ゲスト
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【初心】幽霊船の正体見たり、枯れ尾花?
マスター:真太郎

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- LV1~LV20
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/14 07:30
- 完成日
- 2017/06/21 20:15
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
2隻の船が大きく帆を広げて海原を悠然と航海していた。
船の目的は物資の輸送。
同盟で買い付けた食料品などを辺境の港に卸しに行く最中である。
つまり商売だ。
しかし今回の航海には1つ問題があった。
それは今通っている海域には最近、幽霊船が出るという噂が立っている事だ。
「船長。なんでわざわざこんな危ない航路通るんっすか?」
船員の1人が不満気な口調で船長に尋ねた。
「いつも通ってる路だろうが、危ねー事なんて何にもねー」
「でも幽霊船が出るって……」
「幽霊の正体見たり、枯れ尾花、だ」
「……なんすかソレ?」
「リアルブルーの格言の一つだよ。ビビってるから何でもないモンが幽霊に見えたりするんだ。幽霊船なんて単なる噂だ噂。
今や何kmもあるバカデカイ船が空飛ぶご時世だぞ。幽霊船だなんて時代錯誤なこと言ってんじゃねーよ」
「いやいや、空飛んでんのはリアルブルーの船じゃないっすか。うちらの船とは別モンですぜ」
「ともかく航路はこのままだ。今回の荷物には生鮮食品もあるんだ。最短ルートを行かなきゃ傷んじまうだろうが」
「やっぱ儲けのためっすか」
「あったりめぇだろ、俺たちゃ商人だぞ。つまらん噂なんぞに振り回わされてちゃ商売なんてできやしねーよ」
しかし、強気な船長の言葉とは裏腹に天候は悪化し、船の周囲には徐々に霧が立ち込めてきた。
「ヤバイっスよ船長! これ絶対幽霊船が出る前兆っすよ!!」
先程の船員が思いっきり取り乱す。
「バ~カ。ここは元々霧が出やすい海域なんだよ。単なる自然現象だ。気にすんな」
「でも……」
「船長! 後続の船を霧で見失いました」
トップマストにいた物見が大声で告げてくる。
「はぐれたか……。まぁ、目的地は一緒なんだ。霧さえ晴れりゃすぐに合流できるだろう」
船はそのまま単独で航海を続けた。
「右舷に船影」
再び物見が告げてくる。
霧の奥に目を凝らすと、不気味な黒い影が徐々に接近してくるのが見えた。
「ひぃー!! 幽霊船っ!?」
「落ち着け。後続の船が合流しただけだ。ビビってるからそう見えるんだ。枯れ尾花だよ枯れ尾花」
すっかり腰の引けている船員に呆れながら船長が言い捨てる。
だが、霧の中で徐々に浮き彫りになってきたのは、はぐれた船とは似ても似つかぬ別の船だった。
マストは折れて幾つもロープがだらりと垂れ下がり、帆はボロボロ。
船体は薄汚れてギシギシと音を立て、波に翻弄されるままゆらゆらと揺れている。
「ギャーーー!! やっぱ幽霊船じゃないっすかぁーー!!」
「だからそれが枯れ尾花だっつってんだろ。ありゃただの難破船だ」
完全に取り乱している船員とは違い船長は冷静だった。
しかし難破船からパンという発砲音が鳴り、船員と船長の間を何かが通り過ぎ、背後のマストに穴が穿たれる。
「……船長、これも枯れ尾花っすか?」
船員がマストの穴を指差す。
「バカ! これはモノホンだ」
船長は船員の頭を掴んで自分共々床に伏せさせた。
「チッ! 難破船に偽装した海賊船だったか」
「敵船。突っ込んできます!」
「取舵いっぱい! 避けろ!」
物見の報告を受けた船長がすぐ命令を下す。
ぐんぐんと敵船が迫ってくる。
かろうじて正面衝突は避けたが、舷側と舷側がぶつかって擦れ、船が激しく揺れた。
「ちくしょう! やりやがったな!!」
マストにしがみついて船から振り落とされるのを逃れた船長が懐から銃を抜く。
そして敵船の甲板上の人影に銃口を向けた。
『ぁ~……』
『ぅ~……』
するとそこには、青白い顔に焦点の合わない目で譫言をつぶやきながら銃を構える人の姿が見えた。
「なん……だと……」
それは恐らく人ではない。
元は人であったかもしれないが、今は違う。全く別の何かだ。
「船長、あれも枯れ尾花……」
「枯れ尾花はもういい!! 戦闘準備っ!!」
呆けている船員を怒鳴りつけると船長はゾンビのような敵船員に発砲した。
船の目的は物資の輸送。
同盟で買い付けた食料品などを辺境の港に卸しに行く最中である。
つまり商売だ。
しかし今回の航海には1つ問題があった。
それは今通っている海域には最近、幽霊船が出るという噂が立っている事だ。
「船長。なんでわざわざこんな危ない航路通るんっすか?」
船員の1人が不満気な口調で船長に尋ねた。
「いつも通ってる路だろうが、危ねー事なんて何にもねー」
「でも幽霊船が出るって……」
「幽霊の正体見たり、枯れ尾花、だ」
「……なんすかソレ?」
「リアルブルーの格言の一つだよ。ビビってるから何でもないモンが幽霊に見えたりするんだ。幽霊船なんて単なる噂だ噂。
今や何kmもあるバカデカイ船が空飛ぶご時世だぞ。幽霊船だなんて時代錯誤なこと言ってんじゃねーよ」
「いやいや、空飛んでんのはリアルブルーの船じゃないっすか。うちらの船とは別モンですぜ」
「ともかく航路はこのままだ。今回の荷物には生鮮食品もあるんだ。最短ルートを行かなきゃ傷んじまうだろうが」
「やっぱ儲けのためっすか」
「あったりめぇだろ、俺たちゃ商人だぞ。つまらん噂なんぞに振り回わされてちゃ商売なんてできやしねーよ」
しかし、強気な船長の言葉とは裏腹に天候は悪化し、船の周囲には徐々に霧が立ち込めてきた。
「ヤバイっスよ船長! これ絶対幽霊船が出る前兆っすよ!!」
先程の船員が思いっきり取り乱す。
「バ~カ。ここは元々霧が出やすい海域なんだよ。単なる自然現象だ。気にすんな」
「でも……」
「船長! 後続の船を霧で見失いました」
トップマストにいた物見が大声で告げてくる。
「はぐれたか……。まぁ、目的地は一緒なんだ。霧さえ晴れりゃすぐに合流できるだろう」
船はそのまま単独で航海を続けた。
「右舷に船影」
再び物見が告げてくる。
霧の奥に目を凝らすと、不気味な黒い影が徐々に接近してくるのが見えた。
「ひぃー!! 幽霊船っ!?」
「落ち着け。後続の船が合流しただけだ。ビビってるからそう見えるんだ。枯れ尾花だよ枯れ尾花」
すっかり腰の引けている船員に呆れながら船長が言い捨てる。
だが、霧の中で徐々に浮き彫りになってきたのは、はぐれた船とは似ても似つかぬ別の船だった。
マストは折れて幾つもロープがだらりと垂れ下がり、帆はボロボロ。
船体は薄汚れてギシギシと音を立て、波に翻弄されるままゆらゆらと揺れている。
「ギャーーー!! やっぱ幽霊船じゃないっすかぁーー!!」
「だからそれが枯れ尾花だっつってんだろ。ありゃただの難破船だ」
完全に取り乱している船員とは違い船長は冷静だった。
しかし難破船からパンという発砲音が鳴り、船員と船長の間を何かが通り過ぎ、背後のマストに穴が穿たれる。
「……船長、これも枯れ尾花っすか?」
船員がマストの穴を指差す。
「バカ! これはモノホンだ」
船長は船員の頭を掴んで自分共々床に伏せさせた。
「チッ! 難破船に偽装した海賊船だったか」
「敵船。突っ込んできます!」
「取舵いっぱい! 避けろ!」
物見の報告を受けた船長がすぐ命令を下す。
ぐんぐんと敵船が迫ってくる。
かろうじて正面衝突は避けたが、舷側と舷側がぶつかって擦れ、船が激しく揺れた。
「ちくしょう! やりやがったな!!」
マストにしがみついて船から振り落とされるのを逃れた船長が懐から銃を抜く。
そして敵船の甲板上の人影に銃口を向けた。
『ぁ~……』
『ぅ~……』
するとそこには、青白い顔に焦点の合わない目で譫言をつぶやきながら銃を構える人の姿が見えた。
「なん……だと……」
それは恐らく人ではない。
元は人であったかもしれないが、今は違う。全く別の何かだ。
「船長、あれも枯れ尾花……」
「枯れ尾花はもういい!! 戦闘準備っ!!」
呆けている船員を怒鳴りつけると船長はゾンビのような敵船員に発砲した。
リプレイ本文
「うわぁ……映画か何かか?」
幽霊船やゾンビのような船員を見た西空 晴香(ka4087)の脳裏に故郷で見た映画の一場面が去来する。
(今頃続編とか出てんのかね?)
ふとそんな事が気になったが、今はそれどころではない。
「海賊船ではなく幽霊船、つまり雑魔の船ということだな? なるほど、西方は奥が深い」
東方生まれのユーレン(ka6859)が感心した様子で敵船に見入る。
「こっち乗り移ろうとして来はるわ。一見はんお断りと言いたいところやけど、そうも言うてられへん数やね」
琴吹 琉那(ka6082)がこちらの船に向かってくる敵船員に対して身構える。
「敵の数もですが、あの大砲が厄介そうですよ」
ヴィリー・シュトラウス(ka6706)が敵船の前後にある大砲を指差す。
「片方はあたしが何とかするよ。もう片方は……」
「私が対処します」
サクヤ・フレイヤ(ka5356)の言葉を受けて浪風吹雪(ka1016)が挙手する。
「よし、サクヤ! 浪風! 行ってくれ! こちらから援護する」
アサルトライフル「スターナーAAC」を構えたオリヒカ フォリッド(ka2712)は吹雪、サクラの順で『攻性強化』を施した。
ユーレンは『メイスファイティング』を発動させ、船に乗り移ろうとしている船員の前に立ちふさがり、バトルスキレット「フルムーン」を叩きつけた。
外れた。。
「……我はまだ駆け出し過ぎてな、メイスも2回に1回程度しか当てることができんのだ」
避けた敵船員がカトラスでユーレンを斬る。
しかしガミル・ジラク・アーマーが刃を弾いた。
他の船員が銃を撃つが、装甲がまた弾く。
「鎧のおかげで大事に至ったことはないが、早く重い武器を軽々振り回して当てるようになりたいのう」
今度は『ストライクブロウ』も使って大振り。
また外れた。
しかしスキレットに煽られて大風が巻き起こり、敵の腰が引けて進行が止まる。
「道を開ける!」
その隙を突いてヴィリーが突貫し、聖盾「コギト」で『シールドバッシュ』を放って船員を強引に押しのける。
「ちょっとそこ空けてもらおかぁ」
琉那は跳躍すると船員に『飛翔撃』で跳び蹴りを食らわせて吹っ飛ばす。
そうして開いた敵船への道を通って晴香と吹雪が敵船に乗り込む。
(初の戦場が船上……家族に良い土産話が出来たわ!)
吹雪は初の実戦で緊張していたが、脳裏に家族の事が浮かんだのは高揚もしている証拠だろう。
敵船に乗り込んだ2人に船員が迎撃に向かってくる。
「ここは任せろ」
晴香は吹雪を先に行かせると『瞬脚』で船員との間合いを一気に詰めた。
カトラスが薙ぎ払われてきたが、屈んで避ける。
そして『部位狙い』で莫邪宝剣を斬り上げ、銃を持つ腕を切断した。
そして腕ごと落下する銃を器用に掴み、銃口を船員の顎下に向けてトリガーを引く。
銃弾は頭部を貫通。船員は仰向けに倒れ、塵と化し始めた。
「銃ゲット! こっからはシューティングだ」
しかし晴香の手の中で銃が塵となって消える。
「ありゃ?」
歪虚の持ち物は大抵歪虚汚染を受けているため、持ち主が死ねば持ち物も共に消えるのである。
呆ける晴香に銃弾が飛んできた。
「危ねっ」
咄嗟に『マルチステップ』で避けると『瞬脚』で撃ってきた船員も元へ駆け、莫邪宝剣を振るった。
そうして敵の目が船に乗り移った仲間達に向いた隙に、サクヤが動き出す。
「このまま幽霊船を放っておいたら、どれくらいの被害があるか分からないし、速やかに沈黙させないといけないね」
『瞬脚』と『ランアウト』を併用して猛スピードで駆けると、甲板の端から跳躍。
海を越え、船員の頭上も越え、一気に大砲まで跳んでゆく。
大砲を操っている船員は跳躍してくるサクヤに気づいて銃を向けた。
しかしサクヤが先にウィップ「エスプランドル」を振るって銃を持つ腕を殴打。
腕が弾かれて弾丸が反れる。
サクヤは着地と同時に再び鞭を振るい、船員の頭部に巻きつけ一気に引く。
首がゴキリと鳴り、倒れた船員は塵となって海風に消えた。
「この戦闘の間だけでも使えなくすれば、あたし達の勝ちは決まる」
サクヤは確保した大砲を無力化するため、大砲周りか土台部分の甲板を壊そうと考えたが、鞭とスローイングカードで甲板を潰すのは不可能だ。
別の方法を考えていると発砲音を耳にする。
咄嗟に『瞬脚』を発動して回避。銃弾が眼前を通り過ぎた。
「とにかく大砲を死守する」
無力化は諦め、撃ってきた船員に『スローイング』を乗せたスローイングカードを投擲。眉間に突き刺さる。
しかし敵は構わず反撃。弾丸が大砲に当って火花が散る。
「もう一発」
次のカードを構えたその時、船内への出入り口の奥から船員が次々と登ってくるのが見えた。
「下から増援が来てるよ! しかもゾロゾロいっぱい!」
「任せときぃ」
サクヤの警告を聞いた琉那が駆けつけてくる。
「まとめて成仏させたるわ!」
腰を落として身構え、丹田を中心に練り上げたマテリアルを掌から一気に開放。
放たれた『青龍翔咬波』は出入口に向かって走り、船内の船員を丸々呑み込んだ。
「どやっ!」
ドヤ顔で胸を張る琉那。
「危ない!」
そんな琉那を銃で狙っている船員に気づいたサクヤはカードを投擲。
カードは手の甲に刺さり、銃の狙いが反れる。
琉那も敵に気づいて手裏剣を投げ、トドメを刺した。
「危なかったわ。おおきにぃ」
「礼はいいから後ろ見て後ろ! 中の敵まだ生きてる」
船内を見ると、船員の群れはまだ登ってこようとしていた。
「ちゃんと往生しいや!」
2発目の『青龍翔咬波』を船内に撃ち込む。
マテリアルの輝きに呑み込まれた船員は今度こそ塵となって消えてゆく。
だが、消えゆく塵の中で発砲音が鳴った。
「っ!」
琉那が咄嗟に胸の前で交差させた腕に銃弾が喰い込んだ。
更に、船内の暗がりから何かが迫り、凶刃が煌めいた。
後方宙返りをして辛くも避ける。
着地と同時に見据えた先には、カトラスと銃を手にし、つば広帽を被り、アイパッチをした船員の姿があった。
「海賊船の船長じゃねーか! 映画で見たまんまだ~」
晴香が興味深そうに船長に眺める。
「感心してる場合ちゃう。来るで」
船長が晴香に発砲。
『マルチステップ』で避けると『瞬脚』で間合いを詰めて斬りかかる。
カトラスで受け止められたが、逆側から琉那が回し蹴り。
しかし船長は肘で受け、カトラスで反撃。
琉那は足を振り上げ、脛のレガース「エダークス」で受けた。
不安定な体勢になった琉那に船長の銃口が向く。
「させるか!」
晴香が『部位狙い』で銃を持つ腕を斬り上げる。
船長は咄嗟に腕を引きながら後ろに退がって回避した。
両者の距離が開き、間隙ができる。
「2人がかりでこれか……」
「船上での戦闘経験はあちらの方が上やな」
「でも、3人がかりならどうかな?」
周囲に残っていた残敵を掃討したサクヤが合流した。
「いくよ」
サクヤが『瞬脚』と『ランアウト』で船長の背後の回り込む。
船長が目で動きを追いつつ銃を向ける。
「させへん!」
しかし撃つ前に琉那が『飛翔撃』で飛び回し蹴り。
船長はカトラスの柄で受けたが、衝撃で吹っ飛ばされる。
「その足貰った!」
そこに晴香が『瞬脚』で詰め寄り、着地の瞬間を狙って『部位狙い』で片足を斬り飛ばす。
更にサクヤが鞭で殴打し、バランスを崩した船長は甲板に倒れた。
船長は這いつくばりながらも銃を構えたが、琉那が銃底を蹴って手から跳ね飛ばす。
「もう足掻かんでえぇ」
「仲間と一緒に成仏しな」
晴香が莫邪宝剣を真一文字に振り下ろして両断。船長をあの世へと送った。
少し時は巻き戻り。
オリヒカは大砲に向かう吹雪を援護すべく、銃を持つ船員を狙撃していた。
撃たれた船員はすぐに遮蔽に身を潜めた。
(あの動き、ゾンビではないな。歪虚化した船乗りだとすれば船自体も歪虚化している可能性が……)
「船長! 敵は歪虚化している可能性もある、念のため何人か航行に支障がない程度に品物を接触場所から遠ざけさせて」
「分かった。手の空いてるもんは付いて来い」
警告を受けた船長が船室に入ってゆく。
オリヒカは遮蔽に隠れた船員が顔を覗かせた瞬間に狙撃。ヘッドショットで息の根を止めた。
一方、大砲の近くまで来た吹雪は『シャドウブリット』を発動。
黒色の塊が大砲を操る船員を打ち、衝撃で体が仰け反った。
しかし船員はすぐ体勢を立て直して銃で反撃してくる。
(倒しきれなかった!?)
避けられず、弾丸が吹雪を貫く。
「くっ!」
着弾の衝撃と痛みでよろけながらも再び『シャドウブリット』を放つ。
再度の衝撃で倒れた船員はそのまま塵となって消えた。
吹雪は血の流れ出す傷跡を押さえながら大砲に歩み寄り、扱えるかみる。
(浪風家は狩人の一族。戦場が初めてでも戦い方は知っているわ)
大砲の向きを変えながら船上の様子を伺うと、船内に続く出入口から敵の増援が現れ、ヴィリーが押し留めているのが見えた。
吹雪は大砲をその出入り口に向けて撃ち放った。
しかし砲弾は狙いを反れ、出入口脇に着弾。
元々命中率の高くない大砲を射撃能力が高いとはいえない聖導士が撃っても簡単に当てられるものではなかったのだ。
その砲撃で大砲が奪われたと敵に知れ、銃弾が吹雪に飛んでくる。
着弾の衝撃が再び吹雪を襲い、今度は立っていられず倒れた。
(治療を……いえ、先に身を隠さないと)
這うようにして大砲の遮蔽に入った直後、傷が少し癒えた。
(ヒール? 誰が……)
それは多勢に囲まれながらも仲間の様子を伺っていたユーレンだった。
「駆け出し故に微弱なヒールで申し訳ない」
「いいえ、助かりました。ありがとうございます」
吹雪は自身でも『ヒール』を使いながら礼を言い、大砲の遮蔽から敵の様子を伺う。
2人近づいてきている。
(大砲を暴発させれば一網打尽に……)
吹雪は周囲にある火薬を大砲の砲身に詰め込み始めた。
そして敵が間近まで来た直後にその場を離れ、砲身内に『ホーリーライト』を撃ち込んだ。
しかし『ホーリーライト』を衝撃を起こすだけで熱は一切発生しないため、暴発はしなかった。
その間に2人の船員が吹雪に迫る。
「行かせない!」
ヴィリーを中心に『セイクリッドフラッシュ』の光の波動が走り、2人の船員も巻き込む。
だがダメージを負わせただけで足を止める事はできなかった。
オリヒカが1人を狙撃。背中から心臓を射抜かれた船員が消滅する。
「間に合うか!」
更にもう一人に照準を合わせたが、撃つ前にカトラスが吹雪の体を斬り裂いた。
「―――!!」
体内に灼熱を流し込まれたような激痛で声にならない悲鳴が口から漏れた。
だが今度は倒れなかった。
(私は浪風家の長女、吹雪。こんな所で倒れる訳にはいかない!!)
歯を食いしばって気力を奮い立たせ『シャドウブリット』を発動。
至近距離から放たれた黒の衝撃は船員の身を塵へと変えた。
「血を、止めないと……」
吹雪は激痛と失血でふらつきながら自身に『ヒール』を施した。
増援の船員を押し留めていたヴィリーだが、不意に刀で斬りかかられた。
辛くも盾で防いだが、敵は矢継ぎ早に刀を振るってくる。
(速い! 今までの敵とは違う)
風体も和風で、刀を持つ構えからは剣術の心得が伺える。
ヴィリーが剣で反撃すると刀の反りを使って受け流された。
敵は更に身を回転させ、側頭部を狙って刀を薙ぎ払う。
ヴィリーは咄嗟にバックステップ。目の前を刃が通り過ぎる。
「動きが違う……無視できないね!」
遠目に見ていたオリヒカも強敵と判断し、ヴィリーを『攻性強化』で援護する。
「いい腕だ。この船の用心棒といったところかな?」
ヴィリーが隙を伺いつつ用心棒と対峙する。
そのため抑えられなくなった船員が甲板に上がってきた。
このままではヴィリーが囲まれる危険がある。
「聞けい!! 我が名はユーレン。まだ駆け出しであるが西方に来てからは日進月歩で成長しており、いずれは悪鬼羅刹の如き力を持つ豪傑となろう。討ち取って名を上げるなら今のうちだ。さぁ掛かってこい!!」
しかしユーレンが朗々と名乗りを上げたため、船員の何人かはそちらに向かう。
そして釣られなかった者もオリヒカが狙撃で、吹雪が『シャドウブリット』と『ホーリーライト』で撃ち倒してゆく。
「ありがたい」
仲間の援護に感謝しつつ、ヴィリーが用心棒の胴を狙って剣を薙ぎ払う。
用心棒は退がって避けたが、退がった分前に出て更に剣を振るう。
左右からの連撃で用心棒を舷側まで追い詰めた。
「もう退がれないぞ」
渾身の力で剣を薙ぎ払う。
用心棒は前に出て刀で受けた。
刀が折れ、剣の刀身が用心棒の脇の喰い込む。
だが威力を減衰されたためか両断はできなかった。
用心棒が折れた刀で顔面を突いてくる。
眼前に盾を掲げて受けた。
その直後、用心棒が目の前から消えた。
盾で防いで相手が見えなくなった一瞬の隙に死角に回り込まれたのだ。
気配は左後方にある。
防御は間に合わないと判断し、振り向きながら『シールドバッシュ』を放つ。
脇腹を斬られ、鮮血が飛び散る。
だが盾にも手応えがあり、思いっきり振り抜いて用心棒を吹っ飛ばす。
そして甲板に倒れた用心棒が起き上がる前に剣を逆手に持って振り上げた。
「もう用心棒の仕事はいい。ゆっくり休んでいいんだ……お疲れ様」
魔剣「カールスナウト」が用心棒の胸に突き立つ。
死霊を祓う剣は歪虚となった剣士の身を塵へ変えたのだった。
こうして歪虚船の船員は全て掃討された。
ユーレンは多勢を相手しながらもガミル・ジラク・アーマーのお陰でほぼ無傷だったため、自身の『ヒール』は全て仲間の治療に使った。
吹雪も『ヒール』で治療を行い、全快とはいかないが全員が問題なく動けるまでに回復する。
それから船内を捜索し、発見した火薬を使って歪虚船を爆破した。
「どうか、かの乗組員の魂が癒されますように……」
吹雪が燃え沈んで塵となった幽霊船と乗組員の冥福を祈る。
(安らかに眠れ……)
ヴィリーも隣りで名も知らぬ剣士の冥福を祈った。
「お疲れ様! せっかくだからどこか海の幸が旨いところで打ち上げしたいもんだね。そういえば船長、積荷は大丈夫だったか?」
「あぁ、お前さんに言われたとおり遠ざけたから全部無事だ」
「雑魔の船は倒せば消える。実入りもないのに出費だけかかるとは困ったものだ」
オリヒカと船長の会話を聞いていたユーレンが意味ありげに言う。
「そういうわけでだな、少しばかり前祝の酒と肴を所望しても罰は当たらんと思うのだが……」
「ははっ、恩人の頼みでは断れんな。分かった。少しなら食ってもいいぞ」
船長の好意により、ハンター達は港に着く前にささやかならぬ戦勝祝で胃袋を満たしたのだった。
幽霊船やゾンビのような船員を見た西空 晴香(ka4087)の脳裏に故郷で見た映画の一場面が去来する。
(今頃続編とか出てんのかね?)
ふとそんな事が気になったが、今はそれどころではない。
「海賊船ではなく幽霊船、つまり雑魔の船ということだな? なるほど、西方は奥が深い」
東方生まれのユーレン(ka6859)が感心した様子で敵船に見入る。
「こっち乗り移ろうとして来はるわ。一見はんお断りと言いたいところやけど、そうも言うてられへん数やね」
琴吹 琉那(ka6082)がこちらの船に向かってくる敵船員に対して身構える。
「敵の数もですが、あの大砲が厄介そうですよ」
ヴィリー・シュトラウス(ka6706)が敵船の前後にある大砲を指差す。
「片方はあたしが何とかするよ。もう片方は……」
「私が対処します」
サクヤ・フレイヤ(ka5356)の言葉を受けて浪風吹雪(ka1016)が挙手する。
「よし、サクヤ! 浪風! 行ってくれ! こちらから援護する」
アサルトライフル「スターナーAAC」を構えたオリヒカ フォリッド(ka2712)は吹雪、サクラの順で『攻性強化』を施した。
ユーレンは『メイスファイティング』を発動させ、船に乗り移ろうとしている船員の前に立ちふさがり、バトルスキレット「フルムーン」を叩きつけた。
外れた。。
「……我はまだ駆け出し過ぎてな、メイスも2回に1回程度しか当てることができんのだ」
避けた敵船員がカトラスでユーレンを斬る。
しかしガミル・ジラク・アーマーが刃を弾いた。
他の船員が銃を撃つが、装甲がまた弾く。
「鎧のおかげで大事に至ったことはないが、早く重い武器を軽々振り回して当てるようになりたいのう」
今度は『ストライクブロウ』も使って大振り。
また外れた。
しかしスキレットに煽られて大風が巻き起こり、敵の腰が引けて進行が止まる。
「道を開ける!」
その隙を突いてヴィリーが突貫し、聖盾「コギト」で『シールドバッシュ』を放って船員を強引に押しのける。
「ちょっとそこ空けてもらおかぁ」
琉那は跳躍すると船員に『飛翔撃』で跳び蹴りを食らわせて吹っ飛ばす。
そうして開いた敵船への道を通って晴香と吹雪が敵船に乗り込む。
(初の戦場が船上……家族に良い土産話が出来たわ!)
吹雪は初の実戦で緊張していたが、脳裏に家族の事が浮かんだのは高揚もしている証拠だろう。
敵船に乗り込んだ2人に船員が迎撃に向かってくる。
「ここは任せろ」
晴香は吹雪を先に行かせると『瞬脚』で船員との間合いを一気に詰めた。
カトラスが薙ぎ払われてきたが、屈んで避ける。
そして『部位狙い』で莫邪宝剣を斬り上げ、銃を持つ腕を切断した。
そして腕ごと落下する銃を器用に掴み、銃口を船員の顎下に向けてトリガーを引く。
銃弾は頭部を貫通。船員は仰向けに倒れ、塵と化し始めた。
「銃ゲット! こっからはシューティングだ」
しかし晴香の手の中で銃が塵となって消える。
「ありゃ?」
歪虚の持ち物は大抵歪虚汚染を受けているため、持ち主が死ねば持ち物も共に消えるのである。
呆ける晴香に銃弾が飛んできた。
「危ねっ」
咄嗟に『マルチステップ』で避けると『瞬脚』で撃ってきた船員も元へ駆け、莫邪宝剣を振るった。
そうして敵の目が船に乗り移った仲間達に向いた隙に、サクヤが動き出す。
「このまま幽霊船を放っておいたら、どれくらいの被害があるか分からないし、速やかに沈黙させないといけないね」
『瞬脚』と『ランアウト』を併用して猛スピードで駆けると、甲板の端から跳躍。
海を越え、船員の頭上も越え、一気に大砲まで跳んでゆく。
大砲を操っている船員は跳躍してくるサクヤに気づいて銃を向けた。
しかしサクヤが先にウィップ「エスプランドル」を振るって銃を持つ腕を殴打。
腕が弾かれて弾丸が反れる。
サクヤは着地と同時に再び鞭を振るい、船員の頭部に巻きつけ一気に引く。
首がゴキリと鳴り、倒れた船員は塵となって海風に消えた。
「この戦闘の間だけでも使えなくすれば、あたし達の勝ちは決まる」
サクヤは確保した大砲を無力化するため、大砲周りか土台部分の甲板を壊そうと考えたが、鞭とスローイングカードで甲板を潰すのは不可能だ。
別の方法を考えていると発砲音を耳にする。
咄嗟に『瞬脚』を発動して回避。銃弾が眼前を通り過ぎた。
「とにかく大砲を死守する」
無力化は諦め、撃ってきた船員に『スローイング』を乗せたスローイングカードを投擲。眉間に突き刺さる。
しかし敵は構わず反撃。弾丸が大砲に当って火花が散る。
「もう一発」
次のカードを構えたその時、船内への出入り口の奥から船員が次々と登ってくるのが見えた。
「下から増援が来てるよ! しかもゾロゾロいっぱい!」
「任せときぃ」
サクヤの警告を聞いた琉那が駆けつけてくる。
「まとめて成仏させたるわ!」
腰を落として身構え、丹田を中心に練り上げたマテリアルを掌から一気に開放。
放たれた『青龍翔咬波』は出入口に向かって走り、船内の船員を丸々呑み込んだ。
「どやっ!」
ドヤ顔で胸を張る琉那。
「危ない!」
そんな琉那を銃で狙っている船員に気づいたサクヤはカードを投擲。
カードは手の甲に刺さり、銃の狙いが反れる。
琉那も敵に気づいて手裏剣を投げ、トドメを刺した。
「危なかったわ。おおきにぃ」
「礼はいいから後ろ見て後ろ! 中の敵まだ生きてる」
船内を見ると、船員の群れはまだ登ってこようとしていた。
「ちゃんと往生しいや!」
2発目の『青龍翔咬波』を船内に撃ち込む。
マテリアルの輝きに呑み込まれた船員は今度こそ塵となって消えてゆく。
だが、消えゆく塵の中で発砲音が鳴った。
「っ!」
琉那が咄嗟に胸の前で交差させた腕に銃弾が喰い込んだ。
更に、船内の暗がりから何かが迫り、凶刃が煌めいた。
後方宙返りをして辛くも避ける。
着地と同時に見据えた先には、カトラスと銃を手にし、つば広帽を被り、アイパッチをした船員の姿があった。
「海賊船の船長じゃねーか! 映画で見たまんまだ~」
晴香が興味深そうに船長に眺める。
「感心してる場合ちゃう。来るで」
船長が晴香に発砲。
『マルチステップ』で避けると『瞬脚』で間合いを詰めて斬りかかる。
カトラスで受け止められたが、逆側から琉那が回し蹴り。
しかし船長は肘で受け、カトラスで反撃。
琉那は足を振り上げ、脛のレガース「エダークス」で受けた。
不安定な体勢になった琉那に船長の銃口が向く。
「させるか!」
晴香が『部位狙い』で銃を持つ腕を斬り上げる。
船長は咄嗟に腕を引きながら後ろに退がって回避した。
両者の距離が開き、間隙ができる。
「2人がかりでこれか……」
「船上での戦闘経験はあちらの方が上やな」
「でも、3人がかりならどうかな?」
周囲に残っていた残敵を掃討したサクヤが合流した。
「いくよ」
サクヤが『瞬脚』と『ランアウト』で船長の背後の回り込む。
船長が目で動きを追いつつ銃を向ける。
「させへん!」
しかし撃つ前に琉那が『飛翔撃』で飛び回し蹴り。
船長はカトラスの柄で受けたが、衝撃で吹っ飛ばされる。
「その足貰った!」
そこに晴香が『瞬脚』で詰め寄り、着地の瞬間を狙って『部位狙い』で片足を斬り飛ばす。
更にサクヤが鞭で殴打し、バランスを崩した船長は甲板に倒れた。
船長は這いつくばりながらも銃を構えたが、琉那が銃底を蹴って手から跳ね飛ばす。
「もう足掻かんでえぇ」
「仲間と一緒に成仏しな」
晴香が莫邪宝剣を真一文字に振り下ろして両断。船長をあの世へと送った。
少し時は巻き戻り。
オリヒカは大砲に向かう吹雪を援護すべく、銃を持つ船員を狙撃していた。
撃たれた船員はすぐに遮蔽に身を潜めた。
(あの動き、ゾンビではないな。歪虚化した船乗りだとすれば船自体も歪虚化している可能性が……)
「船長! 敵は歪虚化している可能性もある、念のため何人か航行に支障がない程度に品物を接触場所から遠ざけさせて」
「分かった。手の空いてるもんは付いて来い」
警告を受けた船長が船室に入ってゆく。
オリヒカは遮蔽に隠れた船員が顔を覗かせた瞬間に狙撃。ヘッドショットで息の根を止めた。
一方、大砲の近くまで来た吹雪は『シャドウブリット』を発動。
黒色の塊が大砲を操る船員を打ち、衝撃で体が仰け反った。
しかし船員はすぐ体勢を立て直して銃で反撃してくる。
(倒しきれなかった!?)
避けられず、弾丸が吹雪を貫く。
「くっ!」
着弾の衝撃と痛みでよろけながらも再び『シャドウブリット』を放つ。
再度の衝撃で倒れた船員はそのまま塵となって消えた。
吹雪は血の流れ出す傷跡を押さえながら大砲に歩み寄り、扱えるかみる。
(浪風家は狩人の一族。戦場が初めてでも戦い方は知っているわ)
大砲の向きを変えながら船上の様子を伺うと、船内に続く出入口から敵の増援が現れ、ヴィリーが押し留めているのが見えた。
吹雪は大砲をその出入り口に向けて撃ち放った。
しかし砲弾は狙いを反れ、出入口脇に着弾。
元々命中率の高くない大砲を射撃能力が高いとはいえない聖導士が撃っても簡単に当てられるものではなかったのだ。
その砲撃で大砲が奪われたと敵に知れ、銃弾が吹雪に飛んでくる。
着弾の衝撃が再び吹雪を襲い、今度は立っていられず倒れた。
(治療を……いえ、先に身を隠さないと)
這うようにして大砲の遮蔽に入った直後、傷が少し癒えた。
(ヒール? 誰が……)
それは多勢に囲まれながらも仲間の様子を伺っていたユーレンだった。
「駆け出し故に微弱なヒールで申し訳ない」
「いいえ、助かりました。ありがとうございます」
吹雪は自身でも『ヒール』を使いながら礼を言い、大砲の遮蔽から敵の様子を伺う。
2人近づいてきている。
(大砲を暴発させれば一網打尽に……)
吹雪は周囲にある火薬を大砲の砲身に詰め込み始めた。
そして敵が間近まで来た直後にその場を離れ、砲身内に『ホーリーライト』を撃ち込んだ。
しかし『ホーリーライト』を衝撃を起こすだけで熱は一切発生しないため、暴発はしなかった。
その間に2人の船員が吹雪に迫る。
「行かせない!」
ヴィリーを中心に『セイクリッドフラッシュ』の光の波動が走り、2人の船員も巻き込む。
だがダメージを負わせただけで足を止める事はできなかった。
オリヒカが1人を狙撃。背中から心臓を射抜かれた船員が消滅する。
「間に合うか!」
更にもう一人に照準を合わせたが、撃つ前にカトラスが吹雪の体を斬り裂いた。
「―――!!」
体内に灼熱を流し込まれたような激痛で声にならない悲鳴が口から漏れた。
だが今度は倒れなかった。
(私は浪風家の長女、吹雪。こんな所で倒れる訳にはいかない!!)
歯を食いしばって気力を奮い立たせ『シャドウブリット』を発動。
至近距離から放たれた黒の衝撃は船員の身を塵へと変えた。
「血を、止めないと……」
吹雪は激痛と失血でふらつきながら自身に『ヒール』を施した。
増援の船員を押し留めていたヴィリーだが、不意に刀で斬りかかられた。
辛くも盾で防いだが、敵は矢継ぎ早に刀を振るってくる。
(速い! 今までの敵とは違う)
風体も和風で、刀を持つ構えからは剣術の心得が伺える。
ヴィリーが剣で反撃すると刀の反りを使って受け流された。
敵は更に身を回転させ、側頭部を狙って刀を薙ぎ払う。
ヴィリーは咄嗟にバックステップ。目の前を刃が通り過ぎる。
「動きが違う……無視できないね!」
遠目に見ていたオリヒカも強敵と判断し、ヴィリーを『攻性強化』で援護する。
「いい腕だ。この船の用心棒といったところかな?」
ヴィリーが隙を伺いつつ用心棒と対峙する。
そのため抑えられなくなった船員が甲板に上がってきた。
このままではヴィリーが囲まれる危険がある。
「聞けい!! 我が名はユーレン。まだ駆け出しであるが西方に来てからは日進月歩で成長しており、いずれは悪鬼羅刹の如き力を持つ豪傑となろう。討ち取って名を上げるなら今のうちだ。さぁ掛かってこい!!」
しかしユーレンが朗々と名乗りを上げたため、船員の何人かはそちらに向かう。
そして釣られなかった者もオリヒカが狙撃で、吹雪が『シャドウブリット』と『ホーリーライト』で撃ち倒してゆく。
「ありがたい」
仲間の援護に感謝しつつ、ヴィリーが用心棒の胴を狙って剣を薙ぎ払う。
用心棒は退がって避けたが、退がった分前に出て更に剣を振るう。
左右からの連撃で用心棒を舷側まで追い詰めた。
「もう退がれないぞ」
渾身の力で剣を薙ぎ払う。
用心棒は前に出て刀で受けた。
刀が折れ、剣の刀身が用心棒の脇の喰い込む。
だが威力を減衰されたためか両断はできなかった。
用心棒が折れた刀で顔面を突いてくる。
眼前に盾を掲げて受けた。
その直後、用心棒が目の前から消えた。
盾で防いで相手が見えなくなった一瞬の隙に死角に回り込まれたのだ。
気配は左後方にある。
防御は間に合わないと判断し、振り向きながら『シールドバッシュ』を放つ。
脇腹を斬られ、鮮血が飛び散る。
だが盾にも手応えがあり、思いっきり振り抜いて用心棒を吹っ飛ばす。
そして甲板に倒れた用心棒が起き上がる前に剣を逆手に持って振り上げた。
「もう用心棒の仕事はいい。ゆっくり休んでいいんだ……お疲れ様」
魔剣「カールスナウト」が用心棒の胸に突き立つ。
死霊を祓う剣は歪虚となった剣士の身を塵へ変えたのだった。
こうして歪虚船の船員は全て掃討された。
ユーレンは多勢を相手しながらもガミル・ジラク・アーマーのお陰でほぼ無傷だったため、自身の『ヒール』は全て仲間の治療に使った。
吹雪も『ヒール』で治療を行い、全快とはいかないが全員が問題なく動けるまでに回復する。
それから船内を捜索し、発見した火薬を使って歪虚船を爆破した。
「どうか、かの乗組員の魂が癒されますように……」
吹雪が燃え沈んで塵となった幽霊船と乗組員の冥福を祈る。
(安らかに眠れ……)
ヴィリーも隣りで名も知らぬ剣士の冥福を祈った。
「お疲れ様! せっかくだからどこか海の幸が旨いところで打ち上げしたいもんだね。そういえば船長、積荷は大丈夫だったか?」
「あぁ、お前さんに言われたとおり遠ざけたから全部無事だ」
「雑魔の船は倒せば消える。実入りもないのに出費だけかかるとは困ったものだ」
オリヒカと船長の会話を聞いていたユーレンが意味ありげに言う。
「そういうわけでだな、少しばかり前祝の酒と肴を所望しても罰は当たらんと思うのだが……」
「ははっ、恩人の頼みでは断れんな。分かった。少しなら食ってもいいぞ」
船長の好意により、ハンター達は港に着く前にささやかならぬ戦勝祝で胃袋を満たしたのだった。
依頼結果
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相談卓 オリヒカ フォリッド(ka2712) 人間(リアルブルー)|24才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/06/14 01:17:21 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/12 11:20:36 |