漢と巨人と玉砕覚悟

マスター:近藤豊

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2014/10/31 09:00
完成日
2014/11/01 13:03

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 地平線から太陽が昇り始めてから数時間。
 太陽は既に空の真上へ差し掛かる。光輝く太陽は大地へ満遍なく降り注ぎ、様々な恩恵をもたらしている。

 そして、馬に跨がり草原を見つめるこの男にも太陽の光が与えられている。
「族長!」
 オイマト族の族長、バタルトゥ・オイマト(kz0023)は振り返る。
 見れば、部族の戦士が一人駆け寄ってきた。
 余程慌てていたのか、戦士は息を切らせている。
 何か――あったのだろうか。
「……どうした?」
「襲撃です! ノアーラ・クンタウから物資を輸送する連中が襲われてます!」
「!」
 辺境の部族の中には、ノアーラ・クンタウ内の同盟商人から物資を買い付ける事もある。
 敵に襲撃された商隊も、同盟商人から食糧や武具を工芸品と引き替えに入手。これからオイマト族の集落へ戻る矢先の出来事だった。
 今から馬を飛ばせば商隊を救う事ができるだろうか……。
 否、迷っている暇はない。
「……出られる戦士へ呼びかけろ。今から商隊を救出に向かう」


 数刻前――ノアーラ・クンタウ要塞管理者執務室。
「そうですか。ベスタハの悲劇で裏切った者は、やはりオイマト族の者でしたか」
 ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は部下からの中間報告に耳を傾けていた。
 ヴェルナーはオイマト族の族長が、『ベスタハの悲劇』について感情を露わにした点を気にしていた。早速部下にオイマト族とベスタハの悲劇について調査をさせていたのだが、浮かび上がったのはベスタハの悲劇を引き起こした歪虚への内通者もオイマト族の者という事実だ。
「これが真実であればオイマト族の名誉は地に墜ちたも同然です。対歪虚を掲げて辺境の部族をまとめ上げたのが先代オイマト族族長であるが、同時にまとまった部族に情報を流して壊滅に追い込んだのもオイマト族の者となります」
「辺境の部族としては屈辱でしょうねぇ。
 ですが、帝国としてこの状況を利用しない手はありません。部族会議でも大きな影響力を持つオイマト族が帝国へ帰順すれば、辺境での戦力は大幅に向上します」
 ヴェルナーは、オイマト族との距離を詰めながら辺境部族の帰順を画策している。
 辺境部族にとっては過去の伝統や誇りを捨てて帝国臣民となるが、バラバラな部族を強引にまとめ上げなければ歪虚の侵攻を食い止める事はできない。
 そう考えているのだ。
「ヴェルナー様!」
 別の部下が執務室へ駆け込んできた。
「何事ですか?」
「要塞から北へ数キロの地点に怠惰の斥候と思しき集団を確認しました。おそらく本隊からはぐれたものと想定されます。
 さらに同地域にはオイマト族の集落へ向かう商隊を確認。このままでは商隊が襲撃される恐れがあります」
「そうですか。オイマト族の商隊が……」
 ヴェルナーは、徐にティーカップを手に立ち上がる。
 新しい紅茶を入れる為に立ち上がったのだろうが、その顔には笑みが浮かんでいる。
「言葉は好ましくありませんが、この状況を利用してオイマト族へ恩を売っておきましょう。
 ハンターズソサエティへ連絡。ハンターを派遣して商隊を護衛してもらいます。さらに怠惰の斥候を排除する為に要塞からも部隊を派遣します」
「それなのですが……」
 ここで部下は罰の悪そうな顔を浮かべる。
 明らかに言い難そうだが、こうしている間にも商隊は斥候と鉢合わせするかもしれないのだ。無駄な時間を費やす訳にはいかない。
「あなたの言葉を待つ時間はありません。情報だけを提示してください」
「は、はい。現在要塞駐留の騎士団及び山岳猟団は別任務を遂行中。出撃可能な部隊は……ドワーフの部隊のみです」
「!」
 ドワーフの部隊。
 つまり、要塞地下の根城にしている――あの集団だ。
 工房で働くドワーフとは異なり、日がな一日馬鹿を繰り返す連中だ。
 ヴェルナーは、目頭を押さえながら部下へ追加の指示を出す。
「依頼を一部追加。同行するドワーフの支援。特にドワーフが暴走しないよう注意するように伝えて下さい」


「うおおおおぉぉぉぉ! ついに来やがったぜぇ!」
 ヨアキム(kz0011)は、地下城『ヴェドル』で大興奮。
 早くも鼻血を噴き出しそうな勢いだ。
 執事のキュジィも慌てて、ヨダレだらけとなったヨアキムの顔を雑巾で拭う。
「こ、興奮しすぎですよ。ヨワキム様」
「馬鹿野郎! これが興奮せずにいられるか!
 帝国がついにワシらに頼ってきたんだぞ! 強敵にも当たって砕けろって感じで……あれ? 当たって砕けちまったら、ワシはやべぇんじゃねぇか?」
 早くも危ない発言を始める馬鹿の王――ヨアキム。
 出来る事なら、ヴェルナーも最後まで温存しておきたかったに違いない。
 しかしベンチをケツで温めるお仕事から解放されるとあって、ヨアキムの血圧も急上昇だ。
「この間食ったカレーの力を歪虚に見せてやらんとなぁ、給仕」
「私は執事のキュジィです。それにカレーは関係ありませんよ」
「よぉし! 出陣だ! 歪虚の奴らにワシの力を見せてやるんだ!」
「あ、ヨアキム様。敵は怠惰の斥候だそうです。作戦を考えておいた方がよろしいかと存じます」
 無駄と分かっていても作戦を立案するよう伝えるキュジィ。
 それに対してヨアキムはため息をつく
「ああん? 作戦だぁ? そんなもん決まってるだろ。
 作戦は……ぶん殴るっ!」

リプレイ本文

「ハイルタイ」
 ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は、部下から報告のあった名前を呟いた。
「はい。お探しの者の名です」
 オイマト族の者にとって忌むべき者の名。
 その名を口に出すのも憚られる。
 しかし、ウェルナーにとっては鍵の一つ。情報収集の成果に、思わず頬が緩む。
「真実は、時に残酷です。ですが、覚悟を持たなければ真実には到達できない。
 新しいピースが手に入りましたが……今頃、彼は馬を走らせている頃でしょうかねぇ」


「ヨアキム様、前に習った戦闘訓練を覚えていらっしゃいますか?」
「……なんだっけ?」
「『足並み揃えて集団として敵に向かう』です」
「ああ、そうだった。
 綾波揃えて爆弾片手に集団特攻みたいな話だったな。まあ、とりあえず敵をぶん殴ればいいんだろ?」
 ヨアキム(kz0011)の言葉に真田 天斗(ka0014)は頭痛を感じた。
 以前、共に戦闘訓練を行った際にヨアキムへ教えた事を綺麗サッパリ忘却していた。
 しかし、今回同行したドワーフの戦士はしっかり憶えていた。決して無駄な訓練ではなかったと自分に言い聞かせる。
「難しい事は我も分からぬ。だが、小父殿の言うことは分かるぞ。ぶっ飛ばせば良いのだな」
 ヨアキムの発言にミルフルール・アタガルティス(ka3422)は頷く。
「そうだ。敵をぶっとばす。それが今回の作戦だ」
「うむ、単純明快だ」
 ヨアキムの作戦が作戦として成立していないのだが、ミルフルールはまったく気にしない。何故なら、ミルフルールも脳筋だから。
「おしゃべりはそこまでだ。
 商隊を放っておく訳にもいかない以上、速やかに駆けつけなくてはなるまい。もう少し急げぬか?」
 前を走る榊 兵庫(ka0010)がヨアキムへ速度を上げるよう促す。
 今回の依頼はオイマト族の商隊を怠惰の斥候から守るというもの。斥候と言っても本隊からはぐれたジャイアント3体だが、歪虚の好きにさせる訳にはいかない。
「くっ、お前らが早過ぎるんだよ!」
「酒臭い上に足も遅いなんて……でも、それ以上にその格好は何なんです?」
 ヨアキムから距離を置いていた坂斎 しずる(ka2868)は、速度の遅い原因をヨアキムの姿格好にあると見ていた。
 実はヨアキムは黒い学生服にサラシ、学生帽に学生マントというリアルブルーでも滅多に見られない格好だ。そして、速度が上がらない最大の理由は『鉄下駄を履いている事』だ。
「こいつは辺境ドワーフに伝わる大事な戦装束だ。昔、リアルブルーから来た伝説の漢から授かった大事なもんだ。
 それにワシは戦いの最中に酒なんか飲んでないぞ!」
「あら、そうでしたの? 酒の匂いがするならてっきり……」
「戦いの前に酒を飲んでたからな。ぶわっはっはっ!」
「…………」
 しずるは、呆れて言葉が出ない。
 そんなやり取りの中、アカーシャ・ヘルメース(ka0473)の視界に一際大きな人影が3つ飛び込む。
「……あっ、おった!
 まだ急げば商隊との間に割り込める!」
 ジャイアント3体と商隊の間には、まだ少し距離がある。
 ここから全速力で向かえば、何とか商隊とジャイアントの間に滑り込めそうだ。
「よしっ! ワシがまず連中に一発お見舞いしてやるか!」
 敵影を見たヨアキムは、鉄下駄を鳴らしながら、一気にスピードアップ。
 歩く度に金属音が鳴り響き、ジャイアント達の注意を引いてくれる。だが、テンション上がって暴走始める馬鹿を放置するのは問題だ。 
「……にゃ!? ダメだよ!
 いくらカレーの力があっても大きな目標に突撃したらっ!」
 ヨアキムの後に続いて柊崎 風音(ka1074)も後を追う。
 ちなみに風音が言っているカレーとは、ヨアキムが『カレーは食してパワーアップする兵器』と勘違いしている事が原因だ。
「うぉらぁ!」
 滑り込みに成功したヨアキム。
 周囲に轟音が響きそうなパンチを繰り出すも、そのパンチは虚しく空を斬る。
 当たり前の話で、ヨアキムはジャイアントの顔を狙っていたのだ。ヨアキムの短い手足で3メートルの高さにある顔に届くはずもない。
 考えれば分かることだが、ここまで馬鹿だと清々しい。
「うがっ!」
 お返しとばかりにジャイアントは手持ちの斧を振り下ろす。
 ジャイアントの最大の武器は、巨体から繰り出される怪力。しかも、高い位置から振り下ろされる斧は位置エネルギーを得て人間以上の破壊力も持つ。
「……ちっ!」
 空振りしたヨアキムは、まだ態勢を立て直せていない。
 このままでは、ジャイアントの一撃を受ける事になる。

 ――ガキンっ!

 鉄下駄とは異なる金属音。
 ジャイアントの斧と兵庫のフラメアが衝突する音だ。
「……敵の狙いはお前達だ。
 この人数では護りながらでは十分に戦えない。一旦、ここから離れてくれ!」
 兵庫は、商隊に向かって大きく叫ぶ。
 オイマト族の救援が到着するまで、あとしばらくはかかる。
「怠惰の軍……侮れぬ相手か」
 兵庫の手に残る痺れ。
 それはジャイアントの破壊力を物語っていた。


「Uターンしている暇はないわ。道の横に逸れて」
 商隊へ叫びながら、しずるはアサルトライフルで威嚇射撃。
 ハンター達が決められた場所へ移動するまでの時間を稼ぐ。
 商隊の馬車から傭兵達も飛び出してくるが、彼らには馬車を守る最後の切り札として控えてもらわなければならない。
「このまま先に行っちまってもいいのかい?」
「少し先で馬車を待機させておいて。
 この先で敵が現れたら……あなた達だけで対処する事になるわよ?」
 弾倉を手早く交換しながら、商隊の問いに答えるしずる。
 ジャイアントをハンターが撃退する前に別の敵が登場する恐れもある。安全な場所に馬車を待機させ、確実に問題を排除していくべきだ。
「分かった。あんたらも気をつけろよ!」
 商隊は、再び走り出す。
 走りすぎていく商隊を前に、しずるは視線を合わせる事なく呟く。
「大丈夫よ。この程度の修羅場、何度も乗り越えてきたんだから――今回だって」


 ハンターと対峙するジャイアントは、3体。
 そこでハンターは商隊を確実に守る為に戦力を分散。ジャイアントの足止めを最優先に据えていた。
「では、参ります!」
 冷静にジャンアントを観察・分析しながら戦いを挑む真田。
 身長3メートル程の体格を持つパワーファイターと分析していた真田であったが、その認識は早々に修正せざるを得なかった。
「意外と厄介な相手ですね」
 身長が3メートルあるという事は、それだけ手足が長い事を意味する。
 隙を見てランアウトによる高速ステップインを狙ってみるが、警戒したジャイアントは距離を取って近付けさせないのだ。
 さらに真田が手にしている武器は、ドリルナックル。
 至近距離へ近づく為には、ジャイアントの斧を掻い潜る必要がある。
「真田はん! 同時に攻撃して翻弄するんや!」
 地を駆けるものを発動させたアカーシャ。
 蛇の如く素早くうねるような動きで、ジャイアントの右サイドから攻撃を仕掛ける。
「了解しました。
 こういう場合は正面より横から、内から外の方が壊しやすいものです」
 アカーシャの動きに合わせ、真田は左サイドから攻撃を仕掛ける。
 両サイドから同時に攻撃を仕掛けられたジャイアント。
 目標が二つ同時に攻撃を仕掛けた事で迷いが生じる。
 慌てて斧を振り回してみるも攻撃に鋭さが欠け、二人のどちらにも命中しない。
「ここですっ!」
「絶招、砕魂竜爪!」
 真田のドリルナックルが膝を、アカーシャの指先が肘を捉える。
 苦痛に歪むジャイアント。
 膝を抉られ、腕に一撃を浴びた事から攻撃スピードに影響が出るだろう。
「体格差は重要ですが、それだけでは勝てません。学習しましたか?
 でも、授業はこれで終わりではありませんよ」
 膝をつくジャイアントを前に、真田とアカーシャは再び構える。


 真田とアカーシャが奮戦する一方、馬鹿のお守りをさせられる者もいる。
「小父殿、これを!」
「おおっ! こいつぁなんだ?」
 ミルフルールは、ヨアキムにプロテクションを施す。
 その事を理解していないヨアキムなのだが、ミルフルールはヨアキムに理解できる言葉で説明を試みる。
「所謂、まっするばりあーという奴だな」
「そうか! 要するにワシの体に気合い入れたっつー事だな!
 うぉぉぉぉ! いくぞお前ぇら!」
 部下のドワーフを引き連れてジャイアントへ突撃するヨアキム。
 正面から突っ込んでいく馬鹿を、風音は慌てて援護射撃を試みる。
「わわっ! ジャイアントに突撃しちゃったら、上からペシャンコだよ!」
 風音のアサルトライフルは、ジャイアントの骸骨を象った鎧に阻まれる。
 それでも構わない。
 重要なのは、突撃馬鹿がカウンターを受けない事。
 援護射撃でジャイアントの動きを封じられれば、それで良い。
「小父殿、援護は我等に任せておくのじゃ」
 ミルフルールもリボルバーで別方向から撃ち続ける。
 ジャイアントの腕で接近すれば、軽いミルフルールの体も吹き飛ばされてしまう。ヨアキムの巨体であれば吹き飛ばされる恐れはないのだろうが……。
「くそっ、汚ねぇぞ!」
 馬鹿のヨアキムはムキになってジャイアントの顔面を狙い続ける。
 相変わらず学習しない馬鹿っぷりだが、ここは戦場。
 油断は、大敵である。
「がぁ!」
「兄貴っ!」
 ジャイアントが振り下ろした斧を盾で受け止めるドワーフの戦士。
 ヨアキムの庇う形で叩き込まれた強烈な一撃は、ドワーフを地面に跪かせる。
 しかし、ジャイアントはヨアキムへの攻撃を諦めた訳ではない。
 追撃するように斧を再び振り回す。
「小父殿の邪魔はさせぬ!」
 後方からリボルバーを放つミルフルール。
 ジャイアントは、体を翻して弾丸を避ける。
 この隙を、風音は逃さない。
「ここで跳弾させたらカッコイイよね?」
 アサルトライフルで狙い撃つは、ジャイアントの斧。
 銃口から飛び出した弾丸は、ジャイアントの斧で跳ねてジャイアントの頭部へ命中。兜を跳ね飛ばした。
「!?」
 油断していたジャイアント。
 衝撃を受けて片膝を付く。
 つまりそれは、頭部の位置が下がる事を意味している。
「やーっと、頭を下げてくれたなぁ」
 ヨアキムは、指の関節を鳴らしながら近づいてくる。
 既に至近距離へと接近、拳は充分にジャイアントの顔面へ届く位置だ。
「借りは返すぞ、クソ野郎っ!」
 ヨアキムから放たれる強烈な一撃は、顔面へヒット。
 前歯をへし折りながら、後方へ投げ出されるジャイアント。
 地面へ叩き付けられた後は痛みで悶絶している。
「さすがは、小父殿。
 まさに『ぶん殴る』って作戦が的中じゃ!」
「まだまだぁ! ワシの作戦はこれからが本番だ」


 他のジャイアントが激しく戦っている中、兵庫の前に立つジャイアントは攻めあぐねていた。
 手足の長いジャイアントではあるが、それを遙かに超えた攻撃範囲を持つフラメア。
 全長180センチ――それが兵庫が支配する世界だ。
「うがぁ!」
 意を決したジャイアント。
 一歩前に出て手持ちの斧を振り下ろす。
 刃物とは呼べぬ代物であるが、下手に受ければ怪力で押し切られかねない。
 兵庫はフラメアで攻撃の軌道を逸らして、斧の攻撃を回避。
 生み出される隙――この瞬間を兵庫は待ち望んでいた。
「ここだ」
 同時に強く踏み込んでジャイアントとの距離を詰める。
 さらに遠心力を乗せたフラメアの刃が、ジャイアントの膝を強襲する。
「ぎゃあっ!」
 悲鳴を発するジャイアント。
 フラメアが膝を破壊。痛みで思わず屈み込む。
 長い手足から繰り出される機動力を奪う事に成功したようだ。
 だが、ジャイアントも諦めていない。
 苦し紛れに再び斧を振り下ろすが……。
 
 ――バシュっ!

 乾いた音が響いた瞬間、斧を握るジャイアントの腕が爆ぜる。
 兵庫の後方からしずるがアサルトライフルで狙撃していた。
「させる訳ないでしょ、お馬鹿さん」
「これで終わりだ」
 再び距離を取った兵庫は、フラメアの突きを繰り出した。
 片膝を付いていたジャイアントは、その刃を顔面で受け止める事となる。

 兵庫の手に伝わる感触。
 命の炎が尽きた瞬間――ジャイアントの体から力が抜け落ちる。
 フラメアを引き抜く頃には、瞳から生気が失われていた。
「……見事だ」
 声に反応して、兵庫としずるが振り返る。
 そこにはオイマト族の族長バタルトゥ・オイマト(kz0023)が馬上から見下ろしていた。
 どうやらオイマト族の増援が到着したようだ。
 見れば、他2体のジャイアントもオイマト族の戦士に追い回されている。
「増援、ご到着って訳ね。この調子なら商隊も無事そうね」
「…………」
 しずるの言葉に応えた族長は、馬上から下りる。
 そして、二人の前で小さく首を下げる。
「オイマト族を代表して、感謝する」


 ハンターとドワーフのおかげでオイマト族の商隊は、無事に集落へと辿り着いた。
「ぶわっはっはっ!
 お前ぇらがさっさと来ないから、ワシとハンターでほとんど片付けちまったぞ!」
「…………」
 久しぶりの戦闘でヨアキムはご満悦だが、その傍らでバタルトゥは沈黙を守っている。
 ハンター達も対応に困っている様子だったが、ここで派遣執事として知られる真田のフォローが入る。
「良い機会ですので、交流を持ってみては如何ですか?」
 真田はドワーフとオイマト族で交流を提案した。
 しかし、バタルトゥが即答する。
「遠慮する」
「そんな事言うなよ! ワシと仲良くしようぜ!」
 顔には出さないが、バタルトゥもヨアキムを面倒な相手と認識しているようだ。
「バタルトゥはん、ちょっとええか?」
 アカーシャは、思い切ってバタルトゥへ話し掛けた。
 自分の率直な意見をバタルトゥへ伝える為だ。
「なんだ?」
「バタルトゥさんは、帝国をどうお想いです?
 噂ではヴェルナーはんの考えは、辺境部族と協調する気ぃもないです。
 あくまで帰順、帝国臣民化が目的です。
 部族会議は対歪虚を意識したもんですけど、辺境で平穏に暮らすという意識も加えて一つになるべきやないですか? カリスマ的存在やけど幼いスコール族のファリフを御旗にして、大部族のバタルトゥはんが補佐役としてまとめ上げるのはどないです?」
「無理だ」
「何故です?」
「理由は、二つ。
 一つは、怠惰の軍を辺境部族だけで倒すには戦力が不足している。既に多くの部族が歪虚に飲まれた。帝国の力を借りなければ歪虚の撃退できないだろう。
 そして、もう一つは……オイマト族は辺境部族を一度裏切っている。辺境部族をまとめ上げる資格がない」

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MVP一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫ka0010
  • 星の慧守
    アカーシャ・ヘルメースka0473

重体一覧

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • Pクレープ店員
    真田 天斗(ka0014
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 星の慧守
    アカーシャ・ヘルメース(ka0473
    人間(紅)|16才|女性|霊闘士
  • 鎮魂の刃
    柊崎 風音(ka1074
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • シャープシューター
    坂斎 しずる(ka2868
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士
  • 麗しき脳筋
    ミルフルール・アタガルティス(ka3422
    エルフ|13才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
榊 兵庫(ka0010
人間(リアルブルー)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2014/10/31 06:12:34
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/26 19:31:02