• 繭国

【繭国】宮廷の闇

マスター:京乃ゆらさ

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~8人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2017/06/29 19:00
完成日
2017/07/18 04:50

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 王国歴1017年。この年は、世界各地で転換期を迎える年になったことで知られる。
 しかし、振り返ってみれば、グラズヘイム王国における変化の大きさはなお、際立つものであった。
 同年六月。黒大公ベリアルの討伐に浮足立つ中で、システィーナ・グラハム(kz0020)王女は、王家主導での富国策を執り行うと宣言した。
 千年に渡って蓄えた国庫を開き、各分野に対しての投資や物資調達を大々的に行ったのだ。当時の記録によると、当時の経済規模を思えば常識外の額を動かした王女は、この頃の王国を『蛹』に喩えた。千年を経た自国に対しての評価としては賛否両論あるのも事実であるが、その理由について、彼女はこう述べたという。
「羽化、したがっているんですもの。それを支えるのが――私の成すべきことだと、感じたのです」

                        ――王家の歴史 第24節『システィーナ・グラハム』より

●丁々発止
「お久しゅうございますな、いと貴き王女殿下」
 王都イルダーナはその王城、中庭に面した応接室。
 そこでシスティーナを待っていたのは、ウェルズ・クリストフ・マーロウ大公その人だった。
「遅ればせながら、仇敵ベリアルめの討伐、おめでとうございます」
「ありがとうございます。これも大公をはじめとした各家の協力あってこそです」
 慇懃に頭を下げた大公に無難な礼を返し、豪奢な椅子に座るシスティーナ。貴族たちの私兵よりハンターの助力の方が大きかったなどとは、勿論おくびにも出さない。
 城付きのメイドが紅茶を淹れて退室するのを待つ間、じっと相手を観察する。
 マーロウ大公。表立っては言えないけれど、王国、もとい王家の政敵である。
 王家派と貴族派。その貴族派閥に属する最も強大な者こそが大公だった。これまではそれなりに付かず離れずでやってこられたけれど、今後どうなるかは分からない。
 暗澹とした気持ちをかき消すために紅茶を一口含み、システィーナは話を進めた。
「それでマーロウさまは何かご用がおありだとか? わたくしで力になれればよいのですけれど」
「いましばしお待ちくだされ。若い者とお茶を飲むというのが、この老いぼれめ唯一の楽しみでしてな」
「……、相変わらずご冗談がお上手ですね」いきなり何の悪ふざけかと、唖然としつつ話を合わせる。「先日の戦でも最前線の一角で見事な指揮を執られたと聞きましたよ」
「いやいや、私なぞただの死にぞこない。最近もウィードラン伯爵家とブロワ子爵家の仲立ちをしたのですが、若者の勢いにはほとほと困り果てたものでしてな。老いを感じたものです」
「…………それだけマーロウさまが頼られているのですよ」
 仲立ち――結婚とは利害入り乱れる戦場である。たとえ雑談の中でも迂闊な言葉は返せない。
 システィーナはじわりと這い上がってきた不安を懸命に抑え、話を変える。
「仲立ちと言えば、ハンターの方々は何か大きなパーティをするそうですよ。ふふっ、あちらはどのような形式なのでしょうね」
「ふうむ、確かに異世界の料理なども気になるところですなあ」
「色々なお料理があるのでしょうね」
「そうですなあ……、おお! この忠臣めが良いことを考えましたぞ!」
 わざとらしく声を荒げる大公。嫌な予感に襲われ、間髪入れずに返す。
「お料理ならリゼリオから取り寄せることもできますね! 早速いくつか聞いてみます」
「おお、では手配はこの忠臣めが致しましょう! 老骨ながら『頼りになる』ところをぜひお見せしてみせましょうぞ!」
 ……頼られていると言った手前、断っては角が立つ……。
 我を忘れたように席を立つ大公をよそに、システィーナは顰めそうになる表情を制御するだけで精一杯だった。
 慌てた素振りで無礼を謝罪し椅子に戻った大公が、身を乗り出し提案する。
「せっかくですから先の――私が仲立ちをした二人に王女殿下からお声をかけてやっていただけませんか? きっと喜んで王家に尽くすでしょう」
「いいえ、その二人を呼ぶとなれば舞踏会を催さねばなりません。今はそれより富……」
「舞踏会!! 殿下主催の舞踏会となれば多くの者が参加を熱望するでしょう。殿下が主催するに相応しき会を私自ら手配致しますぞ!」
 ……大公の目的が、全く理解できなかった。
 さらに格がどうとか招待状がどうとか言い募る言葉を聞き流し、システィーナは痛む頭を必死に働かせる。
 ――何がしたいのかは分からない、けれど……これは富国に関する話を各家個別にできる絶好の機会では……?
 政敵の策を利用する。それはひどく甘美な香りがした。
 システィーナは深呼吸し――話に乗った。
「ではわたくしも『色々と』準備しましょう。マーロウさまに任せきりでは女が廃るというものです」

●舞踏会、それは煌びやかな闇
 王城のホールは華美な衣装を身にまとった貴族で溢れかえっていた。
 中央ホールには多くの長テーブルが置かれ、その上には色とりどりの料理が所狭しと並べられている。メイドやフットマンが巡回するように給仕をしていて少しばかり雑然とはしているが、それでも見苦しくない程度にホールは広い。
 また中央ホールに隣接したボールルームまで開放しており、これまでシスティーナが主催してきた会――私的なお茶会や小規模な晩餐会などとは比べものにならない規模になっていた。
 ――どうしてこんなことに……。
 大階段の上、幕に隠された通路から階下の様子を窺ったシスティーナは、ふと我に返りかけ――すぐ首を振った。
 どうして、じゃない。これは宮廷人にとって普通のこと。少し、ほんのすこーしだけ規模が大きいけれど。
 ボールルームで奏でられるゆったりとした曲が、ひどく緩慢に聞こえた。システィーナはお腹と脚に全力を込め、幕の向こうへ踏み出した。

「お集まりの皆さま、本日はわたくしの舞踏会にお越しいただき、ありがとうございます。今夜は趣向を凝らした様々な料理などを用意しました。国内は勿論、国外やリゼリオからも取り寄せていただいたものです。
 皆さまご存知のことと思いますけれど、現在我が国では展覧会や国内各分野への投資等、国内発展に力を入れています。仇敵ベリアルを討伐したこの機に、さらなる飛躍を果たしたいのです。国内が発展すればさらに多く、さらに洗練されて、これらの料理に勝るとも劣らないものが我が国にやって来ることでしょう。あるいはそれらを研究した我が国の職人がそれ以上のものを創り上げるかもしれません。
 皆さまには今夜、その一端に触れてみていただければと思っています。それでは、今夜はゆっくりと楽しみましょう」

リプレイ本文

 大階段を下りるシスティーナに多くの視線が集中する。
 好と悪、相反する視線を一身に浴びる中、それでも笑いそうになったのは数時間前の打合せを思い出したからだった。

「暫く見いひんうちに随分と貫禄ついたんちゃう?」
 応接室に来たラィル・ファーディル・ラァドゥ(ka1929)の第一声。その言葉を理解した瞬間、システィーナは得意満面食いついた。
「本当で……」
「なんてな」
「……」
 瞬く間の掌返しである。
「や、嘘うそ! 王女さんも色々頑張っとるんやもんな、僕も見習わな」
「そうですか」
 営業用の微笑を張り付けるシスティーナ。
 が、そんな態度を気にも留めずラィルは本題に入る。この舞踏会――主催するようマーロウ大公が仕向けた催しの、対策を。
「罠にハメてこっちの評判落とすんか、逆に大公さんの評判を上げるんか。それとも王女さんを試すつもりなんか知らんけど、具体的にありそな状況を想定しとこか」
「そうですね……おそらく故意に騒ぎを起して責め立てる真似はしないと思います」
「根拠は?」
「勘……いえ、強いて言えばあの方の貴族としての在り方です」
「ほー」
 清廉潔白という訳ではない筈だ。社交界での評判は良く領民の支持も厚い。だからこそ時に暗躍と呼べるような事に手を染めているとは思う。けれどなりふり構わない人でもない。もしそうなら自分はとうに失脚している。
 システィーナは自嘲した後に瞑目し、言葉を探す。
「……品位に、欠けます」
 絞りだした表現は抽象的だったが、ラィルは頷いて話を進めた。
「成程な。つまり王女さんが躓かん方策が最重要、と」
「……お願いします」
 ――失敗なんてしませんし。全然大丈夫ですし。
 なんて色々と反論したいけれど丸め込まれると解っているシスティーナは何も言わない。
「まずその『大丈夫やし』みたいな考えは忘れよな?」
「えっ」
「顔に出とったし」
 ぐぬぬとはしたなく唸りそうな気分を微笑で包んで深呼吸。
 ラィルが続ける。
「そんで僕が言える最も大切な事は、動じん事。何されてもどっしり構えて『その』笑顔しとったら大丈夫や。僕らもおるしな」
 朗らかに笑った彼は他にも幾つかの策をシスティーナやオクレールと協議し、退室していった。入れ替るように依頼を受けた他のハンター――アルト・ハーニー(ka0113)、文月 弥勒(ka0300)、日高・明(ka0476)、シン(ka4968)が入室してくる。
 システィーナはぐっと胸を張って彼らと挨拶を交しながら、内心でしたり顔を浮かべた。
 ――ふふっ、これならきっと貫禄があるように見えますね。

●歓談
「ふおおお! お部屋がきらきらです! お料理も!! 人も!!」
 たおやかに微笑んだ王女が下りてきて挨拶列ができた時も、カリン(ka5456)の目はホールのありとあらゆるものに夢中だった。
 広大な部屋。重そうなシャンデリア。灯りを反射し輝く調度品。グラス片手に落ち着いた様子で会話を楽しむ紳士淑女のお歴々。
 これが、都会。これぞ都会!
 故郷の森も一応同じ王国内とはいえ、カリンにはもはや別世界としか思えなかった。
「あ、あれ! あれは何でしょう? お菓子ですか!?」
 ドレスを摘まんでとてとてと卓に駆け寄るカリン。鈴蘭を中心に様々な花をあしらったミュゲのドレスが翻り、慌てて自分の衣装を再確認する。
 緑のドレスに白地のストール。イヤリングは海色で、足元はガラスのヒール。自分なりに精一杯頑張ってみただけに、周囲から浮いてないと信じたい――いや!
 ――断然いけるのです! いけるはず!!
 もうどうでもいいやとお菓子に吶喊するカリン。「まぁ」と温かい笑いが起るのも何のその、カリンはきらきらした飴細工の皿に一瞬で魅了された。
「ひゃー! 食べるのがもったいな……」
「お嬢様、お飲み物もいかがでしょう?」
「ふぁっ!? い、いただきます」
 ダークスーツに身を包んだ男性給仕――何故かポケットから土人形のような顔が覗いていたが――にグラスをもらい、一口飲んでみる。果物ジュース。とろりと甘い。
 ふぅ。
 少しだけ落ち着いたカリンは飴細工をフォークで崩して食べながら、辺りを見回してみた。
 何の因果かある日突然手元に届いた招待状。何で自分がと思わないでもないが、これは一旗揚げる(仮)為の人脈作りとして絶好機である。ならば!
「どんどん話しかけちゃうですよー!! あっ、あのお衣装とっても素敵です!!」

 何やらホールを所狭しと舞う娘がいる。
 眼鏡のブリッジを上げて位置調整し、メアリ・ロイド(ka6633)はその娘の観察を始めた。隣で彫像の如く直立している門垣 源一郎(ka6320)の腕にかけた手にぐっと力を込め、娘――鈴蘭の娘の後を追う。
「何でしょうね、あの生物」
「……初めてなんだろう、このような場が」
 小声でやや居心地悪そうな源一郎はさておき、メアリは鈴蘭娘に追従しながら通りすがりに挨拶していく。
「魔導機械の故障等でお困りの際はご用命ください」
「機会があれば頼もう。正直ああいう物は好かんのだが、利便性には代えられん……」
「ご立派なお考えかと。進歩的なのですね、リドラー様は」
「ううむ、まぁ……そうだな。殿下が、だな」
 王家派らしき老人の複雑な表情に取り繕った微笑で応じ、メアリはホールを彷徨う。
 ひくひくと頬が痛い。普段使わない表情筋を使ったからだと自己分析したメアリは、銀髪の男性給仕から水をもらい、口を湿らせて無表情に戻る。
 じー。屹立する源一郎の燕尾服姿を観察して心を落ち着ける。見慣れない服装ではあるが、その内の無骨な肉体は充分に見て取れる。
「……落ち着きましたし、次は王女殿下に挨拶しますか。あの娘も気になりますが」
 先のリドラー伯。臣下として普通と言えば普通だが、個人の思想とは別に王女の方針に従う様子から考えて、王家派にとっての王女の求心力はまずまずと推測する。状況が順当に推移すればおそらくそのまま従うという事だ。では貴族派にとっては?
「……大公にも……挨拶できればいいですが」
 だがまずは王女殿下か。メアリは人だかりのしている二つの集団のうち、中心が老人ではない方へ近付いた。

 ――そろそろ休憩、かな。ここからじゃ様子が判らないけど。
 明が王女の体調を心配したのは、王家派の子爵令嬢と話している時だった。
 ゆるふわな金髪の下、白磁のような肌を上気させて微笑むご令嬢。これぞまさしくという雰囲気のこの子とは仲良くなりたい。ぜひ。
 が、しかしだ。
 人だかりに囲まれた王女の様子は輪の外からは探れないが、時間的には拙い。何しろ三十分ごとに休憩してもらいたかったのに既に最初の休憩を取れてない。挨拶列も捌けない段階で休憩できないと考えたのだろう。それは理解できるが、だからこそ次は断固休憩すべきで、楽しくお喋りしている暇はないのだが……。
「ふふ、ヒダカ様ったらご冗談ばっかり」
「いや本当だからね。600m超のタワーが一週間ごとに建ってる。週刊タワーだよ」
「まぁ……美しいのでしょうねぇ」
 焦る気持ちを抑え、明は懐に忍ばせた短伝話をカツカツと爪で弾いた。送信先は馴染みのシン。雑音として処理される可能性もあったが、果たして今回ばかりは通じた。
 視界端にシンが映り――直後、音楽がやんだ。
 ――何だ?
 ホールのざわめきが消え、多くの視線が中空を彷徨う。声。舞踏室から二人の男の声がする。
 ――いや、でもこれは丁度いい!
 状況は解らない。が、王女を連れ出す好機である事は確かだ。
 シンと合流した明は、棒立ちの群衆を抜け王女の許まで行くや、
「あちらでお話はどうでしょう?」
 噛みそうになる言葉遣いで声をかけた。
 エスコートせんとしたその手は控えていた侍従長に阻まれるが、同行自体を拒否された訳ではないようで、王女と侍従長は軽く礼をして歩きだした。楚々とした立ち居振る舞いに妙な緊張を覚える。
「相変らずだね……」
 苦笑するシン。
 そうしてホールから去る間際――リュートを爪弾くような音色が聴こえた。

●言祝ぎと舞踏
 ――休めたようやな……。
 二十人程を相手にリュートを奏でていたラィルは、人垣の向こうにシスティーナが戻ってきたのを確認して一息つくと、曲を終らせにかかった。
 正面でお手並み拝見とばかり腕を組んで聴き入っているのは同じ雇われの弥勒。使用人のラィルが唐突に弾き始めるのは不自然だった為、事態を察した弥勒が咄嗟に演技を合せ、招待客に請われて演奏するという流れに持っていった形だ。
 最後の旋律がホールに溶け、ラィルは使用人らしい一歩引いた態度で深々と一礼する。
「お耳汚し、失礼致しました」
「いや、悪くなかった。仕事に戻ってくれ」
 ラィルが楽団にも謝罪して人混みに紛れていく。
 ――文月弥勒……素でアレやとしたら恐ろしい男やな……。
 間諜教育を受けた人間なら納得できるが、もし違うなら『気が利きすぎ』だ。あの調子で大公に接触し続ければ、いずれ抜き差しならぬ状況まで至るのではないか?
 ラィルは僅かな懸念を胸に、使用人を演じる。

 弥勒はラィルの演奏を聴いていた紳士淑女と感想を言い合いながら中央へ戻る。
 ――それにしてもマジで貴族しかいねえ。眩しすぎて仮面が恋しいぜ。
 秘かに嘆息するが、顔には狐の代りに微笑を張り付けたままだ。ふと心惹かれたような仕草で壁へ。途中でグラスを二つ仕入れて女性の前に立つや、
「貴女のような人がそのような顔をしているのは勿体ない」
「ごめんなさい、そんな気分じゃないの」
「先に貴女の心を奪い去ってしまった者が?」
「えぇ……クローディオ様……」
「……。嫉妬してしまうな。しかし邪魔者はすぐにでも去るべきだが、少し疲れてしまった。哀れな男の雑談に付き合ってはもらえないか?」
 ぽかんと弥勒の顔を見た令嬢は、ややあって肩を竦めた。
「貴方、いつもそんなに強引なの?」
「さて、な」
 弥勒が名乗ると、令嬢はティーレ・シャロンと返した。言葉巧みに富国策の話に持っていく。
「国が金を出すようだが、それはシャロンをより輝かせる宝石を手に入れやすくなったりするんだろうか」
「そうなれば嬉しいけれど。でもお父様は喜んでいたみたいね。お金が落ちるからって」
 適当におだてて話を聞くと、どうやらこの娘の家は中立らしい。
 そしてこの場は王家派と貴族派が水面下で意地を張り合う戦場。同じ中立でも蝙蝠になり甘い汁を吸いたい家は忙しかろうが、日和見したい中立は蚊帳の外になる。道理で壁の花になっていた訳だと弥勒は得心し、時間を気にする振りで離脱した。
 できれば全ての派閥と話がしたい。
 弥勒が次なる狙いを定めたその時、しわがれた大音声が響いた。

『暫し皆々様の時間を頂戴し、ここで報告させていただきたい。先頃、私の仲介で一つ婚姻が成されましてな。これは肴にせねばならんと思い、ここに紹介させていただこうかと』

 大公の口上に合せて音楽が止む。注目が大階段に集まり、布を贅沢に使った衣装に身を包んだ男女が現れると、弾むような曲が流れ始めた。
 ――婚姻自体に意味があるのか、はたまた別の目的があるのか。
 クローディオ・シャール(ka0030)は仮にもシャールの家名を名乗る者として見苦しくないよう騎士服の如き豪奢なスーツを纏い、しかし気分は些か下り気味だった。
 ――ヴィクトリアが恋しい……。
 全力で乗り回したい。
 街で、街道で、道なき荒野で! タイヤ唸らせチェーンを軋ませ!!
 と現実逃避して精神を回復していると、結婚する男女の挨拶が終りダンスの時間となっていた。
 オルガンの震える音色が響き、幾つもの管弦が彩りを添える。まず舞踏室中央に進み出たのはシスティーナ王女殿下とマーロウ大公。孫程に年の離れた二人が手を取り合う姿はとても政敵同士と思えない。
 三拍子の歩くようなリズム。軽やかに膝を曲げては歩を進め、円を描いて踊っている。
「……クソガキが。乗せられやがって」
「グリーヴ家としての顔見せは終ったのか?」
「ああ。それより後でマーロウの爺とオハナシしに行こうぜ」
 曲が一巡すると殿下らに代って先の男女が主役となり、それも一巡すれば皆がダンスに交じっていく。クローディオはジャック・J・グリーヴ(ka1305)と再び別れ、貴族派の女性を誘った。
 そっと手に触れては離れ、緩やかなリズムで周りの流れに乗る。
「フランナエ女伯の所は良い葡萄が採れるとか。此度の投資政策でさらに発展するのでしょうね」
「可愛らしい王女殿下の大層麗しいお慈悲、有効活用せねばと思っていますよ」
「可愛らしい、慈悲、ですか」
 随分と辛辣な事だ。何が彼女をそうさせるのか。
 突っ込んでみるかと思い、しかしクローディオは留まった。王女殿下の舞踏会を壊しかねない動きは自重せねばなるまい。
「ふむ、葡萄の話をしていたらワインを飲みたくなりました。麗しき女伯を独り占めにできませぬ故、失礼させていただきます」
「おや、残念。貴方のような男性との語らいはいつでも歓迎なのですが」
「はは……」
 クローディオは胸焼けしそうな気分をひた隠し、足早にバルコニーへ向かう。香水の匂いが絡みついてくるようだ。
 外。夜空。むわっとした空気が霧散していく。クローディオは欄干に背を預け、深く嘆息した……。

「余裕があればお相手いただけないかね、と」
 アルトが軽く腰を曲げて誘ったのは、他ならぬ王女である。
 とはいえ辺りが騒然とする事もない。元々引く手数多だっただけに、アルトも取り巻きの一人と思われるだけだろう。疲労の心配はあるが、それなら自分と踊った後で他に人が来る前に手配できるという意味で逆に確実な手とも言える。
 にっこりと微笑して手を取る王女。瞬間、アルトは自分の手になど触れていいのかという思いに駆られた。
 柔らかな指。温かな表情。素直にエスコートされる姿勢。少女の醸し出すあらゆる雰囲気が、意味の解らない重圧となって圧し掛かってくるかのよう。
 ――これが社交界の戦い……舞踏会の王女様、か。
 何度か会った事はあれど、これ程「王女」を感じたのは初めてだ。アルトは僅かに緊張しつつも見様見真似で踊る。幸い振り付け自体は簡単なパターンの繰り返しが殆どで、三度目には見苦しくない程度にこなせるようになった。
「どうかしましたか?」
「いや。ま、久しぶりに会えるのは嬉しい事さね、と。こんな場になるとは思ってもみなかったが」
「ふふ、そうですね。お給仕、助かります」
「力仕事してる関係上、その辺はまあ、な。実はマッサージなんかも得意なんだが、流石に王女様に試す訳にもいかないやね」
「オクレールさんに怒られてしまいますものね」
 くるりくるりと舞う王女の衣装は彩りこそ少ないものの、布をふんだんに使った豊かな輪郭をしている。装飾品は少なく、埴輪の美に繋がらないでもない気がしなくはない。一方で上半身の一部が記憶にある姿より大層ご成長あそばされているようだが……よもやパッ……、
「ところで舞踏会において視線は非常に大切だと、ご存知ですか?」
「ほう、なるほ…………」普通に聞き流しかけ、はたと言わんとする事に思い至る。「……悪かった」
「許します」
 何も見ていない。何もなかった。いいね?
「し、しかし視線か。陶芸でも時に見方を変えるのは重要だぞ、と。戦闘でも視線一つで敵を引っ掛ける事ができる」
「そうなのですか」
「うむ。同じように視線が重要な舞踏会もやっぱり戦い、なんだろうねぇ」
「私の戦力は高くありませんけれど」
「大変な事だな、と」
 システィーナは苦笑。
 その後も踊っていると、気付けば手を取って三曲目が終ろうとしていた。
 アルトは頭を下げ、オクレールの付き添いで休憩に行くよう提案した。

●舞踏
「わたた、ごめんなさいです!」
「はは、構わないよ」
 鈴蘭のカリンは先程結婚報告をしたウィードラン伯爵の長男と踊っていた。勿論、結婚相手に許可をもらった上で。
 この思いきりの良さと声の大きさで会場全体の話のタネになっているのだが、カリンは全く気付かない。というか「なんか温かく見守ってくれてる気がします!」とむしろ嬉しいくらいである。
「ふああ、やっぱり結婚する人は違います! 優しいのですね! お友達も沢山いるのでしょうかっ?」
「まぁ、それなりかな」
「私ともお友達になってほしいのです! 一旗揚げる為の準備なのですよ!」
「応援するよ、何をするか解らないけど」
「あっ、ブラッドさん! ブラッドさんとも仲良くなってほしいのです!」
「ブラッドさん?」
「私の相棒なのです! 今はお城の外を警備しているのですよ!!」
「じゃあいつか紹介してもらおうかな」
 終始子どもをあやす対応だが、これを「優しい」と華麗に捉えるカリンである。
 様々な花に飾られたドレスが、輝くような他のそれとは一風変った魅力を振りまいている。踊りながら緩やかに移動する度に周囲の注目を浴び、カリンは内心で快哉を叫ぶ。
 ――売り込み大成功なのです! はっ、これはもっと突撃するべきなのではっ!?
 変な風にノってきたカリン。そういえば、とガツガツ踏み込んでいく。
「王女様や大公様ともお友達なのです? 私も紹介してください!」
 怖いもの知らず、ここに極まれり。
 偶然近くで踊っていた弥勒が目を剥くが、そんな事に気付く筈もなくカリンは目をきらきらさせて踊る。ウィードラン次期伯爵はその姿に苦笑を浮かべ、首肯した。
「全く、敵わないな。マーロウ様に取り成してもらおう」
「えっへへぇ! やりました!」
 気分が乗ったように天真爛漫に舞うカリン。
 鈴蘭の妖精の如きその姿こそが、舞踏会をより華やかにしていく。

 ――あの娘は一体何なのか。
 メアリにとって鈴蘭の娘はなかなか面白そうな観察対象となりそうだった。とはいえ例の大公と鈴蘭の両者に注目しながら踊るのは困難。そこでメアリは、とりあえず眼前の源一郎に集中する事にした。
 じっ。
 燕尾服の下の肉体が窮屈そうに「ダンスらしき」動きをしている。
 そっ。
 胸筋に指を這わせて呟く。
「……ナイス筋肉」
「…………」
 胸囲もとい驚異の自制心で源一郎のダンスは崩れない。メアリと手を重ねた源一郎は、褒め言葉(仮)に対し同じく称賛を返す。
「メアリも綺麗だ。ドレスが似合っている」
「……お世辞とか言えたのですね、源一郎さん」
「…………」
 世辞ではない。ウィンクトゥーラのドレスが肌と対比して美しい。後ろをハーフで上げた姿は軽やかで、時折煌めく青い耳飾りもメアリの瞳のように綺麗だ。
 色んな言葉が一瞬にして浮かんだ源一郎はしかし、何を言うべきか迷い口を噤んだ。
 沈黙。華やかな音楽だけが二人の間に流れている。音に合せて近付いては離れ、離れては近付く繰り返し。不意に一歩が大きくなり、メアリは源一郎の胸に収まるような形になった。
 あたたかい。
 間近になった源一郎の顔を見上げ、メアリは小首を傾げた。
「……人と踊るのは初めてですが、結構密着するのですね」
「俺も初めてだから判らないが」
「合法的に手も握れます」
「合法、か……そう、だな」
 それは、どうだろう。メアリ程に下心、いや研究心がある場合、相手に気配的な何かが伝わって妙な事態になるのでは。
 などとは源一郎は言わない。
 ただ無言で通す。何か気の利いた事を言えるでもない。源一郎は眉間の皺を自覚するが、それとて意識すればさらに深くなる有様だ。
 そんな源一郎の様子を逐一観察するメアリはさらなる反応を引き出そうとし――直後、源一郎の陰に隠れるように位置を変えた。
「……大公が動きました」

 それに最初に気付いたのは、一時間前に大公と親しげに話していた老人に接触していたシンだった。
 一休みするようにバルコニーへ向かう大公。その後ろ、少し空けて追従するのが貴族らしき男女。後ろの男女は見るからに緊張している。
 ――密談。でもシスティーナ様に接触はしない?
 シンは思考を巡らせつつ、適当に会話する。
 今のところ王女の休憩は問題ないように見える。ならもう少し大公を探っていきたい。
 ――手品でもすれば道化役だか何だかで紹介してもらえるかな。いや、こんな畏まった場で迂闊にするのは拙いか。
「ところでさっきもお話に出たマーロウ大公のお姿が見えませんが、急ぎのご用事でもあったのでしょうか」
「うむ? さて、どこぞで休んでおるのか。何かあの方に話でもあったのかね?」
「いえ、そう、それ程までにこの国に尽されている偉いお方なら、ハンターとしてご挨拶しておきたかったのです」
「ははあ、抜け目のない奴め! 気持ちは解るがね」
 シンは朗らかに笑う老人に合せて愛想笑い。どうもこの老人、孫か何かのように扱ってくるのが微妙に居心地悪い。おかげで会話できているのだが……。
 老人がやや俯き、申し訳なさげに話す。
「だがあのお方はハンター嫌いでね。挨拶すれば逆に不興を買いかねん。私から伝えておく事で勘弁しておくれ」
「いえ、僕の気持ちが伝わるだけで満足です」
 こんな場でゴリ押しするのは憚られる。
 シンはお腹が空いたと言って老人との会話を終らせ――子どものように振る舞うのは甚だ不本意だったが――、明を伴いバルコニーに近付いてみた。
 話し声。
 金。いと貴きお方。宝飾品。そんな単語が漏れ聞こえる。
「アキラ、女性を連れてきてくれないか」
「は?」
「男二人よりは立ち止まって長時間会話して不自然じゃないから」
「ああ、そういう事か。ってこれもう『紹介』じゃなくてナンパじゃないかな? 『紹介』って言ったよね?」
「したよ。システィーナ様に、アキラを」
 何やら嘆息して離れる明。シンは壁に背を預け、聞き耳を立てた。

●歓談
 大公と男女がバルコニーに出て暫くすると、男女が戻ってきた。
 それを確かに見届けた弥勒はクラシックなスーツの胸元を緩め、疲れた仕草でバルコニーへ出る。果たしてそこには、
「ようこそ。話があるかと場を用意させてもらったが、ここでよかったかね?」
 夜を背景に、こちらに手を広げた大公の姿があった。
 弥勒は他に人影がないのを確認すると、口元を歪めて殊更慇懃に一礼する。
「格別のご配慮ありがたく、大公閣下。こういう場所ではダチが少なくてな。話し相手がいないんだ」
「よい。変装もせず潜り込んだ貴様への褒美と思え」
「しれっと正体把握してんじゃねえよ……」
「仮面だけで素性を覆い隠せるなどと本当に思うておるのか?」
 肩を竦めて欄干の傍まで歩き、大公に並ぶ。
 招待状。弥勒が夜景を眺めて訊く。
「随分と奇妙な招待状と招待客だったが、面白い事でもやるのか?」
「ふむ? 特には、何も。私は文を送っただけよ」
 この場で何かをする意図は、ないのか?
 手応えを感じなかった弥勒はおどけた調子で両手を挙げ、話を変えた。
「そういや、随分とご活躍だったそうで」
「それも諸君らハンターの助力があってこそであろう」
「ハ、解ってるじゃねえか。そしてそんな事はよそ様だって解ってる。富国を行うなら、そのパイを他国と取り合う事になるぜ」
「活発に動いておるようだな、ソサエティは」
 思ったよりハンターの状況を調べている。内心の驚きを隠し、頷く。
「国家に依らない組織がある以上、パイはそう大きくならない。が、質を高める事はできる。より高い報酬、より多くの協賛金があればな。そしてこの国のどこに金が集まる?」
 言うまでもない。国庫と、貴族の懐だ。
 無言でこちらを見る――見定めんとしてくる視線を、弥勒は正面から見返す。
「その協力を、国は欲しがるだろう。――さて、セイギの大公サマはどうするんだ?」
 交錯した視線は、目を細めた大公によって外された。
 眩しそうな、それでいて嘲りを含んだような表情は、思考を正確に読み取れない。それでも情報を探ろうとしていた弥勒は、
「協力。協力か……あの理想家どもが言いそうな台詞だ。反吐が出る。しかし、貴様」
 次の言葉で、自らの失態を悟った。
「随分と、頭が、回るようだな?」
 いや失態と言う程ではない。ただ、興味を持たれた。どんな興味なのかも、それが悪いのかすらも判らない。が、仮面の裏を覗かれたような不快感が全身を巡っていた。
 ――仮面が恋しいぜ。
 今度は、切実に。

 やや憮然とした表情の男が人混みに紛れゆくのを見かけ、クローディオとジャックは警戒を強めた。
「私達も行くか」
「いや。ここがいい」
 ジャックの要望で、ホールで大公を待ち受ける事になる。
 待つ間、ジャックは鎧下として着るシャツに留めたベリアル討伐勲章の位置を調整していた。舞踏会にも使える装飾が施されているとはいえ、よくそれだけで参加できるものだ。ラフでありながら洗練された感性に感嘆する。
 暫くして戻ってきた大公に、クローディオは素早く接触した。
「大公、この度はシャール家をお招き頂き誠にありがとうございます」
「気にせんでよろしい。だがシャールに君のような者がおったのかね」
「普段は弟に任せております。私は専らコレです」
「ほう」
 義手を叩いてみせると、鷹揚に頷く大公。齢六十は越している筈だが、姿勢や所作から覇気が滲み出ている。
 クローディオは正面切って訊いてみた。
「此度の政策、大公はどのようにお考えでしょう」
「ある程度は、助かろうな。『王女殿下が千年王国に傾注するのは当然の事だが』」
「確かに」
 奥歯に衣を着せた物言い。何が不満なのか?
 国力増強は望むところだが、その手段が気にくわぬ? それとも別の……何か……?
 クローディオは一旦思考を止め、ジャックの紹介で話を変える事にした。
 グリーヴ家の者で、招待状を見た時は二人して相談した、と。
「何しろ大公家の紋章などただでさえ当家では見る事も少ないのに、開いてみれば王女殿下のお名前。一体何があるのかと」

 せめてもの反撃に、告げてみると、大公が微笑を深くした。

 ぞくり、と。
 義手の装着部が軋み――、割って入ったのは、隣の友人だった。
「どうせ良好な仲をアピールしたいんだろ? なあ、マーロウの爺?」
 討伐勲章をひけらかすように胸を張り、心強き友は大公を見下ろす。
「ほう、では君はこの私が本当は仲違いをしていると言うのかね?」
「おっと口が過ぎたか、『何でもねえですだぜ』」
「ふ、まあ構わんよ。『私こそが忠実なる千年王国の徒である事は何ら変らぬ』。誰が何を思おうとな」
 ジャックは舌打ちしかけ、口端を歪めて無理矢理笑った。
「……今だけは味方してやる、クソガキ」
 小声で吐き捨てると、唐突に声を高くして先の討伐戦の話を始める。
 大公も参戦しただけに周囲から見れば不自然ではないのか。クローディオが思ううち、話は佳境に入る。死にかけたところで王女の加護が降り注いで助かった、おかげで倒せたとか何とか。普段の彼らしくない。
 話が一段落し、いつの間にか集まっていた貴族達が拍手すると、ジャックは好機とばかり商売に走った。
 クローディオが大公に頭を下げる。
「面白い友人がおるようだな、シャール」
「私には勿体ない、友です」
「覚えておこう」
 大公は悠然と歩いていく。同時に、閉会を告げる真夜中の鐘が鳴った。

「今宵の魔法は解けてしまいました。光の残滓が零れぬうちに、皆さまが無事帰り着けますよう」
 王女が閉会を宣言し、三々五々解散していく。
 かくして舞踏会は表面上、大成功のうちに幕を閉じたのだった。

<了>

 給仕や招待客に扮していたハンター達は王城の応接室に戻るなり、互いの情報を出し合った。
 そこそこ良好な王家派。富国策自体は歓迎している者が多そうな貴族派。派閥ではない、中立。大公の考え。特に大公とクローディオらの話を漏れ聞けたのは大きい。
 主催の休憩の多さが盛り下がりに繋がりかねなかったが、鈴蘭の妖精だとかいう娘の活力に助けられ、結果的に最後まで余力を残せたのは僥倖だった。
「ああ疲れたな、と。やはり通常サイズの埴輪を持参すべきだった」
 アルトがポケットの小埴輪を手に乗せて愛でる。
 そこにシスティーナと侍従長が入ってきた。ラィルの要請で舞踏会の間も用意されていたヒカヤ紅茶がすぐさま淹れられ、深夜のお茶会といった様相である。
「まずはご協力ありがとうございました」
「構わんぞ、と。王女様の別の顔も知れたしな」
 アルトが踊った時の王女の雰囲気を皆に伝える。そのうち話題は大公に移り、弥勒が忌々しげに口を開いた。
「もしグリーヴの言葉通りなら『あの招待状で主催した事実が』何かに使われる」
「政略結婚に向けた実績作り、かな」
 口元に手をやり、シン。成程と明が続く。
「共同作業しましたって過去があった方が恋愛でも自然だろうしね」
「そう。反対意見が少なくなる、かもしれない」
 二人の意見に同意する弥勒。ラィルは深呼吸し、
「敵対者を取り込む簡単な方法は姻戚関係を結ぶ事。身中に虫を飼う事にもなるけども、制御できると踏んだんやろな」
 ――望まぬ結婚を強いられる、か……生贄……いや。
 誰にも気付かれずラィルは拳を握る。
 と、重々しくなった空気を払うように、アルトは大欠伸をしてみせた。
「ま、考えるだけじゃ仕方ないさね。それより俺はこの恰好が窮屈すぎるんだぞ、と」
 苦笑が溢れ、深夜のお茶会は早めに終える事になった。
 シンが帰り支度をしながら王女に言う。
「何かあればまた遠慮なく話してよ。この国の人間じゃないからこそ言える事もあるだろうしね」
「今でも充分助かっていますよ」
 王女は困ったように微笑んだ。

 三十分後。
 帰路に就いた弥勒は、すぐ尾行に気付いた。
 ――あの爺……。
 あまりに露骨な気配。それは真実探るというより忠告だかお節介だかの類だろう。
 ……るせえよ。
 弥勒は狐面で顰めた顔を隠し、ソサエティの門を潜った。

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MVP一覧

  • フューネラルナイト
    クローディオ・シャールka0030
  • 鈴蘭の妖精
    カリンka5456

重体一覧

参加者一覧

  • フューネラルナイト
    クローディオ・シャール(ka0030
    人間(紅)|30才|男性|聖導士
  • ヌリエのセンセ―
    アルト・ハーニー(ka0113
    人間(蒼)|25才|男性|闘狩人
  • 壁掛けの狐面
    文月 弥勒(ka0300
    人間(蒼)|16才|男性|闘狩人
  • 挺身者
    日高・明(ka0476
    人間(蒼)|17才|男性|闘狩人
  • システィーナのお兄さま
    ラィル・ファーディル・ラァドゥ(ka1929
    人間(紅)|24才|男性|疾影士
  • 王女の私室に入った
    シン(ka4968
    人間(蒼)|16才|男性|舞刀士
  • 鈴蘭の妖精
    カリン(ka5456
    エルフ|17才|女性|機導師
  • 天使にはなれなくて
    メアリ・ロイド(ka6633
    人間(蒼)|24才|女性|機導師

サポート一覧

  • ジャック・J・グリーヴ(ka1305)
  • 門垣 源一郎(ka6320)

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 舞踏会ひかえ室
カリン(ka5456
エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2017/06/28 10:24:35
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/06/26 19:47:05