ゲスト
(ka0000)
【血盟】龍の人、不信と好奇心と
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/13 15:00
- 完成日
- 2017/06/18 17:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●やっぱりいる?
龍園の中を歩き回る、神官のラカ・べルフ。
「やっぱり何かいます」
金の絹糸のような髪をなびかせて、厚手のスカートの下からモーニングスターを引っ張り出す。
構えるとじっとそこを見つめる。
いる、けれど出てこない。
「出ていらっしゃい!」
凛として告げるが、その暗闇には動きがない。
暗がりはかつて使われていた人がいなくなったために荒廃してしまった建物の下水遺構。龍園のなかでも端っこで基本的に影響はないが、強欲の残党が入り込まないという保証はない。
癒し手が必要なこともあるし、敵は叩きのめさないとならないから、ラカは見回る。
そして、暗い通路を見つめる。灯をつける道具があったとしても、単身入るのは愚行にしかならないと理解はしている。だから、じっと見る、相手が出てくることを願い。
「むー」
一分が経ち、二分が経ち……五分が経ち……。
「このままじゃらちが明かないですわっ!」
唇を尖らせて怒る。
「でていらっしゃーい!」
通路に向かって怒ったところで相手は出てこない。
これで相手が笑い始めたり挑発してきた場合、我慢比べとなる。幸い、中の者は音を立てても返答はなかった。
「騎士のほうに申し入れをすればよいのかしら?」
人手足りているか全くわからない。
ラカとしては頼りたくない、騎士もハンターも。いや、騎士たちに対しては何の感情もなかったのだが、ハンターに興味津々という輩がいると聞いてなんとなく距離が開いてしまったのだ。
とはいっても一人でできることには限界もあり、頼める人にも限界がある。頼める相手が戦えるかまた別問題。
「誰かが間違って来て、問題があるといけません」
ラカはモーニングスターをしまうと、近くの岩に石で字を書いた。立ち入り禁止、と。
ひとまず帰ることにした。
●どうするべきか!
ハンター云々の感情論はわきに置きつつ、騎士たちに頼むにしても確証がない状態である。頼むにも確証がないと申し訳がない、暇な人たちなわけではないのだから。
知り合いに頼むにしても戦闘が苦手な人たちばかりである。
先日、助けてく――偶然出会ったハンターの顔がよぎる。
「うーん」
首をぶるぶる振って記憶を吹き飛ばし、腕を組んでうなる。
「……そういえば、転移門はあってもハンターオフィスと言いますか、ソサエティの支部ってないんでしたよね」
依頼、出すに出せない。
いや、出しに行けばいいのだ、リゼリオに。
「……で、ですが!」
転移門でちょっといってちょっと帰ってくるだけで、会って話をするのはオフィスの職員くらいだ。
「な、なら」
しかしそれはそれで自分の気持ちを抑えられるかわからない。見たことがないものもあるに違いない。
「だから駄目です」
首をぶんぶん横に振って思考を最初に戻す。
何度か自分でやり取りをした後、ぐっとこぶしを固める。
決心した。
机に向かうと、紙とペンを取り出して依頼内容を記載始めた。
そして、通り過がりのハンターか転移門を使えそうな神官を探し出し、ハンターオフィスに運ばせたのだった。
龍園の中を歩き回る、神官のラカ・べルフ。
「やっぱり何かいます」
金の絹糸のような髪をなびかせて、厚手のスカートの下からモーニングスターを引っ張り出す。
構えるとじっとそこを見つめる。
いる、けれど出てこない。
「出ていらっしゃい!」
凛として告げるが、その暗闇には動きがない。
暗がりはかつて使われていた人がいなくなったために荒廃してしまった建物の下水遺構。龍園のなかでも端っこで基本的に影響はないが、強欲の残党が入り込まないという保証はない。
癒し手が必要なこともあるし、敵は叩きのめさないとならないから、ラカは見回る。
そして、暗い通路を見つめる。灯をつける道具があったとしても、単身入るのは愚行にしかならないと理解はしている。だから、じっと見る、相手が出てくることを願い。
「むー」
一分が経ち、二分が経ち……五分が経ち……。
「このままじゃらちが明かないですわっ!」
唇を尖らせて怒る。
「でていらっしゃーい!」
通路に向かって怒ったところで相手は出てこない。
これで相手が笑い始めたり挑発してきた場合、我慢比べとなる。幸い、中の者は音を立てても返答はなかった。
「騎士のほうに申し入れをすればよいのかしら?」
人手足りているか全くわからない。
ラカとしては頼りたくない、騎士もハンターも。いや、騎士たちに対しては何の感情もなかったのだが、ハンターに興味津々という輩がいると聞いてなんとなく距離が開いてしまったのだ。
とはいっても一人でできることには限界もあり、頼める人にも限界がある。頼める相手が戦えるかまた別問題。
「誰かが間違って来て、問題があるといけません」
ラカはモーニングスターをしまうと、近くの岩に石で字を書いた。立ち入り禁止、と。
ひとまず帰ることにした。
●どうするべきか!
ハンター云々の感情論はわきに置きつつ、騎士たちに頼むにしても確証がない状態である。頼むにも確証がないと申し訳がない、暇な人たちなわけではないのだから。
知り合いに頼むにしても戦闘が苦手な人たちばかりである。
先日、助けてく――偶然出会ったハンターの顔がよぎる。
「うーん」
首をぶるぶる振って記憶を吹き飛ばし、腕を組んでうなる。
「……そういえば、転移門はあってもハンターオフィスと言いますか、ソサエティの支部ってないんでしたよね」
依頼、出すに出せない。
いや、出しに行けばいいのだ、リゼリオに。
「……で、ですが!」
転移門でちょっといってちょっと帰ってくるだけで、会って話をするのはオフィスの職員くらいだ。
「な、なら」
しかしそれはそれで自分の気持ちを抑えられるかわからない。見たことがないものもあるに違いない。
「だから駄目です」
首をぶんぶん横に振って思考を最初に戻す。
何度か自分でやり取りをした後、ぐっとこぶしを固める。
決心した。
机に向かうと、紙とペンを取り出して依頼内容を記載始めた。
そして、通り過がりのハンターか転移門を使えそうな神官を探し出し、ハンターオフィスに運ばせたのだった。
リプレイ本文
●久方の
現場となっている土地でラカ・ベルフと合流した。
「よぅ、ラカちゃん、こないだぶり~」
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)はにっかりと笑い、肩にポンと手を載せるようとして、空を切る。
「またお会いできて嬉しいですっ!」
ロゼッタ・ラプタイル(ka6434)は目を輝かせて挨拶をする。動物大好き、特に爬虫類好きで龍人に興味津々。
「アンタが依頼人の龍人のお嬢さんか? 俺はトリプルJだ、よろしくな」
トリプルJ(ka6653)は右手を差し出すが、ラカは挨拶だけで逃げる。龍人の年齢は分からないが、ラカが中学生くらいの難しい年ごろの少女と認識した。
「初めまして、フロイライン・ベルフ。龍園に招いていただいき光栄です」
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は武士的とドイツ風紳士としての体面を合わせた様子で挨拶をする。
(少し、距離があるような……。物理的ではなく、気持ちの方で……初対面だし仕方がないか)
アーク・フォーサイス(ka6568)は挨拶しながら、ラカの様子を見ていた。物理的にも実は距離は開いていくのだ。
「よろしくお願いしますね。本当、天井が低いですね」
夜桜 奏音(ka5754)は覗きこんで確認をとる。平均的な彼女ですら、頭上気をつけないと危険だ。
「確かに実際見ると圧迫感あるな」
ジーナ(ka1643)も覗き込む。かがまなくても入れるが、天井が低いというのは頭が重い感じがする。
「入りますよ」
ラカは事務的に告げた。
●手分け
「個人的には右方向が人数的に手薄なのでお願いしたくはあるんだが」
通路の数に合わせて三つに班分けすることをヴォーイは説明した。
右側がはロゼッタのみとなっている。
「いえ、必要に応じてきていただければと思います」
ロゼッタは指摘する。中央にラカや他のハンターがいてくれれば、必要に応じて移動しやすいのではと。
「私は外に出てくる……後顧の憂いを断つため入り口で待つことになる。それに、天井の高さ気にしないで走れるから」
ジーナは素早く行ける強みを持つ。
「それは心強いです」
ハンスは約五十センチ下にあるジーナの頭を見た。
「霊闘士は聖導士と同じ、爆発的な攻撃はなくても継戦能力は高いからなぁ。ピンで行動するなら霊闘士がいいんじゃねぇの?」
トリプルJはすんなり納得する。
「俺としてはラカには回復スキルとサポートを願いたい。俺は依頼人でもあるラカを守る」
アークは告げる。ちょっとラカがむっとした顔になったが、彼は事実を述べただけだ。
「あの、先に確認しておきますね。雑魔に関しては良いですが、一般的な動物や昆虫についてはどうしますか?」
奏音の問いにラカは少し考える。
「後々危険な生き物は倒したほうがいいです」
奏音はラカにうなずいた。
「害をなす生き物だと、雑魔でなくとも禍根が生まれるかもしれない。入口を守るものとしてそれでかまわないな?」
「とはいっても、ただのネズミなら無理しなくても……まあ虫系で集団だと難しいかもしれないが」
ジーナとヴォーイの意見は離れているため、依頼人の言葉が重要だ。
「疫病に影響がありそうなら討伐です」
ラカの基準は民だ。
「ああ、わかった」
「了解。ま、追い出すと寒さでやられそうだ」
ジーナとヴォーイは返答した。
「昆虫、よく生き延びていたのですね」
ロゼッタはぽつりつぶやく。
「ここは暖かいのかもしれませんよ?」
ハンスは少し入ってみて首をかしげる。常時日陰なためか寒いようだった。
●通路を進む
「気を付けて」
ジーナは入ってすぐのところで闇になれるよう立つ。明かりで照らしつつ、仲間を見送った。
まずは右側の通路。
ロゼッタは技能を使い耳を澄ます。すぐ近くに何かいるような音はない。目視でも同様の結果だ。
「問題はありませんね。何かの位置も仲間の位置も重要ですね」
歩調が合うことで、横に渡されているはずの通路から合流することができるのだ。
ゆっくり進む。明かり以外で手に持つのは使い慣れていない斧で、少しだけ心細かった。
左側を進むのはヴォーイとトリプルJ。
「お、重い……」
入るまでは元気だったヴォーイは進むごとにしおれる。
実際進むとなると中腰やお辞儀姿勢で非常につらい。
「狭い場所にでかいやつらがそろったよな、今回。まあ、通路の中で適度にばらけりゃ問題ないか」
トリプルJは笑う。腕にLEDライトを括り付けて、光源を確保し、両手も空けている。
「動物はむやみに警戒させるのもなあ」
ヴォーイは呟く。警戒して襲ってくることもあるだろう。
「……下水ぽいとこでいるようなモノ……か……」
「ネズミ、ワニ、ゴキブリか?」
「ワニが一番楽な気がしてきたが……最後の奴がいたら」
「みっちり?」
「逃げる」
ヴォーイとトリプルJは鳥肌が立っていた。
中央の通路を進むのは奏音とアークそしてハンス、ラカ。
ハンスの頭から、かがみ損ねてゴリゴリという音が一瞬した。ラカの視線が泳いだ。
「大丈夫ですよ、御心配なさらずに」
「し、心配? するわけないです! この程度で大けがする人たちだと思っていません」
ハンスが声をかけるとラカがそっぽを向いた。
「……俺はちょっとかがむで済むが……ハンスは確かに大変だね」
「これも修行です」
「なるほど」
アークの言葉にハンスがきっぱり言う。
穏やかに会話もしつつ、警戒は怠らない。
「さて……何が出てくるのでしょうか? ……びっくり箱のような状況ですね」
奏音はドキドキしながら前を見る。
「油断さえしなければ何とかなりますよね」
「それはそうです。そのためのハンターです」
「……信頼には信頼で応えないといけませんね」
奏音の答えに、ラカが顔を真っ赤にしていた。
ジーナは飛び出してくるようなものはないか様子を見る。
「存在する何かは奥に奥に逃げることもありうるのか……」
通路を眺め、耳を澄ませる。
「奥にみんながいっているんだ、動きはこれからだ」
ジーナは盾を持ち直した。
ロゼッタは横の通路を見る。ハンターが持ち込んだ明かりと違う光源があるのが分かった。中央の天井が壊れているようだ。
「まだ、戦いは発生していませんね……」
何もいないのか?
何もいないなら、ラカの気のせいで済む。いないならいないで確認する必要はある。
「先に……いそうですね」
ハンターたちが移動するから奥に逃げているだけなのだろうか?
ヴォーイとトリプルJは順調に進む。
下水遺構の道半ばというあたりで、右手には横に渡る通路がある。元から少々明かるいし、中央組が入ってきたのが見えた。
「おお、中央は立てているみたいだな」
ヴォーイの視界で中央の人たちはかがんでいるようではない。
「ささっと先を見て、立ちてえ」
トリプルJはできる限り体を伸ばしてみる。伸ばしてもどこか曲がったままだ。
「……さて、ちょっと見てきてくれ」
トリプルJはヴォーイがフクロウを飛ばしたのを見て、報告を待つ。
「ネズミだと思う」
「フクロウ見て逃げたのか?」
「さあ」
「行ってみよう」
二人は進んだ。
中央組はすっくと立ちあがる。
「伸びられるのはいいことです」
ハンスがしみじみ言う。
「先もあるんですよね」
「……行ってきます」
「状況によってはこちらに引き込んで戦った方がいいですよね……先を見てくるので、ラカさんは待っていてください」
奏音にラカはうなずく。
「必要であれば左右に援軍に行っていいです」
「俺があなたを守る予定なので移動してかまわないよ」
奏音の言葉を受けて、アークがラカに告げる。
ラカはむっとしつつもうなずいた。
奏音とハンスは先に進んだ。
●根競べ
「ネズミの雑魔ですね」
ロゼッタは武器を構える。このまま突っ込むか、一旦引いて中央のメンバーと合流するか。
ネズミの雑魔は突進してきた。
「っつ!」
かじられ痛みが走る。
「負けませんよ」
スキルをとともに攻撃をする。少しかがんだ体勢だが、普段と変わらないさえと威力。
「一体はこれで終わりです」
霧散した雑魔の後ろから別のが出てきた。
ヴォーイとトリプルJはネズミの集団に出会う。
それらは明かりにおろおろしていたが、二人が近づいた瞬間、突進してきた。
「う、痛い痛い」
「邪魔!」
攻撃をためらうヴォーイと武器を振ったトリプルJ。
恐慌したネズミたちは人間に向かってくる。
「いったん、脇道にそれるぜ?」
「大き目のネズミていっても、こう多いのは」
「おおい、入り口にいるジーナ、ネズミの集団が行くかもしれない!」
「ネズミの数の暴力だ、気をつけろよー」
後退しつつ、入口方面に声をかけた。
ジーナは耳を凝らすと、戦う音がする。
どこに必要か、どこから何が来るか。
「私にとって焦ってはいけない時間だ」
いつでも戦える準備だけする。
ジーナは自分への声を聞き返答する。
「分かった。数は減らす……害は防ぎたいから」
ネズミは疫病を運ぶ危険をはらむ上、雑魔になる危険性もある。
「私は、依頼人とハンター以外は通すつもりはない」
盾を構えて指摘があった通路を見つめた。
中央の通路を進んだ奏音とハンス。
「こ、これは」
「大きいですね」
黒光りする巨大な昆虫がそこにいた。
「……こっちに来ます」
羽ばたいて突進してきたそれをハンス、かろうじて避ける。
「ここで戦うのは分が悪すぎます、一旦引きましょう」
「同意します」
二人は戻った。
「……あっちに行ったほうがいいのでしょうか」
ラカはロゼッタがいるほうに足を向けた。
「それも一つの選択だが、二人が戻ってようだ」
アークが武器を引き抜き戦える準備をした。
「出ました」
「ゴキブリです」
奏音とハンスが武器を構え、通路を見るが何も来ない。
「……えっと?」
「逃げたのでしょうか」
しばらく待つが来ない。
「私はあっちに加勢行ってきますよ」
「ラカ、気を付けて……天井、俺も気を付けるよ」
アークの注意は間に合わずラカが通路に入ろうとして、額を天井で強打していた。
ロゼッタは善戦している。
ネズミ雑魔は攻撃しつつ、後退を始める。劣勢から逃げるつもりなのだろう。
「助太刀します!」
ラカが走ってきたため、ロゼッタは嬉しくなる。
「いいんですか?」
「……もしできるなら、この雑魔を撃破して、回り込めばいいのです」
ラカはモーニングスターを構えた。
「ラカさん、額……」
指摘されてラカは額に手をやる。
「……い、いろいろあったんだよ。依頼人を守るのが俺の役目なはずだが、さすがにあれは」
アークが無念という感じで言った。
「さあ、観念しなさい!」
ラカはすべてを振り切り、敵に宣言した。
逃げる雑魔を追いかけ三人は撃破した。
ヴォーイとトリプルJに攻撃されつつ横にそれる通路に入った。ネズミたちは真っすぐに進むのと戻るのがいた。横には入ってこない。
二人は一旦中央に合流する。
「どうした?」
「あ、お二方……ゴキブリ雑魔をどうするかで途方に暮れ中です」
説明をするハンス。
体を伸ばしてヴォーイとトリプルJは通路を見る。
「うわっ」
「うお」
ヴォーイとトリプルJはそれぞれ短く声をあげた。なかなか立派で大きなそれは凶悪そうだが、おろおろしているように見える。
「通路で戦いたくねぇ」
「こいつ倒して後から来たとか言ったら……」
「考えたくないぜ……」
戦いに対してテンションは上がるが、その昆虫の習性を考えると意気消沈してくる。
「とはいえ、このままじゃらちがあかねーじゃん。男だ度胸だ!」
ヴォーイは己を奮い立たすと通路の中央に立つ。
「な、なにをするんですか!」
奏音が緊張する。
「【ファントムハンド】だ!」
「来たら、任せてください。即刻、焼き払いますっ!」
ヴォーイの言葉を受け、奏音が符を握りしめる。
「そのあとは生き延びてていても俺もやるぜ」
「せっかくなら普段使わない武器も試しておきたいですよ」
トリプルJとハンスが告げる。
そして、黒光りする昆虫雑魔は姿を現した。
飛び散る光、鋭く叩き込まれる武器たち。
「一匹見たら、三十匹?」
「嫌ですね……そもそも、雑魔がそんなにいたら気づかれないほうがおかしいです」
奏音の言葉に全員がうなずいた。
ネズミ雑魔と戦った三人はそのまま通路を回り込んで中央に向かおうとした。
「……特に何もいないようですね」
「いないならいないで良いのです」
ネズミが明かりに照らされて走り去る。この遺構の入り口方面に向かったのだ。
「昆虫の痕跡があるか確認はしていたほうがいいな」
アークは用心しつつ進む。
通路に通常のサイズの昆虫の死体がいくつか転がっていた。
「気の毒としか言いようがないです」
ラカはため息をつく。それらを集めて袋に詰めた。
「……ん?」
「……あれ?」
ロゼッタとアークは言葉を探す。まあ、昆虫だ、昆虫差別かもしれないが、ラカに迷いはなかった。
「昆虫好きっということでしょうか」
「寒い地域でもともと生息していない存在では」
二人は納得した。
入口に来たネズミをジーナは倒す。
通路をふさぐジーナに気づいて逃げるものもあった。
「禍根は断ち、処理すべきだ」
できる限り倒した。
しばらくすると、依頼人と仲間が戻ってきた。
●外へ
「首をこう、腰をこう曲げっぱなしって……疲れたじゃん」
ヴォーイは関節を伸ばす。伸ばすとコキッという音がした。
「無事終わってよかったぜ。な」
トリプルJはラカに笑いかける。
「はい、ご苦労様でした」
頭は下げるが固いラカ。
「助けてくださってありがとうございました」
ロゼッタはラカに頭を深々下げる。
「あ、当たり前ですわ! あなたは強いのでしょうけど、独りで通路を行っているのです。それに雑魔を倒すのは重要な私の役目ですわ!」
ラカが断言する。
ロゼッタは嬉しそうだ。
「入り口で待機しつつ、出てくるものは倒した。その……すべては倒せていない。戻って行ったものもある」
必要なら倒しに行くとジーナは付け加える。
「雑魔の類は倒しました。まだ生きている、街中ではありませんから、数を減らすでかまいません」
ジーナはほっとした。
「フロイライン、次はリゼリオにいらっしゃるのはどうでしょう。東西交流会も行われていますし、貴女のお眼鏡に適うものもあるでしょう。謹んでエスコートさせていただきます」
ハンスが深々とお辞儀する。
「……うっ、外ですか」
そわそわしながら否定する態度をとる。
「そうですね。リゼリオからなれるのが一番でしょう」
奏音が微笑む。
「か、帰りますわ!」
「そうだね、ちゃんと戻ってから依頼も終了だね」
アークはラカが素直になれない様子であるが正直なので笑顔になってしまう。
じっとしているのも寒いため、戻るのは実は重要だった。
現場となっている土地でラカ・ベルフと合流した。
「よぅ、ラカちゃん、こないだぶり~」
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)はにっかりと笑い、肩にポンと手を載せるようとして、空を切る。
「またお会いできて嬉しいですっ!」
ロゼッタ・ラプタイル(ka6434)は目を輝かせて挨拶をする。動物大好き、特に爬虫類好きで龍人に興味津々。
「アンタが依頼人の龍人のお嬢さんか? 俺はトリプルJだ、よろしくな」
トリプルJ(ka6653)は右手を差し出すが、ラカは挨拶だけで逃げる。龍人の年齢は分からないが、ラカが中学生くらいの難しい年ごろの少女と認識した。
「初めまして、フロイライン・ベルフ。龍園に招いていただいき光栄です」
ハンス・ラインフェルト(ka6750)は武士的とドイツ風紳士としての体面を合わせた様子で挨拶をする。
(少し、距離があるような……。物理的ではなく、気持ちの方で……初対面だし仕方がないか)
アーク・フォーサイス(ka6568)は挨拶しながら、ラカの様子を見ていた。物理的にも実は距離は開いていくのだ。
「よろしくお願いしますね。本当、天井が低いですね」
夜桜 奏音(ka5754)は覗きこんで確認をとる。平均的な彼女ですら、頭上気をつけないと危険だ。
「確かに実際見ると圧迫感あるな」
ジーナ(ka1643)も覗き込む。かがまなくても入れるが、天井が低いというのは頭が重い感じがする。
「入りますよ」
ラカは事務的に告げた。
●手分け
「個人的には右方向が人数的に手薄なのでお願いしたくはあるんだが」
通路の数に合わせて三つに班分けすることをヴォーイは説明した。
右側がはロゼッタのみとなっている。
「いえ、必要に応じてきていただければと思います」
ロゼッタは指摘する。中央にラカや他のハンターがいてくれれば、必要に応じて移動しやすいのではと。
「私は外に出てくる……後顧の憂いを断つため入り口で待つことになる。それに、天井の高さ気にしないで走れるから」
ジーナは素早く行ける強みを持つ。
「それは心強いです」
ハンスは約五十センチ下にあるジーナの頭を見た。
「霊闘士は聖導士と同じ、爆発的な攻撃はなくても継戦能力は高いからなぁ。ピンで行動するなら霊闘士がいいんじゃねぇの?」
トリプルJはすんなり納得する。
「俺としてはラカには回復スキルとサポートを願いたい。俺は依頼人でもあるラカを守る」
アークは告げる。ちょっとラカがむっとした顔になったが、彼は事実を述べただけだ。
「あの、先に確認しておきますね。雑魔に関しては良いですが、一般的な動物や昆虫についてはどうしますか?」
奏音の問いにラカは少し考える。
「後々危険な生き物は倒したほうがいいです」
奏音はラカにうなずいた。
「害をなす生き物だと、雑魔でなくとも禍根が生まれるかもしれない。入口を守るものとしてそれでかまわないな?」
「とはいっても、ただのネズミなら無理しなくても……まあ虫系で集団だと難しいかもしれないが」
ジーナとヴォーイの意見は離れているため、依頼人の言葉が重要だ。
「疫病に影響がありそうなら討伐です」
ラカの基準は民だ。
「ああ、わかった」
「了解。ま、追い出すと寒さでやられそうだ」
ジーナとヴォーイは返答した。
「昆虫、よく生き延びていたのですね」
ロゼッタはぽつりつぶやく。
「ここは暖かいのかもしれませんよ?」
ハンスは少し入ってみて首をかしげる。常時日陰なためか寒いようだった。
●通路を進む
「気を付けて」
ジーナは入ってすぐのところで闇になれるよう立つ。明かりで照らしつつ、仲間を見送った。
まずは右側の通路。
ロゼッタは技能を使い耳を澄ます。すぐ近くに何かいるような音はない。目視でも同様の結果だ。
「問題はありませんね。何かの位置も仲間の位置も重要ですね」
歩調が合うことで、横に渡されているはずの通路から合流することができるのだ。
ゆっくり進む。明かり以外で手に持つのは使い慣れていない斧で、少しだけ心細かった。
左側を進むのはヴォーイとトリプルJ。
「お、重い……」
入るまでは元気だったヴォーイは進むごとにしおれる。
実際進むとなると中腰やお辞儀姿勢で非常につらい。
「狭い場所にでかいやつらがそろったよな、今回。まあ、通路の中で適度にばらけりゃ問題ないか」
トリプルJは笑う。腕にLEDライトを括り付けて、光源を確保し、両手も空けている。
「動物はむやみに警戒させるのもなあ」
ヴォーイは呟く。警戒して襲ってくることもあるだろう。
「……下水ぽいとこでいるようなモノ……か……」
「ネズミ、ワニ、ゴキブリか?」
「ワニが一番楽な気がしてきたが……最後の奴がいたら」
「みっちり?」
「逃げる」
ヴォーイとトリプルJは鳥肌が立っていた。
中央の通路を進むのは奏音とアークそしてハンス、ラカ。
ハンスの頭から、かがみ損ねてゴリゴリという音が一瞬した。ラカの視線が泳いだ。
「大丈夫ですよ、御心配なさらずに」
「し、心配? するわけないです! この程度で大けがする人たちだと思っていません」
ハンスが声をかけるとラカがそっぽを向いた。
「……俺はちょっとかがむで済むが……ハンスは確かに大変だね」
「これも修行です」
「なるほど」
アークの言葉にハンスがきっぱり言う。
穏やかに会話もしつつ、警戒は怠らない。
「さて……何が出てくるのでしょうか? ……びっくり箱のような状況ですね」
奏音はドキドキしながら前を見る。
「油断さえしなければ何とかなりますよね」
「それはそうです。そのためのハンターです」
「……信頼には信頼で応えないといけませんね」
奏音の答えに、ラカが顔を真っ赤にしていた。
ジーナは飛び出してくるようなものはないか様子を見る。
「存在する何かは奥に奥に逃げることもありうるのか……」
通路を眺め、耳を澄ませる。
「奥にみんながいっているんだ、動きはこれからだ」
ジーナは盾を持ち直した。
ロゼッタは横の通路を見る。ハンターが持ち込んだ明かりと違う光源があるのが分かった。中央の天井が壊れているようだ。
「まだ、戦いは発生していませんね……」
何もいないのか?
何もいないなら、ラカの気のせいで済む。いないならいないで確認する必要はある。
「先に……いそうですね」
ハンターたちが移動するから奥に逃げているだけなのだろうか?
ヴォーイとトリプルJは順調に進む。
下水遺構の道半ばというあたりで、右手には横に渡る通路がある。元から少々明かるいし、中央組が入ってきたのが見えた。
「おお、中央は立てているみたいだな」
ヴォーイの視界で中央の人たちはかがんでいるようではない。
「ささっと先を見て、立ちてえ」
トリプルJはできる限り体を伸ばしてみる。伸ばしてもどこか曲がったままだ。
「……さて、ちょっと見てきてくれ」
トリプルJはヴォーイがフクロウを飛ばしたのを見て、報告を待つ。
「ネズミだと思う」
「フクロウ見て逃げたのか?」
「さあ」
「行ってみよう」
二人は進んだ。
中央組はすっくと立ちあがる。
「伸びられるのはいいことです」
ハンスがしみじみ言う。
「先もあるんですよね」
「……行ってきます」
「状況によってはこちらに引き込んで戦った方がいいですよね……先を見てくるので、ラカさんは待っていてください」
奏音にラカはうなずく。
「必要であれば左右に援軍に行っていいです」
「俺があなたを守る予定なので移動してかまわないよ」
奏音の言葉を受けて、アークがラカに告げる。
ラカはむっとしつつもうなずいた。
奏音とハンスは先に進んだ。
●根競べ
「ネズミの雑魔ですね」
ロゼッタは武器を構える。このまま突っ込むか、一旦引いて中央のメンバーと合流するか。
ネズミの雑魔は突進してきた。
「っつ!」
かじられ痛みが走る。
「負けませんよ」
スキルをとともに攻撃をする。少しかがんだ体勢だが、普段と変わらないさえと威力。
「一体はこれで終わりです」
霧散した雑魔の後ろから別のが出てきた。
ヴォーイとトリプルJはネズミの集団に出会う。
それらは明かりにおろおろしていたが、二人が近づいた瞬間、突進してきた。
「う、痛い痛い」
「邪魔!」
攻撃をためらうヴォーイと武器を振ったトリプルJ。
恐慌したネズミたちは人間に向かってくる。
「いったん、脇道にそれるぜ?」
「大き目のネズミていっても、こう多いのは」
「おおい、入り口にいるジーナ、ネズミの集団が行くかもしれない!」
「ネズミの数の暴力だ、気をつけろよー」
後退しつつ、入口方面に声をかけた。
ジーナは耳を凝らすと、戦う音がする。
どこに必要か、どこから何が来るか。
「私にとって焦ってはいけない時間だ」
いつでも戦える準備だけする。
ジーナは自分への声を聞き返答する。
「分かった。数は減らす……害は防ぎたいから」
ネズミは疫病を運ぶ危険をはらむ上、雑魔になる危険性もある。
「私は、依頼人とハンター以外は通すつもりはない」
盾を構えて指摘があった通路を見つめた。
中央の通路を進んだ奏音とハンス。
「こ、これは」
「大きいですね」
黒光りする巨大な昆虫がそこにいた。
「……こっちに来ます」
羽ばたいて突進してきたそれをハンス、かろうじて避ける。
「ここで戦うのは分が悪すぎます、一旦引きましょう」
「同意します」
二人は戻った。
「……あっちに行ったほうがいいのでしょうか」
ラカはロゼッタがいるほうに足を向けた。
「それも一つの選択だが、二人が戻ってようだ」
アークが武器を引き抜き戦える準備をした。
「出ました」
「ゴキブリです」
奏音とハンスが武器を構え、通路を見るが何も来ない。
「……えっと?」
「逃げたのでしょうか」
しばらく待つが来ない。
「私はあっちに加勢行ってきますよ」
「ラカ、気を付けて……天井、俺も気を付けるよ」
アークの注意は間に合わずラカが通路に入ろうとして、額を天井で強打していた。
ロゼッタは善戦している。
ネズミ雑魔は攻撃しつつ、後退を始める。劣勢から逃げるつもりなのだろう。
「助太刀します!」
ラカが走ってきたため、ロゼッタは嬉しくなる。
「いいんですか?」
「……もしできるなら、この雑魔を撃破して、回り込めばいいのです」
ラカはモーニングスターを構えた。
「ラカさん、額……」
指摘されてラカは額に手をやる。
「……い、いろいろあったんだよ。依頼人を守るのが俺の役目なはずだが、さすがにあれは」
アークが無念という感じで言った。
「さあ、観念しなさい!」
ラカはすべてを振り切り、敵に宣言した。
逃げる雑魔を追いかけ三人は撃破した。
ヴォーイとトリプルJに攻撃されつつ横にそれる通路に入った。ネズミたちは真っすぐに進むのと戻るのがいた。横には入ってこない。
二人は一旦中央に合流する。
「どうした?」
「あ、お二方……ゴキブリ雑魔をどうするかで途方に暮れ中です」
説明をするハンス。
体を伸ばしてヴォーイとトリプルJは通路を見る。
「うわっ」
「うお」
ヴォーイとトリプルJはそれぞれ短く声をあげた。なかなか立派で大きなそれは凶悪そうだが、おろおろしているように見える。
「通路で戦いたくねぇ」
「こいつ倒して後から来たとか言ったら……」
「考えたくないぜ……」
戦いに対してテンションは上がるが、その昆虫の習性を考えると意気消沈してくる。
「とはいえ、このままじゃらちがあかねーじゃん。男だ度胸だ!」
ヴォーイは己を奮い立たすと通路の中央に立つ。
「な、なにをするんですか!」
奏音が緊張する。
「【ファントムハンド】だ!」
「来たら、任せてください。即刻、焼き払いますっ!」
ヴォーイの言葉を受け、奏音が符を握りしめる。
「そのあとは生き延びてていても俺もやるぜ」
「せっかくなら普段使わない武器も試しておきたいですよ」
トリプルJとハンスが告げる。
そして、黒光りする昆虫雑魔は姿を現した。
飛び散る光、鋭く叩き込まれる武器たち。
「一匹見たら、三十匹?」
「嫌ですね……そもそも、雑魔がそんなにいたら気づかれないほうがおかしいです」
奏音の言葉に全員がうなずいた。
ネズミ雑魔と戦った三人はそのまま通路を回り込んで中央に向かおうとした。
「……特に何もいないようですね」
「いないならいないで良いのです」
ネズミが明かりに照らされて走り去る。この遺構の入り口方面に向かったのだ。
「昆虫の痕跡があるか確認はしていたほうがいいな」
アークは用心しつつ進む。
通路に通常のサイズの昆虫の死体がいくつか転がっていた。
「気の毒としか言いようがないです」
ラカはため息をつく。それらを集めて袋に詰めた。
「……ん?」
「……あれ?」
ロゼッタとアークは言葉を探す。まあ、昆虫だ、昆虫差別かもしれないが、ラカに迷いはなかった。
「昆虫好きっということでしょうか」
「寒い地域でもともと生息していない存在では」
二人は納得した。
入口に来たネズミをジーナは倒す。
通路をふさぐジーナに気づいて逃げるものもあった。
「禍根は断ち、処理すべきだ」
できる限り倒した。
しばらくすると、依頼人と仲間が戻ってきた。
●外へ
「首をこう、腰をこう曲げっぱなしって……疲れたじゃん」
ヴォーイは関節を伸ばす。伸ばすとコキッという音がした。
「無事終わってよかったぜ。な」
トリプルJはラカに笑いかける。
「はい、ご苦労様でした」
頭は下げるが固いラカ。
「助けてくださってありがとうございました」
ロゼッタはラカに頭を深々下げる。
「あ、当たり前ですわ! あなたは強いのでしょうけど、独りで通路を行っているのです。それに雑魔を倒すのは重要な私の役目ですわ!」
ラカが断言する。
ロゼッタは嬉しそうだ。
「入り口で待機しつつ、出てくるものは倒した。その……すべては倒せていない。戻って行ったものもある」
必要なら倒しに行くとジーナは付け加える。
「雑魔の類は倒しました。まだ生きている、街中ではありませんから、数を減らすでかまいません」
ジーナはほっとした。
「フロイライン、次はリゼリオにいらっしゃるのはどうでしょう。東西交流会も行われていますし、貴女のお眼鏡に適うものもあるでしょう。謹んでエスコートさせていただきます」
ハンスが深々とお辞儀する。
「……うっ、外ですか」
そわそわしながら否定する態度をとる。
「そうですね。リゼリオからなれるのが一番でしょう」
奏音が微笑む。
「か、帰りますわ!」
「そうだね、ちゃんと戻ってから依頼も終了だね」
アークはラカが素直になれない様子であるが正直なので笑顔になってしまう。
じっとしているのも寒いため、戻るのは実は重要だった。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ロゼッタ・ラプタイル(ka6434) 人間(リアルブルー)|17才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2017/06/13 09:47:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/12 20:17:18 |