ゲスト
(ka0000)
【血盟】乙女、精霊に困惑する
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/05 15:00
- 完成日
- 2017/06/10 14:37
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●精霊、首をかしげる
グラズヘイム王国にある川沿いの町。
領主のイノア・クリシスはハンターのおかげで事件解決の糸口はつかんだとはいえ、解決していなかった。
精霊は妙に人の前に出てくるようにはなった。お供えを置くと持ってどこかに移動するという癖があるようだ。
お供えが消えると、鳥や魚が群がることがある。どうやら、食べられそうなものに餌付けをしているようだった。
姿を現すようになったのはなじんでくれるようとしているためなのか、と良いほうに解釈はできる。
いたずらをしても商品価値が落ちるとか、人が怪我するようないたずらはしない。時々、そっと触ってみたりはしているようだが……それ以上は特にない。突然触られたら怖いが。
イノアは祠にやってきた、水が減らない問題があるから。
「あなたのお力でなさったことですよね?」
こくんと精霊はうなずく。
「なら、どうしたらよろしいのでしょうか?」
イノアとしては要求があるなら言ってもらいたいのだ。精霊が気に入っていたらしい兄を出せに関しては全く無理なのだが、それ以外はできる要求なら応じる構えはある。
精霊は首をかしげる。精霊はしゃべらないが、言葉は理解しているようだ。しぐさを人間に当てはめるなら「特にない」と推測できる。本気か嘘かさっぱりわからない。
さて、このやりとりはすでに何度かやっている。
何度なため精霊がじれてきている様子を見せる。
イノアは意を決して、推測を口にしてみる。
「怒りに任せて頑張ってみたら、水位上がっちゃた、どーしようって感じでしょうか?」
精霊はぱっと顔を輝かせて、うなずいた。手をたたいて喜んでいる。
イノアは額に手を当て、首を横に振った。
●ハンターに依頼
イノア・クリシスは町にあるソサエティの支部に足を運んだ。
「イノア様、川のほうはどうですか?」
「依頼です」
声をかけた職員は「駄目だったのだ」と理解した。
「ハンターの皆さんなら、きっとあの精霊と仲良くできると思うのです。ついでに掃除してください」
「はい?」
「いえ……川の中何かあるとは言うのです。前回調べてくださったハンターの方がおっしゃっていましたから。それをどうにかしたいのです」
「あれ? 水夫……潜水士? 潜ってませんでした?」
「精霊に抵抗された上、主に体当たりをされたそうです」
「主……いるんですねぇ」
「いるんです……普通に船が行き来するのはいいんですが、潜ると邪魔をするそうです」
職員はふと思ったことを確認する。
「魔法生物とか雑魔とかってことはないんですね?」
「ないはずです。そうだったら、精霊がもっと怒っています」
職員は「確かに」とうなずいた。
「水の中のそれをどうにかすることですね」
「はい。ダムというおおざっぱな区切りだったのですが……見た人によると――」
――間取り図みたいだった、と。
職員はイノアの区切った言葉にキョトンとなる。
「間取り図って、家の作りを表すあれですよね?」
「それです」
「……?」
「壁などがきっちりと盛り上がっているので、あれ以上だったら船の底をすると想像できるそうです」
幸いなことに、精霊が怒りを鎮めてくれたことで現状維持。
「ダムが原因で水かさが上がったわけですよね」
「可能性はあるのですが、どっちかというと、精霊自身が、水かさ増して戻せてないないみたいです」
職員は絶句する。
「状況を整理しますね?」
職員は依頼を書き込みながら確認する。
「水かさは減らない、精霊は戻せないぽい」
「……ええ」
「ダムは間取り図みたいとはいえ、元に戻すようにしてほしい」
「そうですね」
「あれ、あそこ川幅いくらくらいありますっけ? あと水深」
「広いところで170メートル、深いところで5メートルです」
「……意外と大きい」
「河原部分も含まれていますし、あくまで深いところです」
まあ、舟の行き来に問題がない程度の深さ。
「ん? 川の向こう側の人って水増えたなぁって思ったりしていないんですか!?」
「……聞きませんね」
「……間取り図があるのはどの辺です?」
「こちらの岸辺5メートル離れたところから20メートル先まであります……ひょっとしてその図に何かあるのでしょうか?」
イノアのふとつぶやく。職員は驚いて顔をあげた。
「結界というのでしょうか? 力の及ぶ範囲というのが何か固定されているのではないでしょうか?」
「……」
「符術師の知り合いがおりますし、魔法って範囲や空間というのもあるのでしょう?」
「なるほど」
職員はうなずく。
「とりあえず、精霊をどうにかする、と」
「主は注意です。主にはお子さんもいるそうです」
ぬしには――と書き込み、職員は顔をガバッとあげる。
「待ってください、魚に家族構成?」
「噂に聞くところによると、去年の秋にカップルでいるのが目撃され、そのあと、小さい魚の大群とと主がいるのが目撃されたとか」
「よくわからない! その情報網!」
職員はイノアが冗談で言っているのか否か理解できていない。イノアはまじめな顔をしている。
「あ、そうです! ユニット! CAMとか使えば簡単に片付くんじゃないですか? だってすっごく大きいんですよ。あっという間に……」
「片付くかもしれませんが、川の向こう隣の領地ですよ? 根回しを先にしないと……」
「……根回し頑張っていただくのは……」
「どれだけの月日がかかるかと思いますか? これで兄が生きていれば話は変わるでしょうけど。兄が興味持って実演させるから見に来てとかごまかして堂々と掃除する……。現在の兄いますけどあれですよ?」
職員は憂悦孤唱プエルがイノアの兄ニコラス・クリシスだと一致した情報が流れたときのことを思い出した。
職員は思う、あのイケメン予備軍だったあの若君が!
町の女の子のハートわしづかみだった若君が!
現在は無邪気になんかやらかしてくれる歪虚だ。最近目立った活動をしていないが、かつて辺境の集落1つを消滅させている。
「……歪虚ですもんね」
「というわけで、人力でやるしかないのです。精霊や主の対応ができれば、町の人でもできますけど……そもそも、兄が生きていたら、この事件ないですよ」
「あー、精霊の心さえつかむ若君」
職員は溜息をもらしながら「ユニット不可」にチェックを入れた。
グラズヘイム王国にある川沿いの町。
領主のイノア・クリシスはハンターのおかげで事件解決の糸口はつかんだとはいえ、解決していなかった。
精霊は妙に人の前に出てくるようにはなった。お供えを置くと持ってどこかに移動するという癖があるようだ。
お供えが消えると、鳥や魚が群がることがある。どうやら、食べられそうなものに餌付けをしているようだった。
姿を現すようになったのはなじんでくれるようとしているためなのか、と良いほうに解釈はできる。
いたずらをしても商品価値が落ちるとか、人が怪我するようないたずらはしない。時々、そっと触ってみたりはしているようだが……それ以上は特にない。突然触られたら怖いが。
イノアは祠にやってきた、水が減らない問題があるから。
「あなたのお力でなさったことですよね?」
こくんと精霊はうなずく。
「なら、どうしたらよろしいのでしょうか?」
イノアとしては要求があるなら言ってもらいたいのだ。精霊が気に入っていたらしい兄を出せに関しては全く無理なのだが、それ以外はできる要求なら応じる構えはある。
精霊は首をかしげる。精霊はしゃべらないが、言葉は理解しているようだ。しぐさを人間に当てはめるなら「特にない」と推測できる。本気か嘘かさっぱりわからない。
さて、このやりとりはすでに何度かやっている。
何度なため精霊がじれてきている様子を見せる。
イノアは意を決して、推測を口にしてみる。
「怒りに任せて頑張ってみたら、水位上がっちゃた、どーしようって感じでしょうか?」
精霊はぱっと顔を輝かせて、うなずいた。手をたたいて喜んでいる。
イノアは額に手を当て、首を横に振った。
●ハンターに依頼
イノア・クリシスは町にあるソサエティの支部に足を運んだ。
「イノア様、川のほうはどうですか?」
「依頼です」
声をかけた職員は「駄目だったのだ」と理解した。
「ハンターの皆さんなら、きっとあの精霊と仲良くできると思うのです。ついでに掃除してください」
「はい?」
「いえ……川の中何かあるとは言うのです。前回調べてくださったハンターの方がおっしゃっていましたから。それをどうにかしたいのです」
「あれ? 水夫……潜水士? 潜ってませんでした?」
「精霊に抵抗された上、主に体当たりをされたそうです」
「主……いるんですねぇ」
「いるんです……普通に船が行き来するのはいいんですが、潜ると邪魔をするそうです」
職員はふと思ったことを確認する。
「魔法生物とか雑魔とかってことはないんですね?」
「ないはずです。そうだったら、精霊がもっと怒っています」
職員は「確かに」とうなずいた。
「水の中のそれをどうにかすることですね」
「はい。ダムというおおざっぱな区切りだったのですが……見た人によると――」
――間取り図みたいだった、と。
職員はイノアの区切った言葉にキョトンとなる。
「間取り図って、家の作りを表すあれですよね?」
「それです」
「……?」
「壁などがきっちりと盛り上がっているので、あれ以上だったら船の底をすると想像できるそうです」
幸いなことに、精霊が怒りを鎮めてくれたことで現状維持。
「ダムが原因で水かさが上がったわけですよね」
「可能性はあるのですが、どっちかというと、精霊自身が、水かさ増して戻せてないないみたいです」
職員は絶句する。
「状況を整理しますね?」
職員は依頼を書き込みながら確認する。
「水かさは減らない、精霊は戻せないぽい」
「……ええ」
「ダムは間取り図みたいとはいえ、元に戻すようにしてほしい」
「そうですね」
「あれ、あそこ川幅いくらくらいありますっけ? あと水深」
「広いところで170メートル、深いところで5メートルです」
「……意外と大きい」
「河原部分も含まれていますし、あくまで深いところです」
まあ、舟の行き来に問題がない程度の深さ。
「ん? 川の向こう側の人って水増えたなぁって思ったりしていないんですか!?」
「……聞きませんね」
「……間取り図があるのはどの辺です?」
「こちらの岸辺5メートル離れたところから20メートル先まであります……ひょっとしてその図に何かあるのでしょうか?」
イノアのふとつぶやく。職員は驚いて顔をあげた。
「結界というのでしょうか? 力の及ぶ範囲というのが何か固定されているのではないでしょうか?」
「……」
「符術師の知り合いがおりますし、魔法って範囲や空間というのもあるのでしょう?」
「なるほど」
職員はうなずく。
「とりあえず、精霊をどうにかする、と」
「主は注意です。主にはお子さんもいるそうです」
ぬしには――と書き込み、職員は顔をガバッとあげる。
「待ってください、魚に家族構成?」
「噂に聞くところによると、去年の秋にカップルでいるのが目撃され、そのあと、小さい魚の大群とと主がいるのが目撃されたとか」
「よくわからない! その情報網!」
職員はイノアが冗談で言っているのか否か理解できていない。イノアはまじめな顔をしている。
「あ、そうです! ユニット! CAMとか使えば簡単に片付くんじゃないですか? だってすっごく大きいんですよ。あっという間に……」
「片付くかもしれませんが、川の向こう隣の領地ですよ? 根回しを先にしないと……」
「……根回し頑張っていただくのは……」
「どれだけの月日がかかるかと思いますか? これで兄が生きていれば話は変わるでしょうけど。兄が興味持って実演させるから見に来てとかごまかして堂々と掃除する……。現在の兄いますけどあれですよ?」
職員は憂悦孤唱プエルがイノアの兄ニコラス・クリシスだと一致した情報が流れたときのことを思い出した。
職員は思う、あのイケメン予備軍だったあの若君が!
町の女の子のハートわしづかみだった若君が!
現在は無邪気になんかやらかしてくれる歪虚だ。最近目立った活動をしていないが、かつて辺境の集落1つを消滅させている。
「……歪虚ですもんね」
「というわけで、人力でやるしかないのです。精霊や主の対応ができれば、町の人でもできますけど……そもそも、兄が生きていたら、この事件ないですよ」
「あー、精霊の心さえつかむ若君」
職員は溜息をもらしながら「ユニット不可」にチェックを入れた。
リプレイ本文
●状況確認
精霊の様子を聞き原因はニコラス・クリシスこと歪虚のプエルということもあり、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)から溜息が漏れる。
「あいつは人や歪虚だけじゃなくて精霊までも……みんなたらしこむから『みたらし』とでも呼ぶべきか?」
ぼそりつぶやく。
メイム(ka2290)は「川の中のダムぽい物、壊すなら任せて」と告げる。
合わせて籠に菓子類とメモを入れて用意していた。
「実家っていうしー、たまたま里帰りとかされたら困るしねー」
精霊の説得は任せておき、プエル対策と状況把握に努める。
精霊説得係を買って出たリュー・グランフェスト(ka2419)は話を聞いて、精霊の特徴等を聞いておく。
「言葉よりと根気が必要になりそうだなぁ」
種族が異なれば概念が同一とは限らない。
七夜・真夕(ka3977)も精霊への説得を行う。
「まずは精霊さんの御機嫌取りから? ダムぽいのを壊すにしてもこれ以上怒らせても仕方がないし」
できれば仲良くなりたい。
ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804)はうなる。
「間取り図ってなんだろう? 水の精霊で自然なんでしょ? 人工物ぽいのが気になる」
何かのメッセージがあるのか見てみたい。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)は話の後、立ち上がる。
「贈り物を欲しがる女精霊なら花で良かろう。主は魚祭りで胃袋に移し替えという頓智は禁止されているなら、餌と網で一時期追えばよかろう」
にっと彼は笑った。
●集まるもの
レイオスは出かける前にイノアと話す。
「あの精霊、偉ぶる癖に子供っぽいのがあいつに似ているな……だから気が合ったのかもしれないが」
「兄のことですか? 当時の兄は……今思えば、ですが、子供っぽさを隠そうと必死だったのかもしれません」
「なるほどな」
レイオスはライブラリで見た記憶を探る。
「兄は非常に紳士でしたから」
「……あ、うん」
意外とブラコンだったのではという言葉が浮かぶが飲み込んでおく。
「で、な、精霊にプレゼントとして動物のぬいぐるみをあげてみるというのはどうかなと」
「……ぬいぐるみ?」
「ああ、ほら、可愛いのが好きなのかもしれないし。リボンや指輪はあるんだが、そういうぬいぐるみはなくて」
「分かりました。用意します」
イノアは侍女にぬいぐるみなどが入っている場所にレイオスを案内するよう頼んだ。
全員が動いたとき、ルベーノはイノアの手をつかむ。
「バルバライン殿っ!」
イノアの護衛の騎士が気色ばむ。
「ったるさい! まず話を聞け」
「その前につかむな」
イノアが呆然としている間に言い合いが続く。
「で、精霊に捧げる花、選びに行くぞ、一緒に来い」
「こら、イノア様の手を」
「……説明すっから!」
面倒になったのかルベーノは説明を先にすることとなる。
「精霊はお前の兄に興味を持った。縁を結ぶことができたわけだ」
偶然だろうがなんだろうが、実際、精霊はイノアの兄が渡したというブローチを大切にしまっている、水の中でないところに。
「今度はお前が縁を結ぶ。なら、お前が愛でるもの……花と言ったが別の何かがあるならそれを言え。お前が愛でるものを精霊にも捧げる。それを気持ちとして」
剣を抜きそうだった騎士は柄から手を放す。
イノアはきゅっと唇を結びうなずいた。
「分かりました。参ります」
ルベーノはニッと歯を見せた。
メイムはお菓子入り籠を川の木の陰に置く。
来ないと思うが用心して損はない。精霊に歪虚が絡むと良くないことが起こると直感するから。
「さて、聞き込みをしてみよう」
水の中を見た人を探し、間取り図がどんなのか聞くことにする。
祠の前にやってきたリューと真夕、ピアレーチェ。
精霊はいないようだ。しかし、接点はここであるため、掃除をする。
「以前、祠は壊れているところもあったみたいだけど、それは直っているね」
真夕が見てもよくわかる。屋根に真新しい部分がある。適当にとってつけたというわけではなく、きちんと形を合わせて不格好にならないように注意して作られている。それでも、全体を直していないため新しさは目立つ。
「不満はないらしいけどな」
リューは首をかしげる。
「パン」
ピアレーチェはパンをお供えする。
「精霊ちゃん! ダムッぽいのが気になるから見てきます! 主さん一家にこのパンはあげてもいいから」
精霊を待っていたら時間がかかるかもしれないため、見に行くことにした。岸から離れているなら近くまで小舟は出してもらうつもりだ。
「気を付けてね。何かあったら声をあげるんだよ」
「こっちも精霊と進展あったら声かけるから」
真夕とリューに見送られ、ピアレーチェは川に向かった。
間取り図については見たがあやふやだと、メイムは知った。
「ああ」
「メイムさん」
水に潜る準備中のピアレーチェが手を振っている。
「もうするの?」
「いいえ。精霊が作ったというのが気になるか見てくるよ」
「主は危険じゃない?」
「まあ、行ってみます」
メイムが見守る中、ピアレーチェは小舟で近くに行った。
レイオスがぬいぐるみを持って遅れてやってきた。
途方に暮れているリューと真夕と背後に迫る精霊を目撃する。
二人は背後にそれがいるのに気づいていない様子だ。精霊はそろりそろりと近づき、脅かそうとしているようだ。
「リュー、後ろ!」
声をかけられリューは振り返るが、誰もない。
ワンテンポ遅れて振り返った真夕は目の前を横切る水の塊を見た。
「きゃああああ」
反射的に悲鳴を上げた。
「えーと」
レイオスは駆け寄って、木の陰に隠れた精霊を見る。
「領主……イノアからぬいぐるみをもらってきたんだが?」
猫のぬいぐるみを振って見せる。
「リボンや指輪なんかもあるけど……」
木の陰から精霊は出てこない。
レイオスは祠にぬいぐるみと持参したものを置いた。
真夕は悲鳴を上げたが、陰にいる姿を見つめる。そこには水で彫像を作ったと言ったら信じそうな少女のようなモノがいた。髪も肌も、服も水。水であり止まっていない。その形で流れている。
「こんにちは、精霊さん。先ほどはごめんなさい。目の前を水の塊が動いていた、って見えて驚いてしまったの」
少しだけ間を詰めて、真夕は丁寧にお辞儀をする。
「私の名前は七夜・真夕よ、ハンターをしているわ」
精霊は何か言うように口を動かしつつ自分を指す。
「同じく、俺もハンターでリューってんだ。よろしくな」
リューも続いて自己紹介した。概念がどうか以前の問題で礼儀は重要と考えた。通じなくても丁寧さというのは伝わるはずだ。
精霊は自分を指し、首をかしげる。
レイオスは説得をひとまずうかがう。精霊は音楽に興味がある可能性を考え、ハーモニカを吹き様子を見る。
説得の前の会話が続く。
「水かさ問題、一部だけって話なのよね?」
真夕が問うと精霊が考え込む。
「何か嫌なことがあるの? 祠がぼろいとか? 掃除が遅いとか?」
真夕が畳みかけるが精霊はのらりくらりとゆらゆらしている。
「土を盛っているらしいから、それを削って元に戻したいんだ」
リューが続けた。精霊がイラっとしたよな表情をした。
「ここの主っているだろ? でっかい魚の。そいつを説得してほしいんだ」
精霊は無表情になった。
●乙女たち
イノアはルベーノに連れられて町に来た。
「花屋は何か所かあります」
「雑貨……そうだな、女が好きそうなアイテムがある店はどこだ?」
町の中心部におおよそ集まっているため探せば見つかるだろう。それでも路地裏にあれば簡単にルベーノには見つけられない。
イノアは合点したとうなずく。先ほどレイオスが言っていたこともある、精霊が少女のようだという点。
「どういったのが良いでしょうか?」
「キラキラしたのがいいか?」
ルベーノはイノアを見る。彼女の悩みが深い眉間のしわが気になっていた。
イノアとともに雑貨店に入るとルベーノに視線が刺さる。雑貨屋、少女が多かった。
「これがいいか? どうだ?」
精霊に捧げるならイノアが愛でる物と考え、ルベーノは見せる。
「あの精霊に合うのがいいですよね? こちらの色のほうが良いかもしれません」
「それとこれか、お前に似合う」
ルベーノは蜻蛉玉のペンダントを手にする、困惑している間にルベーノは首にさっと結ぶ。
「うむ、似合うぞ」
「……」
「お前が笑えるようにいくらでも手伝ってやろう……下を向くな、前を向け。せっかくの美人が眉間にしわを寄せてどうする」
イノアは頬を赤くしながら眉間をつつく。
「さて、次は精霊だな」
イノアをエスコートしてルベーノは向かった。
ピアレーチェは何度か潜る。潜ってその図を覚え、紙に記す。
潜ってみると分かる、主や魚が多くいるが、特に何もしてこない。それを壊そうとすると襲われるようだ。
「こんな感じかな」
かけた図を見て首をかしげる。
「メイムさーん」
小舟が戻ってくる。
「こんな図だったよ」
メイムは覗き込む。
「……あたしのさ、発想が違うかもしれないけど、一軒家?」
「うん、同じ発想だよ」
ピアレーチェはうなずく。
「これはどういう意味かな?」
「精霊ちゃんに聞いてみよう」
祠に向かうことにした。
ハーモニカの音を聞きながら、精霊との対峙が続くリューと真夕。
「精霊さん、不満あるなら聞くよ」
「そうだぞ、俺たちは領主にちゃんと言うから」
「ダムが何かわからないけれど、あなたの大切な物で壊すことになるんだし、代償として何か欲しいなら言ってほしいの」
「水位が下がらないと危険だから、みんな困っているんだ」
真夕とリューが説得する。
精霊は木の陰から出てきて、歌うしぐさをした。声は出ていないが、ゆったりとした歌のイメージ。
「歌が好きなの?」
精霊は歌う真似をやめて首をかしげる。
「合唱やる奴もいるだろうから、コンサートでもやってもらうとか?」
リューの言葉に精霊は首を横に振る。
「おーい、お待たせ」
ピアレーチェとメイムがやってくる。
「精霊ちゃんに聞きたいことがあるの」
ピアレーチェはぴしっと紙を見せる。
「この家ぽいのは何?」
精霊はもじもじする。
「精霊ちゃんが見てきたおうち?」
精霊はうなずくと祠の裏に行く。
レイオスはハーモニカを止め、精霊の動きを見守る。
ブローチを取り出した精霊はそれを頬ずりする。
「ニコラスくんが精霊ちゃんにあげたブローチは、何か頼んだお礼?」
イノアとルベーノがやってくる。
精霊が口を尖らせたが説明を続ける。
精霊は川べりに立ち歌うしぐさをする。ブローチを川につける。
次に精霊は川に戻り、ブローチを陸にあげた。
「……歌っていたのは兄ですね」
イノアの言葉に精霊はうなずいた。
「ブローチが落ちたのを精霊ちゃんが拾ってあげた?」
ピアレーチェの言葉にうなずく精霊。
「驚いただろうね」
真夕に精霊は首を横に振る。
精霊はブローチを天に透かして見たりする。
「……うーん、ちょっとわかりにくいな」
リューは首をひねった。
精霊は歌う真似をし、手を振る。
手にはブローチ。
精霊は手招きをする。
ピアレーチェが近づくと紙をつつく。
自分を指した後、図上の点を指す。ブローチを指した後、別の点を指した。
精霊は寂しそうな顔をした。
「……精霊よ。この地を治めるイノアが同じ地に住まうあなたに感謝をささげ心を分かち合いたいと花を持ってきた、受けてくれまいか」
ルベーノはすかさず告げる。
イノアは持ってきたものをしゃがんで捧げる。
精霊はイノアをじっと見る。精霊は手を伸ばすとイノアの頭を撫でた。
「ダムっぽいのが増水の原因かもしれないと思っている。それだけは壊させてほしい。川を必要以上に荒らしたり、生き物を無為に傷つけたししないと誓う。だから頼みます」
レイオスが頭を下げた。
「すぐに終わる、だからお願いする」
「もっとあなたのことも知りたい。だから、付き合っていくのに必要なことを知りたいの」
リューと真夕が続いた。
精霊は静かにうなずいた。
祠にあるパンを手にすると、精霊は水に戻った。
「いいってことかな?」
メイムは尋ねる。
誰もが回答は見つけられない。
「まず、確認してからのほうがいいかもしれないな」
「そうだね、見てくるよ」
レイオスは主の子供がたくさんいるという話でもあるし、パンを手に潜る。ピアレーチェも確認のために続いた。
精霊の姿は水と同化しており見えない。
ただ、流れは感じた。
大きな魚が悠々と泳いでいるのが見えた。
あれが主だと分かる。それは離れていく。続いている小さな魚の集団が、レイオスに向かってきた。
その手にあったパンを奪って逃げて行った。
「……ごふっ」
「……あはは」
水面に上がってピアレーチェは笑った。
「じゃ、遠慮なくいくよ」
メイムは覚醒状態になると、霊闘士の奥義【現界せしもの】を使用した。
リューが応援する。
「お手並み拝見!」
イノアの表情が引きつった。水に入れば目立たないかもしれないが、対岸に視線がいく。
「少しの間だけ水が濁るけどごめんねー」
メイムは魚たちに話しかけるように近づく。精霊が避難させたのか、魚の姿は見えなかったのは幸いだ。
間取り図みたいなところを壊した。水しぶきが上がる。
結界の何かの手ごたえは感じない。
「んー、これで行けるかな」
二度目の行動で目立つところは壊れた。あとは細かいところであるが、何とかなりそうだ。
●精霊の声
「お疲れ様」
リューはメイムを迎える。
「結界はない感触?」
やんわりあったのかもしれないが、衝撃はなかった。
「精霊さんが出てきたわ……壊すのに協力してくれてありがとう」
真夕の視線の先には精霊がおり、それはどこかすっきりしたような顔をしている。
リューは水を眺める。嵩が減ったようには見えない。
「あの……仲良くしてくれますか?」
イノアの問いかけに精霊は微笑む。花をとると放り投げて遊び始める。
「気に入らないわけじゃねーんだよな!」
ルベーノが苦笑すると精霊は意地悪ぽく笑う。
精霊は川を背に立つと、もごもごと口を動かす。
歌った、単音で伸びる声で。
「声は出る? 歌ならいいのか?」
レイオスは精霊を見つめる。
「精霊ちゃん、きれい」
ピアレーチェが激しく拍手をする。
精霊は照れたように頭に手をやった。そして、指さした。
その先をみんなが見ると、籠を狙う鳥と猫がいた。
「あああ、ちょっとあんたたち!」
メイムはそれが何かわかって慌てる。
「あ、それはチョコ餅。ダメ、食べたら死ぬ」
猫が走り去ろうとしたところ精霊が水を飛ばし脅かした。脅かしたところで、口からチョコ餅の袋を放した。
精霊は楽しそうに笑うしぐさ。
「まったく……でもまあ、何事もなく、心配しすぎたかな」
メイムはホッとすると笑った。
精霊の様子を聞き原因はニコラス・クリシスこと歪虚のプエルということもあり、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)から溜息が漏れる。
「あいつは人や歪虚だけじゃなくて精霊までも……みんなたらしこむから『みたらし』とでも呼ぶべきか?」
ぼそりつぶやく。
メイム(ka2290)は「川の中のダムぽい物、壊すなら任せて」と告げる。
合わせて籠に菓子類とメモを入れて用意していた。
「実家っていうしー、たまたま里帰りとかされたら困るしねー」
精霊の説得は任せておき、プエル対策と状況把握に努める。
精霊説得係を買って出たリュー・グランフェスト(ka2419)は話を聞いて、精霊の特徴等を聞いておく。
「言葉よりと根気が必要になりそうだなぁ」
種族が異なれば概念が同一とは限らない。
七夜・真夕(ka3977)も精霊への説得を行う。
「まずは精霊さんの御機嫌取りから? ダムぽいのを壊すにしてもこれ以上怒らせても仕方がないし」
できれば仲良くなりたい。
ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804)はうなる。
「間取り図ってなんだろう? 水の精霊で自然なんでしょ? 人工物ぽいのが気になる」
何かのメッセージがあるのか見てみたい。
ルベーノ・バルバライン(ka6752)は話の後、立ち上がる。
「贈り物を欲しがる女精霊なら花で良かろう。主は魚祭りで胃袋に移し替えという頓智は禁止されているなら、餌と網で一時期追えばよかろう」
にっと彼は笑った。
●集まるもの
レイオスは出かける前にイノアと話す。
「あの精霊、偉ぶる癖に子供っぽいのがあいつに似ているな……だから気が合ったのかもしれないが」
「兄のことですか? 当時の兄は……今思えば、ですが、子供っぽさを隠そうと必死だったのかもしれません」
「なるほどな」
レイオスはライブラリで見た記憶を探る。
「兄は非常に紳士でしたから」
「……あ、うん」
意外とブラコンだったのではという言葉が浮かぶが飲み込んでおく。
「で、な、精霊にプレゼントとして動物のぬいぐるみをあげてみるというのはどうかなと」
「……ぬいぐるみ?」
「ああ、ほら、可愛いのが好きなのかもしれないし。リボンや指輪はあるんだが、そういうぬいぐるみはなくて」
「分かりました。用意します」
イノアは侍女にぬいぐるみなどが入っている場所にレイオスを案内するよう頼んだ。
全員が動いたとき、ルベーノはイノアの手をつかむ。
「バルバライン殿っ!」
イノアの護衛の騎士が気色ばむ。
「ったるさい! まず話を聞け」
「その前につかむな」
イノアが呆然としている間に言い合いが続く。
「で、精霊に捧げる花、選びに行くぞ、一緒に来い」
「こら、イノア様の手を」
「……説明すっから!」
面倒になったのかルベーノは説明を先にすることとなる。
「精霊はお前の兄に興味を持った。縁を結ぶことができたわけだ」
偶然だろうがなんだろうが、実際、精霊はイノアの兄が渡したというブローチを大切にしまっている、水の中でないところに。
「今度はお前が縁を結ぶ。なら、お前が愛でるもの……花と言ったが別の何かがあるならそれを言え。お前が愛でるものを精霊にも捧げる。それを気持ちとして」
剣を抜きそうだった騎士は柄から手を放す。
イノアはきゅっと唇を結びうなずいた。
「分かりました。参ります」
ルベーノはニッと歯を見せた。
メイムはお菓子入り籠を川の木の陰に置く。
来ないと思うが用心して損はない。精霊に歪虚が絡むと良くないことが起こると直感するから。
「さて、聞き込みをしてみよう」
水の中を見た人を探し、間取り図がどんなのか聞くことにする。
祠の前にやってきたリューと真夕、ピアレーチェ。
精霊はいないようだ。しかし、接点はここであるため、掃除をする。
「以前、祠は壊れているところもあったみたいだけど、それは直っているね」
真夕が見てもよくわかる。屋根に真新しい部分がある。適当にとってつけたというわけではなく、きちんと形を合わせて不格好にならないように注意して作られている。それでも、全体を直していないため新しさは目立つ。
「不満はないらしいけどな」
リューは首をかしげる。
「パン」
ピアレーチェはパンをお供えする。
「精霊ちゃん! ダムッぽいのが気になるから見てきます! 主さん一家にこのパンはあげてもいいから」
精霊を待っていたら時間がかかるかもしれないため、見に行くことにした。岸から離れているなら近くまで小舟は出してもらうつもりだ。
「気を付けてね。何かあったら声をあげるんだよ」
「こっちも精霊と進展あったら声かけるから」
真夕とリューに見送られ、ピアレーチェは川に向かった。
間取り図については見たがあやふやだと、メイムは知った。
「ああ」
「メイムさん」
水に潜る準備中のピアレーチェが手を振っている。
「もうするの?」
「いいえ。精霊が作ったというのが気になるか見てくるよ」
「主は危険じゃない?」
「まあ、行ってみます」
メイムが見守る中、ピアレーチェは小舟で近くに行った。
レイオスがぬいぐるみを持って遅れてやってきた。
途方に暮れているリューと真夕と背後に迫る精霊を目撃する。
二人は背後にそれがいるのに気づいていない様子だ。精霊はそろりそろりと近づき、脅かそうとしているようだ。
「リュー、後ろ!」
声をかけられリューは振り返るが、誰もない。
ワンテンポ遅れて振り返った真夕は目の前を横切る水の塊を見た。
「きゃああああ」
反射的に悲鳴を上げた。
「えーと」
レイオスは駆け寄って、木の陰に隠れた精霊を見る。
「領主……イノアからぬいぐるみをもらってきたんだが?」
猫のぬいぐるみを振って見せる。
「リボンや指輪なんかもあるけど……」
木の陰から精霊は出てこない。
レイオスは祠にぬいぐるみと持参したものを置いた。
真夕は悲鳴を上げたが、陰にいる姿を見つめる。そこには水で彫像を作ったと言ったら信じそうな少女のようなモノがいた。髪も肌も、服も水。水であり止まっていない。その形で流れている。
「こんにちは、精霊さん。先ほどはごめんなさい。目の前を水の塊が動いていた、って見えて驚いてしまったの」
少しだけ間を詰めて、真夕は丁寧にお辞儀をする。
「私の名前は七夜・真夕よ、ハンターをしているわ」
精霊は何か言うように口を動かしつつ自分を指す。
「同じく、俺もハンターでリューってんだ。よろしくな」
リューも続いて自己紹介した。概念がどうか以前の問題で礼儀は重要と考えた。通じなくても丁寧さというのは伝わるはずだ。
精霊は自分を指し、首をかしげる。
レイオスは説得をひとまずうかがう。精霊は音楽に興味がある可能性を考え、ハーモニカを吹き様子を見る。
説得の前の会話が続く。
「水かさ問題、一部だけって話なのよね?」
真夕が問うと精霊が考え込む。
「何か嫌なことがあるの? 祠がぼろいとか? 掃除が遅いとか?」
真夕が畳みかけるが精霊はのらりくらりとゆらゆらしている。
「土を盛っているらしいから、それを削って元に戻したいんだ」
リューが続けた。精霊がイラっとしたよな表情をした。
「ここの主っているだろ? でっかい魚の。そいつを説得してほしいんだ」
精霊は無表情になった。
●乙女たち
イノアはルベーノに連れられて町に来た。
「花屋は何か所かあります」
「雑貨……そうだな、女が好きそうなアイテムがある店はどこだ?」
町の中心部におおよそ集まっているため探せば見つかるだろう。それでも路地裏にあれば簡単にルベーノには見つけられない。
イノアは合点したとうなずく。先ほどレイオスが言っていたこともある、精霊が少女のようだという点。
「どういったのが良いでしょうか?」
「キラキラしたのがいいか?」
ルベーノはイノアを見る。彼女の悩みが深い眉間のしわが気になっていた。
イノアとともに雑貨店に入るとルベーノに視線が刺さる。雑貨屋、少女が多かった。
「これがいいか? どうだ?」
精霊に捧げるならイノアが愛でる物と考え、ルベーノは見せる。
「あの精霊に合うのがいいですよね? こちらの色のほうが良いかもしれません」
「それとこれか、お前に似合う」
ルベーノは蜻蛉玉のペンダントを手にする、困惑している間にルベーノは首にさっと結ぶ。
「うむ、似合うぞ」
「……」
「お前が笑えるようにいくらでも手伝ってやろう……下を向くな、前を向け。せっかくの美人が眉間にしわを寄せてどうする」
イノアは頬を赤くしながら眉間をつつく。
「さて、次は精霊だな」
イノアをエスコートしてルベーノは向かった。
ピアレーチェは何度か潜る。潜ってその図を覚え、紙に記す。
潜ってみると分かる、主や魚が多くいるが、特に何もしてこない。それを壊そうとすると襲われるようだ。
「こんな感じかな」
かけた図を見て首をかしげる。
「メイムさーん」
小舟が戻ってくる。
「こんな図だったよ」
メイムは覗き込む。
「……あたしのさ、発想が違うかもしれないけど、一軒家?」
「うん、同じ発想だよ」
ピアレーチェはうなずく。
「これはどういう意味かな?」
「精霊ちゃんに聞いてみよう」
祠に向かうことにした。
ハーモニカの音を聞きながら、精霊との対峙が続くリューと真夕。
「精霊さん、不満あるなら聞くよ」
「そうだぞ、俺たちは領主にちゃんと言うから」
「ダムが何かわからないけれど、あなたの大切な物で壊すことになるんだし、代償として何か欲しいなら言ってほしいの」
「水位が下がらないと危険だから、みんな困っているんだ」
真夕とリューが説得する。
精霊は木の陰から出てきて、歌うしぐさをした。声は出ていないが、ゆったりとした歌のイメージ。
「歌が好きなの?」
精霊は歌う真似をやめて首をかしげる。
「合唱やる奴もいるだろうから、コンサートでもやってもらうとか?」
リューの言葉に精霊は首を横に振る。
「おーい、お待たせ」
ピアレーチェとメイムがやってくる。
「精霊ちゃんに聞きたいことがあるの」
ピアレーチェはぴしっと紙を見せる。
「この家ぽいのは何?」
精霊はもじもじする。
「精霊ちゃんが見てきたおうち?」
精霊はうなずくと祠の裏に行く。
レイオスはハーモニカを止め、精霊の動きを見守る。
ブローチを取り出した精霊はそれを頬ずりする。
「ニコラスくんが精霊ちゃんにあげたブローチは、何か頼んだお礼?」
イノアとルベーノがやってくる。
精霊が口を尖らせたが説明を続ける。
精霊は川べりに立ち歌うしぐさをする。ブローチを川につける。
次に精霊は川に戻り、ブローチを陸にあげた。
「……歌っていたのは兄ですね」
イノアの言葉に精霊はうなずいた。
「ブローチが落ちたのを精霊ちゃんが拾ってあげた?」
ピアレーチェの言葉にうなずく精霊。
「驚いただろうね」
真夕に精霊は首を横に振る。
精霊はブローチを天に透かして見たりする。
「……うーん、ちょっとわかりにくいな」
リューは首をひねった。
精霊は歌う真似をし、手を振る。
手にはブローチ。
精霊は手招きをする。
ピアレーチェが近づくと紙をつつく。
自分を指した後、図上の点を指す。ブローチを指した後、別の点を指した。
精霊は寂しそうな顔をした。
「……精霊よ。この地を治めるイノアが同じ地に住まうあなたに感謝をささげ心を分かち合いたいと花を持ってきた、受けてくれまいか」
ルベーノはすかさず告げる。
イノアは持ってきたものをしゃがんで捧げる。
精霊はイノアをじっと見る。精霊は手を伸ばすとイノアの頭を撫でた。
「ダムっぽいのが増水の原因かもしれないと思っている。それだけは壊させてほしい。川を必要以上に荒らしたり、生き物を無為に傷つけたししないと誓う。だから頼みます」
レイオスが頭を下げた。
「すぐに終わる、だからお願いする」
「もっとあなたのことも知りたい。だから、付き合っていくのに必要なことを知りたいの」
リューと真夕が続いた。
精霊は静かにうなずいた。
祠にあるパンを手にすると、精霊は水に戻った。
「いいってことかな?」
メイムは尋ねる。
誰もが回答は見つけられない。
「まず、確認してからのほうがいいかもしれないな」
「そうだね、見てくるよ」
レイオスは主の子供がたくさんいるという話でもあるし、パンを手に潜る。ピアレーチェも確認のために続いた。
精霊の姿は水と同化しており見えない。
ただ、流れは感じた。
大きな魚が悠々と泳いでいるのが見えた。
あれが主だと分かる。それは離れていく。続いている小さな魚の集団が、レイオスに向かってきた。
その手にあったパンを奪って逃げて行った。
「……ごふっ」
「……あはは」
水面に上がってピアレーチェは笑った。
「じゃ、遠慮なくいくよ」
メイムは覚醒状態になると、霊闘士の奥義【現界せしもの】を使用した。
リューが応援する。
「お手並み拝見!」
イノアの表情が引きつった。水に入れば目立たないかもしれないが、対岸に視線がいく。
「少しの間だけ水が濁るけどごめんねー」
メイムは魚たちに話しかけるように近づく。精霊が避難させたのか、魚の姿は見えなかったのは幸いだ。
間取り図みたいなところを壊した。水しぶきが上がる。
結界の何かの手ごたえは感じない。
「んー、これで行けるかな」
二度目の行動で目立つところは壊れた。あとは細かいところであるが、何とかなりそうだ。
●精霊の声
「お疲れ様」
リューはメイムを迎える。
「結界はない感触?」
やんわりあったのかもしれないが、衝撃はなかった。
「精霊さんが出てきたわ……壊すのに協力してくれてありがとう」
真夕の視線の先には精霊がおり、それはどこかすっきりしたような顔をしている。
リューは水を眺める。嵩が減ったようには見えない。
「あの……仲良くしてくれますか?」
イノアの問いかけに精霊は微笑む。花をとると放り投げて遊び始める。
「気に入らないわけじゃねーんだよな!」
ルベーノが苦笑すると精霊は意地悪ぽく笑う。
精霊は川を背に立つと、もごもごと口を動かす。
歌った、単音で伸びる声で。
「声は出る? 歌ならいいのか?」
レイオスは精霊を見つめる。
「精霊ちゃん、きれい」
ピアレーチェが激しく拍手をする。
精霊は照れたように頭に手をやった。そして、指さした。
その先をみんなが見ると、籠を狙う鳥と猫がいた。
「あああ、ちょっとあんたたち!」
メイムはそれが何かわかって慌てる。
「あ、それはチョコ餅。ダメ、食べたら死ぬ」
猫が走り去ろうとしたところ精霊が水を飛ばし脅かした。脅かしたところで、口からチョコ餅の袋を放した。
精霊は楽しそうに笑うしぐさ。
「まったく……でもまあ、何事もなく、心配しすぎたかな」
メイムはホッとすると笑った。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/02 22:14:21 |
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川の底から ピアレーチェ・ヴィヴァーチェ(ka4804) ドワーフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2017/06/04 21:30:37 |