ゲスト
(ka0000)
新婦と季節外れのアメ
マスター:からた狐

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~20人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2017/06/28 19:00
- 完成日
- 2018/05/02 20:27
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ゾンネンシュトラール帝国北方。本日も晴れ。
とある街では、若い男女が結婚式を終え、貸し切ったレストランで知人招いての披露宴パーティーを行っていた。
「おめでとう」
「幸せになれよー」
祝福の声もそこそこに。新郎新婦親族友人たちと和気あいあいに、飲んで騒いで余興を楽しむ。
そこにあるのは明るい未来。希望の日々。永遠の続く固い絆。
しかし、平和をぶち壊す不穏はこの世には存在する。
筆頭は歪虚だが。それ以外にも、お邪魔な輩はいろいろいる。
「Trick or Treat!」
うかれて騒ぐ人々に、負けないぐらい陽気で軽快な声がかけられた。
と、思うや。
いきなり天井付近から固い物がぶつけられる。
「うわ、痛たたた。何だ!?」
仰げば、いつのまにか妙なものが浮かんでいる。誰が見ても、それカボチャだった。その数六体。
何でカボチャが空を飛ぶのか。そんな状況を把握する前に、ぽかんとしている人々めがけて、カボチャから次々と固い物が撃ちつけられる。
「いたたた。やめろ」
「余興にも程があるぞ。あのカボチャを早く片付けろ!!」
色鮮やかで形も様々。ぶつけられても怪我はないが、とにかく痛い。
地面に転がるそれをよくよく見れば。
「これは……飴玉か?」
ガラス玉のようにも見えるが、それよりも硬くはなさそうで。服にひっついたのを試しに舐めると、口に広がる甘い味。
子供らは、降ってきたお菓子に大喜びだが。カボチャたちがそれとなく地面に落ちたのを回収しているのを見て、口に運ぶのは止めている。
「トリック オア トリート!!」
「おもてなししろー。さもなくば、悪戯するぞー」
ふよふよ飛び回るカボチャたちは、陽気に元気に人に向けて全力でぶつけてくる。
「うわっ、やめろ。けっこう痛いぞ」
飴玉とはいえ、当たり所が悪ければ怪我にもつながる。それはカボチャたちも分かっているのか、偶然なのか、急所は狙ってはこない。
とはいえ、それ以外の遠慮は無く。ぶつかる飴玉は机に当たれば弾けるほど。
無作為無造作に上から飴をぶつけてくる敵に、丸腰の酔いどれたちではいかんともしがたく。
慌てて、アメの雨から外へと逃げ出す。
「トリック オア トリート!!」
「おもてなししろー!」
外まで出る気はないのか、レストランの中をカボチャたちは飛び回っている。
「分かった、分かった。パーティーのごちそうもデザートも好きに食べていいから、悪戯をやめてくれ」
望まない招待客だが、騒がれ続けるよりもましだ。
そう考えての提案だったが、
「おもてなしー!」
「トリック オア トリート!!」
カボチャたちの反応は変わらない。
「……もしかして。あいつら悪戯したいだけなのか」
「そんなぁ」
何やら騒がしい店内を、外から途方に暮れてみる新郎たち。
●
そして、ハンターオフィスに依頼が出される。
「北方にあるレストランを占拠して、ジャック・オ・ランタンが悪戯しています」
「なんでやねん」
聞いたハンターが思わず声を上げたのも無理はない。時季外れも甚だしい。オフィスの係員も、軽く肩をすくめて小さく息を吐いた。
「カボチャ六体。レストランから出てくる気配も無く、中で騒いでいるようです。披露宴というめでたい席を中断するのもどうかとは思いますし、居続けるならレストランの営業にも関わります」
「それだけじゃあないんだ!! 僕の妻がまだ店内に残っているんだ!!」
係員の説明を遮り、男が一人。焦る気持ちをぶつけるように机を叩き、前のめりに訴えだす。
聞けば、逃げた新婦を新郎が見つけるという寸劇のようなゲームをやっていたらしい。嫁に逃げられた新郎を周囲は大笑いしつつ、最後は新婦を見つけてめでたしめでたし、となるはずが。
カボチャ乱入により、新婦は隠れたまま逃げ遅れ。今も店内に取り残されているという。隠れているのはホール中央にあるテーブルの下というベタな位置だという。迂闊にカボチャたちに見つかると、アメを集中してぶつけられかねない。
「彼女はまだレストランにいる! 待っていてくれ、今助けに……」
「行かないでください。邪魔です」
駆け出そうとした新郎を、さっと係員が足払い。無様にこけた彼をやれやれと見降ろしている。
「……と、ここに来てからずっと諭しているのに聞き入れる気は無いようです。放っておけば店内に飛び込んでいきかねません」
困ったように告げる係員。
「依頼はカボチャの排除。生死は問いません。そして新婦の救出。……新郎を連れて行くかはお任せします」
「離せ―。彼女が! 彼女が待っているんだー!!」
ジャック・オ・ランタン相手ならば、一般市民でもなんとか相手にはできる。カボチャたちが悪戯目的なら、ちょっと痛い目に合う程度で済むだろう。
ただ、何となく邪魔そうではある。
とある街では、若い男女が結婚式を終え、貸し切ったレストランで知人招いての披露宴パーティーを行っていた。
「おめでとう」
「幸せになれよー」
祝福の声もそこそこに。新郎新婦親族友人たちと和気あいあいに、飲んで騒いで余興を楽しむ。
そこにあるのは明るい未来。希望の日々。永遠の続く固い絆。
しかし、平和をぶち壊す不穏はこの世には存在する。
筆頭は歪虚だが。それ以外にも、お邪魔な輩はいろいろいる。
「Trick or Treat!」
うかれて騒ぐ人々に、負けないぐらい陽気で軽快な声がかけられた。
と、思うや。
いきなり天井付近から固い物がぶつけられる。
「うわ、痛たたた。何だ!?」
仰げば、いつのまにか妙なものが浮かんでいる。誰が見ても、それカボチャだった。その数六体。
何でカボチャが空を飛ぶのか。そんな状況を把握する前に、ぽかんとしている人々めがけて、カボチャから次々と固い物が撃ちつけられる。
「いたたた。やめろ」
「余興にも程があるぞ。あのカボチャを早く片付けろ!!」
色鮮やかで形も様々。ぶつけられても怪我はないが、とにかく痛い。
地面に転がるそれをよくよく見れば。
「これは……飴玉か?」
ガラス玉のようにも見えるが、それよりも硬くはなさそうで。服にひっついたのを試しに舐めると、口に広がる甘い味。
子供らは、降ってきたお菓子に大喜びだが。カボチャたちがそれとなく地面に落ちたのを回収しているのを見て、口に運ぶのは止めている。
「トリック オア トリート!!」
「おもてなししろー。さもなくば、悪戯するぞー」
ふよふよ飛び回るカボチャたちは、陽気に元気に人に向けて全力でぶつけてくる。
「うわっ、やめろ。けっこう痛いぞ」
飴玉とはいえ、当たり所が悪ければ怪我にもつながる。それはカボチャたちも分かっているのか、偶然なのか、急所は狙ってはこない。
とはいえ、それ以外の遠慮は無く。ぶつかる飴玉は机に当たれば弾けるほど。
無作為無造作に上から飴をぶつけてくる敵に、丸腰の酔いどれたちではいかんともしがたく。
慌てて、アメの雨から外へと逃げ出す。
「トリック オア トリート!!」
「おもてなししろー!」
外まで出る気はないのか、レストランの中をカボチャたちは飛び回っている。
「分かった、分かった。パーティーのごちそうもデザートも好きに食べていいから、悪戯をやめてくれ」
望まない招待客だが、騒がれ続けるよりもましだ。
そう考えての提案だったが、
「おもてなしー!」
「トリック オア トリート!!」
カボチャたちの反応は変わらない。
「……もしかして。あいつら悪戯したいだけなのか」
「そんなぁ」
何やら騒がしい店内を、外から途方に暮れてみる新郎たち。
●
そして、ハンターオフィスに依頼が出される。
「北方にあるレストランを占拠して、ジャック・オ・ランタンが悪戯しています」
「なんでやねん」
聞いたハンターが思わず声を上げたのも無理はない。時季外れも甚だしい。オフィスの係員も、軽く肩をすくめて小さく息を吐いた。
「カボチャ六体。レストランから出てくる気配も無く、中で騒いでいるようです。披露宴というめでたい席を中断するのもどうかとは思いますし、居続けるならレストランの営業にも関わります」
「それだけじゃあないんだ!! 僕の妻がまだ店内に残っているんだ!!」
係員の説明を遮り、男が一人。焦る気持ちをぶつけるように机を叩き、前のめりに訴えだす。
聞けば、逃げた新婦を新郎が見つけるという寸劇のようなゲームをやっていたらしい。嫁に逃げられた新郎を周囲は大笑いしつつ、最後は新婦を見つけてめでたしめでたし、となるはずが。
カボチャ乱入により、新婦は隠れたまま逃げ遅れ。今も店内に取り残されているという。隠れているのはホール中央にあるテーブルの下というベタな位置だという。迂闊にカボチャたちに見つかると、アメを集中してぶつけられかねない。
「彼女はまだレストランにいる! 待っていてくれ、今助けに……」
「行かないでください。邪魔です」
駆け出そうとした新郎を、さっと係員が足払い。無様にこけた彼をやれやれと見降ろしている。
「……と、ここに来てからずっと諭しているのに聞き入れる気は無いようです。放っておけば店内に飛び込んでいきかねません」
困ったように告げる係員。
「依頼はカボチャの排除。生死は問いません。そして新婦の救出。……新郎を連れて行くかはお任せします」
「離せ―。彼女が! 彼女が待っているんだー!!」
ジャック・オ・ランタン相手ならば、一般市民でもなんとか相手にはできる。カボチャたちが悪戯目的なら、ちょっと痛い目に合う程度で済むだろう。
ただ、何となく邪魔そうではある。
リプレイ本文
時季外れのジャック・オ・ランタン。レストランで悪戯三昧。
しかも、披露宴の最中で、新婦が逃げ遅れているという。
「早く! 早く彼女を助けに行かないとー!」
「まぁ落ち着け。焦ってやたらに動いては、勝てる喧嘩も勝てなくなる」
騒いで飛び出そうとする新郎を、セルゲン(ka6612)が軽く引き留める。
大事な式を荒らされて、愛する人も窮地にあるのだ。新郎の心中は容易に察せられる。かといって、無策に行動させる訳にはいかない。
それが分かっているので新郎もハンターの言葉をきちんと聞く。が、心配からすぐにまたうろうろと落ち着きなく動き回り、やがて飛び出そうとする。さっきからその繰り返しだ。
「ご妻女を助けに向かわんとする御夫君か……。まことに麗しい話よの。あい分かった、我も多少なりとも手伝わせていただこう」
落ち着きのない新郎を、逆にユーレン(ka6859)は好ましく思う。
相手は単なる魔法生物。とはいえ、数も多く、新郎一人の手におえる相手でもない。それを新婦の為に突き進んでいこうというのだ。半端な気持ちでは無理だろう。
手を貸したい、と思う情も当然のように出てくる。
そして、その為には準備が必要。相手は歪虚ではないのだ。穏便に追い払えるならそれでもいい。
「まずは中の詳しい様子を教えてください! ――大丈夫。ここでかっこよく動けたら、結婚生活も安泰ですよ!」
「結婚生活……。その為には、彼女がいないと!! 今すぐ助けに!」
「わわわ。だから、落ち着いて下さーい」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が話をしようとするも、新郎はやっぱり暴走気味。何とか宥めつつ、必要な準備を整えていくも、その間も新郎は落ち着かない。
「もう少し冷静に。成功すれば、これも良い思い出となりますよ」
「成功すれば……。じゃあ失敗したら――! こうしちゃおれん!!」
「だからぁ、冷静にですよぉ」
Gacrux(ka2726)が差し出した木刀を握りしめると、さっそくとばかりに乗り込もうとする新郎。
まずは彼をどうするかから始めねばならないようだ。
焦る新郎を宥め、時には抑えつつ。他の招待客や逃げた店員から内部の状態を聞く。
「中は荒れてますねぇ。足元注意です」
式符を動かし、視覚を通してルンルンがさらに中をチェック。カボチャたちは天井近くまで飛び上がり、来客が来るのを待ち構えていると言う。悪意と言うより、子供が悪戯をしかけたくてうずうずしている感じらしい。
正面の入り口は開いたまま。時折、天井近くからちらっとカボチャが下りてくるのは入って来いと挑発しているのか。だが、出てくる気配は無い。
窓はあるが格子がはめられ、入るには不向き。後は、厨房に直接通じる裏口があるとか。
「そこまで分かれば十分。さっそく華麗なる救出劇と参ろうか」
ユーレンが片手鎚「ミートハンマー」を構えると、新郎に促す。
「分かりました! すぐにでもー!!」
即座に駆け出そうとする新郎の首根っこをセルゲンが即座に抑える。
「焦るな。大事な式での失態は一生根にもたれかねないぞ……」
さすが既婚者。その言葉の重みはさすがの新郎の頭も冷やす。
「新婦もさぞ不安な気持ちでいるだろう。あんたは妻を守れ。あんたの事は俺が守る」
バシッと決めろ、と励ますセルゲンに、新郎はぽかんと口を開けていたが。すぐに気を引き締めて、大きく頷いた。
●
大きく開いた正面入り口にGacruxとユーレンが立つ。
一瞬、緊張した雰囲気も流れたが、次にGacruxが取り出したのは魔導拡声機「ナーハリヒト」だった。
「あーあー。カボチャさんたちに告げます。大人しく投降しなければ討伐します。今ならまだ引き返せる」
まずは警告。それでカボチャたちが従ってくれればいいのだが……。
カボチャたちは突然の大音量に驚いたか。しばらくは反応なし。
やがて、一体が慎重に近付いてくる。
ハンターたちが見ている前で、捕まらないような距離を保ちつつ、恐る恐ると言う雰囲気を出しながら漂っていたが。
こつん、と飴玉をぶつけられる。
たかがアメ玉。ハンターたちからは即座の反撃はなく、さらに様子を見る。
それに気を良くしたか。カボチャから撒かれるアメの量が増え、天井で見ていた他のカボチャたちも降りてくる。
「Trick or Treat!」
「おもてなししろー。悪戯するぞー」
あちらこちらに飛び回り、ハンターたちに要求を突き付け、アメをぶつける。――こうなると、警告を聞く気などさらさら無いと分かる。
ユーレンはさりげなく呼吸を整える。
「うぬら風に言うなら、フレンド オア デストローイ、だな。菓子が欲しくばくれてやろう、そぉれっ!」
取り出したのは節分枡。豆をつかむと、カボチャたちに向けて思いっきり投げつける。
ユーレン曰く、節分豆も菓子。何と言われようと菓子。くれと言っているからあげているだけ。文句は言わせない。
しかし、ハロウィンカボチャも鬼に節分豆をぶつけられるとは考えなかったか、突然の仕打ちに慌てふためく。
「トリック! トリック!」
「トリート! とりっく!」
不満があるのか、単に遊んでいるのか。カボチャたちはアメを積極的に投げてくる。
Gacruxも仮面を取ると、闘争心を発揮。
「トリック オア トリート」
口裂け顔でアメを拾いながら、カボチャたちへと投げ返す。
その後は豆とアメが乱れ飛ぶ、何とも言えない騒ぎが繰り広げられていった。
●
カボチャたちの注意を入り口の二人が引き付けている間に、厨房側の入り口からにルンルンとセルゲンに新郎を加えた三人が回り込む。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法分身の術!」
まずはルンルンの式符が中の様子を伺いに侵入する。まず見えたのは雑然とした厨房。シェフたちもかなり慌てたと見る。
さらにホールにまで入り込めば、入り口付近でカボチャとハンターたちがやりあっているのが見える。そこからさらに進んでいけば、大テーブルの下で震える新婦の無事を確認。
「無事だった! 今行――」
「く前に。飴玉対策です! これで奥さんも守ってください」
中の情報を告げた途端、一気に駆け込んでいきかけた新郎を慌てて抑え。ルンルンは厨房に転がっていた鍋をヘルメット代わりに被せる。
武装は完璧。
改めて警戒しつつ厨房を抜け、ホールに散乱したテーブルや椅子に身を潜めつつ、中央の大テーブルに近付く。
「あなた!」
「ハニー! 助けに来たよ。すまない僕がふがいないばかりにあんな珍客を……」
「そういうのは後だ」
新婦にもタイミングを見て出てくるよう促して無事に合流すると、感動の再会を味わうより早く今度は撤退へと促す。
かくて、カボチャたちが気を取られている内に、新婦は新郎と手に手を取って再び裏口から脱出……。
と、スムーズにいけばよかったのだが。
やはりどうしてもうまくはいかない。
「トリック!? トリック! トリック!!」
カボチャの一体が逃げ出すカップルに気付き、大騒ぎを始めた。
気付かれても走り抜ければいいのだが、そこが素人。新婚二人は一瞬身を強張らせ、動きが止まりかける。
「いいから走れ! 守るために俺たちがいる」
セルゲンが回り込むと、二人の背を押した。勢いをつけられた二人は、そのまま裏口に走り出す。
「トリック!!」
二人を追いかけ、カボチャも動き出す。
「おっと、そうはさせません! ――ルンルン忍法土蜘蛛の術、符を場に伏せ……更に今、ニンジャの神を呼んじゃいます!」
距離を詰めようとするカボチャに向けて、ルンルンが地縛符を放つ。さらに出現した御霊符の式は新郎新婦への追撃を阻むように陣取る。
足止めされたカボチャは、「ならば」と距離を取ったまま、二人にアメをぶつけようとする。が、そこはセルゲンが持っていた盾で阻み、飴は砕け散った。
その間に、新郎新婦は障害を飛び越え厨房へと消えた。しばし後で、外から歓声があがり、新婦の無事を喜び新郎が讃えられた。
●
新郎が男気を見せ、新婦も無事に助け出し。
けれども、それでめでたしめでたしとはならない。
「トリック オア トリート!!」
カボチャたちはまだまだ元気。悪戯なのか、攻撃なのか。居残ったハンターたちめがけて飴玉をぶつけてくる。
その行動に、セルゲンが首を傾げる。
「……一体、目的は何なんだ? そも、お前ら間違ってないか? 『はろうぃん』てのは仮装して脅す側が菓子をもらうんだろう? ほら、菓子ならある。『はろうぃん』気取るなら菓子もらったら帰らなきゃだろう」
「トリーク」
差し出されたのはマシュマロ。カボチャたちはしばし興味を惹かれてか、動きを止めたが――。
それもつかの間。一体が飴を投げ出すと、他の個体もそれに続き、あっという間にまた飴降らしの大騒ぎへと戻ってしまう。
「まだ足りぬか。ならば、うぬらの望んだ東方菓子ぞ。遠慮なく喰らうがいい」
大真面目に言い放つと、ユーレンの豆が乱舞。騒ぎはさらに広がっていくかに思えたが、
そこに、ルンルンの風雷陣がカボチャに直撃する。さすがに命を取るまでは無い。奪うべきはジャック・オ・ランタンのかぶっていた南瓜。見事に砕け、光玉のような本体が露出する。
「ト、トリート―!!!」
恥ずかしいのか何なのか。先とは変わってやたら慌てだすジャック・オ・ランタン。仲間のカボチャたちもどうしたものかとおろおろとしている。
「飴を包み紙で包んで投げない配慮の無さが許せません! すぐに立ち去らないと次は酷いのです!」
何気に立ち位置は厨房へ通じる扉の前。厨房には食材が豊富にある。もし新しい南瓜をランタンたちが手に入れたら、またやる気を取り戻すかもしれない。
だが、カボチャたちも様子が変わる。ようやくハンターたちが本気で怒ってると感じてきたのだろう。動きがふらついて定まらない。たまに飴をぶつけては来るものの、あからさまに狙いは外れている。
「悪戯が過ぎたと悟ったようですね。懲りて反省したなら投降しなさい。報復なども考えず、おとなしく家で菓子を食べていればいいのです」
Gacruxが強く言い放つと、ますますカボチャたちは縮こまり、仲間たちで小さくなる。
ユーレンとGacruxは立ち塞がっていたレストランの入口をそれとなく開け放つ。厨房前は相変わらずルンルンが身構えている。
とどめとばかりに、セルゲンが睨みつける。ブロウビートの効果はさすがで、震えあがったカボチャたちは我先にと外へと飛び出し、さらに遠くへと飛び立っていった。
●
「とんだ来客が現れたが、二人の絆はますます強くなった。この良き日に――乾杯!!」
「乾杯!!」
音頭が取られると、祝杯が上がる。
めでたい式が中断したままというのも悪い、と場にいた者総出で掃除と片付けがなされ、飾りつけが直される。シェフたちも急いで料理を作り直し、大盤振る舞いに皿を並べていく。
宴が再開されれば、その中心にいるのはもちろん新郎新婦。そして、ハンターたち。
片付けの手伝いぐらいは考えていたが、それでさよならさせてももらえない。客たちに取り囲まれて、手厚い歓迎を受け続ける。
「祝いの品だが――」
「彼女を無事に助けて、披露宴を再開できたのが何よりだ。これ以上何かしてもらったら、罰があたるだろう」
セルゲンが持参したデュニクスワイン「ロッソフラウ」を渡そうとするも、新郎たちは恐縮するばかり。
Gacruxの木刀なども同じ理由で受け取らず。カボチャたちに使われた品も、後できちんと返すと息巻いている。
大騒ぎにはなったものの、新郎も新婦もすっかり立ち直り、二人仲良く客たちと笑いあっている。
「この日の二人の事を、子供に語ってやっては?」
Gacruxが告げると、二人が真っ赤になって照れて、会場中に明るい笑いが満ちた。
客たちの話題もやはりカボチャたちについて。どうやら、長く語り継がれそうだ。
しかも、披露宴の最中で、新婦が逃げ遅れているという。
「早く! 早く彼女を助けに行かないとー!」
「まぁ落ち着け。焦ってやたらに動いては、勝てる喧嘩も勝てなくなる」
騒いで飛び出そうとする新郎を、セルゲン(ka6612)が軽く引き留める。
大事な式を荒らされて、愛する人も窮地にあるのだ。新郎の心中は容易に察せられる。かといって、無策に行動させる訳にはいかない。
それが分かっているので新郎もハンターの言葉をきちんと聞く。が、心配からすぐにまたうろうろと落ち着きなく動き回り、やがて飛び出そうとする。さっきからその繰り返しだ。
「ご妻女を助けに向かわんとする御夫君か……。まことに麗しい話よの。あい分かった、我も多少なりとも手伝わせていただこう」
落ち着きのない新郎を、逆にユーレン(ka6859)は好ましく思う。
相手は単なる魔法生物。とはいえ、数も多く、新郎一人の手におえる相手でもない。それを新婦の為に突き進んでいこうというのだ。半端な気持ちでは無理だろう。
手を貸したい、と思う情も当然のように出てくる。
そして、その為には準備が必要。相手は歪虚ではないのだ。穏便に追い払えるならそれでもいい。
「まずは中の詳しい様子を教えてください! ――大丈夫。ここでかっこよく動けたら、結婚生活も安泰ですよ!」
「結婚生活……。その為には、彼女がいないと!! 今すぐ助けに!」
「わわわ。だから、落ち着いて下さーい」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)が話をしようとするも、新郎はやっぱり暴走気味。何とか宥めつつ、必要な準備を整えていくも、その間も新郎は落ち着かない。
「もう少し冷静に。成功すれば、これも良い思い出となりますよ」
「成功すれば……。じゃあ失敗したら――! こうしちゃおれん!!」
「だからぁ、冷静にですよぉ」
Gacrux(ka2726)が差し出した木刀を握りしめると、さっそくとばかりに乗り込もうとする新郎。
まずは彼をどうするかから始めねばならないようだ。
焦る新郎を宥め、時には抑えつつ。他の招待客や逃げた店員から内部の状態を聞く。
「中は荒れてますねぇ。足元注意です」
式符を動かし、視覚を通してルンルンがさらに中をチェック。カボチャたちは天井近くまで飛び上がり、来客が来るのを待ち構えていると言う。悪意と言うより、子供が悪戯をしかけたくてうずうずしている感じらしい。
正面の入り口は開いたまま。時折、天井近くからちらっとカボチャが下りてくるのは入って来いと挑発しているのか。だが、出てくる気配は無い。
窓はあるが格子がはめられ、入るには不向き。後は、厨房に直接通じる裏口があるとか。
「そこまで分かれば十分。さっそく華麗なる救出劇と参ろうか」
ユーレンが片手鎚「ミートハンマー」を構えると、新郎に促す。
「分かりました! すぐにでもー!!」
即座に駆け出そうとする新郎の首根っこをセルゲンが即座に抑える。
「焦るな。大事な式での失態は一生根にもたれかねないぞ……」
さすが既婚者。その言葉の重みはさすがの新郎の頭も冷やす。
「新婦もさぞ不安な気持ちでいるだろう。あんたは妻を守れ。あんたの事は俺が守る」
バシッと決めろ、と励ますセルゲンに、新郎はぽかんと口を開けていたが。すぐに気を引き締めて、大きく頷いた。
●
大きく開いた正面入り口にGacruxとユーレンが立つ。
一瞬、緊張した雰囲気も流れたが、次にGacruxが取り出したのは魔導拡声機「ナーハリヒト」だった。
「あーあー。カボチャさんたちに告げます。大人しく投降しなければ討伐します。今ならまだ引き返せる」
まずは警告。それでカボチャたちが従ってくれればいいのだが……。
カボチャたちは突然の大音量に驚いたか。しばらくは反応なし。
やがて、一体が慎重に近付いてくる。
ハンターたちが見ている前で、捕まらないような距離を保ちつつ、恐る恐ると言う雰囲気を出しながら漂っていたが。
こつん、と飴玉をぶつけられる。
たかがアメ玉。ハンターたちからは即座の反撃はなく、さらに様子を見る。
それに気を良くしたか。カボチャから撒かれるアメの量が増え、天井で見ていた他のカボチャたちも降りてくる。
「Trick or Treat!」
「おもてなししろー。悪戯するぞー」
あちらこちらに飛び回り、ハンターたちに要求を突き付け、アメをぶつける。――こうなると、警告を聞く気などさらさら無いと分かる。
ユーレンはさりげなく呼吸を整える。
「うぬら風に言うなら、フレンド オア デストローイ、だな。菓子が欲しくばくれてやろう、そぉれっ!」
取り出したのは節分枡。豆をつかむと、カボチャたちに向けて思いっきり投げつける。
ユーレン曰く、節分豆も菓子。何と言われようと菓子。くれと言っているからあげているだけ。文句は言わせない。
しかし、ハロウィンカボチャも鬼に節分豆をぶつけられるとは考えなかったか、突然の仕打ちに慌てふためく。
「トリック! トリック!」
「トリート! とりっく!」
不満があるのか、単に遊んでいるのか。カボチャたちはアメを積極的に投げてくる。
Gacruxも仮面を取ると、闘争心を発揮。
「トリック オア トリート」
口裂け顔でアメを拾いながら、カボチャたちへと投げ返す。
その後は豆とアメが乱れ飛ぶ、何とも言えない騒ぎが繰り広げられていった。
●
カボチャたちの注意を入り口の二人が引き付けている間に、厨房側の入り口からにルンルンとセルゲンに新郎を加えた三人が回り込む。
「ジュゲームリリカル……ルンルン忍法分身の術!」
まずはルンルンの式符が中の様子を伺いに侵入する。まず見えたのは雑然とした厨房。シェフたちもかなり慌てたと見る。
さらにホールにまで入り込めば、入り口付近でカボチャとハンターたちがやりあっているのが見える。そこからさらに進んでいけば、大テーブルの下で震える新婦の無事を確認。
「無事だった! 今行――」
「く前に。飴玉対策です! これで奥さんも守ってください」
中の情報を告げた途端、一気に駆け込んでいきかけた新郎を慌てて抑え。ルンルンは厨房に転がっていた鍋をヘルメット代わりに被せる。
武装は完璧。
改めて警戒しつつ厨房を抜け、ホールに散乱したテーブルや椅子に身を潜めつつ、中央の大テーブルに近付く。
「あなた!」
「ハニー! 助けに来たよ。すまない僕がふがいないばかりにあんな珍客を……」
「そういうのは後だ」
新婦にもタイミングを見て出てくるよう促して無事に合流すると、感動の再会を味わうより早く今度は撤退へと促す。
かくて、カボチャたちが気を取られている内に、新婦は新郎と手に手を取って再び裏口から脱出……。
と、スムーズにいけばよかったのだが。
やはりどうしてもうまくはいかない。
「トリック!? トリック! トリック!!」
カボチャの一体が逃げ出すカップルに気付き、大騒ぎを始めた。
気付かれても走り抜ければいいのだが、そこが素人。新婚二人は一瞬身を強張らせ、動きが止まりかける。
「いいから走れ! 守るために俺たちがいる」
セルゲンが回り込むと、二人の背を押した。勢いをつけられた二人は、そのまま裏口に走り出す。
「トリック!!」
二人を追いかけ、カボチャも動き出す。
「おっと、そうはさせません! ――ルンルン忍法土蜘蛛の術、符を場に伏せ……更に今、ニンジャの神を呼んじゃいます!」
距離を詰めようとするカボチャに向けて、ルンルンが地縛符を放つ。さらに出現した御霊符の式は新郎新婦への追撃を阻むように陣取る。
足止めされたカボチャは、「ならば」と距離を取ったまま、二人にアメをぶつけようとする。が、そこはセルゲンが持っていた盾で阻み、飴は砕け散った。
その間に、新郎新婦は障害を飛び越え厨房へと消えた。しばし後で、外から歓声があがり、新婦の無事を喜び新郎が讃えられた。
●
新郎が男気を見せ、新婦も無事に助け出し。
けれども、それでめでたしめでたしとはならない。
「トリック オア トリート!!」
カボチャたちはまだまだ元気。悪戯なのか、攻撃なのか。居残ったハンターたちめがけて飴玉をぶつけてくる。
その行動に、セルゲンが首を傾げる。
「……一体、目的は何なんだ? そも、お前ら間違ってないか? 『はろうぃん』てのは仮装して脅す側が菓子をもらうんだろう? ほら、菓子ならある。『はろうぃん』気取るなら菓子もらったら帰らなきゃだろう」
「トリーク」
差し出されたのはマシュマロ。カボチャたちはしばし興味を惹かれてか、動きを止めたが――。
それもつかの間。一体が飴を投げ出すと、他の個体もそれに続き、あっという間にまた飴降らしの大騒ぎへと戻ってしまう。
「まだ足りぬか。ならば、うぬらの望んだ東方菓子ぞ。遠慮なく喰らうがいい」
大真面目に言い放つと、ユーレンの豆が乱舞。騒ぎはさらに広がっていくかに思えたが、
そこに、ルンルンの風雷陣がカボチャに直撃する。さすがに命を取るまでは無い。奪うべきはジャック・オ・ランタンのかぶっていた南瓜。見事に砕け、光玉のような本体が露出する。
「ト、トリート―!!!」
恥ずかしいのか何なのか。先とは変わってやたら慌てだすジャック・オ・ランタン。仲間のカボチャたちもどうしたものかとおろおろとしている。
「飴を包み紙で包んで投げない配慮の無さが許せません! すぐに立ち去らないと次は酷いのです!」
何気に立ち位置は厨房へ通じる扉の前。厨房には食材が豊富にある。もし新しい南瓜をランタンたちが手に入れたら、またやる気を取り戻すかもしれない。
だが、カボチャたちも様子が変わる。ようやくハンターたちが本気で怒ってると感じてきたのだろう。動きがふらついて定まらない。たまに飴をぶつけては来るものの、あからさまに狙いは外れている。
「悪戯が過ぎたと悟ったようですね。懲りて反省したなら投降しなさい。報復なども考えず、おとなしく家で菓子を食べていればいいのです」
Gacruxが強く言い放つと、ますますカボチャたちは縮こまり、仲間たちで小さくなる。
ユーレンとGacruxは立ち塞がっていたレストランの入口をそれとなく開け放つ。厨房前は相変わらずルンルンが身構えている。
とどめとばかりに、セルゲンが睨みつける。ブロウビートの効果はさすがで、震えあがったカボチャたちは我先にと外へと飛び出し、さらに遠くへと飛び立っていった。
●
「とんだ来客が現れたが、二人の絆はますます強くなった。この良き日に――乾杯!!」
「乾杯!!」
音頭が取られると、祝杯が上がる。
めでたい式が中断したままというのも悪い、と場にいた者総出で掃除と片付けがなされ、飾りつけが直される。シェフたちも急いで料理を作り直し、大盤振る舞いに皿を並べていく。
宴が再開されれば、その中心にいるのはもちろん新郎新婦。そして、ハンターたち。
片付けの手伝いぐらいは考えていたが、それでさよならさせてももらえない。客たちに取り囲まれて、手厚い歓迎を受け続ける。
「祝いの品だが――」
「彼女を無事に助けて、披露宴を再開できたのが何よりだ。これ以上何かしてもらったら、罰があたるだろう」
セルゲンが持参したデュニクスワイン「ロッソフラウ」を渡そうとするも、新郎たちは恐縮するばかり。
Gacruxの木刀なども同じ理由で受け取らず。カボチャたちに使われた品も、後できちんと返すと息巻いている。
大騒ぎにはなったものの、新郎も新婦もすっかり立ち直り、二人仲良く客たちと笑いあっている。
「この日の二人の事を、子供に語ってやっては?」
Gacruxが告げると、二人が真っ赤になって照れて、会場中に明るい笑いが満ちた。
客たちの話題もやはりカボチャたちについて。どうやら、長く語り継がれそうだ。
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時期外れのカボチャ討伐 セルゲン(ka6612) 鬼|24才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2017/06/28 17:49:42 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/26 18:48:08 |