黒大公討伐戦勝記念祭

マスター:藤山なないろ

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
無し
相談期間
4日
締切
2017/06/10 19:00
完成日
2017/07/03 20:03

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●王、臨みし過日

 黒大公ベリアル討伐後、早々に追撃戦を開始したダンテ・バルカザール率いる王国騎士団と道を別ち、エリオット・ヴァレンタインは、大至急転移門よりアークエルスへと発った。目的地は、古の塔。
『何事だ、これは……ッ!』
 最後の転送を果たしたその場で、男は身を強張らせる。
 どす黒く重いマテリアルの残照の中、塔を守るようにして倒れていた騎士団員たちの……ソルラ・クートの遺体を、目の当たりにしたのだ。
 生存していた者たちから歪虚・メフィストの襲撃にあったことを知らされるや否や、青年は矢も楯もたまらず塔を駆けのぼっていた。
 最上階、王の間。そこに居たのは、玉座に腰を掛けたまま目を閉じ動かない少女。
 足元には見覚えのある懐中時計が転がり落ち、傍の魔法陣にはしとしとと垂れ落ちてできた血だまり。
 ──それを見つけた時、青年の心臓は鼓動を忘れかけた。
『システィーナ、様……』
 名を呼ぶ声が震える。蒼白のままエリオットは少女のもとへ駆けつけると、そっと少女を抱き起こす。騎士如きが王女に触れるなど恐れ多いことだ。しかし、今のエリオットにそんな考えなど過りもしなかった。
 抱き上げた体は、幼い頃にねだられて抱えた時のそれよりずっと重みを増していた。けれど、その顔は見守り続けてきたどの日より青ざめている。頬や唇にさしていた薔薇の様に美しい紅は見る影もない。理由など一目瞭然。小柄な少女がこれほどの血を失ったのだ。傍らのナイフと手首に刻まれた切り傷、そして状況から憶測するに、彼女は自らその血を捧げたのだろう。この国の民を守りたい一心で、古代のアーティファクトを起動するために。



「……ここ、は……」
 システィーナ・グラハムが目を覚ました時、真っ先に飛び込んできたのは見慣れた天蓋だった。
「姫様ッ」
 王女から片時も離れず、看護に徹していた侍従長マルグリット・オクレールの目が心なしか潤んでいるように見える。
「お気づきになられて良かったです。どうか今しばらくはご静養ください」
 女の話声に、漸く頭が覚醒し──そしてシスティーナは事態を理解すると同時に、飛び起きた。
「いいえ、わたくしは、こんなことをしている場合じゃ……ッ! ベリアルは? 塔はどうなったのです? 状況を教えてください!」
 刹那、扉をノックする音が割り込んできたと同時、切羽詰った男声が外から聞こえてくる。
「何があった!? 殿下は無事か!」
「エリオット……?」
「大変申し訳ございません。殿下が目覚めるまで、どうしてもここにいるとあの男が申したものですから……殿方が寝室に入ることなど以ての外、断固許しはしませんが……」
 眉を寄せ、女は苦笑した。
「あの朴念仁が、これまで見たこともない必死な顔をしていたものですから……扉の外ならばと」
「心配をかけたのですね。……すぐ支度を致しましょう。オクレールさん、わたくしはやるべきことがあります。ですから、お願いできますね?」
 澄んだ翠玉石色の瞳は、塔に向かう前に見た少女のものとは思えないほど強い輝きを放っていた。



「そう、でしたか」
 浮かない顔は、エリオットが見知る全ての報告を噛み締めているからだろう。
 沢山の騎士の死があったことはベリアル討伐の報を以てしても晴れることではないし、加えて衝撃的な事実が語られたのだ。
 “亡き王の再臨”──父の遺体が歪虚として利用されているという、悪辣な事実を。
「……殿下。僭越ながら、私からもお伺いしたいことが」
「貴方が去った後の出来事ですね」
 首肯し、青年は王女の言葉を待つ。ややあって、とつとつと、けれど懸命に少女の物語がつづられた。
「エリオット。わたくしは……与えられるばかりで……なに、ひとつ……」
 少女の目の前で、自らの命を捧げたひとがいた。
 少女を守るために、塔の入り口で何人もの騎士が命を落とした。
 黒大公を倒すために、数え切れぬほどの民が命を落とした。
 だが、それだけではない。
「いいえ。殿下の御心が、多くの者を救いました。あの黒大公との戦いにおいて、アーティファクトの力がなければ、少なくとも三割以上は戦死者が増加していたことでしょう。貴女様が、多くの命を救い、そして怨敵を討ち滅ぼす力を与えてくださったことは事実です」
「……ッ」
 涙をのみ込むように、王女は喉を鳴らす。
 互いの言葉は、そこで沈黙した。その時間は決して短くなかったが、やがて“未来の王”は、毅然とした声で青年にこう伝えた。
「ハンターのかたが保存されたという先王の声……きかせて頂けませんか」

 そして、あの日、王城に二人のハンターが招集されることになったのだった。

●ある日の小聖務

「なあ、お前は見たのだろう? 殿下が王位を示したその瞬間を」
 エリオットは、古の塔最上階を再び訪れていた。
 青年が首にかけているのは、あの時王女の傍に転がっていた懐中時計。
 それは、彼ないし彼女がずっと身につけていたものだ。
「……羨ましいよ」
 俺もその場に立ち会えていたのなら──苦笑し、エリオットは玉座の上に真っ白な薔薇の花束を供える。祈り捧げる小聖務。その神聖な時間を、後背から降りかかる無粋な言葉が破壊しにかかるのだから、全く性質が悪い。
「おい、朴念仁。感傷に耽るのは後にしてくれないか」
「……管制室を見ていたんじゃないのか。あと数十秒待って欲しかったところだが」
「数十秒? はあ、その数十秒とやらがどれほど貴重か分からないわけではあるまい? ちなみに、先の管制室は既に概ね把握した。問題ない」
 聞いた俺がバカだった、と言わんばかりにエリオットが大仰にため息を吐く。
 青年のもとにやってきたのは、長い白衣を引きずりながら歩く少年──アークエルス領主フリュイ・ド・パラディ。
「しかし、なるほど。これは面白いね。玉座型の制御装置か、まったく物好きめ。執拗さ、いや執着心か? 怨念めいた何かすら感じるよ。ふん、この塔の建造者はやはり“変態”だ。稀代に、天才に、錬金術師。まさに人格破綻者の三大文句さ。そいつがまともなら、世の秩序が乱れる」
「パラディ卿」
 講釈を遮られた少年は、思い出したかのようにゆっくりとエリオットに向き直る。
「ああ、分かっているよ。それで? 要件は何かね?」
 勝気な瞳に見上げられる。少年を相手に、エリオットは生真面目に教えを乞う。
「この塔は、“まだ生きている”のか、“もう死んでいる”のか。それを知りたい」
「光灯さぬモニターに、沈黙したきりのアーティファクト。……君たちはこれが死んだと思った訳か」
「解らないから聞いているんだ」
「ふむ、では無知な君に答えてあげよう。僕の所見では、そうだね、これは仮死状態というあたりかな」
 少年は、玉座に供えられた花束を抱えてどかりと玉座に腰かけると、にやりと口角を上げ、足を組んで言った。
「……さて、キミらはこれをどうしたいんだ?」

リプレイ本文

●騎士の眠る場所

「ベリアルを討伐しましたか。最初の戦いから三年弱、早いものです」
 アニス・エリダヌス(ka2491)は、この日戦没者の合同墓へと向かっていた。そこには、沢山の名を刻んだ碑が立てられている。戦を経るごとに刻まれる名は増え、特定の人物を探し出すには時間がかかるほどだ。
 それらを一つ一つ心にとめながら、アニスは胸に手を当てる。
 ──今回は、ハンターから信頼の厚かった騎士の方が亡くなりました。
 ある人物を思い浮かべながら、その騎士と、騎士を慕う多くの人々の顔を思い描いて、少女は息をついた。
 悲しみは、余りに深い。それを乗り越えるには如何ほどの力が必要だろう。
 少女がハンターになったのは、大切な人を喪った衝撃からだ。今は自身と同じ思いをする人が少しでも減るように……そんな願いで、戦いに身を投じている。なのに、だ。
「犠牲者の思い、無駄になんてさせません。決して──」
 大切に抱きかかえていた花束を、そっと墓前に捧げ、少女は手を重ね合わせた。

 そこへ、静かに土を踏む足音が聞こえてきた。
 鳳城 錬介(ka6053)だった。視界にアニスを捉えた彼は、少女の無垢な祈りを邪魔せぬようそっと回り込み、石碑に花を供えて手を合わせる。
「俺は……自惚れていました。少しばかり力をつけたからと言って、何でもどうにかなると思っていたのです」
 吐露されたのは、心の底からの懺悔だった。
「……それがこの様です。目的に辿り着く事も、肝心な時に支える事も出来ず……与えられるばかりで、結局何も返せませんでした」
 この合同墓地にソルラ自身は眠っていないが、慰霊の石碑には確かに彼女の名前が刻まれている。そっと指を這わせると、重たい息が零れた。
 彼女の死は、避けられなかったのか?
 ──答えは、否だろう。だからこそ、余計悔やまれるのだ。
「もう、直接返すことは出来ないけれど。貴女が、皆が、守りたかったものを俺が守ります」
 あの日、この国を守るため、散っていったすべて命を思い、錬介は瞳を閉じた。
「どうか、見守っていてください」

 帰途につく錬介と入れ違うように墓地へやってきたのは、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)だった。
 少女は、自らの背よりずっと大きな碑の前に足を止め、しばらくそれを眺めていた。
 思うのは、命をとして志を遂げた彼らへの追悼。そして……
「ありがとう」
 紛れもない感謝の意。
「……少しでもその想いを背負わせてもらいたいんだ。大切なものを守るために命を懸けた貴方達の覚悟を」
 誰にともなくアルトは尋ね、深呼吸の後に真っ白なブーケを供えた。
「それが私の強さの源にもなる」

 十色 エニア(ka0370)も、この日王都の合同墓地を訪れていた。
 すれ違う中には見知った顔もあった。けれど、ここへ来る人々が願うことは『自分自身と、亡き人々』の間に交わす対話だ。ならば無粋はするまいと、皆が互いに思い合ったことだろう。
 エニアもひとり、墓地に立てられた石碑の前に立つと、刻まれた名前を一つ一つなぞる。
 ──慣れた訳じゃない。これが二度目だからって? 回数なんて、何の意味もない。
 やがて探していた人物を認めると、眉を、寄せた。じくじくと胸を侵す痛み。それを飲み込むように息を吸って、そして……少女は、“微笑んだ”。
「これ、あげる。この花はね、友情の意を含むものなんだよ。ほら、アルテミス結成前から見知った仲だったし、ね」
 思いの籠ったブーケ。献花に屈んだその時、吹き付ける風が花を撫でて舞いあがり、エニアの鼻孔をくすぐっていく。穏やかな花の香りが胸に満ち、あぁ、と少女は溜息をついた。
「こんな日々を過ごしていれば、嫌でも死と隣り合わせなのは自覚してるよ。けど……」
 頭を振って、少女は立ち上がる。哀悼の意を込めて、鎮魂の舞を捧げる為に。

 その日、ラジェンドラ(ka6353)は王都を彷徨い歩いていた。
 目的はオーラン・クロスの捜索。だが、彼は王都におらず、見つけることができなかった。
 ──会えたなら、ラテル・ハシバスと名乗ったうえで聞きたいことがあったのだが。
 そのまま帰ることも憚られた青年は、死んだ妹を気にかけて、合同墓地へと足を向けた。
「昨年の戦いの時の戦没者たちは、ここか」
 もし情報を得ていたら「ラウム戦の遺体が一つなくなったこと」について尋ねるつもりだった。
 実際、昨年のラウム襲撃で多くの騎士が亡くなり、その際一つ遺体が無くなったことは事実だ。匠の推察通り、ヘクスがメフィストを謀るべく「エリオット偽装死」のため遺体を利用させてもらったのだ。その為、エリオットと最低限の特徴が一致した“黒髪の男の騎士の遺体”が一つなくなっている。
 だが、その情報は公になっておらず青年に既知の情報でないため問うことは出来ない。
「この戦いでも俺の戦友だった騎士が死んでいる。妹やそいつの為にも俺は戦わないといけない」
 青年は、石碑を前に真っ直ぐな祈りを捧げていた。

●王都の片隅で

 仁川 リア(ka3483)は、その日沸き立つ王都の一角でベンチに腰をかけていた。
 眼前の光景からも、先の戦いで黒大公が打ち倒されたこと、その喜びが強く伝わってくる。
 けれど、彼の心の大部分は別の存在に支配されていた。
「レッドバック、それがソルデリの言ってた『奴ら』の一人……」
 頭に焼き付いて離れなかった。
 燻る想いを引きはがすように頭を振るい、少年は想いの限りに拳を握りしめる。
「歪虚が、人間に何かを“願う”なんて」
 信じられる話ではないだろうが、それでも“あいつ”は言ったのだ。──“奴らを倒せ”と。
 ふと傍を通った人々の笑い声にハッと我に返り、少年は漸く深い息をついた。
 過日のことを振り返れど、捉われている訳ではないのだ。なぜなら。
「……解ってる。答えは、もう決まってるんだ」
 奴の願いを背負い、レッドバックを倒す。
 今更と笑われるかもしれないが、そこには確固とした思いがあった。
 これは確認の儀式、だったのかもしれない。
「さぁ、そろそろ行こうかな」
 そうして、リアは歩き出した。

●揺籃館の尋ね人

「古の塔をもう1回探索したかったんだけど、ハンターはもう入っちゃ駄目だったりするの?」
 揺籃館の片隅で、館の執事と押し問答中の少女が一人。ディーナ・フェルミ(ka5843)だ。
「あの子たちがオートマトンだとしたら、新しく開かれたエバーグリーンの子達と繋がる何かがあると思うの」
「塔に居たのはゴーレムとホムンクルスだそうですよ」
「確かに、クジラと魚ぐらいの類似点かもしれないけれど」
 唸るように呟いて、ディーナが俯く。主張を聞いた執事は、少女に穏やかに尋ねた。
「なぜ、そこまでご執心されるのですか」
「あの子たちがどうやって長く歪虚から守られていたか知りたいの。もしそれが分かれば……エバーグリーンの子たちだって、歪虚に蝕まれずに済むと思うの」
 顔を上げたディーナの瞳には強い意志が感じられ、執事は漸く彼女の意を汲むことが出来たようだ。
「可否はともかく、一度アークエルスに行ってみてはいかがですか?」
「そうよね! まずは現地に行ってみるの~」
 ありがとうと微笑んで、ディーナは王都を旅立っていった。

●生者の義務

「近代史、ホロウレイド……この辺りかしら」
 ジェーン・ノーワース(ka2004)が訪れたのは、王都にある図書館。王立図書館と比べるべくもない施設だが、少女にはそれで充分。この国の歴史は愚か、近代の事変すら満足に知り得なかったからだ。
「王国暦600年頃、予言に語られる【歪虚】なる存在が半島北部に姿を現し始め、700年、歪虚の大侵攻が王国を襲った。撃退には成功するものの、王国は国力を大きく失する。帝国、自由都市群の離反で半分に近い領土を失い緩やかに衰退する王国を、1008年、再び歪虚が襲った。王国西方のイスルダ島を歪虚が占拠したのだ。翌09年、アレクシウス・グラハム王率いる王国軍が歪虚本隊と激突。多大な犠牲を払いつつも敵指揮官と思しき歪虚──これはベリアルね。これに痛打を与え、一時撤退させることに成功。しかしこの戦で、王を含む多くの騎士が戦死を遂げた……」
 ここまで読み終え、少女はため息をついた。
「この戦いで死んだ彼らが……歪虚に、利用されたのね」
 図書館を出ると、すっかり陽は沈んでいた。目抜き通りから、人々の喜びの声が聞こえてくる。それを心に刻みながら、誰も周りにいないこと確認し、そっとフードを外す。
 見上げた夜空には美しい星が輝き、その眩しさに目を眇める。息苦しさを訴える胸を、震える手足を、しかりつけるように拳を握りしめる。その当然の仕草が意味することに気付き、少女は掌に視線を落とした。
「私……生きてるのね」
 痛感させられ、今更のように思ったのだ。
 当たり前の日々に、夜空の輝きに、そして遠い昔に別れた両親にも、向き合いたいと。
 ──それが、生者(私)の義務だから。

●爺と青年

 騎士団長室にやってくるなりソファへ腰かけると、ジャック・J・グリーヴ(ka1305)は勝手に持参したボトルを開け始めていた。部屋の主であるゲオルギウスはと言えば、「叱りつけるのも面倒」と放置していたが「グラスはまだか」とせびる声に、流石に諦めがついたようだった。
「なぁ、先王が歪虚になったことは知ってんだろ? 聞きたい事があんだよ。ほら、先王が歪虚になった戦い──ホロウレイドから生還して不審な動き見せてた奴が居たよな」
「フレデリクのことか」
「爺さん、遺体と対面したんだろ? それ、マジモンだったか?」
 酒に酔う気配すら見せず、ジャックは鋭い視線を突き付けている。彼なりの“真摯”を理解し、爺は深く息を吐いた。
「あれはメフィストを調べていた。何を掴んでいたかは解らんが、結果として“人でないものの手で殺された”。調査で下手をうったとしか思えんが、兎に角、死体は本人に違いない」
「メフィストの何らかの情報を掴んで消された可能性がある、ってことか?」
「今となっては解らん。が、一つ言えることは……」
 手掛かりに成り得そうなものはあった。だが、既に潰えていた──と、いうことだ。

●領主と少女と少年と

 王都第三街区の古びた書店から出てきた少年に、見覚えがあったクリスティア・オルトワール(ka0131)は咄嗟に彼に声をかけていた。
「パラディ様、クリスティアです」
「ああ、4号」
 フリュイ・ド・パラディの相変わらずの様子に少女が苦笑を滲ませていると、矢継ぎ早に別の少年が姿を現す。
「フリュイ様! こんなところでどうしたんです?」
「やれやれ、王都は騒々しくて敵わん」
 苦々しいクリスと、辟易した様子のフリュイを交互に見つめながら、少年──ジュード・エアハート(ka0410)はややあってにっこりと笑った。
「お疲れのようですし、帰る前に美味しいお茶でもどうですか」

 珍しくフリュイの機嫌が良かったこともあるが、三人は静かなカフェで休息をとることになった。フリュイにねだられ、クリスティアはケーキ(要は燃料としての糖分)を奢らされたりもしたが、これで多忙な領主との会話の時間を得られるならば破格のパフォーマンスだろう。
「そういえば、古の塔に居たあの子、どうなったかご存知ですか?」
「あの子?」
「ほら、番人の子。……オートマトンみたいな印象でしたけど」
「あぁ、ホムンクルスが居たらしいね」
「“居た”」
 過去形、なんだ──口にせず視線を落としてジュードが眉を寄せると、今度はクリスが口を開く。
「その塔の戦いで、私たちは番人から国防兵器の存在を明かされました。先の黒大公戦でエリオット様が使用を宣言したのは“それ”ですね?」
「それ以外にないだろう」
「メフィストが塔に現れた事の意味……塔の兵器を、狙っているのでしょうか」
「さてね。それが意味することなんて僕にはどうでもいい」
 一足飛びに情報を得ることは叶わない。情報を伝って行くには、手順が足りていないのだ。
「僕は帰る。良い糖分を摂取できたことには感謝するよ、4号」
「フリュイ様、塔の冒険楽しかったです。またあそこで仕事があれば志願したいんですけど」
「塔は僕の管轄じゃない。が、そうだな。例の朴念仁にでも訊いてみたらどうかね」
「朴念仁? ……あ、そうだ。他にも古の塔みたいな面白そうな古代遺跡とか知らないです?」
「ここは千年王国だよ、そんなもの幾らもあるさ。世界遺産巡りなら観光案内を雇え」
「そういうんじゃないです、もう! ともかく、また冒険しがいのある依頼、待ってますね」

●異形について

「なぜ、奴は最初から異形だった?」
 藤堂研司(ka0569)は、その日ソサエティのイルダーナ支部にいた。
「過去の報告書に配下の変身は記録されている。だが、それは戦闘の末だ。“戦闘前、無傷のまま”の変身は傲慢らしくないだろう?」
 尋ねる青年に対し、受付嬢は申し訳なさそうに応じるばかり。
「最初から異形ではありませんでしたよ。異形になったのは最終決戦の直前で、それ以前に大陸を歩いている最中は元の姿のままで、赤の隊を中心とした王国連合軍が引き受けていましたから“戦闘の末”であることはこれまでと同じかと存じますが……」
「そ、そうか。最初からではないんだな……」
 研司の言葉はそこで宙に舞うも、諦めず思考しながら街へくり出してゆく。
 彼の行先は……夜の酒場だった。


●酒場、更けゆく夜

「黒大公討伐は果たしたが、先の敵を思えばこそ……喜びのもとに、次の戦への想いが潜むもむべなるかな」
 町の声を記憶に書き留めるかように往来に立ち、人々を見つめていたユーレン(ka6859)。
 女は、やがて第三街区の酒場の戸を叩いた。
「駆け出しの我では勝てぬと思うが……おぬしとの腕相撲を所望する」
 気持ちよく酒を呷っていたダンテ・バルカザールは、視線を上げる。
「……姉ちゃん、俺が今なにしてんのか見えねえ訳じゃねえだろ」
「しばし遠席から眺めていた故、承知している。これが無粋であることも、だ」
 そう言って、鬼の女は傍の酒樽を指す。
「酒樽一つ、な。受けてやらんでもねえが」
 やれやれと零すダンテを横目に、ユーレンは面白がって見物に来た手近な酔っ払いに合図を頼むと位置につき、そして──勝負の幕を開けた。
「Ready……GO!」
「ッ……!」
 瞬く間の出来事だった。勝者は言うまでもない。
「流石は音に聞こえる勇士。樽の一つ、持って行くが良い」
「ハッ、戦場で大切なのは、マイト・パワー・ストレングスだからよ!」
 戦利品を手に入れ、ダンテが声を上げたまさにその時──
「らんて・ばうかざ――――――る!!」
 素っ頓狂な声が酒場中に響いた。……面倒事の匂いしかしない。
 ダンテがその声の方角を確認すると、そこには、獲得したばかりの樽の上に飛び乗る一人の少年が居た。
「あっテメ、俺の酒樽にッ!」
 犯人は、ウィンス・デイランダール(ka0039)だ。少年が手にしているジョッキは彼の顔と同程度の大きさをしている。
「俺の踏み台になれコラ、手合わせだコラ、巻藁役やれコラ」
「お前、酒入るとめんどくせえな、ったくガキめ」
「はあぁぁぁ? 俺はガキじゃねー! おい、さわんなコラァ」
 樽の上からどかそうと少年を持ち上げるダンテ。その手をウィンスは強く拒むが、暴れ出すより一瞬早く、ダンテによって傍のテーブルの上に抑え込まれてしまった。
 机がガタッと派手な音を立て、酒場の誰もが振り返る。
「ダンテ隊長、久々に見たと思ったらこれか……」
 そこへ、やれやれと言った様子で央崎 枢(ka5153)が近くの席に腰を下ろし、傍のウェイターに謝意を伝えて、新たに酒を注文した。
「ともあれ、大人しく乾杯しません? さすがに隊長みたいに、水と同感覚で飲めはしないけど」
「おれもおれもー」
「てめえはこれでも飲んでろ」
 混ざろうとするウィンスにチェイサーを押しつける一方、ダンテと枢は互いのジョッキをぶつけあった。冷たく済んだグラスの音が響き、それを合図に枢が話を切り出す。
「そういえば、先の戦いで出てきた歪虚は……元々王国騎士団の方々だったんですよね」
「そうらしいな」
「差し支えなければ、彼らの生前の話を聞かせてもらえないですか」
「それ、僕もききたいな」
 ひょこっと現れたラン・ヴィンダールヴ(ka0109)や、周囲のハンターたち、そして他人の顔をして距離をとっていた騎士団長ゲオルギウスらも集い、以前の王国や騎士団に関する話が語られた。
 先王アレクシウスは、年少より聡明であったこと。根っから粗暴なダンテとは年が近く、二人が良き友人であったこと。アレクシウスの一声で一足飛びに近衛隊に従属したエリオットは、丁寧に育てられてきたこと。王の「問題」をゲオルギウスが全て片づけて来ていたこと。彼らのとりとめのない思い出話が、そこにはあった。
「ハ、何の役にも立たない昔話だったな」
「そんなことないんじゃないかな?」
 言葉少ななダンテに気付き、ランがくすりと笑う。
 照れくさいのだろう。自身の過去を語ることも、そして大切な仲間の温かな思い出を語ることも。
「深い絆があった事、その上でも先の戦いで騎士団が剣を抜いたことは解ったし、“覚悟”の重さは理解できるよ」
「違いねえ」
 ランの指摘に髪をガシガシ掻きながら、ぶっきらぼうにダンテが応じる。
 彼の話をこれまで黙って聞いていた研司は、ややあって思い悩んだ表情でこんな問いを口にした。
「ダンテさん、ベリアルの決着について……違和感が消えないんです」
「何に対してだ?」
「それが……」
 今日の調べで想像と事実の違いを理解した研司は、二の句を見失う。けれど、それにダンテは呵々と笑った。
「ま、いいんじゃね? 疑問持つってこと自体はよ」
「疑問、な」
 多少落ち着きを取り戻したウィンスが再び話の輪に戻ってきた。
 加減一つで割れてしまうグラスを、壊さないように握りしめながら少年は呟く。
「そろそろ多少は認めてくれてると良いな。王政に対して、素直に首を縦に振らねー連中」
「それってのは」
「例えば、マーロウとかいうジジイ……一説によるとふわふわシスティーナ姫より影響力でかいらしいな」
 突然、ダンテが大笑した。そのボリュームに「うるせえよ、おっさん!」とウィンスは牙を剥くが、容易くいなして男はなお笑う。
「そりゃあ……“無理だろ”」
 重く響く低い声。そこには、如何程の苦みがあったのだろうか。

 ダンテ周辺が盛り上がるなか、静かに様子を見守っていたエリオットの頭上から快活な声が降ってきた。
「また、会えたようだね」
 顔を上げると、そこにはアルトがいた。
「本当に“帰ってきた”の?」
「難しい問いだな」
「はは、そうだね。でもいいよ、答えようとしてくれたのは解るから」
 アルトはそう言って、エリオットの肩を叩く。
「……ソルラ・クート。友人だったんだ」
「そうか」
「仇は討たせてもらうよ。必ず、ね」
 軽い挨拶程度で立ち去るアルトの背中を、エリオットは複雑な思いのまま黙って見送る。
 そんな男の感情に気付かぬふりをして、声をかけたのは対崎 紋次郎(ka1892)だった。
「今更だが、ホロウレイドの記録は読んだ。王や近衛隊、王国騎士団に痛打を与えたのはベリアルだよな」
「ああ」
「豚羊は滅んだ。だが、因縁は……なくならない」
 エリオットは答えないが、紋次郎も解っている。彼の主君が歪虚となったことを、あの場の誰もが知っているからだ。
 長居をするつもりはないとばかりに水を飲み干した紋次郎は、改めて男を見据える。
「相談だが、数年前、奇襲用転移門なんてのが使われたことがあっただろう。あれと同様のものを用意できないか?」
「厳しいな。無論、出来るなら我々も使いたいが」
「そりゃそうか。だが、イスルダを取り戻すのなら……島にCAMを送り込むのは必須だろう」
「ああ、そのための”フライング・システィーナ号”だ」
「そうか、それだ!」
 額に手を当てて唸る紋次郎に「大丈夫? 水、要ります?」と心配そうな声が振る。
「別に、酒のせいじゃ……」
 紋次郎が声の方角を向くと、そこにはキヅカ・リク(ka0038)が居た。
「そういえば、さっきパラディ氏を見かけて少し話を聞こうと思ったんですけど」
「どうだった」
「“誰?” ……って」
 リクの話に紋次郎とエリオットは苦笑を浮かべる。
「僕は知りたかったんです。塔のゴーレム達は強力だった。だから、王国であれを再現できないかって。あれを作るにはそれなりの設備、場所が必要になりますよね?」
「ああ。だが、王国は過去禁術狩りを行った。その手の工房は、絶望的だろうな」
 落胆の意も見せずに首肯し、リクはなおも続ける。
「でも、もしあれが意図した水準で維持されたものなら……」
「あれは“一人が一人のために作り上げたもの”だ。水準もなく、維持もされていないだろう」
「……そっか」
「お前が力を尽くそうとしてくれることは、素直にありがたいと思う」
「いえ、そんな大したことじゃないんです」
 ただ──遺志を継いだ彼女のためにできることをしたいと、リクはそう思っていた。

「エリオットさん、これ」
 二人の青年が立ち去ったのを見送ると、ルカ(ka0962)はエリオットへあるものを差し出した。それは、慰霊と慰労のための酒と花束。
「騎士団に渡しておく。感謝する」
 ルカの物言いたげな顔に気付いた青年が少女にそっと水を向けると、堰を切ったように血盟作戦での顛末が語られたのだった。
「ですから……巡礼陣について、ソサエティを通じて大精霊に協力願いをしてはいかがでしょう」
「理解が及ばず悪いが、どの精霊に、なんの協力を、だ?」
 思わず、少女は沈黙する。自分の問い方が悪かったと感じたエリオットは、早々に話を切り上げる。
「困らせるつもりで聞いたんじゃない。特にないならいいんだ」
「いえ、すみません。あの、最後に一つ」
 再び差し出された包み。受け取りながら首を傾げるエリオットに、少女は穏やかに微笑む。
「お誕生日、おめでとうございました」
「……毎年、誰かに言われて気付く。そういえば、そうだったと」
 そう言って、エリオットは表情を緩めた。
「ありがとう」

 夜が深まるなか、酒場に不似合いな少女が一人。
 卓を囲うエリオットを見つけて駆け寄ると、彼女は真正面からこう言った。
「ようやく、見つけたわ」
「ブラウも来たのか。空いている席に座ったらどうだ」
 酒場に青年がいるという情報を聞きつけ、慌ててやってきたのだろう。ブラウ(ka4809)は少し息を切らしている。
 だが、対する青年の呑気な声には思わずムッとしてしまう。人の気も知らないで、よくもまぁ言えたものだ。
 そう思った時、少女の手は座ったままの男の頭にチョップをかましていた。
「突然、何なんだ」
「心配かけたんだもの、当然よね」
「……そうか」
 瞬間、視線がぶつかり合う。男の瞳は酷く済んだ青をしていて、少女は感情が引きずり出される心地に身体を強張らせる。
「お前、泣いてるのか」
「な、泣いてなんかないわよ。安心したなんて……思ってない……っ」
 弱ったとばかりに髪を掻くエリオットを指して、ダンテが笑う。
「おーおー、ガキ泣かしやがった」
「泣いてないわよ、っていうか子供でもないわよ!」
「……だそうだぜ」
「解った、もういい。俺が悪かった」

 騒ぎに巻き込まれ嘆息するエリオット。その様子をくすくす笑って見守る一人の少女が居た。
「エリオットさん、こんばんは。央崎 遥華(ka5644)です。覚えてくださっていますか?」
「ああ。仕事柄、人の顔と名は極力覚えるようにしている」
「良かった。私、お礼が言いたかったんです。少しお時間頂いても?」
「……こんな煩い場所で良ければ」
 遥華はにっこりと微笑むと、そっと青年の隣に腰を下ろした。
「あの時、背中を押してくださってありがとうございました」
 少女は、自身がマーグミュル島奪還作戦で振る舞えた行動は彼の言葉があったからだと感謝しているのだ。
「かけがえのない人たちを立て続けに失った悲しみは、正直大きいです。大きすぎる。けれど……前を向かなくちゃ、って」
「あぁ、それでいいんじゃないか」
「ありがとう、ございます。……そうだ。良ければソルラさんの思い出話でもしませんか?」
 遥華のそんな提案に魅力を感じた者は少なくなかったのだろう。
「よろしければ、そのお話、私も加えて頂けませんか」
 エリオットの元へまた新たな少女が姿を現した。
「そうだ、その前に……エリオット様、お帰りなさい」
 美しい金の髪を揺らしてヴァルナ=エリゴス(ka2651)は微笑むと、エリオットへ真っ赤な薔薇の花束を差し出した。
「ご帰還祝いです」
「ならば、対価と言う訳でもないが、俺からも話をしよう」
 少女たちに応じ、エリオットは幼い頃から良く知るソルラ・クートの思い出話を始めた。
 懐かしむ青年の表情は本当に穏やかで、見ているヴァルナは“この当たり前が続くこと”を願ってしまう。
 純粋な思いは、間違いではないはずだ。だから……
「……エリオット様、また、勝手にいなくならないでくださいね? 皆、心配しますから」
「“勝手に”?」
 語り終えた青年に“我侭”を告げた。けれど。
「断りを入れろ、ということか?」
 思わずヴァルナは口元に手を当てる。自分の言葉の意味に、漸く気付いたのだ。
「悪いが約束できない。俺が仕える主君は、ただ一人だ」


●星空の下

「こんばんは」
 ひとり酒場を後にしたエリオットが振り向くと、美しいエルフの少女が立っていた。
「アイシュリング(ka2787)か、良い夜だな」
「ええ。貴方は散歩?」
「いや、酒場からの帰路だ」
「そう。少し、酔いでもさましたらどうかしら」
「そうだな。……その“少し”に、付き合ってくれ」

「この間は、城まで呼び出して悪かった」
「構わないわ。システィーナ様、随分と変わられたわね」
 隣を歩く男を見上げると、珍しく口角を上げていた。王女の成長は勿論、それを他者から肯定された事が自分の事の様に喜ばしいのだろう。
「……番人と王女が瓜二つだったこと、運命だったのかしら」
「お前も、思ったんだな」
「どうかしら。でもきっと……千年の時を超えて約束を果たすべきは“今”だったのね」
 じき、夏が来る。虫の声が心地よく響く、静かで穏やかな時間。
 ゆっくりと流れる風を受けながら、アイシュリングは空を仰いだ。
 彼の帰還は、待ちわびていた多くの人にとって喜ばしいことだろう。けれど……
 ──まだ、やるべきことが残ってる。
 唇から零れ落ちた無意識。エリオットは、それに気付て首肯する。
「あぁ、俺もだ」
「知ってるわ」
 ひどく心地の良い時間だった。
 満天の星の下、自然と湧き出す微笑みに満たされている。
「生まれた意味……あなたも、わたしも、それを果たすのは、きっとイスルダにある」
 少女は、再び歩き始める。得難くも儚い時間を、守るために。


●ある部屋で

 その日、レイレリア・リナークシス(ka3872)は手紙を書いていた。
 一日かけて祭りを巡った彼女の目に、この王都の景色は様々な事を教えてくれた。
 ──ベリアルを倒して喜び沸き立つことも、一時の休息として必要なことでしょう。
 現実的思考に基づいた見解。少女の表情は、険しかった。
「未だ残るメフィストに、新たに姿を現した亡き先王の歪虚……安心は、できない」
 思い浮かべるのは、一人の少女──王女システィーナ・グラハムの姿。
 レイレリアは、今、彼女に向けた手紙を一身に綴っていた。
 王国も歪虚と戦う姿勢を貫いているが、この国の現状を思えばこそ、懸念は大いにある。
 けれど、それに捉われていては未来を掴むことなどできはしないと少女は理解していた。
「……約束通り、私も私の責任において、負うものを負い、協力をします」
 封筒に蝋を垂らし、印璽を押す。手の中で形になった“想い”は、喜びに満ちた王国の姿が溢れんばかりに綴られていた。

 きっと、王女殿下にはこれが何よりの報酬だろう。そう思い、少女は立ち上がった。


●新時代への道標

「お帰りなさい。そして、ありがとうございました」
 エリオットの滞在先に連れてこられた誠堂 匠(ka2876)は、人心地ついた所でこう切り出したのだ。
「何がだ?」
 驚くエリオットに笑い、匠は続ける。
「機は必ず訪れる──貴方の言葉です。確かに、訪れましたから」
「お前には、説明の必要がないな」
「そうでもないですよ。ただ、メフィストが王国に長期侵攻しなかった状況には理由があったのでは、と。そして、それに……」
「俺が関与していることも、か」
「はい。……しかし、懸念が。先王の歪虚は、貴方の生存を知っていた」
「可能性は二つ。先の戦で空の部隊などが俺を見つけたか、或いは“奴は最初から俺の生存を知っていたか”だ」
 予想外の推察に、匠は目を見開く。後者は“有り得ない”と端から排除していたからだ。
「どちらにせよ、現に貴方は生きている。つまり昨年の訃報は“偽装”──“必要があったから装った”のですよね? ならば……今はもう“必要が無くなった”と考えて良いのですか?」
 正しい論拠だ。確実に事実を引き寄せる力を、匠は持っている。
「思うに、今回の事が“国策”ならば、つまり」
「やはり、お前は頭がいい」
 男は続く推論を遮った。
 ──他所に渡すのは、惜しい。
 そんな想いに、確信を得たからだ。
「……匠。俺のもとでその力、存分に振るう気はないか?」
「え?」
「一年前のあの日、お前は俺に言った。“我々を使え”と。今なら言える。お前の力が必要だ」

 それは、エリオットの中で『黒の隊』発足の意向が確かに固まった瞬間だった。

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MVP一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸ka0038
  • グリム・リーパー
    ジェーン・ノーワースka2004
  • 黒の懐刀
    誠堂 匠ka2876
  • 祓魔執行
    央崎 枢ka5153

重体一覧

参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 魂の反逆
    ウィンス・デイランダール(ka0039
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • 皇帝を口説いた男
    ラン・ヴィンダールヴ(ka0109
    人間(紅)|20才|男性|霊闘士
  • 古塔の守り手
    クリスティア・オルトワール(ka0131
    人間(紅)|22才|女性|魔術師
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 龍盟の戦士
    藤堂研司(ka0569
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士

  • ルカ(ka0962
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 光凛一矢
    対崎 紋次郎(ka1892
    人間(蒼)|24才|男性|機導師
  • グリム・リーパー
    ジェーン・ノーワース(ka2004
    人間(蒼)|15才|女性|疾影士
  • 勝利の女神
    アニス・エリダヌス(ka2491
    エルフ|14才|女性|聖導士
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • 未来を想う
    アイシュリング(ka2787
    エルフ|16才|女性|魔術師
  • 黒の懐刀
    誠堂 匠(ka2876
    人間(蒼)|25才|男性|疾影士
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 大地の救済者
    仁川 リア(ka3483
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • 六水晶の魔術師
    レイレリア・リナークシス(ka3872
    人間(紅)|20才|女性|魔術師
  • 背徳の馨香
    ブラウ(ka4809
    ドワーフ|11才|女性|舞刀士
  • 祓魔執行
    央崎 枢(ka5153
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 雷影の術士
    央崎 遥華(ka5644
    人間(蒼)|21才|女性|魔術師
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士
  • “我らに勝利を”
    ラジェンドラ(ka6353
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 黒鉱鎧の守護僧
    ユーレン(ka6859
    鬼|26才|女性|聖導士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
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2017/06/10 08:58:20