ゲスト
(ka0000)
改装アイデア大募集!
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/05 22:00
- 完成日
- 2017/07/15 14:07
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ブックカフェ「シエル」――この女主人であるエリスは、少しなやんでいた。
一つには、最近の情勢の変化。
ハンターの資格を得る種族が増えたことにより、来客の幅も増えた。しかし、彼らが喜ぶ店で有り続けるためには、なにかアイディアが必要だろう――
そう思っていると、ふと思ったことがある。
単純に蔵書の量を増やすのは、スペースの関係上若干厳しい。
メニューの改善は、不可能ではないが……それまでの味に慣れ親しんでくれたものを変えていくにも一人ではアイデアがなかなか出ない。
「……あ」
ふと思いついたのは、ハンターを客として扱いたいのなら、ハンターに意見を求めればいいのではあるまいか、ということだった。
郷に入っては郷に従え、と言うか、餅は餅屋というか。
せっかくなら、客になり得る人々から意見を聞くのが賢明だろう。
今は蔵書の変更もある程度融通がきくし、メニューの改善点、他にも店の内装・外装にも意見をもらえるかもしれない。
以前も似たようなことは確かに行ったが、状況はこくこくと変化していているのは客であるハンターたちにも色々聞いている。彼らにも喜ばれる、この店独自のおもてなしの仕方を考えなければなるまい。
もともとエリスも、リアルブルーからの転移者だ。ハンターの資格こそ所持しておらず、こうやって店を構えているが、いつかは帰りたいと思っているし、そして同時にここで築いた関係性を大事にしたいとも思っている。
リアルブルーと、クリムゾンウェストの架け橋に。
そうやって思ってきたからこその、大改装作戦。
この志に共感してくれる人がいるのなら、是非手伝ってもらいたい――彼女はその思いを胸に、ハンターオフィスの扉をたたいたのだった。
ブックカフェ「シエル」――この女主人であるエリスは、少しなやんでいた。
一つには、最近の情勢の変化。
ハンターの資格を得る種族が増えたことにより、来客の幅も増えた。しかし、彼らが喜ぶ店で有り続けるためには、なにかアイディアが必要だろう――
そう思っていると、ふと思ったことがある。
単純に蔵書の量を増やすのは、スペースの関係上若干厳しい。
メニューの改善は、不可能ではないが……それまでの味に慣れ親しんでくれたものを変えていくにも一人ではアイデアがなかなか出ない。
「……あ」
ふと思いついたのは、ハンターを客として扱いたいのなら、ハンターに意見を求めればいいのではあるまいか、ということだった。
郷に入っては郷に従え、と言うか、餅は餅屋というか。
せっかくなら、客になり得る人々から意見を聞くのが賢明だろう。
今は蔵書の変更もある程度融通がきくし、メニューの改善点、他にも店の内装・外装にも意見をもらえるかもしれない。
以前も似たようなことは確かに行ったが、状況はこくこくと変化していているのは客であるハンターたちにも色々聞いている。彼らにも喜ばれる、この店独自のおもてなしの仕方を考えなければなるまい。
もともとエリスも、リアルブルーからの転移者だ。ハンターの資格こそ所持しておらず、こうやって店を構えているが、いつかは帰りたいと思っているし、そして同時にここで築いた関係性を大事にしたいとも思っている。
リアルブルーと、クリムゾンウェストの架け橋に。
そうやって思ってきたからこその、大改装作戦。
この志に共感してくれる人がいるのなら、是非手伝ってもらいたい――彼女はその思いを胸に、ハンターオフィスの扉をたたいたのだった。
リプレイ本文
●
ブックカフェ「シエル」。ハンターも出入りのあるこの店が、改装を考えているのだと言う話はハンターオフィスから伝わったのだろう、その日は何人かのハンターたちが訪れていた。
「この店に来るのも久しぶりだねぇ」
カラン、と扉を開けて入ってきたのはヒース・R・ウォーカー(ka0145)。その時は確か、雨の日向けのメニューを考えて欲しいという依頼だったはずだ。彼に連れられるようにしてやってきた幼さの残る少女、ヒヨス・アマミヤ(ka1403)もきょろきょろと少し懐かしげに店のなかを見回している。あのときもヒースとヒヨスは一緒に提案したっけ、ヒースはそんなことを思うと縁というものを何とはなしに感じずにはいられなかった。
店のカウンターには、一休みをしていたらしいオーナー、エリスがいて、ドアを開けて入ってきたヒースとヒヨスの顔を見ると、安堵したような笑みを浮かべた。
「いらっしゃい、二人はお久しぶりね。今日は来てくれてありがとう。あと二人かな、オフィスの話では来るはずだから……とりあえず、さきに飲み物を準備しておこうかな」
立ち上がると、エリスは慣れた手つきでドリンクを作り出す。得意のカプチーノではなく、暑い季節にぴったりなハニーレモン――もちろん彼女が手ずから漬けたものだ。
「炭酸がいい人は言ってね、サワーにもできるから」
エリスはにっこりと微笑んでみせる。希釈をするタイプだから、その辺の融通も効くのだ。
「もう夏だし、こういう飲み物の方がいいでしょう? もっとも、これだけでは売りというわけにはいかないから、皆の力を借りたいと思ったの」
なるほど。本人も意欲満々なのがうかがえる。
「うん、楽しんでくれる人たちがもっともっと増えますように! ひいが楽しくお手伝いをさせて頂いている場所ですから、みんなにも楽しんで頂きたいです!」
ヒヨスも嬉しそうに頷いてみせる。
と、その時、またドアが開いて、ふたりの女性が顔を見せた。
金髪に緑の瞳、優しそうな顔立ちをした央崎 遥華(ka5644)と、それから――
「こんにちは……って、挨拶するんですよね?」
白銀の髪を耳の下あたりでツインテールにしている、どこか儚げな、兎を思わせるような雰囲気の女性――リリィナ フォール(ka6919)。
機械的な特徴がちらりと垣間見える彼女は、最近増えてきたオートマトンと呼ばれる種族だ。
「いらっしゃい、きてくれて嬉しいわ。私がここのマスター、エリスです。今回はよろしくね」
「いえ、本、好きなのです……これからも利用できたらいいな、と思って……だから、参考になるでしょうか……」
リリィナの問うような声に、エリスはにっこり笑ってみせる。
「今回はとくに、ハンター登録のはじまったドラグーンやオートマトンと言った、新しいタイプの顧客を受け入れやすくする為の改装アイデアだから。むしろ、大歓迎よ」
そう言って、エリスは嬉しそうに頷いた。
「私も本好きで、まさに私の休日の過ごし方にそっくりなんですよ、この店のコンセプト。だから飛びつかずにはいられなかったんだ、より素敵なお店になるような手伝いを頑張るぞ、おー!」
遥華はそう言ってこぶしを天に突き上げる。そんな様子を眺めて、先に来ていたヒヨスとヒースも楽しそうに笑顔を浮かべた。
●
まず、決めるべきことをおさらいしよう。
その一、書籍のラインナップ。
以前に比べてもリアルブルー関連の書籍が入手しやすくなった今、本の入替なども考えてもいいタイミングではあるかも知れない。
その二、メニューの改善など。
ブックカフェという名目上、本を片手に手軽に摂ることのできる料理がほとんどだ。逆に言うと、定番ばかりになってしまっている。目玉商品の一つや二つはあるのが好ましいだろう。
そしてその三、外装や内装そのもの。
リゼリオにオープンして早数年、これまでは内装を大きく変更することもなかったっため、こちらも言ってみれば少し変更する必要があるかも知れない。とくに、ドラグーンやオートマトンと言った面々が心地よく過ごせるように手を加えるのは大事だろう。
他にもサービスなどの面において、アイデアをどんどん出して貰えれば、よりよい店作りができるに違いないのだ。
●
最初に口を開いたのは、ヒースだった。
「ドラグーンには通貨概念がなかったらしいし、オートマトンはまだまだこの世界の事情に疎い。だから、この二種族に限った話じゃないんだけどさぁ、他種族向けにメニューや用語解説があったらいいんじゃないかなぁって」
「そうか、そこからまず作らないとわからない人もいるってことですよね!」
ヒヨスがその言葉に同調すると、ヒースは小さく頷いた。
「言葉の壁、文化の壁、種族の壁。これらの壁を壊すのに必要なのはお互いの知識と理解。相互理解って奴。口で説明するのもいいけど、口下手な奴も少なくはないからねぇ。その点ここはブックカフェだし、本という形で理解できるようにするのもいいんじゃないかなぁ」
「なるほど……確かに、私も、そう言うガイドがあれば随分助かります」
異種族当事者であるリリィナも、こっくりと頷く。
「あとね、ヒヨは思うんだけど、種族ごとの伝説とか昔話とか、仕入れることができますか?」
「うーん、どうかな。そう言うのを調べるのが好きな人を探してみるけれど」
ヒヨスはその言葉に、嬉しそうに顔をほころばせた。
「もしできたら、そう言うのがあるといいと思ったんですっ。みんなの文化や物語を共有できたら、きっと素敵だと思いますよっ!」
なるほど、これも相互理解の為の一手段。
「知り合いの学校の先生とかに聞いてみるわ。ここの常連さんにも、物書きさん、時々混じってるし」
エリスも笑顔を浮かべた。
「あと、ここの利用者……ちょっと利用したいだけの人、ゆっくりしたい人、いろいろだと思うのです。だから、今の品揃えを見ている限り……あえて増やす必要があるのは、さっき言っていたもの程度かな。だけど、話題作や最新作は、目につきやすい棚に並べておいたりすると、手に取りやすいの。あと、今なにが受けているかとかは……お客様からの情報も大事……」
ふむふむ、納得のできる話である。
「だから、少しお話しができるコミュニケーションスペースが、あったりするといいかな……」
リリィナの言葉は訥々としているが、逆に判りやすい。
「あ、それなら! ヒヨはお客様にアンケートとったらいいと思うんです! もともとメニューのスペシャルを決めたりするのにいいかなって思ったけど、どんな本が読みたいかも聞いてみたりすれば、一石二鳥なんですよ!」
おお。アイディアが上手い具合に融合された。
それならば、次はメニューの話も織り交ぜていこう。
●
「さっきも言ったけど、月一回くらいのアンケートで、希望によってスペシャルを決める形とか、いかがでしょうか? ヒヨは、みんながどんなのを食べたいか、知りたいですっ」
確かに、季節の鰺や好みなどは、抑えておきたいところだ。
「ヒースさん、こんなのどうですか?」
ヒヨスに問われて、ヒースはぽん、と彼女の頭を優しく叩いた。
「うんうん、実にお前らしい提案だねぇ。ボクも嫌いじゃないよ、そう言うの。あとは、多文化の類似料理を合体させてオリジナルレシピを作るのもいいかもしれないねぇ」
リアルブルーでカレーやスシと言ったものが、各国で独自の進化を遂げていったように。
「故郷の味に近ければ馴染みやすいだろうし、同時に新しい鰺を経験できるのも面白いかなとおもってねぇ」
「ふむふむ」
エリスも興味深げにメモを取っていく。
遥華も、自分の経験を参考にアイデアを出していく。
「読書の時にコーヒーや紅茶を飲むのなら、そう言う飲み物にあった食べものがいいと思います。あと、ナイフやフォークをつかって食べるようなモノより、本が汚れたり、食べかすがはいったり……そう言うことのないようなものを優先にかな。あまりぽろぽろと零しにくいものや、ソースやジャムをたっぷり使うようなことのないものがいいですよね……たとえばワッフルや、フレンチトースト、ホットドッグとか……」
それと、と悪戯っぽい笑みを浮かべて、
「日替わりのケーキとかもあったらいいなぁ。同盟は農業も有名だから、材料の仕入れも便利そうだし」
遥華がそう言うと、甘いものが好きな女性陣がくすくすと笑う。確かにケーキセットは魅力的だろう。
「飲み物にも一工夫して、冷たい紅茶に果物の風味をつけたクラッシュゼリーを入れたような、小腹もちょっと満足するドリンクがあったらいいな……応用で、色を派手めにして、近未来リアルブルー風ドリンク、とか」
リリィナも、意外と勉強しているようである。
「あとは、暑い季節に向けて涼しげな麺類メニュー……ひやしらーめん、や、つめたいぱすた、とか。もちろん、あまり汁が飛び散るようなものは、本が汚れても困るから、ダメだけど……」
確かに本も立派な店の設備なのだ。それが汚れてしまうのは頂けない。ペンを動かしながら、エリスの頭もフル回転していた。
●
「……ええと……オートマトン一般に言えること、なんですけど。ワタシたち見た目以上に、意外に体重が重いので……スプリングの頑丈な、ふんわり座り心地のいい、ソファがあったらいいです……」
内装、外装のことを話し出す時、リリィナが手を上げてまずそれを指摘した。
オートマトン自身の意見は非常に参考になる。確かに見た目は細身な彼女ではあるが、パーツなどの都合でほぼ同じ体型の人間などよりもやや重たい。具体的な数字はあげないが、そうなのである。
「なるほどねぇ。確かに、椅子はしっかりしてる方が安心する人は多いかもね。種族に限らず」
ヒースや遥華も何度も頷いてみせる。
「それと……緑。観葉植物やお花があったら、落ち着きます……」
これもまた立派な意見だ。本を読むというのはつまり眼をそれなりに酷使すると言うこと。植物はリラックス効果などもあるし、近くにあれば落ち着くというのは間違いなかろう。遥華もうんうん、と同調した。
「あっ、すみません、言うばっかりでごめんなさい……」
リリィナはそう頭を下げるが、だれもそれを疎んじる者はいない。むしろ彼女の意見は参考になるものも多いからだ。それは多分に、彼女がまだこの世界にきて間もないオートマトンであるという事実にもあるのだろうが、それでもしっかりした意見を持って発言できるのは良いことなのだから。
「あと、そうですね。さっきのヒヨスちゃんの意見に更に添えると、POPを置いたりするのもいいかも。もちろん、この店の雰囲気に合わせてね」
POPというのは、いわゆる宣伝の為の立て札のようなもの。今の一推しや流行り、そんなものを短いキャッチコピーとあらすじを書いてその本の近くに置いておけば、興味を抱くものも少なからずいるだろう、という考えなのだ。
「それこそ月替わりとかでテーマを決めて、それにちなんだ本を並べたり……お客さん側がおすすめしたくなったような本を書き込んでもらえるメッセージカードを添えておいて、それをボードに貼ってもらうとか。興味を持って貰うのって大事だと思うから」
「あ、それなら!」
遥華の意見に、ヒヨスが更に同調する。
「壁に寄せ書きをできるコーナーも、設けるのはどうでしょう? みんなに思い思いのメッセージを書いてもらって、壁の飾り付けにもなると思うんですっ! そう言うの、ヒヨは楽しそうに思えます! 文字が苦手でも、絵が描けますし!」
異文化交流――そこに重きを置くのなら、ヒヨスの言うこともたしかに面白い。様々な出自、種族、人それぞれの事情。そんなものを抱えた人は多いのだから、それらも尊重していきたい。文字だって多種多様で、それが交流の切っ掛けになるのなら、それはとても良いことではないだろうか。
「そういう意味なら、来店者の希望者を写真に撮って、アルバムにするのもいいかもしれないねぇ。遠くはなれた地や異世界からここへ来て、ここで一時を過ごした証になるかとおもってねぇ」
ヒースもにやっと笑う。
「あと、外装に関してはリゼリオ風のシンプルなものでいいんじゃないかなぁ」
この店独自のスタイルを貫く方が良いのではないか、という。架け橋になりたいのなら、そかに染まらない継子を保つのは大事だろうと。
確かに、わざわざ外装を変える必要はないのかも知れない。このリゼリオにあるという証なのだから。それよりも料理や店内のサービスで勝負するのが、正しいあり方だろうとエリスも感じた。
●
「みんな、すごく為になったわ。ありがとう」
お礼とばかりにパンケーキを振る舞いながら、エリスは頭を下げる。いやいや、とハンターたちは首を横に振った。
「みんなが楽しめるブックカフェになるお手伝いなんだから、気にしなくていいんですよ?」
遥華がそう言って微笑みかけると、他の三人もこっくりと頷いた。
「そうそう、持ちつ持たれつって奴だよねぇ」
ヒースも頷いてみせる。
きっと、みんなのアイデアは少しずつでも活かされていく。
たくさんの人たちを笑顔で出迎えたいという、エリスの想いがある限り――。
ブックカフェ「シエル」。ハンターも出入りのあるこの店が、改装を考えているのだと言う話はハンターオフィスから伝わったのだろう、その日は何人かのハンターたちが訪れていた。
「この店に来るのも久しぶりだねぇ」
カラン、と扉を開けて入ってきたのはヒース・R・ウォーカー(ka0145)。その時は確か、雨の日向けのメニューを考えて欲しいという依頼だったはずだ。彼に連れられるようにしてやってきた幼さの残る少女、ヒヨス・アマミヤ(ka1403)もきょろきょろと少し懐かしげに店のなかを見回している。あのときもヒースとヒヨスは一緒に提案したっけ、ヒースはそんなことを思うと縁というものを何とはなしに感じずにはいられなかった。
店のカウンターには、一休みをしていたらしいオーナー、エリスがいて、ドアを開けて入ってきたヒースとヒヨスの顔を見ると、安堵したような笑みを浮かべた。
「いらっしゃい、二人はお久しぶりね。今日は来てくれてありがとう。あと二人かな、オフィスの話では来るはずだから……とりあえず、さきに飲み物を準備しておこうかな」
立ち上がると、エリスは慣れた手つきでドリンクを作り出す。得意のカプチーノではなく、暑い季節にぴったりなハニーレモン――もちろん彼女が手ずから漬けたものだ。
「炭酸がいい人は言ってね、サワーにもできるから」
エリスはにっこりと微笑んでみせる。希釈をするタイプだから、その辺の融通も効くのだ。
「もう夏だし、こういう飲み物の方がいいでしょう? もっとも、これだけでは売りというわけにはいかないから、皆の力を借りたいと思ったの」
なるほど。本人も意欲満々なのがうかがえる。
「うん、楽しんでくれる人たちがもっともっと増えますように! ひいが楽しくお手伝いをさせて頂いている場所ですから、みんなにも楽しんで頂きたいです!」
ヒヨスも嬉しそうに頷いてみせる。
と、その時、またドアが開いて、ふたりの女性が顔を見せた。
金髪に緑の瞳、優しそうな顔立ちをした央崎 遥華(ka5644)と、それから――
「こんにちは……って、挨拶するんですよね?」
白銀の髪を耳の下あたりでツインテールにしている、どこか儚げな、兎を思わせるような雰囲気の女性――リリィナ フォール(ka6919)。
機械的な特徴がちらりと垣間見える彼女は、最近増えてきたオートマトンと呼ばれる種族だ。
「いらっしゃい、きてくれて嬉しいわ。私がここのマスター、エリスです。今回はよろしくね」
「いえ、本、好きなのです……これからも利用できたらいいな、と思って……だから、参考になるでしょうか……」
リリィナの問うような声に、エリスはにっこり笑ってみせる。
「今回はとくに、ハンター登録のはじまったドラグーンやオートマトンと言った、新しいタイプの顧客を受け入れやすくする為の改装アイデアだから。むしろ、大歓迎よ」
そう言って、エリスは嬉しそうに頷いた。
「私も本好きで、まさに私の休日の過ごし方にそっくりなんですよ、この店のコンセプト。だから飛びつかずにはいられなかったんだ、より素敵なお店になるような手伝いを頑張るぞ、おー!」
遥華はそう言ってこぶしを天に突き上げる。そんな様子を眺めて、先に来ていたヒヨスとヒースも楽しそうに笑顔を浮かべた。
●
まず、決めるべきことをおさらいしよう。
その一、書籍のラインナップ。
以前に比べてもリアルブルー関連の書籍が入手しやすくなった今、本の入替なども考えてもいいタイミングではあるかも知れない。
その二、メニューの改善など。
ブックカフェという名目上、本を片手に手軽に摂ることのできる料理がほとんどだ。逆に言うと、定番ばかりになってしまっている。目玉商品の一つや二つはあるのが好ましいだろう。
そしてその三、外装や内装そのもの。
リゼリオにオープンして早数年、これまでは内装を大きく変更することもなかったっため、こちらも言ってみれば少し変更する必要があるかも知れない。とくに、ドラグーンやオートマトンと言った面々が心地よく過ごせるように手を加えるのは大事だろう。
他にもサービスなどの面において、アイデアをどんどん出して貰えれば、よりよい店作りができるに違いないのだ。
●
最初に口を開いたのは、ヒースだった。
「ドラグーンには通貨概念がなかったらしいし、オートマトンはまだまだこの世界の事情に疎い。だから、この二種族に限った話じゃないんだけどさぁ、他種族向けにメニューや用語解説があったらいいんじゃないかなぁって」
「そうか、そこからまず作らないとわからない人もいるってことですよね!」
ヒヨスがその言葉に同調すると、ヒースは小さく頷いた。
「言葉の壁、文化の壁、種族の壁。これらの壁を壊すのに必要なのはお互いの知識と理解。相互理解って奴。口で説明するのもいいけど、口下手な奴も少なくはないからねぇ。その点ここはブックカフェだし、本という形で理解できるようにするのもいいんじゃないかなぁ」
「なるほど……確かに、私も、そう言うガイドがあれば随分助かります」
異種族当事者であるリリィナも、こっくりと頷く。
「あとね、ヒヨは思うんだけど、種族ごとの伝説とか昔話とか、仕入れることができますか?」
「うーん、どうかな。そう言うのを調べるのが好きな人を探してみるけれど」
ヒヨスはその言葉に、嬉しそうに顔をほころばせた。
「もしできたら、そう言うのがあるといいと思ったんですっ。みんなの文化や物語を共有できたら、きっと素敵だと思いますよっ!」
なるほど、これも相互理解の為の一手段。
「知り合いの学校の先生とかに聞いてみるわ。ここの常連さんにも、物書きさん、時々混じってるし」
エリスも笑顔を浮かべた。
「あと、ここの利用者……ちょっと利用したいだけの人、ゆっくりしたい人、いろいろだと思うのです。だから、今の品揃えを見ている限り……あえて増やす必要があるのは、さっき言っていたもの程度かな。だけど、話題作や最新作は、目につきやすい棚に並べておいたりすると、手に取りやすいの。あと、今なにが受けているかとかは……お客様からの情報も大事……」
ふむふむ、納得のできる話である。
「だから、少しお話しができるコミュニケーションスペースが、あったりするといいかな……」
リリィナの言葉は訥々としているが、逆に判りやすい。
「あ、それなら! ヒヨはお客様にアンケートとったらいいと思うんです! もともとメニューのスペシャルを決めたりするのにいいかなって思ったけど、どんな本が読みたいかも聞いてみたりすれば、一石二鳥なんですよ!」
おお。アイディアが上手い具合に融合された。
それならば、次はメニューの話も織り交ぜていこう。
●
「さっきも言ったけど、月一回くらいのアンケートで、希望によってスペシャルを決める形とか、いかがでしょうか? ヒヨは、みんながどんなのを食べたいか、知りたいですっ」
確かに、季節の鰺や好みなどは、抑えておきたいところだ。
「ヒースさん、こんなのどうですか?」
ヒヨスに問われて、ヒースはぽん、と彼女の頭を優しく叩いた。
「うんうん、実にお前らしい提案だねぇ。ボクも嫌いじゃないよ、そう言うの。あとは、多文化の類似料理を合体させてオリジナルレシピを作るのもいいかもしれないねぇ」
リアルブルーでカレーやスシと言ったものが、各国で独自の進化を遂げていったように。
「故郷の味に近ければ馴染みやすいだろうし、同時に新しい鰺を経験できるのも面白いかなとおもってねぇ」
「ふむふむ」
エリスも興味深げにメモを取っていく。
遥華も、自分の経験を参考にアイデアを出していく。
「読書の時にコーヒーや紅茶を飲むのなら、そう言う飲み物にあった食べものがいいと思います。あと、ナイフやフォークをつかって食べるようなモノより、本が汚れたり、食べかすがはいったり……そう言うことのないようなものを優先にかな。あまりぽろぽろと零しにくいものや、ソースやジャムをたっぷり使うようなことのないものがいいですよね……たとえばワッフルや、フレンチトースト、ホットドッグとか……」
それと、と悪戯っぽい笑みを浮かべて、
「日替わりのケーキとかもあったらいいなぁ。同盟は農業も有名だから、材料の仕入れも便利そうだし」
遥華がそう言うと、甘いものが好きな女性陣がくすくすと笑う。確かにケーキセットは魅力的だろう。
「飲み物にも一工夫して、冷たい紅茶に果物の風味をつけたクラッシュゼリーを入れたような、小腹もちょっと満足するドリンクがあったらいいな……応用で、色を派手めにして、近未来リアルブルー風ドリンク、とか」
リリィナも、意外と勉強しているようである。
「あとは、暑い季節に向けて涼しげな麺類メニュー……ひやしらーめん、や、つめたいぱすた、とか。もちろん、あまり汁が飛び散るようなものは、本が汚れても困るから、ダメだけど……」
確かに本も立派な店の設備なのだ。それが汚れてしまうのは頂けない。ペンを動かしながら、エリスの頭もフル回転していた。
●
「……ええと……オートマトン一般に言えること、なんですけど。ワタシたち見た目以上に、意外に体重が重いので……スプリングの頑丈な、ふんわり座り心地のいい、ソファがあったらいいです……」
内装、外装のことを話し出す時、リリィナが手を上げてまずそれを指摘した。
オートマトン自身の意見は非常に参考になる。確かに見た目は細身な彼女ではあるが、パーツなどの都合でほぼ同じ体型の人間などよりもやや重たい。具体的な数字はあげないが、そうなのである。
「なるほどねぇ。確かに、椅子はしっかりしてる方が安心する人は多いかもね。種族に限らず」
ヒースや遥華も何度も頷いてみせる。
「それと……緑。観葉植物やお花があったら、落ち着きます……」
これもまた立派な意見だ。本を読むというのはつまり眼をそれなりに酷使すると言うこと。植物はリラックス効果などもあるし、近くにあれば落ち着くというのは間違いなかろう。遥華もうんうん、と同調した。
「あっ、すみません、言うばっかりでごめんなさい……」
リリィナはそう頭を下げるが、だれもそれを疎んじる者はいない。むしろ彼女の意見は参考になるものも多いからだ。それは多分に、彼女がまだこの世界にきて間もないオートマトンであるという事実にもあるのだろうが、それでもしっかりした意見を持って発言できるのは良いことなのだから。
「あと、そうですね。さっきのヒヨスちゃんの意見に更に添えると、POPを置いたりするのもいいかも。もちろん、この店の雰囲気に合わせてね」
POPというのは、いわゆる宣伝の為の立て札のようなもの。今の一推しや流行り、そんなものを短いキャッチコピーとあらすじを書いてその本の近くに置いておけば、興味を抱くものも少なからずいるだろう、という考えなのだ。
「それこそ月替わりとかでテーマを決めて、それにちなんだ本を並べたり……お客さん側がおすすめしたくなったような本を書き込んでもらえるメッセージカードを添えておいて、それをボードに貼ってもらうとか。興味を持って貰うのって大事だと思うから」
「あ、それなら!」
遥華の意見に、ヒヨスが更に同調する。
「壁に寄せ書きをできるコーナーも、設けるのはどうでしょう? みんなに思い思いのメッセージを書いてもらって、壁の飾り付けにもなると思うんですっ! そう言うの、ヒヨは楽しそうに思えます! 文字が苦手でも、絵が描けますし!」
異文化交流――そこに重きを置くのなら、ヒヨスの言うこともたしかに面白い。様々な出自、種族、人それぞれの事情。そんなものを抱えた人は多いのだから、それらも尊重していきたい。文字だって多種多様で、それが交流の切っ掛けになるのなら、それはとても良いことではないだろうか。
「そういう意味なら、来店者の希望者を写真に撮って、アルバムにするのもいいかもしれないねぇ。遠くはなれた地や異世界からここへ来て、ここで一時を過ごした証になるかとおもってねぇ」
ヒースもにやっと笑う。
「あと、外装に関してはリゼリオ風のシンプルなものでいいんじゃないかなぁ」
この店独自のスタイルを貫く方が良いのではないか、という。架け橋になりたいのなら、そかに染まらない継子を保つのは大事だろうと。
確かに、わざわざ外装を変える必要はないのかも知れない。このリゼリオにあるという証なのだから。それよりも料理や店内のサービスで勝負するのが、正しいあり方だろうとエリスも感じた。
●
「みんな、すごく為になったわ。ありがとう」
お礼とばかりにパンケーキを振る舞いながら、エリスは頭を下げる。いやいや、とハンターたちは首を横に振った。
「みんなが楽しめるブックカフェになるお手伝いなんだから、気にしなくていいんですよ?」
遥華がそう言って微笑みかけると、他の三人もこっくりと頷いた。
「そうそう、持ちつ持たれつって奴だよねぇ」
ヒースも頷いてみせる。
きっと、みんなのアイデアは少しずつでも活かされていく。
たくさんの人たちを笑顔で出迎えたいという、エリスの想いがある限り――。
依頼結果
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サポート一覧
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依頼相談掲示板 | |||
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相談掲示板 央崎 遥華(ka5644) 人間(リアルブルー)|21才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/03 23:49:10 |