ゲスト
(ka0000)
リーラン村の森での蜘蛛雑魔遭遇戦
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/22 07:30
- 完成日
- 2017/06/28 00:17
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●グラズヘイム王国ラスリド領リーラン村
現領主のラスリド伯爵の息子であり、代理で何かと厄介事の多いリーラン村を代理で統治するレイルは元は村長宅だった自らの家で、食後の紅茶を飲みながら執務机に手書きの周辺地図を広げていた。
「何してんだい、旦那。ピクニックに行く相談なら乗るよ」
いつ来たのか覚醒者でもある女鬼のアオユキが、レイルの傍らに立って地図を覗き込んだ。彼女は副官であり、直接戦闘が得意ではないレイルの代わりにリーランの私兵を率いる事が多い。つい先日も、突然変異で強くなったコボルドの件で出兵していた。
「ゆっくりとピクニックをしたいのはやまやまなんだけどな」
椅子に背を預け、レイルは苦笑する。
「例の森を再調査すべきかと思案してたところだ。アオユキはどう思う?」
「アタイに聞かれてもなあ。頭を使う仕事は苦手だよ。その為に旦那がいるんだろ」
「身も蓋もないが、その通りといえばその通りか」
ため息をつきつつ、机上の地図に視線を這わせる。
「以前にも調査を行ったらしいが、その時は怪しいものは発見できなかったそうだ。しかし妙だとは思わないか? やたらとあの森には雑魔が生息している。幾度もハンターに退治してもらっているのに、ある時急にどこかから生まれたみたいに突然現れるんだ」
机に片手を置いて立つアオユキが、上からレイルの顔を覗き込むようにして眉をひそめる。
「まさか旦那は、何者かが意図的に雑魔を作ってるとでもいうのかい?」
「ありえない話ではないだろう。先日だって、コボルドを意図的に繁殖させて突然変異の誕生を待ち、さらに変種同士を繁殖させて強力な個体を生み出すという荒業を実行した歪虚がいたくらいだ。それも単純に面白いからという理由でな」
歪虚は変種のコボルドを殲滅してくれたハンターからの、詳細な報告書を読んだ時にはたまらず頭を抱えてしまったほどだ。
「歪虚が雑魔を作って遊んでるかもしれないって? 仮にそうだとしても、何でこんな辺鄙な村を狙うんだい」
「歪虚の仕業と決まったわけではないし、意図的に村を狙っているのかも不明だ。単純に森のそばに村があるという理由かもしれないしな」
そうした諸々の疑問を解消するためにも、やはり調査はすべきかもしれない。カップに残っていた紅茶を飲み干すと、レイルは立ち上がって副官の女鬼へ指示を出すのだった。
●森の調査
「相変わらず薄気味の悪い森だね」
自らを掻き抱くようにしながら、アオユキが歩を進める。そのすぐ後ろにはレイルが続く。周囲を固めるのは依頼を受けたハンターだ。
有事の際にはアオユキがレイルを護衛し、ハンターが敵の殲滅にとりかかる。幾度も森に雑魔が出現しているがゆえの陣形だった。
「ここが一番奥か。やはり何もないな……」
鬱蒼と茂った森は日中なのに薄暗く、アオユキが言う通り不気味さが濃く漂っている。
「旦那の考えすぎだったみたいだね。もう少し調査したら戻ろうじゃないか」
「そうするか」
周囲を守るハンターがレイルを押しとどめる。何かと問おうとした矢先、周りの茂みがガサリと鳴った。
「……敵かい。やっぱりここに何かあるってのかい? まいったね」
髪の毛をボリボリと掻くアオユキは斧を構え、レイルもレイピアを抜く。
現れたのは明らかに従来のとは違う巨大な蜘蛛だった。
「とにかく、まずはこの場を切り抜けるのが先決か。戦いに加われば足手まといになってしまう。アオユキに守られながら、おとなしくしているよ。ハンターの方々にだけ危険をおしつけるようで申し訳ないが、よろしくお願いする」
レイルが敵の見当たらない後ろに下がると、ハンター達は改めて急にどこからか現れた蜘蛛歪虚と対峙した。
現領主のラスリド伯爵の息子であり、代理で何かと厄介事の多いリーラン村を代理で統治するレイルは元は村長宅だった自らの家で、食後の紅茶を飲みながら執務机に手書きの周辺地図を広げていた。
「何してんだい、旦那。ピクニックに行く相談なら乗るよ」
いつ来たのか覚醒者でもある女鬼のアオユキが、レイルの傍らに立って地図を覗き込んだ。彼女は副官であり、直接戦闘が得意ではないレイルの代わりにリーランの私兵を率いる事が多い。つい先日も、突然変異で強くなったコボルドの件で出兵していた。
「ゆっくりとピクニックをしたいのはやまやまなんだけどな」
椅子に背を預け、レイルは苦笑する。
「例の森を再調査すべきかと思案してたところだ。アオユキはどう思う?」
「アタイに聞かれてもなあ。頭を使う仕事は苦手だよ。その為に旦那がいるんだろ」
「身も蓋もないが、その通りといえばその通りか」
ため息をつきつつ、机上の地図に視線を這わせる。
「以前にも調査を行ったらしいが、その時は怪しいものは発見できなかったそうだ。しかし妙だとは思わないか? やたらとあの森には雑魔が生息している。幾度もハンターに退治してもらっているのに、ある時急にどこかから生まれたみたいに突然現れるんだ」
机に片手を置いて立つアオユキが、上からレイルの顔を覗き込むようにして眉をひそめる。
「まさか旦那は、何者かが意図的に雑魔を作ってるとでもいうのかい?」
「ありえない話ではないだろう。先日だって、コボルドを意図的に繁殖させて突然変異の誕生を待ち、さらに変種同士を繁殖させて強力な個体を生み出すという荒業を実行した歪虚がいたくらいだ。それも単純に面白いからという理由でな」
歪虚は変種のコボルドを殲滅してくれたハンターからの、詳細な報告書を読んだ時にはたまらず頭を抱えてしまったほどだ。
「歪虚が雑魔を作って遊んでるかもしれないって? 仮にそうだとしても、何でこんな辺鄙な村を狙うんだい」
「歪虚の仕業と決まったわけではないし、意図的に村を狙っているのかも不明だ。単純に森のそばに村があるという理由かもしれないしな」
そうした諸々の疑問を解消するためにも、やはり調査はすべきかもしれない。カップに残っていた紅茶を飲み干すと、レイルは立ち上がって副官の女鬼へ指示を出すのだった。
●森の調査
「相変わらず薄気味の悪い森だね」
自らを掻き抱くようにしながら、アオユキが歩を進める。そのすぐ後ろにはレイルが続く。周囲を固めるのは依頼を受けたハンターだ。
有事の際にはアオユキがレイルを護衛し、ハンターが敵の殲滅にとりかかる。幾度も森に雑魔が出現しているがゆえの陣形だった。
「ここが一番奥か。やはり何もないな……」
鬱蒼と茂った森は日中なのに薄暗く、アオユキが言う通り不気味さが濃く漂っている。
「旦那の考えすぎだったみたいだね。もう少し調査したら戻ろうじゃないか」
「そうするか」
周囲を守るハンターがレイルを押しとどめる。何かと問おうとした矢先、周りの茂みがガサリと鳴った。
「……敵かい。やっぱりここに何かあるってのかい? まいったね」
髪の毛をボリボリと掻くアオユキは斧を構え、レイルもレイピアを抜く。
現れたのは明らかに従来のとは違う巨大な蜘蛛だった。
「とにかく、まずはこの場を切り抜けるのが先決か。戦いに加われば足手まといになってしまう。アオユキに守られながら、おとなしくしているよ。ハンターの方々にだけ危険をおしつけるようで申し訳ないが、よろしくお願いする」
レイルが敵の見当たらない後ろに下がると、ハンター達は改めて急にどこからか現れた蜘蛛歪虚と対峙した。
リプレイ本文
●森の調査
日中でも薄暗い森に、複数人の足音が響く。各種装備に身を包んだハンター達が、森を調査するレイルらに同行して、身辺を警護中だった。
光源がなければ進めないほどではないが、外に比べて森の中の視界が良好とは言えない。レイルを真ん中に隊列を組みながら、ハンターは油断なく視線を周囲に飛ばす。
「鬼の副官を連れた人間……良ィ時代になったもんだなァ。護る大将を見つけたか……そりゃァ強くなんなァ」
レイルを守りながら歩く女鬼を、感慨深そうに見る柊羽(ka6811)は嬉しそうでもあった。
「レイルの旦那も良いやつだが、リーランに守りたい奴らがいるのさ。まあ、人間の為にやってるのは変わらないけどね」
「結構な理由じゃァねェか。悪くねェと思うぜ」
照れ臭そうなアオユキの肩を、柊羽は楽しげに叩いた。
和やかなやりとりを横目で眺めつつ、仲間同様に警戒を続けていたミオレスカ(ka3496)が足を止める。
「お話はそこまでにした方が良さそうですね。どうやら歓迎したくないお客様がいらしたようです」
ミオレスカの注意を裏付けるように生まれる複数の気配。闇に浮かんだ禍々しい赤い輝きが、ギロリとハンターに向けられる。
外見は蜘蛛だが大きさが異なる。一見して普通ではないとわかるほどだ。
「普通の蜘蛛じゃないな。雑魔か」
生唾を呑み込むレイルに、アオユキが片手を伸ばす。
「旦那、下がってな」
「そうね。前に出られたら足手まといだわ。依頼者である以上、死なれたら困るのよ」
淡々と言葉を紡いだのはジェーン・ノーワース(ka2004)だった。
だが内容は厳しくとも紛れもない真理。レイルが下がるのに合わせて、ヴァイス(ka0364)が一歩前に出る。
「目視出来る奴以外にも敵の気配を感じる。皆、周囲への警戒を怠るな!」
戦闘能力の低いレイルを下げ、アオユキを含めた数人で素早く隊列を組み直す。移動ではなく戦闘を目的にしており、前へ出ようと窺うのはユーレン(ka6859)だ。
「囲まれたか。ならば我が前へ出て、敵の攻撃を引き受けよう」
「危険だよ」
アオユキの緊張を纏った声に、メイスファイティングで肉体を活性させたユーレンは苦い笑みを顔に張りつける。
「しょうがあるまい。我はまだ、扇風機と揶揄されても言い返せぬ体たらくだからな」
護衛の為にレイルのそばに立ちつつ、龍宮 アキノ(ka6831)は興味という煌めきを瞳の奥に宿らせる。
「クモはこれほどの大きさになれば本来の機動力が削がれるはずだけど、これがマテリアルの力って奴かい? 面白いねぇ。悪いけど、そいつの仕組みを探りたいんで解剖させてもらおうか」
人間の言語ができているようには見えないが、挑発じみたアキノの言動に合わせて複数の蜘蛛が動き出す気配を見せた。
●戦闘開始
ジェーンが着火の指輪を使い、薄暗い闇に揺らめく小さな火を生まれさせる。
「まずは光源に対する敵の動きを確認しようかしら」
軽く前に出る。闇を照らす火に蜘蛛が反応し、口を開く。
今度は軽く後方へ飛ぶジェーン。先ほどまでいた場所に、吐かれたと思わしき粘着性の高い糸が巻き散らされる。
「どうやら光源を見つけると、まずは糸を吐いて獲物の動きを鈍らせようとするみたいね」
「弱らせてから集団で喰らおうとするわけか。趣味は良くないが効果的だ。となると知能もそれなりにあるのか? それとも……」
首を捻るヴァイスの言葉を引き継ぐように、今度は柊羽が言う。
「ちィと暗ェのもある。もういっちょ、試してみりゃァイイ。こうやってライトに長めの紐をつけてっと」
柊羽もジェーンの光源に複数の蜘蛛が反応するのを見ていた。なら光源自体を餌にしてみたらどうかと考えたのである。
「目立ちゃァ、敵が寄ってくるってんなら、こういうのもありだろ。いや、流石にそこまで馬鹿じゃァねェか?」
悪戯小僧にも似た笑みを浮かべた刹那に、柊羽が適当な木の枝に放り投げた光源に糸が吐かれた。
ジェーンと柊羽の光源を使った調査で蜘蛛は目立つものを狙い、標的の詳細を確かめるよりも先に糸を吐くと判明。ヴァイスの指摘通り、獲物を弱らせてから仕留めようとする魂胆は明白だった。
「幸か不幸か、調査に出たのは、正解だったようですね。アオユキさん、レイルさんの近くで、護衛をしながら、射撃します」
直感視を活かしての警戒をするミオレスカが、エア・スティーラーを構えた。
彼女の横からユーレンが前へ出る。
「糸が絡めばなお当たるまい。ならば壁に徹するしかなかろう」
各々が行動する中、アキノは光源に釣られて木々の隙間から姿を覗かせた一体の蜘蛛を睨む。
「せいぜい踊るがいいさ、あたしの可愛いモルモットたちよ」
「モルモット?」
驚くレイルに、アキノは当然のように頷く。
「あたしがハンターを志した理由はただ一つ。歪虚という不条理な生命体の秘密を解き明かし、科学の限界に挑むことさ」
一旦区切ってから、なおもアキノは言葉を続ける。
「あたしの本業は軍医だけど、生命を取り扱う仕事をしていると無性に未知の生命体に惹かれるものだよ」
人差し指を立て、アキノは口端を歪める。
「つまり歪虚とはあたしにとってのモルモットにすぎない。たとえリスクを冒してでもこれだけは譲れないねぇ」
主武器に装備したワンドを片手に、レイルへウインクをしてみせるのだった。
■
「レイルには近づけさせないぜ。この俺がいる限りな!」
一歩下がったヴァイスが、狙いをつけた一体に刺突一閃で仕掛ける。落ちている小枝ごと地面を強く踏み、体重を乗せて放つ。
「ついでに硬さも確かめてやるぜ。光源におびき出された迂闊さを呪いな」
ジェーンの光源に意識を引っ張られ、糸を吐いていたその個体の頭部へまともに命中する。フラフラにはなっているが、いまだ命を繋いでいるのが肉眼でわかった。
「意外とタフじゃないか。いいぜ、殺し合いを続けようか。すぐに方はつくだろうがな」
■
一体に糸を吐かれたユーレンは胴で受け止め、粘着性のあるそれを力任せに引き千切る。運動機能の低下に抵抗を見せつつ、鍛えた腕に力を入れる。
「避けられなかったのならば、いっそこの苦境を逆手に取らせてもらうとしよう」
引き千切ったばかりの糸を両手で掴み、全力で引っ張る。地面と擦れあうように、脚をバタつかせた蜘蛛が抵抗するも、徐々に距離が詰まる。
そこへレイル達を守りながら援護の機会を窺っていたミオレスカが一撃を放つ。引き摺られて避けられない個体の腹を撃ち、弱ったところをユーレンが拳を見舞う。
苦悶を不気味な顔に纏わせた雑魔が、完全に動かなくなったのはその数秒後だった。
■
柊羽もまた蜘蛛に糸を浴びせられそうになった。けれど受け流してダメージは回避し、糸の粘着性にも抵抗できた。
「わざわざ俺に糸吐いてくれるとは、サービスがいいじゃねェか。ジェーンの嬢ちゃん、これで敵の居場所はわかったろ。きっちり仕留めてくれよ」
不敵な笑みを浮かべる柊羽の視線を向け、周囲の動向を警戒していたジェーンは小さな顔を上下に動かした。
「せっかくの申し出だし、甘えさせてもらうわ。標的は……あの蜘蛛。一気に終わらせるわ」
アクセルオーバーで強化されていたジェーンはチェイシングスローを放ち、怪我を負わせると同時に間合いを詰める。
「敵の数が減れば減るほどこちらの戦力は集結しやすくなる。出し惜しみはしないわよ」
身体にマテリアルを行き渡らせ、威力を増したスラッシュエッジが敵の腹を喰い破る。哀れさすら漂わせ、致命傷を負った蜘蛛はその場にひっくり返った。
■
直感視で木に隠れている敵をミオレスカが見抜く。
「こそこそと動いてるみたいですが、そこは私の射程内です」
エア・スティーラーから放たれるのは冷気を含んだレイターコールドショットだ。空気ごと射貫くように加速する一撃が蜘蛛の脚へ命中した。
「やったのかい?」
背中で守っているアオユキの確認に、ミオレスカはゆっくりと首を左右に振る。
「……まだです。けれどお二人には近づけさせません。安心して戦況を見守っていてください」
■
「戦局はこちらに傾きつつあるな。皆、頼もしいぜ。俺もこいつを片付けて合流しないとな」
すでに少なくないダメージを与えている一体から目を離さず、対峙しているヴァイスはここで仕留めるべく灯火により、己の物理攻撃力に魔法の力さえも上乗せする。
そこから繰り出される刺突一閃は、敵にとってはまさに悪夢の一言。それなりの防御力は紙のごとく突き破られ、腹をひと突きにされた蜘蛛の赤目が光を失う。
「これでレイルたちの安全は確保できたか? 致命的な事態を避けられた勢いのまま、連中を押し返してやるとするか」
序盤こそ不意打ち気味に包囲されてしまったが、後方の安全を確保したハンターたちが徐々に有利さを得始めていた。
■
「接近してくるならば、当たるかどうかはともかく、殴り合わねばなるまい」
ミオレスカのレイターコールドショットを喰らい、行動の阻害にこそ抵抗していたものの、大幅に生命力を減少させた一体の腹に、ユーレンがストライクブロウを見舞って撃退する。
「まぐれかどうかはともかく、一撃目で当たってくれるとは、我も捨てたものではないな」
■
遠距離から糸を吐きながらも、じりじりと距離を詰めてきた蜘蛛に対し、孤立しないよう慎重に立ち位置を調整していたのは柊羽だ。
「こっちも間合いに入ったぜ。他力本願だけじゃァ、申し訳ねェからな。関節か腹か、目ェ潰すのもいいかもしんねェなァ」
幾度浴びせようとしても不発に終わる糸を諦め、巨体を揺らして雑魔が体当たりを試みる。だがそれはさらに近接戦闘をしやすくする愚行に他ならなかった。
居合からの電光石火が狙い通り、脚の関節に命中。苦悶と憎しみを宿した蜘蛛ではあるが、その行動は柊羽の一撃により阻害された。
■
「健康体の動きは理解した。次はダメージを追っている際の対応を見たかったところだよ。何か奥の手はないのかい?」
背後のレイルたちを気にかけつつ、アキノは弱っている敵を見つけてはデータを集めていく。
「これだけ集まれば満足とはいかなくとも、とりあえずは参加した意味があったねぇ」
愉快そうに呟くと、アキノは楽しげに笑うのだった。
■
残りを三体まで減らしていた蜘蛛は前衛の柊羽とユーレンへ相次いで糸を見舞うも、受け流しや強固な防御力によって傷を負わせられない。ようやく不利を察した頃にはもう、ハンター達の反撃は佳境に入っていた。
残っている一体にミオレスカが威嚇射撃を敢行し、自由に脚を動かせなくなった蜘蛛にチェイシングスローを用いたジェーンが迫る。他の敵を柊羽とユーレンが食い止めてくれている間に、複数からの攻撃を封じるべくスラッシュエッジで勝負を決めにいく。
「無駄に戦闘を長引かせる必要はないわ。油断も慢心もね。このままおとなしく散ってくれるかしら」
チェイシングスローの時点でもダメージを受けていた蜘蛛はひとたまりもなく、大地に伏して存在を消滅させる。
正面から対峙している柊羽が再び居合からの電光石火でとどめを刺す中、互角に戦うユーレンを援護するために、意識して二列目にいたヴァイスがムチで援護する。
攻めあぐねる蜘蛛には隙が目立ち始め、バランスを崩したところにユーレンのとどめの一撃が命中。ハンターを狙ってきた蜘蛛は、一体残らずその存在を世界から消滅させることになった。
●戦闘後
遺体が残れば解剖できると期待していただけに、命を失った蜘蛛が消えるのをアキノは忌々しそうに眺めていた。けれども小さく息を吐いた頃にはもう、彼女の気分は完全に切り替わっていた。
「ところで魔法公害ってやつが雑魔を生み出してるって聞いたんだけど、実に興味深いねぇ。この世界にはあたしの想像を超えた未知なる秘密がたくさん詰まってるに違いない。胸が熱くなるねぇ」
まだ僅かに存在を残し、消えかかる寸前の一体を指差し、ミオレスカはレイルに尋ねる。
「こちらは見覚えのある歪虚でしょうか?」
「蜘蛛の雑魔というのは報告もそれなりにある。龍宮殿の言う魔法公害かとも考えたが……」
「その口ぶりからすると、どこかに歪虚を生み出している真犯人のような者がいるかもしれないということですね」
実際にここまで進んでも、雑魔を生み出しそうな魔法公害は発見出来ていない。
「蜘蛛は奥からやってきやがった。元凶がそっちにあんのかもしんねェ。調査を軽くでもやっときてェな」
「柊羽に賛成だ。この場の安全を確保できた今が絶好のチャンスだ。逃す理由はないよな?」
同意を求められたレイルは、ヴァイスの問いかけに肯定を示す。
すぐさま柊羽が先頭に立ち、その横をユーレンが続く。その後ろをアオユキが歩き、最後尾にいるレイルを守るべく左にヴァイスとユキノ。右にジェーンとミオレスカという隊列で更に奥を目指す。
「何かあったら私達が守るわ。光源をあえて先に飛ばして、糸が飛んでくるかどうかで巨大蜘蛛の存在の有無を確かめてもいいわね」
ジェーンの言葉を受け、狙われた場合に備えて前衛の柊羽が意図的にライトで周囲を確認する。戦闘中に得た蜘蛛の情報があればこその行動だった。
「……蜘蛛は他に出てこないようね。自然発生してるのなら、他にもいてよさそうなのにね」
「その時々で誰かが生み出してる可能性ありってことか? 冗談じゃねえよ」
ジェーンの背後で、うんざりするような声をアオユキが出した。推測が事実だった場合に、森のすぐ近くにあるリーラン村への影響を憂えているのだろう。
会話が滞りがちになったその時、先頭を歩く柊羽が左手を上げて一行に注意を促した。
「おい、あの岩……何か変じゃァねェか? 他に小石とかもねェのに、どうしてあんなデカイのがそこにどんっとありやがる」
「アタイには普通の岩にしか見えないぞ」
アオユキの声を背中で受け止めながら、調査の必要性をレイルに提案していた柊羽はその岩を軽く叩いて感触を確かめてみる。
思ったより簡単に動かせそうだと岩の位置をずらす。その直後、柊羽の視界に現れたのは人が通れそうなくらいの穴だった。
「……地下に続いてんなァ。もしかすっと奴らの巣かもしんねェ。どうするよ?」
穴に向かってライトを当ててみるも底は見えず、蜘蛛雑魔が這い出てくる気配もない。
やや悩んだ末に、依頼者でもあるレイルは決断を下す。
「一度戻るべきだろう。ここを見つけただけでも任務はこの上ない成功だ。だがすぐにでも調査隊を結成することになる。その際はハンターズソサエティにも依頼を出すだろうから、よろしくお願いする」
正体不明の穴から離れ、村へと戻る為にハンターが立ち上がる。木々が生い茂る森はその不気味さを一層増したみたいだった。
日中でも薄暗い森に、複数人の足音が響く。各種装備に身を包んだハンター達が、森を調査するレイルらに同行して、身辺を警護中だった。
光源がなければ進めないほどではないが、外に比べて森の中の視界が良好とは言えない。レイルを真ん中に隊列を組みながら、ハンターは油断なく視線を周囲に飛ばす。
「鬼の副官を連れた人間……良ィ時代になったもんだなァ。護る大将を見つけたか……そりゃァ強くなんなァ」
レイルを守りながら歩く女鬼を、感慨深そうに見る柊羽(ka6811)は嬉しそうでもあった。
「レイルの旦那も良いやつだが、リーランに守りたい奴らがいるのさ。まあ、人間の為にやってるのは変わらないけどね」
「結構な理由じゃァねェか。悪くねェと思うぜ」
照れ臭そうなアオユキの肩を、柊羽は楽しげに叩いた。
和やかなやりとりを横目で眺めつつ、仲間同様に警戒を続けていたミオレスカ(ka3496)が足を止める。
「お話はそこまでにした方が良さそうですね。どうやら歓迎したくないお客様がいらしたようです」
ミオレスカの注意を裏付けるように生まれる複数の気配。闇に浮かんだ禍々しい赤い輝きが、ギロリとハンターに向けられる。
外見は蜘蛛だが大きさが異なる。一見して普通ではないとわかるほどだ。
「普通の蜘蛛じゃないな。雑魔か」
生唾を呑み込むレイルに、アオユキが片手を伸ばす。
「旦那、下がってな」
「そうね。前に出られたら足手まといだわ。依頼者である以上、死なれたら困るのよ」
淡々と言葉を紡いだのはジェーン・ノーワース(ka2004)だった。
だが内容は厳しくとも紛れもない真理。レイルが下がるのに合わせて、ヴァイス(ka0364)が一歩前に出る。
「目視出来る奴以外にも敵の気配を感じる。皆、周囲への警戒を怠るな!」
戦闘能力の低いレイルを下げ、アオユキを含めた数人で素早く隊列を組み直す。移動ではなく戦闘を目的にしており、前へ出ようと窺うのはユーレン(ka6859)だ。
「囲まれたか。ならば我が前へ出て、敵の攻撃を引き受けよう」
「危険だよ」
アオユキの緊張を纏った声に、メイスファイティングで肉体を活性させたユーレンは苦い笑みを顔に張りつける。
「しょうがあるまい。我はまだ、扇風機と揶揄されても言い返せぬ体たらくだからな」
護衛の為にレイルのそばに立ちつつ、龍宮 アキノ(ka6831)は興味という煌めきを瞳の奥に宿らせる。
「クモはこれほどの大きさになれば本来の機動力が削がれるはずだけど、これがマテリアルの力って奴かい? 面白いねぇ。悪いけど、そいつの仕組みを探りたいんで解剖させてもらおうか」
人間の言語ができているようには見えないが、挑発じみたアキノの言動に合わせて複数の蜘蛛が動き出す気配を見せた。
●戦闘開始
ジェーンが着火の指輪を使い、薄暗い闇に揺らめく小さな火を生まれさせる。
「まずは光源に対する敵の動きを確認しようかしら」
軽く前に出る。闇を照らす火に蜘蛛が反応し、口を開く。
今度は軽く後方へ飛ぶジェーン。先ほどまでいた場所に、吐かれたと思わしき粘着性の高い糸が巻き散らされる。
「どうやら光源を見つけると、まずは糸を吐いて獲物の動きを鈍らせようとするみたいね」
「弱らせてから集団で喰らおうとするわけか。趣味は良くないが効果的だ。となると知能もそれなりにあるのか? それとも……」
首を捻るヴァイスの言葉を引き継ぐように、今度は柊羽が言う。
「ちィと暗ェのもある。もういっちょ、試してみりゃァイイ。こうやってライトに長めの紐をつけてっと」
柊羽もジェーンの光源に複数の蜘蛛が反応するのを見ていた。なら光源自体を餌にしてみたらどうかと考えたのである。
「目立ちゃァ、敵が寄ってくるってんなら、こういうのもありだろ。いや、流石にそこまで馬鹿じゃァねェか?」
悪戯小僧にも似た笑みを浮かべた刹那に、柊羽が適当な木の枝に放り投げた光源に糸が吐かれた。
ジェーンと柊羽の光源を使った調査で蜘蛛は目立つものを狙い、標的の詳細を確かめるよりも先に糸を吐くと判明。ヴァイスの指摘通り、獲物を弱らせてから仕留めようとする魂胆は明白だった。
「幸か不幸か、調査に出たのは、正解だったようですね。アオユキさん、レイルさんの近くで、護衛をしながら、射撃します」
直感視を活かしての警戒をするミオレスカが、エア・スティーラーを構えた。
彼女の横からユーレンが前へ出る。
「糸が絡めばなお当たるまい。ならば壁に徹するしかなかろう」
各々が行動する中、アキノは光源に釣られて木々の隙間から姿を覗かせた一体の蜘蛛を睨む。
「せいぜい踊るがいいさ、あたしの可愛いモルモットたちよ」
「モルモット?」
驚くレイルに、アキノは当然のように頷く。
「あたしがハンターを志した理由はただ一つ。歪虚という不条理な生命体の秘密を解き明かし、科学の限界に挑むことさ」
一旦区切ってから、なおもアキノは言葉を続ける。
「あたしの本業は軍医だけど、生命を取り扱う仕事をしていると無性に未知の生命体に惹かれるものだよ」
人差し指を立て、アキノは口端を歪める。
「つまり歪虚とはあたしにとってのモルモットにすぎない。たとえリスクを冒してでもこれだけは譲れないねぇ」
主武器に装備したワンドを片手に、レイルへウインクをしてみせるのだった。
■
「レイルには近づけさせないぜ。この俺がいる限りな!」
一歩下がったヴァイスが、狙いをつけた一体に刺突一閃で仕掛ける。落ちている小枝ごと地面を強く踏み、体重を乗せて放つ。
「ついでに硬さも確かめてやるぜ。光源におびき出された迂闊さを呪いな」
ジェーンの光源に意識を引っ張られ、糸を吐いていたその個体の頭部へまともに命中する。フラフラにはなっているが、いまだ命を繋いでいるのが肉眼でわかった。
「意外とタフじゃないか。いいぜ、殺し合いを続けようか。すぐに方はつくだろうがな」
■
一体に糸を吐かれたユーレンは胴で受け止め、粘着性のあるそれを力任せに引き千切る。運動機能の低下に抵抗を見せつつ、鍛えた腕に力を入れる。
「避けられなかったのならば、いっそこの苦境を逆手に取らせてもらうとしよう」
引き千切ったばかりの糸を両手で掴み、全力で引っ張る。地面と擦れあうように、脚をバタつかせた蜘蛛が抵抗するも、徐々に距離が詰まる。
そこへレイル達を守りながら援護の機会を窺っていたミオレスカが一撃を放つ。引き摺られて避けられない個体の腹を撃ち、弱ったところをユーレンが拳を見舞う。
苦悶を不気味な顔に纏わせた雑魔が、完全に動かなくなったのはその数秒後だった。
■
柊羽もまた蜘蛛に糸を浴びせられそうになった。けれど受け流してダメージは回避し、糸の粘着性にも抵抗できた。
「わざわざ俺に糸吐いてくれるとは、サービスがいいじゃねェか。ジェーンの嬢ちゃん、これで敵の居場所はわかったろ。きっちり仕留めてくれよ」
不敵な笑みを浮かべる柊羽の視線を向け、周囲の動向を警戒していたジェーンは小さな顔を上下に動かした。
「せっかくの申し出だし、甘えさせてもらうわ。標的は……あの蜘蛛。一気に終わらせるわ」
アクセルオーバーで強化されていたジェーンはチェイシングスローを放ち、怪我を負わせると同時に間合いを詰める。
「敵の数が減れば減るほどこちらの戦力は集結しやすくなる。出し惜しみはしないわよ」
身体にマテリアルを行き渡らせ、威力を増したスラッシュエッジが敵の腹を喰い破る。哀れさすら漂わせ、致命傷を負った蜘蛛はその場にひっくり返った。
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直感視で木に隠れている敵をミオレスカが見抜く。
「こそこそと動いてるみたいですが、そこは私の射程内です」
エア・スティーラーから放たれるのは冷気を含んだレイターコールドショットだ。空気ごと射貫くように加速する一撃が蜘蛛の脚へ命中した。
「やったのかい?」
背中で守っているアオユキの確認に、ミオレスカはゆっくりと首を左右に振る。
「……まだです。けれどお二人には近づけさせません。安心して戦況を見守っていてください」
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「戦局はこちらに傾きつつあるな。皆、頼もしいぜ。俺もこいつを片付けて合流しないとな」
すでに少なくないダメージを与えている一体から目を離さず、対峙しているヴァイスはここで仕留めるべく灯火により、己の物理攻撃力に魔法の力さえも上乗せする。
そこから繰り出される刺突一閃は、敵にとってはまさに悪夢の一言。それなりの防御力は紙のごとく突き破られ、腹をひと突きにされた蜘蛛の赤目が光を失う。
「これでレイルたちの安全は確保できたか? 致命的な事態を避けられた勢いのまま、連中を押し返してやるとするか」
序盤こそ不意打ち気味に包囲されてしまったが、後方の安全を確保したハンターたちが徐々に有利さを得始めていた。
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「接近してくるならば、当たるかどうかはともかく、殴り合わねばなるまい」
ミオレスカのレイターコールドショットを喰らい、行動の阻害にこそ抵抗していたものの、大幅に生命力を減少させた一体の腹に、ユーレンがストライクブロウを見舞って撃退する。
「まぐれかどうかはともかく、一撃目で当たってくれるとは、我も捨てたものではないな」
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遠距離から糸を吐きながらも、じりじりと距離を詰めてきた蜘蛛に対し、孤立しないよう慎重に立ち位置を調整していたのは柊羽だ。
「こっちも間合いに入ったぜ。他力本願だけじゃァ、申し訳ねェからな。関節か腹か、目ェ潰すのもいいかもしんねェなァ」
幾度浴びせようとしても不発に終わる糸を諦め、巨体を揺らして雑魔が体当たりを試みる。だがそれはさらに近接戦闘をしやすくする愚行に他ならなかった。
居合からの電光石火が狙い通り、脚の関節に命中。苦悶と憎しみを宿した蜘蛛ではあるが、その行動は柊羽の一撃により阻害された。
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「健康体の動きは理解した。次はダメージを追っている際の対応を見たかったところだよ。何か奥の手はないのかい?」
背後のレイルたちを気にかけつつ、アキノは弱っている敵を見つけてはデータを集めていく。
「これだけ集まれば満足とはいかなくとも、とりあえずは参加した意味があったねぇ」
愉快そうに呟くと、アキノは楽しげに笑うのだった。
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残りを三体まで減らしていた蜘蛛は前衛の柊羽とユーレンへ相次いで糸を見舞うも、受け流しや強固な防御力によって傷を負わせられない。ようやく不利を察した頃にはもう、ハンター達の反撃は佳境に入っていた。
残っている一体にミオレスカが威嚇射撃を敢行し、自由に脚を動かせなくなった蜘蛛にチェイシングスローを用いたジェーンが迫る。他の敵を柊羽とユーレンが食い止めてくれている間に、複数からの攻撃を封じるべくスラッシュエッジで勝負を決めにいく。
「無駄に戦闘を長引かせる必要はないわ。油断も慢心もね。このままおとなしく散ってくれるかしら」
チェイシングスローの時点でもダメージを受けていた蜘蛛はひとたまりもなく、大地に伏して存在を消滅させる。
正面から対峙している柊羽が再び居合からの電光石火でとどめを刺す中、互角に戦うユーレンを援護するために、意識して二列目にいたヴァイスがムチで援護する。
攻めあぐねる蜘蛛には隙が目立ち始め、バランスを崩したところにユーレンのとどめの一撃が命中。ハンターを狙ってきた蜘蛛は、一体残らずその存在を世界から消滅させることになった。
●戦闘後
遺体が残れば解剖できると期待していただけに、命を失った蜘蛛が消えるのをアキノは忌々しそうに眺めていた。けれども小さく息を吐いた頃にはもう、彼女の気分は完全に切り替わっていた。
「ところで魔法公害ってやつが雑魔を生み出してるって聞いたんだけど、実に興味深いねぇ。この世界にはあたしの想像を超えた未知なる秘密がたくさん詰まってるに違いない。胸が熱くなるねぇ」
まだ僅かに存在を残し、消えかかる寸前の一体を指差し、ミオレスカはレイルに尋ねる。
「こちらは見覚えのある歪虚でしょうか?」
「蜘蛛の雑魔というのは報告もそれなりにある。龍宮殿の言う魔法公害かとも考えたが……」
「その口ぶりからすると、どこかに歪虚を生み出している真犯人のような者がいるかもしれないということですね」
実際にここまで進んでも、雑魔を生み出しそうな魔法公害は発見出来ていない。
「蜘蛛は奥からやってきやがった。元凶がそっちにあんのかもしんねェ。調査を軽くでもやっときてェな」
「柊羽に賛成だ。この場の安全を確保できた今が絶好のチャンスだ。逃す理由はないよな?」
同意を求められたレイルは、ヴァイスの問いかけに肯定を示す。
すぐさま柊羽が先頭に立ち、その横をユーレンが続く。その後ろをアオユキが歩き、最後尾にいるレイルを守るべく左にヴァイスとユキノ。右にジェーンとミオレスカという隊列で更に奥を目指す。
「何かあったら私達が守るわ。光源をあえて先に飛ばして、糸が飛んでくるかどうかで巨大蜘蛛の存在の有無を確かめてもいいわね」
ジェーンの言葉を受け、狙われた場合に備えて前衛の柊羽が意図的にライトで周囲を確認する。戦闘中に得た蜘蛛の情報があればこその行動だった。
「……蜘蛛は他に出てこないようね。自然発生してるのなら、他にもいてよさそうなのにね」
「その時々で誰かが生み出してる可能性ありってことか? 冗談じゃねえよ」
ジェーンの背後で、うんざりするような声をアオユキが出した。推測が事実だった場合に、森のすぐ近くにあるリーラン村への影響を憂えているのだろう。
会話が滞りがちになったその時、先頭を歩く柊羽が左手を上げて一行に注意を促した。
「おい、あの岩……何か変じゃァねェか? 他に小石とかもねェのに、どうしてあんなデカイのがそこにどんっとありやがる」
「アタイには普通の岩にしか見えないぞ」
アオユキの声を背中で受け止めながら、調査の必要性をレイルに提案していた柊羽はその岩を軽く叩いて感触を確かめてみる。
思ったより簡単に動かせそうだと岩の位置をずらす。その直後、柊羽の視界に現れたのは人が通れそうなくらいの穴だった。
「……地下に続いてんなァ。もしかすっと奴らの巣かもしんねェ。どうするよ?」
穴に向かってライトを当ててみるも底は見えず、蜘蛛雑魔が這い出てくる気配もない。
やや悩んだ末に、依頼者でもあるレイルは決断を下す。
「一度戻るべきだろう。ここを見つけただけでも任務はこの上ない成功だ。だがすぐにでも調査隊を結成することになる。その際はハンターズソサエティにも依頼を出すだろうから、よろしくお願いする」
正体不明の穴から離れ、村へと戻る為にハンターが立ち上がる。木々が生い茂る森はその不気味さを一層増したみたいだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/20 17:15:02 |
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相談卓 ジェーン・ノーワース(ka2004) 人間(リアルブルー)|15才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/06/21 22:48:14 |