ゲスト
(ka0000)
【春郷祭】セピア色のララバイ
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/06/27 19:00
- 完成日
- 2017/07/11 01:24
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
同盟領の農耕推進地域、ジェオルジの春郷祭は、最終日を迎えていた。
村長会議に祭り本番と、長かった春の花の祭典もついに閉幕。今年も多くの人が集まり、牧歌的な雰囲気の中各催しなどを楽しんだ。
もうすぐ、夜のとばりは降りる。
最後の音楽イベントなどが残っているが、大半の屋台などはすでに片付け作業に入っている。
「やれやれ、無事に終わったな」
「これで日常に戻るのね~」
「はいよ、売り尽くしだ。三割引きで買ってちょ~だいよ!」
引き潮のように少なくなる来客。最後の飲食屋台の呼び声。ある種の寂寥感と、もうちょっとだけうきうきする感覚。
決して勢いのある賑わいではないが、余韻に浸ることのできる一種独特の雰囲気がある。
「はぁ……」
フラ・キャンディ(kz0121)はそんな祭りの終わりを見ながら、縁石に座り込んでため息をついていた。
「故郷の方はまた精霊からの連絡を待つんでしょ?」
隣に座っていた興行師、シェイクがそう言ってフラを慰める。
フラ、自分が「百年目のエルフ」として追放された故郷の隠れ里が歪虚の堕落者、ルモーレの手勢に滅ぼされたことを知り、ハンターと一緒に解放する戦闘依頼をこなしていたばかりだ。
結果、奪還はしたが隠れ里は岩を掘削されたり爆破されたりと好き放題されていた。もちろん、歪虚の軍勢に攻められ生存者はいなかった。
それらはすでに何となく分かっていたことではあるが、里に入るのをためらってしまったことで心にもやもやが残ってしまったのだ。
「里は全滅したんじゃなくて精霊さんがいるから」
と、言い訳のように口にした自分の言葉を後悔しているわけではないのだが。
「まあ、フラちゃんの隠れ里のあるジェオルジでお仕事取っておいてよかったわ」
新たな連絡があればすぐに駆け付けることができるから、とシェイク。
「あ……お仕事って? リラ・ゼーレで何かするの?」
改めて気付いたように顔を上げてシェイクを見詰めるフラ。もちろんシェイクは事前に説明しているが、すっかり忘れてしまっているフラを怒ることはしない。
「リラ・ゼーレってわけじゃないわ。ソロの活動……吟遊詩人ね」
リラ・ゼーレとはシェイクがプロモートした時のフラたちのバンド名だ。過去には春郷祭や郷祭で活動したこともある。
が、今回は違うようで。
「もう祭りは最後だからって、ごみを捨てて帰ったり木々や建物にいたずらして帰ったりする人もいるの。それとは別に、もっとしっとりした余韻に浸ってからゆっくり星空を帰りたいって人もいるの。そういう人たちのため、祭りの各地に散ってゆったりした音楽と歌で聴く人の心を穏やかにしてほしいの」
依頼主は祭りの関係者から。
つまり、流しの吟遊詩人をして音楽と歌声でトラブル回避と最後の夜の雰囲気づくり、そして片付けをする関係者の心の癒しをしてほしいということだ。
「フラちゃん、元気のいいのはダメよ。……ほら、確か前に歌ってた『百年目の掟♪』って歌、あったでしょ? あれならばっちりよ」
「うん。……みんなに希望を持ってもらうような、優しい気持ちになってもらえればいいんだね」
フラ、こんな感じでいいの、とメロディーを呟く。
♪
百年目の 掟
百年目の 悲しみ
ボクは行くよ 一人
世界を知る 明日へ……
♪
里を追放されて一人森をさまよっている時に、自分自身を支えた歌。
今は、誰かを支えるように、丁寧に、ゆっくりと、優しく歌う――。
そんな感じで、祭りの最後の夜の余韻を奏でる人、求ム。
村長会議に祭り本番と、長かった春の花の祭典もついに閉幕。今年も多くの人が集まり、牧歌的な雰囲気の中各催しなどを楽しんだ。
もうすぐ、夜のとばりは降りる。
最後の音楽イベントなどが残っているが、大半の屋台などはすでに片付け作業に入っている。
「やれやれ、無事に終わったな」
「これで日常に戻るのね~」
「はいよ、売り尽くしだ。三割引きで買ってちょ~だいよ!」
引き潮のように少なくなる来客。最後の飲食屋台の呼び声。ある種の寂寥感と、もうちょっとだけうきうきする感覚。
決して勢いのある賑わいではないが、余韻に浸ることのできる一種独特の雰囲気がある。
「はぁ……」
フラ・キャンディ(kz0121)はそんな祭りの終わりを見ながら、縁石に座り込んでため息をついていた。
「故郷の方はまた精霊からの連絡を待つんでしょ?」
隣に座っていた興行師、シェイクがそう言ってフラを慰める。
フラ、自分が「百年目のエルフ」として追放された故郷の隠れ里が歪虚の堕落者、ルモーレの手勢に滅ぼされたことを知り、ハンターと一緒に解放する戦闘依頼をこなしていたばかりだ。
結果、奪還はしたが隠れ里は岩を掘削されたり爆破されたりと好き放題されていた。もちろん、歪虚の軍勢に攻められ生存者はいなかった。
それらはすでに何となく分かっていたことではあるが、里に入るのをためらってしまったことで心にもやもやが残ってしまったのだ。
「里は全滅したんじゃなくて精霊さんがいるから」
と、言い訳のように口にした自分の言葉を後悔しているわけではないのだが。
「まあ、フラちゃんの隠れ里のあるジェオルジでお仕事取っておいてよかったわ」
新たな連絡があればすぐに駆け付けることができるから、とシェイク。
「あ……お仕事って? リラ・ゼーレで何かするの?」
改めて気付いたように顔を上げてシェイクを見詰めるフラ。もちろんシェイクは事前に説明しているが、すっかり忘れてしまっているフラを怒ることはしない。
「リラ・ゼーレってわけじゃないわ。ソロの活動……吟遊詩人ね」
リラ・ゼーレとはシェイクがプロモートした時のフラたちのバンド名だ。過去には春郷祭や郷祭で活動したこともある。
が、今回は違うようで。
「もう祭りは最後だからって、ごみを捨てて帰ったり木々や建物にいたずらして帰ったりする人もいるの。それとは別に、もっとしっとりした余韻に浸ってからゆっくり星空を帰りたいって人もいるの。そういう人たちのため、祭りの各地に散ってゆったりした音楽と歌で聴く人の心を穏やかにしてほしいの」
依頼主は祭りの関係者から。
つまり、流しの吟遊詩人をして音楽と歌声でトラブル回避と最後の夜の雰囲気づくり、そして片付けをする関係者の心の癒しをしてほしいということだ。
「フラちゃん、元気のいいのはダメよ。……ほら、確か前に歌ってた『百年目の掟♪』って歌、あったでしょ? あれならばっちりよ」
「うん。……みんなに希望を持ってもらうような、優しい気持ちになってもらえればいいんだね」
フラ、こんな感じでいいの、とメロディーを呟く。
♪
百年目の 掟
百年目の 悲しみ
ボクは行くよ 一人
世界を知る 明日へ……
♪
里を追放されて一人森をさまよっている時に、自分自身を支えた歌。
今は、誰かを支えるように、丁寧に、ゆっくりと、優しく歌う――。
そんな感じで、祭りの最後の夜の余韻を奏でる人、求ム。
リプレイ本文
●
霧雨 悠月(ka4130)は控室の窓から黄昏れ時のまちを眺めていた。
その横にキーリ(ka4642)が立つ。
「お祭りの終わりって独特の心地良い気怠さがあるわよね」
「そうだね……楽しかった時間も、もうすぐ終わり。このお祭りで出来た思い出を回想しながら、しんみりとしちゃう夜だよね」
悠月、目元を緩めて頷く。
菫青石(ka6895)もやってきた。
「終わりかけのお祭りの疎らになった喧騒は、赤や黄色、緑に青、いろんな色がいろんな場所でぱちぱちと弾けて消えていくように見えるのじゃ……それが寂しげだけど綺麗で、楽しくて」
「変わった表現ねー」
分からなくはないけど、とキーリ。
「そこがいいんじゃないか?」
一言では言い表せないんだし、と鞍馬 真(ka5819)もやって来て窓枠に手を掛けた。外を見る目は優しく温もりがある。
「体が大きいのにひっそり来るわね?」
「あまり騒ぐのも、な?」
突っ込むキーリに、驚かせたのなら済まないと真。
「あんまり近寄ると低身長がばれるじゃない」
「まあまあ。キーリさんが後ろだと見えなくなるからこうするしかないんじゃないかな?」
まさかそっちとは、と戸惑う真。横から悠月がとりなす。すでにバレてるんじゃない、とか釣られるようなことはしない。
「可愛らしく見える、っていうのはダメだろうか?」
真も大人の対応。
「その言葉で女をたぶらかしてるわけねー」
ジト目のキーリ。真相は定かでないが。
その時、背後から軽やかな演奏が。
「ん。いい調子」
央崎 遥華(ka5644)がギター「ジャガーノート」のチューニングを始めたのだ。
「いつでも行けますよ?」
遥華、顔を上げて皆を見た。
「後はフラっちだけど……」
「そういえば最後の打ち合わせから戻ってないね?」
きょろ、と見回すキーリ。悠月は大丈夫かな、と真に振ってみる。
「ああ。見た感じ大丈夫そうだったよ。小太も行ったしな」
真がのんびりと答えたのはちょっと元気のないフラ・キャンディ(kz0121)の様子が問題なさそうなことを伝えるため。もっとも性分でもある。
そこで控室の扉が開く。
「ただいまですよぅ……皆さん、演奏後はこの店で打ち上げをするそうですのでよろしくお願いしますねぇ」
弓月・小太(ka4679)が明るく地図を配る。
「小太さん、ボクも手伝う」
フラ、普段より積極的に振る舞う小太を慌てて手伝う。
「さってと……」
悠月、腰掛けていた木箱から立ち上がった。
「このお祭りを、楽しくてきれいな思い出にしたまま終わりたいね♪」
遥華、乾いた音を一つ響かせチューニングを終えると立ち上がる。
「お疲れモードの人達にもこの余韻が伝わればええの」
「ん、有終の美を飾りましょうか」
菫青石も、キーリも。
「今回は一緒に、じゃないんだな?」
「幅広い場所で、ってことだからね」
真の言葉にフラがにこり。
「はぅ、一人でやるのは結構恥ずかしいですけど……ふ、雰囲気を壊さないように頑張らないとですぅ」
小太も役目を心得ている。
しっかりした足取りで控室を後にし、それぞれ散った。
●
「ん……こほん」
シャツ「エルフトラディオ」を着用した遥華が咳払いしたのは、前にいたカップルが手にしたごみをしてようとしたから。幸い、それに気付き思いとどまってくれたが。
「やっぱり広場の噴水には人が多いかな?」
ここに決めた、と噴水の縁に腰掛ける。結構その縁に座っている人は多く、会話など喧噪も多い。
「邪魔しないように……」
遥華、ゆっくりとジャガーノートを爪弾く。
優しく、ささやくように。
「ソロは本来得意でもないが……」
真は人の多い広場から少し離れた場所に。大きな木の下に、隠れるように座り込んだ。
そしてオカリナ「ファーテリティ」を取り出し息を吸い込む。
――♪・♪、♪~、♪~。
まずは短く、綺麗な旋律。
やがてふくよかで伸びのある音を。
(故郷ってのは、こんな感じなのかな)
一言では表せない感じをメロディーに乗せて。
(私自身、思い出せないが……)
そういうのを憧憬と言うのかもしれない、とも思う。
だからこその、何かを求めるような、問い掛けるような響きで。オカリナのどこか懐かしい音色と相まって、素朴でじんわりくる雰囲気を醸した。
「ここでちょっと星を見上げましょう?」
「お、ここがいいな」
カップルや酒をしんみり飲みたい人が、この木の周りに集まって来る。
「うーん、お酒か。良い香りがするな」
悠月はこれからが本番とばかりに酒を売り込んでいる屋台の集まる場所に来ていた。
「星が出てきたな」
「祭りも終わりね~」
そこかしこに点在するテーブルに座る人たちもある程度酒を飲んだ後の様子。会話は続かず余韻に浸っている。それでいて、帰宅はしたくないし、何かないかな、という感じ。
「じゃ、やろうか」
ヘッドセットを付け、手を高く掲げぱんと一つ大きくたたいた。
「お祭り、どうだった? 外で飲むのもまた良いよね」
ぱん、ぱんとたたきつつ歌うように声を掛けつつテーブルを回る。
(……久し振りに一人か。いつもと違ってどきどきするね)
が、そんな思いはおくびにも出さず続ける。
「夜の屋台並ぶ道、まだまだ楽しむ人に帰路につく人……」
ある程度回ったところで気付いてもらえた。
悠月が吟遊詩人であることに。
拍手がわく。
拍手が悠月のリズムに寄り添う……。
♪
今夜は星が綺麗だね、みんな飲んでる?今宵のお酒……
♪
テーブルを回りながら歌ううち、多くが注目し期待した。口ずさんだ歌詞も良かった。人の心をとらえた。
「さて…聴いてくれるかな、僕の歌?」
問う悠月に、期待の拍手。
「さあさあ、悔やんでも今夜が最後っ。そして皆が望むなら、来年もきっとこの場所で!」
歌う、と見て歓迎の拍手が響いた。
♪
今夜は星が綺麗だね
夜の香りに誘われてきっと今夜は眠れない
今夜は星が綺麗だね
甘い眠りに誘われてもきっと今夜は忘れない……
♪
●
♪
祭りの後の静かな夜
灯りが落ちても闇に恐れることはない……
♪
こちらでは別の歌声。
「ん、なんだ?」
昼間の賑わいを支え撤収を始めている物販屋台で、撤収作業をしている人たちが手を止める。
♪
見上げればほら満天の星
目を閉じよ 耳を塞げ
♪
心に染み入るような澄んだ歌声と静かな曲調が流れている。
「へえ、いい歌だな」
疲れて座り込んでいた人たちが顔を上げて歌声の主を探す。
だれだ、どこだ、ときょろきょろ。
♪
君の中にあるだろう
色とりどりの笑顔と歓声、楽しかった時間
♪
見つけた。
菫青石がリュートを爪弾きしっとりと歌っている。
♪
祭りの余韻は今ここに
祭りの後の静かな夜
甘く鮮やかな余韻は今ここに……
♪
ここで菫青石、気付いた。
周りに聴衆がいつの間にか集まり、うっとりと耳を傾けているのだ。
「もう一曲、いくかの? 祭りの終わった寂しさも疲れも、心地よい余韻として体と心に染み込み、癒しとなればよいのぅ」
じっくり堪能していた人たち、拍手でもう一曲をねだるのだった。
●
ちなみに、それらと違った雰囲気の場所もある。
「君とこうしていられて幸せだよ」
「寒くないかい? もっとこっちに」
「私が膝枕してあげる」
手を組み合わせ見つめ合ったり腰を抱いて引き寄せたり太腿に乗る重さを堪能したりとまあ、いちゃいちゃとした桃色空間は賑わいから外れた川辺である。
「相変わらずねー」
そこに姿を現したのは、キーリ。なんだかカップルがいる所へ頻繁に出没してるというのは本人の自覚であり、客観的事実でもある。
「ま、カップルを茶化……コホン、応援するのが大好きなのよ、私は」
建前はともかく、本音の通りである。
「それにしても……」
カップルの周りには飲食後のゴミが置いてある。持ち帰ればいいのだが、放置されては困りもの。
「水辺には水辺の精霊が居るんだからゴミで汚しちゃダメよー」
これ見よがしにゴミを拾いつつ、カップルたちが見詰める川へ歩く。ランタンを手にしているのでとても目立つ。
が、恋人同士で見詰める川辺の風景を邪魔しているので皆がむっとしていた。
キーリ、視線を集めたと知るとふふんと微笑し、ゴミを川辺に纏めてランタンを置き……。
「あっ!」
皆が驚いた。
流し目で皆を見つつ、キーリが川に入った……いや、川の上を歩いたのだ!
それだけではない。
――ぽつ、ぽつ……。
つま先で踊るように動きつつ、リトルファイアで川の上に明かりをともし始めたのだ。
キーリ、マントをなびかせせせらぎの上で踊る。
くるっとマントを巻き込むつま先のターン。
けだるい瞳の流し目は幻想的に。
伸ばしていた手を引き、クレセントリュートを爪弾く。
「水辺の精霊を悲しませてはだめ……」
カップルたちはこの幻想的な姿にくぎ付け。もうなんだっていうこと聞いちゃう。散らかしたゴミもまとめている。
その様子に微笑したキーリ、本格的に歌い始めた。
ほんのりしっとりとしたラブソングを。
●
「どこがいいですかねぇ…」
暗くなる少し前、小太は広場周辺をさまよっていた。
青袴の巫女風衣装で、手には横笛。きょろ、と視線を巡らせたところに、山の見える場所があった。
「ここにしましょうかぁ」
ぼんやりと場に居つく。正面の山に手を合わせあいさつしてから横笛を奏でた。
のんびりと、周りの雰囲気を壊さないように。
「ふぅ……」
一曲やったところで一息つくと、背後から拍手が響いた。
「はわわわ!? け、結構注目されてたですぅ」
振り向いた小太、びくっとなって真っ赤に。
もっとも、向けられた視線が温かい。
「そ、それじゃあ少しだけ舞踊の方も…」
今度は神楽鈴に持ち替えゆっくりとした舞を披露。
「おお……」
この時、観客がどよめいた。
「何か実家で練習してた時を思い出しますねぇ…」
小太は別に気にならない。大勢の前で舞うことは実家の姉たちに鍛えられて慣れっこ。
――しゃりん……。
右に掲げた神楽鈴を振った時、山の右上に星が瞬いた。
――しゃりしゃりん……。
左を向いて鳴らした時、山の東の空に星々がきらめいた。
まるで、夜に沈む山を借景に星を呼んでいる星の巫女のような舞となっていた。
「これはすごい」
どよめく観客。
小太、今度は扇を両手に持ち静かにどこか厳かに舞う。
すでに星は夜空に出そろっている。満点の星を表しているようだった。
「おおお……」
星降る晩の舞は神秘的――。
「星が増えてきたな」
曲の合間に夜空を見上げた真、オカリナをしまいフルートを取り出した。
「綺麗ね」
「いい晩になったな」
集まった人たちも星空を見上げている。
(主役は……星かな?)
真、素早く周りを確認して決断。
そしてはっと気付いて苦笑した。
(戦場での心得がこんなところにも出るか……)
まさに戦場での状況判断、そして求められる支援や戦略行動の即実行。
軍隊での規律行動ではなく、ハンターならではの即興性のある戦闘心得ともいえる。
(そういえば最近戦いに明け暮れてばかりだったな)
真、開き直って寄り添うような曲を演奏する。
きょうは思いっきり演奏を楽しむつもりだ。
●
そして、噴水のそば。
♪
賑やかだった時間が過ぎて
それぞれの帰路につく
夜空を見上げると星達が地上へ拍手してた
楽しげな様子を祝福するように
♪
遥華の歌声が流れている。
ゆっくりとしたアルペジオの旋律。
優しくささやくような歌声。そっと勇気づけるような歌詞。
♪
ねぇ 忘れないでね その笑顔
君が笑ってくれるから 僕は歩み続けるよ
♪
「いい雰囲気ね」
「もうちょっとゆっくりしていこう」
通り掛かる人は足を止める。
「これ、捨てずに持って帰ろうか」
ゴミを捨てて帰るなどという心はわかない。
遥華の歌声は続く。
♪
星と風に抱かれて
繋いだ手は離さずに
見つめて溢れだしてく
紡いだ言葉を絶やさないで……
♪
最後の旋律が終わると、多くの拍手が送られた。
遥華、一礼して皆のアンコールにこたえるのだった。
●
「お待たせですっ!」
遥華、バタンと打ち上げの店に駆け込んだ。
「待ってたぞ。まずは乾杯じゃ!」
菫青石が手招きする。遥華、綺麗なカクテルを注文。
とにかく、皆でかんぱ~い♪
「……む、何警戒してるのよユッキー」
「キーリさん、飲み過ぎないでネ。前の時大変だったから」
カシスオレンジを手にしたキーリに、ワインをちびりとやりつつ悠月がにっこりと。
「私がそんなわけないでしょ? それよりこのカクテル、美味しいわよ」
「ああ、うん。飲みやすいな」
真、キーリに絡まれた。ちなみにキーリはまだ酔ってない。
「あ…フラさんの方はどんな感じでしたかぁ?」
小太はフラの隣へ。
「喜んでもらえたよ。しんみりしたのも喜ばれるんだね~」
「ん?」
フラの言葉に菫青石が反応した。
「フラ、お前は少し元気がないように見えるのう。そのセピア色も悪くないが、もっと鮮やかな色も似合うと思うんじゃが……」
ほれ、これで元気を出せ、とから揚げをおすそ分け。
「あ、フラさんはちょっといま大変ですからぁ……」
「それがいかん」
気を回した小太に菫青石がぴしゃり。
「歌って食べて寝て、「明日」に備えるんじゃ」
菫青石が「ではの」と外した席に、今度は遥華が座る。
「ちょっとお疲れ気味?」
「ん、少しだけ」
フラ、笑顔を見せた。
「私、噴水で歌ってきたけど、とっても素敵だったからその雰囲気のおすそ分けです♪」
遥華、右手でフラの頬を撫でた。最後に噴水に付けた手だ。
「あ、冷たい?」
「ううん、涼やかで気持ち良かった」
これを見たキーリが、がばり。
「ほーらーフラっちもー暗い顔してるー」
「キーリさん、目が座ってるよぅ」
むぎゅむぎゅと抱き着かれ「色々お節介をやいちゃうわよー」。
「ああん、大丈夫大丈夫」
むにむにとほっぺいじったりされてフラ、ギブアップ。
「それを言ったら真さんも沈んだ感じ、かな?」
「え? ……いや、大丈夫」
悠月がぼんやりしていた真の隣に座る。真、故郷のこと――思い出せないが――に思いをはせていたが、笑顔を作った。
「まあ、ええ演奏をしたらそうなるのも分からんでもない」
「確かにこっちも充実させてもらいましたね」
菫青石と遥華もこっちに来て座った。
「それじゃお腹も空くよね?」
悠月がおつまみを注文。
その匂いにつられてキーリも来た。
「んー、疲れた後のお酒美味しいわねー。おつまみも美味しい」
そして皆の思いやりですっかり火照り気味のフラ。
「その、フラさん……」
隣に小太が身を寄せた。きゅっとフラの手を握る。
「……温かい」
「…ふ、フラさんの事は僕が支えますよぉ。ずっと、側でぇ…」
夢見るようなフラの隣で想いを伝えた。
「うれしい……うれしい」
肩に身を預けるフラ。
腕に抱き着いたまま、涙もそっと拭いていた。
「いい夜だね」
悠月が呟く。
菫青石、遥華、真、キーリも頷いた。
霧雨 悠月(ka4130)は控室の窓から黄昏れ時のまちを眺めていた。
その横にキーリ(ka4642)が立つ。
「お祭りの終わりって独特の心地良い気怠さがあるわよね」
「そうだね……楽しかった時間も、もうすぐ終わり。このお祭りで出来た思い出を回想しながら、しんみりとしちゃう夜だよね」
悠月、目元を緩めて頷く。
菫青石(ka6895)もやってきた。
「終わりかけのお祭りの疎らになった喧騒は、赤や黄色、緑に青、いろんな色がいろんな場所でぱちぱちと弾けて消えていくように見えるのじゃ……それが寂しげだけど綺麗で、楽しくて」
「変わった表現ねー」
分からなくはないけど、とキーリ。
「そこがいいんじゃないか?」
一言では言い表せないんだし、と鞍馬 真(ka5819)もやって来て窓枠に手を掛けた。外を見る目は優しく温もりがある。
「体が大きいのにひっそり来るわね?」
「あまり騒ぐのも、な?」
突っ込むキーリに、驚かせたのなら済まないと真。
「あんまり近寄ると低身長がばれるじゃない」
「まあまあ。キーリさんが後ろだと見えなくなるからこうするしかないんじゃないかな?」
まさかそっちとは、と戸惑う真。横から悠月がとりなす。すでにバレてるんじゃない、とか釣られるようなことはしない。
「可愛らしく見える、っていうのはダメだろうか?」
真も大人の対応。
「その言葉で女をたぶらかしてるわけねー」
ジト目のキーリ。真相は定かでないが。
その時、背後から軽やかな演奏が。
「ん。いい調子」
央崎 遥華(ka5644)がギター「ジャガーノート」のチューニングを始めたのだ。
「いつでも行けますよ?」
遥華、顔を上げて皆を見た。
「後はフラっちだけど……」
「そういえば最後の打ち合わせから戻ってないね?」
きょろ、と見回すキーリ。悠月は大丈夫かな、と真に振ってみる。
「ああ。見た感じ大丈夫そうだったよ。小太も行ったしな」
真がのんびりと答えたのはちょっと元気のないフラ・キャンディ(kz0121)の様子が問題なさそうなことを伝えるため。もっとも性分でもある。
そこで控室の扉が開く。
「ただいまですよぅ……皆さん、演奏後はこの店で打ち上げをするそうですのでよろしくお願いしますねぇ」
弓月・小太(ka4679)が明るく地図を配る。
「小太さん、ボクも手伝う」
フラ、普段より積極的に振る舞う小太を慌てて手伝う。
「さってと……」
悠月、腰掛けていた木箱から立ち上がった。
「このお祭りを、楽しくてきれいな思い出にしたまま終わりたいね♪」
遥華、乾いた音を一つ響かせチューニングを終えると立ち上がる。
「お疲れモードの人達にもこの余韻が伝わればええの」
「ん、有終の美を飾りましょうか」
菫青石も、キーリも。
「今回は一緒に、じゃないんだな?」
「幅広い場所で、ってことだからね」
真の言葉にフラがにこり。
「はぅ、一人でやるのは結構恥ずかしいですけど……ふ、雰囲気を壊さないように頑張らないとですぅ」
小太も役目を心得ている。
しっかりした足取りで控室を後にし、それぞれ散った。
●
「ん……こほん」
シャツ「エルフトラディオ」を着用した遥華が咳払いしたのは、前にいたカップルが手にしたごみをしてようとしたから。幸い、それに気付き思いとどまってくれたが。
「やっぱり広場の噴水には人が多いかな?」
ここに決めた、と噴水の縁に腰掛ける。結構その縁に座っている人は多く、会話など喧噪も多い。
「邪魔しないように……」
遥華、ゆっくりとジャガーノートを爪弾く。
優しく、ささやくように。
「ソロは本来得意でもないが……」
真は人の多い広場から少し離れた場所に。大きな木の下に、隠れるように座り込んだ。
そしてオカリナ「ファーテリティ」を取り出し息を吸い込む。
――♪・♪、♪~、♪~。
まずは短く、綺麗な旋律。
やがてふくよかで伸びのある音を。
(故郷ってのは、こんな感じなのかな)
一言では表せない感じをメロディーに乗せて。
(私自身、思い出せないが……)
そういうのを憧憬と言うのかもしれない、とも思う。
だからこその、何かを求めるような、問い掛けるような響きで。オカリナのどこか懐かしい音色と相まって、素朴でじんわりくる雰囲気を醸した。
「ここでちょっと星を見上げましょう?」
「お、ここがいいな」
カップルや酒をしんみり飲みたい人が、この木の周りに集まって来る。
「うーん、お酒か。良い香りがするな」
悠月はこれからが本番とばかりに酒を売り込んでいる屋台の集まる場所に来ていた。
「星が出てきたな」
「祭りも終わりね~」
そこかしこに点在するテーブルに座る人たちもある程度酒を飲んだ後の様子。会話は続かず余韻に浸っている。それでいて、帰宅はしたくないし、何かないかな、という感じ。
「じゃ、やろうか」
ヘッドセットを付け、手を高く掲げぱんと一つ大きくたたいた。
「お祭り、どうだった? 外で飲むのもまた良いよね」
ぱん、ぱんとたたきつつ歌うように声を掛けつつテーブルを回る。
(……久し振りに一人か。いつもと違ってどきどきするね)
が、そんな思いはおくびにも出さず続ける。
「夜の屋台並ぶ道、まだまだ楽しむ人に帰路につく人……」
ある程度回ったところで気付いてもらえた。
悠月が吟遊詩人であることに。
拍手がわく。
拍手が悠月のリズムに寄り添う……。
♪
今夜は星が綺麗だね、みんな飲んでる?今宵のお酒……
♪
テーブルを回りながら歌ううち、多くが注目し期待した。口ずさんだ歌詞も良かった。人の心をとらえた。
「さて…聴いてくれるかな、僕の歌?」
問う悠月に、期待の拍手。
「さあさあ、悔やんでも今夜が最後っ。そして皆が望むなら、来年もきっとこの場所で!」
歌う、と見て歓迎の拍手が響いた。
♪
今夜は星が綺麗だね
夜の香りに誘われてきっと今夜は眠れない
今夜は星が綺麗だね
甘い眠りに誘われてもきっと今夜は忘れない……
♪
●
♪
祭りの後の静かな夜
灯りが落ちても闇に恐れることはない……
♪
こちらでは別の歌声。
「ん、なんだ?」
昼間の賑わいを支え撤収を始めている物販屋台で、撤収作業をしている人たちが手を止める。
♪
見上げればほら満天の星
目を閉じよ 耳を塞げ
♪
心に染み入るような澄んだ歌声と静かな曲調が流れている。
「へえ、いい歌だな」
疲れて座り込んでいた人たちが顔を上げて歌声の主を探す。
だれだ、どこだ、ときょろきょろ。
♪
君の中にあるだろう
色とりどりの笑顔と歓声、楽しかった時間
♪
見つけた。
菫青石がリュートを爪弾きしっとりと歌っている。
♪
祭りの余韻は今ここに
祭りの後の静かな夜
甘く鮮やかな余韻は今ここに……
♪
ここで菫青石、気付いた。
周りに聴衆がいつの間にか集まり、うっとりと耳を傾けているのだ。
「もう一曲、いくかの? 祭りの終わった寂しさも疲れも、心地よい余韻として体と心に染み込み、癒しとなればよいのぅ」
じっくり堪能していた人たち、拍手でもう一曲をねだるのだった。
●
ちなみに、それらと違った雰囲気の場所もある。
「君とこうしていられて幸せだよ」
「寒くないかい? もっとこっちに」
「私が膝枕してあげる」
手を組み合わせ見つめ合ったり腰を抱いて引き寄せたり太腿に乗る重さを堪能したりとまあ、いちゃいちゃとした桃色空間は賑わいから外れた川辺である。
「相変わらずねー」
そこに姿を現したのは、キーリ。なんだかカップルがいる所へ頻繁に出没してるというのは本人の自覚であり、客観的事実でもある。
「ま、カップルを茶化……コホン、応援するのが大好きなのよ、私は」
建前はともかく、本音の通りである。
「それにしても……」
カップルの周りには飲食後のゴミが置いてある。持ち帰ればいいのだが、放置されては困りもの。
「水辺には水辺の精霊が居るんだからゴミで汚しちゃダメよー」
これ見よがしにゴミを拾いつつ、カップルたちが見詰める川へ歩く。ランタンを手にしているのでとても目立つ。
が、恋人同士で見詰める川辺の風景を邪魔しているので皆がむっとしていた。
キーリ、視線を集めたと知るとふふんと微笑し、ゴミを川辺に纏めてランタンを置き……。
「あっ!」
皆が驚いた。
流し目で皆を見つつ、キーリが川に入った……いや、川の上を歩いたのだ!
それだけではない。
――ぽつ、ぽつ……。
つま先で踊るように動きつつ、リトルファイアで川の上に明かりをともし始めたのだ。
キーリ、マントをなびかせせせらぎの上で踊る。
くるっとマントを巻き込むつま先のターン。
けだるい瞳の流し目は幻想的に。
伸ばしていた手を引き、クレセントリュートを爪弾く。
「水辺の精霊を悲しませてはだめ……」
カップルたちはこの幻想的な姿にくぎ付け。もうなんだっていうこと聞いちゃう。散らかしたゴミもまとめている。
その様子に微笑したキーリ、本格的に歌い始めた。
ほんのりしっとりとしたラブソングを。
●
「どこがいいですかねぇ…」
暗くなる少し前、小太は広場周辺をさまよっていた。
青袴の巫女風衣装で、手には横笛。きょろ、と視線を巡らせたところに、山の見える場所があった。
「ここにしましょうかぁ」
ぼんやりと場に居つく。正面の山に手を合わせあいさつしてから横笛を奏でた。
のんびりと、周りの雰囲気を壊さないように。
「ふぅ……」
一曲やったところで一息つくと、背後から拍手が響いた。
「はわわわ!? け、結構注目されてたですぅ」
振り向いた小太、びくっとなって真っ赤に。
もっとも、向けられた視線が温かい。
「そ、それじゃあ少しだけ舞踊の方も…」
今度は神楽鈴に持ち替えゆっくりとした舞を披露。
「おお……」
この時、観客がどよめいた。
「何か実家で練習してた時を思い出しますねぇ…」
小太は別に気にならない。大勢の前で舞うことは実家の姉たちに鍛えられて慣れっこ。
――しゃりん……。
右に掲げた神楽鈴を振った時、山の右上に星が瞬いた。
――しゃりしゃりん……。
左を向いて鳴らした時、山の東の空に星々がきらめいた。
まるで、夜に沈む山を借景に星を呼んでいる星の巫女のような舞となっていた。
「これはすごい」
どよめく観客。
小太、今度は扇を両手に持ち静かにどこか厳かに舞う。
すでに星は夜空に出そろっている。満点の星を表しているようだった。
「おおお……」
星降る晩の舞は神秘的――。
「星が増えてきたな」
曲の合間に夜空を見上げた真、オカリナをしまいフルートを取り出した。
「綺麗ね」
「いい晩になったな」
集まった人たちも星空を見上げている。
(主役は……星かな?)
真、素早く周りを確認して決断。
そしてはっと気付いて苦笑した。
(戦場での心得がこんなところにも出るか……)
まさに戦場での状況判断、そして求められる支援や戦略行動の即実行。
軍隊での規律行動ではなく、ハンターならではの即興性のある戦闘心得ともいえる。
(そういえば最近戦いに明け暮れてばかりだったな)
真、開き直って寄り添うような曲を演奏する。
きょうは思いっきり演奏を楽しむつもりだ。
●
そして、噴水のそば。
♪
賑やかだった時間が過ぎて
それぞれの帰路につく
夜空を見上げると星達が地上へ拍手してた
楽しげな様子を祝福するように
♪
遥華の歌声が流れている。
ゆっくりとしたアルペジオの旋律。
優しくささやくような歌声。そっと勇気づけるような歌詞。
♪
ねぇ 忘れないでね その笑顔
君が笑ってくれるから 僕は歩み続けるよ
♪
「いい雰囲気ね」
「もうちょっとゆっくりしていこう」
通り掛かる人は足を止める。
「これ、捨てずに持って帰ろうか」
ゴミを捨てて帰るなどという心はわかない。
遥華の歌声は続く。
♪
星と風に抱かれて
繋いだ手は離さずに
見つめて溢れだしてく
紡いだ言葉を絶やさないで……
♪
最後の旋律が終わると、多くの拍手が送られた。
遥華、一礼して皆のアンコールにこたえるのだった。
●
「お待たせですっ!」
遥華、バタンと打ち上げの店に駆け込んだ。
「待ってたぞ。まずは乾杯じゃ!」
菫青石が手招きする。遥華、綺麗なカクテルを注文。
とにかく、皆でかんぱ~い♪
「……む、何警戒してるのよユッキー」
「キーリさん、飲み過ぎないでネ。前の時大変だったから」
カシスオレンジを手にしたキーリに、ワインをちびりとやりつつ悠月がにっこりと。
「私がそんなわけないでしょ? それよりこのカクテル、美味しいわよ」
「ああ、うん。飲みやすいな」
真、キーリに絡まれた。ちなみにキーリはまだ酔ってない。
「あ…フラさんの方はどんな感じでしたかぁ?」
小太はフラの隣へ。
「喜んでもらえたよ。しんみりしたのも喜ばれるんだね~」
「ん?」
フラの言葉に菫青石が反応した。
「フラ、お前は少し元気がないように見えるのう。そのセピア色も悪くないが、もっと鮮やかな色も似合うと思うんじゃが……」
ほれ、これで元気を出せ、とから揚げをおすそ分け。
「あ、フラさんはちょっといま大変ですからぁ……」
「それがいかん」
気を回した小太に菫青石がぴしゃり。
「歌って食べて寝て、「明日」に備えるんじゃ」
菫青石が「ではの」と外した席に、今度は遥華が座る。
「ちょっとお疲れ気味?」
「ん、少しだけ」
フラ、笑顔を見せた。
「私、噴水で歌ってきたけど、とっても素敵だったからその雰囲気のおすそ分けです♪」
遥華、右手でフラの頬を撫でた。最後に噴水に付けた手だ。
「あ、冷たい?」
「ううん、涼やかで気持ち良かった」
これを見たキーリが、がばり。
「ほーらーフラっちもー暗い顔してるー」
「キーリさん、目が座ってるよぅ」
むぎゅむぎゅと抱き着かれ「色々お節介をやいちゃうわよー」。
「ああん、大丈夫大丈夫」
むにむにとほっぺいじったりされてフラ、ギブアップ。
「それを言ったら真さんも沈んだ感じ、かな?」
「え? ……いや、大丈夫」
悠月がぼんやりしていた真の隣に座る。真、故郷のこと――思い出せないが――に思いをはせていたが、笑顔を作った。
「まあ、ええ演奏をしたらそうなるのも分からんでもない」
「確かにこっちも充実させてもらいましたね」
菫青石と遥華もこっちに来て座った。
「それじゃお腹も空くよね?」
悠月がおつまみを注文。
その匂いにつられてキーリも来た。
「んー、疲れた後のお酒美味しいわねー。おつまみも美味しい」
そして皆の思いやりですっかり火照り気味のフラ。
「その、フラさん……」
隣に小太が身を寄せた。きゅっとフラの手を握る。
「……温かい」
「…ふ、フラさんの事は僕が支えますよぉ。ずっと、側でぇ…」
夢見るようなフラの隣で想いを伝えた。
「うれしい……うれしい」
肩に身を預けるフラ。
腕に抱き着いたまま、涙もそっと拭いていた。
「いい夜だね」
悠月が呟く。
菫青石、遥華、真、キーリも頷いた。
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相談ですよー 弓月・小太(ka4679) 人間(クリムゾンウェスト)|10才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/06/27 10:27:44 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/27 10:22:22 |