帰らざる場所

マスター:神宮寺飛鳥

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/27 12:00
完成日
2014/11/04 05:46

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 金槌の音が響いていた。
 女は壊れた民家の屋根に登り、器用に金槌をふるう。小気味いい音が響く度、民家の屋根は元の姿を取り戻して行った。
「ふむ、こんなものかな」
 額の汗を拭い女は工具箱を手に空を仰ぐ。青空から降り注ぐ日差しは暖かく、少しだけ肌寒くなったこの季節でもどこか爽やかだ。
「おーい、姉ちゃん。悪いんだが次はこっち頼めるかい?」
「ああ、今行こう」
 屋根から飛び降りた女は村の男衆に交じってレンガを運ぶ。これも慣れた様子で施工に参加し、壁の補修に従事する。
「姉ちゃん大工か何かなのかい? 若いのに何でも出来るんだなあ」
「昔その筋の師事を受けた事があってな」
「すまんのう。ちょっといいじゃろうか?」
 今度は老人に声をかけられついていく。壊れた畜舎の修理に参加し、ついでに割れた窓ガラスを交換していると老人はしげしげと女を見つめ。
「それにしてもお嬢さん、どこかで見たことがあるような……」
「旅をしていた頃、辺境にも何度か足を運んだ事があるからな。どこかでお会いしていてもおかしくはなかろうよ」
「そうかのう? もっと最近別のところで見たような気が……」
「それよりも昼食にしよう。これだけ働かせているのだ、皿はたんまり必要だぞ」
 白い歯を見せ笑うと女は厨房に立ち、村の女たちに交じって料理を振る舞う。途中つまみ食いもしながらだが、腕前は確かなものだ。
「あなたお料理も出来るの?」
「旅をしている時は自分で作るしかなかったからな。まあ正直私は味は良くわからんのだが、本で読んだ」
「ほ、本で……?」
 メモを片手に微笑む謎の女ことヴィルヘルミナ・ウランゲル皇帝陛下。彼女が訪れたこの村は、辺境移民が開拓を進める僻地にあった――。



「王国の方は本格的にきな臭くなって来やがったな。帝国軍としても援軍を出す必要があるんじゃねェか?」
 数日前、帝都バルトアンデルスにてヴィルヘルミナはオズワルドと顔を合わせながら欠伸をしていた。しばらく城で働き詰めだからなのだが、オズワルドは眉を顰め。
「おいこら。他国の危機の話をしてンのになんだおまえその態度は。帝国は人類全体の盾っつったろおまえ」
「ああ、すまない。ただ、王国側としても突然師団を送り込まれては面白くなかろうよ。あそこにはあそこの国軍があり、自前の領土は自前で守れると証明したい筈だからな」
「向こうの面子は勿論あるだろうが、実際に国民に被害が増したら手段を選んでる場合じゃなくなるぜ?」
「そうなったらそれで救援要請なりなんなり来るだろう。どちらにせよ騎士皇として大規模な派兵はまだ検討中だ。ちょっとした応援やら様子見なら任せるよ、オズワルド」
 大きく体を伸ばし温くなった茶を啜る。オズワルドは溜息交じりにお代わりを用意しつつ。
「ま、判断としちゃ間違っちゃいないがな」
「システィーナも大変だろうが、国外から私にしてあげられる事はそう多くないよ。助け船は出せと言われるまで出すもんじゃない」
「そうかい。ま、準備だけは進めておくぜ」
「剣機騒動でのゴタゴタでどうせうちも動きは鈍っているんだ、準備期間としては丁度よかろう」
 新しいお茶を飲みながら目を瞑る皇帝。そうして立ち上がると体のあちこちを鳴らし。
「では少し出かけてくるよ」
「は? おまえさん仕事はどうした?」
「デスクワークは片づけたよ。ほれ」
 机の上に山積みになった書類を叩く皇帝。慌てて駆け寄って確かめてみると、膨大な量の仕事は確かに全て終わっていた。
「数日出てくるが、護衛は不要だ」
「いや護衛は必要だろうが!?」
「大げさだなあ。四霊剣がうろついてるわけでもなし。では後の事は頼んだぞ」
 颯爽と立ち去るヴィルヘルミナを呆然と見送るオズワルド。
 あの小娘の何が一番腹立つかって、実は仕事ができる癖に普段露骨に手を抜いていやがる事だ。
 カップを下げながら盛大にため息を零すと、男はとぼとぼと部屋を後にした。


「適当に作った割にはいけるな」
 手帳を片手に料理を食べるヴィルヘルミナ。そこへ一人の若者が駆け寄ってくる。
「みんな大変だ! またコボルドの奴らが来やがった!」
「コボルド?」
「この村の近辺は元々コボルドの生活圏だったんだ。特に鉱山開拓地付近では被害が多くてな。一時帝国軍が駐留してくれてよくなったんだが、この間の剣機騒動で撤収しちまってな……」
「なるほど」
 スプーンを加えたまま耳を傾け、速攻で食卓に並んだ皿からあちこち料理を口に放り込むと立ち上がる。
「コボルドくらいならどうにかしよう」
「だ、大丈夫なのか?」
「んむ、まあ、ここで昼休みでもしていてくれれば構わんよ。せっかくハンターも来ているのだからね」
 女は同席していたハンターに目を向け、そして手を差し伸べる。
「そういう事になった。すまないが、手を貸してもらえるかい?」
 もともとは村の復興を手伝うという仕事で同行したのだが、依頼人がそういうのでは断るわけにもいかない。
 手を取り立ち上がったハンターを前に女はにこやかに笑みを浮かべた。

リプレイ本文

「コボルドが十匹っすか。真っ直ぐ突っ込んでくる以外、別働隊は見当たらないっすね」
 村には小さな物見櫓があり、そこで敵の数を確認した無限 馨(ka0544)は飛び降り仲間達へ情報を伝える。
「コボルドと戦うのは初めてっすけど、要は下級のVOIDみたいなものっすよね?」
「ああ。だがVOIDと違って奴らには生き物としての生活がある。ここも元々はコボルドの土地だったと聞いた」
 腕を組み答える神凪 宗(ka0499)。オキクルミ(ka1947)は頬に手を当て。
「まあ、思うところがないでもないけど……仕方ないね! 人族にも都合ってものがあるしね」
「哀れなコボルドさんは、事が済んだらちゃんと埋葬してあげるの」
 手を合わせ笑みを浮かべるユノ(ka0806)。オキクルミもそれがいいと同意するように笑みを浮かべた。
「VOIDは危険な存在っす。俺はそこまで気を使ってやる必要はないと思いますけど」
「でも死体ほっといて腐って動き出したりしたら困るでしょ?」
 オキクルミの言う通り、帝国はただでさえゾンビばかりなのだ。コボルドのゾンビなんて面倒極まりない。馨も納得した様子だ。
「あ奴らはほっとくとまさにコボルド算的に増えていくでの。まあ、コボルト退治はドワーフにとって義務みたいなものじゃ。ドーンとワシに任せるが良かろう!」
 胸を叩き笑うギルバート(ka2315)。シュタール・フラム(ka0024)はライフルを構え。
「さて、色々予定もある事だ。手際良く行こうか」
 見れば十体のコボルドが鉱山から続くなだらかな坂道を村へ向かって駆け寄ってくる所だ。
「あまり村に近づけても厄介だ。こちらからも打って出るぞ」
「よーし、ルミナちゃんと一緒だし、今日は頑張っちゃうねー」
 剣を抜きながら歩き出すルミナの隣で腕を回しながらラン・ヴィンダールヴ(ka0109)がへらりと軽い笑みを浮かべる。一方Bridget・B(ka3117)はやや緊張した様子だ。
「初の実戦ですか……。戦うメイドって憧れていましたけど、いざ現場に来ると、命のやり取りなんですね……」
「そう気負う事もない。心配するな、君に怪我はさせないよ」
 にこりと微笑むルミナの横顔。Bridgetは握り締めた短剣をじっと見つめ、顔を上げる。
 剣を手にしたコボルドが七体、猛然とハンター達へ駆け寄る。まず先陣を切り、オキクルミが斧を振り上げ先頭の敵へと飛びかかる。斧を受けたコボルドは怯んだが、左右から二体が反撃に出た。
 シュタールは銃撃で片方を撃ち抜き、よろめいた所にランが追撃を加える。マテリアルの光を帯びた瞳は敵を捉え、全力で振り下ろした一撃がコボルドを深く切り裂いた。
 もう一体の攻撃はルミナが間に入り、振り下ろそうとした剣の持ち手を蹴り飛ばし武器を弾くと、その勢いのままに回転し盾で殴りつける。くらくらした様子のコボルドはBridgetでも簡単に切り裂く事が出来た。
「さすが剣機の一撃を真っ向から受けるだけはあるっすね。コボルドくらいの攻撃、わけないっすか」
 とは言え今回は依頼で来ているのだから放置するわけにもいかない。更に近づくコボルドに拳銃を向け引き金を引く馨。ユノはワンドを正面に構え、収束させたマテリアルを炎と成し、接近する敵目掛け解き放つ。
「ミナお姉さんに近づく奴には容赦しないよー」
 火の矢は正確にコボルドに炸裂し吹き飛ばす。更にギルバートが近づいてハンマーをぶん回し追撃する横を抜け、宗は敵後衛を目指す。
「弓持ちが三体か……あれは俺が片付けよう」
 前衛を援護するように弓を構える三体のコボルド。一発はギルバートに刺さり、二発目はランに回避され、三発目は盾を構えたオキクルミに届く前に横から手を伸ばしたルミナが掴み、ばきりと圧し折った。
「ルミナ殿、良い目をしておるのう。なかなかの腕前と見た」
「それよりギルバートさん、矢が刺さってるっすけど」
「おぉ!? このくらい刺さった内に入らんからのう~!」
 指差す馨に思い出したように肩に刺さった矢を引き抜くギルバート。自己回復手段もあるので大した問題ではないらしい。
「ルミナちゃん、そこまでばっちりガードしなくてもこれくらいの相手なら大丈夫だよ?」
「そうか。しかし、可憐な少女が傷つくのを黙って見てはいられん質でな」
「わー、ルミナちゃんナンパしてるー。かっこいいー」
 オキクルミの手を取り微笑むルミナの横で囃すように口笛を吹くラン。その様子に遠巻きにユノが杖を振り回す。
「こらー! 僕も混ぜ……じゃなくて、真面目に戦いなよー! 皆ミナお姉さんにくっつきすぎー!」
「だいーぶ余裕があるなあ、皆……」
 苦笑を浮かべながら銃口でコボルドを捉えるシュタール。一方宗は弓兵に接近、走りながらチャクラムを投擲する。
 狙いは本体ではなく粗末な作りの弓だ。案の定チャクラムはぽっきり弓を切断。武器を失った相手は無視し、すぐさま次へ向かう。
 次の矢を放っている側面から距離を詰め刀を振るう。本体へ攻撃しつつ、背負っている矢筒を破壊するのが狙いだ。やはり頑丈ではなく、その気になれば破壊は容易い。
「得物を失えば戦闘力は激減する……片付けるのは後でも構わん」
 三体目の弓兵は宗の狙いに気付き迎撃を開始。となると前衛には遠距離攻撃が飛んでこない道理。
 剣のコボルドも既に四体が倒れた。流石に分が悪いと踏んだのか逃げ腰になったコボルドはランの大ぶりな一撃をひょいと回避する。
「あ、こら、待て……!」
 逃げるコボルドに回り込みショートソードを繰り出すBridget。ルミナは敵を追い込んだり怯ませたりする事で攻撃をアシストしている。
「むー。折角ルミナちゃんの前なのに逃げられるなんてー」
「ふっふっふー。ランお兄さんまだまだ甘いねー。この僕の魔法の冴えを見るといいよー」
 火の矢は吸い込まれるように逃げるコボルドの体を爆発させる。勝ち誇ったように胸を張るユノにランはほっぺたを膨らませる。
「よっと! ふう……しかし殆ど無傷かー」
 最後の剣コボルドを斧で切り裂き汗を拭うオキクルミ。ルミナは全く攻撃に参加しなかったが、敵の剣を防いだり行動を妨害する動きが上手く、結果さくさくと敵を倒す事が出来た。
「後は弓兵だけっすね」
 既に武器を失ったコボルドは爪で迎撃するも、馨はそれをかわしカウンターで短剣を突き刺す。更に宗が一体刀で片付けると、残されたのは弓を失ったコボルドが一体。
「足でなく、腕……肩だな」
 狙いをすましてシュタールが放った弾丸はコボルドを貫く。傷を負って震えるコボルドに駆け寄り、これ見よがしにギルバートが振り上げたハンマーで大地を抉ると、コボルドは情けない声を上げながら逃げ出していった。
「よし、上手く行ったな」
「あのコボルドは逃がすのか? あえて加減をしたように見えたが」
 背中を撃たずに銃を下ろしたシュタールにルミナは剣を鞘に収めつつ首を傾げる。
「コボルドが継続的に攻撃を仕掛けてくるという事は近くに巣があるという事じゃからのう」
「巣穴の場所がわかれば対策を打ちやすくなるからな。ま、後を追ってみよう」
 ギルバートとシュタールの言葉に感心した様子のルミナ。こうしてハンター達は手負いのコボルドを追跡し、巣穴の探索に向かうのであった。



 手負いのコボルドは開発途中の鉱山にある小さな穴に潜り込んでいった。その付近にはいくつか小さな穴があり、それらが山のどこかにある大きな巣に通じている事が予想できた。
 大まかな場所は把握出来たものの、巣の全体やコボルドの数を調べるには時間もなく、危険も大きい。本格的な巣全体の駆除は次に回すとして、報告書を軍に上げるという事で話は纏まった。
「それにしても、かなり大きい巣だったっぽいね~」
「元々この近辺に暮らしていたコボルドが密集している可能性もあるからな。迂闊に手出しするのは危険だろう」
「巣穴にいる奴らも殲滅したいところじゃが、それをやるにはそれなりの準備も必要だの」
 山の麓に降りたハンター達はそこにコボルドの墓を作っていた。以前この村を訪れコボルドと戦ったハンターが先に作った墓があり、そこに追加する形で用意したのだ。
 山を見上げるオキクルミの呟きに宗は冷静に、そしてギルバートは経験を元に言葉を返す。しかしいずれは駆除しなければ開拓村に安寧は訪れないだろう。
「こんなもので宜しいでしょうか? コボルドの死生観は存じませんが、墓標と呼ぶには十分ですものね」
「そうだねぇ。哀れなコボルドさん、安らかにお休みなさい」
「ごめんねー? ここは僕達にとっても、必要なんだー?」
 コボルドの墓づくりを手伝ったBridget。ユノはコボルドに祈りを捧げ、ランは少し寂しげな表情で謝罪の言葉を呟く。
「住処を追われ、取り返そうと無謀な戦いに挑み、返り討ちに合う。最悪、辺境の未来かもだしね……」
 コボルドは人間の勝手な都合の犠牲者だが、常に人は自分の尺で物事を語る。コボルドの行動そのものには理解を示す事も出来る。
「……キミらの魂に安らぎのあらん事を」
 祈りを捧げるオキクルミ。一通り供養を終えたハンター達は本来の作業を再開する為村へ戻っていく。

「えー? まだ村の復興手伝うのー……?」
 肉体労働に終止不満たらたらだったランだが、やっと一仕事終えたと思いきや続きがあると知り盛大に落胆する。
「まあ、ルミナちゃんからの依頼だしねー。仕方ないかー」
「しかしコボルドと戦って思ったんだが、この村にはもう少しきちんとした防衛設備が必要じゃないか?」
「そうじゃのう。常にハンターが守ってやれるわけでもないのじゃから、村人達が自分の身を守れるようにするのも必要じゃろうて」
 宗の言葉に頷くギルバート。ユノはポンと手を叩き。
「じゃあ少し頑丈な柵を作ろっかー! 僕は力仕事は苦手だから、柵の設置位置とか設計を考えておくよ」
「それなら木材必要だよね。丁度斧持ってるし、僕は木材調達でもするよー」
 面倒そうに頭をわしわし掻くラン。と、そこで思いついたようにルミナに目を向け。
「ルミナちゃんも一緒に森に……」
「はいはーい、ミナお姉さんはこっちですよー」
 ユノはルミナの背中を押して去っていく。代わりにギルバートがランの肩をがしりと掴み。
「伐採ならワシも付き合うぞ。さあ、共に行くのじゃ!」
 髭もじゃに首根っこを掴まれ引きずられていくラン。その目は完全に光を失っていた。
「……では、俺は手を貸してくれそうな村人を探して来よう。俺達がいなくても村人だけで作れるようにしておく必要もある」
「……だな。俺は村の細々とした手伝いをしてくるよ。柵作りはとりあえず任せる」
 遠い目でランを見送り歩き出す宗とシュタール。こうして村の復興補強作業が開始された。

「ん~、こっちは板を打ち付けるとして、ここのひび割れは漆喰で埋めた方が良いかな」
「こっちは補修で何とか出来る。ちょっと資材持って来てくれるか」
 オキクルミとシュタールは主に民家の修理を担当。Bridgetは楽しげに彼方此方の掃除をしていたが、今は二人の手伝いをしている。
「皆さん、今後は自分達で修理出来なければいけませんわ。ちゃんとお手伝いをして覚えて下さいね」
 子供たちを引き連れて歩くBridget。シュタールは金槌を手に屋根の上から見下ろし笑う。
「片付いたら俺達も柵の方を手伝いに行くか。あっちは大仕事になりそうだ」

「木の柵の裏側に支柱と石を敷いて耐久度を増すのじゃ。む? ラン、聞いておるのか?」
「やばいっす。ランさんのメンタルが限界に近いっす」
「こんな筈じゃなかったんだろうな」
 作業を進めながら髭もじゃと優男を遠巻きに眺める宗と馨。そこへシュタール達がやってくる。
「よう、どんな塩梅……って、どうしたんだランの奴は?」
「そっとしといてあげなよ……」
 遠い目で呟くオキクルミ。シュタールは頬を掻き。
「それもそうだな。それより塀の外側に掘を作ったらどうかな?」
「いいアイデアだとは思うが……」
「ランさんが倒れそうっすね」
 そんな話をしているとルミナとユノがお茶を持ってやってきた。休憩に誘いに来たのだ。
 一旦作業を中断しそれぞれマグカップを傾ける。ちょっとした軽食も囲み、その間も村人の手で作業は進んでいく。
「うぅ、ルミナちゃん……この仕事終わったらまた食事にでも行こうよー。もちろん僕が代金持つからさー。好きな物、好きなだけ食べていいからー……」
「構わないが、なぜ泣きそうなのだ?」
「ランお兄さん、ミナお姉さんにくっつきすぎだよー!」
「ちょっとくらいいじゃないかー! ずっと髭もじゃとくっついてた僕の気持ちも考えてよ!」
 ユノと組み合うラン。オキクルミは苦笑しつつ。
「それにしてもルミナちゃんは相変わらず自由人だね。ま、ストレスで潰れるよりはよっぽど良いけどね!」
「うむ、ルミナ殿はかなりの豪傑。どうじゃ、ワシの嫁にならんか」
 豪快に笑うギルバートへランとユノの視線が光る。Bridgetは上品にお茶を飲みつつ。
「モテモテですわね」
「そう言えばここの人達は辺境移民なんすよね? 皇帝選挙、どう思ってるんすかね?」
 蒸かした芋を齧りながら呟く馨。ルミナは腕を組み。
「正直あまり興味がないようだ。この村を存続させる事で精一杯で、政治に関心を示す余裕がないのだ。だからこそ、コボルドの討伐は急務であろうな」
 何となく話を逸らされた気がしないでもないが、コボルト討伐が必要なのは事実。馨は何も言わず芋の皮を剥く。
「そういえばミナお姉さん、怪我はもういいの?」
「ああ。身体は頑丈だからな」
「本当に傷が残ってないかボクが確かめてあげるから、また一緒にお風呂に行こ!」
 ウィンクしながらのオキクルミの言葉に宗は眉を潜め。
「……何故そこで油を注ぐような事を」
「風呂かぁ、いいのう! ワシも一緒に……ぬふふふ!」
「ぼーくーもー。僕も一緒に入りたいー。もう髭のおじさんはやだぁー」
「お兄さん達は大人なんだから一緒に入れるわけないでしょー? 一緒に入れるのは僕くらいまでだよ」
 またやいのやいの始まってしまった。オキクルミが悪戯っぽく笑い、宗が溜息を零す。
「なんというか、すごい方だな。色々な意味で」
 楽しげな様子のシュタール。Bridgetはそんな中皆にお茶のお代わりを注いでいく。
「程々にして再開しないともう日が暮れるっすよー」

 こうして開拓村の復興は進み、コボルドの襲撃から身を守る為の柵が作られた。
 しかしコボルドの脅威が去ったわけではない。抜本的な解決の為に、次はコボルドの巣に攻撃を仕掛ける必要がありそうだった……。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 護りの弾丸
    シュタール・フラム(ka0024
    ドワーフ|29才|男性|機導師
  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
    人間(紅)|20才|男性|霊闘士

  • 神凪 宗(ka0499
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • スピードスター
    無限 馨(ka0544
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 無邪気にして聡明?
    ユノ(ka0806
    エルフ|10才|男性|魔術師
  • 答の継承者
    オキクルミ(ka1947
    エルフ|16才|女性|霊闘士

  • ギルバート(ka2315
    ドワーフ|43才|男性|霊闘士

  • Bridget・B(ka3117
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/10/26 23:08:08
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/24 00:48:10