清泉に揺蕩う青黒い影

マスター:猫城嗟嘆

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/06/22 09:00
完成日
2017/06/26 22:44

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●薬草の生える泉

「お兄ちゃんの病気を、治さなきゃ……」
 少女ラリスは森の中をさまよい歩いていた。
 森は鬱蒼として緑濃く、少女の足取りを咎めるようにして生い茂る。
「森のいちばん深いところにきれいな泉が湧いていて、その周囲に薬草は生えている……」
 ラリスは一人呪文を唱えるようにしながら歩く。
 心身共に疲弊し切っていたはずだが、病気の兄を憂う気持ちがその足を速まらせた。
「あれは……!」
 やがてラリスの目に映る景色が変わる。
 樹々の縦列がまばらになり、青草の茂る広い空間へと突き当たる。
「泉だわ……なんてきれいな……」
 森の開けた草地の奥にあったのは泉だった。
 周囲に高く伸びる樹々の緑を反射して、キラキラと美しい水面を湛えている。
「こんなにきれいな泉だもの、必ず、近くには熱病に効く薬草が生えているはず」
 ラリスは泉のほとりにまで近付いて、周囲へと目を凝らした。
 俯きながら歩を進め、その緑の絨毯に生えているはずの薬草を探す。
「シャアア……」
 不意に、ラリスの背後、泉の付近から不穏な音が響き渡った。
「シャアアア……」
 しかし薬草探しに夢中になっていたラリスは最初それには気付かなかった。
「あった、これだわ! 文献で見た形と同じ! 熱病に効く薬草よ!」
 そこでラリスはついに目当ての薬草を見つけたらしく声を上げる。
 歓喜して俯かせていた体を起こすと、そこでようやく泉の上に発生していた異変に気付く。 
「……!」
 ラリスの目に映ったのは、不気味な青黒い影――
 泉の水面の上へと伸びて揺らめいている人の形をした影だった。
 影はユラユラと揺らめきながらラリスの方へと近付いて来る。
「きゃ……キャアアアッ!」
 ラリスが声を上げた瞬間、水面の上の青黒い影から何かが放たれた。
 それは水のかたまり――弾丸のように空中を走る青い水のつぶてが、ラリス目がけて襲い来る。
「……いやあっ、来ないでッ!」
 ラリスは水のつぶてから逃げるようにして走る――
 慌てて走り出したために足がもつれ、草の上へと盛大に転んでしまった。 
 しかし転んだことで、空中を走る青い水のつぶてを回避。
 ラリスの頭上をかすめた水のつぶてはそのまま空中を走り、その先に生えていた樹の幹を穿って散った。
 成人男性の胴回りほどの太さの樹が被弾の衝撃で中途から盛大に折れ曲がり、やがてガサガサと葉々の擦れる音を立てながら地へと倒れた。
「お兄ちゃん……!」 
 ラリスは兄を想いながら、来た道を辿って樹々の中を走る。
 手に薬草を握りしめ、決して後ろは振り返らずに森の中の道を駆け抜けていった。

●少女の涙

「そうかいそうかい。さぞ怖かっただろう」
 ハンターズソサエティの支部職員は、優しく少女の頭を撫でてやった。
「……お兄ちゃんの病気を治すためだから、絶対薬草を持って帰らなきゃって必死で逃げてきたの……」
 頭を撫でられながら少女――ラリスはそう説明した。
 嗚咽しながら、目に涙を浮かべて話している。
 その手には兄の病気を治すための薬草がしかと握られていた。
「あの森は熱病に効く薬草の群生地で、人々の訪れる機会も多いだろう。今回のように若い子供に被害が及ぶのは憂慮すべきことだ」
 支部職員はラリスの頭を撫でるのを止めて言った。
「恐らく、薬草を探していて泉に落ちて溺れ死んだ者や、薬草を摘んでも愛する者の病を治せなかった者の怨念が雑魔の源流となっているのだろう。早めに駆逐せねば新たな被害者が生まれるに違いない」
 支部職員は眼前のラリスの涙する姿を見つめ、二度と彼女のような無垢なる被害者を出すまいと誓い、ハンター依頼の手続きを始めた。

リプレイ本文

● 森の泉へ

「有ったぜ、泉だ」
 鬱蒼と生い茂る木々に挟まれた細道。
 森の中のその細道に、六人のハンターが歩を進めていた。
 最初に泉を見つけ声を上げたのは、一行の先頭を行く屈強そうな体付きの青年――龍崎・カズマ(ka0178)だった。
 カズマは仲間たちに教えると、変わらぬペースのまま泉の見える草地へと突き進んでいく。
「カズマさん、みんな、気を付けるっす。いつどこで雑魔が現れるとも限らないっす」
 整った綺麗な顔をブロンドヘアで飾る青年――無限 馨(ka0544)が、カズマと、後続する仲間たちに注意を呼び掛ける。
「森が開けて、木がまばらになった草地に泉が湧いている――ラリスの話にあった通りだね!」
 黒く長い髪をなびかせてそう言うのは、時音 ざくろ(ka1250)。
 嬉しそうな声色、元気が有り余っているのか、ほとんどスキップしながら歩を進めていた。
「しかし、ざくろが男じゃったとはな……どうしてこのようなキッカイな扮装をすることになったのか、酒でも酌み交わしながらイキサツを聞きたいものじゃ」
 そんな風に言い横を歩く、女児のような背格好のレーヴェ・W・マルバス(ka0276)。
 胸の豊かなふくらみからすると、こちらは正真正銘の女性のようだ。
「……依頼主によると、少女は病に伏す兄の為に薬草を摘んでいたとか……信じられない……わたしの、異常なシスコン兄貴とは違う、正常な兄だったのだろうか……わたしにとって、兄は変態……異質な存在……」
 雨月彩萌(ka3925)が、後ろを歩きながら何やら自問自答している。
 眼鏡の奥の両の眼を鋭く尖らせ、何かについて煩悶していた。
「……」
 一行の最後尾では、シュネー・シュヴァルツ(ka0352)が押し黙ったままで歩いている。
 濡れ羽色の長い髪、白い肌、折れてしまいそうなほど華奢な体。
 美しい女性だったが、どこか生命力に乏しい。
「さあ、泉のほとりへと接近するぜ。みんな気を引き締めて行けよ。シュネー、付いて来ているな?」
「……は、はい……」
 カズマが、鼓舞するように仲間たちに呼び掛ける。
 一行の最後尾で会話の輪に入らないでいるシュネーへの気遣いも見せた。
 不意にカズマに声をかけられたシュネーは吃驚して、今にも消え入りそうな声で応えた。顔を俯かせ、どこか気恥ずかしそうにしている。
 そうして六人のハンターが、中央に美しい泉を湛える草地へと侵入してゆく――

● 出現

「薬草、どこに生えてるんすかね? 雑魔との戦闘でその群生地をダメにしないようにしたいっす」
 無限が、誰とはなしに聞く。
 木々に挟まれた細道から、草地へと侵入した六人。
 泉を中央に配した円形の草地の直径は四十メートルほど。
 泉の直径はおよそ二十メートルで、だから草地は十メーター幅を保って泉の周りを取り囲んでいることになる。
「……少女……ラリスの、話に、よれば……薬草は草地の奥……」
「そうそう! ラリスは、道から見て泉を隔てた反対側の場所に生えているって言っていたよ!」
 口を開いたのは、シュネーとざくろ。
 二人は、先だってラリスに直接話を聞きに行っていたらしかった。
 機転を利かせた二人のファインプレイと言える。
「シュネーさん、ざくろさん、流石っすね。これで薬草の群生地を荒らすことなく戦えるっす」
 無限が二人を褒める。
「へへん!」
「……」
 ざくろは誇らしげに胸を張る、と言っても、少女のような風体の、その胸に膨らみはない。男なのだから当然だ。
 シュネーの方はと言うと、また少し気恥ずかしそうにして、顔を俯かせてしまった。
「……兄の為に命がけで薬草を摘みに行った少女ラリス……それは、正常な事なのか? 命がけで兄を救おうと思う気持ちが、わたしにも芽生える事があるのか? 兄を忌避するわたしの感情こそが、異質なのか……?」
 相変わらず、一人自問するようにして呟いているのは彩萌。
 眼鏡の奥に、どこか悲しげな色を湛えながら思いを巡らせている様子だ。
「……じゃあ、俺が囮になって雑魔を誘き出してみるっす。とりあえず、群生地まで行って薬草を摘む素振りを見せるっす」
 無限は言って、一人草地の奥へと進んで行く。
「無限よ、十分に気を付けるのじゃぞ」
 念を押すレーヴェ。
 無限は背中で返事をし、中央の泉の縁を迂回するようにして円く歩き、奥へと向かった。
「ふんふーふふんふんふー♪」
 鼻歌交じりに歩く無限。残された五人も、ゆっくりと動き始める。
 泉から一定の距離を保ちながら草地を歩き、泉を包囲するようにしてそれぞれが配置に着いた。
「うぇるかむとぅーよーこそグラズヘイム♪ きょうもあーさかーらハンターかーぎょう♪」
 無限が泉を隔てた反対側、草地の奥へと到着し、腰をかがめる。
 背中で気配を感じることは怠らずに、地面へと視線を落とし、薬草を探す素振りを始めた。
「イルダーナよーいとこいちどーはおいでー……」
 無限の鼻歌が徐々に小さくなってゆき、そして途切れた、次の瞬間――
「来た……泉の、水面が盛り上がっていく――雑魔じゃっ!」
 レーヴェが叫んだのと同時、泉の水面上に異変が起きる。
 仲間たちが泉の水面へと目をやれば、そこには人の形を成した青黒い影が浮かび上がって来ていた。
 青黒い影は水面からジョルジョルと伸び上がり、その体を蜃気楼さながらに揺らめかせている。
 水で出来ているらしいその体の輪郭を小刻みに波立たせながら、流動的に自身の存在を成り立たせていた。
「……おいでなすったな。さあ、俺の『生』を証明する時間だ……楽しませてもらうぜ!」
 カズマが高らかに叫び、仲間たちも身構える。
 出現した、泉を拠り所とする水の雑魔。
 その闘いの火蓋が切って落とされた。

● 応酬、そして

「シャアアアア……」
 雑魔――人の形を成した水由来の青黒い影が水面の上を動く。
 脚、と言うよりは、水面から繋がって伸びるモチのような形状の下半身を横移動――泉の奥の草地で薬草を摘むフリをしている無限の元へと迫り寄った。
「なんとキッカイな……一体どういう理屈で形を成している存在なのか。捕獲して研究材料にしたいくらいじゃが、そういうわけにもいくまい」
 泉の後方で成り行きを見届けているレーヴェが、雑魔を一見して評した。好奇心旺盛な彼女ならではの発想と言える。
「ふんふーふふんふん、ふんふんふ~♪♪」
 無限は気付かないフリを続けながら、さりげなく動いた。
 泉の縁ギリギリにまで雑魔を誘き寄せた後、次に薬草の群生地から離れるようにして左方向へと歩く。
 泉の縁にまで移動して来た雑魔も、無限の歩くのに倣って左方向へと動いた。
「……何が有効かわからねえ。先ずは色々と試させてもらうぜっ!」
 カズマが叫び、動く。
 手に持った『雷虹剣カラドボルグ』をひるがえし、泉の縁に立つ雑魔へと迫った。
 カズマの髪と、そして瞳の色が、緑色に変わる。
 それは扱う武器属性によって髪と瞳の色を変えるという、カズマの覚醒の証――
「――『牙』ッ!」
「シャアアアアッ……!」
 カズマが吠え、泉の縁に立つ雑魔の胴を斬り抜ける。
 『雷虹剣カラドボルグ』の稲光の様に輝かしい刀身が閃き、翔けた。
 胴を斬断される雑魔――しかし上下二つに分断されたはずの雑魔の体は、やがてジョルジョルと水由来の体を、膨張・再生。
 上半身側と下半身側両方から伸びて膨張した体は、すぐに繋ぎとめられ元へと戻ってしまった。
「成程な……ならば次はコイツだ。『禍炎剣レーヴァティン』!」
 カズマは『禍炎剣レーヴァティン』を手に掲げる。
 カズマの髪と瞳が、燃えるような赤色に変わる――
「シャアアアアッ……!」
 カズマの再びの『牙』が雑魔の胴を斬り抜けるが、結果は先と同じ。
 分断させられた雑魔の体は直ぐに再生して元へと戻ってしまった。
「そうかい……ならば片っ端から見舞わせてもらうぜッ!」
 カズマは次々に装備を変える。
 『影殺剣カル・ゾ・リベリア』『莫邪宝剣』『霊氷剣コキュートス』と、装備を持ち替えながら『牙』を放つが、どれも雑魔に大きなダメージを与えている様子はなく、その体は直ぐに元の状態へと再生されてしまった。
 唯一『水晶剣メグ・ゼ・スクロ』で攻撃した時にだけ、雑魔の体の再生速度が遅くなることが認められた。
「地属性でのみ効果的なダメージを期待できるものの、それでも致命傷には至らない……か」
 カズマが一通りの攻撃を試してみた結果を省みる。
 すると、突如として無限とカズマの方へと向いていた雑魔が向きを変え、泉の中央へと寄ってゆく。
「シャアアアアッッ!!」
 泉の中央へと移動した雑魔が青黒い腕を伸ばし、その腕の先端から飛び出させてきたのは水のつぶてだった。
「危ないっ、みんな逃げてッ!」
 ざくろが叫ぶ。
 水のつぶてが雑魔の腕の先端から四方へと飛び、それぞれがレーヴェとシュネー、ざくろと彩萌を急襲。
 ざくろの声によって一早く反応していた四人は水のつぶてを回避――レーヴェに至っては、『クドネシリカ』により水のつぶてを斬り散らす好反応まで見せていた。
 三発の水のつぶては草地を取り囲む森の木の幹へとそれぞれ衝突し、それらを盛大に圧し折る。
「みんなっ! クソっ……また自分が囮になって雑魔を引き付けるっす!」
 雑魔の攻撃の標的が変わってしまったことを受け、無限が動く、しかし―― 
「……無限さんにばかり危険な目に合わせていられない……今度は私が……」
 そう言って動いたのは、シュネー。
 泉の左奥方向にいる無限を目で制し、自らが囮役となって泉へと近付いてゆく。
「……さあ、来なさい。今度はわたしがお相手しますよ……」
 シュネーが雑魔を挑発する。
 泉の縁へと接近し雑魔の動きを誘導した。
「シャアアアアッッ……!!」
 シュネーは『瞬脚』を使って駆け回り、時に『ユナイテッド・ドライブ・ソード』を振り回し攪乱しながら雑魔の注意を引いた。
「……仲間の事を思い、自らが危険を買って出るのは正常……? わからない……しかし、わたしは、わたしにできることをする……!」
 静かに、しかし確かな声調で叫んだのは彩萌だった。
 彩萌は『攻性防壁』を発動。
 光の障壁を纏うと、雑魔を引き付けて駆け回るシュネーと合流。自分へと雑魔の攻撃が向くよう積極的に動いた。
「女の子ばかり危険な目に合わせてはいられないよ!」
 ざくろが、高らかに声を上げた。
 声を上げるやいなや『マテリアルアーマー』によって防御膜を形成。
 一時的に防御力を高めさせた体で雑魔に向かって突っ込み、シュネーと彩萌の間に割って入るようにして雑魔の注意を自らに引きつけた。
「シャアアアアッッ……!!」
 雑魔は気勢を増し、泉の中央から水のつぶてを撃ち放つ――しかし標的たちの動きに翻弄され、狙いを定められない。
 シュネー、彩萌、ざくろは巧みに連携を取りながら雑魔の注意を引き、その注意を分散させながら草地の上を駆け回った。
 雑魔は時に腕を無数に産出、最大八本の腕の先端から水のつぶてを撃ち放つが、それでも縦横無尽に駆け回る三人を捉えることはできなかった。
「巧い連携じゃ、シュネー、彩萌、ざくろ! よし……私の出番じゃな!」
 三人が雑魔の注意を引きつけている隙に、その後方からレーヴェが動き始める。
 『魔導銃モールズ』の弾丸にマテリアルを込め、気を研ぎ澄ませる――
「食らえぃっ、『レイターコールドショット』じゃっ!!」
 レーヴェの手に握られた『魔導銃モールズ』から弾丸が撃ち放たれる。
 弾丸は、シュネーたちに気を取られている雑魔の背中目掛けて翔け、そして命中。
「シャアアアアアアッッッッ……?!!」
 雑魔は自らの身に何が起きたのか理解できず、叫び惑う。
 すると、雑魔の体の『レイターコールドショット』が被弾した箇所が変質――水由来の体が氷結し始め、固まってゆく。
「やったっす、見事命中っす! 流石はレーヴェさんっす!」
「雑魔の体が凍り始めていきやがる。これなら……!」
 傍らで様子を眺めていた無限とカズマも感嘆の声を上げる。
「予想した通りの変化じゃ。雑魔の体が水で出来ているのならば、冷気によって氷結するのは道理っ!」
 レーヴェがニヤリと口の端を歪めて語る。
 そうしてる間にも雑魔の体は見る見るうちに凍結し、凝り固まってゆく。 
「シャ……ジャアアアアアッッッッッ!!!」 
 上半身、下半身、そしてそこから伸びてつながる泉の水面までがキャチキャチと涼しげな音を立てながら氷結。
 そう長くはない時間を経た後、泉全体が凍結して氷となり、雑魔も禍々しい様相を鎮静化、完全に沈黙した。
「やった……やりました……!」
 囮役として奮闘していた彩萌が動きを止め、喜びの声を上げる。
「……いや、まだだ。最後の仕上げが残っている……」
 応えたのはカズマ。
 手に『水晶剣メグ・ゼ・スクロ』を掲げ、凍り付いた泉へと近付いてゆく。
「無念の亡霊たちよ……安らかに眠ってくれ――『連撃』ッッ!!」
 カズマが猛り、泉の氷上を駆け抜ける。
 そのまま、泉の中央で無残な姿のまま氷結している雑魔の体を連続で強襲。
 幾度となく繰り出された『連撃』によって雑魔の体は破砕、崩壊――幾千、幾万もの氷の破片となって散り舞い、やがて完全に消失。
 カズマは次いで、凍結している泉自体を剣で破壊。
 凄まじい剣撃、連斬の嵐で凍った泉を割断、破砕させ、それが無くなるまで散らしてゆく。
 やがて泉に満ちていた氷が全て散り砕けて無くなった頃、その土底が顔を覗かせ、そこに見つけられた何かへと、カズマが声をかけた。
「やっぱり有った……さぞ苦しかったろう。もう怖がらないで良いんだぜ」
 カズマが声をかけた先、泉の土底に有ったのは骨――憐れましい姿で横たわる人間の白骨死体だった。
 カズマは、不思議と朽ち果てないままでいるその白骨死体を優しく腕へと抱きかかえてやった。
「……慰霊碑を作ってやりましょう。それできっと、この者の魂も報われるはず……」
 白骨死体を抱くカズマを見守りながら、提案したのは彩萌だった。
「そうじゃな。骨を埋めて塚を設け、二度とこのような悲劇が起こらぬようにしてやるのが我々の使命じゃろう」
 レーヴェも賛同する。
 カズマは腕に抱く白骨死体を草地まで運んで降ろし、それから六人全員でそこへ穴を掘った。
 掘った穴へと骨を埋め土を盛り、頃合いの大きさの石を運んできて置いてやる。
 六人はその石塚に向かって鎮魂の祈りを捧げ、そうして泉の底へとわだかまっていた無念の魂は浄化させられたのだった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 豪傑!ちみドワーフ姐さん
    レーヴェ・W・マルバス(ka0276
    ドワーフ|13才|女性|猟撃士
  • 癒しへの導き手
    シュネー・シュヴァルツ(ka0352
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • スピードスター
    無限 馨(ka0544
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • エメラルドの祈り
    雨月彩萌(ka3925
    人間(蒼)|20才|女性|機導師

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/06/20 19:20:57
アイコン 【相談】
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/06/22 08:11:14