ゲスト
(ka0000)
人ならずとも人のため
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/21 15:00
- 完成日
- 2017/07/01 00:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ゴブリンに占拠された村を奪還する。そう依頼を受けたハンターたちは近くにある別の村へとやってきた。ここには村から逃げてきた住人が多数いるということだ。
もっとも、近くがゴブリンに占拠されたとあってはここもどうなるか分からない。そういうわけで逃げ支度で大忙しの様子だ。
「あいつを助けてくれ! あの『ゴブリン』を!」
そんな中、やっとのことで見つけた当の村人。村人が開口一番言ったのはこの言葉だった。
●
「あのゴブリンは村外れのばあ様の家に住んでいたんだ」
聞くところによるとゴブリンは、瀕死の状態でその老婆の家の前で倒れていたそうだ。老婆はそのゴブリンを手当てし、食べ物まで与えた。だが、人がなかなか変わらないように、ゴブリンの性質が変わるわけもなく、次の日には家の食料を持っていなくなっていたそうだ。
それからしばらくして、同じゴブリンがまたも老婆の家の前で倒れていた。手当の後からそれが分かった。老婆は同じようにそのゴブリンを手当てしたそうだ。
次の日、ゴブリンは逃げ出していなかった。老婆が朝食に用意したパンを渡されるとありがたがるように受け取り食べた。
「その時、その眼には涙が浮かんでいたそうだ。ばあ様の話を信じるならな」
それ以後、このゴブリンはこの家に居着き、老婆の手助けをして布を織ったりちょっとした畑を耕して暮らしていたそうだ。
もちろん村人たちはすぐにこのゴブリンを追い出そうとしたが、それは老婆が納得しようとしない。加えて、石などを投げつけられ出て行けと罵られた当のゴブリンが反撃をしようともせずそれらに耐えている。そんな様子を見てきた村人たちはつい折れ、ゴブリンが住むことを了承した。それからしばらくは平和な日々が続いていた。
「あのゴブリンがばあ様を抱えて村長の家にやってきたのは朝早くのことだった」
なんのことかは老婆も分からなかったらしい。だが、家に入るとゴブリンは紙とペンをひったくると何か絵を描きだした。
森。そこから出てきている様子のゴブリン。そして燃える家。これらが村の襲撃を指していると気づくのに時間はかからなかった。
村長はすぐに村の人々に逃げるように伝え、取るものも取らず村をあとにした。この時、気づくとゴブリンの姿は見えず、この村人が老婆を連れて出ていった。
「……ゴブリンがどこにいったのか分かったのは村が遠くなった時だったよ。手に愛用の鍬を持ってよ……入口のあたりでこっちに手を振ってたんだよ」
早く来いと、村人たちは口々に叫んだそうだ。だが、その言葉が聞こえたのかどうか……ゴブリンは首を横に振り、そのまま村へと戻っていった。
「村のあたりから煙が上がってきたのはそのすぐあとだ。あいつは足止めのために残ったんだ……大して強くもねぇのにさ。でも、それよりも弱い俺たちはただ逃げるしかなかったんだ」
沈んだ声の村人はハンターに縋りついて言った。
「ゴブリンがどれだけいるのか分からない。だがそれでも頼む! 村と、あのゴブリンを助けてやってくれ!!」
ゴブリンに占拠された村を奪還する。そう依頼を受けたハンターたちは近くにある別の村へとやってきた。ここには村から逃げてきた住人が多数いるということだ。
もっとも、近くがゴブリンに占拠されたとあってはここもどうなるか分からない。そういうわけで逃げ支度で大忙しの様子だ。
「あいつを助けてくれ! あの『ゴブリン』を!」
そんな中、やっとのことで見つけた当の村人。村人が開口一番言ったのはこの言葉だった。
●
「あのゴブリンは村外れのばあ様の家に住んでいたんだ」
聞くところによるとゴブリンは、瀕死の状態でその老婆の家の前で倒れていたそうだ。老婆はそのゴブリンを手当てし、食べ物まで与えた。だが、人がなかなか変わらないように、ゴブリンの性質が変わるわけもなく、次の日には家の食料を持っていなくなっていたそうだ。
それからしばらくして、同じゴブリンがまたも老婆の家の前で倒れていた。手当の後からそれが分かった。老婆は同じようにそのゴブリンを手当てしたそうだ。
次の日、ゴブリンは逃げ出していなかった。老婆が朝食に用意したパンを渡されるとありがたがるように受け取り食べた。
「その時、その眼には涙が浮かんでいたそうだ。ばあ様の話を信じるならな」
それ以後、このゴブリンはこの家に居着き、老婆の手助けをして布を織ったりちょっとした畑を耕して暮らしていたそうだ。
もちろん村人たちはすぐにこのゴブリンを追い出そうとしたが、それは老婆が納得しようとしない。加えて、石などを投げつけられ出て行けと罵られた当のゴブリンが反撃をしようともせずそれらに耐えている。そんな様子を見てきた村人たちはつい折れ、ゴブリンが住むことを了承した。それからしばらくは平和な日々が続いていた。
「あのゴブリンがばあ様を抱えて村長の家にやってきたのは朝早くのことだった」
なんのことかは老婆も分からなかったらしい。だが、家に入るとゴブリンは紙とペンをひったくると何か絵を描きだした。
森。そこから出てきている様子のゴブリン。そして燃える家。これらが村の襲撃を指していると気づくのに時間はかからなかった。
村長はすぐに村の人々に逃げるように伝え、取るものも取らず村をあとにした。この時、気づくとゴブリンの姿は見えず、この村人が老婆を連れて出ていった。
「……ゴブリンがどこにいったのか分かったのは村が遠くなった時だったよ。手に愛用の鍬を持ってよ……入口のあたりでこっちに手を振ってたんだよ」
早く来いと、村人たちは口々に叫んだそうだ。だが、その言葉が聞こえたのかどうか……ゴブリンは首を横に振り、そのまま村へと戻っていった。
「村のあたりから煙が上がってきたのはそのすぐあとだ。あいつは足止めのために残ったんだ……大して強くもねぇのにさ。でも、それよりも弱い俺たちはただ逃げるしかなかったんだ」
沈んだ声の村人はハンターに縋りついて言った。
「ゴブリンがどれだけいるのか分からない。だがそれでも頼む! 村と、あのゴブリンを助けてやってくれ!!」
リプレイ本文
●
依頼のあった村。その手前まで到着したハンター達。
彼らが村人から託されたのは村の奪還、敵の殲滅、そして……極めて稀な良いゴブリンの救出だ。
「村を襲うゴブリンと、村人を助けるために戦うゴブリンか……」
依頼内容を思い出し白山 菊理(ka4305)は呟く。一般的に言えば、ゴブリンは敵性亜人だ。
「ゴブリンにも、私たちと同じ善悪のようなものがあるのかもしれないな」
「もしくは、あいつらの性格も人それぞれってことなのかしら」
人というところに疑問符をつけながらも、八原 篝(ka3104)は聞いていたゴブリンの特徴……といっても、身に着けているものぐらいしか違いはないらしいが、それを頭に思い浮かべていた。
「こういう種族の壁を越えてどうこうって繋がりはいいわね」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)は種族間恋愛の真っ最中であるためか、こういう話にはどこか親近感が沸くようだ。
(まぁ恋愛事情と同列にするのもどうかとは思うけど……)
そう心中で呟きながら難しい顔を浮かべるアルスレーテを横目に、カイン・マッコール(ka5336)はそのゴブリンの位置を占いにより割り出している夜桜 奏音(ka5754)の元に。
「どうだ?」
「……やはり中心部にいる可能性が高そうです」
占いを終えた奏音がそう告げる。
「もちろん、絶対というわけではありませんが」
「……時間も結構経つしなあ……なんとか間に合えば良いんやけど」
心配そうな声を上げる冬樹 文太(ka0124)。それにルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)も同意する。
「村人さんがあんなに必死に頼むんだもの、そのゴブリンさんを見捨てておけないんだからっ!」
「あぁ。救出できたら……これからも仲良く暮らしてほしい関係だな」
そのためにも全力を尽くすと、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は握るその手に力を入れる。
こうして、ハンターたちは行動を開始。
作戦はそう難しいものではない。2手に分かれて村に侵入し、移動するとともにその途上で敵がいたら排除、良いゴブリンがいたなら救助するといったものだ。
●
まずはB班。こちらは文太、菊理、奏音、アルスレーテの班だ。
「まだ死んでいなければ……恐らくは敵に囲まれているだろうな」
「そうね。話を聞く限り、どこかに隠れているということはなさそうだし……見つけたら死体になってましたーとかじゃないといいわねぇ」
「となれば急がないとな。高所から救助対象の位置を探る……覗くなよ?」
アルスレーテと言葉を交わした菊理は、ジェットブーツを使用して建物の屋根に上り、そのまま周辺を見渡す。
「しかし、ゴブリンを助けることになるとは珍しいこともあったものです」
「血痕やらは見当たらない……襲撃前に村人が逃げたからやな。で、ゴブリンの方はこの辺りでは戦闘していない証でもあるってわけや」
地上ではアルスレーテを先頭に奏音と文太が周辺を警戒する。
「やはり中心部だな。遠目だがゴブリンが集まっているように見える」
上から菊理がそう告げたその時だった。一発の銃声が響く。同時に、菊理の肩口から鮮血が噴出した。
「っ……! 右だ、建物の中……」
痛みをこらえながら言った菊理の言葉にすぐさま反応したアルスレーテ。家の間を抜け、菊理が指示した場所へ走りこむ。そこには、場所を移動しようとしていたゴブリン。大仰なライフルを抱えている。
「逃がさない!」
ゴブリンの足元めがけ奏音が地縛符を使用。動きを止めたところにアルスレーテが螺旋突を使用。えぐるような突きがゴブリンの腹部に突き刺さり、一撃で絶命に至らす。
「っと、出番なかったな。しかし、死角からやと直感視もうまく機能せんな……そっちは大丈夫か?」
周辺を気にしつつ文太が菊理に声をかける。
「あぁ、少し油断したな……他には見えない、大丈夫だ」
やはり建物の上にいるのは目立つ。そのため狙われたということだろう。だが、他には敵が見当たらない。
「建物の中を物色していた時にたまたまこちらが見つけられた、といったところかしらね」
菊理の運が多少悪かったということでここは納得するしかないか。
「時間を取られましたね。急ぎましょう」
襲撃を受けたこともあって周辺の警戒をより強めながら、4人は中心部に向けて移動。結果として、その歩みはA班よりやや遅れることとなった。
●
一方、A班の篝、アルト、カイン、ルンルンは襲撃を受けることなく移動し、中心部に集まっているゴブリンたちを射程にとらえた。同時に、その中心にいる傷ついたゴブリンの姿を視認できた。
「まだ無事みたいね。でも敵もこっちに気づいてはいる、か……」
武器を取りこちらに敵意を向けてくるゴブリンたち。その様子を確認しながら篝は連絡を行うために取り出していた魔導短伝話をしまうと、ピアッサーを展開。マテリアルにより自動展開する魔導機弓だ。それに龍矢を2本番え、狙いをつける。
「さて、まずは後ろの敵から……」
強くひき絞りダブルシューティングを使用。狙いは後方、遠距離に対応できそうな敵を先につぶす策。
「銃に、術具? 魔法使うやつまでいるんだ」
「道を開く!」
紅糸を使って屋根に上っていたアルト。攻撃を回避しながら飛び降りると、そのまま全力で移動しつつ散華を使用。極めて高い威力の攻撃で、立ちふさがるゴブリン三体を軽く斬り倒す。
「ん? 受けられたか。やるじゃないか」
いや、一体は近接能力が高いようで防御したようだ。そのままゴブリンが攻撃を仕掛けてくる。回避することも出来たが、アルトは刀で敢えて受ける。普通なら鍔迫り合いになるところだ。だが、そうはならない。ゴブリンの持つ武器はそのまま粉砕した。先ほどの攻撃の強さがうかがえる。
「逃げたら助かったかもな。逃がしはしないが」
一歩遅れて突っ込んできたカイン。蒼機剣が作り出した刃を飛ばし牽制しながら接近。
「こっちは何時も通りゴブリンを殺すだけだ」
杖を構えたゴブリンはなにか魔法を使おうとしたようだが、牽制を躱すので精一杯。その隙にカインは間合いまで踏み込む。そして、手早く持ち替えた大剣を上段に構え、必殺の渾身撃により頭蓋から両断する。
「B班はもうこっちに来てるわ。このまま敵を引き付けるわよ」
「了解! ジュゲームリリカルクルクルカジカル……」
逆サイドから接近する味方を見つけ声を上げる篝。それに呼応してルンルンが符を展開する。
「ルンルン忍法神降し! 生命力を最大まで生贄に、今、ニンジャの神を呼んじゃいます!!」
生命力とともに多量の符を消費することで、ルンルンは大型の式神を作り出す。
「さぁ、バトルフェイズの開始です! 行っちゃってください!!」
そのまま式神は前進。ゴブリンに突撃していく。
「このままこちらに引き寄せて戦う。いいな?」
「あぁ。こっちは問題ない」
それに合わせてカインはソウルトーチを使用。それにより接近してきた敵を薙ぎ払いで葬っていくつもりだ。アルトも短く答えながら戦闘を継続していく。
●
「さっきみたいな狙撃にも警戒してや!」
そう叫ぶと文太は銃を構える。
「大勢相手には……やっぱこの手に限るってな!」
そのまま制圧射撃を敢行。A班の方に注意が向いているため、今が救出の好機。そのために敵の足止めを行う。
「このまま敵を殲滅、足止めします。アルスレーテさんはそのまま……」
「わかってる、任せて!」
奏音が五色光符陣を使用しつつ援護。その間にアルスレーテが全力で突っ込んでいく。中心で囲まれていたゴブリン、その様子は今にも死にそうに見える。
「分かり合えるゴブリンも居る。が、貴様らはそうではないらしいからな。慈悲はやらんよ」
救助はアルスレーテに任せ、菊理はジェットブーツで跳躍。頭上からデルタレイを使用して攻撃を行う。
「その身に刻め、死の……恐怖を!」
撃ちおろされる3条の光が敵を貫き、アルスレーテの道を作り出す。
「邪魔をしないで! そこを……どきなさい!」
瀕死のゴブリンまでたどり着くと、アルスレーテは青龍翔咬波を使用。体内で練り上げていたマテリアルが一気に放出され、アルスレーテを止めようとしたゴブリンを一気に吹き飛ばす。
「よし、このまま護衛しつつ離脱するわ! 援護よろしく!」
「了解。このゴブリンには……手は出させませんよ」
そのまま離脱するアルスレーテ。それを守るように奏音は地縛符を使用。追おうとしたゴブリンがたたらを踏んでその場にとどまる。
「ちっ、ひどい怪我やな……ちゃんと婆さんとこ帰したるから、死ぬんやないで……!」
駆け抜けていくアルスレーテを背にしながら文太は手早くリロード。再度弾幕を張りゴブリンの接近を抑制。
「よし、後は任せよう。私たちはここを殲滅する!」
菊理も防御障壁をいつでも使えるようにしつつゴブリンたちから目を離さない。奏音は地縛符をさらに設置しつつ、そこから先には絶対通さない構えだ。
(救出対象はとりあえず離脱したか……)
アルスレーテに抱えられ離脱していくゴブリン。その様子を横目にカインは心中で呟く。
(あれと意思疎通ができれば奴ら……ゴブリンたちの思考や行動パターンがより明確になる可能性があるな)
人とゴブリンの共存等興味は無い。あるのはただゴブリンを殺す、その一助となるか否か。その点でカインは参加者の中で異端だった。
「さぁ、続きだ」
カインの背後から襲い掛かったゴブリン。だが、思考しながらもカインに隙は無い。その動きを刃に映すことで確認していたカインは、攻撃を的確に受け止める。
「周りの村の為にも、お前たちは皆殺しにさせてもらう」
そのまま、カウンターアタックによる全力反撃でゴブリンを両断する。
カインと並び立つアルトも同様にゴブリンを殲滅していく。ただの亜人ならば一度は警告するところだが、今回に限ってそれは無い。
(同族すらあのようにするこいつらは……)
「……人に例えれば凶悪な盗賊などと一緒だ」
飛花による炎のようなオーラをまとい、加速しながらアルトは散華を使用。先に使用したときよりもさらに高い威力の一撃を見舞っていく。無論、それで終わりではない。一切足を止めずに、アルトは素早く行動し、戦う。
「ニンジャの神! ダイレクトアタックです!」
ルンルンは式神に指示を出し攻撃を続行。巨体故に注意を引く、その目論見がうまくいっているようだ。
「それに、わたしの方にも敵の目が向かない……お陰で楽なのは確かね」
ルンルンの式神による恩恵をうけ、後方からは篝の攻撃。クイックリロードにより即時矢を番え、ハウンドバレットを使用して過たず敵を打ち抜く。
今回の敵ゴブリンは、そうは見えないが強敵だった。だが、個々が強い分その力に頼り連携行動が薄い傾向にあった。個々が強い、とは言ってもハンター側の方がより強い。それでは、数が多くても勝ち目はない。
「おぉっと! ここでトラップカード発動、ルンルン忍法土蜘蛛の術!」
ルンルンの地縛符で動きを止めたゴブリンがすぐさま追撃を受けて倒される。
こうしてハンターたちは優勢を維持したままその場にいたゴブリンたちを殲滅したのだった。
●
「……よし。結構危ないところだったけど、もう大丈夫そうね」
一足先に離脱したアルスレーテは母なるミゼリアを使用してゴブリンを治療。アルスレーテが思わず呟いたように、かなり危険な状態ではあった。だが、数度の使用を経てなんとか状態は安定したようだ。皆が用意したヒーリングポーションでもなんとかなったかもしれないが、やはり既製品より母なるミゼリアの方が効果は高い。
「あ、いたわね」
「良かったわ。例えゴブリンや亜人でも、やっぱ必要としてる人がいるなら助けたい思うからな」
そこに篝と文太がやってきた。逃げ出して潜伏したゴブリンがいないかを見回っているところだった。安心した様子の文太に対し、篝は少し難しい表情を浮かべている。
(ゴブリンが気づいたらなんで襲撃されるって知っていたのか聞きたかったんだけど……)
この分では当分安静が必要だろう。元々どう答えても何かするつもりは篝にはなかった。ここまでやられても村人を守ろうとしたのだから、少なくともこれ以上人に害をなすようなことはしないだろう。
「生き延びたやつがいればハンターの情報が洩れる可能性がある」
他方では、カインが潜伏していたゴブリンを見つけ止めを刺したところだった。
「その通りだ。こいつらは改心することもないだろう……あのゴブリンが特殊なんだ」
そういって、アルトはカインとともにさらに隠れたゴブリンがいないかを探し始める。非情かもしれないが、これは重要なことでもあった。
最終的に討伐されたゴブリンの数は37体に及んだ。一つの村を襲撃する数としてはかなりの数だ。だが、それも残さず倒され、後顧に憂いを残すことは無くなった。
「私の占いでは、これ以上ゴブリンはいないようです」
「これで終了……ですけど、この後大変ですね」
奏音が行った占いの結果を聞き、ルンルンは言った。確かに、村はかなり荒れていた。ところどころ壊された箇所もあるし、復旧にはそれなりの時間が必要だろう。
「まぁ、大丈夫だろうさ」
それを受け、菊理はそう言った。別に適当なことを言っているわけではなかった。
のちに意識を取り戻したゴブリンから襲撃を察した理由を聞くことができた。それは絵による説明であった。森の中で狩猟中に村を襲う相談をしている、かつて自分を痛めつけた仲間をみつけたことで襲撃が発覚したようだ。
「それが真実かは断言できない。あるいは、そうやって人間に取り入ろうとしているのかもしれない」
とはカインの談だが、村の人間たちはこのことを信じた。村人の為に命を投げ出そうとしたこのゴブリンの事を信じた。
菊理が大丈夫だといった真意がそこにある。
「村人の為に命を投げ出せるゴブリンと、そのゴブリンの為に涙を流した村人だ。きっと互いに協力し、すぐに村を復興させるだろうさ」
それは、きっと難しいことではないだろう。
依頼のあった村。その手前まで到着したハンター達。
彼らが村人から託されたのは村の奪還、敵の殲滅、そして……極めて稀な良いゴブリンの救出だ。
「村を襲うゴブリンと、村人を助けるために戦うゴブリンか……」
依頼内容を思い出し白山 菊理(ka4305)は呟く。一般的に言えば、ゴブリンは敵性亜人だ。
「ゴブリンにも、私たちと同じ善悪のようなものがあるのかもしれないな」
「もしくは、あいつらの性格も人それぞれってことなのかしら」
人というところに疑問符をつけながらも、八原 篝(ka3104)は聞いていたゴブリンの特徴……といっても、身に着けているものぐらいしか違いはないらしいが、それを頭に思い浮かべていた。
「こういう種族の壁を越えてどうこうって繋がりはいいわね」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)は種族間恋愛の真っ最中であるためか、こういう話にはどこか親近感が沸くようだ。
(まぁ恋愛事情と同列にするのもどうかとは思うけど……)
そう心中で呟きながら難しい顔を浮かべるアルスレーテを横目に、カイン・マッコール(ka5336)はそのゴブリンの位置を占いにより割り出している夜桜 奏音(ka5754)の元に。
「どうだ?」
「……やはり中心部にいる可能性が高そうです」
占いを終えた奏音がそう告げる。
「もちろん、絶対というわけではありませんが」
「……時間も結構経つしなあ……なんとか間に合えば良いんやけど」
心配そうな声を上げる冬樹 文太(ka0124)。それにルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)も同意する。
「村人さんがあんなに必死に頼むんだもの、そのゴブリンさんを見捨てておけないんだからっ!」
「あぁ。救出できたら……これからも仲良く暮らしてほしい関係だな」
そのためにも全力を尽くすと、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は握るその手に力を入れる。
こうして、ハンターたちは行動を開始。
作戦はそう難しいものではない。2手に分かれて村に侵入し、移動するとともにその途上で敵がいたら排除、良いゴブリンがいたなら救助するといったものだ。
●
まずはB班。こちらは文太、菊理、奏音、アルスレーテの班だ。
「まだ死んでいなければ……恐らくは敵に囲まれているだろうな」
「そうね。話を聞く限り、どこかに隠れているということはなさそうだし……見つけたら死体になってましたーとかじゃないといいわねぇ」
「となれば急がないとな。高所から救助対象の位置を探る……覗くなよ?」
アルスレーテと言葉を交わした菊理は、ジェットブーツを使用して建物の屋根に上り、そのまま周辺を見渡す。
「しかし、ゴブリンを助けることになるとは珍しいこともあったものです」
「血痕やらは見当たらない……襲撃前に村人が逃げたからやな。で、ゴブリンの方はこの辺りでは戦闘していない証でもあるってわけや」
地上ではアルスレーテを先頭に奏音と文太が周辺を警戒する。
「やはり中心部だな。遠目だがゴブリンが集まっているように見える」
上から菊理がそう告げたその時だった。一発の銃声が響く。同時に、菊理の肩口から鮮血が噴出した。
「っ……! 右だ、建物の中……」
痛みをこらえながら言った菊理の言葉にすぐさま反応したアルスレーテ。家の間を抜け、菊理が指示した場所へ走りこむ。そこには、場所を移動しようとしていたゴブリン。大仰なライフルを抱えている。
「逃がさない!」
ゴブリンの足元めがけ奏音が地縛符を使用。動きを止めたところにアルスレーテが螺旋突を使用。えぐるような突きがゴブリンの腹部に突き刺さり、一撃で絶命に至らす。
「っと、出番なかったな。しかし、死角からやと直感視もうまく機能せんな……そっちは大丈夫か?」
周辺を気にしつつ文太が菊理に声をかける。
「あぁ、少し油断したな……他には見えない、大丈夫だ」
やはり建物の上にいるのは目立つ。そのため狙われたということだろう。だが、他には敵が見当たらない。
「建物の中を物色していた時にたまたまこちらが見つけられた、といったところかしらね」
菊理の運が多少悪かったということでここは納得するしかないか。
「時間を取られましたね。急ぎましょう」
襲撃を受けたこともあって周辺の警戒をより強めながら、4人は中心部に向けて移動。結果として、その歩みはA班よりやや遅れることとなった。
●
一方、A班の篝、アルト、カイン、ルンルンは襲撃を受けることなく移動し、中心部に集まっているゴブリンたちを射程にとらえた。同時に、その中心にいる傷ついたゴブリンの姿を視認できた。
「まだ無事みたいね。でも敵もこっちに気づいてはいる、か……」
武器を取りこちらに敵意を向けてくるゴブリンたち。その様子を確認しながら篝は連絡を行うために取り出していた魔導短伝話をしまうと、ピアッサーを展開。マテリアルにより自動展開する魔導機弓だ。それに龍矢を2本番え、狙いをつける。
「さて、まずは後ろの敵から……」
強くひき絞りダブルシューティングを使用。狙いは後方、遠距離に対応できそうな敵を先につぶす策。
「銃に、術具? 魔法使うやつまでいるんだ」
「道を開く!」
紅糸を使って屋根に上っていたアルト。攻撃を回避しながら飛び降りると、そのまま全力で移動しつつ散華を使用。極めて高い威力の攻撃で、立ちふさがるゴブリン三体を軽く斬り倒す。
「ん? 受けられたか。やるじゃないか」
いや、一体は近接能力が高いようで防御したようだ。そのままゴブリンが攻撃を仕掛けてくる。回避することも出来たが、アルトは刀で敢えて受ける。普通なら鍔迫り合いになるところだ。だが、そうはならない。ゴブリンの持つ武器はそのまま粉砕した。先ほどの攻撃の強さがうかがえる。
「逃げたら助かったかもな。逃がしはしないが」
一歩遅れて突っ込んできたカイン。蒼機剣が作り出した刃を飛ばし牽制しながら接近。
「こっちは何時も通りゴブリンを殺すだけだ」
杖を構えたゴブリンはなにか魔法を使おうとしたようだが、牽制を躱すので精一杯。その隙にカインは間合いまで踏み込む。そして、手早く持ち替えた大剣を上段に構え、必殺の渾身撃により頭蓋から両断する。
「B班はもうこっちに来てるわ。このまま敵を引き付けるわよ」
「了解! ジュゲームリリカルクルクルカジカル……」
逆サイドから接近する味方を見つけ声を上げる篝。それに呼応してルンルンが符を展開する。
「ルンルン忍法神降し! 生命力を最大まで生贄に、今、ニンジャの神を呼んじゃいます!!」
生命力とともに多量の符を消費することで、ルンルンは大型の式神を作り出す。
「さぁ、バトルフェイズの開始です! 行っちゃってください!!」
そのまま式神は前進。ゴブリンに突撃していく。
「このままこちらに引き寄せて戦う。いいな?」
「あぁ。こっちは問題ない」
それに合わせてカインはソウルトーチを使用。それにより接近してきた敵を薙ぎ払いで葬っていくつもりだ。アルトも短く答えながら戦闘を継続していく。
●
「さっきみたいな狙撃にも警戒してや!」
そう叫ぶと文太は銃を構える。
「大勢相手には……やっぱこの手に限るってな!」
そのまま制圧射撃を敢行。A班の方に注意が向いているため、今が救出の好機。そのために敵の足止めを行う。
「このまま敵を殲滅、足止めします。アルスレーテさんはそのまま……」
「わかってる、任せて!」
奏音が五色光符陣を使用しつつ援護。その間にアルスレーテが全力で突っ込んでいく。中心で囲まれていたゴブリン、その様子は今にも死にそうに見える。
「分かり合えるゴブリンも居る。が、貴様らはそうではないらしいからな。慈悲はやらんよ」
救助はアルスレーテに任せ、菊理はジェットブーツで跳躍。頭上からデルタレイを使用して攻撃を行う。
「その身に刻め、死の……恐怖を!」
撃ちおろされる3条の光が敵を貫き、アルスレーテの道を作り出す。
「邪魔をしないで! そこを……どきなさい!」
瀕死のゴブリンまでたどり着くと、アルスレーテは青龍翔咬波を使用。体内で練り上げていたマテリアルが一気に放出され、アルスレーテを止めようとしたゴブリンを一気に吹き飛ばす。
「よし、このまま護衛しつつ離脱するわ! 援護よろしく!」
「了解。このゴブリンには……手は出させませんよ」
そのまま離脱するアルスレーテ。それを守るように奏音は地縛符を使用。追おうとしたゴブリンがたたらを踏んでその場にとどまる。
「ちっ、ひどい怪我やな……ちゃんと婆さんとこ帰したるから、死ぬんやないで……!」
駆け抜けていくアルスレーテを背にしながら文太は手早くリロード。再度弾幕を張りゴブリンの接近を抑制。
「よし、後は任せよう。私たちはここを殲滅する!」
菊理も防御障壁をいつでも使えるようにしつつゴブリンたちから目を離さない。奏音は地縛符をさらに設置しつつ、そこから先には絶対通さない構えだ。
(救出対象はとりあえず離脱したか……)
アルスレーテに抱えられ離脱していくゴブリン。その様子を横目にカインは心中で呟く。
(あれと意思疎通ができれば奴ら……ゴブリンたちの思考や行動パターンがより明確になる可能性があるな)
人とゴブリンの共存等興味は無い。あるのはただゴブリンを殺す、その一助となるか否か。その点でカインは参加者の中で異端だった。
「さぁ、続きだ」
カインの背後から襲い掛かったゴブリン。だが、思考しながらもカインに隙は無い。その動きを刃に映すことで確認していたカインは、攻撃を的確に受け止める。
「周りの村の為にも、お前たちは皆殺しにさせてもらう」
そのまま、カウンターアタックによる全力反撃でゴブリンを両断する。
カインと並び立つアルトも同様にゴブリンを殲滅していく。ただの亜人ならば一度は警告するところだが、今回に限ってそれは無い。
(同族すらあのようにするこいつらは……)
「……人に例えれば凶悪な盗賊などと一緒だ」
飛花による炎のようなオーラをまとい、加速しながらアルトは散華を使用。先に使用したときよりもさらに高い威力の一撃を見舞っていく。無論、それで終わりではない。一切足を止めずに、アルトは素早く行動し、戦う。
「ニンジャの神! ダイレクトアタックです!」
ルンルンは式神に指示を出し攻撃を続行。巨体故に注意を引く、その目論見がうまくいっているようだ。
「それに、わたしの方にも敵の目が向かない……お陰で楽なのは確かね」
ルンルンの式神による恩恵をうけ、後方からは篝の攻撃。クイックリロードにより即時矢を番え、ハウンドバレットを使用して過たず敵を打ち抜く。
今回の敵ゴブリンは、そうは見えないが強敵だった。だが、個々が強い分その力に頼り連携行動が薄い傾向にあった。個々が強い、とは言ってもハンター側の方がより強い。それでは、数が多くても勝ち目はない。
「おぉっと! ここでトラップカード発動、ルンルン忍法土蜘蛛の術!」
ルンルンの地縛符で動きを止めたゴブリンがすぐさま追撃を受けて倒される。
こうしてハンターたちは優勢を維持したままその場にいたゴブリンたちを殲滅したのだった。
●
「……よし。結構危ないところだったけど、もう大丈夫そうね」
一足先に離脱したアルスレーテは母なるミゼリアを使用してゴブリンを治療。アルスレーテが思わず呟いたように、かなり危険な状態ではあった。だが、数度の使用を経てなんとか状態は安定したようだ。皆が用意したヒーリングポーションでもなんとかなったかもしれないが、やはり既製品より母なるミゼリアの方が効果は高い。
「あ、いたわね」
「良かったわ。例えゴブリンや亜人でも、やっぱ必要としてる人がいるなら助けたい思うからな」
そこに篝と文太がやってきた。逃げ出して潜伏したゴブリンがいないかを見回っているところだった。安心した様子の文太に対し、篝は少し難しい表情を浮かべている。
(ゴブリンが気づいたらなんで襲撃されるって知っていたのか聞きたかったんだけど……)
この分では当分安静が必要だろう。元々どう答えても何かするつもりは篝にはなかった。ここまでやられても村人を守ろうとしたのだから、少なくともこれ以上人に害をなすようなことはしないだろう。
「生き延びたやつがいればハンターの情報が洩れる可能性がある」
他方では、カインが潜伏していたゴブリンを見つけ止めを刺したところだった。
「その通りだ。こいつらは改心することもないだろう……あのゴブリンが特殊なんだ」
そういって、アルトはカインとともにさらに隠れたゴブリンがいないかを探し始める。非情かもしれないが、これは重要なことでもあった。
最終的に討伐されたゴブリンの数は37体に及んだ。一つの村を襲撃する数としてはかなりの数だ。だが、それも残さず倒され、後顧に憂いを残すことは無くなった。
「私の占いでは、これ以上ゴブリンはいないようです」
「これで終了……ですけど、この後大変ですね」
奏音が行った占いの結果を聞き、ルンルンは言った。確かに、村はかなり荒れていた。ところどころ壊された箇所もあるし、復旧にはそれなりの時間が必要だろう。
「まぁ、大丈夫だろうさ」
それを受け、菊理はそう言った。別に適当なことを言っているわけではなかった。
のちに意識を取り戻したゴブリンから襲撃を察した理由を聞くことができた。それは絵による説明であった。森の中で狩猟中に村を襲う相談をしている、かつて自分を痛めつけた仲間をみつけたことで襲撃が発覚したようだ。
「それが真実かは断言できない。あるいは、そうやって人間に取り入ろうとしているのかもしれない」
とはカインの談だが、村の人間たちはこのことを信じた。村人の為に命を投げ出そうとしたこのゴブリンの事を信じた。
菊理が大丈夫だといった真意がそこにある。
「村人の為に命を投げ出せるゴブリンと、そのゴブリンの為に涙を流した村人だ。きっと互いに協力し、すぐに村を復興させるだろうさ」
それは、きっと難しいことではないだろう。
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相談卓 カイン・A・A・カーナボン(ka5336) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/06/20 22:38:53 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/18 12:53:33 |