ゲスト
(ka0000)
お外でごはん
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/03 19:00
- 完成日
- 2017/06/10 20:03
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境に初夏の気配が見え始めていた。
この時期のスコール族は田畑の面倒に勤しんでおり、戦士の一部も畑仕事に精を出す。体力づくりの一環として訓練ということで力仕事を主にやっている。
子供から老人まで駆り出され、部族の守りはローテーションで行う。
この日、畑仕事が出来ない幼児はスコール族長代理のカオン・スコールが面倒を見ていた。
普段は部族の警備や状況確認、近隣部族の相談役などしており、子供達とはあまり過ごすことはない。
故に、幼子たちはカオンお姉ちゃんを独占できるのが楽しい模様。
「ねぇねぇ、カオンさま! あたし、おそとにでてみたい!」
幼子の一人が言えば別の幼子が「だめだよ」と止める。
「おそとは、こわいばけものでいっぱいだって、おかあさんがいってた!」
「でも、カオンおねえちゃんがいるなら、だいじょうぶだよ」
絶対に守ってくれると信じる男の子にカオンは「守りますよ」と微笑む。
カオンとて、幼少の頃も外の世界に興味津々であり、剣を学びだしてからはこっそり部族を抜け出しては外の雑魔と戦ったりしては親に怒られていたものだ。
「とはいえ、勝手に出てしまってはお父様、お母様が心配してしまいます。今日は諦めて、お話ししましょう」
やんわりとカオンが止めると、幼子達は「はーい」と返事をしてくれた。
夕方、スコール族の戦士に呼ばれたカオンは会議兼夕食に出る。
内容はその近隣に獣が出てきているというものであった。
人里から遠い場所であるので、早急な対処が必要とも思えないというのが共通の見解であった。
「とはいえ、放っておくのも困りものですわね」
「ですが、まだこの時期は畑も落ち着いてません」
しゃがれた声の老人が言えば、カオンは確かにと頷く。
畑は部族にとって大事なもの。それ一つ次第で部族の食糧事情は変わってしまう。
男手は重要なのだ。
「子供たちもいつ抜け出していくかわからないし……」
子を持つ親としては心配の種は尽きない。
この世界では簡単に人が死ぬのだから。
「ならば、ハンターを呼びましょう」
カオンの提案に皆が納得してくれると、部屋の外が騒々しくなった。
端にいた青年が何事かと戸を開けるなり、騒がしさの原因が顔を出す。
「ハンターにあえるの!?」
「ファリフさまもくるかな!」
「あたしもいきたい!」
子供たちが聞きつけて来ていたのだ。
カオンは超聴覚でわかっていたし、何より、見張り役が騒がしくならないように宥めてくれていたので後ほど誉めようと思っていたが運が悪かった模様。
「ファリフは別の事がありますので、来れないと思います」
先日来た手紙では、四大精霊なる者とお茶会をしていたという内容で色々と大変なものに関わったものだと肩を落としていた。
「ルックスお兄ちゃん、しゅぎょうがすきだったよね。いれば、いいしゅぎょうになったのにー」
春の訪れが来た頃に保護していたエーノス族の少年ルックスがテトと共に去って行った。滞在時はスコール族の幼児の面倒も見てくれていたことを思い出す。
テトにはルックスの調査に役立ててほしいと幾ばくかの金銭を自腹で渡していた。
短い思い出に浸りつつ、カオンはこのままだとこっそりついて来そうだと判断する。バラバラで動かれるよりも団体行動が良い。
「ハンターの皆さんの言う事をきちんと聞ける人は連れていきますよ」
カオンが餌をぶら下げると、子供たちは目を輝かす。
「ちゃんとお約束守れる人は手を上げてください」
尋ねられた言葉に子供たちは大きな大きな声と一緒に手を上げた。
この時期のスコール族は田畑の面倒に勤しんでおり、戦士の一部も畑仕事に精を出す。体力づくりの一環として訓練ということで力仕事を主にやっている。
子供から老人まで駆り出され、部族の守りはローテーションで行う。
この日、畑仕事が出来ない幼児はスコール族長代理のカオン・スコールが面倒を見ていた。
普段は部族の警備や状況確認、近隣部族の相談役などしており、子供達とはあまり過ごすことはない。
故に、幼子たちはカオンお姉ちゃんを独占できるのが楽しい模様。
「ねぇねぇ、カオンさま! あたし、おそとにでてみたい!」
幼子の一人が言えば別の幼子が「だめだよ」と止める。
「おそとは、こわいばけものでいっぱいだって、おかあさんがいってた!」
「でも、カオンおねえちゃんがいるなら、だいじょうぶだよ」
絶対に守ってくれると信じる男の子にカオンは「守りますよ」と微笑む。
カオンとて、幼少の頃も外の世界に興味津々であり、剣を学びだしてからはこっそり部族を抜け出しては外の雑魔と戦ったりしては親に怒られていたものだ。
「とはいえ、勝手に出てしまってはお父様、お母様が心配してしまいます。今日は諦めて、お話ししましょう」
やんわりとカオンが止めると、幼子達は「はーい」と返事をしてくれた。
夕方、スコール族の戦士に呼ばれたカオンは会議兼夕食に出る。
内容はその近隣に獣が出てきているというものであった。
人里から遠い場所であるので、早急な対処が必要とも思えないというのが共通の見解であった。
「とはいえ、放っておくのも困りものですわね」
「ですが、まだこの時期は畑も落ち着いてません」
しゃがれた声の老人が言えば、カオンは確かにと頷く。
畑は部族にとって大事なもの。それ一つ次第で部族の食糧事情は変わってしまう。
男手は重要なのだ。
「子供たちもいつ抜け出していくかわからないし……」
子を持つ親としては心配の種は尽きない。
この世界では簡単に人が死ぬのだから。
「ならば、ハンターを呼びましょう」
カオンの提案に皆が納得してくれると、部屋の外が騒々しくなった。
端にいた青年が何事かと戸を開けるなり、騒がしさの原因が顔を出す。
「ハンターにあえるの!?」
「ファリフさまもくるかな!」
「あたしもいきたい!」
子供たちが聞きつけて来ていたのだ。
カオンは超聴覚でわかっていたし、何より、見張り役が騒がしくならないように宥めてくれていたので後ほど誉めようと思っていたが運が悪かった模様。
「ファリフは別の事がありますので、来れないと思います」
先日来た手紙では、四大精霊なる者とお茶会をしていたという内容で色々と大変なものに関わったものだと肩を落としていた。
「ルックスお兄ちゃん、しゅぎょうがすきだったよね。いれば、いいしゅぎょうになったのにー」
春の訪れが来た頃に保護していたエーノス族の少年ルックスがテトと共に去って行った。滞在時はスコール族の幼児の面倒も見てくれていたことを思い出す。
テトにはルックスの調査に役立ててほしいと幾ばくかの金銭を自腹で渡していた。
短い思い出に浸りつつ、カオンはこのままだとこっそりついて来そうだと判断する。バラバラで動かれるよりも団体行動が良い。
「ハンターの皆さんの言う事をきちんと聞ける人は連れていきますよ」
カオンが餌をぶら下げると、子供たちは目を輝かす。
「ちゃんとお約束守れる人は手を上げてください」
尋ねられた言葉に子供たちは大きな大きな声と一緒に手を上げた。
リプレイ本文
夏が近づき、向こうの世界……とある地域ではそろそろ雨季の時期だとは瀬崎 琴音(ka2560)空を見上げる。
恵みの雨が降り終われば、暑い夏が駆け足でやってくる感覚をもう数年は感じていない。
足元では一定のリズムで杖を地について確認しながら歩いているユグディラの幾月が一緒に歩いていた。
まだ登ろうとしている太陽の明るさに目を眇めて進むのはセツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)だ。
「もう少しですね」
セツナが言えば、シン(ka4968)が頷く。
この風景に心当たりがあり、もうそろそろスコール族の地が見えてくる。
スコール族の土地に入る前に馬に乗った戦士達が出迎えてくれた。
子供たちの準備も終わっているようであり、水分補給にお茶を兼ねた休憩を取ってから出発となる。
全粒粉に塩を混ぜて焼いた生地に糖蜜をかけた茶菓子とお茶が出た。
リアルブルー出身の星野 ハナ(ka5852)にしてみればハーブティーに近いお茶と感じる。
「お疲れ様です」
入ってきたカオンはハンター達を笑顔で出迎えてくれた。
「忙しい中、来てくださってありがとうございます」
「俺も小さい頃は大人達に連れ出してもらったからな」
琥珀色の瞳を細めて笑うのはAnbar(ka4037)。
広い荒野はとても開放的かつ、獣や歪虚がいつ現れてもおかしくない危険な場所。
それを理解させるためにAnbarもまた、幼いころに連れて行ってもらった。
「好奇心というのは時に危険ですが、外がどういうものなのか知ることは大事じゃないですかねぇ」
Gacrux(ka2726)も今回の依頼は羽休みにちょうどいいと思っていた。
「そう言って頂けるのは幸いです」
外がどういうところなのかきちんと伝えるのは大人の役目。その経験をもって子供たちがどう考えていくのかが重要であるとカオンはそう思っている。
獣の場所や動きをハンターに伝え、手短に打ち合わせを始めた。
「……我慢しきれないようだね」
顔を上げてドアの方向に意識を向けている幾月を見ていた琴音が呟く。
「失礼しました」
苦し紛れに笑ってごまかそうとするカオンだが、ハンター達はもういいだろうと身支度を始めてくれた。
ドアを開けると、数名の子供たちが目をキラキラ輝かせてハンター達を待ち構えていた。
出発する時は子供達の親から「宜しくお願いします」と丁寧に頼まれる。
族長であるファリフやカオンからもハンター達の事は聞いているので不安はないが、はしゃぐお年頃の子供達には不安がある。
「お子様達は確かにお預かりします。必ず守って見せます」
そう言ったのはセツナだ。
心配されている子供たちは呑気なものであり、馬車に乗り込んでキャッキャと喜んでいた。
「子供がいないと何かとソワソワするけど、たまにはゆっくり時間を過ごすのもいいだろ?」
Anbarが言えば親たちは「ありがとう」と返してくれる。
「行って参ります」
馬車の運転をするカオンが手を上げると、子供達も「いってきまーっす!」と元気よく声を張り上げた。
スコール族の地を離れて二台の馬車が並走して進み、セツナは自身のイェジド、Anbarは戦馬に乗って先導する。
荷台に乗っている子供達はいつもファリフの手紙越しで知るだけのハンターが間近にいるということでテンションが高くなっている。
中でも一番興味を引いていたのはユグディラ達。
猫が二足歩行するということが不思議で仕方ない模様。実際は猫型の幻獣であるが、とりあえず慣れてもらえたらいいだろう。
「グデちゃんっていうのー?」
「そうですよぉ~♪」
女の子の問いかけに頷くのはハナだ。
馬のゴンはカオンが運転する馬車に加えてもらい、二頭で引いてもらっている。
もう一人、琴音の姿にも興味がいったらしい。
絹の着物は珍しいようであり、暑くないのかと心配される始末。
「慣れてるから平気」
通気性も悪くないので要は慣れだ。
ついでに下駄の形状が気になっている模様で、琴音は丁寧に説明をしてくれた。
「わかった! お姉ちゃんは『てんいしゃ』なんでしょ。ファリフ様が手紙で言ってた!」
男の子の一人が琴音に言えば「当たり」と返す。
隣の馬車では人見知りの女の子がハンターに懐かずにいた。
「僕はカオンさんの友達だから、安心していいよ」
女の子の隣に座るシンが言えば前で馬を操るカオンが肯定する。
「そうですよ。族長と一緒に何度も歪虚と戦ったことがある戦友ですよ」
「じゃぁ……モグラのわいきょと、たたかったことがある?」
好奇心を隠せずに女の子が尋ねると、シンはどこか複雑そうに「あるよ」と答えた。
多分、数年成長すれば彼女もまた、あのノッポのモグラ歪虚の守備範囲となると思えば心境は複雑だ。
そんな会話をBGMにしてGacruxは太陽の光を目に入れないように帽子のつばで影を作った。
今日はとても天気が良い。
先を進んでいるAnbarが双眼鏡を覗いていると獣の姿を見つけた。セツナと視線を合わせると彼女は頷いた。
「カオンさん、目的の獣のようです」
振り返ったセツナの声にカオンは「わかりました」と返すなり、子供の一人も聞いていたようであり、反応して立ち上がる。
「どこ!?」
「た、立ったらあぶないよ!」
興奮する男の子にシンの隣に座っていた女の子が注意する。
子供達は生きた獣と遭遇するのは初めてなので様々な反応を見せていた。
「お子様達は良い子で待っているといい」
Gacruxが姿勢を直して座る。
「やっつけるの!?」
わくわくしている子供達に彼はゆっくりと頷いた。
「その為にここに来たんだよ」
幾月と一緒に荷台を降りるのは琴音だ。
「これから、お兄さんとお姉さんが獣をやっつけにいきますよぉー。獣を引きつけますので、シィですよー」
ハナに言われた子供達は元気よく返事をしてくれたが、言われたことを思い出して口に手を当ててこくこくと頷く。
「カオンさん、子供達を守ってほしい」
荷台から降りたシンとセツナがカオンの方へ回り込んでそう頼む。
「承知しました。戦いの邪魔にならないよう配慮します」
カオンが頷いて剣を取った。
「お、おにいちゃん、がんばって……!」
人見知りの女のが言葉に詰まりつつシンへ応援を送る。
「頑張ってくる」
頷いたシンは先を歩く仲間たちの方へと向かう。
「私たちが戦っている最中もカオン殿が超聴覚で周囲を窺って貰ってます」
セツナがそう言えば剣の鍔を親指で弾いた。
合図を聞いたセツナのイェジドである雹は軽やかに地を蹴る。
ぐるりと回りこむように雹はバッファローの周囲を走った。
警戒するようにバッファローはイェジドへ警戒を促す。セツナは気を引けたと確信するなり、一気に仲間たちの方へと雹を走らせる。
白い毛並みを持つ雹は太陽の光を浴びて眩しいほどだ。
「すごくきれいー!」
「はやーい!」
子供たちがはしゃいで雹の走る姿を見つめていた。
「だめだよ! ハナおねえちゃんとやくそくしたでしょ」
注意を促す子供がいたが、軽やかに走るイェジドに興奮は隠せない。
バッファロー達がハンター達の方へと向かってくると前に出たのは琴音と幾月。
琴音は足にマテリアルを循環させており、いつ発動してもいいように備えていた。
リアルブルーで知った知識の中で、闘牛で戦う牛は闘牛士の持つ布を目がけて飛び込んでくる。
この世界の牛に色を認識することが出来るか、揺らめく布に反応するかわからない。
しかし、試してみる価値はあるだろう。
華奢な手を斜め前へ差し出した琴音は腕を振って着物の袖を大きく揺らす。
「先生やっちゃってー!」
例にもれず、子供達には幾月を先生と呼んでほしいとお願いしていたので、子供たちは素直に先生にも声援を飛ばしていた。
リアルブルー出身の琴音としては、意図せずに用心棒のようだと感想を抱く。
思案もそこそこに幾月の警告がとんできた。
ギリギリまで引き付けた琴音はジェットブーツを発動させて軽やかに身を躱す。
華麗な身のこなしに後ろから子供たちの歓声が飛ぶ。
琴音が横に飛ぶと、後ろの陣形が獣達に見えた。彼女の立ち位置から少し離れた後方で弓を構えていたのはGacruxだ。
いつ琴音が飛んでもいいように耳を澄ませて周囲の動きを伺っていた。
獣の動きがスローモーションを見ているような感覚になっていき、番えていた矢を放つ。
飛ばされた矢が空気を裂き、バッファローの眉間に命中する。
衝撃でバッファローは上体を仰け反り、前足がバランスを整えるべく宙をもがく。
滑り込むように前に飛び込んできたのはAnbarだ。燃え盛る炎のような斧を振り上げて、左前脚を叩き落した。
重力に従う為とAnbarの攻撃で地に叩きつけられたバッファローは頭を振り、角をAnbarへ向けようとしている。
クラッシュブロウの効果を得ていたAnbarは怯むことなく、バッファローの頭へ斧を叩きつけた。
骨が割れたのか、バッファローは起き上がらずに昏倒している。
後衛でハンドベルの音が聞こえる。
ユグディラのグデが鳴らしており、演奏している曲は悲嘆な思いにかられるが、ハンドベルの効力なのか、余韻が優しく感じられる。
「きれいな音色」
女の子達に好評なようであり、ハナは子供たちの歓声を背に「仕方ないですねぇ」と呟く。
リアルブルーで言うところのヒーローショーのようだと思える。
バッファローにもその音は聞こえており、その動きは鈍ってきていた。
更にハナはドローアクションを重ねた五色光符陣を発動させる。
「さっさとお肉になりなさいっ!」
光の陣に目を焼かれたバッファローはよろよろと動いていた。
横から空気を裂く高い音が聞こえると、鈍い音がバッファローから響いて倒れる。
その頭には矢が刺さっていたので、Gacruxの矢と判断した。
スムーズに狩りが進んでいるのだが、ここで出てくるのが逃げ出そうとしている獣だ。
見逃すわけにはいかない。
一気に雹のスピードを上げたセツナは獣を追い込み、子供たちの方向へ走らせないようにハンターの方へ向けるようにすれ違いざまに斬りつけて雹をターンさせて誘導させる。
「さぁ、こっちに来い!」
ハンター達の間合いに入ろうかどうかというところで野獣に相当する動物霊の力を借りたAnbarが大声を張り上げる。
咆哮にバッファローは驚いて足を竦めてしまう。
その隙を狙うのはシン。
「悪いけど、これ以上近寄らせる訳にはいかないんだ」
静かに告げると、彼は獣の前右足の付け根を斬りつけた。バッファローと衝突しないように横に身体をずらしたシンは剣の流れに逆らわずにサーベルを振り上げ、後右足を切り落とす。
「最後の一体だねっ」
琴音が幾月からの警告を受け止めると、軽やかに避ける。
「そろそろ終わりにしましょうねぇ!」
更にハナが地縛符を発動させてバッファローを足止めした事を確認した琴音はジェットブーツの速さを利用して獣へと追いつく。
先ほどの五色光符陣でも肉は無事だった。
「これもどうかな」
琴音の華奢な手よりぱちりと電気の火花が飛ぶ。
思いっきりバッファローを突き飛ばすように両手を出した琴音から発せられたエレクトリックショックの衝撃にバッファローは電撃を受けてゆっくり倒れた。
獣がすべて倒れ、ハンター全員がほぼ無傷で立っているという姿に子供達は興奮を隠せない。
「すごーい!」
「かっこいー!」
「ぼくも、あんなせんしになる!」
口々に賞賛の言葉を上げる子供たちに「静かにと言ったんですけどぉ」とハナが笑う。
「怖がって泣かれなくてよかったかも」
ぽつりと呟くシンの言葉にハンター達は確かにと納得する。
「獣の処分は?」
Gacruxの問いかけにカオンは「お昼に余ったら持ち帰ります」と麻袋と牛刀のようなナイフを取り出した。
「よし、さっさと枝肉にしようぜ」
Anbarが言えば、みんなで地の恵みを切り分けることにする。
獣の血を抜いている間、ハンター達は水分補給を兼ねてしばし休憩。
太陽も昼の時間を指し示すように昇りきっている。
子供達は怖がるものいたが、普通に手伝ってくれていた。
辺境部族にとって食べられる動物の肉は大事な栄養源の一つであり、生きることが重要なので、自身の血肉となる動物の血にドン引きしている暇はない。
勿論、今日のお昼ご飯のメインディッシュだ。
子供たちはどの肉を食べようか見聞するくらいである。
「骨は?」
「一部は持ち帰ります。骨を加工して武器にしている部族と取引をしておりますので」
セツナが問いかけると、カオンは迷わず答える。
「馬や荷台に載せる肉は先に載せておくよ」
肉が詰まった麻袋を持った琴音が声をかけると、幾月が琴音をサポートするように持ち上げられた麻袋の底を支えて一緒に運んでいく。
粗方の作業が終われば、おひるごはんである。
肉の解体中にハナが簡易竈を用意していた。
「おねえちゃん、お肉足りる?」
「ありがとうございますぅ♪ 足りなかったら切りますからぁ」
子供達が調理用の肉をハナとAnbarの方へと持っていく。
温めたバトルスキレットで肉を焼き始めた。
肉の焼けていく音が響く。火の番はAnbarがやってくれており、ハナは鍋の方を見ている。
持ってきた野菜と薄切り肉、酒と帝国某店の万能調味料を鍋に放り込んだ。
これだけで十分美味しいスープが出来上がる。
全員分の肉が焼きあがりと同時にスープも出来上がる。スープボウルは事前に人数分用意してもらった。
パンを皆分け合って座る。
「さぁ、ごはんにしましょう」
皆でいただきます。
ごはんは先ほどの戦闘をどれだけ格好良かったのかというのを子供たちが熱弁していた。
基本的に子供は戦っているところを見ることはあまりないのでとても興奮していた。
それと同時にハンター達の戦いがどれだけ子供達への安全に配慮し、華麗だったということが窺える。
ユグディラ、イェジドも凄かったと感想を口にされていた。
「先生、人気者だね」
琴音が言えば、幾月はだんまりだ。
照れているかはちょっとわからない。
しかし、白熱する状況を見越してカオンが「食事は静かに」と注意すると子供達は大人しくなった。
「おねえちゃん、このスープおいしいね」
「ありがとうございますぅ♪」
女の子の一人がハナのスープを喜んでくれていた。
「部族のお嫁さんになるには何が必須なんですかぁ?」
ハナが尋ねると子供達は首を捻る。
「こんなおいしいスープを作れて強いおねえちゃんなら、だいじょうぶだよ!」
年長の男の子が言えばハナは「嬉しいですぅ」と上機嫌。
「そいやさ、ルックスにいちゃん、元気かなぁ」
シンの隣に座っていた男の子がスープに視線を落として呟く。
その名に聞き覚えはシンにもあった。
「今は、部族なき部族のメンバーとして迎えられております」
反応するシンを見たカオンが声を差し込んだ。
「元気ですよー。今は隠密の仕事を覚えている最中ですぅ」
ハナが答えると、子供達は少し妙な表情を浮かべていた。
「ルックス兄ちゃんちょっとあわてんぼうだよね」
「だいじょうぶかな」
子供目線でよく見ているものである。
ちょっと厳しいけど。
「大丈夫だろ。訓練を積まなければ得られないものもあるし」
Anbarの言葉に子供達は納得する。
「とうちゃんがルックスにいちゃんによく、いってた。しんしんのたんれんをおこたるなって」
子供達のなかでは年少にあたる子供が声をあげる。
どうやら、その子の父親はルックスに武術訓練をしていた戦士の模様。
難しい言葉を知っているとGacruxが内心物覚えの良さに感心する。
賑やかに食事を終えると子供達は「美味しかった」という感謝の気持ちと片付けを忘れていなかった。
少し休憩してから帰ることになる。
子供達はセツナの手助けでイェジドの雹に乗せてもらったり、グラのハンドベルに合わせて踊ったりしていた。
「おにいちゃんも!」
「俺も!?」
踊ってる子供達を見ていたAnbarだったが、女の子と男の子にそれぞれの手を引っ張られてしまう。
剣の指南を受け始めた年長の男の子はシンとカオンに相談している。
真摯に話を聞くシンは自分が剣を持ち始めた頃を思い出していた。
昼寝をしようとしていたGacruxの傍らに女の子が彼の顔を覗きこむ。
「お兄ちゃん、素敵なぼうしね」
「それはありがとう」
口角をあげてGacruxが礼を言えば、女の子はにこっと笑って踵を返し、イェジドの方へと向かう。
琴音の頬を荒野の風が撫でていく。
温度を含んだ風だが、湿気がないのでからりとしていた。
「うん、悪くない」
隣に座る幾月も心地よく感じている模様。
楽しい休憩時間もそこそこに帰る時間となった。
「そろそろ帰らねぇとな」
Anbarがはしゃぎ疲れて眠くなってうとうとしている子供を抱き上げて撤収を促す。
子供達の寂しさが募ったのはスコール族の土地が見えてきた頃だ。
「かえっちゃうの……?」
最初は警戒していた人見知りの女の子だったが、荷台で寂しさを口に出す。
「うん」
行きは偶然シンの隣に座ったが、帰りは女の子がシンに懐いて隣に座っていた。
「また、会える?」
女の子の問いにシンは言葉を詰まらせる。
今回会えたのは依頼があってこそ、次はいつ会えるかまだわからない。
「会えますよ」
カオンがちらりと二人の方を肩越しに見やって微笑む。
無事に子供達を送り届けると、親達から礼を言われた。子供達の中にはハンターと別れるのが寂しくて涙を流す子供もいたが、「またね」と手を振ってくれた。
「ハナ様」
カオンがハナに声をかけると、先ほどの部族の嫁に必要なことについての話を引っ張り出す。
「嫁に限らず、我々赤き大地に住まう者は皆、覚悟が必要です。この地は歪虚の恐怖に晒され、時に民が部族に害を為すこともあります」
真摯なカオンの声にハナは無言で聞いていた。
「いかなる事象も受け止め、そこからどう動けるかが大事だと私は思います」
カオンが紡ぐ言葉は他のハンター達にも聞こえていた。
彼女の言葉にハナはつい最近の記憶を思い浮かべさせられてしまう。
「それは部族も、ハンターも変わりないかもしれませんが……」
ふっと、微笑んでカオンの言葉は終わる。
もう日は暮れており、帰る時間となっていた。
「楽しい時間だったね」
琴音の言葉に幾月は頷く。
夜が近づいて少し肌寒いが、今日の楽しさは昼の気温の暑さと共にハンター達に残っていた。
恵みの雨が降り終われば、暑い夏が駆け足でやってくる感覚をもう数年は感じていない。
足元では一定のリズムで杖を地について確認しながら歩いているユグディラの幾月が一緒に歩いていた。
まだ登ろうとしている太陽の明るさに目を眇めて進むのはセツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)だ。
「もう少しですね」
セツナが言えば、シン(ka4968)が頷く。
この風景に心当たりがあり、もうそろそろスコール族の地が見えてくる。
スコール族の土地に入る前に馬に乗った戦士達が出迎えてくれた。
子供たちの準備も終わっているようであり、水分補給にお茶を兼ねた休憩を取ってから出発となる。
全粒粉に塩を混ぜて焼いた生地に糖蜜をかけた茶菓子とお茶が出た。
リアルブルー出身の星野 ハナ(ka5852)にしてみればハーブティーに近いお茶と感じる。
「お疲れ様です」
入ってきたカオンはハンター達を笑顔で出迎えてくれた。
「忙しい中、来てくださってありがとうございます」
「俺も小さい頃は大人達に連れ出してもらったからな」
琥珀色の瞳を細めて笑うのはAnbar(ka4037)。
広い荒野はとても開放的かつ、獣や歪虚がいつ現れてもおかしくない危険な場所。
それを理解させるためにAnbarもまた、幼いころに連れて行ってもらった。
「好奇心というのは時に危険ですが、外がどういうものなのか知ることは大事じゃないですかねぇ」
Gacrux(ka2726)も今回の依頼は羽休みにちょうどいいと思っていた。
「そう言って頂けるのは幸いです」
外がどういうところなのかきちんと伝えるのは大人の役目。その経験をもって子供たちがどう考えていくのかが重要であるとカオンはそう思っている。
獣の場所や動きをハンターに伝え、手短に打ち合わせを始めた。
「……我慢しきれないようだね」
顔を上げてドアの方向に意識を向けている幾月を見ていた琴音が呟く。
「失礼しました」
苦し紛れに笑ってごまかそうとするカオンだが、ハンター達はもういいだろうと身支度を始めてくれた。
ドアを開けると、数名の子供たちが目をキラキラ輝かせてハンター達を待ち構えていた。
出発する時は子供達の親から「宜しくお願いします」と丁寧に頼まれる。
族長であるファリフやカオンからもハンター達の事は聞いているので不安はないが、はしゃぐお年頃の子供達には不安がある。
「お子様達は確かにお預かりします。必ず守って見せます」
そう言ったのはセツナだ。
心配されている子供たちは呑気なものであり、馬車に乗り込んでキャッキャと喜んでいた。
「子供がいないと何かとソワソワするけど、たまにはゆっくり時間を過ごすのもいいだろ?」
Anbarが言えば親たちは「ありがとう」と返してくれる。
「行って参ります」
馬車の運転をするカオンが手を上げると、子供達も「いってきまーっす!」と元気よく声を張り上げた。
スコール族の地を離れて二台の馬車が並走して進み、セツナは自身のイェジド、Anbarは戦馬に乗って先導する。
荷台に乗っている子供達はいつもファリフの手紙越しで知るだけのハンターが間近にいるということでテンションが高くなっている。
中でも一番興味を引いていたのはユグディラ達。
猫が二足歩行するということが不思議で仕方ない模様。実際は猫型の幻獣であるが、とりあえず慣れてもらえたらいいだろう。
「グデちゃんっていうのー?」
「そうですよぉ~♪」
女の子の問いかけに頷くのはハナだ。
馬のゴンはカオンが運転する馬車に加えてもらい、二頭で引いてもらっている。
もう一人、琴音の姿にも興味がいったらしい。
絹の着物は珍しいようであり、暑くないのかと心配される始末。
「慣れてるから平気」
通気性も悪くないので要は慣れだ。
ついでに下駄の形状が気になっている模様で、琴音は丁寧に説明をしてくれた。
「わかった! お姉ちゃんは『てんいしゃ』なんでしょ。ファリフ様が手紙で言ってた!」
男の子の一人が琴音に言えば「当たり」と返す。
隣の馬車では人見知りの女の子がハンターに懐かずにいた。
「僕はカオンさんの友達だから、安心していいよ」
女の子の隣に座るシンが言えば前で馬を操るカオンが肯定する。
「そうですよ。族長と一緒に何度も歪虚と戦ったことがある戦友ですよ」
「じゃぁ……モグラのわいきょと、たたかったことがある?」
好奇心を隠せずに女の子が尋ねると、シンはどこか複雑そうに「あるよ」と答えた。
多分、数年成長すれば彼女もまた、あのノッポのモグラ歪虚の守備範囲となると思えば心境は複雑だ。
そんな会話をBGMにしてGacruxは太陽の光を目に入れないように帽子のつばで影を作った。
今日はとても天気が良い。
先を進んでいるAnbarが双眼鏡を覗いていると獣の姿を見つけた。セツナと視線を合わせると彼女は頷いた。
「カオンさん、目的の獣のようです」
振り返ったセツナの声にカオンは「わかりました」と返すなり、子供の一人も聞いていたようであり、反応して立ち上がる。
「どこ!?」
「た、立ったらあぶないよ!」
興奮する男の子にシンの隣に座っていた女の子が注意する。
子供達は生きた獣と遭遇するのは初めてなので様々な反応を見せていた。
「お子様達は良い子で待っているといい」
Gacruxが姿勢を直して座る。
「やっつけるの!?」
わくわくしている子供達に彼はゆっくりと頷いた。
「その為にここに来たんだよ」
幾月と一緒に荷台を降りるのは琴音だ。
「これから、お兄さんとお姉さんが獣をやっつけにいきますよぉー。獣を引きつけますので、シィですよー」
ハナに言われた子供達は元気よく返事をしてくれたが、言われたことを思い出して口に手を当ててこくこくと頷く。
「カオンさん、子供達を守ってほしい」
荷台から降りたシンとセツナがカオンの方へ回り込んでそう頼む。
「承知しました。戦いの邪魔にならないよう配慮します」
カオンが頷いて剣を取った。
「お、おにいちゃん、がんばって……!」
人見知りの女のが言葉に詰まりつつシンへ応援を送る。
「頑張ってくる」
頷いたシンは先を歩く仲間たちの方へと向かう。
「私たちが戦っている最中もカオン殿が超聴覚で周囲を窺って貰ってます」
セツナがそう言えば剣の鍔を親指で弾いた。
合図を聞いたセツナのイェジドである雹は軽やかに地を蹴る。
ぐるりと回りこむように雹はバッファローの周囲を走った。
警戒するようにバッファローはイェジドへ警戒を促す。セツナは気を引けたと確信するなり、一気に仲間たちの方へと雹を走らせる。
白い毛並みを持つ雹は太陽の光を浴びて眩しいほどだ。
「すごくきれいー!」
「はやーい!」
子供たちがはしゃいで雹の走る姿を見つめていた。
「だめだよ! ハナおねえちゃんとやくそくしたでしょ」
注意を促す子供がいたが、軽やかに走るイェジドに興奮は隠せない。
バッファロー達がハンター達の方へと向かってくると前に出たのは琴音と幾月。
琴音は足にマテリアルを循環させており、いつ発動してもいいように備えていた。
リアルブルーで知った知識の中で、闘牛で戦う牛は闘牛士の持つ布を目がけて飛び込んでくる。
この世界の牛に色を認識することが出来るか、揺らめく布に反応するかわからない。
しかし、試してみる価値はあるだろう。
華奢な手を斜め前へ差し出した琴音は腕を振って着物の袖を大きく揺らす。
「先生やっちゃってー!」
例にもれず、子供達には幾月を先生と呼んでほしいとお願いしていたので、子供たちは素直に先生にも声援を飛ばしていた。
リアルブルー出身の琴音としては、意図せずに用心棒のようだと感想を抱く。
思案もそこそこに幾月の警告がとんできた。
ギリギリまで引き付けた琴音はジェットブーツを発動させて軽やかに身を躱す。
華麗な身のこなしに後ろから子供たちの歓声が飛ぶ。
琴音が横に飛ぶと、後ろの陣形が獣達に見えた。彼女の立ち位置から少し離れた後方で弓を構えていたのはGacruxだ。
いつ琴音が飛んでもいいように耳を澄ませて周囲の動きを伺っていた。
獣の動きがスローモーションを見ているような感覚になっていき、番えていた矢を放つ。
飛ばされた矢が空気を裂き、バッファローの眉間に命中する。
衝撃でバッファローは上体を仰け反り、前足がバランスを整えるべく宙をもがく。
滑り込むように前に飛び込んできたのはAnbarだ。燃え盛る炎のような斧を振り上げて、左前脚を叩き落した。
重力に従う為とAnbarの攻撃で地に叩きつけられたバッファローは頭を振り、角をAnbarへ向けようとしている。
クラッシュブロウの効果を得ていたAnbarは怯むことなく、バッファローの頭へ斧を叩きつけた。
骨が割れたのか、バッファローは起き上がらずに昏倒している。
後衛でハンドベルの音が聞こえる。
ユグディラのグデが鳴らしており、演奏している曲は悲嘆な思いにかられるが、ハンドベルの効力なのか、余韻が優しく感じられる。
「きれいな音色」
女の子達に好評なようであり、ハナは子供たちの歓声を背に「仕方ないですねぇ」と呟く。
リアルブルーで言うところのヒーローショーのようだと思える。
バッファローにもその音は聞こえており、その動きは鈍ってきていた。
更にハナはドローアクションを重ねた五色光符陣を発動させる。
「さっさとお肉になりなさいっ!」
光の陣に目を焼かれたバッファローはよろよろと動いていた。
横から空気を裂く高い音が聞こえると、鈍い音がバッファローから響いて倒れる。
その頭には矢が刺さっていたので、Gacruxの矢と判断した。
スムーズに狩りが進んでいるのだが、ここで出てくるのが逃げ出そうとしている獣だ。
見逃すわけにはいかない。
一気に雹のスピードを上げたセツナは獣を追い込み、子供たちの方向へ走らせないようにハンターの方へ向けるようにすれ違いざまに斬りつけて雹をターンさせて誘導させる。
「さぁ、こっちに来い!」
ハンター達の間合いに入ろうかどうかというところで野獣に相当する動物霊の力を借りたAnbarが大声を張り上げる。
咆哮にバッファローは驚いて足を竦めてしまう。
その隙を狙うのはシン。
「悪いけど、これ以上近寄らせる訳にはいかないんだ」
静かに告げると、彼は獣の前右足の付け根を斬りつけた。バッファローと衝突しないように横に身体をずらしたシンは剣の流れに逆らわずにサーベルを振り上げ、後右足を切り落とす。
「最後の一体だねっ」
琴音が幾月からの警告を受け止めると、軽やかに避ける。
「そろそろ終わりにしましょうねぇ!」
更にハナが地縛符を発動させてバッファローを足止めした事を確認した琴音はジェットブーツの速さを利用して獣へと追いつく。
先ほどの五色光符陣でも肉は無事だった。
「これもどうかな」
琴音の華奢な手よりぱちりと電気の火花が飛ぶ。
思いっきりバッファローを突き飛ばすように両手を出した琴音から発せられたエレクトリックショックの衝撃にバッファローは電撃を受けてゆっくり倒れた。
獣がすべて倒れ、ハンター全員がほぼ無傷で立っているという姿に子供達は興奮を隠せない。
「すごーい!」
「かっこいー!」
「ぼくも、あんなせんしになる!」
口々に賞賛の言葉を上げる子供たちに「静かにと言ったんですけどぉ」とハナが笑う。
「怖がって泣かれなくてよかったかも」
ぽつりと呟くシンの言葉にハンター達は確かにと納得する。
「獣の処分は?」
Gacruxの問いかけにカオンは「お昼に余ったら持ち帰ります」と麻袋と牛刀のようなナイフを取り出した。
「よし、さっさと枝肉にしようぜ」
Anbarが言えば、みんなで地の恵みを切り分けることにする。
獣の血を抜いている間、ハンター達は水分補給を兼ねてしばし休憩。
太陽も昼の時間を指し示すように昇りきっている。
子供達は怖がるものいたが、普通に手伝ってくれていた。
辺境部族にとって食べられる動物の肉は大事な栄養源の一つであり、生きることが重要なので、自身の血肉となる動物の血にドン引きしている暇はない。
勿論、今日のお昼ご飯のメインディッシュだ。
子供たちはどの肉を食べようか見聞するくらいである。
「骨は?」
「一部は持ち帰ります。骨を加工して武器にしている部族と取引をしておりますので」
セツナが問いかけると、カオンは迷わず答える。
「馬や荷台に載せる肉は先に載せておくよ」
肉が詰まった麻袋を持った琴音が声をかけると、幾月が琴音をサポートするように持ち上げられた麻袋の底を支えて一緒に運んでいく。
粗方の作業が終われば、おひるごはんである。
肉の解体中にハナが簡易竈を用意していた。
「おねえちゃん、お肉足りる?」
「ありがとうございますぅ♪ 足りなかったら切りますからぁ」
子供達が調理用の肉をハナとAnbarの方へと持っていく。
温めたバトルスキレットで肉を焼き始めた。
肉の焼けていく音が響く。火の番はAnbarがやってくれており、ハナは鍋の方を見ている。
持ってきた野菜と薄切り肉、酒と帝国某店の万能調味料を鍋に放り込んだ。
これだけで十分美味しいスープが出来上がる。
全員分の肉が焼きあがりと同時にスープも出来上がる。スープボウルは事前に人数分用意してもらった。
パンを皆分け合って座る。
「さぁ、ごはんにしましょう」
皆でいただきます。
ごはんは先ほどの戦闘をどれだけ格好良かったのかというのを子供たちが熱弁していた。
基本的に子供は戦っているところを見ることはあまりないのでとても興奮していた。
それと同時にハンター達の戦いがどれだけ子供達への安全に配慮し、華麗だったということが窺える。
ユグディラ、イェジドも凄かったと感想を口にされていた。
「先生、人気者だね」
琴音が言えば、幾月はだんまりだ。
照れているかはちょっとわからない。
しかし、白熱する状況を見越してカオンが「食事は静かに」と注意すると子供達は大人しくなった。
「おねえちゃん、このスープおいしいね」
「ありがとうございますぅ♪」
女の子の一人がハナのスープを喜んでくれていた。
「部族のお嫁さんになるには何が必須なんですかぁ?」
ハナが尋ねると子供達は首を捻る。
「こんなおいしいスープを作れて強いおねえちゃんなら、だいじょうぶだよ!」
年長の男の子が言えばハナは「嬉しいですぅ」と上機嫌。
「そいやさ、ルックスにいちゃん、元気かなぁ」
シンの隣に座っていた男の子がスープに視線を落として呟く。
その名に聞き覚えはシンにもあった。
「今は、部族なき部族のメンバーとして迎えられております」
反応するシンを見たカオンが声を差し込んだ。
「元気ですよー。今は隠密の仕事を覚えている最中ですぅ」
ハナが答えると、子供達は少し妙な表情を浮かべていた。
「ルックス兄ちゃんちょっとあわてんぼうだよね」
「だいじょうぶかな」
子供目線でよく見ているものである。
ちょっと厳しいけど。
「大丈夫だろ。訓練を積まなければ得られないものもあるし」
Anbarの言葉に子供達は納得する。
「とうちゃんがルックスにいちゃんによく、いってた。しんしんのたんれんをおこたるなって」
子供達のなかでは年少にあたる子供が声をあげる。
どうやら、その子の父親はルックスに武術訓練をしていた戦士の模様。
難しい言葉を知っているとGacruxが内心物覚えの良さに感心する。
賑やかに食事を終えると子供達は「美味しかった」という感謝の気持ちと片付けを忘れていなかった。
少し休憩してから帰ることになる。
子供達はセツナの手助けでイェジドの雹に乗せてもらったり、グラのハンドベルに合わせて踊ったりしていた。
「おにいちゃんも!」
「俺も!?」
踊ってる子供達を見ていたAnbarだったが、女の子と男の子にそれぞれの手を引っ張られてしまう。
剣の指南を受け始めた年長の男の子はシンとカオンに相談している。
真摯に話を聞くシンは自分が剣を持ち始めた頃を思い出していた。
昼寝をしようとしていたGacruxの傍らに女の子が彼の顔を覗きこむ。
「お兄ちゃん、素敵なぼうしね」
「それはありがとう」
口角をあげてGacruxが礼を言えば、女の子はにこっと笑って踵を返し、イェジドの方へと向かう。
琴音の頬を荒野の風が撫でていく。
温度を含んだ風だが、湿気がないのでからりとしていた。
「うん、悪くない」
隣に座る幾月も心地よく感じている模様。
楽しい休憩時間もそこそこに帰る時間となった。
「そろそろ帰らねぇとな」
Anbarがはしゃぎ疲れて眠くなってうとうとしている子供を抱き上げて撤収を促す。
子供達の寂しさが募ったのはスコール族の土地が見えてきた頃だ。
「かえっちゃうの……?」
最初は警戒していた人見知りの女の子だったが、荷台で寂しさを口に出す。
「うん」
行きは偶然シンの隣に座ったが、帰りは女の子がシンに懐いて隣に座っていた。
「また、会える?」
女の子の問いにシンは言葉を詰まらせる。
今回会えたのは依頼があってこそ、次はいつ会えるかまだわからない。
「会えますよ」
カオンがちらりと二人の方を肩越しに見やって微笑む。
無事に子供達を送り届けると、親達から礼を言われた。子供達の中にはハンターと別れるのが寂しくて涙を流す子供もいたが、「またね」と手を振ってくれた。
「ハナ様」
カオンがハナに声をかけると、先ほどの部族の嫁に必要なことについての話を引っ張り出す。
「嫁に限らず、我々赤き大地に住まう者は皆、覚悟が必要です。この地は歪虚の恐怖に晒され、時に民が部族に害を為すこともあります」
真摯なカオンの声にハナは無言で聞いていた。
「いかなる事象も受け止め、そこからどう動けるかが大事だと私は思います」
カオンが紡ぐ言葉は他のハンター達にも聞こえていた。
彼女の言葉にハナはつい最近の記憶を思い浮かべさせられてしまう。
「それは部族も、ハンターも変わりないかもしれませんが……」
ふっと、微笑んでカオンの言葉は終わる。
もう日は暮れており、帰る時間となっていた。
「楽しい時間だったね」
琴音の言葉に幾月は頷く。
夜が近づいて少し肌寒いが、今日の楽しさは昼の気温の暑さと共にハンター達に残っていた。
依頼結果
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相談卓 Anbar(ka4037) 人間(クリムゾンウェスト)|19才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2017/06/03 11:52:31 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/05/30 16:05:48 |