• 郷祭1014

【郷祭】ゴブボアラッシュ!

マスター:えーてる

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/10/30 19:00
完成日
2014/11/07 08:48

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 収穫をもう間近に控え、農家が機運を高めている頃。ここグラン村は、慌ただしくも浮ついた雰囲気に包まれていた。
 季節は秋にさしかかり、ジェオルジ村長祭に関連付けて、村々が様々な催し物を企画している。グラン村は例年以上の収穫のため、大食い大会やら立食会を企画しているのだが。
「またこの時期に、ゴブリンの奴らがやって来やがったわけだな」
 自警団を率いる男は、腕組みをしてそう言った。
「三体程度で装備も特にないらしい。お前ら、囲んで叩くぞ」
 夜に紛れて盗みを働こうとするセコいゴブリンたちを叩きのめすべく、血気盛んな若者や怒り心頭の農夫、暇な料理人などが隊を組んで巡回していた。
 ゴブリンが潜伏していると思しき森には、特に厳重な警戒がなされている。
「俺らの収穫物だ、誰にも渡しゃしねぇよ!」
 応、と声を張って夜闇へ威嚇する彼ら。
 だがそこに、思わぬ方向から襲撃があった。
「おい、今あそこの茂み、動いたよな……!」
「ええ、確かに動きましたね」
 巡回中の二人が、茂み目掛けて粗末な槍を構える。
「さぁ、いつでも来なさい!」
 と威嚇した彼目掛けて、それは猛烈な速度で突進を食らわせた。
「って……ぐふっ!?」
「せ、先生!」
 料理人の男はどーんと吹き飛ばされて、ごろごろと地上を転がった。
 ゴブリンにそんな膂力があるわけが、ともう片方の男が松明を掲げると――。
「い、猪ぃ!?」
 目を血走らせた猪が、男に視線を合わせて地を蹴っているところだった。


「今回の依頼は、畑を荒らす外敵の退治となります」
 受付嬢イルムトラウトは眼鏡を押し上げた。
「ジェオルジ村長祭も間近な昨今、収穫を控えた村をゴブリンが狙っているようです。数自体は少なく、それだけであれば、我々の出番はなかったかもしれませんが……とある事情で、こうして依頼が持ち込まれることになりました」
 事情というのは、別の勢力が襲撃をかけてきたとのこと。
「大型の猪です。数も多く、突進で木の柵程度は破壊してしまうようです。今回はこちらが討伐の主題ですね」
 村人にも怪我人が多く出ており、自警団も機能しづらい状況らしい。この猪とゴブリン両方に対処する必要がある。
 ただし、依頼はあくまで収穫物の護衛である。
 ゴブリンは愚かだがずる賢く、猪を捌くのに夢中になっている所を後ろからこっそり進入する、というようなことはやってくるかもしれない。
 猪の突進で村の建物などに被害が出るのも避けたい所だ。
「収穫物を守りながら、猪の突進から村の設備を守り、ゴブリンたちも倒す……少々忙しい依頼ですが、どうぞよろしくお願い致します」

リプレイ本文


「この時期に作物を狙われては大変でしょうね……」
 月架 尊(ka0114)は呟いた。軍事学校の経験の元、土を被って匂いを消して、畑に潜んでいる。
「村人の犠牲者が出ないよう頑張らないとな」
 少し離れた所で、如月 鉄兵(ka1142)もひとりごちる。彼らは畑の護衛班だ。
「やること多いけど、要は来るヤツ全員ぶち殺せばいいわけだよね?」
「そうですね……ゴブリンは皆さんに任せて、私たちは猪に注力しましょう」
 ウーナ(ka1439)は無邪気に笑ってそう口走ると、リチャード・バートン(ka3303)が答えた。
「んー、今夜はぼたん鍋ね」
 宇都宮 祥子(ka1678)の呟きに、聖盾(ka2154)が目を輝かせた。
「ぼたん鍋……ぼたん鍋食べたいですね……」
「盾さん、よだれよだれ」
「おおっと」
 盾は慌てて口元を拭った。
 ――背後で日が落ちる。
 猪は夜行性。昼間も警戒を怠ったわけではないが、やはり本命はこの時間だろう。
 出来うる限りの準備はした。村の東部、森の辺りへと視線を向け、農地の近辺で彼らはじっと待っている。
 やがて、西の空が僅かに白むのみの頃――。
「来たね」
 森の中からのそのそと、四頭の猪が連れ立ってやって来た。ウーナはそっと銃を掲げる。
「デカいわね……」
 ずしりとした足取りからでも、筋肉に覆われているのが見て分かる。ひょこひょこと普通の猪のように歩く姿はいささか滑稽だが、あれが一転突進を始めたら笑ってもいられない。腰に届くほどの上背と、相当な重量。近場で頭突きを食らうだけでも、そのダメージは計り知れないだろう。
 祥子はぐいっと弓を引いた。そして矢にマテリアルを込め、じっくり狙いをつける。張り詰めた弦の軋みが、かすかに響いた。
「始めるわよ」
 その言葉に前衛の鉄兵とリチャードが頷くと、矢が夜闇を貫く。
 わずかに狙いを逸れた矢は、斜めに胴体へと突き立った。
「プギィィィ!!」
 突然の痛みに悲鳴をあげる猪だったが、ほぼ同時にハンターたちを視認したらしく、彼らは猛然と突進を始めた。
 土煙を上げ加速していく猪の巨体に、全員一斉に対応をスタート。尊は畑から飛び出して刀を構える。
「好戦的ですね……ですが!」
 鉄兵はぐっと息を吸い込み、マテリアルを込めて威圧した。猪の一匹が混乱し足を止める。
 ウーナも茂みから飛び出して銃を構え、奥の猪めがけて威嚇射撃を行った。足元への射撃で猪の足が止まる。
「今のうち! やっちゃえー!」
 残る二匹にリチャードと尊が斬りかかる。
 盾も鉄兵にプロテクションをかけ、真面目な顔で声を上げた。
「みなさん、ぼたん鍋が突っ込んできますよ! 気を付けてください!!」
「盾さん、お腹すかせてます?」
 尊は思わず突っ込んだ。誰もが似たようなことを思った。
「馬鹿言ってられないですねこりゃ」
 鉄兵が突進を回避すると、猪は後ろ足を滑らせて鉄兵へと向き直る。
 回避の間に合わないリチャードは両腕をクロスさせて、猪の突進を受けた。
「ぐっ」
 大きなダメージはないものの、吹き飛ばされたリチャード。だが後ろへ後退するはずの彼の体は、柔らかいものにぶつかって止まった。
「クッション代わりになると思ったんですが、大丈夫ですか?」
「え、えぇ」
 盾が身を挺して受け止めたらしい。妙に柔らかい感触に動じる余裕もなく、後方の猪が再度突進を敢行する。ウーナの威嚇射撃にも今度は動じないようだ。
「四頭同時は……難しいですね」
 鉄兵は呟きと共にマテリアルを昂ぶらせ、鋸剣に祖霊の大いなる力を宿して振りぬいた。盾はリチャードにヒールをかける。
 祥子は走りだした猪の横腹をじっと見つめた。速度を見極め、偏差を想像して、マテリアルを込めた矢を射る。
 放たれた矢は視線と同じく胴体へ深く突き刺さり、意識を失った猪は足をもつれさせて転がった。
「あと三匹」
 祥子は次の矢を番える。
「いえ」
 尊は猪の突進を、闘牛士さながらにひらりと避ける。風より早く切っ先が踊り、猪は首を斬られて地に転がった。
「これで二匹です」
 順調に進む猪討伐。その最中、ウーナが顔を上げた。
「別働隊から通信だよ! ゴブリン、動き出したって!」


 アルナイル・モーネ(ka0854)と岩井崎 旭(ka0234)は、報告を聞くや否や駆け出していた。
「村人さんたちに頼んでおいて正解だったの」
「ちょっと不安だったけど、目は多いほうがいいな」
 旭の愛馬・サラダに二人を乗せ、目撃情報のあった北東へと走る。
「壊れた柵の所なの」
「よし、道は覚えてる。行くぜサラダ、最速で駆けつけるぞ!」
 サラダはひひんと鳴くと、土を蹴って加速した。
 やがて件の箇所からやや南下した地点で、二匹のゴブリンを発見した。こそこそと周囲の様子を伺う姿は滑稽に見えるが、向かう先は明らかに住宅地の方だ。
 そんな下卑た企みに、旭の眼尻が釣り上がる。
「あいつら……ただじゃおかねぇ」
「でも、二匹しかいないの」
「二手に分かれやがったか」
 ともかく、目の前の二人を倒さなければならない。
 アルナイルは馬から飛び出して、気付かれるより早く日本刀を振りぬいた。
「考えがせこいの。やらせないなの!」
 足を狙った一撃は僅かに逸れて腰を抉った。そこへ更に、馬上から旭がレイピアを引き絞る。
「だぁぁ! 吹き飛べぇッ!!」
 旭が全力を込めた一撃がゴブリンの肩を深く貫いた。
 ハンターの対策に気づいたゴブリンたちが驚き、その場から逃げ出そうとするが、その背後へと馬を回す。
 住民にまで手をあげようとする者を許す訳にはいかない。梟の騎士は嘶く愛馬の上でレイピアを突きつけた。
「これ以上進ませねーし、逃がしもしねぇ。せいぜい覚悟を決めるんだなっ!」

 一方、ノアール=プレアール(ka1623)と慈姑 ぽえむ(ka3243)は貯蔵庫の周辺で待機していた。
 ぽえむの視線の先には、こそこそと隠れながらこちらへと向かってくるゴブリンが二匹。
「こちら貯蔵庫。ゴブリン出現です……」
 普段の作ったキャラはなく、至って真面目にぽえむは口にした。
『こちら北東班、こっちの二匹は足止めしとく。そっちは任せた!』
「了解。そちらも気を付けて」
 ぽえむは同じように南へと通信を入れ、ゴブリンたちを見た。
 ちょうど上手い具合に目が合う。
「ひゃぁぁ!?」
 ぽえむはか弱い少女らしく悲鳴を上げて、そこから逃げ出した。勿論、貯蔵庫とは遠い方に。ゴブリンたちはそれに油断して、どたどたとそちらへ走り寄る。
 その展開に水を差すかのように、物陰から銃声が轟く。
「先手必勝ー」
 ノアールは魔導銃を放った後、のんびりとした雰囲気で呟いた。
「さぁて、ここからが本番よー」
 ぽえむも颯爽と聖なる光を放ち、ゴブリンの足を叩く。
「ただの子供だと思った……? ふふっ、残念でした」
 いとも簡単に挟み撃ちの形をとると、ぽえむはニヤリと微笑んだ。あのか弱さはもうどこにも見当たらない。

 一方、柵での戦闘はというと。
 いかに身軽であろうと、足が動かなければ関係はない。都合三度の斬撃で、ゴブリンの片方は動きを止められた。
「逃がさないの」
 足をやられたゴブリンの前へ、アルナイルは手を休めることなく躍り出る。回避もままならぬゴブリンはやけくそじみた反撃を繰り出すが、その程度の反抗では彼女に届くことはない。
 馬を降りた旭は、怒涛の攻勢を仕掛けていた。
「人に手を上げるヤツは許さねぇよ!」
 ゴブリンとはいえ、相手は非武装。全力の旭の突きに耐えられるはずがない。
「ここで、くたばれ!」
 抵抗もむなしく喉笛を一撃で貫かれ、ゴブリンは絶命した。
 同じ頃、アルナイルもゴブリンにトドメを刺す。彼女の刀が最後に断ち切ったのは、敵の命脈であった。
「終わったの。所詮はゴブリンなのね」
「貯蔵庫の方に行こう。もう終わってるかもしれねーけど」
 旭はアルナイルの手を引いて馬に乗せると、そのまま南へ駆け出した。

 貯蔵庫の前から動こうとしないノアールに向かって、ゴブリンたちが殺到する。
 その片方へ容赦なく機導砲を浴びせかけ、ノアールは笑った。
「さぁさぁ、悪い子は剥製にしちゃうわよー」
 ぽえむはすっと手を掲げて、狙いを定める。
「私を無視していくとは、いい度胸ね」
 少女のホーリーライトが背後から放たれ、ゴブリンを吹き飛ばす。
 それでも足を止めない二匹は、どうにかノアールの前までやって来た。二対一なら、どちらかは抜けられるかもしれないが。
「あらあら、こんなところまで来ちゃったの?」
 ほとばしる電撃がゴブリンの足を縫い止めた。
「ふふ、銃と術しか使ってないからって、遠距離だけだと思ったのかしらー?」
 至近距離からの機導砲がゴブリンの胴体を貫いた。ダメ押しのホーリーライトがゴブリンの頭部に直撃、首があらぬ方向へひしゃげた。
 ちょうどその辺りで、旭とアルナイルがやってきた。
「どうだ?」
「今終わる所ね」
 と口にした先で、ゴブリンの頭部に銃弾が浴びせかけられた。
 魔導銃をリロードして、ノアールは「あらあら」と手に頬を当てた。
「お肉とか用意したのに無駄になっちゃったわー」
 ゴブリンの仲間割れを誘えないかと考えたのだが、うまく正攻法で圧倒できた。しかし二匹が突破した際の次善策としては機能したはずなので、ノアールの準備は決して無駄ではない。それは誰もが認めるところだ。
 ぽえむはアルナイルの受けた傷にヒールをかける。
「畑はどうなったかしら」
「ありがとなの。連絡してみるの」
 トランシーバーを取り出したアルナイルの横で、旭が首を横に振った。
「その必要はなさそうだぜ」
 指し示された先では、猪四頭を担ぎながら、尊たちが帰ってくるところであった。


 村人が総出で歓待する中、アルナイルはまず柵の修復を提案した。
 これ以上の無用な野生動物の侵入を避けるためにも、村の防備を完璧にしておくべきだ。
「あたしも手伝ってあげるなの。もっと頑丈な柵にしたほうがいいんじゃないかしら?」
 預けていたトランシーバーを回収し、ぽえむもそれに賛同した。
「手伝ってもらったからにはお礼しないと気が済まないわ。重たいもの運んだり支えるのは得意なの。任せて」
 村人のゴブリン早期発見が、ゴブリンの迅速な対処に繋がったのは言うまでもない。
「自分も手伝いましょう。男手は合って困ることはない」
 鉄兵はそう言うと、早速資材を担ぎ上げた。修復作業は、今日中にやるというならば夜も浅い今のうちしかない。
 リチャードはゴブリンの死骸を片付けている。ノアールもだ。
「さすがに剥製にするには雑よねー」
「まぁ、そうですね」
 銃で頭をぶち抜かれていたり、頚椎が折れていたり、めった刺しにされていたりめった斬りにされていたりする。剥製にはもっと綺麗な死体が必要だろう。
「ゴブリンは……見るからに不味そうですよねぇ」
「盾、腹減ってる?」
 旭が言うと、ウーナがくすりと笑って答えた。
「さっきからずっとこうだよ」
「なるほど……」
 一方、尊は猪の解体を手伝っていた。猪はかなり大きく、数人ですぐに食べ尽くせるような量ではない。
「せっかく来たんですし、手伝います。これも備蓄の足しにしてください」
 と彼が言うと、村長はいやいやと首を横に振った。
「せっかくの獲物ですから、食べてしまいましょう」
 村長は言った。確かに、村に貯蔵するには量も多い。
「ハンターさん、よければ食べては行きませんか」
「行きます!」
 と答えたのは盾であった。
「猪足す野菜イコール……ぼたん鍋! 是非!」
「そうね、鍋しましょ。鍋」
 夜は寒くて、と祥子も苦笑しながら同意した。

 この後、祭りの前夜祭とばかりに村中で鍋パーティとなるのだが、それはまた別のお話である。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 5
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭ka0234
  • 青竜紅刃流師範
    ウーナka1439
  • にゃーにゃーにゃー
    慈姑 ぽえむka3243

重体一覧

参加者一覧

  • 戦闘鬼
    月架 尊(ka0114
    人間(蒼)|16才|男性|疾影士
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • ガンタのともだち
    アルナイル・モーネ(ka0854
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士

  • 如月 鉄兵(ka1142
    人間(蒼)|25才|男性|霊闘士
  • 青竜紅刃流師範
    ウーナ(ka1439
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • マテリアル調査員
    ノアール=プレアール(ka1623
    人間(紅)|23才|女性|機導師
  • 山猫団を保護した者
    宇都宮 祥子(ka1678
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • うすいほんがよみたくて
    聖盾(ka2154
    エルフ|24才|女性|聖導士
  • にゃーにゃーにゃー
    慈姑 ぽえむ(ka3243
    人間(蒼)|13才|女性|聖導士
  • 人々の支えに
    リチャード・バートン(ka3303
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼相談卓
ウーナ(ka1439
人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/10/30 18:00:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/26 11:45:35