ゲスト
(ka0000)
【交酒】プロポーズ大作戦!
マスター:葉槻

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/30 09:00
- 完成日
- 2017/06/12 09:27
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
リゼリオにあるハンターオフィス。
ここは様々な人々がハンターに助けを求め、またハンター達は様々な事件を求め足繁く通う。
人と人、ハンターとハンターを結びつける交流の場としても活用される施設の1つである。
その受付にて、何やら身なりのいい男が大声で職員に泣きついている。
「落ち着いて下さい、まず、問題を整理して、何が必要なのかを明確にしましょう」
「問題はたった1つだよ! 僕が、どうしたらアーニャと最高の式を挙げることが出来るかって、それだけだよ!」
男の名前はレオルと言った。
リゼリオではそこそこ名の通ったの商家の長男坊。
そしてこの6月に式を挙げる予定の相手が、幼馴染みであり許嫁でもあったアーニャだ。
レオル23歳、アーニャ20歳。
両親同士が勝手に決めた許嫁ではあったが、レオルはそれに不満1つなかった。
むしろ、アーニャと結婚できる日を待ち望んでいたといっても過言ではない。
「アーニャは可愛いんだ。目はくりくりと大きくて、鼻はすっと高くて、赤い唇は少しハスキーだけれどとても聞き心地の良い声でハツラツと言葉を紡ぐ……」
レオルの持っている絵を見せてもらっても、確かに美人といえる部類の女性だ。
利発そうな雰囲気が絵からも漂ってくるし、スタイルも良い。
なお、レオル自身もそんな残念な容姿はしていない。
人懐っこそうな、人の良さそうなやや下がり気味の太眉につぶらな瞳。
体型はややふくよかさを感じるが、それがまた彼の大らかな性格を後押しするようでもある。
今は祖父や父の仕事を手伝うだけだが、将来的には家業を継ぐ立場にもあり、その為の勉強はしっかりとこなしてきていた。
……要するに、『真面目で人の良いお坊ちゃん』を地でいくタイプの青年だった。
アーニャが誕生日を迎える6月15日。
この日に結婚式を挙げるというのは両家の取り決めであり、それにレオルもアーニャも納得していた……と、レオルは思っていたのだ、この日まで。
●
切欠は昨日に遡る。
レオルは仕事で港へと来ていた。
無事一仕事を終えたのが丁度お昼時であった事もあり、最近出来たオシャレで美味しいと噂の軽食屋へと足を運んだ。
そのテラス席にアーニャと彼女の女友達3人の姿を見つけ、レオルは一声掛けようと近寄って……聞いてしまったのだ。
女友達1「アーニャ、そういえば式の準備は順調なの?」
アーニャ「えぇ、これといって特別なことをするわけでも無いし、ほぼ終わったようなものね」
女友達2「いいなぁ、プロポーズの言葉ってなんだったの?」
アーニャ「プロポーズ?」
女友達2「いくら幼馴染みで許嫁だからってプロポーズぐらいあったでしょう?」
アーニャ「……あったかしら……」
女友達3「えぇ? やだ、いくらなんでもプロポーズぐらいして欲しいわよねぇ」
女友達1「レオルってちょっと抜けてるから、忘れてるんじゃない?」
女友達2「いや、待って。もしかしたら何かサプライズを仕掛けているとか……」
女友達1「良いねぇ、それだったら私レオルの事見直すわ。ありきたりなプロポーズなんて許さないわ」
女友達3「アーニャ、こういうところがきちっと出来ない男は他もなあなあにしがちだったり、流されるまま人に言われるままだったりするから、きちんとさせた方がいいわよ」
アーニャ「そういうモノなの?」
女友達一同「そりゃそうよ」
女友達1「結婚式もサプライズとか欲しいわよね」
女友達2「折角こんなに若くて良い女が嫁に行くのにありきたりな結婚式だけっていうのもねぇ」
女友達3「教会でエクラ神に宣誓して、ガーデンパーティで終わり、とか今時ねぇ?」
アーニャ「駄目なの?」
女友達一同「そりゃそうよ」
女友達1「ちょっと、アーニャ大丈夫?」
女友達2「一生に一度なんだから、大事にしてもらわないと!」
女友達3「何か希望とかないの? こんな式にしたいーとか」
アーニャ「ん……みんなが笑顔になってくれたらそれでいいかなぁって」
女友達一同「甘い!」
女友達1「そんなぼんやりしたモノじゃだめよ。レオルの仕事先の人たちのところに挨拶回っている間にパーティが終わるわ!」
女友達2「そうそう! やっぱり式は花嫁が主役なんだから」
女友達3「アーニャの一生の宝物になるようにしなくちゃ! 次、打ち合わせはいつなの?」
アーニャ「……えーと、明後日?」
女友達一同「そこでしっかり話し合っておいで!」
そこまで聞いてレオルは衝撃に震えながら走って逃げた。
そういえば式についてアーニャからどうしたいとかいう希望を聞いた事が無かった。
内容についても、周囲が言うままにセオリー通りの式をするつもりだった。
そして何より。
「そうだ……僕、アーニャにプロポーズしてなかった……!」
その事実に愕然としながら、ふらふらと家に帰り、悶々と1人悩み。
悩みすぎて夜は6時間しか眠れなかったレオルは、翌日仕事を休むとハンターオフィスへと駆け込んだのだ。
●
「ハンターなら色々な情報を持っているんじゃ無いかなって思って。お願いだよ! どんなプロポーズをしたらアーニャが喜んでくれるのか、式でサプライズってどんなのがあるのか教えて下さい!! お願いします!!」
額が机に当たって鈍い音を立てる。
しかし、それにも動じず頭を下げ続けるレオルを見て、あなた達は顔を見合わせたのだった。
リゼリオにあるハンターオフィス。
ここは様々な人々がハンターに助けを求め、またハンター達は様々な事件を求め足繁く通う。
人と人、ハンターとハンターを結びつける交流の場としても活用される施設の1つである。
その受付にて、何やら身なりのいい男が大声で職員に泣きついている。
「落ち着いて下さい、まず、問題を整理して、何が必要なのかを明確にしましょう」
「問題はたった1つだよ! 僕が、どうしたらアーニャと最高の式を挙げることが出来るかって、それだけだよ!」
男の名前はレオルと言った。
リゼリオではそこそこ名の通ったの商家の長男坊。
そしてこの6月に式を挙げる予定の相手が、幼馴染みであり許嫁でもあったアーニャだ。
レオル23歳、アーニャ20歳。
両親同士が勝手に決めた許嫁ではあったが、レオルはそれに不満1つなかった。
むしろ、アーニャと結婚できる日を待ち望んでいたといっても過言ではない。
「アーニャは可愛いんだ。目はくりくりと大きくて、鼻はすっと高くて、赤い唇は少しハスキーだけれどとても聞き心地の良い声でハツラツと言葉を紡ぐ……」
レオルの持っている絵を見せてもらっても、確かに美人といえる部類の女性だ。
利発そうな雰囲気が絵からも漂ってくるし、スタイルも良い。
なお、レオル自身もそんな残念な容姿はしていない。
人懐っこそうな、人の良さそうなやや下がり気味の太眉につぶらな瞳。
体型はややふくよかさを感じるが、それがまた彼の大らかな性格を後押しするようでもある。
今は祖父や父の仕事を手伝うだけだが、将来的には家業を継ぐ立場にもあり、その為の勉強はしっかりとこなしてきていた。
……要するに、『真面目で人の良いお坊ちゃん』を地でいくタイプの青年だった。
アーニャが誕生日を迎える6月15日。
この日に結婚式を挙げるというのは両家の取り決めであり、それにレオルもアーニャも納得していた……と、レオルは思っていたのだ、この日まで。
●
切欠は昨日に遡る。
レオルは仕事で港へと来ていた。
無事一仕事を終えたのが丁度お昼時であった事もあり、最近出来たオシャレで美味しいと噂の軽食屋へと足を運んだ。
そのテラス席にアーニャと彼女の女友達3人の姿を見つけ、レオルは一声掛けようと近寄って……聞いてしまったのだ。
女友達1「アーニャ、そういえば式の準備は順調なの?」
アーニャ「えぇ、これといって特別なことをするわけでも無いし、ほぼ終わったようなものね」
女友達2「いいなぁ、プロポーズの言葉ってなんだったの?」
アーニャ「プロポーズ?」
女友達2「いくら幼馴染みで許嫁だからってプロポーズぐらいあったでしょう?」
アーニャ「……あったかしら……」
女友達3「えぇ? やだ、いくらなんでもプロポーズぐらいして欲しいわよねぇ」
女友達1「レオルってちょっと抜けてるから、忘れてるんじゃない?」
女友達2「いや、待って。もしかしたら何かサプライズを仕掛けているとか……」
女友達1「良いねぇ、それだったら私レオルの事見直すわ。ありきたりなプロポーズなんて許さないわ」
女友達3「アーニャ、こういうところがきちっと出来ない男は他もなあなあにしがちだったり、流されるまま人に言われるままだったりするから、きちんとさせた方がいいわよ」
アーニャ「そういうモノなの?」
女友達一同「そりゃそうよ」
女友達1「結婚式もサプライズとか欲しいわよね」
女友達2「折角こんなに若くて良い女が嫁に行くのにありきたりな結婚式だけっていうのもねぇ」
女友達3「教会でエクラ神に宣誓して、ガーデンパーティで終わり、とか今時ねぇ?」
アーニャ「駄目なの?」
女友達一同「そりゃそうよ」
女友達1「ちょっと、アーニャ大丈夫?」
女友達2「一生に一度なんだから、大事にしてもらわないと!」
女友達3「何か希望とかないの? こんな式にしたいーとか」
アーニャ「ん……みんなが笑顔になってくれたらそれでいいかなぁって」
女友達一同「甘い!」
女友達1「そんなぼんやりしたモノじゃだめよ。レオルの仕事先の人たちのところに挨拶回っている間にパーティが終わるわ!」
女友達2「そうそう! やっぱり式は花嫁が主役なんだから」
女友達3「アーニャの一生の宝物になるようにしなくちゃ! 次、打ち合わせはいつなの?」
アーニャ「……えーと、明後日?」
女友達一同「そこでしっかり話し合っておいで!」
そこまで聞いてレオルは衝撃に震えながら走って逃げた。
そういえば式についてアーニャからどうしたいとかいう希望を聞いた事が無かった。
内容についても、周囲が言うままにセオリー通りの式をするつもりだった。
そして何より。
「そうだ……僕、アーニャにプロポーズしてなかった……!」
その事実に愕然としながら、ふらふらと家に帰り、悶々と1人悩み。
悩みすぎて夜は6時間しか眠れなかったレオルは、翌日仕事を休むとハンターオフィスへと駆け込んだのだ。
●
「ハンターなら色々な情報を持っているんじゃ無いかなって思って。お願いだよ! どんなプロポーズをしたらアーニャが喜んでくれるのか、式でサプライズってどんなのがあるのか教えて下さい!! お願いします!!」
額が机に当たって鈍い音を立てる。
しかし、それにも動じず頭を下げ続けるレオルを見て、あなた達は顔を見合わせたのだった。
リプレイ本文
●
リゼリオのハンターオフィス本部最寄りの喫茶店にて、依頼人であるレオルを含め6人のハンター達が円卓に
座していた。
「とりあえず意味はないがメニューの端から端まで全部注文するな!
レオル持ちだし別にいいよな! 俺様一切払うつもりねぇけど!
何か無性に腹が減っちまってよ! いや~~! めっちゃ腹減ってるわクソが~~!」
席に着くなりそう捲し立てるジャック・J・グリーヴ(ka1305)の剣幕に、レオルは「え、あぁ、はい、もちろんです、どうぞ」と慌ててウェイトレスを呼ぶ。
「あ、俺は紅茶とキッシュパイ頼むわ」
メニューを見終えたラティナ・スランザール(ka3839)が水城もなか(ka3532)へとメニューを手渡した。
「あ、季節のタルトと紅茶のセット貰えるかしら?」
「あ、私はチョコレートケーキと紅茶でお願いします」
ラティナから時計回りで沢城 葵(ka3114)、ルナ・レンフィールド(ka1565)がメニューを指差しながら注文をしていく。
「あの、紅茶とチェリーパイをお願いします」
少し迷いつつエステル・クレティエ(ka3783)が頼むと、もなかが「決めた」と顔を上げた。
「シェフの気まぐれスィーツセット。本日のおすすめ健康ドリンクで」
一同が『ナニソレ』という顔でもなかを見る。
「おすすめにありましたので。とりあえず食べてみようかな、と」
「では、注文を繰り返しますね」
ウェイトレスが流れるようにオーダーを復唱していく。
「あの……それで、本当にこれ以外に“端から端まで全部注文”されますか?」
亜麻色のふわふわツインテール。くりんとした大きな瞳にふっくらとした頬。健康的な桃色の唇……控えめに言って可愛らしいウェイトレスがジャックの顔をじぃっと見つめて問いかける。
「ふぁっ!?」
頬を引きつらせ赤面したジャックに気付かないのか、ウェイトレスがメニューをジャックの前で広げ指差す。
「お腹が空いていらっしゃるのでしたら、こちらの“DX食欲魔人セット~スイーツもあるよ~”などかなり好評ですよ?」
「おおおおおおおう!? じゃじゃぁ、それで」
「はい、ありがとうございます」
「あ、あと僕も紅茶で」
レオルも注文を済ませ、ウェイトレスが去るのを見送ると口を開いた。
「さて、皆さん、今日は僕の個人的な悩みにお付き合い下さってありがとうございます」
人の良さそうなつぶらな瞳に困ったように下がった太眉。
「さっそくではありますが、ご意見を伺わせていただけますか……!」
こんな感じでプロポーズ大作戦は幕を開けたのだった。
●
「好いた女との未来をしっかり考える……てめぇは立派な漢だぜレオル!
俺様も漢だ、イイ漢が困ってるってのに放っておくワケにゃいかねぇな。
任せとけよ、(ギャルゲで)百戦錬磨の俺様が最高にイイ選択肢を選んでやっからよ!」
レオルの背中をバシバシと叩きながらジャックがキラキラとした笑顔をむける。
「…………」
その言葉を信じて瞳を輝かせるレオルと、それをジト目で見つめる葵。
『プロポーズと結婚式を考えて下さいだァ? はっ! いいねぇリア充さんはよォ?!
はァ~~! マジやってらんねぇわ~~! マジリア充乙だわ~~!』
というジャックの本音を見透かしてのこのジト目である。
“DX食欲魔人セット”(以下“DX”)の前菜として運ばれて来た山盛りのサラダを上品に取り分けながら(この辺育ちの良さが出るものである)ジャックは口を開く。
「んで何だっけか? ぷろぽーずと結婚式だったか? そんなん出てきた選択肢をズドンと選べば良いじゃねぇか」
「え? せんたく……?」
「外れたらロードだロード」と野菜を咀嚼しながら言うジャックに葵の鋭い眼光が刺さる。
「ジャック」
「あぁいや分かってる、ちゃんと考えてやるよ」
水を飲んでフォークで野菜を突きながらジャックは「要はギャルゲと一緒だ」と前置く。
「ハツラツ幼馴染系なら強気な選択肢も悪かねぇ! 余計な装飾はいらねぇ、愛してるの一言だけで良いと思うぜ」
うっかり出てきそうになる魂の叫びを野菜と共に喉の奥へと流し込んで、建前の言葉と(ギャルゲでの)経験則を告げる。
「な、なるほど……!」
時々わからない単語がありつつも、その力強いアドバイスはレオルの中に染み入ったようだった。
(万が一、彼とお付き合いから結婚……ってなっても、同じ様にプロポーズとかハッキリは無さそうだなぁ)
なんてうっかり妄想したルナは、赤い顔で頭を振って妄想を追い出して。
「ジャックさんは噂通りの凄い人ね」
ルナは紅茶を一口飲んで気を落ち着けると、こそっとエステルに囁く。
「え? えぇ!」
(幼馴染で婚約……いいな……)
なんて絶賛片想い中のあの人を夢想していたエステルも慌てて首を縦に振る。
「私もシンプルな言葉で良いんじゃないかなって思うな。普段から思っている感謝の気持ちや、好きという気持ちを伝えて、『結婚してほしい』を伝えられれば」
「普段あんまり饒舌じゃない人が、急に色々話しだすと、聞いてる方もビックリしちゃうから」というルナの言葉に、一同納得顔で頷く。
「二人は幼馴染で仲も良いとの事なので、小さい頃からの思い出話などしながらさりげなく自分の思ったままをプロポーズとして言葉にすればよいのでは? と思いますね」
“シェフの気まぐれスイーツセット”はワンプレートに様々なスイーツが盛りつけられた中々にカロリーが凄まじそうな逸品だった。
これをフォークやスプーンを器用に扱い食べながらもなかが切り出すタイミングについて提案する。
「そうねぇ。難しいことはないわよぉ。打ち合わせの帰りとか、デートの最中とか。
景色のいい所だったりレストランでのディナーで貴方の気持ちをシンプルに誠実に伝えればいいのよぉ♪」
葵の頼んだ季節のタルトはミックスベリーのタルトだった。ベリーの甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「そうですね、次の打ち合わせの帰りに、夕食に誘って、そこでとか。
覚える自信が無ければ、手紙に書いて、その場で読み上げてもアリかも?」
「あぁ、いいなぁ……」
エステルが夢見る少女の瞳でルナの意見に賛同する。
「縁結びとか恋愛のジンクスがあるような場所でもいいかもだけど、似た様な考えの人が多いと雰囲気的にちょっと微妙かもしれないわね」
葵の言葉にうんうんとエステルが力強く頷く。
「世の中には街中でサプライズプロポーズをしてOK貰ったけど、人のいない所で思い切り振られたって人もいるんです」
なんて恐ろしい……とレオルが顔から血の気を引かせる。
「プロポーズは、二人きりの時に・目を見て手を取って・ストレートに、シンプルに。
約束された勝利のプロポーズなんですから自信をもって下さい」
ぐっと両拳を握ってにっこりと微笑むエステル。
すると、今まで黙々とキッシュを頬張っていたラティナがフォークを皿に置いた。
「俺も幼馴染に告って、彼女から返事貰って、改めてプロポーズした。
プロポーズは遅くとも結婚式前夜までにしとけ。結婚の申入れを受諾したから結婚式になるんだぜ?」
落ち着いた声と衝撃の告白に、一同がラティナへと視線を向ける。
「え!? えぇ!?」
「それって、えぇええ!?」
親交のあるエステルとルナはその相手が誰だかわかったらしい。次々に「おめでとうございます」と祝辞が飛ぶ。
「凄い……ちなみに、何て告白されたんですか? ……とか、聞いてもいいですか?」
恐る恐る問うレオルに、照れ隠しにナプキンで口元を拭ってからラティナは軽く咳払い1つ。
「……あー……詳細はちょい省くが、跪いて、白百合の花を差し出して『妻問い申し上げる』って言ったよ」
その言葉に一同は目をぱちくりと瞬かせた。
「シンプルにいったが古典的過ぎたのか彼女に一瞬ポカーンとされたがな!」
あはは、と笑って紅茶を一口。
「でもその後ちゃんと『お受け致します』って返事くれたぜ」
キャーッ! という女性陣(もちろん葵も含む)の黄色い悲鳴が上がる。
「な、なるほど……! 勉強になります……っ!!」
レオルは感動に目を潤ませながら必死にメモを取っている。
一方、ジャックはメインディッシュとして出てきた怪魚のフライ(約80cm)と格闘していた。
●
「やっぱり結婚式って憧れよねぇ」
(私はこんなんだから諦めてるんだけどねぇ)
オネェ系である葵にとって結婚式は憧れはあるが、実際やろうと思うと色々と難易度が高い。
「結婚式ですかぁ……憧れはあるんですけど、地球側で戦争が終わるまで恋愛はしないと決めてしまっていますから、的確なアドバイスができるか不安ですね」
もなかの告白に「勿体ないわねぇ」と葵が表情を曇らせる。
「結婚式場はエクラ教会との事でしたが、ただお金をかけて華やかにするのもいいですが、何か印象に残る思い出深い式に出来るとよいと思います」
具体的に、という案は無いのですが……と言葉を濁しながらもなかは続ける。
「あたし的にはハネムーンを特殊なものしてみたらどうかと思い、CAMを着飾って二人を手に乗せて行くなど考えましたが、個人所有だと戦闘時以外に出撃許可が下りるか分かりませんね」
その続いて出来た言葉に一同ひっくり返った。
「せっかくの記念すべき結婚式ですから、なんとかロッソ側に元宙軍のよしみで予備機でいいので一機貸し出しさせてもらえないか交渉はしてみるつもりですが……」
「待って待って、もなかさんストーップ」
慌てたルナとエステルがちょっと待ったコールをかける。
「えぇと、お申し出は有り難いのですが……その、皆さんを今から招待するのはちょっと……」
両家の問題や式場の都合もあるのだろう、レオルが申し訳なさそうに頭を下げる。
「そうよね、あくまで“相談に乗って欲しい”ってことなのよね?」
葵が確認すると「はい、すみません」と申し訳なさそうにレオルが頷く。
「あぁ、そうなのですね。すみません、少し暴走しました」
もなかも生真面目に頭を下げると、健康ドリンクをずずずっと啜る。
……なお、この健康ドリンク、物凄いこゆい緑色だ!
「私は結婚式中はあんまり奇抜なことしないで厳かにしたほうがいいと思うの」
式次第を見ながら葵が顎に手を添えて考える。
「これ、ご両家の意向なんでしょう?」
「あ、そうです」
見るからに一般的な結婚式の流れであり、面白味は無いが、逆に言えば誰もが安心して参加出来る挙式と披露宴だろう。
「今からでもまだ準備が間に合いそうなのはフラワーシャワーかね」
ラティナの提案に葵が手を打って賛成する。
「教会から出る時とかに花のシャワーとかは素敵だと思うわ」
「花びらはポプリにしておけば保存可能だと思うぜ」
レオルがメモを取っている間に、エステルが葵にリアルブルーでの定番を問う。
「そうねぇ、よくあるのは新郎新婦から両親やお世話になった人へお手紙とか。
新郎から新婦に向けての手紙や歌を贈るっていうのもあったわね~」
「泣けるわよ?」という葵の言葉にルナもエステルも「泣きそう」と頷き返す。
「後、こっちでできるかわからないけど今までの写真や映像を編集した動画を流すって言うのも定番だったわね。
細かい所だと初めての共同作業、ってことでケーキカットとかファーストバイトみたいなのもあるけどどうかしら」
ケーキカットが何故“初めての共同作業”になるのかわからないクリムゾンウェストの人間のために簡単な解説をしつつ、葵はティーポットからティーカップにお茶を注ぐ。
「それからゲストが新郎を巻き込んでの歌や踊り、楽器の演奏を企画してっていうのもあったわね」
「いいですね! 準備期間が短いので大変ですが……もし頑張れるなら、楽器の演奏とかどうですか?」
ルナが瞳を輝かせてレオルを見る。
「オカリナとかで簡単な曲とか。教えますよ。でも、気付かれない様に練習必要ですし、特訓コースですけど……」
「僕、楽器触ったこと無くて……」
小刻みに首を横に振るレオルを見るに、どう見ても指先が器用そうには見えない。どちらかと言えば、オカリナよりは大太鼓を叩いていそうなタイプに見えて、ルナは思わず笑みを零した。
「二人の思い出の曲を演奏で流して、極簡単なダンスとかどうでしょう?
アーニャさんへのと言うより、アーニャさんのお父さんへのと言うか。
新郎と新婦が踊るファーストダンスと新婦と新婦の父が踊るラストダンスがあるそうです、二人でサプライズされてみては如何でしょうか」
「なるほど、ダンスですか」
楽器の演奏よりはダンスの方が自信ありげにメモを取っている様子を見て意外性を感じたのはもなかだけでは無いはずだ。
「木だ」
メインディッシュパート2の羊肉のステーキ(500g)と格闘していたジャックが見事勝利を収め、ナプキンで口元を拭きながら「木を用意しろ」と告げる。
「木、ですか???」
一同ぽかんとジャックを見つめる。
「出来りゃ桜が良い。桜の木の下で告白するとそのカップルは永遠に幸せになれるんだぜ」
自信満々に言うジャックは何故か『様』付けをしたくなるような金色のオーラを発しているように見える。
……決してお肉を食べてツヤツヤテカテカしているわけではない。
「確か、教会の庭に1本植わっていた気がします……」
「なんだとぉっ!? 完璧じゃねぇか!! じゃぁそこで決めろ」
「決めろ、とは……?」
ジャックの剣幕に押されるように仰け反るレオル。
「つまり桜の木の下でききキッスするんだよォ!」
シーンと静まり返る店内。
何と答えたものかと視線を泳がせたレオルに代わって葵が告げる。
「でも今、桜の花咲いてないわよ」
「!!??」
その端正な顔に「マジだ」と墨汁で書いたかのような衝撃を受けているジャック。
何が起こったのかわからない4人のハンターとレオルはぽかんと交互に2人を見て。
「……まぁ、何にせよ。彼女とも話合っとけよ? 誰かの為じゃない、お前ら2人の結婚式なんだからさ」
というラティナの言葉を持ってこの場はお開きとなったのだった。
……なお、この後さらにジャックはデザートにと出てきたジャンボパフェを前についに倒れたのだった。
●
「振り向いて貰う必要がなかったから、伝えずに来てしまったんですね。
でも、与えられたままじゃなくて、自分で手を伸ばさないと」
「テンパって言葉がでなくなったら、そうね。一回目をつぶって、深呼吸なさいな。
それから目を開いて真っ直ぐ前をみるの。そうすれば目の前にどうしたいか、っていう答えがいるからね」
エステルと葵の助言を胸に、レオルはアーニャの前で神妙な顔のまま大きく息を吸った。
「…………」
教会の鐘が鳴る。
アーニャにだけ聞こえたレオルの言葉に、アーニャは大きく頷いて笑った。
その鐘の音は若い2人を祝福するように街中に響いたのだった。
リゼリオのハンターオフィス本部最寄りの喫茶店にて、依頼人であるレオルを含め6人のハンター達が円卓に
座していた。
「とりあえず意味はないがメニューの端から端まで全部注文するな!
レオル持ちだし別にいいよな! 俺様一切払うつもりねぇけど!
何か無性に腹が減っちまってよ! いや~~! めっちゃ腹減ってるわクソが~~!」
席に着くなりそう捲し立てるジャック・J・グリーヴ(ka1305)の剣幕に、レオルは「え、あぁ、はい、もちろんです、どうぞ」と慌ててウェイトレスを呼ぶ。
「あ、俺は紅茶とキッシュパイ頼むわ」
メニューを見終えたラティナ・スランザール(ka3839)が水城もなか(ka3532)へとメニューを手渡した。
「あ、季節のタルトと紅茶のセット貰えるかしら?」
「あ、私はチョコレートケーキと紅茶でお願いします」
ラティナから時計回りで沢城 葵(ka3114)、ルナ・レンフィールド(ka1565)がメニューを指差しながら注文をしていく。
「あの、紅茶とチェリーパイをお願いします」
少し迷いつつエステル・クレティエ(ka3783)が頼むと、もなかが「決めた」と顔を上げた。
「シェフの気まぐれスィーツセット。本日のおすすめ健康ドリンクで」
一同が『ナニソレ』という顔でもなかを見る。
「おすすめにありましたので。とりあえず食べてみようかな、と」
「では、注文を繰り返しますね」
ウェイトレスが流れるようにオーダーを復唱していく。
「あの……それで、本当にこれ以外に“端から端まで全部注文”されますか?」
亜麻色のふわふわツインテール。くりんとした大きな瞳にふっくらとした頬。健康的な桃色の唇……控えめに言って可愛らしいウェイトレスがジャックの顔をじぃっと見つめて問いかける。
「ふぁっ!?」
頬を引きつらせ赤面したジャックに気付かないのか、ウェイトレスがメニューをジャックの前で広げ指差す。
「お腹が空いていらっしゃるのでしたら、こちらの“DX食欲魔人セット~スイーツもあるよ~”などかなり好評ですよ?」
「おおおおおおおう!? じゃじゃぁ、それで」
「はい、ありがとうございます」
「あ、あと僕も紅茶で」
レオルも注文を済ませ、ウェイトレスが去るのを見送ると口を開いた。
「さて、皆さん、今日は僕の個人的な悩みにお付き合い下さってありがとうございます」
人の良さそうなつぶらな瞳に困ったように下がった太眉。
「さっそくではありますが、ご意見を伺わせていただけますか……!」
こんな感じでプロポーズ大作戦は幕を開けたのだった。
●
「好いた女との未来をしっかり考える……てめぇは立派な漢だぜレオル!
俺様も漢だ、イイ漢が困ってるってのに放っておくワケにゃいかねぇな。
任せとけよ、(ギャルゲで)百戦錬磨の俺様が最高にイイ選択肢を選んでやっからよ!」
レオルの背中をバシバシと叩きながらジャックがキラキラとした笑顔をむける。
「…………」
その言葉を信じて瞳を輝かせるレオルと、それをジト目で見つめる葵。
『プロポーズと結婚式を考えて下さいだァ? はっ! いいねぇリア充さんはよォ?!
はァ~~! マジやってらんねぇわ~~! マジリア充乙だわ~~!』
というジャックの本音を見透かしてのこのジト目である。
“DX食欲魔人セット”(以下“DX”)の前菜として運ばれて来た山盛りのサラダを上品に取り分けながら(この辺育ちの良さが出るものである)ジャックは口を開く。
「んで何だっけか? ぷろぽーずと結婚式だったか? そんなん出てきた選択肢をズドンと選べば良いじゃねぇか」
「え? せんたく……?」
「外れたらロードだロード」と野菜を咀嚼しながら言うジャックに葵の鋭い眼光が刺さる。
「ジャック」
「あぁいや分かってる、ちゃんと考えてやるよ」
水を飲んでフォークで野菜を突きながらジャックは「要はギャルゲと一緒だ」と前置く。
「ハツラツ幼馴染系なら強気な選択肢も悪かねぇ! 余計な装飾はいらねぇ、愛してるの一言だけで良いと思うぜ」
うっかり出てきそうになる魂の叫びを野菜と共に喉の奥へと流し込んで、建前の言葉と(ギャルゲでの)経験則を告げる。
「な、なるほど……!」
時々わからない単語がありつつも、その力強いアドバイスはレオルの中に染み入ったようだった。
(万が一、彼とお付き合いから結婚……ってなっても、同じ様にプロポーズとかハッキリは無さそうだなぁ)
なんてうっかり妄想したルナは、赤い顔で頭を振って妄想を追い出して。
「ジャックさんは噂通りの凄い人ね」
ルナは紅茶を一口飲んで気を落ち着けると、こそっとエステルに囁く。
「え? えぇ!」
(幼馴染で婚約……いいな……)
なんて絶賛片想い中のあの人を夢想していたエステルも慌てて首を縦に振る。
「私もシンプルな言葉で良いんじゃないかなって思うな。普段から思っている感謝の気持ちや、好きという気持ちを伝えて、『結婚してほしい』を伝えられれば」
「普段あんまり饒舌じゃない人が、急に色々話しだすと、聞いてる方もビックリしちゃうから」というルナの言葉に、一同納得顔で頷く。
「二人は幼馴染で仲も良いとの事なので、小さい頃からの思い出話などしながらさりげなく自分の思ったままをプロポーズとして言葉にすればよいのでは? と思いますね」
“シェフの気まぐれスイーツセット”はワンプレートに様々なスイーツが盛りつけられた中々にカロリーが凄まじそうな逸品だった。
これをフォークやスプーンを器用に扱い食べながらもなかが切り出すタイミングについて提案する。
「そうねぇ。難しいことはないわよぉ。打ち合わせの帰りとか、デートの最中とか。
景色のいい所だったりレストランでのディナーで貴方の気持ちをシンプルに誠実に伝えればいいのよぉ♪」
葵の頼んだ季節のタルトはミックスベリーのタルトだった。ベリーの甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「そうですね、次の打ち合わせの帰りに、夕食に誘って、そこでとか。
覚える自信が無ければ、手紙に書いて、その場で読み上げてもアリかも?」
「あぁ、いいなぁ……」
エステルが夢見る少女の瞳でルナの意見に賛同する。
「縁結びとか恋愛のジンクスがあるような場所でもいいかもだけど、似た様な考えの人が多いと雰囲気的にちょっと微妙かもしれないわね」
葵の言葉にうんうんとエステルが力強く頷く。
「世の中には街中でサプライズプロポーズをしてOK貰ったけど、人のいない所で思い切り振られたって人もいるんです」
なんて恐ろしい……とレオルが顔から血の気を引かせる。
「プロポーズは、二人きりの時に・目を見て手を取って・ストレートに、シンプルに。
約束された勝利のプロポーズなんですから自信をもって下さい」
ぐっと両拳を握ってにっこりと微笑むエステル。
すると、今まで黙々とキッシュを頬張っていたラティナがフォークを皿に置いた。
「俺も幼馴染に告って、彼女から返事貰って、改めてプロポーズした。
プロポーズは遅くとも結婚式前夜までにしとけ。結婚の申入れを受諾したから結婚式になるんだぜ?」
落ち着いた声と衝撃の告白に、一同がラティナへと視線を向ける。
「え!? えぇ!?」
「それって、えぇええ!?」
親交のあるエステルとルナはその相手が誰だかわかったらしい。次々に「おめでとうございます」と祝辞が飛ぶ。
「凄い……ちなみに、何て告白されたんですか? ……とか、聞いてもいいですか?」
恐る恐る問うレオルに、照れ隠しにナプキンで口元を拭ってからラティナは軽く咳払い1つ。
「……あー……詳細はちょい省くが、跪いて、白百合の花を差し出して『妻問い申し上げる』って言ったよ」
その言葉に一同は目をぱちくりと瞬かせた。
「シンプルにいったが古典的過ぎたのか彼女に一瞬ポカーンとされたがな!」
あはは、と笑って紅茶を一口。
「でもその後ちゃんと『お受け致します』って返事くれたぜ」
キャーッ! という女性陣(もちろん葵も含む)の黄色い悲鳴が上がる。
「な、なるほど……! 勉強になります……っ!!」
レオルは感動に目を潤ませながら必死にメモを取っている。
一方、ジャックはメインディッシュとして出てきた怪魚のフライ(約80cm)と格闘していた。
●
「やっぱり結婚式って憧れよねぇ」
(私はこんなんだから諦めてるんだけどねぇ)
オネェ系である葵にとって結婚式は憧れはあるが、実際やろうと思うと色々と難易度が高い。
「結婚式ですかぁ……憧れはあるんですけど、地球側で戦争が終わるまで恋愛はしないと決めてしまっていますから、的確なアドバイスができるか不安ですね」
もなかの告白に「勿体ないわねぇ」と葵が表情を曇らせる。
「結婚式場はエクラ教会との事でしたが、ただお金をかけて華やかにするのもいいですが、何か印象に残る思い出深い式に出来るとよいと思います」
具体的に、という案は無いのですが……と言葉を濁しながらもなかは続ける。
「あたし的にはハネムーンを特殊なものしてみたらどうかと思い、CAMを着飾って二人を手に乗せて行くなど考えましたが、個人所有だと戦闘時以外に出撃許可が下りるか分かりませんね」
その続いて出来た言葉に一同ひっくり返った。
「せっかくの記念すべき結婚式ですから、なんとかロッソ側に元宙軍のよしみで予備機でいいので一機貸し出しさせてもらえないか交渉はしてみるつもりですが……」
「待って待って、もなかさんストーップ」
慌てたルナとエステルがちょっと待ったコールをかける。
「えぇと、お申し出は有り難いのですが……その、皆さんを今から招待するのはちょっと……」
両家の問題や式場の都合もあるのだろう、レオルが申し訳なさそうに頭を下げる。
「そうよね、あくまで“相談に乗って欲しい”ってことなのよね?」
葵が確認すると「はい、すみません」と申し訳なさそうにレオルが頷く。
「あぁ、そうなのですね。すみません、少し暴走しました」
もなかも生真面目に頭を下げると、健康ドリンクをずずずっと啜る。
……なお、この健康ドリンク、物凄いこゆい緑色だ!
「私は結婚式中はあんまり奇抜なことしないで厳かにしたほうがいいと思うの」
式次第を見ながら葵が顎に手を添えて考える。
「これ、ご両家の意向なんでしょう?」
「あ、そうです」
見るからに一般的な結婚式の流れであり、面白味は無いが、逆に言えば誰もが安心して参加出来る挙式と披露宴だろう。
「今からでもまだ準備が間に合いそうなのはフラワーシャワーかね」
ラティナの提案に葵が手を打って賛成する。
「教会から出る時とかに花のシャワーとかは素敵だと思うわ」
「花びらはポプリにしておけば保存可能だと思うぜ」
レオルがメモを取っている間に、エステルが葵にリアルブルーでの定番を問う。
「そうねぇ、よくあるのは新郎新婦から両親やお世話になった人へお手紙とか。
新郎から新婦に向けての手紙や歌を贈るっていうのもあったわね~」
「泣けるわよ?」という葵の言葉にルナもエステルも「泣きそう」と頷き返す。
「後、こっちでできるかわからないけど今までの写真や映像を編集した動画を流すって言うのも定番だったわね。
細かい所だと初めての共同作業、ってことでケーキカットとかファーストバイトみたいなのもあるけどどうかしら」
ケーキカットが何故“初めての共同作業”になるのかわからないクリムゾンウェストの人間のために簡単な解説をしつつ、葵はティーポットからティーカップにお茶を注ぐ。
「それからゲストが新郎を巻き込んでの歌や踊り、楽器の演奏を企画してっていうのもあったわね」
「いいですね! 準備期間が短いので大変ですが……もし頑張れるなら、楽器の演奏とかどうですか?」
ルナが瞳を輝かせてレオルを見る。
「オカリナとかで簡単な曲とか。教えますよ。でも、気付かれない様に練習必要ですし、特訓コースですけど……」
「僕、楽器触ったこと無くて……」
小刻みに首を横に振るレオルを見るに、どう見ても指先が器用そうには見えない。どちらかと言えば、オカリナよりは大太鼓を叩いていそうなタイプに見えて、ルナは思わず笑みを零した。
「二人の思い出の曲を演奏で流して、極簡単なダンスとかどうでしょう?
アーニャさんへのと言うより、アーニャさんのお父さんへのと言うか。
新郎と新婦が踊るファーストダンスと新婦と新婦の父が踊るラストダンスがあるそうです、二人でサプライズされてみては如何でしょうか」
「なるほど、ダンスですか」
楽器の演奏よりはダンスの方が自信ありげにメモを取っている様子を見て意外性を感じたのはもなかだけでは無いはずだ。
「木だ」
メインディッシュパート2の羊肉のステーキ(500g)と格闘していたジャックが見事勝利を収め、ナプキンで口元を拭きながら「木を用意しろ」と告げる。
「木、ですか???」
一同ぽかんとジャックを見つめる。
「出来りゃ桜が良い。桜の木の下で告白するとそのカップルは永遠に幸せになれるんだぜ」
自信満々に言うジャックは何故か『様』付けをしたくなるような金色のオーラを発しているように見える。
……決してお肉を食べてツヤツヤテカテカしているわけではない。
「確か、教会の庭に1本植わっていた気がします……」
「なんだとぉっ!? 完璧じゃねぇか!! じゃぁそこで決めろ」
「決めろ、とは……?」
ジャックの剣幕に押されるように仰け反るレオル。
「つまり桜の木の下でききキッスするんだよォ!」
シーンと静まり返る店内。
何と答えたものかと視線を泳がせたレオルに代わって葵が告げる。
「でも今、桜の花咲いてないわよ」
「!!??」
その端正な顔に「マジだ」と墨汁で書いたかのような衝撃を受けているジャック。
何が起こったのかわからない4人のハンターとレオルはぽかんと交互に2人を見て。
「……まぁ、何にせよ。彼女とも話合っとけよ? 誰かの為じゃない、お前ら2人の結婚式なんだからさ」
というラティナの言葉を持ってこの場はお開きとなったのだった。
……なお、この後さらにジャックはデザートにと出てきたジャンボパフェを前についに倒れたのだった。
●
「振り向いて貰う必要がなかったから、伝えずに来てしまったんですね。
でも、与えられたままじゃなくて、自分で手を伸ばさないと」
「テンパって言葉がでなくなったら、そうね。一回目をつぶって、深呼吸なさいな。
それから目を開いて真っ直ぐ前をみるの。そうすれば目の前にどうしたいか、っていう答えがいるからね」
エステルと葵の助言を胸に、レオルはアーニャの前で神妙な顔のまま大きく息を吸った。
「…………」
教会の鐘が鳴る。
アーニャにだけ聞こえたレオルの言葉に、アーニャは大きく頷いて笑った。
その鐘の音は若い2人を祝福するように街中に響いたのだった。
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相談しましょ! 沢城 葵(ka3114) 人間(リアルブルー)|28才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/05/30 08:03:16 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/27 16:31:05 |