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【界冥】函館市内掃討・湾岸ルート【初心】

マスター:鮎川 渓

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/05/22 15:00
完成日
2017/05/31 19:08

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


「参ったわ……」
 とあるハンターオフィス。職員のモリスが、複数の依頼書を前に頭を抱えていた。
「どーしたのぉ、モリスさん? なーんか大変そーだねー」
 そこへ少年の間延びした声がかかる。
 振り向くと、そこには依頼人が途切れたのを良い事に、カウンターの内側で優雅にティータイムと洒落込んでいる香藤 玲 (kz0220)の姿が。
 モリス、脱力。
「アンタね……今は休憩中じゃないんだけど?」
「ん、知ってるよ」
 玲、切り分けたザッハトルテをぱくり。
「こっちは悩んでるんだけど?」
「ん、そうみたい」
 今度は紅茶をぐびり。
「頭抱えてるんだけど?」
「どうして?」
「お前のサボり癖のせいじゃ!!」
 叫ぶなりガタァッと立ち上がったモリス、光の速さで駆け寄ると玲の頭をファイルで叩いた。
「いったぁ、何すんの!? 暴力反対!」
「やかましわこの駄ハンター!!」

 そう。
 何を隠そう、オフィスの受付職員よろしくカウンターに陣取っている玲は、れっきとした聖導士。つまりハンターなのだ。
 だがしかし。何せ元々がリアルブルーの日本・東北の片田舎でインドア生活満喫していたもやしっ子なため、
『や、戦うのとかマジ無理だし』
 と言い張り、支部長の温情で『お手伝い』としてオフィスに籍を置いているのだ。

 モリスは気を取り直しケーキも取り上げ、先程見ていた依頼書の束を玲に見せた。
「何これ、依頼いっぱいだねー?」
「いよいよ函館クラスタ殲滅戦が行われるのよ」
 それを聞き、だらけきっていた玲の顔が引き締まる。
 詳しくは後述するとして。
 モリスは各依頼書に記された必要人員数を指していく。
「ほら見て。とにかく人手が欲しいって依頼が来てるんだけど、今はどこも忙しいし、どう考えてもハンターが足りないのよ」
「わー……確かに」
 玲は真剣な表情で依頼内容を確認していく。すると、一件の依頼に目を留めた。
「この、市内の歪虚掃討依頼の内、湾岸ルートを行くやつさ。他に比べたら少し安全っぽくない? 海沿いで歪虚も少ないみたいだし」
 モリスももう一度その依頼内容を読み直し、
「そうね、他に比べれば」
「なら僕がサポートに付くから、新人ハンターさん達に頼んでみない?」
「そうね、回復役のアンタがいれば……って、はあぁっ!?」
 モリスは真っ青になって後退る。
「ぐうたらなアンタが自分からサポートに行くですって……? ど、どういう風の吹き回しなの、何を企んでるの!?」
「ちょっとヒドくない? ぐうたらな自覚はあるけどあんまりじゃない?」
 玲はぶーたれながらもケーキを取り返し、またぱくりと頬張った。


 新人ハンター育成プログラムを介し、依頼の説明会へ集まったハンター達は、若干不安になっていた。
 致し方ない。
 説明役兼サポーターとして現れた玲は、いかにももやしっ子な見た目な上、
「お集りいただきありがとうだよー。それじゃあ依頼の説明をするねっ」
 ……ノリが超軽かったのだから。
「難しいコトは正直僕にも良くわかんないんだけどね? リアルブルーの日本、函館での戦闘依頼だよー。『クラスタ』っていう、何かおっきい歪虚のカタマリみたいのを壊す為の大規模な作戦があるんだけど、この依頼もその作戦の内のひとつなんだよ」
 おまけに説明も羽毛のごとき軽さだ。

 玲は慣れた手つきで魔導ディスプレイを立ち上げると、戦場となる函館市の地図を表示させた。ど真ん中に『クラスタ』と書かれた五角形があり、地図の左側は海だ。その海岸線の上の方には『七重浜』という地名が書かれていた。
「勿論、『そのクラスタをぶっ壊してこーい!』っていうんじゃなくて、僕らがやるのはその『クラスタ』をぶっ壊しに行く部隊の通り道にいる歪虚を、できるだけ沢山やっつけるコト」
 言いつつ玲がキーボードを操作すると、七重浜を起点に湾岸沿いに赤い線が引かれていく。それが部隊の通り道というわけだ。
「部隊はこの七重浜から海沿いを通ってクラスタに向かうんだけど、この土地は今『狂気』歪虚に占領されちゃってていっぱい敵がいるんだ。だから『部隊より先に行ってやっつけておいてね』ってワケだね」
 そこで、ひとりのハンターが手を挙げた。「狂気歪虚とは何ぞや」と。
「んー、こっちではほとんど見かけない種類の歪虚で、ふわふわ飛ぶクラゲみたいのだったり、人みたいな形してたり。『狂気感染』っていうバッドステータス付与するレーザー撃ってきたりするんだよ、やらしいよねー」
 実際対峙するとなるとやらしいどころじゃないんだが。
 ますます不安を募らせるハンター達に、玲はとんと胸を叩いて見せる。
「でもそれは大丈夫! 僕はこれでも聖導士、狂気感染を解除するスキルはちゃんと持ってるよ、回復スキルもね。しっかりサポートするから、ハンターさん達は攻撃に専念してもらえればと思うよー。それにね、」
 言って玲は、ディスプレイに厳めしい六輪の軍用トラックを表示させた。
「今回はこのゴッツいトラックに乗って進みながら敵を倒して行くんだ。……乗るのは荷台だけど、移動手段は確保されてるよって事で。あ、運転は現地の軍人さんがしてくれるから心配しないでね」

 玲はディスプレイを消すと、改めて一同に向き直る。
「まだ戦闘に慣れてない人もいるかもしれないし、大きな作戦に参加するのは自信ないって人もいるかもしれないけど……でも、この依頼はクラスタ殲滅作戦の中でも、比較的安全な依頼だから安心して挑んで欲しいんだよー」
 それに、と玲にしては珍しく熱っぽく言葉を続ける。
「ハンターさんはハンターさんってだけで十分凄いんだよ? 向こうの世界の人にはできない事、たくさんできる。それにね? このクラスタをやっつけるために、今まで本当に大勢のハンターさん達が頑張ってきて、やっとあともうちょっとの所まで来たんだ。……力、貸して貰えると嬉しいな」
 そう結び、ぺこりと頭をさげた。

リプレイ本文


 七重浜へ降り立った一同を出迎えたのは、いかつい軍用ピックアップトラックと瓦礫の海だった。サポーターの香藤 玲(kz0220)が六人を見回した。
「今日はヨロシクだよー」
 かつぎの下で桜憐りるか(ka3748)はふわりと微笑む。
「たたかう事に慣れていなくても大丈夫だと聞いたの……お役に立てるように頑張り、ます」
 りるかは蒼界、それも日本の出身だ。
「故郷を助けるお手伝いがあたしにもできるならとても嬉しいの……です」
 口調は柔らかだがやる気十全。運転手・南条の簡単な挨拶の後、彼の手を借りトラックの荷台へ。何せこの六輪車両、タイヤだけでも大人の胸程の高さがある。乗り込むのも一苦労だ。
「俺にばーんっ!」
 が、身軽によじ登ったのは道元 ガンジ(ka6005)。ソティス=アストライア(ka6538)は、元気があり余っているらしい様子に苦笑する。そんな彼女の脇を抜け、赤髪の大男がガンジに続いた。
「家畜のように運搬されるなど、なかなか出来ない体験だ……面白がらねばつまらんぞ?」
 ルベーノ・バルバライン(ka6752)だ。ソティスは小さく肩を竦め、
「私は“狼”、家畜と一緒くたにされるのは心外だ」
 ぼやきつつタイヤを足掛かりに飛び上がった。穂積 智里(ka6819)は車体を見上げしみじみ呟く。
「転生トラックさんは未体験ですけど、こうしてトラックに乗る事になるなんて」
 トラックと言えば転生モノの代名詞。トラックに轢かれ異世界に転生するのがお決まりだが、まさか異世界から戻って来てトラックに乗ろうとは。
「手貸そうか?」
 手を伸べて来た玲を見、先日玲主催のイベントに参加していた智里は思わず、
「玲さん、イベント以外もお仕事なさるんですね……!? あっ、ごめんなさいごめんなさいっ」
「んーん、僕も楽しい事だけしてたいんだけどねぇ」
 そうして智里がわたわたと乗り込むと、残るはエリ・ヲーヴェン(ka6159)のみとなった。
「ここが……リアルブルー。はじめてきた……新しい販路が……ううん、その前に仕事しないと……」
 商魂の逞しさを窺わせる語句がぽろっと出たが、考えている事は至極真面目なもので。
(一応全部倒していきたいけど……倉庫街までのペース配分も必要だから、多少の取りこぼしは仕方ないかな。ごめんね、まだそんなに強くないの……)
 その横顔はどこか儚げにも見え、見かねた玲は思わず声をかける。
「大丈夫?」
「数が多いから……協力して……頑張らないと、って」
「ん、僕も回復頑張るよっ」
 か弱げなおねえさんを励ましたつもりの玲だったが、数分後彼女に震撼させられる事となる。
 ともあれ七人を荷台に乗せたトラックは、湾岸沿いを進み始めた。


 六輪駆動のトラックは瓦礫を踏みしだき進む。中々サスペンションが効くらしく思う程の揺れはない。
「覚醒すんぞ、覚醒!」
 ガンジは意気揚々とマテリアルを解放。途端、黒いオーラが彼を包む。見る間に見上げるような漆黒の獣の形を成し、ガンジを二足歩行の黒狼へ変えた。ミラー越しにそれを見て唖然としている南条へ、
「走行距離から時間の割り出しお願いするぜ!」
 黒狼ガンジはきびきび告げる。我に返った南条は深く頷いた。
 ガンジに続き六人も覚醒。にわかに高まるマテリアルに引かれたか、早速市街地方面から二十数体の歪虚が飛来する。車高の高いトラック上にあり、建物は軒並み倒壊しているとあって視界は良好。接近する敵を漏れなく視界に捉える事ができた。
 けれどこの好条件下でルベーノは眉を顰める。
「これでは道中で策を実行するのは難しいか」
「策?」
 智里は首を傾げたが、早くも敵が魔術師達の射程に入った!
「んぅ……いきなりこの数、なの……」
 りるかは桃色の瞳を煌めかせ紅蓮の火球を生み出すと、飛来する歪虚の群れへ放った!
「なるほど狩りの相手には困らんな?」
 こちらも双眸を蒼く輝かせたソティス、青白い炎を纏う幻影の狼を喚び出す。
「”狼”たるわが力、侮るなよ?」
 彼女の言葉に呼応するよう、炎狼はカッと口を開くと燃え盛る炎を吐き出す! 魔術師達の連撃に、クラゲ擬きどもは成す術もなく炎に巻かれた。
 しかし瓦礫の合間から湧き出るよう次々と新手が出現し、術の合間をすり抜け車両へ迫る個体も現れた。
「きたきたぁっ!」
 ガンジは戦籠手を胸の前でかち合わす。けれど篭手の射程にはまだ遠い。スキルで回避力を上げて備えつつ、火竜票を構える。そして先頭の人型へ鋭く投げつけた!
「一体一体確実にぶっ倒す!」
「そうしましょうっ」
 智里はマテリアルをエネルギーへ変換。放たれた閃光は過たず敵を灼く!
「やるねぇ♪」
 皆の活躍に玲が思わず手を叩いた時だ。突然横で高らかな哄笑があがった。
「敵がたっくさん! 最っ高の舞台じゃない! つまんない社交会より私にお似合いのパーティーだわ!!」
 エリだ。金糸のようだった髪は白く染まり、瞳は赤と黒に色を変えている。だが変わったのは見た目だけではなかったのだ。
「え、エリおねえさん?」
 豹変したエリに玲ボーゼン。しかし彼女は気にしない。
「でもダンスの相手は一匹までよ? でないと疲れてしまうもの。ああ、気持ち悪いけれど中はちゃんと赤いのかしら……? ま、何色でも花は綺麗なものよ!」
 詠うように言い、寄ってきたクラゲ擬きへランスを繰り出す! 体液が花を散らすが如く舞い、串刺しにされた敵は激しく痙攣。エリはその様をうっとり見つめると、おもむろに掴み穂先から引き抜いた。そして頭上で隙を伺う人型へ投げつける!
「わたし、見下ろされるのは大キライなのよね」
 冷ややかな声音に度肝を抜かれた玲は、乾いた笑い声をあげ後退る。と、背中をどんっと何かにぶつけた。そこには幻影のマントをたなびかせ、悠然と腕を組むルベーノが。
 そう。腕を、組んでいる。構えも取らずにだ。
「ちょ、戦闘中なんだけど……?」
「やれることがない以上、仲間の戦闘方法を見て経験を積むのもまた修行。戦場で心乱す者は長生きできんぞ?」
 彼は接近戦を得意とする格闘士。浮遊する敵を射程に収められない以上はと観戦を決め込んでいたのだ。
 だが車両を囲い込もうと敵が散開。彼の側にも人型どもが回り込む!
「来たぁ!」
 玲が彼の後ろに隠れると、ようやく構えをとった。
「良かろう! 我の射程に入ったが貴様らの運の尽きよ!」
 マントを翻したルベーノ、突き出された敵の触手を難なく回避。練り上げた気を鉄甲から立て続けに放出する!
 敵は倒せど倒せど湧き出てくる。個体ごとの強さはさほどでもないが、数に物を言わせ遂に囲まれた。ガンジが南条へ叫ぶ。
「一旦停めてくれ、コイツら片付けるっ」
 停車した途端、歪虚どもはじりじりと包囲を狭めて来た。
「冴えない群舞ね。つまらないわ」
 ランスを握り直すエリ。ソティスは魔導拳銃に持ち替えた。
「まったく、私がこんなものを持つとはなぁ……?」
「それにしても凄い数です」
 智里は運転席の傍に寄り、
「運転代わりましょうか? 私より歴戦の勇士の南条さんの方が戦力に、」
 言いかけた智里を南条は苦笑して遮った。
「謙遜する事はないさ、君は立派に戦っている。俺ではむしろ足手まといだよ」
 彼はミラー越しに智里が敵に挑む勇姿を見ていたのだ。智里はちょっぴりはにかんで頬を染めると、抜刀剣を再び構えた。
「できる限り、頑張りますっ」
「うむ、低空を飛ぶ者どもは任せろ」
「回復したくなったら声かけてくれ、穴は埋めるぜ!」
 ルベーノとガンジは好戦的に笑う。そして――
「いっくぜぇーー!!」
 ガンジが敵に躍りかかったのを機に一斉に技を放つ! 雷光が敵を貫き、ランスが舞い手甲が唸る。響く発砲音に白熱の閃光。六人は互いの射程の差を埋め合い、瞬く間にこの一群を壊滅せしめた。
 りるかは懐中時計を取り出す。その所作の最中も幻影の花弁が袂から零れ、何とも優雅だ。
「んと……出発して二十分経過、です。良いペース、なの……」
 彼女の言葉通り出だしから戦果は上々。トラックは再び走り始めた。



 そうして敵に囲まれる事数度。その度停車させ敵を掃討してきた一行だったが、流石に連戦の疲れが出てきたか。また一つ敵の群れを撃破し走り出したトラックの荷台で、ガンジはどかりと胡坐をかく。
「ハラへったぁ。なあ、倉庫街まであとどんぐらいー?」
 空腹でご機嫌ナナメのガンジがややぶっきらぼうに尋ねると、
「そら、見えて来たぞ」
 窓から腕を突き出し、南条が前方を指さした。そこにはいくらか原型が残る建物が並んでいる。りるかは再び時計をちらり。
「えと……もうすぐ一時間経過なの、です。ペース配分上手くできたみたい、なの」
「何よりだ。それに銃撃戦も中々に楽しいものだな!」
 珍しく銃を扱ってみたソティス、案外楽しかったようで。智里は鞄から包みを取り出した。
「あの、疲れた時には甘いものが良いと言いますから……良かったら、どうぞ。頑張って依頼を成功させましょうね」
 包みの中から現れたのは、桜の葉が香る桜餅だった。
「メシ! じゃねーけど、菓子!」
 ガンジの瞳がきらり輝く。仲間達に配り終えた智里は運転席の方へ身を乗り出すと、
「南条さんもおひとついかがでしょう?」
 南条へも差し出した。軍人の南条、戦闘中に菓子が振舞われるとは思ってもみなかったのだろう。ましてその頭数に自分が入っていようとは。にこっと微笑む智里に、南条も照れたように笑った。
 全員で桜餅を頬張りながら束の間の小休止。ところが内陸側で黒い靄が立ち上る。否、靄の如く密集し押し寄せる歪虚どもの群れだ。
「アハッ、またあんなにたっくさん!」
「もうすぐ倉庫街だと言うに」
 桜餅で元気回復したガンジは、
「ならこのまま倉庫街へ突っ切るぜ、追いつかれない程度に引きつけてくれ!」
 南条は敵との距離を調整しつつ倉庫街へ走らせる。追い縋る歪虚の数たるや、今までの群れの比ではない。玲は決戦に備えヒーリングスフィアで全員をフル回復。
「もうひと踏ん張り、頼むねっ」
 そうしてトラックは倉庫街中央の開けた場所で停車した。ここからは二人一組で敵を討つ手筈だ。

 迎え撃つべく真っ先に車両後方に降りたのは、纏うオーラで四肢を狼状にしたソティスだった。
「……狩りの時間だ、諸共纏めて焼かれるがいい!!」
 先制して放つフレイムレインが、敵の群れに風穴を穿つ!
「狼同士共闘といこうぜっ」
 次いで荷台から飛び降りた黒狼ガンジ、敵とソティスの間に立ち塞がると、戦籠手で次々敵をいなす。そして思う様激しい連撃を叩き込んだ!
「すまんな」
「接近戦は引き受けた! 飛んでくるやつらは頼むぜ?」
「是非もない!」
 再びソティスは炎狼を喚び出す。白と黒の狼の競演により敵の勢いが落ちた。

「さあ、魅せてあげる……!」
 車両右側面に降りたエリは、前線に陣取った狼達の負担を減らすべくマテリアルを燃やし、敵の目を引きつける。途端、炎に群がる夏の虫の如く迫る歪虚ども。
「集める視線はいつでも気持ち悪い男たち、というのが残念だわ……ああ、本当に残念。死んでくれる??」
 エリは強打を打ち込むべく一直線にランスを繰り出す!
 その傍らに立ったのはりるか。
「んぅ……クラゲさん、たくさん……いきます、ね?」
 りるかはエリが巻き込まれぬよう声をかけ、魔杖を翳す。宙に出現した火球は空を泳ぐクラゲどもへ飛ぶと、紅蓮の腕で絡めとった。

 一方車両左側に降りたルベーノは、倒壊を免れていた二棟の建物を見、唇の端を持ち上げる。
「軍人とはいえ、彼もトラックも失うわけにはいくまい。ならば玲を含め何人かで守りながら戦った方が良かろう。敵を引きつけるだけなら、我にも策がある。敵を集めすぎてしまいそうで困ったものだがな」
「えっ?」
 必然ルベーノとペアになった智里が降りた時には、彼は建物へ向け駆けだしていた。
「待ってくださーい!」
「あれ、二人ともどこ行くのー!?」
 車から離れて行く二人に玲もわたわた。けれどルベーノはずんずん突き進むと、建物の前で何かを取り出した。そして――

 ヒューー……ドンッ!

 真昼の空に大輪の花が咲く。何とルベーノ、敵の注意を引くべくマテリアル花火を打ち上げたのだ! 一同、思わず宙を仰ぎ唖然。が、数で圧倒されていたガンジ・ソティス組から一叢の歪虚が離れルベーノへ殺到!
「さあ追って来るが良い!」
 建物へ飛び込んでいくルベーノ、それを追う歪虚。突然の事にぽかんとしていた智里だったが、急ぎ歪虚の後を追った。
 そこで智里が見たものは。狭い通路にみっちり溜まった歪虚どもを、豪快な飛び蹴りで薙ぎ倒していくルベーノの姿だった。遠距離攻撃手段を持たぬ彼は、建物内でなら敵の浮遊能力を殺せると踏んだのだ。
「届かぬなら引きずりおろすまでよ!」
 圧倒されていた智里だが、期せずして彼と己とで敵を挟撃する形になっている事に気付く。その上敵の注意は彼へ向いたままだ。
「これなら……!」
 戦闘経験が浅く苦手意識のある智里だが、この状況なら存分に戦える。彼を防御障壁で援護し、威力特化の機導砲をぶっ放した!

 屋内外での戦いが激しくなるにつれ、付近の歪虚どもが駆けつける。けれどもはやスキルの残回数を気にせず暴れる彼らの敵ではない。
 増援も途絶えた頃には、総討伐数一九一を数えた。



「もー作戦があるなら言っておいてよ、ヒール届かないでしょっ」
 ぷりぷりしながら全員にヒールをかけて回る玲。ルベーノはそれを受けながら、
「大義である」
 鷹揚に頷く。りるかがやんわり仲裁に入った。
「えと……でも、周りの敵は倒しきれたみたい、なの……だから、ね?」
「ん、あれだけ倒せば部隊は無事に進めるね。お疲れ様!」
 一同、ひとりまたひとり紅界に帰還していく。
「今度はのんびり訪れたいな」
「販路は……また」
「またハラへってきたぁ」
 台詞は様々だが各々戦果に満足しているようだ。
「や、やっと帰れる……」
 智里は帰還の時を待ちつつ深く息を吐く。そこでふと玲に尋ねた。
「あの……もしかして玲さん、ここに知ってる方が住んでたりしたことがあったんでしょうか?」
 玲は目をぱちくり。
「別に?」
「そうですか……その、玲さんが積極的に戦闘に参加する理由、本当は何だろうと思ったので」
 玲は駄ハンターと言うだけあり普段は全くやる気がない。そりゃもう智里がイベントプロデューサーか何かだと勘違いする位に。
「んー」
 玲が口を開きかけた時、ふっと彼女の姿が消えた。紅界へ引き戻されたのだ。玲はまたぱちくりしながらひとりごちる。
「この函館で、沢山のハンターさん達に助けてもらったからねぇ。柄にもなく最後まで付き合おうとか思っちゃったんだよ」
 言って函館駅の方角へ視線を放った。そちらでも今頃別部隊が掃討に当たっているはず。彼らの無事を願いながら、玲もまた帰還したのだった。

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MVP一覧

  • 今日を笑顔で全力!
    道元 ガンジka6005
  • 白狼は焔と戯る
    ソティス=アストライアka6538

重体一覧

参加者一覧

  • ヴェルナーの懐刀
    桜憐りるか(ka3748
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 今日を笑顔で全力!
    道元 ガンジ(ka6005
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 狂乱の貴婦人
    エリ・ヲーヴェン(ka6159
    人間(紅)|15才|女性|闘狩人
  • 白狼は焔と戯る
    ソティス=アストライア(ka6538
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
  • 私は彼が好きらしい
    穂積 智里(ka6819
    人間(蒼)|18才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【相談卓】
道元 ガンジ(ka6005
人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2017/05/21 22:12:56
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/19 13:25:22