• 血盟
  • 陶曲

【血盟】【陶曲】目覚めの刻

マスター:月原みなみ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/05/22 07:30
完成日
2017/06/04 03:32

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●リゼリオ ギルド街
 ハンター達の総本山。リゼリオにあるギルド街は今日もハンター達の喜怒哀楽で溢れていた。
「装備をお探しですね? 当店をお選びいただくとは流石ハンター様、お目が高い!」
「お、おう」
 度重なる依頼をこなし多少くたびれた装備を新調しようと、ハンターの男は一軒の装具屋に入った。
「見た所、外装の痛みが激しいようで」
「そうだな。こいつには随分と世話になってる」
「なるほど! でしたら――こちらの外套などはいかがでしょう? 実はこちら幻獣グリフォンの皮をなめして作りました最高級の逸品なんです!」
「へぇ、グリフォンねぇ」
 幻獣は早々捕まらないし、もし捕まったとして外套に加工されたとしてもこんな小さな装具屋に置いてある品ではない。
 ハンターの男は、少女の売り文句を半分聞き流しながら、店にある装備品を眺めていた。そんな時――。

『――子よ――』

「うん? 何か言ったか?」
「はい? ええ、ですからこの外套は」
「違う違う。もっとこう、なんて言うか心に語り掛けてくるような……」
「はい?」
 どうにも要領を得ない男の言葉に、少女は一瞬眉を寄せる。
「ほら、また」
「……いえ、何も聞こえませんけど」
「そ、そうか。気のせいだったのかな……」
 店員の少女もその奥に控える恰幅のいい店主も不思議そうにこちらを視ている。
「それよりも、こちらのチェストなどいかがです!? なんと、人魚族が自らの鱗を使い、丁寧に紡いだ――」
「いや、装備はまた今度にするよ。変なこと言って悪かったな。また来る――」
 ハンターの男は、尚も推してくる少女に手刀を切ると、店を出ようとドアへと向かった。

『ヒトの子らよ――』

「やっぱり聞こえた!」
 店のドアを抜けようとした時、再びはっきりと聞こえる不思議な『声』に、ハンターの男は店を飛び出し通りを見渡す。
「皆、聞こえてないのか……? いや、聞こえてる奴もいる!」
 通りには大勢の人が歩いていたが、その中でも数人が立ち止まり、男と同じようにきょろきょろと辺りを見渡していた。
 その成りから、立ち止まった者は皆、ハンターであると思われる。
「お、おい!」
「……うん? ああ、お前か。どうした?」
 男は知り合いのハンターを見つけ駆け寄った。
「今、何か聞こえなかったか?」
「おっ、お前も聞こえたのか」
「ああ、でも、聞こえてるのはどうもハンターだけみたいなんだよな」
「ハンターだけ……?」
 どうやら、その『声』が聞こえるのは覚醒者だけの様で、街行く一般人は全く気付くことなく通りを往来する。
「一体どこから聞こえてくるんだ?」
 『声』を空耳だろうと気にせず、往来に戻るハンターの姿も目立つ中、二人は『声』の出所を探る様に瞳を閉じ耳を澄ませた。

『ヒトの子らよ。お願いがあります』

「っ!」
「聞こえたか!」
「おお! なんだ、女の子……? 随分、可愛らしい声だったが」
「どっちだ」
「あっちから聞こえた気がするぞ!」
 そう言って仲間が指差したのは、街の一角。
「あっちは……そうか、神霊樹か!」
 そちらは、リゼリオにも生える神霊樹の分樹がある方角だった。


●霊峰フズフク
「こ、これは……!」
 毎朝の日課をこなそうと麓の村からやってきた老人が、目の前の光景に思わず供え物を手から落としそうになった。
「御神柱様が……」
 御神柱と呼ばれた石柱がある洞窟は、一面緑の苔に覆われた巨大な大岩に塞がれている。
「ひぃ!」
 思わず童のような悲鳴を上げてしまう老人。
 苔かと思われた大岩の緑が、怪しく蠢いたのだ。
「い、生きている……」
 ときおりもぞもぞと動く苔など見たこともない。
「こ、これはもしや、歪虚!?」
 老人は手に持った供物を放り出し、一目散に参道を駆け下りてハンター達に助けを求めようとし、――足が止まる。
 なぜならこれから呼ぶつもりだったハンターは、既に地精霊アメンスィの呼びかけに応じ老人の目の前にいたのだから。

リプレイ本文



 その声が聞こえてきた時、チョココ(ka2449)はお菓子の買い出しをしている途中だった。
 お会計を済ませたそれらを担いで声のする方へ近付いていくと、そこはリゼリオに根付く神霊樹の分樹の前。しかも声に誘われたらしいハンターはチョココ一人ではなかった。
 夕凪 沙良(ka5139)、雨を告げる鳥(ka6258)、エルティア・ホープナー(ka0727)、天央 観智(ka0896)、星野 ハナ(ka5852)ら5人がおり、皆が一様に思案顔。
 どうやら此処に辿り着いた途端に不思議な声――それが誰のものか確信している者もいたが、それが聞こえなくなってしまったというのだ。
「そういえばわたくしも……」
 チョココも聞こえなくなっている事を伝えようとした時だった。
 
 ――よく来てくださいました……

 不意にあの声が再び彼等の内側に響き渡り、最初に応じたのは雨を告げる鳥。
「私は確信する。聞き間違えるはずがない。その声は地と光。そして知恵の精霊アメンスィのものであると」
 つい先日の、数多のハンター達が招かれた異界でアメンスィと直に接していた彼女をはじめ、観智や沙良は得心した表情に変わり、エルティアはこの稀な事態に知的好奇心を大いに刺激されたらしい。
 その間にもアメンスィの声は続き、霊峰フズフクの八合目付近で眷属である地精霊のシルヴァが苔型の歪虚に覆われた大岩によって洞窟内に閉じ込められた事が伝えられた。
 ――どうか力をお貸しください……
 起伏のない淡々とした声音ながらも決してハンターの意思を蔑ろにはしない物言い。
「なんだかとっても、大変なお願いをされてしまいましたの……」
 チョココは朗らかな笑顔の中にも緊張感を滲ませる。
「眷属さん、洞窟に閉じ込められてるんですかぁ。きっとお腹を空かせていますねぇ」
 一方、ハナはハナで感じ入る所が違っているようで。
「お山の八合目ですかぁ。野草でも生えていると良いんですけどねぇ……」
 助け出した精霊に何を御馳走しようかと首を傾げた。
 ――わたくしから伝えられることは以上です。それではよろしくお願い致します……
 一方的に会話を締めようとする声に、異を唱えるは4つの声。
「とりあえず内容は判りましたが……お受けすることはやぶさかではありませんが。他にそちらでわかっていることとかありませんか? シルヴァがどんな子なのかとか。何が起こっているのか、とか」
「……助けるのは、構いませんけれど……どう、助けるのでしょうか? このお話は……些か漠然とし過ぎています……よね」
 依頼は突然だった。そして、その内容も。沙良、そして観智は、アメンスィに問い掛けた。
「霊峰であなたとの情報共有やシルヴァとの対話は可能なのかしら? それに落石が起こるほどの何かがあったのか、あったならそれはいつだったのか、判っていれば教えて欲しいわ」
 更にはエルティアに続き、雨を告げる鳥もアメンスィに問い掛ける。
「私は質問する。アメンスィよ。同盟の地は嫉妬の歪虚に脅かされている。霊峰に現れた歪虚もその眷属だろうか」
 どの問い掛けも、ハンター達が依頼を遂行するにあたってとても重要かつ、自分や仲間達、依頼人、そして救助者の命を守るために必要な最低限の情報だろう。
 だが――。
 ――……ヒトの子よ、わたくしの口からこれ以上、語れることはありません……
 ――……もしも願いを聞き届けて頂けるなら、あなた達のお力で眷属を解放してください……
 静かに告げられた声は、それきり消え失せた。
 もう、何者の声にも応じることなく。


「さすがは霊峰と呼ばれる山ですの。融け残っているだけの雪もとっても綺麗ですの」
「フキくらいしか見つからないかもって思いましたけどぉ、運が良ければタラの芽なんかも見つけられるかもですぅ」
 チョココ、ハナが大げさと言えるほど陽気な声を上げて後方の仲間達にも同意を求めてみるが、彼らは一様に無言。
 去り際にアメンスィが残した言葉がハンター達の胸中に渦を巻いていたからだ。
 加えて、その後どんなに呼び掛けてみても精霊から応えはなく、表現のし難い不安が募る。
「依頼を遂行するためには事前情報が不可欠……ですが、アメンスィさんは、視たかったのかもしれません。最低限の情報を僕たちがどう生かし、眷属を救出するのか」
「んー……」
 観智の言葉に、エルティアが考え込む。
「……どうしましょうか。私達にこの依頼を遂行する義務はないわ。あくまでもアメンスィの『願い』だもの」
「断る気なんてさらさらありません」
 静かでありながら力強い声で告げたのは沙良だ。
「僕も……行きます。アメンスィさんには……いろいろと聞きたいことがあります。もちろん……することをしてから、という事になるでしょうが」
「私は告げる。ここで降りる気はないと。大いなる友と絆を結ぶため、持てる力の全てを惜しまないと」
 エルティアの問いに帰ってきた答えは一択。
「ふふ。ではぁ、散策を楽しむのが良いと思いますぅ。アメンスィさんは地の大精霊ですしぃ、山の恵みに感謝するとぉ、気持ちが伝わると思いませんかぁ?」
「それに、こんなに綺麗なお山ですもの。楽しまないと損ですの」
 不鮮明に揺れていた目標が今ははっきりと見える。
 ようやく纏まった空気に、チョココとハナも一安心と視線を交え微笑んだ。


 霊峰とは言え、見える範囲に他の山々との大きな違いは見られない。
 茂みの奥にまで分け入れば目立った違いを発見出来たかもしれないが、さすがにそこまでは時間が許してくれないだろう。最も、ハナは先ほどから何かを見つけては手際よくそれを採取していたが。
「他の山で育った植物と、ここで育った植物のマテリアルの含有量の差、なんて気になるわね」
「持ち帰って調べますか」
 エルティアが言い、沙良が応じる。
「すべてが終わった後にも散策出来たなら、それも良いのではないでしょうか。ここはシルヴァを祀る土地ですから、その許しを得る事が出来れば尚の事、ですね」
「シルヴァか。挨拶はぜひしておきたいわね。この村の人々にとってのシルヴァという存在……この地で紡がれた物語を聞く事が出来たらどんなに素敵かしら」
 胸の内に生じる期待と、伴う楽しみに、女性陣の表情は明るくなる。
 雨を告げる鳥も魔導カメラを手にし、春山の景色一つ一つをじっくりと堪能した。
 冬の眠りから目覚めた木々の枝に膨らむ新芽。
 花のつぼみ。
 足元には融け残った雪の合間から数か月前に落ちた落葉が覗いており、そこに隠れ住む微生物が春夏の彩をより豊かに育む――そうして循環していく大地の息吹。
「自然はすごいですの」
 チョココのつぶやきに、観智が「そういえば」と以前に読んだ本の内容を思い出しながら言う。
「植物や生物の中には、生きるために共生するものもあるそうですよ……判り易いのは花の蜜を吸う虫と、花粉を広く散らしたい花ですね……意思の疎通が出来るわけでもないのに、生きるための知恵というものは……」
『知恵と、いうものは』。
「ああ……そういうことですね」
 自らの発した言葉に観智は一度頷くと、微かな笑みをその口元に湛えた。



 ハンター達が辿り着いた目的地――地の眷属、シルヴァが祀られているという石柱へ向かうための洞窟前。
「これは……話に聞いて想像していた通りではあるけれど……想像以上に気持ち悪いわね」
 エルティアの素直な反応が示す通り、洞窟の入り口を完全に塞ぐ巨石には緑の苔が蔓延っていた。
 時折、不気味に蠢く苔――歪虚であることはハンター達でなくとも一目でわかる――は、まるで巨石を嘗め回しているようにも見える。
「私は観察する。辺りに不自然な変化はないと。では、なぜこの巨石はここに在るのか」
 自然の在り様に造詣の深い雨を告げる鳥は、洞窟近辺の変化に違和感を覚えた。
 自然の崩落であれば、土砂を伴って大乗の岩が雪崩落ちる。大岩一つだけが崩れるとは考えにくい。
 しかし、目の前の光景はどうだ。まるで、意図的にそこに置かれたかのように大岩が佇んでいた。
「麓で聞いた話ですと、何の前触れもなく突然ここに在ったとのことでしたね」
 沙良が登山前に得た情報を再確認する。
「やっぱり、この歪虚が何かしたと考えるのが普通でしょうね。これを何とかしないと話は進まない……そう思うのだけど」
 エルティアは腰に手をやりふぅと一息吐くと、仲間に意見を求めた。
「何度も確認は不要です。私はこの先にある地の精霊を助けます」
「右に同じ……です。智の……対価は、等しく払われるべきです……」
「貴女達は――」
 と、エルティアが見遣ったのはチョココとハナ。
「精霊さんの主食が何かよく分からないですけどぉ、道中にたぁくさん山菜を取ってきましたのでぇ、すぐに用意しますねぇ」
 ハナは相棒に運ばせた大鍋を手際よく設置し。
「まりまり、まりも、まりもっこり~」
 頭上のパルパルと一緒に体を揺らし、軽妙な鼻歌を口ずさむチョココ。
「聞くまでもないわね」
 一見、救出の事など頭にないかと思われる二人。しかし、エルティアは確かに膨れる二人のマテリアルを感じた。
「満場一致、で良いわよね?」
「私は答える。相違ないと。全てを終え、再びアメンスィに語り掛ける為。歪虚を白き闇に閉ざそう」
 その声はまるで彼の四大精霊の一柱のように、抑揚のない中にもはっきりとした意思を以て発せられた。


「……五色光符陣五色光符陣五色光符陣!」
 ハンター達の一斉攻撃によって巨石が燃え上がり、一瞬の炎の中で揺らめく影は燃え尽きていく苔歪虚だろう。
 そうして数秒後。
 攻撃の余韻すら失したその場で巨石が微かに揺れ、
「ひゃあっ!?」
 ごろんと大きく転がるという唐突な動きにハナが思わず大きな声を上げたと同時、巨石はその場に砕け散り、あとに残ったのは不思議な色合いの石片――。
「……これは……」
 見たことのないそれに、警戒しつつ触れたハンター達は、次いで再び驚きの声を上げた。
 それぞれの手の中で、それぞれの石片が違った色合いの輝きを放ち始めたからである。
 ハンター達はそれが何かはまだ知らない。
 しかし大いなる精霊の導きによって此処に至った彼らの手に渡ったそれが何の意味も持たないはずがなかった。
 観智は呟く。
「……アメンスィさんは、これを僕達に渡すために此処に来させたのでしょうか……だとしたら僕達を試したかったのではなく……」
 否、たとえ試す目的があったとしても、その先に込められていたのが期待であったのならば。
「応えなければならないわね」
 エルティアは手の中の石片を優しく、けれどしっかりと握りながら微笑み、一方でチョココは寝ころんだかと思うと地面に頬を置いて語りかける。
「アメンスィ様、ありがとうございますですの。大切にしますの!」

 ――……

 気のせいかもしれない。
 だが、頬に触れる大地はとても暖かかった。



 それぞれに石片を取り分けて洞窟内を進んでいくハンター達は、ほどなくして祠と思しき石柱に辿り着いた。
 これが……と、一行が緊張した面持ちを見せる中。
「これがシヴァさんの岩ですかぁ……シヴァさーん、念のためここも浄化させて頂いて良いですぅ?」
『シヴァって誰やねん! どこぞの長髪のイケメンかいっ!!』
「う……え……?」
『シルヴァや、シ・ル・ヴァ! バちゃうで、ヴァや! ええか? そこ間違えたらあかん!』
 激しいノリとよく分からないツッコミと共に、石柱から首が出た。声は女性、見た目は少年。
 陽気な声でニカッと笑うという精霊の唐突な出現に誰もが言葉を失う中、沙良は努めて冷静に声を掛ける。
「……コホン。貴方がシルヴァですか? アメンスィ様の要請で助けに来ましたが」
『ほう、アメンスィ様の? そうかそうか、そりゃわざわざすまんかったな。おかげで助かったわ――』

 ぐーーーー。

『アカン……せっかく助けてもろたのに、うち死ぬわ。今死ぬわ』
「……え? ちょ、ちょっとシルヴァさん……大丈夫ですか?」
『もう無理。ほな、さいなら――』
 慌てる観智をよそに、姿をモノトーンへと変化させたシルヴァ。
「そういえば、大岩のおかげで今日のお供え物がまだだったわね」
「はいはーい。ご用意出来てますよぉ?」
 シルヴァの死因(?)に気付いたエルティアがくすくすと笑い、ハナが元気よく手を挙げた。
「実はお菓子もあるんですの」
 チョココも話しかけながらその場にシートを敷くお手伝い。もう間もなく出来上がろうというハナ作の『ツナ野草ナッツ炒めパン』を待つ間、一行はチョココのお菓子をつまみながらしばしの歓談を楽しむのだった。

 そうして別れ際。
「……そういえば、この近くで光の帯を見なかったですの?」
『光の?』
「先日の依頼の件で、ちょっと気になったことがあるですの」
 チョココの問いかけにシルヴァは少し考える様子を見せたが『ちょい待ち』と手をひらひらさせると、目を閉じたまま黙り込んでしまった。
 そうしてしばらくの沈黙。
 シルヴァは目を開けると、最初に雨を告げる鳥に目線を送る。
『お嬢ちゃん、アメンスィ様にここ最近、嫉妬の歪虚が暴れまわってる、今回もそうかって聞いたって?』
 静かに頷いた雨を告げる鳥は「私は問う」と前置く。
「――その問いの後にアメンスィは一切の交信を絶った。それは告げてはならない話だったのだろうか」
『へ?』
 シルヴァは目を瞬かせた。
『交信を絶ったってそら……ふっ……ふふっ、そらちゃうわ。根本的に違うでお嬢ちゃん。歪虚が暴れまわってるって話したんは是も非もないで。うちの大精霊はんが口を聞いてくれへんようになったゆうんやったら、そら『質問』したからやろ?』
「質問……? 聞くことが、いけないことだと?」
 エルティアの確認に、シルヴァは楽しそうに笑った。
「ちゃうねん。いけないんじゃなくて、無意味なんよ」
「それは……」
「……アメンスィさんが、知恵を司る精霊だから、ですね」
 まだ疑問を残す表情の女性陣に、観智が続く。
「智恵とは経験を通じて得られるもの……それを司るアメンスィさんにとって「答えを聞かれる」という行為は、おそらくですが、とても悲しいことなのではないかと……」
 その言葉に、シルヴァは正解と言いたげにウインク一つ。
『しかもお嬢ちゃん、彼の世界ではアメンスィ様に随分気に入られたようやないの。うちの大精霊様は見た目はあれでも年食ってるからなぁ。意固地なんよ? 期待した分、ショック受けたんちゃう? とと、あんまベラベラ喋ったらうちがお仕置きされるわ』
 冗談半分に呟いて、改めてチョココを見遣る地精霊。
『気になるんやったら、自分で調べに行くんやな。見つけた答えの是非くらいは判じてくれる、かもしらへんし?』
「しかし、答えを見つけろと言われますが、実際どのようにすれば良いのですか?」
 沙良の確認に、シルヴァは肩をすくめると、
『情報持ってはるヒトの子と縁あるんやろ?』とチョココに。
 どこからどう情報を得たのか、シルヴァの言葉に少女が「はいですの」と頷くと、地精霊は小声で付け加えた。
『それを追っていけば、そのうちにアメンスィ様と腹割って話せるんとちゃうか?』
 悪戯っぽくウインクするシルヴァ。
 先の事は誰にも分らない。
だが、シルヴァのその言葉は、嫉妬の歪虚とアメンスィに浅からぬ因縁がある事を匂わすには充分だった。

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MVP一覧

  • 光森の太陽
    チョココka2449
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナka5852

重体一覧

参加者一覧

  • 物語の終章も、隣に
    エルティア・ホープナー(ka0727
    エルフ|21才|女性|闘狩人
  • 止まらぬ探求者
    天央 観智(ka0896
    人間(蒼)|25才|男性|魔術師
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 紅瞳の狙撃手
    夕凪 沙良(ka5139
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • 命無き者塵に還るべし
    星野 ハナ(ka5852
    人間(蒼)|24才|女性|符術師
  • 雨呼の蒼花
    雨を告げる鳥(ka6258
    エルフ|14才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
雨を告げる鳥(ka6258
エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/05/22 05:11:24
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/17 08:55:35