ゲスト
(ka0000)
【血盟】百年旅~百年目のエルフ
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/04 19:00
- 完成日
- 2017/07/15 01:32
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●あの日のそれから
「中の敵は一掃したぜ」
滝の岩壁を利用したエルフの隠れ里「♭(フラット)」での戦闘を終え、洞窟の外に出てきた蒼い髪と瞳の男が静かに言った。手にした銃も納める。
「うん、ありがとう」
礼を言ったフラ・キャンディ(kz0121)の表情はどこか浮かない。
「どこか痛めたか?」
「あ、このくらいなら大丈夫。だた……」
髪を首の後ろでまとめた静かな男が片膝を付きフラに優しく聞いた。フラ、先ほど洞窟から出て逃げていった堕落者「ルモーレ」から攻撃を受けたダメージを仲間の落ち着いた雰囲気の女性から回復してもらっている。
「その、どうだった?」
「フラさん、その……」
恐る恐る聞いたフラに、側に寄り添っていた小さな白い少年がこたえ……いや、言い淀んだ。
「あー、生存者はいなかったな」
見かねた咥えたばこの男がすかさず言い捨てた。仕方ねぇな、の風情が香る。
「ま、そのほかのモンはオジサンたちが諸々取り返したけどねぇ」
テンガロンハットの男も口添えした。
「戦闘で崩された部分はあるけど、建物なんかはきっとフラさんが旅立った時のままだと思う」
なにせルモーレが背もたれイスでリラックスしてたくらいだから、と赤い瞳の少年。丁寧に扱われていた事を伝え、にこり。
「壁を崩した岩で岩人形を作っていたみたい。扉人形とか屋根人形がなかったでしょ? つまり安心していいわ、フラっち」
「ありがとう」
マフラーのエルフ少女が念押ししてようやく笑顔を見せるフラ。
「そういえば何か渡してたよーだけど?」
ここで、横合いから元気っ娘。エルフ少女に無邪気に聞いてみる。
「ああ。こっちに来たルモーレ、あれを持ってなかったな」
「囮につかまされた物だが」
蒼い男も思い出し、片膝をついていた男がワイヤーを出してみせる。
「オリーブパイプだな。咥え口に琥珀を使ってやがる。いい品だぜ」
預かっていた咥えたばこの男が取り出し、にやり。
「取り戻してくれたんだね。ありがとう!」
「在庫もあるってんだろ? じゃ、早速……」
「待って!」
たばこの男が本題に戻したところ、フラはためらった。
「フラさん?」
白い少年がフラの顔をのぞき込む。「百年目のエルフ」として里を追放されたのは知っている。
「掟は話してもらったけど、里にはもうだれも……」
「精霊さん、いるから」
赤い瞳の少年にそう言い訳するフラ。少し泣き出しそうな、弱弱しい顔をしている。
「いままで里の誰も知らなかったけど……。里は全滅したわけじゃなくて精霊さん、いるから」
結局、フラに心の準備がいるのだろうと皆は判断し中には入らずいったん引いた。
●最初の村で
同盟領は農業推進地「ジェオルジ」のとある村で。
――どさっ、びちびちっ。
「え?」
晴れ渡った空の下、突然何かが落ちてきた音にとある娘が振り向いていた。
見ると道のわだちに一匹の魚が跳ねているではないか。
この時、そこから少し離れた場所で。
「ん?」
この様子を、少し離れてた場所で農作業をしていた男が発見した。
「ああ、いつものアレだな」
たしか最初にこれの現象に出会った娘はひどく驚いていたはずじゃし、これは一つちゃんと対応できるよう教えてやるか、と近付いて行く。
ところが!
「わあっ。これが噂の『妖精のお使い』ねっ♪」
娘、小躍りして喜んでいるではないか。
「ちゃんとお魚一匹に~、葉っぱに包まれた赤い小さな石がいくつか……うん! ちゃんとある!」
やったぁ、とその場でくるんと回る娘。
「これ。妖精の使いに早く水をやらぬか!」
駆け寄った男、慌てて持参していた桶に魚を入れてやる。
『まだ罠がある。よろしく頼む』
魚はぱくぱくしながら以上の言葉を繰り返しているが、それでも娘はそっちのけで喜んでいる。
「なしてそがいに喜んでおるんじゃ?」
「だって、『妖精のお使い』に出会った女性はみんな幸せな彼氏ができてるんですもの~」
えへへっ、と赤くなった頬を両手で包んで夢見る娘。
「何たることだ……」
男、いつの間にか愛欲に塗れた話にすり替わっていることに愕然としつつも、村の外れにできた「妖精の泉」に移そうと歩き出す。
もちろん、里に唯一残る精霊からの呼び出しはフラに伝えられた。
フラ、気持ちの整理がついたようで里に入る決心を固めるのだった。
「中の敵は一掃したぜ」
滝の岩壁を利用したエルフの隠れ里「♭(フラット)」での戦闘を終え、洞窟の外に出てきた蒼い髪と瞳の男が静かに言った。手にした銃も納める。
「うん、ありがとう」
礼を言ったフラ・キャンディ(kz0121)の表情はどこか浮かない。
「どこか痛めたか?」
「あ、このくらいなら大丈夫。だた……」
髪を首の後ろでまとめた静かな男が片膝を付きフラに優しく聞いた。フラ、先ほど洞窟から出て逃げていった堕落者「ルモーレ」から攻撃を受けたダメージを仲間の落ち着いた雰囲気の女性から回復してもらっている。
「その、どうだった?」
「フラさん、その……」
恐る恐る聞いたフラに、側に寄り添っていた小さな白い少年がこたえ……いや、言い淀んだ。
「あー、生存者はいなかったな」
見かねた咥えたばこの男がすかさず言い捨てた。仕方ねぇな、の風情が香る。
「ま、そのほかのモンはオジサンたちが諸々取り返したけどねぇ」
テンガロンハットの男も口添えした。
「戦闘で崩された部分はあるけど、建物なんかはきっとフラさんが旅立った時のままだと思う」
なにせルモーレが背もたれイスでリラックスしてたくらいだから、と赤い瞳の少年。丁寧に扱われていた事を伝え、にこり。
「壁を崩した岩で岩人形を作っていたみたい。扉人形とか屋根人形がなかったでしょ? つまり安心していいわ、フラっち」
「ありがとう」
マフラーのエルフ少女が念押ししてようやく笑顔を見せるフラ。
「そういえば何か渡してたよーだけど?」
ここで、横合いから元気っ娘。エルフ少女に無邪気に聞いてみる。
「ああ。こっちに来たルモーレ、あれを持ってなかったな」
「囮につかまされた物だが」
蒼い男も思い出し、片膝をついていた男がワイヤーを出してみせる。
「オリーブパイプだな。咥え口に琥珀を使ってやがる。いい品だぜ」
預かっていた咥えたばこの男が取り出し、にやり。
「取り戻してくれたんだね。ありがとう!」
「在庫もあるってんだろ? じゃ、早速……」
「待って!」
たばこの男が本題に戻したところ、フラはためらった。
「フラさん?」
白い少年がフラの顔をのぞき込む。「百年目のエルフ」として里を追放されたのは知っている。
「掟は話してもらったけど、里にはもうだれも……」
「精霊さん、いるから」
赤い瞳の少年にそう言い訳するフラ。少し泣き出しそうな、弱弱しい顔をしている。
「いままで里の誰も知らなかったけど……。里は全滅したわけじゃなくて精霊さん、いるから」
結局、フラに心の準備がいるのだろうと皆は判断し中には入らずいったん引いた。
●最初の村で
同盟領は農業推進地「ジェオルジ」のとある村で。
――どさっ、びちびちっ。
「え?」
晴れ渡った空の下、突然何かが落ちてきた音にとある娘が振り向いていた。
見ると道のわだちに一匹の魚が跳ねているではないか。
この時、そこから少し離れた場所で。
「ん?」
この様子を、少し離れてた場所で農作業をしていた男が発見した。
「ああ、いつものアレだな」
たしか最初にこれの現象に出会った娘はひどく驚いていたはずじゃし、これは一つちゃんと対応できるよう教えてやるか、と近付いて行く。
ところが!
「わあっ。これが噂の『妖精のお使い』ねっ♪」
娘、小躍りして喜んでいるではないか。
「ちゃんとお魚一匹に~、葉っぱに包まれた赤い小さな石がいくつか……うん! ちゃんとある!」
やったぁ、とその場でくるんと回る娘。
「これ。妖精の使いに早く水をやらぬか!」
駆け寄った男、慌てて持参していた桶に魚を入れてやる。
『まだ罠がある。よろしく頼む』
魚はぱくぱくしながら以上の言葉を繰り返しているが、それでも娘はそっちのけで喜んでいる。
「なしてそがいに喜んでおるんじゃ?」
「だって、『妖精のお使い』に出会った女性はみんな幸せな彼氏ができてるんですもの~」
えへへっ、と赤くなった頬を両手で包んで夢見る娘。
「何たることだ……」
男、いつの間にか愛欲に塗れた話にすり替わっていることに愕然としつつも、村の外れにできた「妖精の泉」に移そうと歩き出す。
もちろん、里に唯一残る精霊からの呼び出しはフラに伝えられた。
フラ、気持ちの整理がついたようで里に入る決心を固めるのだった。
リプレイ本文
●
「久々来てみりゃ荒れ放題か」
トリプルJ(ka6653)が地面の草を蹴り上げる。
「それにしても、いい天気で良かったね」
「そうだな」
霧雨 悠月(ka4130)が背伸びをしながら言い、その背後で岩に腰掛けた鞍馬 真(ka5819)がのんびり頷く。
ちらっとフラ・キャンディ(kz0121)の方を見る。
「…フラさん、大丈夫ですかぁ…?」
弓月・小太(ka4679)が横で心配そうにしていた。
「……うん、ありがとう。もう気持ちの整理はついたよ」
約二年前に「百年目のエルフ」として里から追放されたフラ。里が全滅したとはいえ掟破りとなる帰還を前に気持ちを落ち着けていた。Jも、悠月も、真も、みんなフラの気持ちの最後の整理がつくまで待っていたのだ。
「じゃ、罠を綺麗にしに行こうか」
にこりと振り返る悠月の目に、そっとフラの手を握る小太の姿が映る。フラの表情に温もりが戻ったことにほっとする。
「えー罠残ってるの? いつでもどこでも何度でもお邪魔なモノ残していくわねー」
横からけだるそうなキーリ(ka4642)。こちらも普段通り。
「どのあたりにあるか占ってあげるわ」
そう言って陰陽符を取り出したのは、優夜(ka6215)。
「期待していいのでしょうか?」
連れのコロナ=XIX(ka4527)がのぞき込む。
「気休めよ……ほら、『不吉、不可避』だって」
「どういう占いよ」
「場所を占ったんじゃねーのかよ」
独自の占いの結果を伝える優夜にすかさずキーリとJが突っ込む。
「占いは万能じゃないわ。でも、方針ははっきりしたわよね?」
「ああ、体の頑丈さに自信がある人が手当たり次第引っ掛かっていく、ね」
ふふふと微笑する優夜ににやりとするキーリ。
「そういえば、前回洞窟に罠があったらしいですね」
ここで入り口付近を調べていたエルバッハ・リオン(ka2434)が皆を振り返って確認。
「そうよ。……ほら、ユッキー突撃!」
「え?! それはちょっとどうだろう……」
びし、と指差すキーリに肩をすくめてストップをかける悠月。
「冗談に決まってるじゃない」
「あはは」
キーリの言葉にフラが笑った。これを見ていた真、「ああ、良かった」と心の中で。でも無理はしないようにな、と眼差しで呼び掛ける。もちろんフラは視線に気付かないが。
この様子を見てエルバッハがフラの近くに行く。
「お久し振りです、フラさん。よろしくお願いします」
「え?」
フラが驚いたのはエルバッハがまるごとくまさんを小脇に抱っこしていたため。へにょ、と首が垂れてまるごともご挨拶。
「ようやく、上の空ではなくなったので」
「いや、エルさん……それは?」
「罠解除のための私の身代わりです」
「あ、あは……可愛い身代わりだね」
フラの微笑み。先とは違う笑顔。
このやり取りに悠月が寄って来た。コロナと優夜も。
「コロナ。と申しますわ。どうぞよしなに」
「私は優夜。よろしくね」
「うん……よろしくね」
こたえたフラは普段通り。知ってる人も、初めての人からも気を遣われていたことに気付く。
改めて小太の手に気付く。温かい。
優しく微笑し、小太に頷いた。
「じゃ、行こう」
「……いい仕事してるねぇ、王子さまは」
小太の手を引いて洞窟に行くフラとすれ違いざま、Jがぽそり。こっそりマカロンとキャンディをフラのポッケへ押し込みつつぽんと頭を撫でてやり……わざと腕からぶつかった。
「わ、何?」
「は、はわわっ!」
よろめくフラと抱き止める小太。
「キーリの言う通り、一応体力ある奴が先頭の方がいいと思うぜ?」
「私も行こう」
にやりとJ。真も腰を上げる。
●
洞窟内に罠はなかった。
里は静かにたたずんでいた。流れ落ちる滝の水は変わらず清らか。
「綺麗な場所ね」
「これなら超嗅覚がいいですね」
前髪を整え気分良さそうな優夜に、コロナは早速野生の動物霊の力を宿らせる。
とにかく、三段の各階と滝壺に散った。
小太はフラとともにまず滝壺へ。
「と、途中に変な罠とかは残ってないといいですけどもぉ…。念のため注意しつつ降りたほうがいいでしょうかぁ?」
それとなく注意を促すが、フラは特に警戒せずに先を急ぐ。横から覗くと涙を流していた。それを拭くこともなく、脇を見ることもなく歩く。立ち止まればくじけてしまうと分かっているのかもしれない。
(ぼ、僕が気を付ければいいことですぅ)
守る。
そう決意し直感視でフラの分も周辺注意をする。
「ふうん、三階の奥はこうなってたんだね」
悠月は最上階にいた。前回、途中で地面を爆破されて落ちたのでここまで来ていなかった。
「崖の途中のある木から落ちた栗をここで収穫していたんだね」
中を抜いた後のイガを足先でつつきながら感心する。
そして顔を上げて川の下流を見る。
「……大地の割れ目のようだ。陽の光が多い下流の大地を畑にしているのか」
だんだんと生活が分かる。
「子供たちはどこで遊んでたんだろう」
そこまで考え、自身の過去がよみがえる。
突然の転移。それ以前の記憶はうろ覚え。
ただ、思い出すため旅に出る勇気はあった。
(もちろん不安だったけど……)
思わず歌を小さく口ずさんだ。
歌が好きだった。
歌が導いてくれた。
ハンターとして戦い、多くの人の悲しみを見て来た。
「だから!」
歌うのをやめ、思わず日本刀「白狼」を引き抜いた。戦いの場面がよみがえったか。
「……少し、好戦的になっちゃったかな?」
いけないよね、と渦巻いた心を沈め鞘に戻す。
三階の反対側。
「坂道の反対にこんな場所がありますか……」
エルバッハ、悠月のいる側とは反対の端にいた。
小屋が一軒ぽつんとある。
ひょい、と窓からまるごとくまさんを覗かせる。
特に矢などは飛んでこない。
中を見ると四畳半一間程度で何もない。
いや、矢などがある。
ぽいっ、と入り口からまるごとくまさんを放る。
異常なし。
「戦闘の準備もしてましたが、まあいいでしょう」
入ってゆっくりする。
ここはどういう場所だったのか感じるために。
「少しじめじめしてますか?」
肌も露わな服の端に指をひっかけ伸ばし、胸の谷間から湿度を逃がす。
きょろ、と見回し気付いた。
「ああ、そういうことですか」
籠を発見。上に高い窓も。
「ここで迷い込んだ鳥狙って狩りつつ、キノコも採取していたのでしょう」
裏口の扉を開くと、壁にキノコがびっしり。
滝側の窓から顔を出すと反対にいる悠月が手を振っていた。にこりと手を振り返し異常なしを伝える。
「じゃ、僕は石を集めてますねぇ」
滝壺そばでは小太がフラを手伝い墓標を作っていた。
「ありがとう。ボクは全員の遺品を集めて来るね」
フラ、住居のない三階には行かず、まず二階へ向かった。
●
この時、二階では。
猫耳の先はもちろん、小さな顎を上げて鼻をツンと上げてコロナが周りを見回していた。
「……超嗅覚って言ってたのになんで耳まであるのよ」
優夜、猫耳に突っ込む。
「覚醒するとこうなりますのよ」
「まあ、狩りをしようと思ってたからちょうどいいわ」
説明したコロナ、意外な言葉に改めて友人の顔を見る。
「狩? また妙な事を」
「トラップっていうのはかかって欲しい為に行うから、実際かかってみさせるのが確実な時があるのよね」
それが?と疑問の眼差しで見るコロナ。
「つまり、動物を罠のありそうなところに突っ込ませるの。例えば猫とか……人の大きさだとなおいいわね」
「まあ狩をするなら手伝いますわ」
いじわるそうに言うが、コロナは知らんふりで探索続行。ペットのモフロウを飛ばしファミリアズアイで里を俯瞰。動物はいない。
「……わたしにはそういう態度、できなかったわねぇ」
優夜がため息をつくのは過去を思い出したから。
気付けば孤児となり一人さまよっていたところ、武芸者に拾われた。その仲間の下で育ったのだが、当然武芸を仕込まれた。
嗚呼、思い出される師との修行。
どんな内容かというと……。
「ここが崩落した岩ですのね……あら、どうなさいました?」
コロナ、優夜が回想してぐぬぬぬ、と拳を固めているのに気付き振り返った。
「やられたことあるのよ。これと一緒の罠」
師に対して思わず殺意を抱きなおしつつ捜索を続行。
「あ」
ここでフラがやってきた。
一緒に住居内を調べる。
「……」
フラ、改めて涙を流した。
この様子を、はっとしたようにコロナが見詰める。
(流される涙を一つでも無きように、とこの道を選びましたが……)
はたして、できているのか。
「頑張りませんと、ね」
自問し、結論を出すコロナ。思いを強くする。
●
そして一階。
「わかりやすいように端から、だな」
真、一番奥の建物に入った。
「奇遇だな」
Jも同じ考えのようだ。振り返ると戸口に身を預けて立っていた。
「前回と同じ地形崩しもあるかもしれないぞ?」
「扉を開けて安心して進んだ途端とか、箱開けてパイプを持ち上げた瞬間とか、気を抜いて座ろうとした瞬間とか。そう一瞬に引っかかるような場所、物にトラップがありそうな気がするぜ?」
背中越しに忠告する真。Jは気にせず入って手伝う。
が、特に何もない。農作業用の小屋のようだ。
出て次の建物に。
「一応、天井も床も大丈夫そうだ」
慎重に入る真。
どうやらここは住宅のようだ。
「ルモーレは嫌がらせが大好きな性質だろ? こんなところにないと安心するような場所が……」
――ずぽっ。
J、言いつつ背もたれ付きの長椅子に座ってくつろごうとしたところ、底が抜けて壊れた。
「罠だろうか?」
「普通でも罠としか思えんがな」
閑話休題。
「ここは明らかに工房じゃねーか」
新たに入った建物でJがきょろり。
「あった」
真、パイプの在庫を発見。オリーブの香りがするのは、オリーブの木を使っているから。吸い口は琥珀を使っている。
「……良かった。壊されてないんだね」
背後からの声に振り向く二人。
見るとフラが立っていた。
涙を流している。
「ああ、無事だ」
にやりと成果を見せるJ。嬉しそうなフラ。
(壊される悲しみ、か)
真は無言で想いを巡らせる。
(いっそ忘れたままの方が楽なのかな……)
彼に転移前の記憶は、ない。
●
パイプを持って出たフラ、キーリに手招きされた。「行ってこい」とJ。真も頷きパイプの運び出し作業をする。
「キーリさん……」
「力作業は誰がやるべきか分かってるわねー。フラっちもあんまり気負いせずにどんどん他人を頼って良いのよ?」
フラが来るとそのまま滝壺の縁に移動し並んで座る。背後では小太が墓標を組んでいる。
「その……」
「フラっちの家族ってどんな感じだったの?」
フラが言い出した時、聞かれた。いつかは言わなくちゃと思っていたことだ。
が。
「私の家族はねー……私はまだ恵まれている方ね。帰る気があるなら帰れる故郷はあるし。家族だって両親には会えるし、生物学上姉に属するようなのも一応どっかにいるし」
素足になって滝壺につけ、ぱしゃぱしゃやりながら先に言う。
「ボクは……」
「うん?なんかね、姉とは波長が合わないのよ。でもまぁ、そんな姉でも居なくなったら落ち込むのかしらね。想像出来ないけど」
まくしたて石を投げ入れるキーリ。普段、そんな話はしないことをフラはよく知っている。
「いいな……ボク、一人っ子」
うまく自然に言葉を引き出せて普段は見せない笑顔を見せるキーリ。
ちなみにこの時、小太が石を求めて近くに来ていた。
「…そういえばずっと帰ってないですねぇ」
キーリの話で自分の姉たちを回想する。
実家の神社で舞や祈祷、弓を叩き込まれたこと。
姉達に家事全般を放り投げられたり失敗したらお尻ぺんぺんされたこと。
「あ、でも帰らないでもいい気がぁ…」
何故か姉達に苛められてたことばかり浮かぶので考えるのをやめたり。
「と、とにかく墓標にふさわしい石を探さないとですぅ」
小太、思い切って滝壺に入ることにする。
その時だった。
――ばしゃあっ!
滝壺の底から岩人形一体が姿を現した。
小太、フラ、キーリのいる方に突進してくるぞ!
「はっ!」
二階のコロナ、いち早く異変察知。
「行きますわ」
「え、ちょっと!」
優夜の手を引き二階から滝壺にどぼーん!
「そうか。だからあの時最初滝に逃げようとしたのか!」
一階の真、前回ルモーレが一瞬滝壺に逃げかけ、それを自分たちが読んで行く手を阻んだ攻防を振り返る。あの時滝壺に逃がし、不用意に追っていたら水の中でコイツに絡まれるところだった。
とにかく魔導剣「カオスウィース」を抜刀し滝壺にダイブ。
「やっぱ、まさかな場所の罠だったか!」
脚甲を装備したJもどぷーん!
「核があるのは知ってるな?」
「分かってる。罠みたいな敵だよな!」
真、剣のトリガーを引き光と闇を纏った刃で敵を切り裂く。残った光体はJのハイキック。くるりと回った背中をバックに、光体も消えた。
「……飛び込む必要、あったのかしら?」
「その、頑張ろうかと」
ジト目の優夜ともじもじするコロナは探索スキルしか持ってきていなかったのだったり。
二人ともずぶ濡れである。
●
「無事で何よりでした」
「まさか一番下とは、だね」
エルバッハと悠月も下りて来た。戦闘要員だったが、武運がなかった。
すでに滝壺のそばには石が組まれ墓標ができている。
「お母さんお父さんも、村長も……みんな、ここで眠ってね」
フラ、手を合わす。
墓標の下にはフラの集めた住民たちの遺品が眠っている。
「安らかに…」
優夜も手を合わす。ほかの皆も。
「じゃ……」
手を合わせ終えた悠月がレクイエムを歌おうと息を吸い込んだ時だった。
――ひょう……。
背後の滝壺から、不自然な風の音がした。
全員振り向くが誰もいない。
――ざわ、ざわざわ……。
いや、滝壺付近の木立の枝が騒ぎ出した。
ぴちょん、と滝壺から何か跳ねた。紅い小さなものだ。
それが放物線を描き飛んでくる。
「これは……」
遠慮がちに最後方、つまり滝壺の近くにいたエルバッハ。思わず差し出した手の平に九つのイクシード・プライムが収まった。
『ありがとう』
滝壺から清らかな声が響いた。顔を上げるエルバッハだが、誰もいない。
「あのっ……」
フラ、思わず駆け出すが木の葉を含んだ風が遮った。
「ちょっと、生き残りのその子、祝福してあげなさいよ」
キーリが不満をぶつける。
『新たに君たちに祝福を。……その後どうするかは君たち次第』
ふわっと優しい風に包まれたキーリ。フラ以外の他の七人も同様に。
「僕たち次第、ですかぁ……」
小太、これを受けて改めにフラの横に、
(フラさんの事は僕が…守っていきますよぉ…。共に歩みを…)
手を取り祈るように両手で包んだ。
これに満足したか、姿の見えない精霊は改めてフラと小太を優しい風で包むのだった。
里はとりあえず、ベンド商会の管理下に置かれることとなる。
「久々来てみりゃ荒れ放題か」
トリプルJ(ka6653)が地面の草を蹴り上げる。
「それにしても、いい天気で良かったね」
「そうだな」
霧雨 悠月(ka4130)が背伸びをしながら言い、その背後で岩に腰掛けた鞍馬 真(ka5819)がのんびり頷く。
ちらっとフラ・キャンディ(kz0121)の方を見る。
「…フラさん、大丈夫ですかぁ…?」
弓月・小太(ka4679)が横で心配そうにしていた。
「……うん、ありがとう。もう気持ちの整理はついたよ」
約二年前に「百年目のエルフ」として里から追放されたフラ。里が全滅したとはいえ掟破りとなる帰還を前に気持ちを落ち着けていた。Jも、悠月も、真も、みんなフラの気持ちの最後の整理がつくまで待っていたのだ。
「じゃ、罠を綺麗にしに行こうか」
にこりと振り返る悠月の目に、そっとフラの手を握る小太の姿が映る。フラの表情に温もりが戻ったことにほっとする。
「えー罠残ってるの? いつでもどこでも何度でもお邪魔なモノ残していくわねー」
横からけだるそうなキーリ(ka4642)。こちらも普段通り。
「どのあたりにあるか占ってあげるわ」
そう言って陰陽符を取り出したのは、優夜(ka6215)。
「期待していいのでしょうか?」
連れのコロナ=XIX(ka4527)がのぞき込む。
「気休めよ……ほら、『不吉、不可避』だって」
「どういう占いよ」
「場所を占ったんじゃねーのかよ」
独自の占いの結果を伝える優夜にすかさずキーリとJが突っ込む。
「占いは万能じゃないわ。でも、方針ははっきりしたわよね?」
「ああ、体の頑丈さに自信がある人が手当たり次第引っ掛かっていく、ね」
ふふふと微笑する優夜ににやりとするキーリ。
「そういえば、前回洞窟に罠があったらしいですね」
ここで入り口付近を調べていたエルバッハ・リオン(ka2434)が皆を振り返って確認。
「そうよ。……ほら、ユッキー突撃!」
「え?! それはちょっとどうだろう……」
びし、と指差すキーリに肩をすくめてストップをかける悠月。
「冗談に決まってるじゃない」
「あはは」
キーリの言葉にフラが笑った。これを見ていた真、「ああ、良かった」と心の中で。でも無理はしないようにな、と眼差しで呼び掛ける。もちろんフラは視線に気付かないが。
この様子を見てエルバッハがフラの近くに行く。
「お久し振りです、フラさん。よろしくお願いします」
「え?」
フラが驚いたのはエルバッハがまるごとくまさんを小脇に抱っこしていたため。へにょ、と首が垂れてまるごともご挨拶。
「ようやく、上の空ではなくなったので」
「いや、エルさん……それは?」
「罠解除のための私の身代わりです」
「あ、あは……可愛い身代わりだね」
フラの微笑み。先とは違う笑顔。
このやり取りに悠月が寄って来た。コロナと優夜も。
「コロナ。と申しますわ。どうぞよしなに」
「私は優夜。よろしくね」
「うん……よろしくね」
こたえたフラは普段通り。知ってる人も、初めての人からも気を遣われていたことに気付く。
改めて小太の手に気付く。温かい。
優しく微笑し、小太に頷いた。
「じゃ、行こう」
「……いい仕事してるねぇ、王子さまは」
小太の手を引いて洞窟に行くフラとすれ違いざま、Jがぽそり。こっそりマカロンとキャンディをフラのポッケへ押し込みつつぽんと頭を撫でてやり……わざと腕からぶつかった。
「わ、何?」
「は、はわわっ!」
よろめくフラと抱き止める小太。
「キーリの言う通り、一応体力ある奴が先頭の方がいいと思うぜ?」
「私も行こう」
にやりとJ。真も腰を上げる。
●
洞窟内に罠はなかった。
里は静かにたたずんでいた。流れ落ちる滝の水は変わらず清らか。
「綺麗な場所ね」
「これなら超嗅覚がいいですね」
前髪を整え気分良さそうな優夜に、コロナは早速野生の動物霊の力を宿らせる。
とにかく、三段の各階と滝壺に散った。
小太はフラとともにまず滝壺へ。
「と、途中に変な罠とかは残ってないといいですけどもぉ…。念のため注意しつつ降りたほうがいいでしょうかぁ?」
それとなく注意を促すが、フラは特に警戒せずに先を急ぐ。横から覗くと涙を流していた。それを拭くこともなく、脇を見ることもなく歩く。立ち止まればくじけてしまうと分かっているのかもしれない。
(ぼ、僕が気を付ければいいことですぅ)
守る。
そう決意し直感視でフラの分も周辺注意をする。
「ふうん、三階の奥はこうなってたんだね」
悠月は最上階にいた。前回、途中で地面を爆破されて落ちたのでここまで来ていなかった。
「崖の途中のある木から落ちた栗をここで収穫していたんだね」
中を抜いた後のイガを足先でつつきながら感心する。
そして顔を上げて川の下流を見る。
「……大地の割れ目のようだ。陽の光が多い下流の大地を畑にしているのか」
だんだんと生活が分かる。
「子供たちはどこで遊んでたんだろう」
そこまで考え、自身の過去がよみがえる。
突然の転移。それ以前の記憶はうろ覚え。
ただ、思い出すため旅に出る勇気はあった。
(もちろん不安だったけど……)
思わず歌を小さく口ずさんだ。
歌が好きだった。
歌が導いてくれた。
ハンターとして戦い、多くの人の悲しみを見て来た。
「だから!」
歌うのをやめ、思わず日本刀「白狼」を引き抜いた。戦いの場面がよみがえったか。
「……少し、好戦的になっちゃったかな?」
いけないよね、と渦巻いた心を沈め鞘に戻す。
三階の反対側。
「坂道の反対にこんな場所がありますか……」
エルバッハ、悠月のいる側とは反対の端にいた。
小屋が一軒ぽつんとある。
ひょい、と窓からまるごとくまさんを覗かせる。
特に矢などは飛んでこない。
中を見ると四畳半一間程度で何もない。
いや、矢などがある。
ぽいっ、と入り口からまるごとくまさんを放る。
異常なし。
「戦闘の準備もしてましたが、まあいいでしょう」
入ってゆっくりする。
ここはどういう場所だったのか感じるために。
「少しじめじめしてますか?」
肌も露わな服の端に指をひっかけ伸ばし、胸の谷間から湿度を逃がす。
きょろ、と見回し気付いた。
「ああ、そういうことですか」
籠を発見。上に高い窓も。
「ここで迷い込んだ鳥狙って狩りつつ、キノコも採取していたのでしょう」
裏口の扉を開くと、壁にキノコがびっしり。
滝側の窓から顔を出すと反対にいる悠月が手を振っていた。にこりと手を振り返し異常なしを伝える。
「じゃ、僕は石を集めてますねぇ」
滝壺そばでは小太がフラを手伝い墓標を作っていた。
「ありがとう。ボクは全員の遺品を集めて来るね」
フラ、住居のない三階には行かず、まず二階へ向かった。
●
この時、二階では。
猫耳の先はもちろん、小さな顎を上げて鼻をツンと上げてコロナが周りを見回していた。
「……超嗅覚って言ってたのになんで耳まであるのよ」
優夜、猫耳に突っ込む。
「覚醒するとこうなりますのよ」
「まあ、狩りをしようと思ってたからちょうどいいわ」
説明したコロナ、意外な言葉に改めて友人の顔を見る。
「狩? また妙な事を」
「トラップっていうのはかかって欲しい為に行うから、実際かかってみさせるのが確実な時があるのよね」
それが?と疑問の眼差しで見るコロナ。
「つまり、動物を罠のありそうなところに突っ込ませるの。例えば猫とか……人の大きさだとなおいいわね」
「まあ狩をするなら手伝いますわ」
いじわるそうに言うが、コロナは知らんふりで探索続行。ペットのモフロウを飛ばしファミリアズアイで里を俯瞰。動物はいない。
「……わたしにはそういう態度、できなかったわねぇ」
優夜がため息をつくのは過去を思い出したから。
気付けば孤児となり一人さまよっていたところ、武芸者に拾われた。その仲間の下で育ったのだが、当然武芸を仕込まれた。
嗚呼、思い出される師との修行。
どんな内容かというと……。
「ここが崩落した岩ですのね……あら、どうなさいました?」
コロナ、優夜が回想してぐぬぬぬ、と拳を固めているのに気付き振り返った。
「やられたことあるのよ。これと一緒の罠」
師に対して思わず殺意を抱きなおしつつ捜索を続行。
「あ」
ここでフラがやってきた。
一緒に住居内を調べる。
「……」
フラ、改めて涙を流した。
この様子を、はっとしたようにコロナが見詰める。
(流される涙を一つでも無きように、とこの道を選びましたが……)
はたして、できているのか。
「頑張りませんと、ね」
自問し、結論を出すコロナ。思いを強くする。
●
そして一階。
「わかりやすいように端から、だな」
真、一番奥の建物に入った。
「奇遇だな」
Jも同じ考えのようだ。振り返ると戸口に身を預けて立っていた。
「前回と同じ地形崩しもあるかもしれないぞ?」
「扉を開けて安心して進んだ途端とか、箱開けてパイプを持ち上げた瞬間とか、気を抜いて座ろうとした瞬間とか。そう一瞬に引っかかるような場所、物にトラップがありそうな気がするぜ?」
背中越しに忠告する真。Jは気にせず入って手伝う。
が、特に何もない。農作業用の小屋のようだ。
出て次の建物に。
「一応、天井も床も大丈夫そうだ」
慎重に入る真。
どうやらここは住宅のようだ。
「ルモーレは嫌がらせが大好きな性質だろ? こんなところにないと安心するような場所が……」
――ずぽっ。
J、言いつつ背もたれ付きの長椅子に座ってくつろごうとしたところ、底が抜けて壊れた。
「罠だろうか?」
「普通でも罠としか思えんがな」
閑話休題。
「ここは明らかに工房じゃねーか」
新たに入った建物でJがきょろり。
「あった」
真、パイプの在庫を発見。オリーブの香りがするのは、オリーブの木を使っているから。吸い口は琥珀を使っている。
「……良かった。壊されてないんだね」
背後からの声に振り向く二人。
見るとフラが立っていた。
涙を流している。
「ああ、無事だ」
にやりと成果を見せるJ。嬉しそうなフラ。
(壊される悲しみ、か)
真は無言で想いを巡らせる。
(いっそ忘れたままの方が楽なのかな……)
彼に転移前の記憶は、ない。
●
パイプを持って出たフラ、キーリに手招きされた。「行ってこい」とJ。真も頷きパイプの運び出し作業をする。
「キーリさん……」
「力作業は誰がやるべきか分かってるわねー。フラっちもあんまり気負いせずにどんどん他人を頼って良いのよ?」
フラが来るとそのまま滝壺の縁に移動し並んで座る。背後では小太が墓標を組んでいる。
「その……」
「フラっちの家族ってどんな感じだったの?」
フラが言い出した時、聞かれた。いつかは言わなくちゃと思っていたことだ。
が。
「私の家族はねー……私はまだ恵まれている方ね。帰る気があるなら帰れる故郷はあるし。家族だって両親には会えるし、生物学上姉に属するようなのも一応どっかにいるし」
素足になって滝壺につけ、ぱしゃぱしゃやりながら先に言う。
「ボクは……」
「うん?なんかね、姉とは波長が合わないのよ。でもまぁ、そんな姉でも居なくなったら落ち込むのかしらね。想像出来ないけど」
まくしたて石を投げ入れるキーリ。普段、そんな話はしないことをフラはよく知っている。
「いいな……ボク、一人っ子」
うまく自然に言葉を引き出せて普段は見せない笑顔を見せるキーリ。
ちなみにこの時、小太が石を求めて近くに来ていた。
「…そういえばずっと帰ってないですねぇ」
キーリの話で自分の姉たちを回想する。
実家の神社で舞や祈祷、弓を叩き込まれたこと。
姉達に家事全般を放り投げられたり失敗したらお尻ぺんぺんされたこと。
「あ、でも帰らないでもいい気がぁ…」
何故か姉達に苛められてたことばかり浮かぶので考えるのをやめたり。
「と、とにかく墓標にふさわしい石を探さないとですぅ」
小太、思い切って滝壺に入ることにする。
その時だった。
――ばしゃあっ!
滝壺の底から岩人形一体が姿を現した。
小太、フラ、キーリのいる方に突進してくるぞ!
「はっ!」
二階のコロナ、いち早く異変察知。
「行きますわ」
「え、ちょっと!」
優夜の手を引き二階から滝壺にどぼーん!
「そうか。だからあの時最初滝に逃げようとしたのか!」
一階の真、前回ルモーレが一瞬滝壺に逃げかけ、それを自分たちが読んで行く手を阻んだ攻防を振り返る。あの時滝壺に逃がし、不用意に追っていたら水の中でコイツに絡まれるところだった。
とにかく魔導剣「カオスウィース」を抜刀し滝壺にダイブ。
「やっぱ、まさかな場所の罠だったか!」
脚甲を装備したJもどぷーん!
「核があるのは知ってるな?」
「分かってる。罠みたいな敵だよな!」
真、剣のトリガーを引き光と闇を纏った刃で敵を切り裂く。残った光体はJのハイキック。くるりと回った背中をバックに、光体も消えた。
「……飛び込む必要、あったのかしら?」
「その、頑張ろうかと」
ジト目の優夜ともじもじするコロナは探索スキルしか持ってきていなかったのだったり。
二人ともずぶ濡れである。
●
「無事で何よりでした」
「まさか一番下とは、だね」
エルバッハと悠月も下りて来た。戦闘要員だったが、武運がなかった。
すでに滝壺のそばには石が組まれ墓標ができている。
「お母さんお父さんも、村長も……みんな、ここで眠ってね」
フラ、手を合わす。
墓標の下にはフラの集めた住民たちの遺品が眠っている。
「安らかに…」
優夜も手を合わす。ほかの皆も。
「じゃ……」
手を合わせ終えた悠月がレクイエムを歌おうと息を吸い込んだ時だった。
――ひょう……。
背後の滝壺から、不自然な風の音がした。
全員振り向くが誰もいない。
――ざわ、ざわざわ……。
いや、滝壺付近の木立の枝が騒ぎ出した。
ぴちょん、と滝壺から何か跳ねた。紅い小さなものだ。
それが放物線を描き飛んでくる。
「これは……」
遠慮がちに最後方、つまり滝壺の近くにいたエルバッハ。思わず差し出した手の平に九つのイクシード・プライムが収まった。
『ありがとう』
滝壺から清らかな声が響いた。顔を上げるエルバッハだが、誰もいない。
「あのっ……」
フラ、思わず駆け出すが木の葉を含んだ風が遮った。
「ちょっと、生き残りのその子、祝福してあげなさいよ」
キーリが不満をぶつける。
『新たに君たちに祝福を。……その後どうするかは君たち次第』
ふわっと優しい風に包まれたキーリ。フラ以外の他の七人も同様に。
「僕たち次第、ですかぁ……」
小太、これを受けて改めにフラの横に、
(フラさんの事は僕が…守っていきますよぉ…。共に歩みを…)
手を取り祈るように両手で包んだ。
これに満足したか、姿の見えない精霊は改めてフラと小太を優しい風で包むのだった。
里はとりあえず、ベンド商会の管理下に置かれることとなる。
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相談ですよぉー 弓月・小太(ka4679) 人間(クリムゾンウェスト)|10才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/07/02 12:55:59 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/01 08:27:58 |