ゲスト
(ka0000)
少女の嘘と真実と
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/10/30 15:00
- 完成日
- 2014/11/06 21:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●森番小屋の炎
「大変なの! うちが、うちに! オ、オオカミが! オ、オオカミじゃなくてっ!」
森番小屋の少女は農作業をする村人にすがった。走ってきたために肩で息をし、しきりに森の方を振り返り気にしている。
村人は少女を見て、またかと思い、うなずいて話を聞いてやった。演技がだんだんうまくなり、今回は真っ青で目には涙も浮かべ真に迫っている。
森番も小屋は村から離れているため、少女が寂しいのは村の人々も理解している。森番の小屋は村から大人の足で一時間半離れているところにあるし、周りに人家があるわけではない。
少女は日中、村に遊びに来て、似たような年頃の子らと一緒に過ごしている。しかし、村の子たちも仕事があるから、なかなか少女に付き合ってばかりはいられない。ましてや、年齢が十歳を超えてしまえば、大人に近づき遊んでばかりはいられない。
一年半くらい前からだ、少女が嘘をつくようになったのは。
「お願い、父さんだけじゃ、ダメなんだよ。母さんと弟、まだ小屋にいるの! 助けて!」
農作業の手をとめ、村人は少女を見る。まだ嘘をかさねるのかといぶかしむ。必死過ぎて本当ではないかと考えるが、これまでの少女の言動から村人は心を動かされないように自分を戒めた。
「お願い! あ、あのままじゃ、だって、オオカミなのに、すごく大きくて棍棒みたいな腕してた、オオカミなのかなって。クマかもしれないし。でも、オオカミの群れもいたから」
少女の言葉は混乱している。
「おい、森から煙が上がっているぞ」
別の村人が指を差した。
農作業していた者たちは手をとめ、一大事だと知る。延焼すれば森だけではなく、離れている村にも影響があるかもしれない。
「あ、あああ! お母さん! ジョン!」
少女は悲鳴を上げる。少女はなだめる村人を振り切って、必要なものを手にする。手にした水の入ったバケツを引きずりながら少女は森に向かっていく。
村人たちは村のために、そして森番のために急いで消火と狼退治に動き出した。
●村と森番と
ハンターオフィスにやってきた親子は、森で起こった事件を語った。沈痛な面持ちで、奥歯に物が詰まったような言い方をしていた。些細なことでも解決の糸口になるかもしれないので、職員はしゃべってもらいたいと思う。
「村から北西に一時間ほど行ったところにある森に、雑魔が出たということですね?」
職員の確認に親子はうなずいた。
「森番の妻子が殺害されているのが、小屋の焼け跡から見つかったんです。足跡からオオカミと思われるものとクマか何か大きめのものもありました。森番自身は妻子を放って逃げるような男ではないので、森の奥に追いかけて入ってしまっているのかもしれません」
村人たちは森番小屋の消火を行い、遺体を収容して村に戻って警戒をしていたという。雑魔が出たと判断したのは、生命力に欠ける植物が目立ったためだった。
「あと、そこの女の子もいないんだ」
少年が付け加える。村に助けを求めに行った後、そのまま保護されていた。その間ずっと少年は一緒にいたのだが、母と弟の遺体に対面した後、少年が寝ている間に小さな弓を持って姿を消したという。
「たぶん、森にいるんだと思う。あの子、自分のせいで母親と小さい弟が死んだって思っているから」
父親の方は少年を止めようとしたが、少年はその手を振り払い職員に向かう。
「最初は本当だったんだよ、村に遊びにくるとき何かに追いかけられたって言ったのは。僕もその時いたから追いかける黒い影みたもの。ウサギだったかもしれないけど、十歳になったくらいじゃ、見えないと怖いじゃん。あの子が騒いだら、村の人が寄ってきて声をかけてくれるから、あの子嬉しかったんだ。弟生まれて母さんとられて寂しかったんだ、きっと」
嘘をつくようになった。オオカミを見たかもしれない、雑魔だったかもしれないとすぐには影響のない範囲で、少し危機をあおるようなことを言う。
「一年半前だったな。年離れた弟できたって喜んではいたが寂しそうではあったから、森番と相談してあの子を村に置くのも考えたな」
「うん。でも、家族がいいって言ったんだよね。僕は村にいるなら嬉しいなってちょっと思った。ちょっとだけだけど。結局、天気が良かったら毎日遊びに来るけどね」
少年も父親も、森番との付き合いは悪くないようだ。
「僕ももっと一緒に遊んであげれば良かったのかな。そうしたら嘘言わなかったかもしれない。あ、あの子が付く嘘はそれだけだったし、みんな、あの子嫌いじゃなかったよ。それに、僕は……あ、えっと……僕だって嫌いじゃなかったよ!」
少年は少し頬を赤らめたのを、職員はほほえましく眺めていた。少年がどう思っていても、事件が起こったのは事実であり、村人が少女の言葉を虚言と判断して助けに行けなかったことも事実である。
「だから、今回も、嘘だと思って、火事が起こるまで誰も……。雑魔が森を出ないのは、森番が頑張っているからかもしれない」
「あの子も、だよ、父さん。あの子も森の中にいるはずだから。お願いします、あの子も見つけてください。僕……ぼ、僕……」
少年は顔を真っ赤にして職員からそむけた。
「大変なの! うちが、うちに! オ、オオカミが! オ、オオカミじゃなくてっ!」
森番小屋の少女は農作業をする村人にすがった。走ってきたために肩で息をし、しきりに森の方を振り返り気にしている。
村人は少女を見て、またかと思い、うなずいて話を聞いてやった。演技がだんだんうまくなり、今回は真っ青で目には涙も浮かべ真に迫っている。
森番も小屋は村から離れているため、少女が寂しいのは村の人々も理解している。森番の小屋は村から大人の足で一時間半離れているところにあるし、周りに人家があるわけではない。
少女は日中、村に遊びに来て、似たような年頃の子らと一緒に過ごしている。しかし、村の子たちも仕事があるから、なかなか少女に付き合ってばかりはいられない。ましてや、年齢が十歳を超えてしまえば、大人に近づき遊んでばかりはいられない。
一年半くらい前からだ、少女が嘘をつくようになったのは。
「お願い、父さんだけじゃ、ダメなんだよ。母さんと弟、まだ小屋にいるの! 助けて!」
農作業の手をとめ、村人は少女を見る。まだ嘘をかさねるのかといぶかしむ。必死過ぎて本当ではないかと考えるが、これまでの少女の言動から村人は心を動かされないように自分を戒めた。
「お願い! あ、あのままじゃ、だって、オオカミなのに、すごく大きくて棍棒みたいな腕してた、オオカミなのかなって。クマかもしれないし。でも、オオカミの群れもいたから」
少女の言葉は混乱している。
「おい、森から煙が上がっているぞ」
別の村人が指を差した。
農作業していた者たちは手をとめ、一大事だと知る。延焼すれば森だけではなく、離れている村にも影響があるかもしれない。
「あ、あああ! お母さん! ジョン!」
少女は悲鳴を上げる。少女はなだめる村人を振り切って、必要なものを手にする。手にした水の入ったバケツを引きずりながら少女は森に向かっていく。
村人たちは村のために、そして森番のために急いで消火と狼退治に動き出した。
●村と森番と
ハンターオフィスにやってきた親子は、森で起こった事件を語った。沈痛な面持ちで、奥歯に物が詰まったような言い方をしていた。些細なことでも解決の糸口になるかもしれないので、職員はしゃべってもらいたいと思う。
「村から北西に一時間ほど行ったところにある森に、雑魔が出たということですね?」
職員の確認に親子はうなずいた。
「森番の妻子が殺害されているのが、小屋の焼け跡から見つかったんです。足跡からオオカミと思われるものとクマか何か大きめのものもありました。森番自身は妻子を放って逃げるような男ではないので、森の奥に追いかけて入ってしまっているのかもしれません」
村人たちは森番小屋の消火を行い、遺体を収容して村に戻って警戒をしていたという。雑魔が出たと判断したのは、生命力に欠ける植物が目立ったためだった。
「あと、そこの女の子もいないんだ」
少年が付け加える。村に助けを求めに行った後、そのまま保護されていた。その間ずっと少年は一緒にいたのだが、母と弟の遺体に対面した後、少年が寝ている間に小さな弓を持って姿を消したという。
「たぶん、森にいるんだと思う。あの子、自分のせいで母親と小さい弟が死んだって思っているから」
父親の方は少年を止めようとしたが、少年はその手を振り払い職員に向かう。
「最初は本当だったんだよ、村に遊びにくるとき何かに追いかけられたって言ったのは。僕もその時いたから追いかける黒い影みたもの。ウサギだったかもしれないけど、十歳になったくらいじゃ、見えないと怖いじゃん。あの子が騒いだら、村の人が寄ってきて声をかけてくれるから、あの子嬉しかったんだ。弟生まれて母さんとられて寂しかったんだ、きっと」
嘘をつくようになった。オオカミを見たかもしれない、雑魔だったかもしれないとすぐには影響のない範囲で、少し危機をあおるようなことを言う。
「一年半前だったな。年離れた弟できたって喜んではいたが寂しそうではあったから、森番と相談してあの子を村に置くのも考えたな」
「うん。でも、家族がいいって言ったんだよね。僕は村にいるなら嬉しいなってちょっと思った。ちょっとだけだけど。結局、天気が良かったら毎日遊びに来るけどね」
少年も父親も、森番との付き合いは悪くないようだ。
「僕ももっと一緒に遊んであげれば良かったのかな。そうしたら嘘言わなかったかもしれない。あ、あの子が付く嘘はそれだけだったし、みんな、あの子嫌いじゃなかったよ。それに、僕は……あ、えっと……僕だって嫌いじゃなかったよ!」
少年は少し頬を赤らめたのを、職員はほほえましく眺めていた。少年がどう思っていても、事件が起こったのは事実であり、村人が少女の言葉を虚言と判断して助けに行けなかったことも事実である。
「だから、今回も、嘘だと思って、火事が起こるまで誰も……。雑魔が森を出ないのは、森番が頑張っているからかもしれない」
「あの子も、だよ、父さん。あの子も森の中にいるはずだから。お願いします、あの子も見つけてください。僕……ぼ、僕……」
少年は顔を真っ赤にして職員からそむけた。
リプレイ本文
●村にて
村に到着したハンター一行は依頼人の家に一室借りて、打ち合わせを行っていた。依頼人の息子である少年が窓からのぞく影が見えるが放っておいた。
「民間人の保護を優先し、雑魔はその後ってところかなぁ」
ヒース・R・ウォーカー(ka0145)は確認の一言を発した。
「2班に分けて行動……班行動なんて懐かしいねぇ」
沖本 権三郎(ka2483)は笑いながら言うが、離れ離れになっている妻子が浮かんだのか父親としての顔に一瞬なる。
「捜す手がかり……森の地図は入手できないか」
オスワルド・フレサン(ka1295)はちらりと窓の外を見ると、窓に映る少年の影が引っ込むので苦笑する。
「それならば、避難小屋や洞窟などの位置も尋ねた方がいいでしょう。森番を捜す手がかりになります。子どもの方はどこでも隠れてしまいそうですので、観察していくしかないでしょう」
ガーベラ・M・ベッドフォード(ka2401)は淡々と指摘する。
「連絡を取り合い捜索……、保護した者は妾が村に連れて行くかのぉ」
クラリッサ=W・ソルシエール(ka0659)は少女のことを考えると自分が適任と考える。
「借りられるなら応急処置の道具もあったほうがいい。ボクも遺体を確認しておこう、敵が推測できるかもしれない」
フラン・レンナルツ(ka0170)の発言後、聞きこみ等の役割分担をし一時解散した。
●森へ
簡便な森の地図を借り、村人の話を重ね合わせ地理を把握する。魔導短伝話を有効に活用し、効率よく捜すための準備をする。
森番の妻子の遺体を検分したフランは、クマかクマ型の雑魔がかかわっていると判断した。
準備を終えたハンターたちは、村の森側にあるバリケードを越え出発する。
30分もしないでたどり着いた森を道通りに進むと、開けた場所に出た。森番の小屋がある場所である。
延焼しなかっただけ幸いというほど、炭化しきっている。周りは荒らされており有効な跡は見つからない。
獣か子どもかが良く通る跡が小道となって、小屋のある広場から出ている。誰もいないことを確認するためにも、権三郎を先頭にクラリッサ、フランが進む。
ヒース、オスワルド、ガーベラは動物の形跡を確認しつつ、川の周りを調べることにした。
●小さな矢
権三郎らが進む方は、茂みは低く見通しが良い。通常であれば凶暴な動物はほぼなく、村人が木の実の採取などに入るところである。
「うーん、なんか通った跡があるんだ」
権三郎は地面や灌木を見て首をひねる。
「オオカミが通ったのかい?」
フランは両手で持つライフルを周囲に向ける。
「オオカミもかな? ただしこの辺の枝折ったりしない」
権三郎は腰のあたりの折れた枝を指す。
「防御の魔法をかけるかの?」
クラリッサの質問に権三郎は首を横に振る。
「かけてくれるのはありがたいが、まだ不要だな」
一行がしばらく進むと大きな木がある場所に出た。木があるため灌木が減り、少々開けた場所である。
「待て」
フランは警告し、銃口を木の上に向けた。ほぼ同時に、木の枝の隙間から何かが飛んできた。
「うおっ」
飛んできたものは、権三郎の腕をかすって地面に落ちた。驚いたものの、脅威には当たらないと権三郎はほっと息を吐く。
地面に転がる矢は、ショートボウ程度のもので威力もないようだ。
「森番の子かい?」
フランは銃口を下し呼びかけた。
木の枝の隙間で人影が動く。
「誰……」
小さく弱い、少女の声が応じた。
「ハンターだ、助けに来たぞ!」
権三郎が声をかける。
「本当に……」
「降りておいで、降りられないならおじさんが手伝ってやろう」
「……父さんは」
「捜し中だ。仲間がいてな、そっちが見つけてるさ」
カサカサと言う音がして、木から少女が降りてくる。
「怪我はないか?」
フランの問いかけに少女はうなずく。涙の痕がある顔で彼女たちを見上げ、肩にかけた弓を握り締めて震えている。
「……父さん、オオカミと大きなのと戦ってるの、助けて」
「大きなの?」
フランははっとする。少女は襲撃した物を見ていたのだ。
「うん、クマだけどクマより大きくて。ほ、本当だよ。わたし、外にいて見たの。そいつに追われてオオカミ来て、村に助けを求めてこいって父さん言ったの。母さんはジョンがいるから小屋に閉じこもって待ってたの! でも、でも……」
「信じるさ」
権三郎は言うと、少女の頭を大きな手で包み込むようになでた。
「う、ふえ」
少女の目からみるみる涙があふる。
「なら、一刻も早く捜そう。クラリッサ、森の入口までは一緒に戻るから村までその子よろしく」
フランの言葉にクラリッサはうなずいた。
●人と嘘と
少女はクラリッサにおとなしくついてくるが、時々森に目をやり不安そうに歩く。
「お姉さん……父さん、無事だよね……。父さん、強いからきっとクマだってやっつけてるよね」
言葉とは異なり動きや表情に落ち着きはない。
クラリッサは少女の抱く気持ちや彼女の周りの心に想像を巡らせていた。人間と嘘の付き合い方は距離がつかめるまで難しい。
「そうじゃ、汝の父は強い、帰ってくる」
少女の返事はない。慰めの嘘ととらえ、独りとなってしまう未来を想像したのかうつむいている。
「……汝は寂しさから嘘をついた。でもの、気持ちを正直にいってみるのも大切なことじゃ。汝の事を気にかけてくれている者もおる」
「……う、うん」
少女は袖で目を激しく拭いながら、何度もうなずく仕草をする。
村が見えてくると、バリケードから頭を覗かせている少年が目に入る。少年は少女の姿を見た瞬間に笑顔になった。
クラリッサは無事送り届けたので戻る旨を、フランに魔導短伝話で連絡した。
●オオカミ、逃走
一方、森の入口で権三郎たちと別れたヒースたちは、川を渡ったあたりで手がかりを求める。村人が使う小屋や避難に適した洞窟に向かうつもりでいる下準備だ。
「これは動物の足跡でしょうか」
ガーベラはしゃがんで指さす。
「そうだなぁ」
ヒースは応えながらそれ以外に目立ったものはないので、目星を付けていくしかないと考える。
オスワルドが魔導短伝話で連絡を取ろうとしたとき、フランから少女を保護したと連絡が入る。
少女の証言では雑魔か不明だが、オオカミとクマが激しく活動しているとのことだ。
オスワルドは自分たちの状況を伝える。
「残念ながら手がかりなしだ。別の方向に行く」
「了解。クラリッサ待ちながら、北方向へ行く下調べする」
「奥には元々の洞窟があるというからな」
「徐々に奥に向うよ」
フランとの通信を切った後、ヒースらは川に沿って西に進み、オオカミがいるかもしれない地点に向かう。
「オオカミとクマが仲良くしているわけではないみたいだなぁ。互いにつぶれてくれればいいのに」
「それができれば、オオカミたちは逃げずにクマと戦っていたでしょう」
ガーベラの正論にヒースはうなずく。
3人は西の洞窟に後少しという地点までやってきた。
木々が枯れているなど極端な反応はないが、違和感が空気に生じた。
風が通るときに木々が出す音が、枯枝がこすれるそれに似る。
雑魔がいると森はささやき、助けを求めるような雰囲気。人間より勘の鋭い鳥獣は逃げか、息をひそめているのか妙な静けさだ。
そんな中、獣が草や重なった落ち葉の上を歩くような音がする。灌木で姿が見えないが近づいてきている。
オスワルドがリボルバーを構え、ガーベラも武器の柄を握り締める。
ヒースは茂みの音をさせないようにめくっていくが、後少しというところで音がする。
「ウウウウウウウウウ」
真っ黒で硬質な感じのするオオカミのような雑魔が2頭、身を低くし唸り声をあげる。
黒塗太刀を抜き放ち一歩踏み出したヒースを見て、雑魔たちは一目散に逃げ出した。
「追う」
ヒースは短く告げると雑魔の後を追って走っていく。
オスワルドとガーベラもヒースを追いかける、離れ離れにならないように。
逃げた雑魔は洞窟に入った。川の位置や移動した向きなどから、村人も把握している洞窟の1つだ。
洞窟は広くはないため、雑魔が何頭いるか分からないが倒せない数ではないはずだ。
今倒すか、人命救助優先で後回しにするか。
「元オオカミは見つかったが……」
オスワルドは周囲を見る、オオカミを追っている可能性のある森番を捜すように。
ヒースたちが様子を見ていると洞窟から雑魔が出てくる。周囲を警戒しつつ1頭ずつ現れ、4頭目が出たところで茂みに向かう。
「逃げるつもりでしょうか?」
ガーベラはささやいた。
「動き回られるのも困るなぁ」
雑魔がまだ洞窟にいても大した数ではないと予測し、ヒースは太刀の柄に手を乗せた。
ヒースは音を立てないように、太刀を抜きつつ間合いを詰める。素早い動きで雑魔を斬ったにもかかわらず、間一髪で回避をして茂みに入って行く。
続いたオスワルドの銃弾やガーベラの放った闇の魔法も、雑魔の足を一瞬止めさせたに過ぎなかった。
雑魔たちは脱兎のごとく走り去った。
追いかけるのは灌木の中という悪条件で断念し、この周囲に何もないか確認して先に進むしかない。
「もしもし、聞こえる?」
フランからクラリッサと合流したとの連絡だ。
オスワルドは雑魔と化したオオカミを逃したことを告げると驚く声が返ってきた。
「逃げる気満々だとすばしっこいなぁ」
溜息交じりのヒースの声が応じる。
「農家の敵だからな」
権三郎がしみじみと言う。
「雑魔が行ったのはオオカミが元いた洞窟かもしれません」
ガーベラは地図を見ながら推測する。
捜索していないのは奥の洞窟付近だ。それぞれ向かってみることにして通信を切った。
●狙う先
洞窟に続く細い道でハンターたちは合流した。
声をかける間もなく、大型の獣の咆哮が響いた。
北にある洞窟の方向だ。
武器を構えると一行は走り出す。
着いたのは木々に囲まれた土地で、彼らの正面突き当りには岩壁がかすかに見える。
クマだった大きな雑魔が岩壁に向かって突進しようとしている。先に何があるか見えないが何かがいるのだ。
迷っている場合ではない。
ヒースは血色のオーラを纏い一気に間合いを詰めると、太刀を突きたてるように攻撃した。
2メートルくらいの大きさの雑魔は固い毛皮で受けると振り返った。
権三郎もヒースに並ぶ。雑魔の先にあるものを確認したいが、ふさがれて見えない。雑魔に竹刀を突きたてるが、避けられてしまう。
ガーベラから放たれた闇色の弾は雑魔に当たり、それなりの手ごたえを得る。
クラリッサは前衛に立った二人のためにウィンドガストを掛けるべく魔法を使い始める。
オスワルドの銃が雑魔の脚を貫くも、固いという印象をおぼえ眉をしかめる。
フランのライフルは雑魔の胴を打ち抜くが、簡単には倒れてくれない。
雑魔は吠えながら鋭い爪ある太い手を、権三郎に振りあげた。権三郎はよけようとしたが胴で爪を受けてしまう。
「うわっ」
あふれる血が後方でも見えるような一撃である。
ヒースは鋭い突きを雑魔に繰り出した。血色のオーラを纏った黒塗太刀は雑魔を塵に返した。あっけない幕切れであるが、右手に出てきたものを見て気を引き締めた。
逃げたと思ったオオカミの雑魔がやってきたのだ。
「アオーン」
威嚇か、クマ型雑魔が倒れた事への喜びか、オオカミの雑魔は声を上げた。
権三郎は己の傷を手で抑え、新たな雑魔に警戒しつつ、クマが覆っていた先に進む。
ガーベラは走る、怪我がひどいだろう権三郎を魔法で回復すべく。権三郎に追いつくとともに、洞窟と中で倒れる男を見た。守るために敵に立ちふさがるか一瞬思案したが、ヒースたちがいるので彼らの傷治癒に集中する。
オスワルドの放った強い威力の銃弾の一撃は雑魔に当たった。それを恨むように雑魔はオスワルドに向かってくる。
フランも銃弾を放ったが、意外にも当たらない。たかがオオカミ、されどオオカミと気を引き締める。
雑魔たちは攻撃してきた者や近くにいる者に向かって攻撃をするが、さすがのハンターたちは回避して難を逃れる。
ヒースは洞窟に雑魔を行かせないため、叩き斬る勢いで太刀を振るう。倒れなかったが雑魔の勢いは確実にそいだ。
オスワルドは自分がダメージを与えた物から確実に落とした。オスワルドの目の前にやってきた別の1頭にクラリッサの風の刃が飛んできた。
フランは二撃目の引き金は慎重に絞る。銃弾は雑魔を貫き、一撃で塵に返した。
「当たれば一撃か」
雑魔の攻撃は当たらず、あっという間に倒された。
新手はいないか、警戒する彼らの耳にガーベラの声が入る。
「みなさん、こちらに人がおります。手当は済みましたが意識はありません。この人が森番でしょう」
応急処置や魔法の際に外した包帯代わりの布は血を吸ってどす黒く、流血の多さを示していた。
「ボクたちが一歩遅かったら、この人死んでいたのかぁ」
ヒースたちは聞いた咆哮は、森番が雑魔に何かした瞬間だったに違いない。
彼の言葉にオスワルドが木の幹を指さした。
そこには深々突き刺さった1本の矢があった。
「夜になる前に戻りましょう」
ガーベラの言葉が現実に戻す。
傷を治してもらった権三郎が意識のない森番を背負う。権三郎は立ち去る前に、消えた命に対し合掌をした。
●嘘と罪と想いと
「父さん……父さん」
権三郎にかつがれている父親に少女は走り寄った。担架を村人が持ってきたので、権三郎は下してそちらに乗せた。
「怪我は魔法と手当で問題ないです」
ガーベラは森番の状況や雑魔の状況を依頼人に説明する。
「しっかり寝て、良く食べれば、元気になる」
フランはにんまり笑って付けたす。
「そうだな、仕事上がりのビールは格別」
権三郎は笑うが、少女の表情を見ると素直に喜べなくなってくる。ハンターとしての彼らの仕事は成功しているのに。
ヒースは少女に近づくと目を合わすようにしゃがんだ。
「自分の嘘が家族を殺したと思うなら、その罪を背負って生きろ。罪を背負う覚悟があるなら、償う生き方を考えなぁ」
表情をこわばらせている少女が唇を一文字に結んだ。
クラリッサは少女に近づくと背中を押して、父についているよう示す。少女はお辞儀をして立ち去った。
この様子を離れたところで落ち着きなく見ている少年に、オスワルドは悠然と近づくとその肩を叩いた。
「悩むのもいいが、時を逃してはならない。女性を慰めるのは、男の仕事だ」
少年は驚いてオスワルドを見ていたが、頬を赤らめうなずいた。少女に向かって走り出した少年の顔は、誠実な恋を歩む男の物だった。
村に到着したハンター一行は依頼人の家に一室借りて、打ち合わせを行っていた。依頼人の息子である少年が窓からのぞく影が見えるが放っておいた。
「民間人の保護を優先し、雑魔はその後ってところかなぁ」
ヒース・R・ウォーカー(ka0145)は確認の一言を発した。
「2班に分けて行動……班行動なんて懐かしいねぇ」
沖本 権三郎(ka2483)は笑いながら言うが、離れ離れになっている妻子が浮かんだのか父親としての顔に一瞬なる。
「捜す手がかり……森の地図は入手できないか」
オスワルド・フレサン(ka1295)はちらりと窓の外を見ると、窓に映る少年の影が引っ込むので苦笑する。
「それならば、避難小屋や洞窟などの位置も尋ねた方がいいでしょう。森番を捜す手がかりになります。子どもの方はどこでも隠れてしまいそうですので、観察していくしかないでしょう」
ガーベラ・M・ベッドフォード(ka2401)は淡々と指摘する。
「連絡を取り合い捜索……、保護した者は妾が村に連れて行くかのぉ」
クラリッサ=W・ソルシエール(ka0659)は少女のことを考えると自分が適任と考える。
「借りられるなら応急処置の道具もあったほうがいい。ボクも遺体を確認しておこう、敵が推測できるかもしれない」
フラン・レンナルツ(ka0170)の発言後、聞きこみ等の役割分担をし一時解散した。
●森へ
簡便な森の地図を借り、村人の話を重ね合わせ地理を把握する。魔導短伝話を有効に活用し、効率よく捜すための準備をする。
森番の妻子の遺体を検分したフランは、クマかクマ型の雑魔がかかわっていると判断した。
準備を終えたハンターたちは、村の森側にあるバリケードを越え出発する。
30分もしないでたどり着いた森を道通りに進むと、開けた場所に出た。森番の小屋がある場所である。
延焼しなかっただけ幸いというほど、炭化しきっている。周りは荒らされており有効な跡は見つからない。
獣か子どもかが良く通る跡が小道となって、小屋のある広場から出ている。誰もいないことを確認するためにも、権三郎を先頭にクラリッサ、フランが進む。
ヒース、オスワルド、ガーベラは動物の形跡を確認しつつ、川の周りを調べることにした。
●小さな矢
権三郎らが進む方は、茂みは低く見通しが良い。通常であれば凶暴な動物はほぼなく、村人が木の実の採取などに入るところである。
「うーん、なんか通った跡があるんだ」
権三郎は地面や灌木を見て首をひねる。
「オオカミが通ったのかい?」
フランは両手で持つライフルを周囲に向ける。
「オオカミもかな? ただしこの辺の枝折ったりしない」
権三郎は腰のあたりの折れた枝を指す。
「防御の魔法をかけるかの?」
クラリッサの質問に権三郎は首を横に振る。
「かけてくれるのはありがたいが、まだ不要だな」
一行がしばらく進むと大きな木がある場所に出た。木があるため灌木が減り、少々開けた場所である。
「待て」
フランは警告し、銃口を木の上に向けた。ほぼ同時に、木の枝の隙間から何かが飛んできた。
「うおっ」
飛んできたものは、権三郎の腕をかすって地面に落ちた。驚いたものの、脅威には当たらないと権三郎はほっと息を吐く。
地面に転がる矢は、ショートボウ程度のもので威力もないようだ。
「森番の子かい?」
フランは銃口を下し呼びかけた。
木の枝の隙間で人影が動く。
「誰……」
小さく弱い、少女の声が応じた。
「ハンターだ、助けに来たぞ!」
権三郎が声をかける。
「本当に……」
「降りておいで、降りられないならおじさんが手伝ってやろう」
「……父さんは」
「捜し中だ。仲間がいてな、そっちが見つけてるさ」
カサカサと言う音がして、木から少女が降りてくる。
「怪我はないか?」
フランの問いかけに少女はうなずく。涙の痕がある顔で彼女たちを見上げ、肩にかけた弓を握り締めて震えている。
「……父さん、オオカミと大きなのと戦ってるの、助けて」
「大きなの?」
フランははっとする。少女は襲撃した物を見ていたのだ。
「うん、クマだけどクマより大きくて。ほ、本当だよ。わたし、外にいて見たの。そいつに追われてオオカミ来て、村に助けを求めてこいって父さん言ったの。母さんはジョンがいるから小屋に閉じこもって待ってたの! でも、でも……」
「信じるさ」
権三郎は言うと、少女の頭を大きな手で包み込むようになでた。
「う、ふえ」
少女の目からみるみる涙があふる。
「なら、一刻も早く捜そう。クラリッサ、森の入口までは一緒に戻るから村までその子よろしく」
フランの言葉にクラリッサはうなずいた。
●人と嘘と
少女はクラリッサにおとなしくついてくるが、時々森に目をやり不安そうに歩く。
「お姉さん……父さん、無事だよね……。父さん、強いからきっとクマだってやっつけてるよね」
言葉とは異なり動きや表情に落ち着きはない。
クラリッサは少女の抱く気持ちや彼女の周りの心に想像を巡らせていた。人間と嘘の付き合い方は距離がつかめるまで難しい。
「そうじゃ、汝の父は強い、帰ってくる」
少女の返事はない。慰めの嘘ととらえ、独りとなってしまう未来を想像したのかうつむいている。
「……汝は寂しさから嘘をついた。でもの、気持ちを正直にいってみるのも大切なことじゃ。汝の事を気にかけてくれている者もおる」
「……う、うん」
少女は袖で目を激しく拭いながら、何度もうなずく仕草をする。
村が見えてくると、バリケードから頭を覗かせている少年が目に入る。少年は少女の姿を見た瞬間に笑顔になった。
クラリッサは無事送り届けたので戻る旨を、フランに魔導短伝話で連絡した。
●オオカミ、逃走
一方、森の入口で権三郎たちと別れたヒースたちは、川を渡ったあたりで手がかりを求める。村人が使う小屋や避難に適した洞窟に向かうつもりでいる下準備だ。
「これは動物の足跡でしょうか」
ガーベラはしゃがんで指さす。
「そうだなぁ」
ヒースは応えながらそれ以外に目立ったものはないので、目星を付けていくしかないと考える。
オスワルドが魔導短伝話で連絡を取ろうとしたとき、フランから少女を保護したと連絡が入る。
少女の証言では雑魔か不明だが、オオカミとクマが激しく活動しているとのことだ。
オスワルドは自分たちの状況を伝える。
「残念ながら手がかりなしだ。別の方向に行く」
「了解。クラリッサ待ちながら、北方向へ行く下調べする」
「奥には元々の洞窟があるというからな」
「徐々に奥に向うよ」
フランとの通信を切った後、ヒースらは川に沿って西に進み、オオカミがいるかもしれない地点に向かう。
「オオカミとクマが仲良くしているわけではないみたいだなぁ。互いにつぶれてくれればいいのに」
「それができれば、オオカミたちは逃げずにクマと戦っていたでしょう」
ガーベラの正論にヒースはうなずく。
3人は西の洞窟に後少しという地点までやってきた。
木々が枯れているなど極端な反応はないが、違和感が空気に生じた。
風が通るときに木々が出す音が、枯枝がこすれるそれに似る。
雑魔がいると森はささやき、助けを求めるような雰囲気。人間より勘の鋭い鳥獣は逃げか、息をひそめているのか妙な静けさだ。
そんな中、獣が草や重なった落ち葉の上を歩くような音がする。灌木で姿が見えないが近づいてきている。
オスワルドがリボルバーを構え、ガーベラも武器の柄を握り締める。
ヒースは茂みの音をさせないようにめくっていくが、後少しというところで音がする。
「ウウウウウウウウウ」
真っ黒で硬質な感じのするオオカミのような雑魔が2頭、身を低くし唸り声をあげる。
黒塗太刀を抜き放ち一歩踏み出したヒースを見て、雑魔たちは一目散に逃げ出した。
「追う」
ヒースは短く告げると雑魔の後を追って走っていく。
オスワルドとガーベラもヒースを追いかける、離れ離れにならないように。
逃げた雑魔は洞窟に入った。川の位置や移動した向きなどから、村人も把握している洞窟の1つだ。
洞窟は広くはないため、雑魔が何頭いるか分からないが倒せない数ではないはずだ。
今倒すか、人命救助優先で後回しにするか。
「元オオカミは見つかったが……」
オスワルドは周囲を見る、オオカミを追っている可能性のある森番を捜すように。
ヒースたちが様子を見ていると洞窟から雑魔が出てくる。周囲を警戒しつつ1頭ずつ現れ、4頭目が出たところで茂みに向かう。
「逃げるつもりでしょうか?」
ガーベラはささやいた。
「動き回られるのも困るなぁ」
雑魔がまだ洞窟にいても大した数ではないと予測し、ヒースは太刀の柄に手を乗せた。
ヒースは音を立てないように、太刀を抜きつつ間合いを詰める。素早い動きで雑魔を斬ったにもかかわらず、間一髪で回避をして茂みに入って行く。
続いたオスワルドの銃弾やガーベラの放った闇の魔法も、雑魔の足を一瞬止めさせたに過ぎなかった。
雑魔たちは脱兎のごとく走り去った。
追いかけるのは灌木の中という悪条件で断念し、この周囲に何もないか確認して先に進むしかない。
「もしもし、聞こえる?」
フランからクラリッサと合流したとの連絡だ。
オスワルドは雑魔と化したオオカミを逃したことを告げると驚く声が返ってきた。
「逃げる気満々だとすばしっこいなぁ」
溜息交じりのヒースの声が応じる。
「農家の敵だからな」
権三郎がしみじみと言う。
「雑魔が行ったのはオオカミが元いた洞窟かもしれません」
ガーベラは地図を見ながら推測する。
捜索していないのは奥の洞窟付近だ。それぞれ向かってみることにして通信を切った。
●狙う先
洞窟に続く細い道でハンターたちは合流した。
声をかける間もなく、大型の獣の咆哮が響いた。
北にある洞窟の方向だ。
武器を構えると一行は走り出す。
着いたのは木々に囲まれた土地で、彼らの正面突き当りには岩壁がかすかに見える。
クマだった大きな雑魔が岩壁に向かって突進しようとしている。先に何があるか見えないが何かがいるのだ。
迷っている場合ではない。
ヒースは血色のオーラを纏い一気に間合いを詰めると、太刀を突きたてるように攻撃した。
2メートルくらいの大きさの雑魔は固い毛皮で受けると振り返った。
権三郎もヒースに並ぶ。雑魔の先にあるものを確認したいが、ふさがれて見えない。雑魔に竹刀を突きたてるが、避けられてしまう。
ガーベラから放たれた闇色の弾は雑魔に当たり、それなりの手ごたえを得る。
クラリッサは前衛に立った二人のためにウィンドガストを掛けるべく魔法を使い始める。
オスワルドの銃が雑魔の脚を貫くも、固いという印象をおぼえ眉をしかめる。
フランのライフルは雑魔の胴を打ち抜くが、簡単には倒れてくれない。
雑魔は吠えながら鋭い爪ある太い手を、権三郎に振りあげた。権三郎はよけようとしたが胴で爪を受けてしまう。
「うわっ」
あふれる血が後方でも見えるような一撃である。
ヒースは鋭い突きを雑魔に繰り出した。血色のオーラを纏った黒塗太刀は雑魔を塵に返した。あっけない幕切れであるが、右手に出てきたものを見て気を引き締めた。
逃げたと思ったオオカミの雑魔がやってきたのだ。
「アオーン」
威嚇か、クマ型雑魔が倒れた事への喜びか、オオカミの雑魔は声を上げた。
権三郎は己の傷を手で抑え、新たな雑魔に警戒しつつ、クマが覆っていた先に進む。
ガーベラは走る、怪我がひどいだろう権三郎を魔法で回復すべく。権三郎に追いつくとともに、洞窟と中で倒れる男を見た。守るために敵に立ちふさがるか一瞬思案したが、ヒースたちがいるので彼らの傷治癒に集中する。
オスワルドの放った強い威力の銃弾の一撃は雑魔に当たった。それを恨むように雑魔はオスワルドに向かってくる。
フランも銃弾を放ったが、意外にも当たらない。たかがオオカミ、されどオオカミと気を引き締める。
雑魔たちは攻撃してきた者や近くにいる者に向かって攻撃をするが、さすがのハンターたちは回避して難を逃れる。
ヒースは洞窟に雑魔を行かせないため、叩き斬る勢いで太刀を振るう。倒れなかったが雑魔の勢いは確実にそいだ。
オスワルドは自分がダメージを与えた物から確実に落とした。オスワルドの目の前にやってきた別の1頭にクラリッサの風の刃が飛んできた。
フランは二撃目の引き金は慎重に絞る。銃弾は雑魔を貫き、一撃で塵に返した。
「当たれば一撃か」
雑魔の攻撃は当たらず、あっという間に倒された。
新手はいないか、警戒する彼らの耳にガーベラの声が入る。
「みなさん、こちらに人がおります。手当は済みましたが意識はありません。この人が森番でしょう」
応急処置や魔法の際に外した包帯代わりの布は血を吸ってどす黒く、流血の多さを示していた。
「ボクたちが一歩遅かったら、この人死んでいたのかぁ」
ヒースたちは聞いた咆哮は、森番が雑魔に何かした瞬間だったに違いない。
彼の言葉にオスワルドが木の幹を指さした。
そこには深々突き刺さった1本の矢があった。
「夜になる前に戻りましょう」
ガーベラの言葉が現実に戻す。
傷を治してもらった権三郎が意識のない森番を背負う。権三郎は立ち去る前に、消えた命に対し合掌をした。
●嘘と罪と想いと
「父さん……父さん」
権三郎にかつがれている父親に少女は走り寄った。担架を村人が持ってきたので、権三郎は下してそちらに乗せた。
「怪我は魔法と手当で問題ないです」
ガーベラは森番の状況や雑魔の状況を依頼人に説明する。
「しっかり寝て、良く食べれば、元気になる」
フランはにんまり笑って付けたす。
「そうだな、仕事上がりのビールは格別」
権三郎は笑うが、少女の表情を見ると素直に喜べなくなってくる。ハンターとしての彼らの仕事は成功しているのに。
ヒースは少女に近づくと目を合わすようにしゃがんだ。
「自分の嘘が家族を殺したと思うなら、その罪を背負って生きろ。罪を背負う覚悟があるなら、償う生き方を考えなぁ」
表情をこわばらせている少女が唇を一文字に結んだ。
クラリッサは少女に近づくと背中を押して、父についているよう示す。少女はお辞儀をして立ち去った。
この様子を離れたところで落ち着きなく見ている少年に、オスワルドは悠然と近づくとその肩を叩いた。
「悩むのもいいが、時を逃してはならない。女性を慰めるのは、男の仕事だ」
少年は驚いてオスワルドを見ていたが、頬を赤らめうなずいた。少女に向かって走り出した少年の顔は、誠実な恋を歩む男の物だった。
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相談卓 クラリッサ=W・ソルシエール(ka0659) 人間(リアルブルー)|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/10/30 05:23:36 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/24 21:08:54 |