ゲスト
(ka0000)
【黒祀】一夜城を守り切れ!
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/28 15:00
- 完成日
- 2014/11/03 00:54
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●数日前のある築陣現場にて
陽が傾いてきた。美しい夕日だが、夕日に見惚れている者はいない。
少しでも早く陣地を築く為に、休む間もなく作業しているのだ。
「おい、この前は大変だったんだって?」
大きな柵を作業員が二人がかりで支えており、そのうちの一人が隣の作業員に話しかけた。
「そうなんだよ。夜明けから作業しようと思ったら、雑魔の襲撃よ」
柵の重さに耐えながら作業員が応える。
丸太を何本も並べただけなのだが、相当な重さがある。
それでも、雑魔の強烈な一撃であっという間に壊される場合もあるのだ。一般人が到底相手にできる存在じゃない。
「夜明けか。明日あたり来たりな」
「やめてくれよ……後少しで築陣が終わるのによ」
軽口のつもりだったが、なにか予感の様な雰囲気もあった。
そして、それは不幸にも的中した。
作業員達は、後少しで完成するはずだった陣地が壊されるのを見ながら、雑魔の襲撃から逃げる事になったのだった。
●王都イルダーナにて
伝令の兵士が慌ただしく走り回っていた。
兵舎の一角のある部屋で、兵士からの報告に落胆する1人の男。
「また……失敗だと……」
騎士の様だが、戦えるのかと思うほど、痩せた体格だった。
「このままだと、怒られるだけでは済まなくなる……」
痩せた騎士には、ある任務があった。
王国西部の砦「ハルトフォート」。
ここの戦略的価値は言うまでもない。ここを抜かれれば、王都防衛が危うくなる。
その為、戦力が集められるのは当たり前なのだが、人が集まるという事は、色々な物資が必要になる。
武具の類はもちろん、補修用の資材、医薬品、大量の食糧等。
その為、砦の維持には兵站補給路の確保は欠かせない大事な事であり、神出鬼没する雑魔へ対抗する為や予備備蓄の為には、陣地が必要だった。
痩せた騎士は、新たな連絡線確保のための陣地の一つを築陣する任務を与えられ、二度失敗していた。
●考える騎士
「各地で出没する雑魔への手配でどこも人不足。まして、貴重な戦力を前線ではなく後方支援に割り当ててくれるわけもないか」
机に突っ伏す。
彼は親や兄の跡を継いで騎士になった。親も兄も、5年前の歪虚との戦いで戦死している。
実戦など経験した事もない。
「や、やはり、わ、私自ら、せ、戦場に……」
恐怖でガタガタと手が震える。
これで騎士というのだから、親や兄に顔向けできない。
「か、考えるんだ。なにか方法があるはずだ」
陣地を立てる前に、雑魔が襲撃してくるのだ。
歪虚側から見れば、補給路の破壊は砦の戦力を削ぐ為のに、有効な手段の一つだ。
「護衛に沢山の兵士を当てられる余裕はないし、かと言って、貴重な戦力であるハンターを陣地ができるまでの長時間居てもらうわけにも……」
突っ伏した顔をあげる。
そこには、ティベリス河が見えた。
この大河は、ハルトフォート砦を越え、海まで続いている。
●転移者が残した助言
「……」
ふと、かつて、転移者が残していった書物の内容を思い出した。
文官肌の彼は、小さい頃から色々な所に行っては、様々な本を読んでいた。
その中でも大好きだったのは、転移者が書き残していった書物。
「確か、一夜にして、城を建てたという話があったな」
陣地を作るのにも、数日間はかかるというのに、一夜で城が建つのだ。
夢の様な話だが、彼はその内容を思い出し、急に席を立ちあがる。
「そうか! 陣地に必要な柵を筏代わりにして、そこに他の資材を乗せて、川を下れば……」
慌てて地図を広げる。
陣地に適した場所はないか確認する為だ。
ただの川沿いにあれば良いというものではない。街道の位置や地形が防御に適しているかというのも大事である。
「あった。ここなら、陣地を作れる!」
思わずガッツポーズ。
陣地ができるまでの間、ハンターに護衛してもらえればいい。
「さっそく、準備に取り掛からないと!」
痩せた騎士は部屋から飛び出していった。
陽が傾いてきた。美しい夕日だが、夕日に見惚れている者はいない。
少しでも早く陣地を築く為に、休む間もなく作業しているのだ。
「おい、この前は大変だったんだって?」
大きな柵を作業員が二人がかりで支えており、そのうちの一人が隣の作業員に話しかけた。
「そうなんだよ。夜明けから作業しようと思ったら、雑魔の襲撃よ」
柵の重さに耐えながら作業員が応える。
丸太を何本も並べただけなのだが、相当な重さがある。
それでも、雑魔の強烈な一撃であっという間に壊される場合もあるのだ。一般人が到底相手にできる存在じゃない。
「夜明けか。明日あたり来たりな」
「やめてくれよ……後少しで築陣が終わるのによ」
軽口のつもりだったが、なにか予感の様な雰囲気もあった。
そして、それは不幸にも的中した。
作業員達は、後少しで完成するはずだった陣地が壊されるのを見ながら、雑魔の襲撃から逃げる事になったのだった。
●王都イルダーナにて
伝令の兵士が慌ただしく走り回っていた。
兵舎の一角のある部屋で、兵士からの報告に落胆する1人の男。
「また……失敗だと……」
騎士の様だが、戦えるのかと思うほど、痩せた体格だった。
「このままだと、怒られるだけでは済まなくなる……」
痩せた騎士には、ある任務があった。
王国西部の砦「ハルトフォート」。
ここの戦略的価値は言うまでもない。ここを抜かれれば、王都防衛が危うくなる。
その為、戦力が集められるのは当たり前なのだが、人が集まるという事は、色々な物資が必要になる。
武具の類はもちろん、補修用の資材、医薬品、大量の食糧等。
その為、砦の維持には兵站補給路の確保は欠かせない大事な事であり、神出鬼没する雑魔へ対抗する為や予備備蓄の為には、陣地が必要だった。
痩せた騎士は、新たな連絡線確保のための陣地の一つを築陣する任務を与えられ、二度失敗していた。
●考える騎士
「各地で出没する雑魔への手配でどこも人不足。まして、貴重な戦力を前線ではなく後方支援に割り当ててくれるわけもないか」
机に突っ伏す。
彼は親や兄の跡を継いで騎士になった。親も兄も、5年前の歪虚との戦いで戦死している。
実戦など経験した事もない。
「や、やはり、わ、私自ら、せ、戦場に……」
恐怖でガタガタと手が震える。
これで騎士というのだから、親や兄に顔向けできない。
「か、考えるんだ。なにか方法があるはずだ」
陣地を立てる前に、雑魔が襲撃してくるのだ。
歪虚側から見れば、補給路の破壊は砦の戦力を削ぐ為のに、有効な手段の一つだ。
「護衛に沢山の兵士を当てられる余裕はないし、かと言って、貴重な戦力であるハンターを陣地ができるまでの長時間居てもらうわけにも……」
突っ伏した顔をあげる。
そこには、ティベリス河が見えた。
この大河は、ハルトフォート砦を越え、海まで続いている。
●転移者が残した助言
「……」
ふと、かつて、転移者が残していった書物の内容を思い出した。
文官肌の彼は、小さい頃から色々な所に行っては、様々な本を読んでいた。
その中でも大好きだったのは、転移者が書き残していった書物。
「確か、一夜にして、城を建てたという話があったな」
陣地を作るのにも、数日間はかかるというのに、一夜で城が建つのだ。
夢の様な話だが、彼はその内容を思い出し、急に席を立ちあがる。
「そうか! 陣地に必要な柵を筏代わりにして、そこに他の資材を乗せて、川を下れば……」
慌てて地図を広げる。
陣地に適した場所はないか確認する為だ。
ただの川沿いにあれば良いというものではない。街道の位置や地形が防御に適しているかというのも大事である。
「あった。ここなら、陣地を作れる!」
思わずガッツポーズ。
陣地ができるまでの間、ハンターに護衛してもらえればいい。
「さっそく、準備に取り掛からないと!」
痩せた騎士は部屋から飛び出していった。
リプレイ本文
●見張り
慌ただしく築陣が始まった。
現地は既に暗く、兵士達は適当に掘った穴の中に灯りを入れる。
少しでも光源が目立たない様にして築陣を行う為だ。
ハンター達からのお願いもあり、築陣は外周の柵作りから行われている。
そして、ハンター達は、自分達の荷物と共に、事前にお願いしておいた諸々の資材などを降ろすと、それぞれ決めた持ち場に就くのであった。
シガレット=ウナギパイ(ka2884)が突貫工事の騒がしさを聞きながら、
(一夜城ねェ……リアルブルーで最初に思いついた人間はどういう神経してるんだろうなァ)
と思っていた。一夜で城を立てるという発想はどこから出てくるものなのか。
そして、実際にそれを真似しようとしている依頼主も。
足止めになればと、トラバサミをいくつか用意してきた。
後は、いつ、雑魔の襲来があるかだが、持久力には自信がある。できれば、襲来より先に陣地が完成していれば尚、良いが。
「交代の時間です」
明るい声で現れたのは、エリー・ローウェル(ka2576)だ。
黒い布を築陣の周囲に敷いてきた。相手の能力は解明されていないが、羊っぽい特性があるのではないかと思っての事だ。進攻の妨げになればよし。
シガレットが応え、まだ設置していないトラバサミを持って持ち場を交代する。
「C地点。見張り交代しました」
トランシーバーで仲間達に伝える。
築陣の状況やら、設置した黒い布の事やら、仲間の仕掛ける罠の事やら、色々と発言したり訊いたり、より連携を図る。
(ハンターとしてのはじめてのお仕事……緊張もしますけど、頑張ります)
そんな考えをしながら、周囲の暗闇の中で、動く気配がないか注視しながら見張りを続けるのであった。
「まさか我が故国から遠く離れたこの世界で、一夜城伝説の再現を見る事ができるとはな……」
久延毘 大二郎(ka1771)が感慨深く呟く。
そして、その伝説の再現に立ち会えるかどうかの重要な役目を自分が負う事になろうとは。
築陣からやや離れた場所に穴をいくつか掘っていく。
単純な落とし穴だが、築陣の廃材や土嚢のバリケードと組み合わせる事により、進攻の障害になる。
トランシーバーからエリーの明るい声が聞こえた。
今回の作戦の為に、全員がトランシーバーを用意している。真夜中を過ぎるまで2人一組の班編成で、築陣の周囲を見張っているからだ。
(僕らは兵士でもある技術者じゃない。戦うための兵器に誰よりも精通した兵士だ。コンバットエンジニアの役割はしっかり果たすよ)
アルファス(ka3312)が窪みで伏せながら注意深く、持参したゴーグルで周囲を監視する。
音や匂いにも気を配ったり、見上げる様に周囲を確認し、まさしく技術と五感の全てを使う。
構えている猟銃にはライトが固定してあった。
到着して早々、割り当てられた地点で、簡単ではあるが、銃架を作った。
次の交代時には、落とし穴を作っていくつもりである。
穴の中に設置する杭も兵士達の協力もあり用意できた。
(必ず帰還するよ)
身につけている腕輪に、アルファスは誓いを立てた。
リーザ・ウォーマック(ka3396)が猟銃のハンドガードにライトを括りつけている。
(ふふ……私もようやく、あの人と同じように……)
そんな事を思いながら、築陣の周囲を見渡す。
完全な暗闇ではない。月や星がぼんやりと周囲を明るくしていた。
それは、築陣の灯りも目立つ事ではない事を意味している。
真夜中を過ぎるまで2人一組の3編成。その後は、3人一組の2編成。見張り以外の時間は各自罠や障害物を設置……とリーザは作戦を再確認した。
「……妙な胸騒ぎがする……俺の思い過ごしならいいが……」
見張りに立ちながら、リック=ヴァレリー(ka0614)が呟いた。
依頼主は2度築陣に失敗しているという。しかも、同じ様な歪虚に襲われて。
きっと、今回も来る。そんな予感をしていた。
「こちら、A班。異常なし」
定期連絡をトランシーバーを通じておこなう。
他の班からも異常がない連絡が届く。次の定期連絡時刻は……とリックは確認した。
●(続)見張り
夜明けが近くなってきた。東の空が明るい中、築陣は休む事なく進められている。
2人3班体制から、3人2班体制に再編成した。遊撃班として、久延毘とシガレット、そして、リーザが陣地から程近い場所で待機していた。
「結構、罠を設置しましたね」
ハンター達がそれぞれ用意した罠の数や位置をまとめたメモを見ながら、リーザがそんな感想をついた。
「襲来が予想されるしなァ」
シガレットが陣地の方を見ながら、そんな台詞を言った。
陣地の外側は作業が終わった様で、柵や堀が出来ている。
更に陣地の周囲には、ハンター達が仕掛けた罠や障害物が置いてあった。
「リアルブルーで、一夜城伝説を成し遂げた人物は、これを皮切りに出世を重ねて最終的に一国の主となった」
まるで、教壇に立っているかの様な身振りと口調の久延毘。転移前は考古学・民俗学を学んでいた。
「どこかで聞いた事あります。農民から王になったと」
リーザが懐かしそうな表情を浮かべる。
「その軌跡を辿るなら……クク、依頼人の騎士氏の今後が楽しみだ」
「あの、細っこい騎士か?」
久延毘の言葉に、シガレットが依頼主の騎士を思い出す。
金属鎧を着たら、重さで動けなくなるんじゃないかという位、細い体だった。王には……ならなそうな印象だった。
警戒班のリック、エリー、アルファスはそれぞれの持ち場で見張りを続けていた。
「そちらから、見えますか?」
緊張したエリーの言葉がトランシーバーから聞こえていた。
「残念だが、俺の方からじゃ地形のせいで見えないぜ」
リックが応答した。
エリーが、なにか動いたという方向は彼がいる位置からでは見えない。
「僕は今、確認した……けど、これは……」
ゴーグルで覗きこんだ先に、人影の様なものが見えた。
人影だが、明らかに違うのは、頭の位置らしき場所から、なにか生えている。
直後の事だった、その人物が消え去ると、半人半羊型の雑魔が現れた。
「来ました。南西の方角から、6体です」
冷静にトランシーバーで仲間に連絡する。
「目撃された数と一緒だな。急いで、そちらに向かう」
「足止めに行きますね!」
リックとエリーからの応答。遊撃班からも急行する旨の連絡が入る。
アルファスは、覚醒状態に入ると、マテリアルを魔導機械を通じて自身に流入させた。
簡易銃架から伏射にて、雑魔を狙撃するつもりなのだ。
●歪虚襲来
半人半羊型の雑魔6体が、横一列になって、がむしゃらに陣地に向かって走ってくる。
「コケメェ~」
鶏と羊の鳴き声を合わせた様な叫び声をあげている。
突然、3体程が派手に地面に転がった。罠に引っ掛かったのだ。
しかし、残りはそんな事に気にもせず、突撃してくる。
そこへ、アルファスが放った銃撃が1体の雑魔の足を貫通した。無様にバランスを崩し頭から地面に激突した。
気合いの掛け声と共に、自身の身長と同じ位の大剣をエリーが振るう。
「あれれ?」
勢いをつけて走って来た雑魔は、彼女の攻撃を跳躍して避けると、そのまま、陣地に向かって走り出す。
その様子は、到着した遊撃班のハンター達にも見えた。
「無粋な……君達は城攻めに来た足軽役だろう? せめて胴丸だけでも着て出直してきたまえ」
久延毘がそんな事を口にしながら、石つぶての魔法を突進してくる雑魔の1体に放つ。
「そう言えば、どんな風に襲ってきたのか、兵士達に聞かなかったなァ」
シガレットが、エリーの攻撃を避けた雑魔に銃撃する。
十分に作戦を練っていても、戦場とは全てが万全とはいかないものだ。
「足らなかった分は、実力で補うだけです」
マテリアルを強く込めた銃撃が、雑魔を撃ち抜いた。
シガレットの持つ盾が淡く光だすと、彼は遊撃班の中で前に進みだす。
一方、罠にかかった3体は体制を整えると、陣地に向かって走り出してきた。
その進路上に、立ちはだかるエリー。
「援護します」
トランシーバーからアルファスの声が響くと同時に、1体が転倒する。
たまたまそこに罠があったのか、頭から落とし穴にハマった。
残り2体は進路上の邪魔になっているエリーを敵と認識したようだ。棍棒を振り回して攻撃してきた。
「これが……歪虚の力……」
猛攻は、しっかりと守りを固めたエリーの防御を容易く越えて、彼女にダメージを与える。
あまり長くは持たないかもしれないと、彼女は思った。だが、ここで退けば、遊撃班を越え、陣地に殺到するだろう。
「だから……いつもと同じように守るために斬るだけです!」
防御から返す刀で、大剣を振るうエリー。
最初にアルファスの銃撃で転倒した雑魔は立ち上がると、コケメェ~と叫びつつ、簡易銃架に向かって突進してくる。
しかし、気にもせず、前線のエリーを援護する。彼女と雑魔の戦いは、数の上でも力量でも、一人で戦わせるわけにはいかない。
そして、目の前に迫る雑魔は、仲間が間に合うと予測しているからだ。
その予想通り、簡易銃架の前に、金髪緑眼の青年が颯爽と現れる。
「作ったばっかりの物を壊そうなんて野暮ってもんだぜ!」
リックは金色の光が体中に纏い、覚醒状態に入る。
突進してくる雑魔を盾で受け止め、剣を雑魔の足に突き出した。
「リック1体。エリー3体。遊撃班2体です」
アルファスがトランシーバーで全員に状況を連絡する。
「ここは、火力を集めた方がいいですね」
「その様であるな」
リーザと久延毘が射撃と魔法を同じ目標に向かって放つ。
彼女の持つの銃に付けたLEDライトの光が眩しかったのか、よろめく。
そこに、シガレットが魔導拳銃の銃口を雑魔の額に付きつけて撃った。
雑魔はボロボロと崩れていく。
もう1体がシガレットに棍棒の様な物を振りかぶってきたが、それを盾で受け流すと、態勢の崩れた所に、至近距離から銃撃を加えた。
「ここと、リック君の所は僕達に任せて、シガレット氏はエリー君の所へ」
リーザの銃撃に合わせ、炎の魔法を使用した久延毘が声をかけた。
「行かせてもらうぜェ」
経験を積んだハンターが3人がかりで倒せる相手だ。
アルファスの射撃の援護を受けているとはいえ、苦戦しているに違いない。
その予想通り、エリーは苦しい戦いを繰り広げていた。それでも、3体を引きつけていたのは称賛に値する。
的確な射撃の援護がある事、そして、防御重視という事が、命を繋いでいたかもしれない。
シガレットが彼女と雑魔の間に入った時に、エリーは片膝をつく。
「よくやったなァ」
回復をエリーに向けた。
口調は悪いが、優しく柔らかいマテリアルの光が、彼女を包む。
そんな様子を裂く様に、雑魔が攻撃を繰り出してくるが、アルファスの射撃で棍棒がはじけ飛んだ。
他2体がシガレットに棍棒を振るうが、1体目の攻撃を盾で受け止めた衝撃を利用し、横に軽くステップして、2体目の攻撃を避ける。
アルファスの援護を受けながら、シガレットの拳銃が火を噴いた。
棍棒がはじかれた雑魔がエリーに向かって突進してくる。
大剣で防御しようとしたが、膝がカクンと折れてしまう。
そこへ、簡易銃架近くに来た雑魔を倒したリックが滑り込むと、雑魔の突進を受け流した。
「っ……なかなか痛ぇな……大丈夫か?」
間に合って良かったぜと続けると、剣を構える。
エリーはお礼を言いながら、立ち上がり、大剣を構える。
2人の剣先は、突進が失敗して地面に転がった雑魔に向けられていた。
こうなると形勢逆転だ。
リックとエリーの剣で貫かれて塵となっていく雑魔。
後衛3人が同時に放った魔法と射撃で、シガレットと対峙している1体が消し飛ぶと、最後に残った雑魔は、シガレットの拳銃が急所を叩きこまれる。
「コケメェ~」
叫び声をあげて、雑魔は崩れていなくなった。
●夜が明けて
アルファスが黙々とトラップを片付けていく。
雑魔の襲撃があっても、陣地自体の防御力で対応可能だろう。不必要な罠はかえって邪魔になる。
「罠とかばらまきすぎちゃいましたね……あははは、わ、私片付けてから帰りますね!」
エリーが笑顔で言った。
確かに、彼女の言う通り、至る所にハンター達が設置した、罠や穴等が見える。
効果があった罠も使われなかった罠もあるかもしれない。けど、それは偶然使われなかっただけで、意味はあったはずだ。
「俺も手伝うぜ」
リックが陣地からスコップを借り、笑顔を浮かべた。
2人はそれなりにダメージを受けていたが、シガレットがある程度回復させていた。
一服しながら、彼は持ってきたトラバサミを解体していく。
その横で、久延毘が完成した陣地を眺めていた。
「一夜城の伝説、ここに成るか」
そんな事を呟く。
確かに、陣地は完成していた。二重の堀と、柵、そして櫓等は小さい城と言っても過言はないだろう。
「良い経験であった」
リーザが一人、西の方角を見つめていた。
「こんな程度じゃ、まだまだ足りないわ……」
銃を構える。
と、構えた、ずっと先に、一人の影が見えた。
「あれは……」
戦闘後にアルファスから聞いた、『襲撃前に見えた人影』を思い出す。
その影からは敵意が感じられた。仲間を呼ぼうとした次の瞬間、その影はいなくなった。
「まだ、戦いは終わってないって事ね」
彼女の台詞通り、歪虚との戦いは、まだまだ続く事になる。
ハンター達は完成した陣地を後に、王都へ帰還するのであった。
おしまい。
慌ただしく築陣が始まった。
現地は既に暗く、兵士達は適当に掘った穴の中に灯りを入れる。
少しでも光源が目立たない様にして築陣を行う為だ。
ハンター達からのお願いもあり、築陣は外周の柵作りから行われている。
そして、ハンター達は、自分達の荷物と共に、事前にお願いしておいた諸々の資材などを降ろすと、それぞれ決めた持ち場に就くのであった。
シガレット=ウナギパイ(ka2884)が突貫工事の騒がしさを聞きながら、
(一夜城ねェ……リアルブルーで最初に思いついた人間はどういう神経してるんだろうなァ)
と思っていた。一夜で城を立てるという発想はどこから出てくるものなのか。
そして、実際にそれを真似しようとしている依頼主も。
足止めになればと、トラバサミをいくつか用意してきた。
後は、いつ、雑魔の襲来があるかだが、持久力には自信がある。できれば、襲来より先に陣地が完成していれば尚、良いが。
「交代の時間です」
明るい声で現れたのは、エリー・ローウェル(ka2576)だ。
黒い布を築陣の周囲に敷いてきた。相手の能力は解明されていないが、羊っぽい特性があるのではないかと思っての事だ。進攻の妨げになればよし。
シガレットが応え、まだ設置していないトラバサミを持って持ち場を交代する。
「C地点。見張り交代しました」
トランシーバーで仲間達に伝える。
築陣の状況やら、設置した黒い布の事やら、仲間の仕掛ける罠の事やら、色々と発言したり訊いたり、より連携を図る。
(ハンターとしてのはじめてのお仕事……緊張もしますけど、頑張ります)
そんな考えをしながら、周囲の暗闇の中で、動く気配がないか注視しながら見張りを続けるのであった。
「まさか我が故国から遠く離れたこの世界で、一夜城伝説の再現を見る事ができるとはな……」
久延毘 大二郎(ka1771)が感慨深く呟く。
そして、その伝説の再現に立ち会えるかどうかの重要な役目を自分が負う事になろうとは。
築陣からやや離れた場所に穴をいくつか掘っていく。
単純な落とし穴だが、築陣の廃材や土嚢のバリケードと組み合わせる事により、進攻の障害になる。
トランシーバーからエリーの明るい声が聞こえた。
今回の作戦の為に、全員がトランシーバーを用意している。真夜中を過ぎるまで2人一組の班編成で、築陣の周囲を見張っているからだ。
(僕らは兵士でもある技術者じゃない。戦うための兵器に誰よりも精通した兵士だ。コンバットエンジニアの役割はしっかり果たすよ)
アルファス(ka3312)が窪みで伏せながら注意深く、持参したゴーグルで周囲を監視する。
音や匂いにも気を配ったり、見上げる様に周囲を確認し、まさしく技術と五感の全てを使う。
構えている猟銃にはライトが固定してあった。
到着して早々、割り当てられた地点で、簡単ではあるが、銃架を作った。
次の交代時には、落とし穴を作っていくつもりである。
穴の中に設置する杭も兵士達の協力もあり用意できた。
(必ず帰還するよ)
身につけている腕輪に、アルファスは誓いを立てた。
リーザ・ウォーマック(ka3396)が猟銃のハンドガードにライトを括りつけている。
(ふふ……私もようやく、あの人と同じように……)
そんな事を思いながら、築陣の周囲を見渡す。
完全な暗闇ではない。月や星がぼんやりと周囲を明るくしていた。
それは、築陣の灯りも目立つ事ではない事を意味している。
真夜中を過ぎるまで2人一組の3編成。その後は、3人一組の2編成。見張り以外の時間は各自罠や障害物を設置……とリーザは作戦を再確認した。
「……妙な胸騒ぎがする……俺の思い過ごしならいいが……」
見張りに立ちながら、リック=ヴァレリー(ka0614)が呟いた。
依頼主は2度築陣に失敗しているという。しかも、同じ様な歪虚に襲われて。
きっと、今回も来る。そんな予感をしていた。
「こちら、A班。異常なし」
定期連絡をトランシーバーを通じておこなう。
他の班からも異常がない連絡が届く。次の定期連絡時刻は……とリックは確認した。
●(続)見張り
夜明けが近くなってきた。東の空が明るい中、築陣は休む事なく進められている。
2人3班体制から、3人2班体制に再編成した。遊撃班として、久延毘とシガレット、そして、リーザが陣地から程近い場所で待機していた。
「結構、罠を設置しましたね」
ハンター達がそれぞれ用意した罠の数や位置をまとめたメモを見ながら、リーザがそんな感想をついた。
「襲来が予想されるしなァ」
シガレットが陣地の方を見ながら、そんな台詞を言った。
陣地の外側は作業が終わった様で、柵や堀が出来ている。
更に陣地の周囲には、ハンター達が仕掛けた罠や障害物が置いてあった。
「リアルブルーで、一夜城伝説を成し遂げた人物は、これを皮切りに出世を重ねて最終的に一国の主となった」
まるで、教壇に立っているかの様な身振りと口調の久延毘。転移前は考古学・民俗学を学んでいた。
「どこかで聞いた事あります。農民から王になったと」
リーザが懐かしそうな表情を浮かべる。
「その軌跡を辿るなら……クク、依頼人の騎士氏の今後が楽しみだ」
「あの、細っこい騎士か?」
久延毘の言葉に、シガレットが依頼主の騎士を思い出す。
金属鎧を着たら、重さで動けなくなるんじゃないかという位、細い体だった。王には……ならなそうな印象だった。
警戒班のリック、エリー、アルファスはそれぞれの持ち場で見張りを続けていた。
「そちらから、見えますか?」
緊張したエリーの言葉がトランシーバーから聞こえていた。
「残念だが、俺の方からじゃ地形のせいで見えないぜ」
リックが応答した。
エリーが、なにか動いたという方向は彼がいる位置からでは見えない。
「僕は今、確認した……けど、これは……」
ゴーグルで覗きこんだ先に、人影の様なものが見えた。
人影だが、明らかに違うのは、頭の位置らしき場所から、なにか生えている。
直後の事だった、その人物が消え去ると、半人半羊型の雑魔が現れた。
「来ました。南西の方角から、6体です」
冷静にトランシーバーで仲間に連絡する。
「目撃された数と一緒だな。急いで、そちらに向かう」
「足止めに行きますね!」
リックとエリーからの応答。遊撃班からも急行する旨の連絡が入る。
アルファスは、覚醒状態に入ると、マテリアルを魔導機械を通じて自身に流入させた。
簡易銃架から伏射にて、雑魔を狙撃するつもりなのだ。
●歪虚襲来
半人半羊型の雑魔6体が、横一列になって、がむしゃらに陣地に向かって走ってくる。
「コケメェ~」
鶏と羊の鳴き声を合わせた様な叫び声をあげている。
突然、3体程が派手に地面に転がった。罠に引っ掛かったのだ。
しかし、残りはそんな事に気にもせず、突撃してくる。
そこへ、アルファスが放った銃撃が1体の雑魔の足を貫通した。無様にバランスを崩し頭から地面に激突した。
気合いの掛け声と共に、自身の身長と同じ位の大剣をエリーが振るう。
「あれれ?」
勢いをつけて走って来た雑魔は、彼女の攻撃を跳躍して避けると、そのまま、陣地に向かって走り出す。
その様子は、到着した遊撃班のハンター達にも見えた。
「無粋な……君達は城攻めに来た足軽役だろう? せめて胴丸だけでも着て出直してきたまえ」
久延毘がそんな事を口にしながら、石つぶての魔法を突進してくる雑魔の1体に放つ。
「そう言えば、どんな風に襲ってきたのか、兵士達に聞かなかったなァ」
シガレットが、エリーの攻撃を避けた雑魔に銃撃する。
十分に作戦を練っていても、戦場とは全てが万全とはいかないものだ。
「足らなかった分は、実力で補うだけです」
マテリアルを強く込めた銃撃が、雑魔を撃ち抜いた。
シガレットの持つ盾が淡く光だすと、彼は遊撃班の中で前に進みだす。
一方、罠にかかった3体は体制を整えると、陣地に向かって走り出してきた。
その進路上に、立ちはだかるエリー。
「援護します」
トランシーバーからアルファスの声が響くと同時に、1体が転倒する。
たまたまそこに罠があったのか、頭から落とし穴にハマった。
残り2体は進路上の邪魔になっているエリーを敵と認識したようだ。棍棒を振り回して攻撃してきた。
「これが……歪虚の力……」
猛攻は、しっかりと守りを固めたエリーの防御を容易く越えて、彼女にダメージを与える。
あまり長くは持たないかもしれないと、彼女は思った。だが、ここで退けば、遊撃班を越え、陣地に殺到するだろう。
「だから……いつもと同じように守るために斬るだけです!」
防御から返す刀で、大剣を振るうエリー。
最初にアルファスの銃撃で転倒した雑魔は立ち上がると、コケメェ~と叫びつつ、簡易銃架に向かって突進してくる。
しかし、気にもせず、前線のエリーを援護する。彼女と雑魔の戦いは、数の上でも力量でも、一人で戦わせるわけにはいかない。
そして、目の前に迫る雑魔は、仲間が間に合うと予測しているからだ。
その予想通り、簡易銃架の前に、金髪緑眼の青年が颯爽と現れる。
「作ったばっかりの物を壊そうなんて野暮ってもんだぜ!」
リックは金色の光が体中に纏い、覚醒状態に入る。
突進してくる雑魔を盾で受け止め、剣を雑魔の足に突き出した。
「リック1体。エリー3体。遊撃班2体です」
アルファスがトランシーバーで全員に状況を連絡する。
「ここは、火力を集めた方がいいですね」
「その様であるな」
リーザと久延毘が射撃と魔法を同じ目標に向かって放つ。
彼女の持つの銃に付けたLEDライトの光が眩しかったのか、よろめく。
そこに、シガレットが魔導拳銃の銃口を雑魔の額に付きつけて撃った。
雑魔はボロボロと崩れていく。
もう1体がシガレットに棍棒の様な物を振りかぶってきたが、それを盾で受け流すと、態勢の崩れた所に、至近距離から銃撃を加えた。
「ここと、リック君の所は僕達に任せて、シガレット氏はエリー君の所へ」
リーザの銃撃に合わせ、炎の魔法を使用した久延毘が声をかけた。
「行かせてもらうぜェ」
経験を積んだハンターが3人がかりで倒せる相手だ。
アルファスの射撃の援護を受けているとはいえ、苦戦しているに違いない。
その予想通り、エリーは苦しい戦いを繰り広げていた。それでも、3体を引きつけていたのは称賛に値する。
的確な射撃の援護がある事、そして、防御重視という事が、命を繋いでいたかもしれない。
シガレットが彼女と雑魔の間に入った時に、エリーは片膝をつく。
「よくやったなァ」
回復をエリーに向けた。
口調は悪いが、優しく柔らかいマテリアルの光が、彼女を包む。
そんな様子を裂く様に、雑魔が攻撃を繰り出してくるが、アルファスの射撃で棍棒がはじけ飛んだ。
他2体がシガレットに棍棒を振るうが、1体目の攻撃を盾で受け止めた衝撃を利用し、横に軽くステップして、2体目の攻撃を避ける。
アルファスの援護を受けながら、シガレットの拳銃が火を噴いた。
棍棒がはじかれた雑魔がエリーに向かって突進してくる。
大剣で防御しようとしたが、膝がカクンと折れてしまう。
そこへ、簡易銃架近くに来た雑魔を倒したリックが滑り込むと、雑魔の突進を受け流した。
「っ……なかなか痛ぇな……大丈夫か?」
間に合って良かったぜと続けると、剣を構える。
エリーはお礼を言いながら、立ち上がり、大剣を構える。
2人の剣先は、突進が失敗して地面に転がった雑魔に向けられていた。
こうなると形勢逆転だ。
リックとエリーの剣で貫かれて塵となっていく雑魔。
後衛3人が同時に放った魔法と射撃で、シガレットと対峙している1体が消し飛ぶと、最後に残った雑魔は、シガレットの拳銃が急所を叩きこまれる。
「コケメェ~」
叫び声をあげて、雑魔は崩れていなくなった。
●夜が明けて
アルファスが黙々とトラップを片付けていく。
雑魔の襲撃があっても、陣地自体の防御力で対応可能だろう。不必要な罠はかえって邪魔になる。
「罠とかばらまきすぎちゃいましたね……あははは、わ、私片付けてから帰りますね!」
エリーが笑顔で言った。
確かに、彼女の言う通り、至る所にハンター達が設置した、罠や穴等が見える。
効果があった罠も使われなかった罠もあるかもしれない。けど、それは偶然使われなかっただけで、意味はあったはずだ。
「俺も手伝うぜ」
リックが陣地からスコップを借り、笑顔を浮かべた。
2人はそれなりにダメージを受けていたが、シガレットがある程度回復させていた。
一服しながら、彼は持ってきたトラバサミを解体していく。
その横で、久延毘が完成した陣地を眺めていた。
「一夜城の伝説、ここに成るか」
そんな事を呟く。
確かに、陣地は完成していた。二重の堀と、柵、そして櫓等は小さい城と言っても過言はないだろう。
「良い経験であった」
リーザが一人、西の方角を見つめていた。
「こんな程度じゃ、まだまだ足りないわ……」
銃を構える。
と、構えた、ずっと先に、一人の影が見えた。
「あれは……」
戦闘後にアルファスから聞いた、『襲撃前に見えた人影』を思い出す。
その影からは敵意が感じられた。仲間を呼ぼうとした次の瞬間、その影はいなくなった。
「まだ、戦いは終わってないって事ね」
彼女の台詞通り、歪虚との戦いは、まだまだ続く事になる。
ハンター達は完成した陣地を後に、王都へ帰還するのであった。
おしまい。
依頼結果
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シガレット=ウナギパイ(ka2884)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/23 19:38:25 |
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依頼相談卓 シガレット=ウナギパイ(ka2884) 人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/10/28 04:36:31 |