わぬ形でリアルブルーへと帰還する事になったエラ・“dJehuty”・ベル(ka3142)。
魔導アーマー「ヘイムダル」と共にヴァルキリー1の護衛機をターゲットに選んでいた。戦力を分断して確実にダメージを与える事が重要と考えていたエラは、デュミナスに乗る八重樫へ協力を要請。ヴァルキリー1を攻撃するに辺り、護衛機の横槍を入れない様に牽制射撃を打診していた。
「了解した。俺は護衛機を相手にしよう」
「じゃあ、俺と埴輪2号もそっちへ行こう。キャノンもしっかり磨いたし、派手にやれるといいんだがな」
人型埴輪2号の初陣となったアルト・ハーニー(ka0113)。
今日の為に磨き上げたキヅカキャノンを装備してVOIDへ一発お見舞いする為に参戦していた。足の付け根部分に装備されたキヅカキャノンが静かに黒光りを放っている。
「……そろそろ来るぞ」
八重樫の一言で、ハンター達は所定の位置につく。
因縁の相手を前に、ハンター達は呼吸を整える。
●
一方、八重樫達から少し離れた場所にルネ(ka4202)は布陣していた。
ルネの乗る機体はCAMではない――魔導トラックのはうんど。
何故、CAMを相手にして魔導トラックなのか。
それはルネなりの推理があったからだ。
「いびつな、しんかね……。
ひとのためにある、へーきを。
ひとをりよーしたへーきに、かいぞうする。
そのむじゅんが、はたんをうむ……のかも?」
メタ・シャングリラの艦長森山恭子(kz0216))によれば、エンドレスは田代のパイロット技術を手に入れようとしている。動物的直感とも言える感覚をエンドレスが入手してコピーする事ができれば、ヴァルキリー1のような機体が各地に溢れる事になる。
ルネは、田代の能力の根源が生きようとする意志にあると考えていた。
もし、推論通りであるならば――はうんどの活躍する場面は、必ずある。
「いくよ、はうんど。いっせいいちだいの、おおばくち」
ルネは、静かにアクセルを踏んだ。
戦いの幕は、こうして上がる。
血と鉄に塗れた悲劇の惨劇が始まろうとしていた。
●
旧一本木関門の周囲が瓦礫の山だった事は、不幸中の幸いだ。
おかげで警戒していなかったヴァルキリー1を奇襲する事ができたのだから。
「行くぞ、しげお! お前のパンチを見せてみろ」
開始早々、ヴァルキリー1に食らい付いたのはミリアのしげおだった。
アクティブスラスターで真っ直ぐにヴァルキリー1へ接近。高速ブースター「リープテイル」を持つヴァルキリー1に纏わり付く事でヴァルキリー1の注意をミリアに向ける事が狙いだった。
危険を察知すれば自慢のリープテイルで逃走する可能性もある。
それを防ぐ意味でもミリアは敵の目を惹く必要があった。
「行っけーーっ!」
斬魔刀「祢々切丸」を薙ぎ払いながら、しげおはヴァルキリー1へと近づく。
対してヴァルキリー1は、大太刀「スコーピオン」で斬撃を受け流す。
だが、これもミリアの狙い通り。警戒させる事でミリアを意識させるつもりだ。
「これで終わりじゃない! まだまだ行くよっ!」
再びアクティブブラスターでヴァルキリー1へ肉薄するミリア。
可能であればリープテイルに攻撃を加えたい所だが、敵も巧みに攻撃箇所を見せずに高速移動している。
ヴァルキリー1の田代も、おそらくこうした戦いに『慣れている』のだろう。
「やるね! だけど……」
ミリアは再び祢々切丸を薙いだ。
だが、その斬撃は読まれていた。
体勢を低くしたヴァルキリー1は斬撃を回避すると、スコーピオンを斬り上げる。
スコーピオンの刃が描く軌道は、しげおの右腕を捉えている。
「あーあー。人に刃物を向けるなって教わらなかったか? それもレディに向けるなんたー感心しねぇなぁ」
スコーピオンの刃は、海斗のシールド「ウムアルメン」によって阻まれる。
無理矢理R7エクスシアを割り込ませ、体を張ってミリアを攻撃から防いだのだ。
新たな敵の登場に距離を飛び退いて距離を置くヴァルキリー1。
「全開と同じ戦法は通じねぇだろうし、騙されねぇだろ? まったく、面倒ったらありゃしねぇ。
しかも、下手すりゃ俺を真っ先に落とそうとするんじゃねぇだろうな?」
海斗は、ヴァルキリー1へ呼び掛ける。
だが、ヴァルキリー1から特に返事は無い。
二股口でもそうだった。
ハンターが何度も呼び掛けても、一切の回答は無い。
代わりに返ってくるのは、沈黙と――敵意だけ。
「やっぱりやる気か」
海斗を前にヴァルキリー1はスコーピオンを構える。
リープテイルの加速に乗せて突きを繰り出されようものなら、その威力は――想像するだけで海斗は頭を抱えたくなる。
「あー……うん、仕方ねぇ。腹括るしかねぇよなぁ」
ため息をつく海斗。
次の瞬間、リープテイルによる爆発的な加速がヴァルキリー1を覆う。
一迅の風となったヴァルキリー1が海斗のR7エクスシアへと迫る。
「ちっ、これだからマジな相手は嫌なんだよ!」
海斗はR7エクスシアの装甲をフレーム「ユーバーレーベン」で向上。
さらにシールド「ウムアルメン」機体を覆う様に装備していた。
響き渡る金属音。
機体に大きなダメージこそないが、派手な衝撃が海斗の操縦席へと伝わってくる。
「海斗、無事か!」
mercenarioのマリィアがマシンガン「プレートスNH3」でヴァルキリー1を狙撃する。
その気配を察したヴァルキリー1。
素早くリープテイルで機体を後方へと移動させる。
ご丁寧に射撃で先を読まれないよう巧みに機体を動かしながら――。
「あの回避性能はムカつくわね……さすがはフェネック。だけど……」
マリィアは、戦いの中で己の勘を研ぎ澄ます。
たとえ堕落者となったとしてもエースパイロットだった田代の癖は抜けない。もし、エースパイロットの腕まで失われているのであれば、エンドレスが田代を生体パーツとして使うはずがないからだ。
癖を、見抜く。
それがマリィアに与えられた課題であった。
「止める。この一本木関門で、確実に仕留めてみせる」
mercenarioは制圧射撃を開始。
連続射撃による弾幕が、ヴァルキリー1の進路を確実に狭めていく。
マリィアの握る操縦桿に――自然と力が入る。
●
「お前らの相手は俺達なんだぞ、と。あまり時間をかけたくないんで、さくっとやられてくれないかねぇ」
アルトの人型埴輪2号は、護衛機へキヅカキャノンの砲撃を放った。
突き出された黒い砲身から、溢れ出る黄金のマテリアル光。
放物線を描く砲弾を押し出した。
砲弾は瓦礫の山を吹き飛ばしながら、護衛機の意識を人型埴輪2号へと引き付ける。
「ヴァルキリー1から離れ始めたな。間断なく撃ち込んでやれ」
「わかった。ねらいうつ」
護衛機が瓦礫の影に隠れて人型埴輪2号へ近づく瞬間、ルネのはうんどがタイヤを滑らせながら躍り出る。
既にはうんどのミサイルランチャー「レプリカント」は、護衛機を照準に収めていた。
数発のミサイルが近距離から発射。
命中精度はやや低めではあるが、この距離であればそう外す事は無い。
護衛機の右側に着弾したミサイルは、派手な爆発と共に護衛機の機体を数歩後退させる。
衝撃と共に訪れる数秒の空白。
アルトの人型埴輪2号にとって、その数秒で十分だった。
「今度は俺の番だぞ、と。パイルバンカーは抉りこむように撃つべし、だ!」
至近距離まで接近した人型埴輪2号は、パイルバンカー「エンハンブレス」を叩き込む。
高速で射出された杭が、護衛機にヒット。強力な衝撃が護衛機の体を突き押した。
――しかし。
「……簡単には倒されてくれねぇ、か」
エンハンブレスは、確実に護衛機の機体を捉えた。
だが、一撃で葬り去る事はできず、未だに護衛機は二本の足で大地に立っている。
二股口での戦いで多少はエンドレスも装甲を上げてきたとみるべきだろうか。
「いそぐ。じかん、ない」
ルネはアクセルを踏んで、急発進。
再び護衛機との距離を詰めていく。
一方、残る護衛機はエラの魔導アーマー「ヘイムダル」。
実はエラの行動はルネやアルトよりも素早く対応していた。ミリアがヴァルキリー1への突撃を行った時点で、エラは『あるポイント』を狙って護衛機を襲撃していた。
そのポイントとは、ヴァルキリー1の退路となる場所であった。
(ここで敵を抑えれば、高機動のヴァルキリー1でも逃げる事は難しいでしょう)
テールスタビライザーAを発動しながら魔導大鎌「ソウルイーター」を横に払うヘイムダル。
口金付近で殴打する事で、護衛機は体勢を崩す。
「……ヴァルキリー1は、未だ交戦中ですね。まだ撤退の素振りはありません」
エラは時折、ヴァルキリー1との距離を推し量る。
ルネとアルトも事前に打ち合わせた通り、護衛機を攻撃しながらヴァルキリー1の退路を封じながら戦っている。
すべては――エラの計算だった。
「周囲は瓦礫の山。広い二股口のような場所とは、勝手が違うでしょう? 火星の英雄さん」
「さすがだな」
後退る護衛機を横からアサルトライフルで狙撃する八重樫のデュミナス。
エラの読み通り瓦礫の山が転がる旧一本木関門では、リープテイルによる高機動を生かした行動は難しい。
それ以上に、武器が変わった事も大きな要因だ。
今まではロングレンジ系ライフルやビームマシンガンなど、遠中距離を意識した戦闘だった。だが、今回はスコーピオンとキヅカキャノン。敵を倒すのであればある程度距離を詰める必要がある。
その上で行動範囲をエラの戦略で意図的に狭められているのだ。
ヴェルキリー1の行動選択肢は限られてくる。
それ以上にヴァルキリー1は目の前の敵に意識を奪われている。
ここまでの戦いは――エラの描いた計画の通りに進んでいた。
「これで容易に奴は逃げられまい。そろそろ一気に畳み掛けた方がいい」
八重樫のデュミナスがアサルトライフルを構える。
既に何発も護衛機に撃ち込んでいる為、強烈な一撃を叩き込めば護衛機も活動を停止するはずだ。
「そうですね。罠をかけるには頃合いでしょうか。
少々名残惜しいですが……」
エラはヘイムダルが握るソウルイーターを構える。
今度は、口金じゃない。
ソウルイーターの刃が護衛機に向かって鈍く光を放つ――。
●
ハンター達の奮戦は、確実にヴァルキリー1を追い込みつつあった。
「しげお、もっとだ! もっと前へ!」
ヴァルキリー1にアクティブスラスターで食らい付くミリアのしげお。
斬魔刀「祢々切丸」で斬りつけながらも、確実に退路を断つ様に立ち回っている。
スコーピオンによる斬撃をマテリアルカーテンで防ぎながら、しげおは近距離で迫り続ける。圧迫し続ける事は、ハンター達にとって勝機に繋がると信じているからだ。
「おいおい。こっちの事も忘れるな。あんまり寂し過ぎて帰りたくなってきたよ」
海斗のR7エクスシアが側面からヴァルキリー1を急襲。
スコーピオンをミリアに向けて振り抜いた瞬間を狙っての攻撃だ。
だが、ヴァルキリー1はリープテイルを巧みに操りブーストを掛けながら海斗へ向き直る。
――両脇にVOIDキヅカキャノンを抱えながら。
「ははっ! やっぱりそれで迎撃か!
いいだろう。皆お待ちかね! 大好きなキヅカキャノンでぇすぅー!」
R7エクスシアの背面から股下に現れたのは、同じくキヅカキャノン。
黒い光を放つキヅカキャノンの砲身は、まっすぐにヴァルキリー1に向けられる。
「さぁ……『削り合い』だ」
ほぼ同時に放たれる三発の轟音。
響き渡るキヅカキャノンの咆哮。
黄金色と真紅のマテリアルに撃ち出される砲弾と小型狂気。
三本が奏でる協奏曲。
この距離で、双方に――避ける術は無い。
「……ぐっ。やっぱりVOIDに鹵獲されてもキヅカキャノンはキヅカキャノンか。いい味出してるねぇ」
海斗の体にまで伝わる大きな衝撃。
ウムアルメンで防御力を上げていた為、大きなダメージには繋がっていない。
一方、ヴァルキリー1の方は事情が異なる。
高機動性能を優先する為、装甲はそこまで高くはない。一発であってもキヅカキャノンから放たれた砲弾は、無視する事のできないダメージだ。
後方へ下がるヴァルキリー1。
その瞬間を、今度はミリアが逃さない。
「今度こそ、ブースターを壊してやる!」
斬魔刀「祢々切丸」を威嚇する様に振るったしげお。
次の瞬間、大きく踏み込み強力な突きを繰り出した。
突き刺さる刃。ヴァルキリー1の右肩部分に食い込みながら、そのまま機体を押し進める。
その行く手で待つのは――。
「……そういえば、お前にゃ盾と銃しか見せてなかったよな?
どうだ? 加速の付いた機体に貫かれる気分は」
ヴァルキリー1は海斗のR7エクスシアに挟まれていた。
剣に変形した可変機銃「ポレモスSGS」を手にしていたR7エクスシア。
刃は操縦席下部の腰部に突き刺さる。
「どうだ! これで終わりだろ!」
手応えを感じるミリア。
二人の機体が離れた後、ヴァルキリ-1は片膝を付く形で地面へ腰を下ろす。
「油断するなよ? あの時だって……」
そう言い掛けた海斗の耳にサイレン音。
その音に、海斗は聞き覚えがあった。
「ほーら、来た」
『損傷率40%。友軍2機もロスト……これより撤退を開始します』
エンドレスと思しき機械音が鳴り響き、ヴァルキリー1は再起動。
再び立ち上がると、ミリアに踵を返して移動を開始する。
「あっ、逃げた」
「来ましたね。皆さん、予定通りにお願いします」
エラは、操縦席で呟く。
エラの言っていた罠――それはヴァルキリー1が撤退する瞬間であった。
二股口でも撤退していた事から、ヴァルキリー1は危機に陥ると撤退する事が予測されていた。
リープテイルを全開にされれば追いつく事は難しい。
だが、退路を断った上で唯一残った脱出路に伏兵を配置しておけば――。
同様の事を考えていたハンター達が、早くも行動を開始する。
「待っていた、この瞬間を。……フェネック!」
逃げる砂狐を待ち伏せていたのは、マリィアのmercenario。
スナイパーライフル「オブジェクティフMC-051」を構えて飛来するヴァルキリー1を狙い撃つ。
――狙撃。
だが、ヴァルキリー1はリープテイルにより機体を揺らして回避する。
(回避性能が落ちてる……さっきの攻撃のせい?
いや、おそらくフェネックの体に負担がかかり過ぎているのか)
マリィアは次弾を装填しながら、ヴァルキリー1の動きに注視していた。
海斗やミリアと戦っていた時に比べれば、明らかに動きが鈍い。
情報によればリープテイルを使う度に操縦者に大きな負担がかかるという。二人が接近戦を繰り返した事で、回避も厳しい状態なのだろう。
「これなら行ける」
マリィアはオブジェクティフMC-051を次々と発射。
これに合わせる形でアルトも人型埴輪2号のキヅカキャノンで援護射撃を開始する。
「この距離なら……唸れ、キヅカキャノン!」
ヴァルキリー1の機体を掠めてはいるが、勢いを止める事はできない。
接近するヴァルキリー1を前にマリィアはマシンガン「プレートスNH3」へ持ち替えて迎撃を試みる。
「仲間想いの軍人だからこそ、眠るわけにはいかなかった。
それが分かるから……フェネック。私達が貴方を眠らせ、後を継ぐっ!」
プレートスNH3よりバラ撒かれた銃弾は、ヴァルキリー1の機体にも降り注ぐ。
回避を試みるが、すべてを回避する事は不可能であった。
銃弾の一発が脚部のリープテイルにヒット。
ヴァルキリー1は空中で制御を失う。
「よし! 後は頼むぜ、ルネ!」
ヴァルキリー1が進む先に布陣していたのは、魔導トラックのはうんど。
ルネは敵がエースパイロットの勘を利用としたシステムであれば、無意識に脅威を判断していると考えた。もし、そうであるならば、CAMと比較して魔導トラックの脅威はずっと下がる。
言い換えれば、ヴァルキリー1の意識外に潜む事が可能ではないか。
そう考えたルネはアルトの支援を行った後、瓦礫に機体を逃走経路に隠していた。
仲間が獲物を追い込むのを待ちながら。
「……ぜったい、はずさない。もう、おやすみ」
ミサイルランチャー「レプリカント」が上空に向かって放たれる。
命中精度の高くない武器ではあるが、複数のミサイルがヴァルキリー1に直撃。
爆発と共にヴァルキリー1は、地面へと叩き付けられた。
「終わりだ、フェネック」
マリィアがプレートスNH3を手にヴァルキリー1へ近づく。
度重なる攻撃でいつの間にか操縦席の扉は破損。中から、フェネック――田代誠の顔が見える。
傷付き、血を流す田代。
マリィアは、その顔を自分の目に焼き付ける為に敢えてmercenarioの操縦席から顔を覗かせる。
「敵に回るとこれ程厄介な……」
そう言い掛けたマリィアだったが、再びヴァルキリー1から警告音が鳴り出した。
思わず、後から追いついた海斗が怪訝そうな顔を浮かべる。
「なんだ?」
『破損率80%に到達。継続行動不可と認識。これより情報漏洩対策として機体を爆破します』
「なに? フェネック、早く脱出を!」
この距離ではマリィアが手を伸ばしても届かない事は、理解している。
だが、マリィアはそうせずには居られなかった。
「…………」
この状況でも、フェネックは操縦席から動こうとしない。
代わりにマリィアに向けて数回唇を動かす。
「!」
次の瞬間――ヴァルキリー1は巨大な火球に包まれた。
周囲に嵐のような暴風を生み出しながら。
●
ヴァルキリー1の最期を見届けたハンター達。
函館クラスタ攻略に向けて、七重浜と函館駅前から上陸した統一連合宙軍がハンターの横をすり抜けていく。
「……えんどれす、きらい」
沈黙していたハンター達の中で、ルネの口からその言葉が漏れ出していた。
フェネックは用済みと判断されてエンドレスに切り捨てられた。
ユニットのパーツとして――。
「戦闘データは既にエンドレスへ転送されていると考えるべきでしょう。
エンドレス……この借りは必ず」
エラの考えた展開通りにヴァルキリー1を追い込む事ができた。
作戦は大成功と言っても良いだろう。
だが、心からの勝利を祝う気にはなれなかった。
「……たくっ。また厄介事を背負い込まされたのか。これがタングラムからのお願いだったら喜んでやるんだがなぁ。
そういや、マリィア。あいつ……最期になんて言ってたんだ?」
海斗はマリィアに問いかける。
フェネックがマリィアに対して何かを伝えようとしていた事に気付いていたのだ。
声にはならない声。
だが、死の直前まで、唇を動かして何かを伝えようと必死だった。
「大した事じゃない」
マリィアは一呼吸置いた後、函館の空を仰ぎ見た。
フェネックの言葉を思い返しながら。
ああ、みんな生きていたのか。
良かった。これで役目は終わった。
帰ろう――みんなと共に過ごした『魂の還る聖域』に。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談・提案・表明卓 ミリア・ラスティソード(ka1287) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/05/21 21:32:48 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/17 21:41:53 |