ゲスト
(ka0000)
【交酒】魔術師の弟子、夢の土地への足跡
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/20 07:30
- 完成日
- 2017/06/25 21:21
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国の中央寄り北東寄りの小さな町でルゥルは声にならない歓喜の声をあげていた。
その喜びを告げるには、師匠がいなかった。
とりあえず、隣の教会に走っていく。その後ろを置いて行かれまいとパルムのポルムがついていく。フェレットのフレオはクッションの下に入って、寝床の確保を行っていた。
「まああああああああああああああああああああくうううううううううううううううううさあああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんんんんんん」
ルゥルは隣の敷地をまたぐ前から声をあげた。
呼ばれたマーク司祭は教会の裏手にある台所から出てきた。
「どうしたんですか?」
のんびりと声をかけたところに、ルゥルはこれまでにない力強さでマークに激突した。
「ぐっ、ちょっと、ルゥルちゃん……どうしたんですか?」
視線の先でポルムが魔術師の家に住み着いた柴犬にさらわれているのが見えた。
「……ルゥルちゃん、ポルムが柴犬にもてあそばれていますよ!」
「聞いてください、大変なんですうう!」
「いや、ちょ、待って?」
とりあえず、マークはルゥルを抱えたまま、柴犬を呼び止め、ポルムを回収したのだった。
ポルムをルゥルの頭に載せ、一息ついたところでルゥルがしゃべり出す。
「リアルブルーに行ってくるですううう!」
ハンターオフィスからもらったらしい手紙を手にしゃべるが、要領を得ないため手紙を読む。
リアルブルーに行ってみたいというルゥルは依頼を見ていたらしい。リアルブルーでは歪虚との戦いが多く、まだこちらから行けることは限られているという状況だった。
戦勝記念の宴があって、どさくさ紛れに行けそうだということらしい。
戦いがひと段落したため、ハンターの拠点がある秋葉原なら行ってもいいという話だった。
「行きたいです!」
「駄目です」
「ルゥルは止められても行くんですううううううう」
歓喜から絶望に落ちたルゥルはひっくり返って泣き始めた。ポルムも地面に落ちて、一緒の動作を行っていた。
マークは頭を抱えるしかなかった。
●結局
隣の町のハンターズソサエティの支部に行って、マーク司祭は依頼を出した。
職員のロビン・ドルトスは笑顔が引きつる。ほぼ丸投げだと彼は気づいたからだ。
「それでハンターに……依頼ですか、わかりました。昼食を食べて帰ってくるという日帰りコース」
記入、ルゥルのお守り。人数はいらないっていえばいらないが、せっかくなら大人数でわいわいと食べ放題は面白いかもしれない。報酬無し。
費用の捻出は……別途考える。
「飲食店の予約はこちらから経由して頼んでおきますね……」
「頼みます」
「いえいえ。リアルブルーに行ってみたいと言ってましたから、念願叶うわけですね」
ロビンの言葉を聞きつつ。マークは心配そうだ。本当はついていきたいのだろうが、マーク自身は自由が利きにくい。エクラ教会の司祭が行っていいのか否か、そこから確認していかないとならない。
「まあ、心配なのはわかりますよ……こちらと常識が異なるところもあるのでそこは周知ですね。どこが違うかは……予約取れたという連絡とともに渡しますよ。私も詳しくは知らないので」
「分かりました、よろしくお願いします」
マークは頭を深々下げて帰路につく。
ロビンはそれを見送って、早速仕事に取り掛かる。
後日、日程が決まったという手紙がソサエティから来る。注意事項を見ながら、基本問題ないがルゥルには非常に大きな問題を発見した。
その手紙自体はマークがルゥルに渡す。
ルゥルは深刻そうな表情をしてポルムを見た。
「ポルム、置いていくです」
「きゅうううううううううううううう」
イヤイヤしながら、ポルムはルゥルの手にしがみつく。
ルゥルはそれをそっと包み込むようにして抱き、頬ずりをする。
「ルゥルはポルムが大好きです。いつでもどこでも一緒です」
「きゅうう」
ウルウルした目でポルムはルゥルを見る。「僕を置いて独りで楽しまないよね」と彼としては言っているつもり。
「でも、こればかりは譲れません!」
「きゅうううううううううう」
「リアルブルーに行ってみたいのは第一優先ですっ!」
「きゅうううううううううう」
今生の別れごっこは終了したのだった。
●当日
ルゥルは鼻歌交じりに準備をする。
「フェレットはリアルブルーにもいるんですよね……」
なら連れて行ってもいいのか?
「でも飲食店に連れて行っちゃいけないのです」
フレオは寂しそうにしているが、檻に入れると「ええっ!?」という顔でカギ閉めるのを見届けた後、ご飯を食べ始め通常に戻る。マイペースなペット。
「ポルム、お留守番ですよ?」
テーブルの上で何かもそもそ食べているポルムを発見する。ルゥルのほうを向きもしない。
ルゥルは寂しくなる。ポルムに嫌われたのかもしれない。でも、遊びに行きたい。じわっと涙がたまる。
「あ、ハンカチを忘れました」
ちょっと大きめのキノコ柄のポシェットをテーブルに置いてルゥルは部屋に戻った。
「きゅ」
ポルムは目を輝かせ、ポシェットに入り込んだ。ハンカチを入れるところが開いていれば、きっとルゥルは確認しないはずだ。ルゥルはすでに気もそぞろ、しめしめ。
リアルブルーを見たい、とポルムはワクワクする。
「あれ? ポルム?」
ルゥルはキョトンとしてフレオを見る。「食事中で知りませんよ」という雰囲気だとルゥルは感じて、ふてくされたポルムが見つからずしょんぼりする。
「……ポルム、お土産買ってこられるでしたら、買ってくるですよ!」
部屋のどこかにいると信じて、ルゥルは大きな声で告げた。
「みぎゃ」
涙を袖で拭いて、家を出た。
待ち合わせ場所のリゼリオのハンターオフィスまで向かうのだった。
その喜びを告げるには、師匠がいなかった。
とりあえず、隣の教会に走っていく。その後ろを置いて行かれまいとパルムのポルムがついていく。フェレットのフレオはクッションの下に入って、寝床の確保を行っていた。
「まああああああああああああああああああああくうううううううううううううううううさあああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんんんんんん」
ルゥルは隣の敷地をまたぐ前から声をあげた。
呼ばれたマーク司祭は教会の裏手にある台所から出てきた。
「どうしたんですか?」
のんびりと声をかけたところに、ルゥルはこれまでにない力強さでマークに激突した。
「ぐっ、ちょっと、ルゥルちゃん……どうしたんですか?」
視線の先でポルムが魔術師の家に住み着いた柴犬にさらわれているのが見えた。
「……ルゥルちゃん、ポルムが柴犬にもてあそばれていますよ!」
「聞いてください、大変なんですうう!」
「いや、ちょ、待って?」
とりあえず、マークはルゥルを抱えたまま、柴犬を呼び止め、ポルムを回収したのだった。
ポルムをルゥルの頭に載せ、一息ついたところでルゥルがしゃべり出す。
「リアルブルーに行ってくるですううう!」
ハンターオフィスからもらったらしい手紙を手にしゃべるが、要領を得ないため手紙を読む。
リアルブルーに行ってみたいというルゥルは依頼を見ていたらしい。リアルブルーでは歪虚との戦いが多く、まだこちらから行けることは限られているという状況だった。
戦勝記念の宴があって、どさくさ紛れに行けそうだということらしい。
戦いがひと段落したため、ハンターの拠点がある秋葉原なら行ってもいいという話だった。
「行きたいです!」
「駄目です」
「ルゥルは止められても行くんですううううううう」
歓喜から絶望に落ちたルゥルはひっくり返って泣き始めた。ポルムも地面に落ちて、一緒の動作を行っていた。
マークは頭を抱えるしかなかった。
●結局
隣の町のハンターズソサエティの支部に行って、マーク司祭は依頼を出した。
職員のロビン・ドルトスは笑顔が引きつる。ほぼ丸投げだと彼は気づいたからだ。
「それでハンターに……依頼ですか、わかりました。昼食を食べて帰ってくるという日帰りコース」
記入、ルゥルのお守り。人数はいらないっていえばいらないが、せっかくなら大人数でわいわいと食べ放題は面白いかもしれない。報酬無し。
費用の捻出は……別途考える。
「飲食店の予約はこちらから経由して頼んでおきますね……」
「頼みます」
「いえいえ。リアルブルーに行ってみたいと言ってましたから、念願叶うわけですね」
ロビンの言葉を聞きつつ。マークは心配そうだ。本当はついていきたいのだろうが、マーク自身は自由が利きにくい。エクラ教会の司祭が行っていいのか否か、そこから確認していかないとならない。
「まあ、心配なのはわかりますよ……こちらと常識が異なるところもあるのでそこは周知ですね。どこが違うかは……予約取れたという連絡とともに渡しますよ。私も詳しくは知らないので」
「分かりました、よろしくお願いします」
マークは頭を深々下げて帰路につく。
ロビンはそれを見送って、早速仕事に取り掛かる。
後日、日程が決まったという手紙がソサエティから来る。注意事項を見ながら、基本問題ないがルゥルには非常に大きな問題を発見した。
その手紙自体はマークがルゥルに渡す。
ルゥルは深刻そうな表情をしてポルムを見た。
「ポルム、置いていくです」
「きゅうううううううううううううう」
イヤイヤしながら、ポルムはルゥルの手にしがみつく。
ルゥルはそれをそっと包み込むようにして抱き、頬ずりをする。
「ルゥルはポルムが大好きです。いつでもどこでも一緒です」
「きゅうう」
ウルウルした目でポルムはルゥルを見る。「僕を置いて独りで楽しまないよね」と彼としては言っているつもり。
「でも、こればかりは譲れません!」
「きゅうううううううううう」
「リアルブルーに行ってみたいのは第一優先ですっ!」
「きゅうううううううううう」
今生の別れごっこは終了したのだった。
●当日
ルゥルは鼻歌交じりに準備をする。
「フェレットはリアルブルーにもいるんですよね……」
なら連れて行ってもいいのか?
「でも飲食店に連れて行っちゃいけないのです」
フレオは寂しそうにしているが、檻に入れると「ええっ!?」という顔でカギ閉めるのを見届けた後、ご飯を食べ始め通常に戻る。マイペースなペット。
「ポルム、お留守番ですよ?」
テーブルの上で何かもそもそ食べているポルムを発見する。ルゥルのほうを向きもしない。
ルゥルは寂しくなる。ポルムに嫌われたのかもしれない。でも、遊びに行きたい。じわっと涙がたまる。
「あ、ハンカチを忘れました」
ちょっと大きめのキノコ柄のポシェットをテーブルに置いてルゥルは部屋に戻った。
「きゅ」
ポルムは目を輝かせ、ポシェットに入り込んだ。ハンカチを入れるところが開いていれば、きっとルゥルは確認しないはずだ。ルゥルはすでに気もそぞろ、しめしめ。
リアルブルーを見たい、とポルムはワクワクする。
「あれ? ポルム?」
ルゥルはキョトンとしてフレオを見る。「食事中で知りませんよ」という雰囲気だとルゥルは感じて、ふてくされたポルムが見つからずしょんぼりする。
「……ポルム、お土産買ってこられるでしたら、買ってくるですよ!」
部屋のどこかにいると信じて、ルゥルは大きな声で告げた。
「みぎゃ」
涙を袖で拭いて、家を出た。
待ち合わせ場所のリゼリオのハンターオフィスまで向かうのだった。
リプレイ本文
●疑問
ステラ・レッドキャップ(ka5434)は集合場所にあった鏡の前で、頭や普段武器を持っているところに手をやる。
「……変じゃないか?」
武器防具を置いた上に、リアルブルーぽい格好、高級ホテルだとカジュアルすぎるのか等々悩ましい。
横でルゥル(kz0210)も一緒に考え始める。
ステラ・フォーク(ka0808)と仙道・宙(ka2134)が集合場所に来た。
「今回はよろしくお願いしますわね。リアルブルー楽しみですわね♪」
フォークはにこやかに挨拶をする。ルゥルのことも注意するが、何より最愛の兄とのデート風な状況が待っているというのが一番大きい。
「よろしくお願いします。二人とも十分問題ない格好ですよ」
宙はレッドキャップとルゥルに言った。
エルバッハ・リオン(ka2434)が入ってくる。目立つ武器や防具はつけていないが、用心のために魔法を使えるシェルコンパクトは持ってきていた。今回の行動に必要そうなルールや法律は調べておいた。
「こんにちは。今日はよろしくお願いしますね」
ルゥルにあいさつをし、同道者にもお辞儀をする。
ヴァージル・シャーマン(ka6585)とニーナ・フォーレルトゥン(ka6657)が手に冊子を持ってやってきて挨拶をする。
「いいか、ルゥル。楽しみなのは十分わかる。俺も楽しみだ。だが、お前さんは前例があるんだからちゃんと注意するんだぞ?」
ヴァージルは真剣に注意を促す。
「それはそうと、これを渡さないといけないです。ヴァージルと作りました」
ニーナはきれいに束ねられた『旅のしおり』を渡した。リアルブルーでの注意事項、行先のホテルでどうするのがいいかなど注意がかみ砕かれある程簡単に、適度にイラスト入りで書かれていた。
「あ、ありがとうございますです」
ルゥルはポシェットにしまった。
「……読まないのか……」
「……読んでくださいね……」
ヴァージルとニーナは寂しいと全身でルゥルに示した。
マリィア・バルデス(ka5848)は集合時間ぎりぎりに駆け込んできた。出かける直前に、武器防具、特にクリムゾンウェスト由来の魔導銃など許されるわけがないと着替えたのだった。
「……落ち着かない……。ルゥル、何を読んでいるの」
「旅のしおりです」
数人で固まって読み込んでいた。
職員がやって来て念のため、一行の外見チェック。フォークのアリスとパルムを預かる。
その間にマリィアはルゥルに問う。
「ホテルだと介助犬くらいしか持ち込めないのよ。大丈夫だと思うけど、ちょっと確認させてね?」
ルゥルはコクンとうなずくとポシェットを広げる。
覗いたが特に変な物はない。
「……大丈夫なのよね」
なぜか違和感が残る。
エルバッハとルゥルは飾りやヘアバンドで耳を隠した。
さあ、出発。
●迷子紐は必要か
秋葉原のオフィスを出て楽しみと緊張なのか、いきなり行動が停止するメンバーもいた。
ルゥルは叫びそうに身を震わせ周囲を見ている。
エルバッハは特に感慨もないという雰囲気のまま目を配る。
レッドキャップは感慨深げに愛用の銃を持っていないが手を添えた。愛用の銃はリアルブルー製である。
ヴァージルは目を見開き、焼き付けるように凝視している。
ニーナはヴァージルの服をつかむ、何かわからないが危険を察した。
「さあ、まず、迷子紐買いに行くわよ」
マリィアの宣言にルゥルの顔が強張る。
「なぜですか! ルゥルは迷子になりません!」
先日、リゼリオで盛大に迷子になっていたのを知っている人間は「なる」と異口同音に言う。
「こ、こんなところでルゥルの人格が否定されるとは思ってもみませんでした」
「……大事になっていますね……」
エルバッハはしゃがんで、その場で崩れたルゥルを立たせようとする。
「でもまあ、本人だって反省しているんなら、首ねっこでもつかんでればよくねーか?」
「それは一理あるかもしれませんね。それも含めて、大人がついているのですから」
レッドキャップと宙の援護にルゥルは激しくうなずく。
「そうですわ。こうやってくっついてもらえばいいかしら?」
フォークが兄である宙の腕を両腕で絡めとる。
「それはそうね。ヴァージルもどこかに行っちゃいそうだし」
ぼそりニーナは呟き、なんとなくつかんだヴァージルの服をぎゅっと握った。
「伸びる」
「伸びない! この素材なら」
「固い素材でも伸びる。伸びるというより変形か」
ヴァージルの抗議は受け入れられなかった。この程度でけんかすることもないし、早く移動してリアルブルーを見たいというのもある。
「まあそれはそうよね……。ほら、ルゥル、手をつなぐわよ」
マリィアは手のひらを見せる。
「……いざとなったときに、手がつながっていたら、お姉さんは護衛ではありません!」
ルゥルは一丁前に告げるとズボンをつかんだのだった。
「さあ行きますわよ。リアルブルーに帰るのは久しぶり……といいましても小さい頃でしたし、秋葉原は初めてですわね」
フォークは大好きな兄を引っ張りつつ、初めての街への好奇心もあふれていた。
四角い建物が並ぶ道を歩くと、人と車が行きかう大通りに出た。
「魔導トラックで見慣れているが……いろんな種類あるな」
「そうですね……ああ、馬がいません」
「ああっ、違和感それか! 自転車やバイクはいる」
レッドキャップはエルバッハの指摘に手をたたいた。
「で、あの赤や緑のは?」
レッドキャップは指摘しつつ、ルゥルをちらちら見る。マリィアの手がルゥルに伸びている。他のハンターもじわじわと包囲している。
「信号機です。人が歩く方はこちら、車側はあちらです」
宙が説明する。指さす方向を初リアルブルーのメンバーが見る。
「今私たちはこの道を渡ってはいけない、ということです。ルゥル、分かったかな?」
問いかけられてルゥルは「はい」といい返事をした。
「やっぱ現地で実物見るって勉強になるな……」
「駄目だからね、集団行動乱したら」
感心してヴァージルが信号機や看板など目を走らせるのを、ニーナが引き留める。
「さあ、渡りましょう」
フォークが宙の腕をもって進む。
「横断歩道を渡るときはね、手をあげるのよ」
マリィアの説明にルゥルは開いている手をあげた。
あと少しで予約してあるホテルである。
マリィアは違和感が何かわかった。
ルゥルのポシェットは膨れている。それなのに、中にはハンカチとちり紙と身分証明書など最低限のものしかなかった。
「ルゥル、もう一回ポシェットいいかしら」
「どうしてですか!」
「そのポシェット、穴開いているわ」
マリィアの指摘に、足を止める一行。
ルゥルはポシェットを開ける。内側の布のポケットに穴を発見し、手を突っ込んだ。
「みぎゃ、ポルムですううう」
「ルゥル、おもちゃはしまっておかないと!」
「おもちゃ屋でぬいぐるみ買おうかしら!」
宙とマリィアが慌ててルゥルの手をポシェットに戻す。
相談の結果、パルムのポルムを追い返すわけにもいかず、おとなしくすることを条件にポシェットに戻した。
●もしゅもしゅ
高級ホテルと言ってもビュッフェの客の服装は様々だ。
「みぎゃああああ」
「おお」
「いろいろな匂いがしますね」
ルゥルとレッドキャップ、エルバッハの声が重なる。
「ほら、こっちの席よ」
マリィアが係の人について行く。料理があるテーブルからは遠いが、ポルム問題があるため幸いだ。
「はぐれないように行くんだ……なんだ、あの機械は……」
「ヴァージル、あとにしよう。あたしたちがはぐれてどうするの」
普段であればニーナにとって近所のお兄さん的なヴァージルであるが、今日に限って弟分がいるような気分になる。ルゥルのことも気をつけないとならないし、年上の頼りになるはずの存在が今回は危険だとニーナは認識している。
(何か進展とか言っている場合じゃない、油断できないわ! ヴァージルも食べることも楽しんでほしい! ルゥルちゃんは全部楽しむ気満々だからそこはいい!)
ニーナがあーだこーだと考えている間に、席についたルゥルは料理のテーブルの方ばかり見ている。
いつ走り出すか……そんな感じがするのは気のせいか。
「お兄様、楽しみだわ……ルゥルさん、走ってはいけませんよ?」
フォークは鋭く指摘をした。
「順番に取りに行ったほうがいいですね」
エルバッハはソファーに置かれたルゥルのポシェットを見る。ポシェットの陰にはポルムがスタンバっている。
「じゃあ、ルゥル、行くか?」
「はいですうう」
「走らないの!」
マリィアから注意が飛び、レッドキャップがルゥルの服の首を掴んだ。
「俺も早速……と行きたいが」
「順番ですから、先に行って来てもいいですよ」
宙は見た、ヴァージルが器具に目が行っていることに。
「なら、お言葉に甘えて」
「じゃ、行ってきます」
ヴァージルとニーナはテーブルに残った三人に頭を下げてから、料理の方に向かった。
「きゅう」
「……静かになさい」
「きゅ」
「ごはんはこっそりあげます。我慢なさい」
「きゅうう」
どうやら外を見たいと訴えているようだとエルバッハは察する。ぬいぐるみと言ってごまかすにしてもルゥルもいないし危険だ。
「静かにしないと、キノコ炒めにしますよ」
説得後もごねる為、エルバッハはとどめを刺した。
「……エルバッハさん……殺気が……」
フォークが思わず、首を横に振った。店中の空気が凍り付いた感じがしたのだ。
「すみません。聞き分けのない何かを叱りました」
三人はうなずきながら、視線がポシェットに向く。今はおとなしい。
野菜の盛り合わせ、煮物、辛そうな炒め物、酢漬け、スープ類、肉料理、魚料理……。
カウンター越しではステーキを焼いている。これは焼きあがるとこの場で切り分けてくれる特別メニューらしい。
果物やケーキなど、デザート類が並ぶ。
ひときわ目を引くのは謎の機械と液状のチョコレートが流れるものだ。
マリィアの説明から皿を持ったルゥルは料理を通り抜け一目散にその謎の機械の方に行った。
「これは何ですか!」
「こっちはソフトクリームを自分で巻く機械ね。アイスクリームでも柔らかいやつなのだけど……食後に食べに来なさい。こっちはチョコレートファウンテンね。ここにある果物を専用のフォークに刺してつけて食べるの」
説明の横でレッドキャップがやってみる。イチゴを突き刺し、泉につける。ふわっと滝が割れたように引き込まれ、そしてチョコレートがイチゴを包む。
引き出して皿に載せた。
「おお」
「やるですやるです」
ルゥルはソフトクリームを試すことにした。コーンか器か選べるが、懸命にも器を選択した。
「うねうねしているです!」
「これはコツがいるのよね……」
マリィアは呟くが、ルゥルは自分で出すことが楽しいようだ。
「本来どうなるんだ?」
「やってみるけど……意外と動かすといけないと聞いたから」
レッドキャップに言われてマリィアがコーンにソフトクリームを巻いた。それとなくできた。
「……なんでデザートが先になっているのかしら!」
「まあ、仕方がないよな、気になるし。食事の前の腹ごなし? ルゥル、食べきれる分、考えて取れよ」
「はいですー」
まだ、時間はあるのだから。皿に乗りそうなのをいくつか取って一旦席に戻る。
「これでずっと温まっているわけか」
ヴァージルはスープや煮物が入っている容器を眺める。手には皿を持っているが、取ることより見るほうが優先されている。
「目的がちっがーう!! 今日はランチがメイン。ほらほら、ここでしか食べられないものがいっぱいあるよ」
「おお、これは……似たようなものあっても、やっぱりどこか違うよな」
ニーナに促されてヴァージルは料理に目をやった。
クリムゾンウェストにもリアルブルーからの料理というのは来ている。食材も共有する物があるが、本場は違う。見たことあってもどこか違う料理もある。
「さて、何を食べてみようか? 肉が焼きあがったらしい……」
「野菜も食べようね」
「ああ。パンと白飯……」
「スープやパンでもいろんな種類がある……」
目移りしつつ、あれこれ持って席に戻った。
皿に盛ったのを食べきったルゥルは次はエルバッハと料理を見に来た。
ルゥルはおなかと相談をする。
「まだいけます」
「ケーキは別腹ですか」
「はいです。だから、こちらの料理を食べてみます」
「では私はこちらを取りましょう……どうせなら違うのを取って、少しずつ交換しましょうか」
「その方がお皿に載せやすいのです」
「それで気に入れば自分用にまた食べれないいのです」
共同作戦により、それぞれが多めに少数の料理をとった。
ちょこちょこ歩いていくルゥルを見てフォークはホッとする。必要なら手助けをしないといけないと思っていた。
「少しこっちの果物を持ってあげるのもいいわよね?」
フォークは兄に尋ねる。果物は先ほどルゥルが見つめていたのだった。
「デザートに早いんじゃないか?」
「そんなことないわよ。おなかが調整され、また食べられるかもしれないわ」
「帰り、ルゥルが動けなかったり。ステラもな」
「……ん、もう! 私はそんなに食べないわ! それに、ルゥルさんの注意もあるのよ? 大人は調整するものよ!」
「ほお、大人」
宙はにこにこと笑う。
「もう! お兄様!」
ロースビーフの切り分けが行われる。それは大きな皿に客が欲した枚数をきれいに載せて盛り付けられる。
自分用と二人は仲間もつまみやすいものを皿に盛って戻っていった。
制限時間まで一行は適度にまたはめいっぱい食べた。
ポルムは一口サイズのパンやクッキーなどを手渡されもそもそ食べていた。クリムゾンウェストになさそうなものを手渡されると嬉しそうにしていた。
●帰り着くまでが遠足
一行は秋葉原の拠点に戻れば、あっという間にクリムゾンウェストだ。
「それより、少し散歩しよう。興味があるし」
「ルゥルちゃん、急いだほうがいいのかしら?」
ヴァージルとニーナに問われるとルゥルは「遠回り好きです」と答える。
「そのくらいでとやかくは言わないでしょ」
マリィアはルゥルの手を握る。行きと異なり素直に握ってきた。
「腹ごなしにはいいよな……それにしても、ルゥル、よく食べたなぁ」
「ステラさんといい勝負でしたよね」
「エルはまんべんなく一通りそうだったよな」
レッドキャップもエルバッハも、それなりに食べたのは間違いない。二人ともちょっと胃袋に手を当てた。
(ああ、せっかくのデートも終わってしまうのね……)
フォークは内心ため息を漏らしつつ、兄の腕をとる。
「ステラ、今日は楽しかったね」
宙がつぶやくと、フォークはぱっと顔を明るくし「まだ終わってないわ」と告げる。
通り一つの遠回でも、興味があると足が止まる。そのため、五分程度で済まない回り道になっていたのだった。
ステラ・レッドキャップ(ka5434)は集合場所にあった鏡の前で、頭や普段武器を持っているところに手をやる。
「……変じゃないか?」
武器防具を置いた上に、リアルブルーぽい格好、高級ホテルだとカジュアルすぎるのか等々悩ましい。
横でルゥル(kz0210)も一緒に考え始める。
ステラ・フォーク(ka0808)と仙道・宙(ka2134)が集合場所に来た。
「今回はよろしくお願いしますわね。リアルブルー楽しみですわね♪」
フォークはにこやかに挨拶をする。ルゥルのことも注意するが、何より最愛の兄とのデート風な状況が待っているというのが一番大きい。
「よろしくお願いします。二人とも十分問題ない格好ですよ」
宙はレッドキャップとルゥルに言った。
エルバッハ・リオン(ka2434)が入ってくる。目立つ武器や防具はつけていないが、用心のために魔法を使えるシェルコンパクトは持ってきていた。今回の行動に必要そうなルールや法律は調べておいた。
「こんにちは。今日はよろしくお願いしますね」
ルゥルにあいさつをし、同道者にもお辞儀をする。
ヴァージル・シャーマン(ka6585)とニーナ・フォーレルトゥン(ka6657)が手に冊子を持ってやってきて挨拶をする。
「いいか、ルゥル。楽しみなのは十分わかる。俺も楽しみだ。だが、お前さんは前例があるんだからちゃんと注意するんだぞ?」
ヴァージルは真剣に注意を促す。
「それはそうと、これを渡さないといけないです。ヴァージルと作りました」
ニーナはきれいに束ねられた『旅のしおり』を渡した。リアルブルーでの注意事項、行先のホテルでどうするのがいいかなど注意がかみ砕かれある程簡単に、適度にイラスト入りで書かれていた。
「あ、ありがとうございますです」
ルゥルはポシェットにしまった。
「……読まないのか……」
「……読んでくださいね……」
ヴァージルとニーナは寂しいと全身でルゥルに示した。
マリィア・バルデス(ka5848)は集合時間ぎりぎりに駆け込んできた。出かける直前に、武器防具、特にクリムゾンウェスト由来の魔導銃など許されるわけがないと着替えたのだった。
「……落ち着かない……。ルゥル、何を読んでいるの」
「旅のしおりです」
数人で固まって読み込んでいた。
職員がやって来て念のため、一行の外見チェック。フォークのアリスとパルムを預かる。
その間にマリィアはルゥルに問う。
「ホテルだと介助犬くらいしか持ち込めないのよ。大丈夫だと思うけど、ちょっと確認させてね?」
ルゥルはコクンとうなずくとポシェットを広げる。
覗いたが特に変な物はない。
「……大丈夫なのよね」
なぜか違和感が残る。
エルバッハとルゥルは飾りやヘアバンドで耳を隠した。
さあ、出発。
●迷子紐は必要か
秋葉原のオフィスを出て楽しみと緊張なのか、いきなり行動が停止するメンバーもいた。
ルゥルは叫びそうに身を震わせ周囲を見ている。
エルバッハは特に感慨もないという雰囲気のまま目を配る。
レッドキャップは感慨深げに愛用の銃を持っていないが手を添えた。愛用の銃はリアルブルー製である。
ヴァージルは目を見開き、焼き付けるように凝視している。
ニーナはヴァージルの服をつかむ、何かわからないが危険を察した。
「さあ、まず、迷子紐買いに行くわよ」
マリィアの宣言にルゥルの顔が強張る。
「なぜですか! ルゥルは迷子になりません!」
先日、リゼリオで盛大に迷子になっていたのを知っている人間は「なる」と異口同音に言う。
「こ、こんなところでルゥルの人格が否定されるとは思ってもみませんでした」
「……大事になっていますね……」
エルバッハはしゃがんで、その場で崩れたルゥルを立たせようとする。
「でもまあ、本人だって反省しているんなら、首ねっこでもつかんでればよくねーか?」
「それは一理あるかもしれませんね。それも含めて、大人がついているのですから」
レッドキャップと宙の援護にルゥルは激しくうなずく。
「そうですわ。こうやってくっついてもらえばいいかしら?」
フォークが兄である宙の腕を両腕で絡めとる。
「それはそうね。ヴァージルもどこかに行っちゃいそうだし」
ぼそりニーナは呟き、なんとなくつかんだヴァージルの服をぎゅっと握った。
「伸びる」
「伸びない! この素材なら」
「固い素材でも伸びる。伸びるというより変形か」
ヴァージルの抗議は受け入れられなかった。この程度でけんかすることもないし、早く移動してリアルブルーを見たいというのもある。
「まあそれはそうよね……。ほら、ルゥル、手をつなぐわよ」
マリィアは手のひらを見せる。
「……いざとなったときに、手がつながっていたら、お姉さんは護衛ではありません!」
ルゥルは一丁前に告げるとズボンをつかんだのだった。
「さあ行きますわよ。リアルブルーに帰るのは久しぶり……といいましても小さい頃でしたし、秋葉原は初めてですわね」
フォークは大好きな兄を引っ張りつつ、初めての街への好奇心もあふれていた。
四角い建物が並ぶ道を歩くと、人と車が行きかう大通りに出た。
「魔導トラックで見慣れているが……いろんな種類あるな」
「そうですね……ああ、馬がいません」
「ああっ、違和感それか! 自転車やバイクはいる」
レッドキャップはエルバッハの指摘に手をたたいた。
「で、あの赤や緑のは?」
レッドキャップは指摘しつつ、ルゥルをちらちら見る。マリィアの手がルゥルに伸びている。他のハンターもじわじわと包囲している。
「信号機です。人が歩く方はこちら、車側はあちらです」
宙が説明する。指さす方向を初リアルブルーのメンバーが見る。
「今私たちはこの道を渡ってはいけない、ということです。ルゥル、分かったかな?」
問いかけられてルゥルは「はい」といい返事をした。
「やっぱ現地で実物見るって勉強になるな……」
「駄目だからね、集団行動乱したら」
感心してヴァージルが信号機や看板など目を走らせるのを、ニーナが引き留める。
「さあ、渡りましょう」
フォークが宙の腕をもって進む。
「横断歩道を渡るときはね、手をあげるのよ」
マリィアの説明にルゥルは開いている手をあげた。
あと少しで予約してあるホテルである。
マリィアは違和感が何かわかった。
ルゥルのポシェットは膨れている。それなのに、中にはハンカチとちり紙と身分証明書など最低限のものしかなかった。
「ルゥル、もう一回ポシェットいいかしら」
「どうしてですか!」
「そのポシェット、穴開いているわ」
マリィアの指摘に、足を止める一行。
ルゥルはポシェットを開ける。内側の布のポケットに穴を発見し、手を突っ込んだ。
「みぎゃ、ポルムですううう」
「ルゥル、おもちゃはしまっておかないと!」
「おもちゃ屋でぬいぐるみ買おうかしら!」
宙とマリィアが慌ててルゥルの手をポシェットに戻す。
相談の結果、パルムのポルムを追い返すわけにもいかず、おとなしくすることを条件にポシェットに戻した。
●もしゅもしゅ
高級ホテルと言ってもビュッフェの客の服装は様々だ。
「みぎゃああああ」
「おお」
「いろいろな匂いがしますね」
ルゥルとレッドキャップ、エルバッハの声が重なる。
「ほら、こっちの席よ」
マリィアが係の人について行く。料理があるテーブルからは遠いが、ポルム問題があるため幸いだ。
「はぐれないように行くんだ……なんだ、あの機械は……」
「ヴァージル、あとにしよう。あたしたちがはぐれてどうするの」
普段であればニーナにとって近所のお兄さん的なヴァージルであるが、今日に限って弟分がいるような気分になる。ルゥルのことも気をつけないとならないし、年上の頼りになるはずの存在が今回は危険だとニーナは認識している。
(何か進展とか言っている場合じゃない、油断できないわ! ヴァージルも食べることも楽しんでほしい! ルゥルちゃんは全部楽しむ気満々だからそこはいい!)
ニーナがあーだこーだと考えている間に、席についたルゥルは料理のテーブルの方ばかり見ている。
いつ走り出すか……そんな感じがするのは気のせいか。
「お兄様、楽しみだわ……ルゥルさん、走ってはいけませんよ?」
フォークは鋭く指摘をした。
「順番に取りに行ったほうがいいですね」
エルバッハはソファーに置かれたルゥルのポシェットを見る。ポシェットの陰にはポルムがスタンバっている。
「じゃあ、ルゥル、行くか?」
「はいですうう」
「走らないの!」
マリィアから注意が飛び、レッドキャップがルゥルの服の首を掴んだ。
「俺も早速……と行きたいが」
「順番ですから、先に行って来てもいいですよ」
宙は見た、ヴァージルが器具に目が行っていることに。
「なら、お言葉に甘えて」
「じゃ、行ってきます」
ヴァージルとニーナはテーブルに残った三人に頭を下げてから、料理の方に向かった。
「きゅう」
「……静かになさい」
「きゅ」
「ごはんはこっそりあげます。我慢なさい」
「きゅうう」
どうやら外を見たいと訴えているようだとエルバッハは察する。ぬいぐるみと言ってごまかすにしてもルゥルもいないし危険だ。
「静かにしないと、キノコ炒めにしますよ」
説得後もごねる為、エルバッハはとどめを刺した。
「……エルバッハさん……殺気が……」
フォークが思わず、首を横に振った。店中の空気が凍り付いた感じがしたのだ。
「すみません。聞き分けのない何かを叱りました」
三人はうなずきながら、視線がポシェットに向く。今はおとなしい。
野菜の盛り合わせ、煮物、辛そうな炒め物、酢漬け、スープ類、肉料理、魚料理……。
カウンター越しではステーキを焼いている。これは焼きあがるとこの場で切り分けてくれる特別メニューらしい。
果物やケーキなど、デザート類が並ぶ。
ひときわ目を引くのは謎の機械と液状のチョコレートが流れるものだ。
マリィアの説明から皿を持ったルゥルは料理を通り抜け一目散にその謎の機械の方に行った。
「これは何ですか!」
「こっちはソフトクリームを自分で巻く機械ね。アイスクリームでも柔らかいやつなのだけど……食後に食べに来なさい。こっちはチョコレートファウンテンね。ここにある果物を専用のフォークに刺してつけて食べるの」
説明の横でレッドキャップがやってみる。イチゴを突き刺し、泉につける。ふわっと滝が割れたように引き込まれ、そしてチョコレートがイチゴを包む。
引き出して皿に載せた。
「おお」
「やるですやるです」
ルゥルはソフトクリームを試すことにした。コーンか器か選べるが、懸命にも器を選択した。
「うねうねしているです!」
「これはコツがいるのよね……」
マリィアは呟くが、ルゥルは自分で出すことが楽しいようだ。
「本来どうなるんだ?」
「やってみるけど……意外と動かすといけないと聞いたから」
レッドキャップに言われてマリィアがコーンにソフトクリームを巻いた。それとなくできた。
「……なんでデザートが先になっているのかしら!」
「まあ、仕方がないよな、気になるし。食事の前の腹ごなし? ルゥル、食べきれる分、考えて取れよ」
「はいですー」
まだ、時間はあるのだから。皿に乗りそうなのをいくつか取って一旦席に戻る。
「これでずっと温まっているわけか」
ヴァージルはスープや煮物が入っている容器を眺める。手には皿を持っているが、取ることより見るほうが優先されている。
「目的がちっがーう!! 今日はランチがメイン。ほらほら、ここでしか食べられないものがいっぱいあるよ」
「おお、これは……似たようなものあっても、やっぱりどこか違うよな」
ニーナに促されてヴァージルは料理に目をやった。
クリムゾンウェストにもリアルブルーからの料理というのは来ている。食材も共有する物があるが、本場は違う。見たことあってもどこか違う料理もある。
「さて、何を食べてみようか? 肉が焼きあがったらしい……」
「野菜も食べようね」
「ああ。パンと白飯……」
「スープやパンでもいろんな種類がある……」
目移りしつつ、あれこれ持って席に戻った。
皿に盛ったのを食べきったルゥルは次はエルバッハと料理を見に来た。
ルゥルはおなかと相談をする。
「まだいけます」
「ケーキは別腹ですか」
「はいです。だから、こちらの料理を食べてみます」
「では私はこちらを取りましょう……どうせなら違うのを取って、少しずつ交換しましょうか」
「その方がお皿に載せやすいのです」
「それで気に入れば自分用にまた食べれないいのです」
共同作戦により、それぞれが多めに少数の料理をとった。
ちょこちょこ歩いていくルゥルを見てフォークはホッとする。必要なら手助けをしないといけないと思っていた。
「少しこっちの果物を持ってあげるのもいいわよね?」
フォークは兄に尋ねる。果物は先ほどルゥルが見つめていたのだった。
「デザートに早いんじゃないか?」
「そんなことないわよ。おなかが調整され、また食べられるかもしれないわ」
「帰り、ルゥルが動けなかったり。ステラもな」
「……ん、もう! 私はそんなに食べないわ! それに、ルゥルさんの注意もあるのよ? 大人は調整するものよ!」
「ほお、大人」
宙はにこにこと笑う。
「もう! お兄様!」
ロースビーフの切り分けが行われる。それは大きな皿に客が欲した枚数をきれいに載せて盛り付けられる。
自分用と二人は仲間もつまみやすいものを皿に盛って戻っていった。
制限時間まで一行は適度にまたはめいっぱい食べた。
ポルムは一口サイズのパンやクッキーなどを手渡されもそもそ食べていた。クリムゾンウェストになさそうなものを手渡されると嬉しそうにしていた。
●帰り着くまでが遠足
一行は秋葉原の拠点に戻れば、あっという間にクリムゾンウェストだ。
「それより、少し散歩しよう。興味があるし」
「ルゥルちゃん、急いだほうがいいのかしら?」
ヴァージルとニーナに問われるとルゥルは「遠回り好きです」と答える。
「そのくらいでとやかくは言わないでしょ」
マリィアはルゥルの手を握る。行きと異なり素直に握ってきた。
「腹ごなしにはいいよな……それにしても、ルゥル、よく食べたなぁ」
「ステラさんといい勝負でしたよね」
「エルはまんべんなく一通りそうだったよな」
レッドキャップもエルバッハも、それなりに食べたのは間違いない。二人ともちょっと胃袋に手を当てた。
(ああ、せっかくのデートも終わってしまうのね……)
フォークは内心ため息を漏らしつつ、兄の腕をとる。
「ステラ、今日は楽しかったね」
宙がつぶやくと、フォークはぱっと顔を明るくし「まだ終わってないわ」と告げる。
通り一つの遠回でも、興味があると足が止まる。そのため、五分程度で済まない回り道になっていたのだった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/19 22:03:53 |