• 界冥

【界冥】メモリー・オーバーフロー

マスター:cr

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/05/24 07:30
完成日
2017/05/31 21:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 何と表現するべきか……ハンター達はその建造物を見て言葉を失っていた。
 地面には四本の塔。それがちょうど正方形の頂点の部分に建っている。その四本の塔によって支えられる形で、四角錐を裏返した形のものが乗っかっている、と言えば良いのだろうか。
 一体どのようにしてこの建物を作ったのか想像もつかない。目指すものはどこにあるのだろうか。目を凝らして塔を見れば入り口のあるものと無いものがある。おそらくどこかにサーバーがあり、塔を登って四角錐の部分を進めばそれが見つかるのだろう、そこまでは想像がついた。


「お主は何を恐れておるのじゃ?」
 ナディアはモニターの向こう側のトマーゾ教授にそう話しかけた。人工知能の制作に繋がる様な事に断固として協力を拒否する理由。彼女の推測は、教授が人工知能の完成を恐れている、ということだった。
「何を恐れている、か……そうじゃな。エバーグリーンが滅んだ理由、と言えばわかるか?」
「エバーグリーンが滅んだのはガイアプラントにより星の命を削ったから、では無いのか?」
 ナディアはエバーグリーンに偵察に行ったハンター達のレポートを思い返す。
「それは理由の半分、といった所か。残りの半分はオートマトンにある」
「一体どういうことじゃ?」
「それは自分で調べろ」
 冷たく突き放す教授。だがややあって、彼は一つのものを送ってくる。
「……エバーグリーンにおける記録の多くを保管しておった施設がある。恐らく風化やら何やらでそのデータの大半は失われておるじゃろうだが、そこのパーツを持ち帰ればお前たちに見せることができるかもしれん。アドレスは送っておいた」
「そこを調べれば……」
「いや、もう一つ。お前たちがそこに行ったときの事をわしに報告しろ。それが条件じゃ」
 教授の奇妙なオーダー。それには何の意味があるのだろうか。


 ハンター達は塔を登り四角錐の部分に辿り着く。そこはあまり高くない天井の巨大な空間だった。ざっと見て80m四方程度だろうか。そこでハンター達を歓迎したのは三体の少女型オートマトンだった。機械的なパーツを付けず衣服もごく軽装のものが一体、対象的に両手両足に巨大なパーツを付けているものが一体、そして片腕に巨大な何かを付けているのが一体。敵意はない。敵意はないがここを通してくれそうにもない。そうプログラミングされているのだろう。
 だがその時突然感じる敵意。片腕に巨大な何かを付けていた彼女がこちらにその先端を向け、次の瞬間こちらに向けてレーザーを放ってきた。とっさに飛び退いたそこをレーザーが通り抜け、後ろの壁に当たって置かれているものをまとめて吹き飛ばした。
「レディース・アーンド・ジェントルマーン! 俺っちのファンのみんな、待たせたねー! 早速レーザーでご挨拶させてもらったけど楽しんでもらえた? アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 少女型のその姿にはあまりに似つかわしくない、人を苛つかせる甲高い声。カスケードだった。その声があちこちから聞こえる。オートマトン達を“飛び移り”ながらこちらに話しかけているのか。それとも何か。
 ただ、ハンター達に出来ることは一つ。このオートマトン達を突破すること。それだけだった。

リプレイ本文


「カスケード君か、また会ったね」
 レーザーの残響が残る中、最初に耳障りな声の主に話しかけたのは岩井崎 メル(ka0520)だった。
「今回は調査なんで、ごめん。また今度遊びに来るからさっ」
「といわれてはいそーですか、って言うわけないじゃーん!」
「まあそうだろうね。ところでそれよりも今回は暗めの……世界の滅亡の話とか、したくない?」
「あ゛あ゛?」
 カスケードの声色が変わる、その瞬間メルの周りに居たハンター達が飛び出し、戦いが始まる。
(報告書にAIの反乱について書かれていた。だからそれもこの世界の滅びの一端になったんだろう……でも何故?)
 時音 ざくろ(ka1250)は教授の指示に伴い報告書を読み返していた。それでも残る疑問がある。それを解決するためには、ここを突破するしか無い。
 左に展開したざくろはアルケミストに近づいていくと、懐の時計を操作する。すると目の前に光の三角形が形作られ、程なくしてそれぞれの頂点から光線が発射された。それは一瞬の内に狙った相手、アルケミストへと飛んでいく。
 だがアルケミストがその巨大な左腕を上げるとそこに透明なシールドが展開される。光線はその盾にぶつかると弾かれ霧散した。そして彼女が右手を上げると、その手の前に光の逆三角形が形作られた。
 同じ力、それをざくろが理解したときには光線が発射されていた。彼はとっさに盾を掲げる。淡い燐光が放たれ、こちらも弾き止める。
 しかし光線は一本発射されただけではなかった。それぞれの頂点から光線は放たれていた。
 ざくろと同じくアルケミストに向けて移動していた八島 陽(ka1442)は前転して光線をかわす。向き直り再び駆け出そうとした彼の目に冷たい瞳のオートマトンの姿が入ってくる。
「くっ、戦いながら試すしかないか!」
 八島はオートマトン達から、突如として殺意が向けられた、いや、発生したことに注目していた。その原因はあの甲高い声の歪虚と推測できる。
 彼は友人がベアトリクスと遭遇した時の事を思い出していた。その時と同じなら……この状況は不完全な形の歪虚ということではないか。その推測を確認する方法は彼にはある。だが、今の状況でとてもできそうにない。
 彼は己の背後に居る仲間達の位置を確認しながら、前へと進んでいく。
 そしてもう一本の光線は春日 啓一(ka1621)へと向かっていた。しかし光線が一瞬の内に迫っても彼はスピードを落とさない、むしろますます加速していた。
「トマーゾが何を考えてるのかは知らねえ、だが確かなのは戸惑い立ち止まったらルビーは助けられねえ、それだけだ」
 彼のその言葉通り迷いはなかった。加速しながら身をかがめる。頭上を光線が通り抜ける。髪の毛をかすったかかすらないか。だが、春日は完全に見きっていた。文字通り手が届く位置を目指して走る。
 一方右に展開していた仙堂 紫苑(ka5953)の先には、対象的に最小限の装備に身を包んだオートマトンが居た。
「エバーグリーンが滅びた原因の半分がオートマトンにある、か」
 仙堂は近づきながら教授の言葉を思い出していた。
「星の命を削る人間が、害悪として攻撃対象になっちまったってとこかな。……俺の精霊も怒りそうな扱いだもんな」
 そんな風に推測しつつも、彼は己の目的のために動く。彼が銃の引き金を引けば弾丸が銃声と共に放たれオートマトンへと向かっていく。しかしその一発は軽い動きでかわされてしまった。こちらは素早さを武器にしているようだ。
「ギアブレイドの初実戦導入。相手は申し分ねえな」
 そこで仙堂は一瞬溜めて足裏からマテリアルを噴出した。その反動に押し出され高速で移動しながら、彼は銃を“引き伸ばす”。するとそれまで銃だったものが厚手の刃を持つ剣へと形を変えていた。
 その後ろではメアリ・ロイド(ka6633)が突っ立っていた。クールで鉄面皮な彼女は仙堂の背中が遠ざかっていくのを見ながら少し意識を集中する。するとカチリという幻聴が一瞬聞こえ、彼女のブロンドの髪がふわりと浮かぶ。普段の彼女を知るものなら驚くであろう顔に代わり、その言葉にも感情がたっぷり込められていた。
「相当うるせー……壊れた機械はメンテナンスが必要……つわけで、荒療治でオケ?」
 そして彼女も足裏からマテリアルを噴出しながら飛び出した。

 ハンター達が左右に分かれた頃、メルはそのまま少女型オートマトン、の中に居るであろうカスケードに話しかけていた。
「この世界はオートマトンによって滅亡した、らしいじゃないか。それが知りたくてね」
「さっすがオマヌケちゃん、なーんもわかってないんだなあ!」
 そのままそのオートマトンは腕につけられたライフルを構える。
「いくらバカでも見りゃわかんだろ! オートマトンはお前らの敵なんだよ!」
 そのオートマトンは凶悪な表情を取ったかと思うと、ライフルを斜め上に向ける。続けて聞こえる何十発という銃声。すると放たれた弾丸はこの部屋の中を上下に反射しながら、メル達の元へと一瞬で迫り来る。
 乱反射した弾丸の雨にさらされるメル達。そのうち一発が彼女の腕を貫き、血の花を咲かせる。
 一方その横に居たアルマ・A・エインズワース(ka4901)は盾で弾丸を受け止めきっていた。
「トマーゾ先生が『とってこい』って言ったですからね。僕、たくさん頑張るですー」
 そのまま彼は前へと進み出る。
 しかし跳ね返った弾丸は回り込むように他の者達にダメージを与えていた。ギリギリで防御が間に合った央崎 遥華(ka5644)だが、掠めた弾丸が彼女の太ももから血を滲ませる。
 一方パトリシア=K=ポラリス(ka5996)は間に合わなかった。弾丸がまともに彼女の胸をえぐっていた。急に視界が霞む。ともすれば何処かへと行ってしまいそうな彼女の意識。だがそれは柔らかな光と共に引き戻された。
「まだオネンネするには早いぜェ?」
 声の方向を見ればそこにはシガレット=ウナギパイ(ka2884)が居た。彼は仲間を守り終えると後を託し、アルケミストへの方へ向かって走り出す。
 一方体勢を立て直したパティは改めて遥華とイェーガーに向かい合っていた。
「……ところで、カチャカチャ騒がしい声が聞こえるんですが。カスタネットさんでしたっけ?」
 遥華は傷を確認した所で、カスケードが飛び乗るオートマトンに向けて意識を集中する。すると光の矢が生まれそれが一直線にオートマトンに向けて飛んでいき、肩口の辺りに刺さっていた。
 一方パティは左側を向いていた。そこには仙堂達が立ち向かっていたオートマトンが居た。その足元辺りを目掛け、彼女は符を一枚抜き投げ放つ。それが地面に貼り付くと程なくその符の姿は消えてしまった。しかし、これは彼女が仕掛けた伏線の一手だった。


 光線を放ったアルケミストは装甲パーツの付いた腕を水平に突き出し拳をこちらに向ける。次に放たれる攻撃がざくろには読めた。彼はマテリアルの反動を使って急加速すると盾で抑えようとした。しかしそれは間に合わなかった。彼の目の前で扇型に炎が吹き出される。
 ざくろはとっさに盾を掲げて噴射口を押さえつけようとする。盾に直撃した炎による熱波が彼を襲い、回り込むように向かってきた炎が体を焼く。炎の勢いは強い。メルはカスケードと会話している隙に彼らにマテリアルの力を注いでくれていたが、それでも盾一枚で全てを抑えきる事は出来ない。自身だけでなく、周囲にいる味方にも被害が出る。
 特に腕のあたりに巻き付くように炎を浴びた八島の被害は大きかった。高熱のダメージに思わずヨロヨロと歩いてしまう。
 そんなおぼつかない動きの彼の背中を突如現れた褐色の手が押さえる。その手は彼に触れたかと思うと強く、それでいて柔らかく光り急速に火傷を癒やしていった。
 その手の持ち主はシガレットだった。彼自身も炎に包まれていたのだが、その身につけたジャケットが彼のダメージを随分と緩和していた。自分の傷は大した事がない。ならばやるべきことがある。彼の祈りからもたらされる光に包まれた八島の身体はすっかり癒やされていた。その二本の足で再び力強く地面を踏みしめ、飛び出すその様子を見て安心したシガレットは次の場所へと向けて走り出す。
 一方マテリアル噴射を用いて一気に軽装のオートマトン――グラップラーに接敵した仙堂は斬りかかる。
「オートマトンの戦闘能力が高いのは前回で把握済み。仲間が来るまで耐えるとするか」
 鋭い縦の剣撃、それを体を少し横に傾けてかわすグラップラー。
 だがかわした瞬間その体が電撃に包まれた。別の方向から接近していたメアリが関節、その一点目掛け電撃を放っていた。とっさに受けの構えを取るグラップラーだったが、電撃は受けた腕からそのまま全身へと広がる。
 しかし電撃がグラップラーにまとわりついたのはほんの一瞬のことだった。すぐに電撃は彼女の体から弾かれ四散する。それを確認したメアリは逆方向に噴射し飛び退く。無理な深追いは禁物だ。
 対して仙堂は接近戦を挑み続けていた。彼が狙っていたものは四肢を破壊しての無力化。その為には近い間合いで剣を用いたほうがいいという判断だった。だがこのグラップラーにとって腕の届く範囲は自分の間合い。強烈なボディブローがねじ込まれる。
「こいつの性能はどんなもんかな」
 それを仙堂は両手で受け止めていた。衝撃が腕を通して全身に伝わるがその威力の殆どを殺していた。問題はない、はずだった。
 その一撃は伏線だった。本命の拳が顔面に飛ぶ。それに受けは間に合わなかった。脳を揺らされた仙堂の体が崩れ落ちる。
 グラップラーは倒れた仙堂には目もくれず、メアリに迫ろうとする。だが彼女が脚を踏み出した時、突然その動きが止まった。
 そこにはパティが仕掛けた符があった。グラップラーの強い踏み込みに突然固かったはずの床が沈み込みその足を縛る。
 このチャンスを使ってメアリが攻める。もう一度噴射の向きを変えグラップラーに一瞬で近づくと彼女の手から光の剣が生み出され、一撃を喰らわせる。そのまま勢いを止めず駆け抜けて間合いを取り直した。

 パティは怒っていた。オートマトンを敵だというカスケードの言葉にだ。
「そんなダカラ、お友達いないのヨー? ずっと一人なのヨ?」
「わかってないねー、おめーらの基準で考えんなよ。んなことどっちだっていいだろ?」
 頭をツンツンとやって馬鹿にするカスケード。
「オートマトンは言われたことをやることしか出来ないわけ。つーわけで俺っちが『お前らを殺せ』って命令したらこうなるわけよ。道具に勝手に愛情抱いて何考えているわけ?」
「オートマトンさんにも『心』があるですよ。だったら……」
「ねぇよバーカ」
 アルマの言葉にカスケードは操るオートマトンの弾丸で答えた。青白い弾丸が一直線に飛び彼の腕をかすめる。文字通りのかすり傷。だが負のマテリアルが込められた弾丸が付けた傷口から急速に体温が奪われていく。
「僕、悪いのはじゅってしますけど、おともだちはじゅってしたらダメですー」
 それを補うかのように、彼の左胸には蒼い炎が浮かび上がった。そして青い光が現れ一度浮かび上がったかと思うと、そのまま三方向、それぞれのオートマトンへの元へと飛んでいった。
 しかし負のマテリアルが影響したのか、その光線は目標を逸れ空を切る。
「だって、僕らと『おうち』に帰ってちゃんとすればおともだちになれますよね?」
 それとも破壊しつくす事を求めない彼の心が手元を狂わせたのだろうか。


 八島は盾を掲げ、前へ前へと進んでいく。そして盾の後ろで剣にカードリッジを差し込み操作する。機導術を利用した浄化の技だった。不完全な形の歪虚化ならこれでもとに戻すことが出来る、そのはずだった。
 だが動作が始まってもカードリッジに邪は吸収されてこない。何も起こらない。
「だーかーら、言ってるじゃーん。こいつらはオマヌケちゃん達の味方で今は操られてるとかじゃねーの。こいつらは単に俺っちの命令に従って動いているだけ。命令系統を俺っちが掴んでるんだからもうそっちにどうこうすることは出来ないんだって。アッヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 代わりに向けられたのはカスケードの小馬鹿にするような高笑い。そして殺意だった。カスケードが居るであろうその銃を持つオートマトンは銃口を今度は八島の方に向ける。

 メアリはグラップラーと対峙していた。決して近寄らせないように、それを意識して動く。もう一度噴射して飛び出す彼女。駆け抜ける瞬間に一撃を加える。
 だが、ここでグラップラーは己を縛っていた結界から脱出してみせた。それと同時に驚異的な加速でメアリに襲いかかる。背後から必殺の一撃を入れられれば助からない……。
「よそ見すんな、ボケが」
 しかしグラップラーの体は突如として横に吹き飛ばされた。そこに立っていたのは倒されたはずの仙堂だった。意識だけを綺麗に飛ばす一撃は、意識を取り戻せば再び動けることを意味していた。

「行けるかァ?」
 シガレットの言葉と共にアルマの体は急に楽になった。負のマテリアルの影響があっという間に消えていく。
 そしてシガレットはオートマトン達に向けて叫ぶ。
「やり直したいだとか今も利用されてばかりで悔しいとか感情はないのか? 自らの意思で立ち上がってみせよ! 今こそ反逆のときなんだぜェ」
「だからねぇよ!」
 そんな彼の言葉はカスケードがすぐさま否定する。
「そういうアホ臭い感情論はやめてよ、字幅も無いんだしさあ! アッヒャヒャ……」
 だが上げようとした高笑いは青い光線が頭部を撃ち抜いたことで消えた。ついでに言えばグラップラーの片脚も綺麗に光線により撃ち抜かれ消え去っていた。
「わふぅ。あんまりやると先生の所にお連れできないですー」
 アルマのその光線は一瞬でオートマトン達をガラクタへと変えていた。自分のしたことを見ても、彼は未だ無邪気に反応していた。


「人が話しているときにいきなり何すんだよ!」
 その耳障りな声が再び聞こえてくる。反響で方向を掴みにくいその音をパティは耳をそばだてて聞いていた。今カスケードがどこに居るかわかる。
 その時聞こえた場所に居たアルケミスト、否カスケードを射程に収めた春日が動いた。その拳にマテリアルを集める。さらに限界を超えて集められたマテリアル、命をも削ってそれは拳にまとわれた。そして彼は真っ直ぐそれを眼前のオートマトンへと叩き込んだ。
 腕の透明なシールドが展開されそれを防ぐ。しかし一瞬たわんだかと思うと、限界を超えるエネルギーにその盾は粉々に砕け散り拳は確かに届いた。
 ダメージを喰らいたたらを踏むアルケミスト。しかし彼女はもう一度拳を水平に突き出し炎を噴射する。だが、それが噴出される瞬間今度は横に回り込んでいたざくろが拳に構えた盾ごと体当りした。それで噴射口は横に逸れる。
「待っていて、ルビー。もうすぐ起きる時間だからね!」
 そこに遥華とパティが二人で攻める。二人はタイミングを合わせ、遥華の詠唱が完成する瞬間にパティが符を五枚、五角形の頂点へと目掛け投げる。
 投げられた符が五芒星を描き、光が通り次の瞬間五色の閃光が乱れ飛ぶ。
 そこには一発拳を叩き終えたばかりの春日が居た。炎が迫る。だが今の彼にはこの炎は攻撃のタイミングを教えてくれるものでしか無かった。
「なぁ? お前らなぁに無駄なことやってんだ? どうせ俺っちは倒せないのによ」
 趣味の悪いカスケードの言葉に春日は怒りを投げ返した。
「俺は俺が決めた約束を違えねえために戦うんだよ!」
 炎に体を焦がされながらも大きく踏み込むとそのまま、その拳ががら空きの顔面にねじ込まれた。防ぐ術などどこにもなかった。大爆発が起きたような轟音が消えた後には頭部を文字通り叩き潰されたオートマトンの残骸が残っていた。


「さて、カスケード君」
 戦闘能力を奪われ転がるグラップラー――の中に入ったカスケードにメルが話しかける。
「意外と君とは話が合いそうだ。道具は使う者次第というのは同意するよ」
「お、話わかんじゃーん。守護者のオッサン以来か?」
「守護者……トマーゾ教授の事?」
「そうだぜ! まあ良かれと思って作ったオートマトンがあんな事になっちまって世界が滅んだらそりゃそうなるよな!」
「ああもう、べらべらうるさい、研究の過ちとか世界の滅びとか、そんな希望の無い話は欠片も聞きたくない! 黙ってろ」
「聞いてきたのはそっちじゃーん! アッヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 ざくろの怒りを無視し饒舌に語るカスケード。
「まあそういうわけでオートマトン復活、お前らの味方にという感動ストーリーはここでオシマイ! 諦めが肝心だぜ? じゃーな!」
 それでグラップラーは何も言わなくなった。後には人形の残骸と沈黙が残る。
「……でもネ、パティは知ってるカラ。オートマちゃんと、お友達になれるって」
 沈黙を破るパティの言葉。詳しいデータの収集はこれからだが、この時点でメルも、他の皆も理解していた。何故エバーグリーンが滅びたのか、そしてエバーグリーンの人々が犯した“過ち”が何だったのかを。
 メルはその事を報告書を通して教授にぶつけよう、そう覚悟していた。

依頼結果

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MVP一覧

  • 「ししょー」
    岩井崎 メルka0520
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイka2884
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワースka4901
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリスka5996

重体一覧

参加者一覧

  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 真実を見通す瞳
    八島 陽(ka1442
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 破れず破り
    春日 啓一(ka1621
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 紫煙の守護翼
    シガレット=ウナギパイ(ka2884
    人間(紅)|32才|男性|聖導士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 雷影の術士
    央崎 遥華(ka5644
    人間(蒼)|21才|女性|魔術師
  • 大局を見据える者
    仙堂 紫苑(ka5953
    人間(紅)|23才|男性|機導師
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師
  • 天使にはなれなくて
    メアリ・ロイド(ka6633
    人間(蒼)|24才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
仙堂 紫苑(ka5953
人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/05/20 07:52:12
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/19 20:38:56
アイコン 相談卓
パトリシア=K=ポラリス(ka5996
人間(リアルブルー)|19才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2017/05/24 00:29:52