ゲスト
(ka0000)
路地裏工房コンフォートと夏風邪
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/08 19:00
- 完成日
- 2017/06/15 23:08
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
極彩色の街、ヴァリオス。その片隅の路地裏に佇む小さな宝飾工房、コンフォート。
修理やリメイクが主な客で、古い店らしく今は無き先代の作品を持ち込まれることも間々あるこの店に、今日訪ねてきたのは客では無く、近所の薬屋の娘だった。
久しぶり、と店主のモニカに声を掛け、カウンターの傍に置かれたベビーベッドを覗き込む。
中に寝かされている赤ん坊は彼女のことを覚えたのか、ベッドの柵から歓迎するように手を伸ばす。
「ピノちゃん、元気になったみたいでほっとしたよー。夏風邪にはちょっと早いかな」
娘は赤ん坊に指を握らせながらカウンターの椅子に腰掛ける。
「うん、もうすっかり……ありがとう」
「本当だよ、いーい、いくら心配だからって、雨の日に抱っこして連れてきちゃダメだからね」
「でも……」
モニカはカウンターを出てベッドからピノを抱き上げる。
「目を離せないのは分かるけど、濡れたら冷えて悪化しちゃう。ほら、お隣さんに見ててもらったら?」
モニカは黙ってピノをあやしている。
「モニカだって、お仕事中ずっと見てるのは大変でしょ? 助けてもらいなよ。お隣のおばちゃんも、その方が安心だと思うよ?」
赤ん坊はモニカの頬や髪に小さな手を寄せて何かを言っているらしい。
聞き取れるほど正確な発音では無いが、抱き上げられて喜んでいるようだ。
「……もっと小っちゃい頃、何度も、何度も、熱を出したの」
寝かしつける様に揺らしながらモニカが静かに話した。
「その時は、薬も何にも無くて、どうしてあげることも出来なくて……ピノを抱いて祈るしか無かった……」
ピノを揺らす手が止まり、声が震える。
強請る様に手を振ったピノに笑って、モニカはゆっくりとピノをあやす。
「だから、かな。もう平気って分かっても、心配なんだよね。私が傍にいなきゃって、思っちゃうんだ」
モニカが溜息を吐く。
娘には聞き慣れた言葉なのだろう、大変だったんだね、仕方ないかと、肩を竦めた。
「でも、悪化させちゃうのは良くないよ、それは考えてね! お姉ちゃんなんだからさ」
モニカを真っ直ぐに見詰めて言うと、モニカが答えるより先にピノが、ぁい、と元気な声で返事をした。
「――そういえばさー、お姉ちゃん……じゃなくて、モニカ。昨日もすごいドレスの人来てたね。吃驚したよ」
「うーん……朝かな? この店、昔は貴族のお客さんもいたみたい。朝の人もそう。修理を頼まれたの。見たい?」
「いやいや、何か怖いよー、大変だね……貴族の相手とか、肩凝りそう……うち、湿布は充実してないんだよね」
モニカは寝付いたピノをベッドに戻し、そうでもないよ、と微笑んだ。
●
「あ、忘れるところだった」
一頻り喋ってから薬屋の娘はぽんと手を叩く。
「ジェオルジ行きって、今忙しいかな? 仕入れに行かなきゃならないんだけど」
「どうかな、この前も郷祭前に行きたいって、お客さんに会ったけど……」
ペンダントを直し、ハンターオフィスへの道を教えたあの女性は無事に着いただろうか。
郷祭に合わせて、ジェオルジに支店を出すと言っていたけれど。
「……たしか、街の方でお菓子屋さんをしてて……お祭りでクッキーを売るって言ってたかな」
「いーなー、甘いクッキー、私も食ーべーたーいー……でさ、オフィスって今忙しいかな?」
聞いてみないことには、とモニカは首を横に揺らして窓の外を眺めた。
この辺りは何事も無く過ごしているが、同盟の彼方此方が騒がしいという噂は聞いている。
歪虚絡みの事件に関わったことのあるモニカは、その驚異をよく知っていた。
「今はどこも忙しいから……でも、行くんでしょ」
「うん。薬を仕入れないと店が潰れちゃう」
「ハンターさんには慣れた?」
初めて彼女が仕入れの護衛にハンターに依頼した時のことを思い出した。
「全然! でも、怖い人じゃ無いって分かったし、私が仕入れに行かないと、パパやママの代わりに調合とか出来ないからね……モニカだって、うちの薬が無くなったら困るでしょ?」
「それは、すごく困る」
おじいちゃんのころからお世話になったから、と、モニカは微笑む。
晩年、毎週のように薬を買いに来ていた。
亡くなって酷く落ち込んでいたけれど、立ち直った様子に安堵し、自然と眦が下がった。
極彩色の街、ヴァリオス。その片隅の路地裏に佇む小さな宝飾工房、コンフォート。
修理やリメイクが主な客で、古い店らしく今は無き先代の作品を持ち込まれることも間々あるこの店に、今日訪ねてきたのは客では無く、近所の薬屋の娘だった。
久しぶり、と店主のモニカに声を掛け、カウンターの傍に置かれたベビーベッドを覗き込む。
中に寝かされている赤ん坊は彼女のことを覚えたのか、ベッドの柵から歓迎するように手を伸ばす。
「ピノちゃん、元気になったみたいでほっとしたよー。夏風邪にはちょっと早いかな」
娘は赤ん坊に指を握らせながらカウンターの椅子に腰掛ける。
「うん、もうすっかり……ありがとう」
「本当だよ、いーい、いくら心配だからって、雨の日に抱っこして連れてきちゃダメだからね」
「でも……」
モニカはカウンターを出てベッドからピノを抱き上げる。
「目を離せないのは分かるけど、濡れたら冷えて悪化しちゃう。ほら、お隣さんに見ててもらったら?」
モニカは黙ってピノをあやしている。
「モニカだって、お仕事中ずっと見てるのは大変でしょ? 助けてもらいなよ。お隣のおばちゃんも、その方が安心だと思うよ?」
赤ん坊はモニカの頬や髪に小さな手を寄せて何かを言っているらしい。
聞き取れるほど正確な発音では無いが、抱き上げられて喜んでいるようだ。
「……もっと小っちゃい頃、何度も、何度も、熱を出したの」
寝かしつける様に揺らしながらモニカが静かに話した。
「その時は、薬も何にも無くて、どうしてあげることも出来なくて……ピノを抱いて祈るしか無かった……」
ピノを揺らす手が止まり、声が震える。
強請る様に手を振ったピノに笑って、モニカはゆっくりとピノをあやす。
「だから、かな。もう平気って分かっても、心配なんだよね。私が傍にいなきゃって、思っちゃうんだ」
モニカが溜息を吐く。
娘には聞き慣れた言葉なのだろう、大変だったんだね、仕方ないかと、肩を竦めた。
「でも、悪化させちゃうのは良くないよ、それは考えてね! お姉ちゃんなんだからさ」
モニカを真っ直ぐに見詰めて言うと、モニカが答えるより先にピノが、ぁい、と元気な声で返事をした。
「――そういえばさー、お姉ちゃん……じゃなくて、モニカ。昨日もすごいドレスの人来てたね。吃驚したよ」
「うーん……朝かな? この店、昔は貴族のお客さんもいたみたい。朝の人もそう。修理を頼まれたの。見たい?」
「いやいや、何か怖いよー、大変だね……貴族の相手とか、肩凝りそう……うち、湿布は充実してないんだよね」
モニカは寝付いたピノをベッドに戻し、そうでもないよ、と微笑んだ。
●
「あ、忘れるところだった」
一頻り喋ってから薬屋の娘はぽんと手を叩く。
「ジェオルジ行きって、今忙しいかな? 仕入れに行かなきゃならないんだけど」
「どうかな、この前も郷祭前に行きたいって、お客さんに会ったけど……」
ペンダントを直し、ハンターオフィスへの道を教えたあの女性は無事に着いただろうか。
郷祭に合わせて、ジェオルジに支店を出すと言っていたけれど。
「……たしか、街の方でお菓子屋さんをしてて……お祭りでクッキーを売るって言ってたかな」
「いーなー、甘いクッキー、私も食ーべーたーいー……でさ、オフィスって今忙しいかな?」
聞いてみないことには、とモニカは首を横に揺らして窓の外を眺めた。
この辺りは何事も無く過ごしているが、同盟の彼方此方が騒がしいという噂は聞いている。
歪虚絡みの事件に関わったことのあるモニカは、その驚異をよく知っていた。
「今はどこも忙しいから……でも、行くんでしょ」
「うん。薬を仕入れないと店が潰れちゃう」
「ハンターさんには慣れた?」
初めて彼女が仕入れの護衛にハンターに依頼した時のことを思い出した。
「全然! でも、怖い人じゃ無いって分かったし、私が仕入れに行かないと、パパやママの代わりに調合とか出来ないからね……モニカだって、うちの薬が無くなったら困るでしょ?」
「それは、すごく困る」
おじいちゃんのころからお世話になったから、と、モニカは微笑む。
晩年、毎週のように薬を買いに来ていた。
亡くなって酷く落ち込んでいたけれど、立ち直った様子に安堵し、自然と眦が下がった。
リプレイ本文
●
馬車の荷台に数日を滞在する荷物を放り投げ、出発の支度を終えた依頼人がハンター達を見回した。
強張った表情が、見知った顔に綻んだ所をすかさずカリアナ・ノート(ka3733)と星野 ハナ(ka5852)が話し掛ける。
「今回はよろしくお願いするわ! それから、クリスマスのイベントでサンタさんに会わせてくれてありがとー!」
「あれぇ、ハンドベルの演奏会の時に舞台に居た方じゃないですぅ? うわぁ、大サービスで頑張っちゃいますよぅ」
クリスマス、演奏会、と思い出す様に呟いて。イベントに来てくれた方かしらと首を傾げた。
「元気だった? 見た顔も多いし……初めましての方もとっても頼れるから安心してね」
リアリュール(ka2003)の言葉に、カリアナ、カイン・マッコール(ka5336)と依頼人の視線が動く。
それから、あ、と小さく声が零れて星野を見詰めた。
最初のお客さんの中にいたかしら。ステージからの光景を、一際熱心に聞いていた星野を思い出したように。
カリアナにも視線が移る。会えたのなら来て貰って良かった。そう懐かしそうに微笑む。
リアリュールにも会釈を添え、差し入れの礼を。受け取った他の少女達もとても喜んでいたと目を細める。
以前の仕入れの時は、と頭を下げる依頼人をカインの静かな声が遮る。
「仕事は確りとさせていただきますので、ご安心ください」
出発に備え、自身の得物を確かめる。日に翳した剣は刃毀れ一つなく燦めいている。
一旦馬を下り、依頼人を見下ろさない程度に屈んだヴァイス(ka0364)が後衛を担うと伝え、ロン、と呼ぶ馬を引いて馬車の後ろへ。依頼人が慌てながら振り返って、よろしくお願いしますと焦った声が掠れる。
「ハンターのマリィア・バルデスよ。今日はよろしく、可愛い依頼人さん」
マリィア・バルデス(ka5848)が差し出した右手を見詰め、頬を赤く身を竦ませた依頼人が震える右手でそっと握り返す。
握手をしながら顔を伏せて、聞き取りづらい声で世話を、迷惑を掛けると、済まないと聞こえたのかも知れない。
或いは微かに震えた肩に察したのだろう、マリィアが、気にすること無いわよ、と微笑んで、バイクに跨がる。
「私は先行だから、ここで挨拶しないとジェオルジまで貴女と話す機会がないもの、ふふ」
エンジン音の中、凜と通る声。
アルファ、ガンマ。二頭の犬を呼んで走り出した。
マリィアの背を見送り、そろそろ出発しようかと、リアリュールが馬車の助手席に掛ける。覗う様に見た横顔は、思ったよりも落ち付いている。その様子を見たカリアナも荷台に座り、安堵の息を吐く。挨拶も出来て、依頼人の緊張も解れているようだ。
●
初夏の爽やかな快晴。馬車が穏やかに走り出す。
その先を進むマリィアは肩越しに振り返って距離を測る。馬車の周辺は積んだ得物の射程に入っている。
走りながらトランシーバーを取って馬車を守る仲間に連絡を入れた。
「良い天気……久しぶりのピクニックは楽しいわね」
連れた犬をそれぞれ呼ぶと、答えるように軽く吠えた。
時折張り出してくる枝や、隘路の陰り、視界を遮られればマテリアルを走らせ、安全を見極めてから馬車を妨げそうな道の様子を後方へ伝える。
「――分かったわ、ゆっくり走ってもらうわね」
連絡を受け取ったリアリュールが隣の依頼人にそれを伝える。
木の根が道を狭めている、その少し手前で馬車は停まり、横を守っていた星野とカインが先に通る。
「無事に通れたわ」
馬車がそこを通過し、再び左右を守る配置に着いたところで、カリアナがマリィアに連絡した。
後方にも怪しい影は見られない。
影を過ぎた街道は木漏れ日が揺れ、緩やかな馬の歩みが心地良い。
「この季節ぅ、花が咲いてるおかげですっごく野草が分かりやすいじゃないですかぁ」
そこには大葉子、そこには薺。
季節を少し遡れば野蒜も美味しく食べられただろう。
星野が馬を寄せて指差しながら話すと、その先を見詰めた依頼人が見付けたと嬉しそうに言う。
「野草積みの護衛とかもしてるのでぇ、気になったらどんどん声かけて下さいぃ」
星野の指を離れても道ばたの草に目を奪われて乗り出していた依頼人が、不意の言葉に椅子に座り直した。
恥ずかしそうに俯いて、小さな声が礼を告げた。
●
食べ物の話しになったからだろうか、思い浮かんだ天麩羅やオムレツに星野が口許を拭う。
また道は細くなっている。振り返り馬車の安全を確かめながら馬を進ませる。
道が開けたら、少し休むのも良いだろう。
「もうちょっとモニカさんとも仲良くなりたいなぁって思ってるんですけどぉ……本当はブローチとか頼んでみたいですぅ」
前後を気に掛けながら依頼人と和やかに話していると、不意にリアリュールに連絡が入る。
「――止まる方が良いわね。……構えるわ」
「回り込んでいるみたい。側面を警戒して」
マリィアがバイクを止めて覗き込む狙撃銃の照準器が敵を捕らえるが、茂る木々がその射線の邪魔をする。
連絡を終え、馬車の停止を確認したトランシーバーを置くと、即座に銃口を馬車方面へ向ける。
「護衛だろうとゴブリンが出るなら、いつも通りのゴブリン退治だ」
カインは大剣を抜き放ち、敬虔なエクラ信者の言葉を刻んだ長い刀身が翻る。色を切り替えて切っ先を据えながら、馬を進ませ馬車の側面、森から出てこようと機を覗う複数の気配に対峙する。
馬車を背に庇い、森へ数歩歩ませるとマテリアルを燃やす炎の幻影が、少年らしいほっそりとした体を包む。
「敵が来たみたいですぅ……身を低くして伏せていて下さいぃ」
星野も同様に馬車を庇う様に馬を進める。
符を構えて森を探る双眸が蒼い光りを帯び、長い髪が風が途切れても弄ばれるように揺れ続ける。
その瞳は敵の集まりを、距離を推し量るが符の射程には遠いと知り、馬を数歩進めながら敵の攻撃を覗う。
石を握るものを狙えるように動きながら、馬車を庇える体勢で留まらせる。
こちらを覗っていたゴブリンがじわりとカインに向けて動く。
その動く先を狙ったように矢が落ちる。射止められた足に濁った悲鳴が響き、その声に反応した10を越える獣の目が、一斉にハンター達を睨む。
放たれた瞬間に響き渡った清らかな音は次第に静まり、蒼い炎を纏うしなやかな和弓に次の矢を番え、ヴァイスはそれを睨み返す。
炎を思わせる紅蓮の幻影が揺らめいて、燃え上がるように明滅する。
ゴブリンの視線はぎらぎらとハンター達を眺め回してからカインに戻る。
仄暗く狭い道での遭遇に竦んだ依頼人に、リアリュールはそっと声を掛けた。
「馬の傍にいて? 私たちが傍にいるわ」
依頼人が馬を一番近くの木に繋ぎ、リアリュールはその傍らに。
依頼人と馬、馬車を守れるように星形の手裏剣を取り出した。
不安そうな目に大丈夫だと囁いて微笑む。森の中、カインのマテリアルに惹かれずこちらを向く2つの目を見付けると、銀色の髪が鮮やかな七色に輝いた。
得物を抱えて荷台から飛び降りたカリアナも傍に寄って銀の刃を燦めかせる。
敵を睨み距離を測るが、少し足りない。数歩森に進み入って、依頼人を振り返りながら留まった。
葉の擦れる音、銃声、次いで、獣の悲鳴。
咄嗟に振り返ったカリアナが得物を大きく取り回し、届く限界に近い距離で水の礫を放つ。
道の先は緩く湾曲し茂る木々に遮られてマリィアの姿は見えない。しかし、その影から道へ飛び出してきた敵はどちらからでも射程に入る。
一度その体を痙攣させたゴブリンはすぐに動かなくなった。
馬が嘶く。足が動いて依頼人が背を撫でて宥め続けているが落ち付かない。
森のどこからか投じられた礫にリアリュールが立ち塞がり手裏剣を投じた。
弾き合って叩き落とされた1つ目の石礫は足元に転がり、もう1つが胸当てに当たった。衝撃に軽く咳き込むが、構えを解く程のことは無く、その石の軌跡を辿るように手裏剣を投じる。
投げ尽くすまで続けざまに。
辺りにいた何匹かが足を取られたようにまごついている気配がする。
不安そうにした依頼人に大丈夫だと告げて、空になった指が得物を挟み、敵を睨んで構え直した。
戦っている内に敵も近付いてくる。片手の盾を握り直し、馬車との距離を空けすぎずに森へ入ったカインは長剣に纏わせるマテリアルを研ぎ澄ませ、残りの数歩を詰めきって、向けてくる棍棒を盾で押し返しながら胴を袈裟に斬りつけた。
「聖剣か、模造品が多いのでコレもそのたぐいだろうけど、ゴブリンを殺す力はあるか、ならば良い剣だ」
血を撒いてふらついたゴブリンが起き上がるのを許さずに頸を断つ。
絶えたばかりの敵を見下ろし、地面に至った片側の切っ先を抜く。纏った血糊を払い、次の敵を見据えた。
カインの炎は灯ったまま、惹かれるゴブリンの動きが重なる。星野の構える符、扇形に広げたその内の5枚が、そこに綴られた呪文を赤く輝かせた。
伏せていて下さいね、眩しいですよ。肩越しに依頼人を一瞥し、投じた符は広がって敵を囲む。
その内に生じた光りの灼かれ、ふらついたところへ木々の合間を縫う矢が、弾丸が行き交った。
矢へ伸ばし掛けた手を止めてヴァイスはゴブリンの動きを睨む。潜んだ1匹が後方へ回り込んでいる、
「悪いがここは通行止めだ」
後ろは任せろ。振り返らずに仲間に声を掛け、応を背に感じながら弓を収め剣を抜く。
暖かな灯火を思わせる光りが陰りの中を照らす。飛び出してくるゴブリンは至近、柄の魔導機械が稼動すると幅の広い刀身がより輝いた。
照準器を覗いて、銃床を抱え込むように。
光りの中で蠢く影に狙いを据える。光りに動きを止められているためか、遮蔽となる木を避ける射線を見付けるまで、敵が逃げ出すことは無い。その光りの中、最後の1匹を弾丸が貫く。
全身で反動を受け留め、呼吸を1つ。
緑の瞳が静かに瞬いて次の敵へ銃口を据えた。
手早く引き直した符を残っている敵を狙い投じる。
目を眩ませながらも、その光の中を逃れてきた1匹にカインが剣の切っ先を突き付け、躊躇いなく旋回する刃は石を取った腕を肩から落とし、残りの腕が投げる前に振りかぶって頭に叩き付け、その鋭さで真二つに割る。
光の凪いでいく中に、得物を落としたらしいゴブリンが見える。濁った声を吠えるように響かせ、爪を振りかぶって、ぎらつく目が弱者を探す。その目はすぐに、リアリュールに庇われた依頼人を見付け足を縺れさせながら向かおうとする。
「おねーさん、大丈夫よ」
カリアナの振り下ろす刃が風を裂く。宝玉の煌めきが優美な流線を描き、ハンドルを引き付けるように取ると、茂った草が刈られて舞い上がった。
氷の矢に射抜かれたゴブリンは振り上げた腕が、全身が凍て付いたように動けぬ事に狼狽えるが、その回復を待たずに斃れ、やがて全身を凍り付かせた。
警戒は解かず後方を見回って戻ったヴァイスが安全を告げる。
「――そっちはどうだ?」
「――今、確認しているわ。……怪しいものを発見したらすぐ吠えるのよ」
前方のマリィアも、見回せる範囲内の敵の沈黙を見て、連絡に応じた。犬に周囲を警戒させているが、返ってくる声は穏やかだ。
少し先まで走らせたマリィアから安全を伝える連絡が届くと、ヴァイスは剣を収めて手綱を引く。
「よし、それじゃあ再出発といこうか」
頷いたリアリュールが依頼人に馬の様子を尋ねると、依頼人は平気そうだと頷いた。
少し驚いた様だが進めると言う。
カリアナもほっと息を吐いて荷台に戻る。
得物は抱えて、残りの道中も落とさぬように、柄を確りと握って。
星野も馬を運転席の傍に寄せ、依頼人を励ます様に声を掛け、出発の準備が整った頃、カインが綴っていたメモを揃えて荷物に収め、馬を歩ませた。
●
マリィアが到着を伝え、そのすぐ後に馬車の周囲を守っていたハンター達も到着し、依頼人は無事にジェオルジの街道口に辿り着いた。
カインが辿ってきた道を振り返って、メモに書き加えてはペンを止める。
その手を見た依頼人の視線に気付いたのだろうか、書き掛けの文を走らせて、軽く揃えてペンを置く。
「知識を共有してコチラの犠牲が出にくいようにしておきたいので」
傍でぼんやりと佇んでいた警備兵が、その言葉に慌てて駆け寄ってきた。
何かあったのかと問われ、ゴブリンが出たと答えたカインは手許のメモに伏せ気味の静かな視線を落とした。
「新人のハンターさんや兵隊さんたちや村の人達がゴブリンと闘うための教本を作っておこうと思いまして」
警備兵にそれは助かると、カインがメモの開示を請われ、バイクを降りたマリィアも肩を竦めて依頼人の側に戻ってきた。
「そうね、脅かすつもりはないけれど、最近この道では多少歪虚が出るわね」
死人を出した事件から1年経っていない。木々をざわめかせた風が髪を弄ぶ。
「だから、自分だけは絶対大丈夫なんて思わないで、1人でもいいの、必ずハンターを雇ってちょうだい」
マリィアの真摯な声に答えた依頼人の声は小さく、対面しているマリィアの他には聞こえない様な物だったが、頷いてから向けられた視線は、真っ直ぐにマリィアを見ていた。
「おねーさんの薬の買い付けも手伝えるといいな……出来ることはあるかしら?」
「仕入れ先まで送りますよぉ」
カリアナと星野の申し出に、深々と頭を下げて。
何度もためらいながら、最初の1軒だけお願いしますと答えた。
慌ただしくその店での仕事を終える頃、星野がどこからか買ってきたクッキーの包みを差し出す。
「これ、日持ちして美味しんですぅ。戻ったらモニカさんと楽しんで下さいねぇ」
行きの道中にはそんなことがあったのかと、聞き上手なハンターが依頼人の話に朗らかな相槌をうつ。
満載の馬車はゆっくりと街道をヴァリオスに向けて進んでいく。
手綱を握った依頼人の荷物の中には、クッキーの包みが潰れぬように仕舞われていた。
馬車の荷台に数日を滞在する荷物を放り投げ、出発の支度を終えた依頼人がハンター達を見回した。
強張った表情が、見知った顔に綻んだ所をすかさずカリアナ・ノート(ka3733)と星野 ハナ(ka5852)が話し掛ける。
「今回はよろしくお願いするわ! それから、クリスマスのイベントでサンタさんに会わせてくれてありがとー!」
「あれぇ、ハンドベルの演奏会の時に舞台に居た方じゃないですぅ? うわぁ、大サービスで頑張っちゃいますよぅ」
クリスマス、演奏会、と思い出す様に呟いて。イベントに来てくれた方かしらと首を傾げた。
「元気だった? 見た顔も多いし……初めましての方もとっても頼れるから安心してね」
リアリュール(ka2003)の言葉に、カリアナ、カイン・マッコール(ka5336)と依頼人の視線が動く。
それから、あ、と小さく声が零れて星野を見詰めた。
最初のお客さんの中にいたかしら。ステージからの光景を、一際熱心に聞いていた星野を思い出したように。
カリアナにも視線が移る。会えたのなら来て貰って良かった。そう懐かしそうに微笑む。
リアリュールにも会釈を添え、差し入れの礼を。受け取った他の少女達もとても喜んでいたと目を細める。
以前の仕入れの時は、と頭を下げる依頼人をカインの静かな声が遮る。
「仕事は確りとさせていただきますので、ご安心ください」
出発に備え、自身の得物を確かめる。日に翳した剣は刃毀れ一つなく燦めいている。
一旦馬を下り、依頼人を見下ろさない程度に屈んだヴァイス(ka0364)が後衛を担うと伝え、ロン、と呼ぶ馬を引いて馬車の後ろへ。依頼人が慌てながら振り返って、よろしくお願いしますと焦った声が掠れる。
「ハンターのマリィア・バルデスよ。今日はよろしく、可愛い依頼人さん」
マリィア・バルデス(ka5848)が差し出した右手を見詰め、頬を赤く身を竦ませた依頼人が震える右手でそっと握り返す。
握手をしながら顔を伏せて、聞き取りづらい声で世話を、迷惑を掛けると、済まないと聞こえたのかも知れない。
或いは微かに震えた肩に察したのだろう、マリィアが、気にすること無いわよ、と微笑んで、バイクに跨がる。
「私は先行だから、ここで挨拶しないとジェオルジまで貴女と話す機会がないもの、ふふ」
エンジン音の中、凜と通る声。
アルファ、ガンマ。二頭の犬を呼んで走り出した。
マリィアの背を見送り、そろそろ出発しようかと、リアリュールが馬車の助手席に掛ける。覗う様に見た横顔は、思ったよりも落ち付いている。その様子を見たカリアナも荷台に座り、安堵の息を吐く。挨拶も出来て、依頼人の緊張も解れているようだ。
●
初夏の爽やかな快晴。馬車が穏やかに走り出す。
その先を進むマリィアは肩越しに振り返って距離を測る。馬車の周辺は積んだ得物の射程に入っている。
走りながらトランシーバーを取って馬車を守る仲間に連絡を入れた。
「良い天気……久しぶりのピクニックは楽しいわね」
連れた犬をそれぞれ呼ぶと、答えるように軽く吠えた。
時折張り出してくる枝や、隘路の陰り、視界を遮られればマテリアルを走らせ、安全を見極めてから馬車を妨げそうな道の様子を後方へ伝える。
「――分かったわ、ゆっくり走ってもらうわね」
連絡を受け取ったリアリュールが隣の依頼人にそれを伝える。
木の根が道を狭めている、その少し手前で馬車は停まり、横を守っていた星野とカインが先に通る。
「無事に通れたわ」
馬車がそこを通過し、再び左右を守る配置に着いたところで、カリアナがマリィアに連絡した。
後方にも怪しい影は見られない。
影を過ぎた街道は木漏れ日が揺れ、緩やかな馬の歩みが心地良い。
「この季節ぅ、花が咲いてるおかげですっごく野草が分かりやすいじゃないですかぁ」
そこには大葉子、そこには薺。
季節を少し遡れば野蒜も美味しく食べられただろう。
星野が馬を寄せて指差しながら話すと、その先を見詰めた依頼人が見付けたと嬉しそうに言う。
「野草積みの護衛とかもしてるのでぇ、気になったらどんどん声かけて下さいぃ」
星野の指を離れても道ばたの草に目を奪われて乗り出していた依頼人が、不意の言葉に椅子に座り直した。
恥ずかしそうに俯いて、小さな声が礼を告げた。
●
食べ物の話しになったからだろうか、思い浮かんだ天麩羅やオムレツに星野が口許を拭う。
また道は細くなっている。振り返り馬車の安全を確かめながら馬を進ませる。
道が開けたら、少し休むのも良いだろう。
「もうちょっとモニカさんとも仲良くなりたいなぁって思ってるんですけどぉ……本当はブローチとか頼んでみたいですぅ」
前後を気に掛けながら依頼人と和やかに話していると、不意にリアリュールに連絡が入る。
「――止まる方が良いわね。……構えるわ」
「回り込んでいるみたい。側面を警戒して」
マリィアがバイクを止めて覗き込む狙撃銃の照準器が敵を捕らえるが、茂る木々がその射線の邪魔をする。
連絡を終え、馬車の停止を確認したトランシーバーを置くと、即座に銃口を馬車方面へ向ける。
「護衛だろうとゴブリンが出るなら、いつも通りのゴブリン退治だ」
カインは大剣を抜き放ち、敬虔なエクラ信者の言葉を刻んだ長い刀身が翻る。色を切り替えて切っ先を据えながら、馬を進ませ馬車の側面、森から出てこようと機を覗う複数の気配に対峙する。
馬車を背に庇い、森へ数歩歩ませるとマテリアルを燃やす炎の幻影が、少年らしいほっそりとした体を包む。
「敵が来たみたいですぅ……身を低くして伏せていて下さいぃ」
星野も同様に馬車を庇う様に馬を進める。
符を構えて森を探る双眸が蒼い光りを帯び、長い髪が風が途切れても弄ばれるように揺れ続ける。
その瞳は敵の集まりを、距離を推し量るが符の射程には遠いと知り、馬を数歩進めながら敵の攻撃を覗う。
石を握るものを狙えるように動きながら、馬車を庇える体勢で留まらせる。
こちらを覗っていたゴブリンがじわりとカインに向けて動く。
その動く先を狙ったように矢が落ちる。射止められた足に濁った悲鳴が響き、その声に反応した10を越える獣の目が、一斉にハンター達を睨む。
放たれた瞬間に響き渡った清らかな音は次第に静まり、蒼い炎を纏うしなやかな和弓に次の矢を番え、ヴァイスはそれを睨み返す。
炎を思わせる紅蓮の幻影が揺らめいて、燃え上がるように明滅する。
ゴブリンの視線はぎらぎらとハンター達を眺め回してからカインに戻る。
仄暗く狭い道での遭遇に竦んだ依頼人に、リアリュールはそっと声を掛けた。
「馬の傍にいて? 私たちが傍にいるわ」
依頼人が馬を一番近くの木に繋ぎ、リアリュールはその傍らに。
依頼人と馬、馬車を守れるように星形の手裏剣を取り出した。
不安そうな目に大丈夫だと囁いて微笑む。森の中、カインのマテリアルに惹かれずこちらを向く2つの目を見付けると、銀色の髪が鮮やかな七色に輝いた。
得物を抱えて荷台から飛び降りたカリアナも傍に寄って銀の刃を燦めかせる。
敵を睨み距離を測るが、少し足りない。数歩森に進み入って、依頼人を振り返りながら留まった。
葉の擦れる音、銃声、次いで、獣の悲鳴。
咄嗟に振り返ったカリアナが得物を大きく取り回し、届く限界に近い距離で水の礫を放つ。
道の先は緩く湾曲し茂る木々に遮られてマリィアの姿は見えない。しかし、その影から道へ飛び出してきた敵はどちらからでも射程に入る。
一度その体を痙攣させたゴブリンはすぐに動かなくなった。
馬が嘶く。足が動いて依頼人が背を撫でて宥め続けているが落ち付かない。
森のどこからか投じられた礫にリアリュールが立ち塞がり手裏剣を投じた。
弾き合って叩き落とされた1つ目の石礫は足元に転がり、もう1つが胸当てに当たった。衝撃に軽く咳き込むが、構えを解く程のことは無く、その石の軌跡を辿るように手裏剣を投じる。
投げ尽くすまで続けざまに。
辺りにいた何匹かが足を取られたようにまごついている気配がする。
不安そうにした依頼人に大丈夫だと告げて、空になった指が得物を挟み、敵を睨んで構え直した。
戦っている内に敵も近付いてくる。片手の盾を握り直し、馬車との距離を空けすぎずに森へ入ったカインは長剣に纏わせるマテリアルを研ぎ澄ませ、残りの数歩を詰めきって、向けてくる棍棒を盾で押し返しながら胴を袈裟に斬りつけた。
「聖剣か、模造品が多いのでコレもそのたぐいだろうけど、ゴブリンを殺す力はあるか、ならば良い剣だ」
血を撒いてふらついたゴブリンが起き上がるのを許さずに頸を断つ。
絶えたばかりの敵を見下ろし、地面に至った片側の切っ先を抜く。纏った血糊を払い、次の敵を見据えた。
カインの炎は灯ったまま、惹かれるゴブリンの動きが重なる。星野の構える符、扇形に広げたその内の5枚が、そこに綴られた呪文を赤く輝かせた。
伏せていて下さいね、眩しいですよ。肩越しに依頼人を一瞥し、投じた符は広がって敵を囲む。
その内に生じた光りの灼かれ、ふらついたところへ木々の合間を縫う矢が、弾丸が行き交った。
矢へ伸ばし掛けた手を止めてヴァイスはゴブリンの動きを睨む。潜んだ1匹が後方へ回り込んでいる、
「悪いがここは通行止めだ」
後ろは任せろ。振り返らずに仲間に声を掛け、応を背に感じながら弓を収め剣を抜く。
暖かな灯火を思わせる光りが陰りの中を照らす。飛び出してくるゴブリンは至近、柄の魔導機械が稼動すると幅の広い刀身がより輝いた。
照準器を覗いて、銃床を抱え込むように。
光りの中で蠢く影に狙いを据える。光りに動きを止められているためか、遮蔽となる木を避ける射線を見付けるまで、敵が逃げ出すことは無い。その光りの中、最後の1匹を弾丸が貫く。
全身で反動を受け留め、呼吸を1つ。
緑の瞳が静かに瞬いて次の敵へ銃口を据えた。
手早く引き直した符を残っている敵を狙い投じる。
目を眩ませながらも、その光の中を逃れてきた1匹にカインが剣の切っ先を突き付け、躊躇いなく旋回する刃は石を取った腕を肩から落とし、残りの腕が投げる前に振りかぶって頭に叩き付け、その鋭さで真二つに割る。
光の凪いでいく中に、得物を落としたらしいゴブリンが見える。濁った声を吠えるように響かせ、爪を振りかぶって、ぎらつく目が弱者を探す。その目はすぐに、リアリュールに庇われた依頼人を見付け足を縺れさせながら向かおうとする。
「おねーさん、大丈夫よ」
カリアナの振り下ろす刃が風を裂く。宝玉の煌めきが優美な流線を描き、ハンドルを引き付けるように取ると、茂った草が刈られて舞い上がった。
氷の矢に射抜かれたゴブリンは振り上げた腕が、全身が凍て付いたように動けぬ事に狼狽えるが、その回復を待たずに斃れ、やがて全身を凍り付かせた。
警戒は解かず後方を見回って戻ったヴァイスが安全を告げる。
「――そっちはどうだ?」
「――今、確認しているわ。……怪しいものを発見したらすぐ吠えるのよ」
前方のマリィアも、見回せる範囲内の敵の沈黙を見て、連絡に応じた。犬に周囲を警戒させているが、返ってくる声は穏やかだ。
少し先まで走らせたマリィアから安全を伝える連絡が届くと、ヴァイスは剣を収めて手綱を引く。
「よし、それじゃあ再出発といこうか」
頷いたリアリュールが依頼人に馬の様子を尋ねると、依頼人は平気そうだと頷いた。
少し驚いた様だが進めると言う。
カリアナもほっと息を吐いて荷台に戻る。
得物は抱えて、残りの道中も落とさぬように、柄を確りと握って。
星野も馬を運転席の傍に寄せ、依頼人を励ます様に声を掛け、出発の準備が整った頃、カインが綴っていたメモを揃えて荷物に収め、馬を歩ませた。
●
マリィアが到着を伝え、そのすぐ後に馬車の周囲を守っていたハンター達も到着し、依頼人は無事にジェオルジの街道口に辿り着いた。
カインが辿ってきた道を振り返って、メモに書き加えてはペンを止める。
その手を見た依頼人の視線に気付いたのだろうか、書き掛けの文を走らせて、軽く揃えてペンを置く。
「知識を共有してコチラの犠牲が出にくいようにしておきたいので」
傍でぼんやりと佇んでいた警備兵が、その言葉に慌てて駆け寄ってきた。
何かあったのかと問われ、ゴブリンが出たと答えたカインは手許のメモに伏せ気味の静かな視線を落とした。
「新人のハンターさんや兵隊さんたちや村の人達がゴブリンと闘うための教本を作っておこうと思いまして」
警備兵にそれは助かると、カインがメモの開示を請われ、バイクを降りたマリィアも肩を竦めて依頼人の側に戻ってきた。
「そうね、脅かすつもりはないけれど、最近この道では多少歪虚が出るわね」
死人を出した事件から1年経っていない。木々をざわめかせた風が髪を弄ぶ。
「だから、自分だけは絶対大丈夫なんて思わないで、1人でもいいの、必ずハンターを雇ってちょうだい」
マリィアの真摯な声に答えた依頼人の声は小さく、対面しているマリィアの他には聞こえない様な物だったが、頷いてから向けられた視線は、真っ直ぐにマリィアを見ていた。
「おねーさんの薬の買い付けも手伝えるといいな……出来ることはあるかしら?」
「仕入れ先まで送りますよぉ」
カリアナと星野の申し出に、深々と頭を下げて。
何度もためらいながら、最初の1軒だけお願いしますと答えた。
慌ただしくその店での仕事を終える頃、星野がどこからか買ってきたクッキーの包みを差し出す。
「これ、日持ちして美味しんですぅ。戻ったらモニカさんと楽しんで下さいねぇ」
行きの道中にはそんなことがあったのかと、聞き上手なハンターが依頼人の話に朗らかな相槌をうつ。
満載の馬車はゆっくりと街道をヴァリオスに向けて進んでいく。
手綱を握った依頼人の荷物の中には、クッキーの包みが潰れぬように仕舞われていた。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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ご相談 リアリュール(ka2003) エルフ|17才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/06/08 06:56:57 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/06 19:44:13 |