ゲスト
(ka0000)
【血盟】龍園 de ハンターオフィス設計
マスター:葉槻

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/05 07:30
- 完成日
- 2017/06/19 21:58
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
その龍人は控えめに言って美しかった。
肩口に届くさらさらとした直毛は光を受けて澄んだ水面のように煌めき、眼鏡の奥では切れ長の瞳を縁取るまつげは長く、深い藍色の瞳は静謐に満ちている。
筋の通った鼻筋と横一文字に結ばれた薄い唇。発せられる声音は落ち着きのあるテノールだ。
左の頬から首筋にかけて碧い龍の鱗が室内の灯りを受けて虹色を帯びた光りを返す。
全体的な身体の線は細く、きめ細やかな肌は色白であり、神官という役割も相まって何やら繊細そうに見えるかも知れないが、しゃんと伸びた背筋はこの龍人の人となりが責任感が強く真面目で几帳面であることを示している。
身長も170cm後半……180cmに届かない程度と高い部類になるだろう。
長い指先でぱちぱちと石を弾くその所作一つ取っても絵になる、というのはなかなか稀有な存在と言って良い。
落ちてきた髪を耳にかけ直すと、次の石版に目を通す。
この龍人の名をサヴィトゥールと言った。
石版に彫刻刀のような筆で直接文字を彫り込み、不要になれば鉋のような道具で削り落とす。
削られた石によってその足元には小さな砂山が形成されつつある。
なお、爪弾く石はそろばんにも似た、龍園独自の計算機だ。
サヴィトゥールはそれを起きてから延々5時間続けている。
「……で、無視をしないで欲しいんだが」
アズラエル・ドラゴネッティが渋顔で目の前で黙々と仕事を続けるサヴィトゥールに請う。
「別に無視などしていない。黙殺しているだけだ」
「同じ事だろう!?」
「……長老」
サヴィトゥールは深い溜息の後、遂に指を止めた。
「なぜ、自分に話しが降ってきたのか知りたくも無いが、こう見えて自分はそこそこに忙しい。他を当たってくれ」
サヴィトゥールは神官の中でも、事務方に位置する。一般企業で言うなれば経理とかその辺だ。
それまで龍園にはほとんど金銭という物に価値が無かった。
必要な物は物々交換で何とかしたし、労働に見合う対価は食事やはやり別の労働で返すということが成り立っていたからだ。
それが、連合軍と龍鉱石やその他鉱石のやり取りを行うようになり、莫大な金貨が舞い込んできた。
金銭、という存在を知らなかった訳では無い。
ただ、この龍園においてはほぼ価値が無かったので、流通が無かった。
ハンター達の出入りにより連合軍から対価として金貨が支払われたりした為、慌てて新設された部署、財務担当神官。それがサヴィトゥールだった。
「仕方が無いだろう、他に適任がいないんだ」
「それこそ嘘だな。なんならあなた自身が窓口になれば良い。どのみちあなたは長老としてこの地をほとんど離れられないのだから」
「いや、こう見えて僕も凄く忙しい立場なんだけどね?」
アズラエルの訴えは黙殺され、静かになった室内に再び石を弾く音が響き出す。
「シャンカラがハンターと行動を共にすることも増えるだろう。そうなればその依頼を吟味するのも君がいいと思ったんだよ、サヴィトゥール」
龍騎士団長であるシャンカラとこのサヴィトゥールは同世代の幼馴染みの関係だった。
会えば軽口を叩き合うぐらいには仲が良く、気の置ける仲であるとアズラエルは認識している。
「それこそあり得ない話しだ。そもそも同じ年代の者を置いてどうする? ならばもっと若い者を担当に付け、長く据え置けるようにした方が龍園のためでは無いか」
それとも、とサヴィトゥールは指を止め、眼鏡のブリッジを押し上げた。
「自分がここで仕事をしているのが不都合な龍人がいるのかな?」
「そういう訳じゃ無い」
アズラエルは困ったな、と呟いた後軽く首を傾げた。
「あまりこれは言いたくなかったのだが……サヴィトゥール」
「何だ」
「君、確か『やりもしないで出来ないと言うヤツが大嫌いだ』と以前僕に言わなかっただろうか?」
その言葉を聞いたサヴィトゥールは端正な顔を鬼ように歪めてアズラエルを見た。
「サヴィトゥール。君を龍園のハンターオフィス代表に任命する。……僕は手遅れだが、君はもっと世界を見て知るべきだ」
言われたサヴィトゥールは苦虫を噛みつぶしたような顔で、深々と息を吐いたのだった。
●
「大変不本意ながら、自分が龍園のハンターオフィス代表に任命されたサヴィトゥールだ」
ハンター達の前に現れた美しい龍人はそう告げると、その不機嫌さを隠しもしないでどかりと石の椅子に座った。
「……とはいえ、ハンターオフィスとは名ばかりでまだ何もない。辛うじて転移門はあるが、それ以外の施設は手付かずで放置されたままだ」
ハンター達が通されたこの部屋も、転移門からほど近いたまたま空いていただけの殺風景な一室だった。
「君たちにとってハンターオフィスとはなんだ? 何が必要で不要なのか。まずそれから教えて貰おう。建設費用はうちの長老と連合軍の総司令官殿が何とかするそうだぞ? 言うだけならタダなのだ。必要と思われる設備を言えば良い」
転移門の近隣にある空き家は全部で3つ。
A.一つは二階建ての堅牢な石造りで、広さは一階、二階共におおよそ30m×30m。
B.二つ目は平屋建てのもと倉庫で、広さはおおよそ50×40m。
C.三つ目は地上には入口ロビーと階段しか無く、地下へと続く地下二階建て。地下一階はおおよそ20×40m。地下二階はおおよそ20×30mだ。
どの施設も天井は高く3m以上を保持しているが、中はがらんどうで間仕切りも何もまだない状態だ。
なお、窓も無い。窓は後から付ければ良いとのこと。
距離は広い街道に面して3軒並んでいるので、転移門からの近さで言えばABCの順だが、ほぼ誤差範囲と言って良いだろう。
各建物の見学は自由。
「この3つの建物をハンターオフィスとして解放するにあたり、一つはオフィスそのもの、他2つは君たちの好きな施設を加える事が出来る。もちろん、不要というならそれでも構わない。君たちが何を望むかを我々に提示してくれ」
そうサヴィトゥールは告げると、(先ほどアズラエルから強だt……もとい、頂戴した)『フルカラーで見る 世界の名産品大辞典』なるものに目を向け始める。
ハンター達は困惑したように互いの顔を見合わせた後……机の上に無造作に置かれた外壁だけの間取り図を見て首を傾げたのだった。
その龍人は控えめに言って美しかった。
肩口に届くさらさらとした直毛は光を受けて澄んだ水面のように煌めき、眼鏡の奥では切れ長の瞳を縁取るまつげは長く、深い藍色の瞳は静謐に満ちている。
筋の通った鼻筋と横一文字に結ばれた薄い唇。発せられる声音は落ち着きのあるテノールだ。
左の頬から首筋にかけて碧い龍の鱗が室内の灯りを受けて虹色を帯びた光りを返す。
全体的な身体の線は細く、きめ細やかな肌は色白であり、神官という役割も相まって何やら繊細そうに見えるかも知れないが、しゃんと伸びた背筋はこの龍人の人となりが責任感が強く真面目で几帳面であることを示している。
身長も170cm後半……180cmに届かない程度と高い部類になるだろう。
長い指先でぱちぱちと石を弾くその所作一つ取っても絵になる、というのはなかなか稀有な存在と言って良い。
落ちてきた髪を耳にかけ直すと、次の石版に目を通す。
この龍人の名をサヴィトゥールと言った。
石版に彫刻刀のような筆で直接文字を彫り込み、不要になれば鉋のような道具で削り落とす。
削られた石によってその足元には小さな砂山が形成されつつある。
なお、爪弾く石はそろばんにも似た、龍園独自の計算機だ。
サヴィトゥールはそれを起きてから延々5時間続けている。
「……で、無視をしないで欲しいんだが」
アズラエル・ドラゴネッティが渋顔で目の前で黙々と仕事を続けるサヴィトゥールに請う。
「別に無視などしていない。黙殺しているだけだ」
「同じ事だろう!?」
「……長老」
サヴィトゥールは深い溜息の後、遂に指を止めた。
「なぜ、自分に話しが降ってきたのか知りたくも無いが、こう見えて自分はそこそこに忙しい。他を当たってくれ」
サヴィトゥールは神官の中でも、事務方に位置する。一般企業で言うなれば経理とかその辺だ。
それまで龍園にはほとんど金銭という物に価値が無かった。
必要な物は物々交換で何とかしたし、労働に見合う対価は食事やはやり別の労働で返すということが成り立っていたからだ。
それが、連合軍と龍鉱石やその他鉱石のやり取りを行うようになり、莫大な金貨が舞い込んできた。
金銭、という存在を知らなかった訳では無い。
ただ、この龍園においてはほぼ価値が無かったので、流通が無かった。
ハンター達の出入りにより連合軍から対価として金貨が支払われたりした為、慌てて新設された部署、財務担当神官。それがサヴィトゥールだった。
「仕方が無いだろう、他に適任がいないんだ」
「それこそ嘘だな。なんならあなた自身が窓口になれば良い。どのみちあなたは長老としてこの地をほとんど離れられないのだから」
「いや、こう見えて僕も凄く忙しい立場なんだけどね?」
アズラエルの訴えは黙殺され、静かになった室内に再び石を弾く音が響き出す。
「シャンカラがハンターと行動を共にすることも増えるだろう。そうなればその依頼を吟味するのも君がいいと思ったんだよ、サヴィトゥール」
龍騎士団長であるシャンカラとこのサヴィトゥールは同世代の幼馴染みの関係だった。
会えば軽口を叩き合うぐらいには仲が良く、気の置ける仲であるとアズラエルは認識している。
「それこそあり得ない話しだ。そもそも同じ年代の者を置いてどうする? ならばもっと若い者を担当に付け、長く据え置けるようにした方が龍園のためでは無いか」
それとも、とサヴィトゥールは指を止め、眼鏡のブリッジを押し上げた。
「自分がここで仕事をしているのが不都合な龍人がいるのかな?」
「そういう訳じゃ無い」
アズラエルは困ったな、と呟いた後軽く首を傾げた。
「あまりこれは言いたくなかったのだが……サヴィトゥール」
「何だ」
「君、確か『やりもしないで出来ないと言うヤツが大嫌いだ』と以前僕に言わなかっただろうか?」
その言葉を聞いたサヴィトゥールは端正な顔を鬼ように歪めてアズラエルを見た。
「サヴィトゥール。君を龍園のハンターオフィス代表に任命する。……僕は手遅れだが、君はもっと世界を見て知るべきだ」
言われたサヴィトゥールは苦虫を噛みつぶしたような顔で、深々と息を吐いたのだった。
●
「大変不本意ながら、自分が龍園のハンターオフィス代表に任命されたサヴィトゥールだ」
ハンター達の前に現れた美しい龍人はそう告げると、その不機嫌さを隠しもしないでどかりと石の椅子に座った。
「……とはいえ、ハンターオフィスとは名ばかりでまだ何もない。辛うじて転移門はあるが、それ以外の施設は手付かずで放置されたままだ」
ハンター達が通されたこの部屋も、転移門からほど近いたまたま空いていただけの殺風景な一室だった。
「君たちにとってハンターオフィスとはなんだ? 何が必要で不要なのか。まずそれから教えて貰おう。建設費用はうちの長老と連合軍の総司令官殿が何とかするそうだぞ? 言うだけならタダなのだ。必要と思われる設備を言えば良い」
転移門の近隣にある空き家は全部で3つ。
A.一つは二階建ての堅牢な石造りで、広さは一階、二階共におおよそ30m×30m。
B.二つ目は平屋建てのもと倉庫で、広さはおおよそ50×40m。
C.三つ目は地上には入口ロビーと階段しか無く、地下へと続く地下二階建て。地下一階はおおよそ20×40m。地下二階はおおよそ20×30mだ。
どの施設も天井は高く3m以上を保持しているが、中はがらんどうで間仕切りも何もまだない状態だ。
なお、窓も無い。窓は後から付ければ良いとのこと。
距離は広い街道に面して3軒並んでいるので、転移門からの近さで言えばABCの順だが、ほぼ誤差範囲と言って良いだろう。
各建物の見学は自由。
「この3つの建物をハンターオフィスとして解放するにあたり、一つはオフィスそのもの、他2つは君たちの好きな施設を加える事が出来る。もちろん、不要というならそれでも構わない。君たちが何を望むかを我々に提示してくれ」
そうサヴィトゥールは告げると、(先ほどアズラエルから強だt……もとい、頂戴した)『フルカラーで見る 世界の名産品大辞典』なるものに目を向け始める。
ハンター達は困惑したように互いの顔を見合わせた後……机の上に無造作に置かれた外壁だけの間取り図を見て首を傾げたのだった。
リプレイ本文
●
「宜しくお願いします」
皆に自己紹介をした後、ラミア・マクトゥーム(ka1720)はサヴィトゥールにも元気よくぺこりと頭を下げた。
「あぁ」
一方で元気の欠片も無いテンションの低い相づちにラミアは少し首を傾げる。
(気難しそうな人だなあ……酒場で淡々と難しい顔してお酒飲んでて、楽しいのかな? って思うけど本人としては満足してる、みたいな……?)
水上レストラン兼酒場のウェイトレスの経験に照らし合わせた人物評を思いつつ、気を取り直して話し合いを進めようと笑顔を返す。
「はぁい、あたしはユリアよ。宜しくね、サヴィトゥールちゃん♪」
ユリア・クレプト(ka6255)の挨拶には無視である。
(あらま、随分と正直な印象の龍人ねぇ)
実年齢は(ピー)歳であるのだが、外見年齢的には14歳のユリア。
対照的に龍人は逆に年齢に比べ外見が先に歳を取り老成していく。
若く見えればなお実年齢は幼い、という龍人にとって初対面のユリアはなお幼く見えたのだろう。
(僕は見ていたよォー、サヴィトゥールくん)
水流崎トミヲ(ka4852)が眼鏡の奥、眼光鋭くサヴィトゥールの持つ本を見る。
『世界の名産品大辞典』
(僕もそういうの大好き……)
親近感を抱きつつ、トミヲもまた話し合いへと意識を戻す。
「そうか……龍園ってハンターオフィス無かったんだな。今までどうしてたんだろうか」
「連合軍が指揮を執り、転移門を活用して西方に帰ってから回復を行っていた。他に質問は?」
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)の何気ない疑問に間髪入れずに返答が入る。
「あぁ……いや、ないです」
少し目を丸くしたグリムバルドはそっと両肩を竦めながら視線を間取り図へと移す。
「外部の人間が龍園に来た時に、とりあえず行けば何とかなる……的な場所を作らんと真面目に困ってしまうのじゃ。これから商取引を含めた交流も、進めて行かんと不味いしのう」
紅薔薇(ka4766)の言葉に頷く一同。
そこからまず、どういった施設があった方がいいか、という話し合いがもたれた。
雨月彩萌(ka3925)がその中で出てきた施設を一覧にして記録していく。
・オフィス
・飲食店
・宿泊施設
・医療施設
・資料室(オフィスに設置?)
・みやげ屋、物産展
「これらの施設と建物を組み合わせれば……」
いくつかの案が出され、話し合いを重ねていく。
結果。
【プランC】
建物A:日常は宿泊施設、非常時医療施設
建物B:飲食店兼土産物屋
建物C:ハンターオフィス
という案に落ち着いた。
「意見を聞いて頂いても宜しいですか?」
彩萌がサヴィトゥールに声を掛けると、彼は本に栞を挟んで静かに本を閉じ、彩萌を見た。
「まず、ハンターオフィスですが、これはCの施設に設置したいと思います。また、資料室などを用意すればこの地域の知識に疎い者へ情報を提供する助けにもなります」
その言葉にサヴィトゥールは小さく頷き続きを促す。
「次いでAの施設には宿泊施設を。宿泊施設で休息をとる事が出来、医薬品を常備しておけば非常時に即対応できます。Bには外貨流通の場を。飲食店と土産物屋を一体化させた施設は観光地では珍しくありませんし外貨獲得と流通の起点となります」
サヴィトゥールの作り物めいた端正な顔を見つめても彩萌にはその感情が読めない。
「以上の理由からわたしはこのプランを推奨します。如何でしょうか、サヴィトールさん」
最後の最後で、緊張からかサヴィトゥールの名前をきちんと発音出来なかった。
室内の沈黙がさらに重みを増した気がして彩萌は自分の心臓の音が一際大きくなったように思えた。
「……まぁいい」
眼鏡のブリッジを押し上げると同時に吐き出された言葉は批難でも承認でもなかった。
サヴィトゥールは静かに立ち上がるとハンター達を一瞥した。
「図面だけでは想像が働かんのだろう。現場まで案内する」
ハンター達の返事を待たずにサヴィトゥールは歩き部屋を出て行ってしまった。
「え、ちょ、ちょっと待って下さい!」
ラミアが慌てて立つと皆もその後を追う。
トミヲが慌てて間取り図をまとめ手に持つと、紅薔薇が忘れ物が無いかを素早くチェックした後、最後に部屋を出たのだった。
●
道中青のリザードマン達とすれ違う。
彼ら(彼女ら?)は子どもと思われる者達は1m程度だが、鎧を着けた戦士タイプとなると2m近い長身だった。
「今まであんまり意識したこと無かったけど、実は2m越えるようなリザードマンってほとんど居ないんだな……」
体格も良く、尻尾がある分人よりも大きく見えるが、実はさほど巨体ではなかったことを改めて知ったグリムバルドである。
「ここが龍園なんだね」
あまり龍園と縁がなかったラミアが物珍しそうにきょろきょろと周囲を見回しながら歩く。
青龍の結界が働いているお陰か、意外に寒さは厳しくない。
それでも全体的に水晶や蒼白い石が多用されている建造物は雪景色と相まって寒々しさを増す。
「ここが間取り図でいうCだ」
足を止めたサヴィトゥールの前には四角いこぢんまりとした建物があった。
とはいえ、扉自体はおおよそ3×3m程もあり、ちょっとした倉庫の入口のようでもある。
サヴィトゥールが手を掛けると意外なことに扉は引き戸であり、横へとスライドしながら開いていく。
中は天井の高い玄関ホールのようになっており、床面積自体はおおよそ3×5m程。
「奥に簡易カウンターぐらいは置けそうね」
もともと1階は施設概要の案内看板と下へ降りられない人用の伝声管を設置出来ればと思っていたユリアにはこの狭さはさほど問題では無い。
「ふむ、まずここには情報発信の場として龍園のニュースや龍園からのお知らせ等も掲示出来る掲示板があるといいのぅ」
入ってすぐ左手には地下へと降りる階段が見える。この階段の幅はおおよそ1.5m程かと紅薔薇は見当を付ける。
「すれ違うのがやっと、だね」
体格の良い者や大きな長柄武器などを装備した者は少し移動がしづらそうな階段である。
実際全長160cmの戦鎚「ウンシル」を装備しているラミアは階段にいると方向転換に気を遣う。
「階段の幅を広げるなどの改築は可能だ」
サヴィトゥールが先頭に立って地下へと降りる。
何もないがらんどうの空間が広がっていた。
グリムバルドが他のオフィスを参考にしながら階段口傍に受付カウンターのスペースを置くことを提案する。
「待合室のソファはこの辺りに……暖炉とか火鉢なんかの暖房器具は入れられるのかしら?」
ユリアが問うと、サヴィトゥールが頷く。
「暖炉を置く場合は煙突を設置すれば良い。ただ地下は空調がいいとは言い難いからな。置くなら床に熱を通した方がいいだろう」
「え? 床暖房が出来るのですか?」
彩萌が驚いて声を上げる。
「龍園は寒さを凌ぐ術に関しては西方より上だろう」
「じゃぁ、暖炉はいいかしら」
一同が驚きつつも納得し、おおよその間取りを図面と実際床を踏みつつ確認し、地下2階へと降りる。
「これだけの広さがあれば、上に小会議室を2つ、ここに大会議室を1つ、半分から後ろは棚を置いて資料室に出来そうね」
階段側に机と椅子を置き、リアルブルーの図書館のように自由に椅子に座って資料を読んだり、机で書き物が出来るようにすればいちいち会議の際に机を出したり片付けたりしなくて済むだろう。
ユリアが内装についての提案をし、グリムバルドが歩幅でおおよその設置位置に印を付けていく。
「ではいいか? 次に行くぞ」
サヴィトゥールの声に、一同は頷き、続いてBの建物へと足を運んだ。
●
「……窓が無い」
ラミアが愕然として立ち竦む。
「石版を保管する倉庫だったからな。必要なかった。後で間取り図に書き込んで貰えばそこに開ける」
「はぁ……」
建物AとCの間はおおよそ1mそこそこ。ただCはおおよそ前6mぐらいしか被っていないため、入口から右側は大きめの窓を付けてもいいだろう。
だがAは二階建てであり側面の3分の2以上が被っている。
「うーん。左半分を土産物屋にして、右半分を飲食店にする……?」
ラミアが設置に関してうんうん唸っている横では、トミヲによるサヴィトゥールへのプレゼンが始まっていた。
「君もさ、興味、あるんだよね?」
そう言って鞄から取り出したのはデュニクスワイン、ヒカヤ紅茶、巡礼者の弁当箱にゲーム「人生遊戯」、さらにはチョコレート「義理」。
「……何だこれは?」
見てわかるワインや紅茶より、弁当箱とゲームを見てサヴィトゥールは首を傾げている。
それらを一つ一つ説明しながらトミヲは思う。
過去も見て、龍圏の緩やかな衰退を感じた。
できればこのまま、開いていきたい。
ただ、龍圏が古いから悪いとかじゃなく、外を、僕達を、見てほしい。
……その上で『彼らが選ぶ』場がほしい、と。
「……興味のある品、仕入れられるよ。本とかさ。銘産とかさ。便利な日用品とかさ」
最初は会計が最もネックになるだろうと考えたトミヲはワンコインか札単位ごとなどの計算しやすい額に決めることを提案する。
「オフィスが無い文化圏に作るなら何かしら挟んだ方が親しみやすいし、外貨が入ってきても地元の人が使えないんじゃ勿体ない」
だから、「クリムゾンウェストやリアルブルーの【土産屋】を作らないかい」と。
「なるほどな。お前の提案は合理的だ。確かに入って来る外貨をどうこの地で扱うか正直考えあぐねていた。この施設はあった方がいいだろうな」
「ねぇ、サヴィトゥールさん。龍園ではどんな食材が取れるんですか?」
ラミアの問いにサヴィトゥールは顔を上げ少しだけ顎に手を当て考える仕草をする。
「イモ、ホウレンソウ、大根……川まで行って氷に穴を開ければ魚も釣れる」
「なるほど、こちらでいう冬野菜な感じですね」
一応寒さに強い穀物も取れるため、それを主食に基本は先に述べた食材で済ます、という非常に質素な食糧事情が明らかになった。
あとは狩猟が中心となると聞き、過酷な極北の大地でも生き抜く野生動物達に想いを馳せる。
「あとはコケモモか。主に酒にしてしまうが」
「それは名産品としていけそう……!」
「だが量が作れるわけでは無いな」
「うぅ……難易度高い……」
「基本的にこの国は自給自足で補い合い助け合い生きてきた。常にギリギリで余剰が出る事はほとんど無い。この国から出せるものなどそれこそ雪と氷と龍鉱石ぐらいなものだろう」
サヴィトゥールの言葉に一同は口を閉ざすしか無かったのだった。
●
Aは実にわかりやすく石造りの堅牢な建物だった。
「ふむ……他の2つに比べ、最も防音、防寒に優れておるのぅ」
感心しつつ紅薔薇はゆっくりと中を見て歩く。
「1階には大浴場が欲しいのじゃ」
奥から中央で分け、男湯と女湯とし、両端に脱衣所を置き、中央に湯船を置くことで水源をまとめる。
残りは男女別の共同トイレと緊急時に病床として使えるよう、また水で流せるよう床はそのまま石材のままで利用する。
「2階は一部屋の広さをおおよそ3×2.8mで取って、20cmは壁にするのじゃ。通路は2mを確保すれば部屋数は40になるのじゃ。リネン庫やら備品を入れる倉庫を合計で6つ……といったところかのぅ」
「状況に応じてエクストラベッドを置いたり、一部二段ベッドにすれば付き添いも出来ますし、なお安心ですね」
彩萌の言葉にサヴィトゥールが疑問を挟む。
「医療施設と言うが、重傷人も2階の部屋に上げるつもりか?」
「いけませんか?」
彩萌が問うと、サヴィトゥールは両肩を竦めて見せる。
「……まぁ、自分が寝るわけではないから構わないが」
文化の違いかも知れないしな、という言葉にラミアが「どういう意味ですか?」と問う。
するとサヴィトゥールはやれやれと言わんばかりに首を振った。
「……お前達は遠路はるばるここまできたのに、掃除をしたからといっていつ誰のモノとも知れない血液が付着しているかもしれない場所で寝泊まりがしたいのか? 誰かが死んだかも知れない部屋でくつろぎ眠る事が出来るのか?」
自分なら御免被る、とサヴィトゥールは告げる。
「あくまで緊急時の時のための……」
「ならばその緊急時用の施設を先に作るべきでは無いのか? 確かに今のプランで行くなら1階ならば水場も近い。緊急時に床に雑魚寝でも全面が石造りのままであるなら血液や汚れを洗い流すことは容易だろう。だが、2階は部屋を40以上にも区切り、普段は宿泊施設として使うという。ならばその質を落とすべきでは無いと思うが」
サヴィトゥールの言葉に彩萌は視線を落とす。
「最初からここを医療施設として置き、その傷の大小にかかわらず治療が必要な者を留めておく場にするというのであればそういうモノかとも思うが……まぁ、自分は西方の文化を知らないからな。それが普通だというのであればいいんじゃないのか」
突き放した言い方にトミヲが首を振る。
「教えて欲しいんだけど。ここの医療はどの程度のものなの?」
「傷は聖導士が癒やす。癒やせないモノは自力で治すか死ぬかしかない。病は寝て治るモノならばいいが、治らなければ青龍様の指示を仰ぐ。……あぁ、先日までいたリアルブルーの者達には『薬1つもないとは』と嘆かれたな」
そもそも龍人は高いマテリアル適性を持つ上にこの厳しい環境も相まってほとんどの病原菌は活性化出来ないらしい。
「戦闘で怪我をして帰って来たら?」
「家に帰って傷が癒えるまで休む。聖導士はそういった人達の家を毎日見舞って回る」
「怪我をしたハンター達を休ませる場所は必要じゃ」
紅薔薇の言葉にサヴィトゥールはふぅ、と息を吐いた。
「先の北伐の時に連合軍が設置していった病床施設があるが、それでは足りないのか?」
「……何だって?」
グリムバルドが思わず聞き返した。
「連合軍の負傷した一般兵を治療するために設営した医療施設がある。もっとも今、中がどうなっているのかは知らないが」
何しろ北伐中は龍人は全員息を潜めて隠れるよう言われていた為、連合軍と関わるわけにはいかなかったのだ。
「それはどちらに?」
ユリアが問うと、「こっちだ」とサヴィトゥールは神官服の裾を翻し歩き始めた。
それは転移門を挟んではす向かい。徒歩10分もしない位置にあった。
「……広い」
グリムバルドの思わず漏れた言葉に、一同が頷く。
40×40m程の建物の印象で言えばAとBの間のような平屋の建物だった。
「連合軍が使っていた場所だが、ハンターが使ってはならないとは聞いていないからな。後で総司令官殿に許可を取り付けておこう」
「有り難うなのじゃ」
紅薔薇の言葉にサヴィトゥールは僅かに首を傾ける。
「また何かあれば言うと良い。交渉事ぐらいなら引き受けてやる」
その言葉にハンター達は笑い、頷いたのだった。
「宜しくお願いします」
皆に自己紹介をした後、ラミア・マクトゥーム(ka1720)はサヴィトゥールにも元気よくぺこりと頭を下げた。
「あぁ」
一方で元気の欠片も無いテンションの低い相づちにラミアは少し首を傾げる。
(気難しそうな人だなあ……酒場で淡々と難しい顔してお酒飲んでて、楽しいのかな? って思うけど本人としては満足してる、みたいな……?)
水上レストラン兼酒場のウェイトレスの経験に照らし合わせた人物評を思いつつ、気を取り直して話し合いを進めようと笑顔を返す。
「はぁい、あたしはユリアよ。宜しくね、サヴィトゥールちゃん♪」
ユリア・クレプト(ka6255)の挨拶には無視である。
(あらま、随分と正直な印象の龍人ねぇ)
実年齢は(ピー)歳であるのだが、外見年齢的には14歳のユリア。
対照的に龍人は逆に年齢に比べ外見が先に歳を取り老成していく。
若く見えればなお実年齢は幼い、という龍人にとって初対面のユリアはなお幼く見えたのだろう。
(僕は見ていたよォー、サヴィトゥールくん)
水流崎トミヲ(ka4852)が眼鏡の奥、眼光鋭くサヴィトゥールの持つ本を見る。
『世界の名産品大辞典』
(僕もそういうの大好き……)
親近感を抱きつつ、トミヲもまた話し合いへと意識を戻す。
「そうか……龍園ってハンターオフィス無かったんだな。今までどうしてたんだろうか」
「連合軍が指揮を執り、転移門を活用して西方に帰ってから回復を行っていた。他に質問は?」
グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)の何気ない疑問に間髪入れずに返答が入る。
「あぁ……いや、ないです」
少し目を丸くしたグリムバルドはそっと両肩を竦めながら視線を間取り図へと移す。
「外部の人間が龍園に来た時に、とりあえず行けば何とかなる……的な場所を作らんと真面目に困ってしまうのじゃ。これから商取引を含めた交流も、進めて行かんと不味いしのう」
紅薔薇(ka4766)の言葉に頷く一同。
そこからまず、どういった施設があった方がいいか、という話し合いがもたれた。
雨月彩萌(ka3925)がその中で出てきた施設を一覧にして記録していく。
・オフィス
・飲食店
・宿泊施設
・医療施設
・資料室(オフィスに設置?)
・みやげ屋、物産展
「これらの施設と建物を組み合わせれば……」
いくつかの案が出され、話し合いを重ねていく。
結果。
【プランC】
建物A:日常は宿泊施設、非常時医療施設
建物B:飲食店兼土産物屋
建物C:ハンターオフィス
という案に落ち着いた。
「意見を聞いて頂いても宜しいですか?」
彩萌がサヴィトゥールに声を掛けると、彼は本に栞を挟んで静かに本を閉じ、彩萌を見た。
「まず、ハンターオフィスですが、これはCの施設に設置したいと思います。また、資料室などを用意すればこの地域の知識に疎い者へ情報を提供する助けにもなります」
その言葉にサヴィトゥールは小さく頷き続きを促す。
「次いでAの施設には宿泊施設を。宿泊施設で休息をとる事が出来、医薬品を常備しておけば非常時に即対応できます。Bには外貨流通の場を。飲食店と土産物屋を一体化させた施設は観光地では珍しくありませんし外貨獲得と流通の起点となります」
サヴィトゥールの作り物めいた端正な顔を見つめても彩萌にはその感情が読めない。
「以上の理由からわたしはこのプランを推奨します。如何でしょうか、サヴィトールさん」
最後の最後で、緊張からかサヴィトゥールの名前をきちんと発音出来なかった。
室内の沈黙がさらに重みを増した気がして彩萌は自分の心臓の音が一際大きくなったように思えた。
「……まぁいい」
眼鏡のブリッジを押し上げると同時に吐き出された言葉は批難でも承認でもなかった。
サヴィトゥールは静かに立ち上がるとハンター達を一瞥した。
「図面だけでは想像が働かんのだろう。現場まで案内する」
ハンター達の返事を待たずにサヴィトゥールは歩き部屋を出て行ってしまった。
「え、ちょ、ちょっと待って下さい!」
ラミアが慌てて立つと皆もその後を追う。
トミヲが慌てて間取り図をまとめ手に持つと、紅薔薇が忘れ物が無いかを素早くチェックした後、最後に部屋を出たのだった。
●
道中青のリザードマン達とすれ違う。
彼ら(彼女ら?)は子どもと思われる者達は1m程度だが、鎧を着けた戦士タイプとなると2m近い長身だった。
「今まであんまり意識したこと無かったけど、実は2m越えるようなリザードマンってほとんど居ないんだな……」
体格も良く、尻尾がある分人よりも大きく見えるが、実はさほど巨体ではなかったことを改めて知ったグリムバルドである。
「ここが龍園なんだね」
あまり龍園と縁がなかったラミアが物珍しそうにきょろきょろと周囲を見回しながら歩く。
青龍の結界が働いているお陰か、意外に寒さは厳しくない。
それでも全体的に水晶や蒼白い石が多用されている建造物は雪景色と相まって寒々しさを増す。
「ここが間取り図でいうCだ」
足を止めたサヴィトゥールの前には四角いこぢんまりとした建物があった。
とはいえ、扉自体はおおよそ3×3m程もあり、ちょっとした倉庫の入口のようでもある。
サヴィトゥールが手を掛けると意外なことに扉は引き戸であり、横へとスライドしながら開いていく。
中は天井の高い玄関ホールのようになっており、床面積自体はおおよそ3×5m程。
「奥に簡易カウンターぐらいは置けそうね」
もともと1階は施設概要の案内看板と下へ降りられない人用の伝声管を設置出来ればと思っていたユリアにはこの狭さはさほど問題では無い。
「ふむ、まずここには情報発信の場として龍園のニュースや龍園からのお知らせ等も掲示出来る掲示板があるといいのぅ」
入ってすぐ左手には地下へと降りる階段が見える。この階段の幅はおおよそ1.5m程かと紅薔薇は見当を付ける。
「すれ違うのがやっと、だね」
体格の良い者や大きな長柄武器などを装備した者は少し移動がしづらそうな階段である。
実際全長160cmの戦鎚「ウンシル」を装備しているラミアは階段にいると方向転換に気を遣う。
「階段の幅を広げるなどの改築は可能だ」
サヴィトゥールが先頭に立って地下へと降りる。
何もないがらんどうの空間が広がっていた。
グリムバルドが他のオフィスを参考にしながら階段口傍に受付カウンターのスペースを置くことを提案する。
「待合室のソファはこの辺りに……暖炉とか火鉢なんかの暖房器具は入れられるのかしら?」
ユリアが問うと、サヴィトゥールが頷く。
「暖炉を置く場合は煙突を設置すれば良い。ただ地下は空調がいいとは言い難いからな。置くなら床に熱を通した方がいいだろう」
「え? 床暖房が出来るのですか?」
彩萌が驚いて声を上げる。
「龍園は寒さを凌ぐ術に関しては西方より上だろう」
「じゃぁ、暖炉はいいかしら」
一同が驚きつつも納得し、おおよその間取りを図面と実際床を踏みつつ確認し、地下2階へと降りる。
「これだけの広さがあれば、上に小会議室を2つ、ここに大会議室を1つ、半分から後ろは棚を置いて資料室に出来そうね」
階段側に机と椅子を置き、リアルブルーの図書館のように自由に椅子に座って資料を読んだり、机で書き物が出来るようにすればいちいち会議の際に机を出したり片付けたりしなくて済むだろう。
ユリアが内装についての提案をし、グリムバルドが歩幅でおおよその設置位置に印を付けていく。
「ではいいか? 次に行くぞ」
サヴィトゥールの声に、一同は頷き、続いてBの建物へと足を運んだ。
●
「……窓が無い」
ラミアが愕然として立ち竦む。
「石版を保管する倉庫だったからな。必要なかった。後で間取り図に書き込んで貰えばそこに開ける」
「はぁ……」
建物AとCの間はおおよそ1mそこそこ。ただCはおおよそ前6mぐらいしか被っていないため、入口から右側は大きめの窓を付けてもいいだろう。
だがAは二階建てであり側面の3分の2以上が被っている。
「うーん。左半分を土産物屋にして、右半分を飲食店にする……?」
ラミアが設置に関してうんうん唸っている横では、トミヲによるサヴィトゥールへのプレゼンが始まっていた。
「君もさ、興味、あるんだよね?」
そう言って鞄から取り出したのはデュニクスワイン、ヒカヤ紅茶、巡礼者の弁当箱にゲーム「人生遊戯」、さらにはチョコレート「義理」。
「……何だこれは?」
見てわかるワインや紅茶より、弁当箱とゲームを見てサヴィトゥールは首を傾げている。
それらを一つ一つ説明しながらトミヲは思う。
過去も見て、龍圏の緩やかな衰退を感じた。
できればこのまま、開いていきたい。
ただ、龍圏が古いから悪いとかじゃなく、外を、僕達を、見てほしい。
……その上で『彼らが選ぶ』場がほしい、と。
「……興味のある品、仕入れられるよ。本とかさ。銘産とかさ。便利な日用品とかさ」
最初は会計が最もネックになるだろうと考えたトミヲはワンコインか札単位ごとなどの計算しやすい額に決めることを提案する。
「オフィスが無い文化圏に作るなら何かしら挟んだ方が親しみやすいし、外貨が入ってきても地元の人が使えないんじゃ勿体ない」
だから、「クリムゾンウェストやリアルブルーの【土産屋】を作らないかい」と。
「なるほどな。お前の提案は合理的だ。確かに入って来る外貨をどうこの地で扱うか正直考えあぐねていた。この施設はあった方がいいだろうな」
「ねぇ、サヴィトゥールさん。龍園ではどんな食材が取れるんですか?」
ラミアの問いにサヴィトゥールは顔を上げ少しだけ顎に手を当て考える仕草をする。
「イモ、ホウレンソウ、大根……川まで行って氷に穴を開ければ魚も釣れる」
「なるほど、こちらでいう冬野菜な感じですね」
一応寒さに強い穀物も取れるため、それを主食に基本は先に述べた食材で済ます、という非常に質素な食糧事情が明らかになった。
あとは狩猟が中心となると聞き、過酷な極北の大地でも生き抜く野生動物達に想いを馳せる。
「あとはコケモモか。主に酒にしてしまうが」
「それは名産品としていけそう……!」
「だが量が作れるわけでは無いな」
「うぅ……難易度高い……」
「基本的にこの国は自給自足で補い合い助け合い生きてきた。常にギリギリで余剰が出る事はほとんど無い。この国から出せるものなどそれこそ雪と氷と龍鉱石ぐらいなものだろう」
サヴィトゥールの言葉に一同は口を閉ざすしか無かったのだった。
●
Aは実にわかりやすく石造りの堅牢な建物だった。
「ふむ……他の2つに比べ、最も防音、防寒に優れておるのぅ」
感心しつつ紅薔薇はゆっくりと中を見て歩く。
「1階には大浴場が欲しいのじゃ」
奥から中央で分け、男湯と女湯とし、両端に脱衣所を置き、中央に湯船を置くことで水源をまとめる。
残りは男女別の共同トイレと緊急時に病床として使えるよう、また水で流せるよう床はそのまま石材のままで利用する。
「2階は一部屋の広さをおおよそ3×2.8mで取って、20cmは壁にするのじゃ。通路は2mを確保すれば部屋数は40になるのじゃ。リネン庫やら備品を入れる倉庫を合計で6つ……といったところかのぅ」
「状況に応じてエクストラベッドを置いたり、一部二段ベッドにすれば付き添いも出来ますし、なお安心ですね」
彩萌の言葉にサヴィトゥールが疑問を挟む。
「医療施設と言うが、重傷人も2階の部屋に上げるつもりか?」
「いけませんか?」
彩萌が問うと、サヴィトゥールは両肩を竦めて見せる。
「……まぁ、自分が寝るわけではないから構わないが」
文化の違いかも知れないしな、という言葉にラミアが「どういう意味ですか?」と問う。
するとサヴィトゥールはやれやれと言わんばかりに首を振った。
「……お前達は遠路はるばるここまできたのに、掃除をしたからといっていつ誰のモノとも知れない血液が付着しているかもしれない場所で寝泊まりがしたいのか? 誰かが死んだかも知れない部屋でくつろぎ眠る事が出来るのか?」
自分なら御免被る、とサヴィトゥールは告げる。
「あくまで緊急時の時のための……」
「ならばその緊急時用の施設を先に作るべきでは無いのか? 確かに今のプランで行くなら1階ならば水場も近い。緊急時に床に雑魚寝でも全面が石造りのままであるなら血液や汚れを洗い流すことは容易だろう。だが、2階は部屋を40以上にも区切り、普段は宿泊施設として使うという。ならばその質を落とすべきでは無いと思うが」
サヴィトゥールの言葉に彩萌は視線を落とす。
「最初からここを医療施設として置き、その傷の大小にかかわらず治療が必要な者を留めておく場にするというのであればそういうモノかとも思うが……まぁ、自分は西方の文化を知らないからな。それが普通だというのであればいいんじゃないのか」
突き放した言い方にトミヲが首を振る。
「教えて欲しいんだけど。ここの医療はどの程度のものなの?」
「傷は聖導士が癒やす。癒やせないモノは自力で治すか死ぬかしかない。病は寝て治るモノならばいいが、治らなければ青龍様の指示を仰ぐ。……あぁ、先日までいたリアルブルーの者達には『薬1つもないとは』と嘆かれたな」
そもそも龍人は高いマテリアル適性を持つ上にこの厳しい環境も相まってほとんどの病原菌は活性化出来ないらしい。
「戦闘で怪我をして帰って来たら?」
「家に帰って傷が癒えるまで休む。聖導士はそういった人達の家を毎日見舞って回る」
「怪我をしたハンター達を休ませる場所は必要じゃ」
紅薔薇の言葉にサヴィトゥールはふぅ、と息を吐いた。
「先の北伐の時に連合軍が設置していった病床施設があるが、それでは足りないのか?」
「……何だって?」
グリムバルドが思わず聞き返した。
「連合軍の負傷した一般兵を治療するために設営した医療施設がある。もっとも今、中がどうなっているのかは知らないが」
何しろ北伐中は龍人は全員息を潜めて隠れるよう言われていた為、連合軍と関わるわけにはいかなかったのだ。
「それはどちらに?」
ユリアが問うと、「こっちだ」とサヴィトゥールは神官服の裾を翻し歩き始めた。
それは転移門を挟んではす向かい。徒歩10分もしない位置にあった。
「……広い」
グリムバルドの思わず漏れた言葉に、一同が頷く。
40×40m程の建物の印象で言えばAとBの間のような平屋の建物だった。
「連合軍が使っていた場所だが、ハンターが使ってはならないとは聞いていないからな。後で総司令官殿に許可を取り付けておこう」
「有り難うなのじゃ」
紅薔薇の言葉にサヴィトゥールは僅かに首を傾ける。
「また何かあれば言うと良い。交渉事ぐらいなら引き受けてやる」
その言葉にハンター達は笑い、頷いたのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/01 08:32:08 |
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建設、ハンターオフィス支部!! 紅薔薇(ka4766) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2017/06/04 23:26:51 |