ゲスト
(ka0000)
【初心】竜巻旋風案山子!
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- LV1~LV20
- 参加人数
- 3~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/07 22:00
- 完成日
- 2017/07/19 01:31
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ぞっとした、という。
特に肌寒い日ではなく、むしろ天気の良い、寒気を感じるような天候ではなかった。
それでもとある村の猟師は背筋に血の引くような感覚を覚え周囲に注意を払った。いつもの森の中である。
いや、心当たりが一つだけあった。
森の道のこの場所は、崖下に川があるのだ。もう少し温かくなれば川魚を釣る絶好のポイントにもなる馴染みの河原だ。
あるいは、川の清らかな空気が風に乗りここまで届き肌寒さを感じただけかもしれない。
そこまで思い至った時、のどに渇きを覚えた。
腰の水筒にも水が残っているが、幸いしたまで行けば川がある。
ここにきてそう思ったのも何かの縁、と水汲みに崖の途中まで下りた時だった。
――わんわん、きゃん!
下から犬の鳴き声がする。野犬であろう。
野犬であるなら近寄らぬが吉、と引き返そうとしたのだが、何やら様子がおかしい。戦っているような音も混じっている。
村の者できょう森に入ったのは自分だけだが、と覗いてみると……。
「な……何だ、あれは!」
砂利の河原では、三匹の野犬がきゃんきゃん吠えたてていた。
問題は、野犬が威嚇していた存在だ!
一匹の野犬を八人の人影が取り囲み自ら旋回しつつ輪を縮めていたが……明らかに人間ではなかった!
両手を左右にまっすぐ伸ばし曲げる様子もない姿。
きりきりと回りながら跳ねる一本足は、まさに棒立ち。
そして、くりんと野犬の方を向く顔に描かれた微動だにしない両目に鼻と口。
「か、かかしが……」
そう。
畑を鳥などの被害から守る、案山子以外の何物でもないっ!
「かかしが野犬を襲うておるっ!」
呟いた瞬間、眼下の戦局が動いた!
取り囲んで踊るように回っていた案山子が輪の中心に追い込んだ野犬三匹に一斉襲い掛かったのだ。
旋回しながら、頭から、もしくは足から突っ込んで!
――どしどしどしっ、きゃいん!
強力な旋回突撃攻撃にさらされ、野犬は三匹とも力尽きた。
この時、猟師の男は恐ろしくなり一目散に逃げていた。
この判断は正解で、逃げる背後からばさばさばさっという音が――野犬を襲っていた場所からやって来るにしては妙に早いタイミングだった――迫って来ていたのだ。
「振り向くのも恐ろしかったが、ほかにまだ案山子の仲間が潜んでいたのかもしれない」
猟師、村に無事にたどり着いてそう回想するのだった。
ところ変わって、ハンターオフィスの受付。
「ほへー。でも、なんで案山子なの?」
きっと案山子が歪虚化したものです、と説明した係員に南那初華(kz0135)が聞き返していた。
「その村では鳥獣被害が酷く、案山子づくりに力が入っているらしいんです」
「いやその、畑の案山子が歪虚化するはず、ないでしょ? ……きゃん!」
初華、わりとまっとうなことを聞いたのだが、どうやらこの女性係員は説明の途中で話を遮られた様子。持っていた書類の束で机をぺしっと叩いた。
「静粛に。話は途中です!」
きぱ、と言い切る女性係員。どうやら順を乱されることが嫌いらしい。
「はぁい、ごめんなさい……」
「よろしい。その村の案山子が歪虚化したものですが、初華さんの言う通り、村の畑に立っている状態で歪虚化したわけではないです。先ほど『案山子づくりに力が入っている』と表現したのはそのためです」
「ほへ? 力入れるとどうなるの?」
初華、目を丸めた。
「ちゃんと歴史があります。鳥獣を寄せ付けない工夫は日進月歩で、いつのころからか胸に鉄のフォークやナイフのペンダントをつけるようになりました。これは、風などで揺れてキラキラ光ることで威嚇する効果がありました」
とっくり語りだす女性係員。
話を要約すると、案山子に工夫を加えるなど力が入り始め、やがて胴体の藁の中に、力を籠める意味でナイフを入れたり、駄賃として小銭の入った小袋を吊るすなど、見えない部分にこだわるようになった。このエスカレートにより案山子が誘拐される事件が続発したという。
「今では過去の失敗からそういうのはしなくなったみたいだけど」
「ふうん。歪虚になったのは誘拐されて捨てられた案山子ね」
「そういうこと。村の長老さんなんか子供の時に案山子づくりを手伝って、生え変わって抜けた歯を案山子の中に入れたそうですから」
「で、その話を私にするってことは……」
初華、ついにその質問をぶつけた。
「当然、新人訓練用の依頼にしますから、いつものように初華さんはバックアップをお願いしますね♪」
というわけで、砂利の河原で案山子歪虚十体を退治してくれる人、求ム。
特に肌寒い日ではなく、むしろ天気の良い、寒気を感じるような天候ではなかった。
それでもとある村の猟師は背筋に血の引くような感覚を覚え周囲に注意を払った。いつもの森の中である。
いや、心当たりが一つだけあった。
森の道のこの場所は、崖下に川があるのだ。もう少し温かくなれば川魚を釣る絶好のポイントにもなる馴染みの河原だ。
あるいは、川の清らかな空気が風に乗りここまで届き肌寒さを感じただけかもしれない。
そこまで思い至った時、のどに渇きを覚えた。
腰の水筒にも水が残っているが、幸いしたまで行けば川がある。
ここにきてそう思ったのも何かの縁、と水汲みに崖の途中まで下りた時だった。
――わんわん、きゃん!
下から犬の鳴き声がする。野犬であろう。
野犬であるなら近寄らぬが吉、と引き返そうとしたのだが、何やら様子がおかしい。戦っているような音も混じっている。
村の者できょう森に入ったのは自分だけだが、と覗いてみると……。
「な……何だ、あれは!」
砂利の河原では、三匹の野犬がきゃんきゃん吠えたてていた。
問題は、野犬が威嚇していた存在だ!
一匹の野犬を八人の人影が取り囲み自ら旋回しつつ輪を縮めていたが……明らかに人間ではなかった!
両手を左右にまっすぐ伸ばし曲げる様子もない姿。
きりきりと回りながら跳ねる一本足は、まさに棒立ち。
そして、くりんと野犬の方を向く顔に描かれた微動だにしない両目に鼻と口。
「か、かかしが……」
そう。
畑を鳥などの被害から守る、案山子以外の何物でもないっ!
「かかしが野犬を襲うておるっ!」
呟いた瞬間、眼下の戦局が動いた!
取り囲んで踊るように回っていた案山子が輪の中心に追い込んだ野犬三匹に一斉襲い掛かったのだ。
旋回しながら、頭から、もしくは足から突っ込んで!
――どしどしどしっ、きゃいん!
強力な旋回突撃攻撃にさらされ、野犬は三匹とも力尽きた。
この時、猟師の男は恐ろしくなり一目散に逃げていた。
この判断は正解で、逃げる背後からばさばさばさっという音が――野犬を襲っていた場所からやって来るにしては妙に早いタイミングだった――迫って来ていたのだ。
「振り向くのも恐ろしかったが、ほかにまだ案山子の仲間が潜んでいたのかもしれない」
猟師、村に無事にたどり着いてそう回想するのだった。
ところ変わって、ハンターオフィスの受付。
「ほへー。でも、なんで案山子なの?」
きっと案山子が歪虚化したものです、と説明した係員に南那初華(kz0135)が聞き返していた。
「その村では鳥獣被害が酷く、案山子づくりに力が入っているらしいんです」
「いやその、畑の案山子が歪虚化するはず、ないでしょ? ……きゃん!」
初華、わりとまっとうなことを聞いたのだが、どうやらこの女性係員は説明の途中で話を遮られた様子。持っていた書類の束で机をぺしっと叩いた。
「静粛に。話は途中です!」
きぱ、と言い切る女性係員。どうやら順を乱されることが嫌いらしい。
「はぁい、ごめんなさい……」
「よろしい。その村の案山子が歪虚化したものですが、初華さんの言う通り、村の畑に立っている状態で歪虚化したわけではないです。先ほど『案山子づくりに力が入っている』と表現したのはそのためです」
「ほへ? 力入れるとどうなるの?」
初華、目を丸めた。
「ちゃんと歴史があります。鳥獣を寄せ付けない工夫は日進月歩で、いつのころからか胸に鉄のフォークやナイフのペンダントをつけるようになりました。これは、風などで揺れてキラキラ光ることで威嚇する効果がありました」
とっくり語りだす女性係員。
話を要約すると、案山子に工夫を加えるなど力が入り始め、やがて胴体の藁の中に、力を籠める意味でナイフを入れたり、駄賃として小銭の入った小袋を吊るすなど、見えない部分にこだわるようになった。このエスカレートにより案山子が誘拐される事件が続発したという。
「今では過去の失敗からそういうのはしなくなったみたいだけど」
「ふうん。歪虚になったのは誘拐されて捨てられた案山子ね」
「そういうこと。村の長老さんなんか子供の時に案山子づくりを手伝って、生え変わって抜けた歯を案山子の中に入れたそうですから」
「で、その話を私にするってことは……」
初華、ついにその質問をぶつけた。
「当然、新人訓練用の依頼にしますから、いつものように初華さんはバックアップをお願いしますね♪」
というわけで、砂利の河原で案山子歪虚十体を退治してくれる人、求ム。
リプレイ本文
●
「じゃ、制服のお二人さんたちも頑張ってね」
先導していた南那初華(kz0135)がそれだけ言って下がった。
「ひーちゃん……初華さん、行っちゃったね」
ユイ・エーテリウム(ka3102)が初華を見送る。初華の言った通り、どこぞの学校の制服姿だ。
「やっぱり河原のあの襤褸が案山子なんでしょうかね」
ひーちゃん、と呼ばれた金寺・緋色(ka6369)が、木々の間から眼下に見える河原を凝視する。砂利の河原に、ゴミのような塊がある。じっくり見れば人が折り重なっているようにも見える。なお、緋色もユイと同じでどこぞの学校の以下略。
「それにしても、動く案山子って…ちょっとホラーですね……」
緋色、少し不安そう。ユイが隣に立ち「頑張ろうね」と励ます。
その近くに、T-Sein(ka6936)(以下、ザイン)。
「……あれが、敵」
「アイヤー、アレが案山子アルか。中の人も大変ネ」
静かに呟くザイン。その横にいるアルカ・リー(ka0636)は手をひさしにして背伸びしている。
「中に敵?」
「ちょっとアルカさん、案山子に中の人はいないわよ」
ザイン、ぴくりと反応。麗しくセクシーなドレス「アビエルト」を纏ったトリエステ・ウェスタ(ka6908)が一応常識的なことを言っておく。
「でも動くって聞いたアル」
「……動いたら案山子の意味がないわね」
アルカの主張に、離れて立つ浪風吹雪(ka1016)が眼鏡の位置を整えつつぽそり。
「中に死体が入ってたなんて、まさかそんなことあるわけないネ! ない……アルね?」
「えーっ?!」
「むむ? なんか思ってたよりホラー……」
アップで迫るアルカにユイと緋色が身を寄せて小さくなりながら引く。
「案山子にそんなものが入っていたらむしろ死肉にカラスが寄ってくるわね」
それはない、と吹雪がぴしゃり。変わらず涼やか。トリエステは「龍騎士団やってた頃はただの不良団員だったけど、ここもなかなかワイルドな集団ねー」とか感心していたり。
「服を見ても中に死体なんかはないでしょう」
こちらはオリヴィア・ウェールズ(ka6828)の指摘。柔らかな雰囲気のドレス「ナイトミスト」を纏い指差す腕は細い。
「南那さんの手は煩わせないようにしたいですね。ユイさんと緋色さん、行きましょう」
それ以上の議論をさせないオリヴィアの言葉。ユイと緋色、力強く頷く。
「では皆様行きましょう。『殲滅執行』」
ザイン、ずんずん進んで河原に下りる。
この気配に、かさ……と折り重なっていた案山子軍団が身を起こし始めた。
●
案山子、一本足で立った。計八体。ぴょんぴょん跳ねてこちらに迫る!
「囲まれないよう川を背にする作戦でしたね?」
オリヴィア、左斜め前方の敵を見ながら川に向かってまっすぐ走る。
「……報告より少し、少ない」
「後回ししてアトで探せばいいヨ!」
ザインは走りつつ敵の数を素早く確認。続くアルカが遮ったのは、敵が包囲行動に入っているから。急がないと川に達するまでに包囲されてしまう。
「前に回り込む案山子を何とかしましょう」
吹雪、仲間に呼びかけつつ撲殺用ワンド「雷光錫」を掲げてジャッジメント。二手に分かれた敵の内、川へ到達させまいと前に回り込んできた敵一体の動きを一瞬止めた。
「何とかしないと追い込まれちゃうんだね!」
「追い込まれにいってるとも言うかもね?」
それは大変とワンドを振るうユイ。トリエステは銀霊剣「パラケルスス」。光の矢と炎の矢が飛んでいき別々の案山子を狙う。とにかく前に展開させるのを防ぐ。
「後ろに回ろうとする敵は放っておいて……と」
残りの敵を気にしつつ駆け抜けた緋色。
「よしっ!」
ざっ、と川辺に到達し赤いウォーハンマーを構えて振り向く。
敵、扇状に展開しハンターたちを囲っていた。背にした川には案山子はおらず、全周包囲ではない。これで背後を取られる心配はなくなった。
布陣完成、である。
きりっ、と凛々しい顔をしていた緋色だが、すぐに表情が変わった。
「おお?! いきなりです!」
敵、円周運動はせず体を回転させながらいきなり突っ込んできたではないか!
ただ、これは仕方ない。
川を背にする戦法をとった手前、積極的に前に出ていけないから。こちらが動いて結局背後を取られやすくするわけにはいかない。迎撃が基本である。
これを見た吹雪。
「どうせ動くなら農作物を守りなさいよ!」
真っ先に動く。今度は本気だ。
光の杭を打ち込み断罪して、さらに影が固まったかのような黒い塊を叩きこむ。回転して突撃して来た一体の案山子はびくっと硬直したところに影の塊を食らい後退する。
「ザインさん、アルカさん、お願いするわね」
トリエステは剣を魔術具にして名を呼んだ二人に何かした!
ザインとアルカ、そのトリエステの両脇を抜けて駆け上がる。
そして回転して勢いを増した敵の腕をザインはガントレット「グローリア」で、アルカはシールド「アトモスフィア」でがっちり受けた!
「なかなかの威力」
初依頼のザイン、敵の渾身の攻撃の手ごたえに……心躍っていた。
そして敵の初手をがっちり止めるとその反動で反対の手が攻撃してくることも心に火をつける!
「しかし、止まるとよい的になるでしょうか」
二撃目を食らった後、レガース「アダーラ」の右足を上げる。トリエステのファイヤエンチャントで炎を纏っている。そのまま上半身をひねり、敵の脇下あたりにぶち込んだ!
「トリエステ、シェイシェイ!」
アルカは炎を纏ったダガー「コルタール」を切り上げていた。回転を止めた敵をずぱっと斬り、中の藁が宙に舞う。案山子、思わず後退。
「かかってくるネ! わたしが相手してあげるヨ!」
びしっ、とダガーを構え啖呵を切る。
敵は怯みもせずに再び打ちかかって来るが今度は盾で受けずに右をすり抜け斬る。これならもう二撃目は食らわない。円運動を基本にかわしつつ斬るという戦いを繰り広げる。
場面は緋色に戻る。
「おお?! いきなりです!」
回転しながら案山子が迫る。
「ひーちゃん!」
「むむ、これなら渾身撃いりません!」
呼んだユイのファイアエンチャントで赤いウォーハンマーが燃えてぶうんと真横に円弧を描く。
瞬間、現場に来るまで聞きこんでいた村人の言葉がよみがえる。
「まさか野盗のようなことをするようになっておるとは……」
畑を守るのが本当であろうに、と沈痛そうな表情だった。
敵、回転し二つの腕で殴ろうと接近している。
「回転数では負けるかもですがこっちはユイさんと一緒。これで目を覚まして畑に帰るです!」
案山子の回転と緋色の強打が激突!
――がしいっ!
「ひーちゃん、やった! ……あっ!」
案山子の片腕が折れて舞い、勢い余った緋色が転倒した。
ほかの敵はこれに気付き数体寄って来た!
「あいたた……」
「ボクが守ってあげる」
尻餅をついた緋色の前にワンドを構え立つユイ。言葉の響きは柔らかいが瞳に覚悟の色が宿る。新手、迫る!
――がしっ……。
「ユイさん、緋色さん、砂利だから足元は特に気を付けてね」
オリヴィア、横からの敵を漆黒の太刀で止めた。
その刀身に雷のような光の線が浮かび青い目を細めると、左手に持つ赤熱する短めの光の刀身を振るい斬りつけながらいなす。円の動きで敵の動きに完璧に対応した。
「オリヴィアさん! ……うわ、危ないなぁ! えーい!」
ユイ、別方向からの敵をかわしつつマジックアロー。
「んん? 一本足を狙えば、動きが鈍くなるかな?」
尻餅をついていた緋色はその体勢を生かし低い位置でハンマーぶん回し。ばきっと足を粉砕するが特にそうでもないようで。
ちなみに、実は緋色もユイもオリヴィアも、敵の一撃目は対応したものの二撃目を軽く食らっていた。
「片手を打てばその反動でもう一方の手が出てくる藁人形……これは修行の一環として斬れ…そういう事ですね?」
オリヴィア、敵の高速反撃を知り態度を改めた。
そういう戦いで負けるわけにはいかないとの思いもある。
先にいなした敵が再び迫って来た。
「鋭さと手数で勝負のオリヴィア流二刀剣術……遠慮なく斬らせて頂きます」
「オリヴィアさん!」
オリヴィアのドレス、舞う。ユイのエンチャントで漆黒の太刀に炎が現れる。敵の回転打撃、これで激しく受ける。
そして反対の腕が激しく打ちかかって来るのだが……。
「受けと同時に斬る!」
再びドレス、舞う。
敵に負けないくらい激しく早く振り向きつつ、一瞬早く叩きつけて来る腕を叩き斬った!
「ユイさん、敵の数を減らそう」
「そうだね」
緋色とユイはこれまでダメージを与えた敵の追撃に移る。
●
こちら、ザイン。
「全力で殴る」
敵の腕をかいくぐり、腰を軽く落としてからの螺旋突。胴体に綺麗に入り、きりもみしながらザインの頭を越えて背後に落ちた。
「……理解。敵、派手に吹っ飛んで威力を逃がしてる」
この攻防で暖簾に腕押しな感じを察知した。さらに浮いているので威力が逃げやすい。敵がなかなか倒れない理由である。
「……こっちもわかたアル。別に火を見てひるむってことはないアルね」
アルカの方は戦闘中、着火の指輪に火を点けこれ見よがしに掲げたようだ。歪虚化しているので藁に火がつくことはないにしても、素材から苦手意識はあるはずと見たようだ。属性違いを確認したとしてもひるむまではいかないようで。
「そういうことね」
吹雪の声は、二人とは違うことを発見したから。
「円周包囲ではないから敵は一撃離脱ができない」
つまり、敵は突撃して離脱しようにも川があり再び距離が取れない。ザインとアルカは非常に戦いやすいが、吹雪やトリエステにとっては都合が悪くなる。
悪くなるのだが……。
――ばしゅっ!
吹雪、襲い掛かる案山子の服を切り裂いた。
振るった左手には籠手状だった鉤爪「タマウジャート」。隠れていた爪をしゃきんと出しこれで攻撃したのだ。完全に不意打ちとなった。
「能ある鷹はなんとかって奴……実はこっちの方が得意なのよね!」
続けて近距離で戦う、戦う。
一方、トリエステ。
「魔術具にもなる剣で良かったわ」
水際で接近戦の最中。パリィグローブで受け、銀霊剣「パラケルスス」で切り付け。高速反撃して離脱すれば剣を媒介に炎の矢を打ち込む。川の水を跳ね上げるがドレスの撥水性は高い。ひらめく裾にキラキラ陽光を跳ね水玉が弾ける。
「もちろん、奥の手もあるけど……」
ここでザインが崖の林側の異変に気付いた。
「ん……新手、来た」
林に潜んでいた案山子二体が出てきたのだ。
「おかわりアル!」
敵を浮かせるようにナイフを突き刺し止めを刺していたアルカ、この言葉に腰を落としたまま振り向く。すぐに向かっていきそうなのは我慢し、動きを止めた案山子を河原に放り投げわざと隙を作っておく。
「きゃっ!」
この時、トリエステの短い悲鳴。
何と、服が破れ藁も散らしていた敵がフォークを飛ばしてきたのだ。
ただ、悲鳴はこれを食らった声ではない。
「……本当にパラケルススで良かったわ」
何と、銀霊剣を鞭状に切り替えしならせ波打たせていたためすぐに反応、叩き落とすことに成功していた。
「本当に藁人形で修行しているような気分になってきました」
オリヴィアも独自二剣流の動きで飛んで来たフォークを叩き落としている。
「そうか。敵は森に隠れていてもボクたちは川辺に張り付いていたからとっても遠くなってるんだね」
新手を見たユイ、自分たちの位置取りが包囲対策だけではなく援軍奇襲攻撃の備えにもなっていたことに気付く。
「わわ、この作戦にそんな意味もあったんですね」
緋色、すごいです、と最初に片手を吹っ飛ばしていた敵にどしんと止め。
この展開にも十分余裕を持って対処していくのだった。
●
そして。
「…またつまらぬ物を斬ってしまった……」
「えーい!」
片膝をついて敵を切り、太刀を収めつつ立ち上がるオリヴィア。背後では緋色が念のためハンマーどーん。
「ザイン、やるアル!」
「……『執行、完了』」
ひらっとマルチステップでかわしたアルカに、そのスペースに突っ込み敵に逃げられないよう、河原に叩きつけるように螺旋突を放ったザイン。
これでもう、動いている敵はなくなった。
「ふぅ、何とか倒せたねぇお疲れ様ですー」
「それでは回復しましょう。あなた、無茶したわね?」
くたっ、と腰から砕けてその場に座り込むユイ。早速吹雪が近寄る。「だってひーちゃんを……」とかヒールを受けつつ友人を探すユイ。
「案山子、ボロボロになった……」
緋色は、倒した案山子を確認。倒した直後、経年劣化した姿に戻っていた。形がなくなり風で跡形もなく崩れたという感じだ。
「少し広いし……風に乗りそうね」
その横をトリエステが通り過ぎ、川辺に腰をかがめ水を手ですくう。
口に含んでのどを潤し立ち上がると、顎を上げ瞳を伏せ腹の底から声を出すのだ。
「♪~♪♪~♪……」
歌声が風に乗る。
自由に舞う風に、龍園から出て来たわが身を重ねるように。
「いい歌声あるな」
ほかに危険はないか崖の林を見回っていたアルカにも歌声は届いた。
そして再び河原。
「つまらぬものかは知らぬが、こういうのをよく斬るのか?」
「き、聞こえたのか?」
実戦慣れしているのか興味のあったザインに聞かれ、オリヴィアは独り言を聞かれた恥ずかしさにわたわた。
「そ、そういうキャラがいるとか……言いたかったんです、言ってみたかったんです……」
「……?」
逃げるようにぽそぽそ言うオリヴィアに無言のザイン。顔は無表情のままではあるが。
「どう、何か出てきた?」
ここで初華がやって来る。
「初華さん、これ……」
緋色、案山子の中から出て来た小袋を見せた。
「いらないかもですけど、せっかくですから……」
緋色、村に戻って小袋を返した。
「おお! しぶとく抜けた歯は生きとったか。ワシの歯もおかげで今も健在じゃ」
長老が中にあった歯を取り出しニコニコして感謝したという。
なお、ほかに中から出てきたものはない。
護身用のナイフや金はないので、やはりそれが目当てで案山子は盗難され山中に放棄。その後、長い年月をかけて歪虚化したのだろう。
●おまけ
「この称号、どういうことアルか?」
「隠しておきたいのですが」
アルカと吹雪が初華に詰め寄っている。
「ああん、私がそう呼んだだけだから~っ」
必要なら隠して、と初華。
「むむ?!」
「ボクたちはいい感じだよねぇ?」
緋色とユイはきゃいきゃい♪
「私? 別にいいわよ」
「私は歓迎だけどザインさん、『殲滅執行』って……」
トリエステは色っぽく髪を手櫛で流す。オリヴィエはザインを気にするが……。
「初華様が言うなら、別にいいでしょう」
「な、なぜに尊大!」
偉そうに言うザインに、初華はががん!
もちろん、ザインは偉そうに言ったつもりは全くない。
「じゃ、制服のお二人さんたちも頑張ってね」
先導していた南那初華(kz0135)がそれだけ言って下がった。
「ひーちゃん……初華さん、行っちゃったね」
ユイ・エーテリウム(ka3102)が初華を見送る。初華の言った通り、どこぞの学校の制服姿だ。
「やっぱり河原のあの襤褸が案山子なんでしょうかね」
ひーちゃん、と呼ばれた金寺・緋色(ka6369)が、木々の間から眼下に見える河原を凝視する。砂利の河原に、ゴミのような塊がある。じっくり見れば人が折り重なっているようにも見える。なお、緋色もユイと同じでどこぞの学校の以下略。
「それにしても、動く案山子って…ちょっとホラーですね……」
緋色、少し不安そう。ユイが隣に立ち「頑張ろうね」と励ます。
その近くに、T-Sein(ka6936)(以下、ザイン)。
「……あれが、敵」
「アイヤー、アレが案山子アルか。中の人も大変ネ」
静かに呟くザイン。その横にいるアルカ・リー(ka0636)は手をひさしにして背伸びしている。
「中に敵?」
「ちょっとアルカさん、案山子に中の人はいないわよ」
ザイン、ぴくりと反応。麗しくセクシーなドレス「アビエルト」を纏ったトリエステ・ウェスタ(ka6908)が一応常識的なことを言っておく。
「でも動くって聞いたアル」
「……動いたら案山子の意味がないわね」
アルカの主張に、離れて立つ浪風吹雪(ka1016)が眼鏡の位置を整えつつぽそり。
「中に死体が入ってたなんて、まさかそんなことあるわけないネ! ない……アルね?」
「えーっ?!」
「むむ? なんか思ってたよりホラー……」
アップで迫るアルカにユイと緋色が身を寄せて小さくなりながら引く。
「案山子にそんなものが入っていたらむしろ死肉にカラスが寄ってくるわね」
それはない、と吹雪がぴしゃり。変わらず涼やか。トリエステは「龍騎士団やってた頃はただの不良団員だったけど、ここもなかなかワイルドな集団ねー」とか感心していたり。
「服を見ても中に死体なんかはないでしょう」
こちらはオリヴィア・ウェールズ(ka6828)の指摘。柔らかな雰囲気のドレス「ナイトミスト」を纏い指差す腕は細い。
「南那さんの手は煩わせないようにしたいですね。ユイさんと緋色さん、行きましょう」
それ以上の議論をさせないオリヴィアの言葉。ユイと緋色、力強く頷く。
「では皆様行きましょう。『殲滅執行』」
ザイン、ずんずん進んで河原に下りる。
この気配に、かさ……と折り重なっていた案山子軍団が身を起こし始めた。
●
案山子、一本足で立った。計八体。ぴょんぴょん跳ねてこちらに迫る!
「囲まれないよう川を背にする作戦でしたね?」
オリヴィア、左斜め前方の敵を見ながら川に向かってまっすぐ走る。
「……報告より少し、少ない」
「後回ししてアトで探せばいいヨ!」
ザインは走りつつ敵の数を素早く確認。続くアルカが遮ったのは、敵が包囲行動に入っているから。急がないと川に達するまでに包囲されてしまう。
「前に回り込む案山子を何とかしましょう」
吹雪、仲間に呼びかけつつ撲殺用ワンド「雷光錫」を掲げてジャッジメント。二手に分かれた敵の内、川へ到達させまいと前に回り込んできた敵一体の動きを一瞬止めた。
「何とかしないと追い込まれちゃうんだね!」
「追い込まれにいってるとも言うかもね?」
それは大変とワンドを振るうユイ。トリエステは銀霊剣「パラケルスス」。光の矢と炎の矢が飛んでいき別々の案山子を狙う。とにかく前に展開させるのを防ぐ。
「後ろに回ろうとする敵は放っておいて……と」
残りの敵を気にしつつ駆け抜けた緋色。
「よしっ!」
ざっ、と川辺に到達し赤いウォーハンマーを構えて振り向く。
敵、扇状に展開しハンターたちを囲っていた。背にした川には案山子はおらず、全周包囲ではない。これで背後を取られる心配はなくなった。
布陣完成、である。
きりっ、と凛々しい顔をしていた緋色だが、すぐに表情が変わった。
「おお?! いきなりです!」
敵、円周運動はせず体を回転させながらいきなり突っ込んできたではないか!
ただ、これは仕方ない。
川を背にする戦法をとった手前、積極的に前に出ていけないから。こちらが動いて結局背後を取られやすくするわけにはいかない。迎撃が基本である。
これを見た吹雪。
「どうせ動くなら農作物を守りなさいよ!」
真っ先に動く。今度は本気だ。
光の杭を打ち込み断罪して、さらに影が固まったかのような黒い塊を叩きこむ。回転して突撃して来た一体の案山子はびくっと硬直したところに影の塊を食らい後退する。
「ザインさん、アルカさん、お願いするわね」
トリエステは剣を魔術具にして名を呼んだ二人に何かした!
ザインとアルカ、そのトリエステの両脇を抜けて駆け上がる。
そして回転して勢いを増した敵の腕をザインはガントレット「グローリア」で、アルカはシールド「アトモスフィア」でがっちり受けた!
「なかなかの威力」
初依頼のザイン、敵の渾身の攻撃の手ごたえに……心躍っていた。
そして敵の初手をがっちり止めるとその反動で反対の手が攻撃してくることも心に火をつける!
「しかし、止まるとよい的になるでしょうか」
二撃目を食らった後、レガース「アダーラ」の右足を上げる。トリエステのファイヤエンチャントで炎を纏っている。そのまま上半身をひねり、敵の脇下あたりにぶち込んだ!
「トリエステ、シェイシェイ!」
アルカは炎を纏ったダガー「コルタール」を切り上げていた。回転を止めた敵をずぱっと斬り、中の藁が宙に舞う。案山子、思わず後退。
「かかってくるネ! わたしが相手してあげるヨ!」
びしっ、とダガーを構え啖呵を切る。
敵は怯みもせずに再び打ちかかって来るが今度は盾で受けずに右をすり抜け斬る。これならもう二撃目は食らわない。円運動を基本にかわしつつ斬るという戦いを繰り広げる。
場面は緋色に戻る。
「おお?! いきなりです!」
回転しながら案山子が迫る。
「ひーちゃん!」
「むむ、これなら渾身撃いりません!」
呼んだユイのファイアエンチャントで赤いウォーハンマーが燃えてぶうんと真横に円弧を描く。
瞬間、現場に来るまで聞きこんでいた村人の言葉がよみがえる。
「まさか野盗のようなことをするようになっておるとは……」
畑を守るのが本当であろうに、と沈痛そうな表情だった。
敵、回転し二つの腕で殴ろうと接近している。
「回転数では負けるかもですがこっちはユイさんと一緒。これで目を覚まして畑に帰るです!」
案山子の回転と緋色の強打が激突!
――がしいっ!
「ひーちゃん、やった! ……あっ!」
案山子の片腕が折れて舞い、勢い余った緋色が転倒した。
ほかの敵はこれに気付き数体寄って来た!
「あいたた……」
「ボクが守ってあげる」
尻餅をついた緋色の前にワンドを構え立つユイ。言葉の響きは柔らかいが瞳に覚悟の色が宿る。新手、迫る!
――がしっ……。
「ユイさん、緋色さん、砂利だから足元は特に気を付けてね」
オリヴィア、横からの敵を漆黒の太刀で止めた。
その刀身に雷のような光の線が浮かび青い目を細めると、左手に持つ赤熱する短めの光の刀身を振るい斬りつけながらいなす。円の動きで敵の動きに完璧に対応した。
「オリヴィアさん! ……うわ、危ないなぁ! えーい!」
ユイ、別方向からの敵をかわしつつマジックアロー。
「んん? 一本足を狙えば、動きが鈍くなるかな?」
尻餅をついていた緋色はその体勢を生かし低い位置でハンマーぶん回し。ばきっと足を粉砕するが特にそうでもないようで。
ちなみに、実は緋色もユイもオリヴィアも、敵の一撃目は対応したものの二撃目を軽く食らっていた。
「片手を打てばその反動でもう一方の手が出てくる藁人形……これは修行の一環として斬れ…そういう事ですね?」
オリヴィア、敵の高速反撃を知り態度を改めた。
そういう戦いで負けるわけにはいかないとの思いもある。
先にいなした敵が再び迫って来た。
「鋭さと手数で勝負のオリヴィア流二刀剣術……遠慮なく斬らせて頂きます」
「オリヴィアさん!」
オリヴィアのドレス、舞う。ユイのエンチャントで漆黒の太刀に炎が現れる。敵の回転打撃、これで激しく受ける。
そして反対の腕が激しく打ちかかって来るのだが……。
「受けと同時に斬る!」
再びドレス、舞う。
敵に負けないくらい激しく早く振り向きつつ、一瞬早く叩きつけて来る腕を叩き斬った!
「ユイさん、敵の数を減らそう」
「そうだね」
緋色とユイはこれまでダメージを与えた敵の追撃に移る。
●
こちら、ザイン。
「全力で殴る」
敵の腕をかいくぐり、腰を軽く落としてからの螺旋突。胴体に綺麗に入り、きりもみしながらザインの頭を越えて背後に落ちた。
「……理解。敵、派手に吹っ飛んで威力を逃がしてる」
この攻防で暖簾に腕押しな感じを察知した。さらに浮いているので威力が逃げやすい。敵がなかなか倒れない理由である。
「……こっちもわかたアル。別に火を見てひるむってことはないアルね」
アルカの方は戦闘中、着火の指輪に火を点けこれ見よがしに掲げたようだ。歪虚化しているので藁に火がつくことはないにしても、素材から苦手意識はあるはずと見たようだ。属性違いを確認したとしてもひるむまではいかないようで。
「そういうことね」
吹雪の声は、二人とは違うことを発見したから。
「円周包囲ではないから敵は一撃離脱ができない」
つまり、敵は突撃して離脱しようにも川があり再び距離が取れない。ザインとアルカは非常に戦いやすいが、吹雪やトリエステにとっては都合が悪くなる。
悪くなるのだが……。
――ばしゅっ!
吹雪、襲い掛かる案山子の服を切り裂いた。
振るった左手には籠手状だった鉤爪「タマウジャート」。隠れていた爪をしゃきんと出しこれで攻撃したのだ。完全に不意打ちとなった。
「能ある鷹はなんとかって奴……実はこっちの方が得意なのよね!」
続けて近距離で戦う、戦う。
一方、トリエステ。
「魔術具にもなる剣で良かったわ」
水際で接近戦の最中。パリィグローブで受け、銀霊剣「パラケルスス」で切り付け。高速反撃して離脱すれば剣を媒介に炎の矢を打ち込む。川の水を跳ね上げるがドレスの撥水性は高い。ひらめく裾にキラキラ陽光を跳ね水玉が弾ける。
「もちろん、奥の手もあるけど……」
ここでザインが崖の林側の異変に気付いた。
「ん……新手、来た」
林に潜んでいた案山子二体が出てきたのだ。
「おかわりアル!」
敵を浮かせるようにナイフを突き刺し止めを刺していたアルカ、この言葉に腰を落としたまま振り向く。すぐに向かっていきそうなのは我慢し、動きを止めた案山子を河原に放り投げわざと隙を作っておく。
「きゃっ!」
この時、トリエステの短い悲鳴。
何と、服が破れ藁も散らしていた敵がフォークを飛ばしてきたのだ。
ただ、悲鳴はこれを食らった声ではない。
「……本当にパラケルススで良かったわ」
何と、銀霊剣を鞭状に切り替えしならせ波打たせていたためすぐに反応、叩き落とすことに成功していた。
「本当に藁人形で修行しているような気分になってきました」
オリヴィアも独自二剣流の動きで飛んで来たフォークを叩き落としている。
「そうか。敵は森に隠れていてもボクたちは川辺に張り付いていたからとっても遠くなってるんだね」
新手を見たユイ、自分たちの位置取りが包囲対策だけではなく援軍奇襲攻撃の備えにもなっていたことに気付く。
「わわ、この作戦にそんな意味もあったんですね」
緋色、すごいです、と最初に片手を吹っ飛ばしていた敵にどしんと止め。
この展開にも十分余裕を持って対処していくのだった。
●
そして。
「…またつまらぬ物を斬ってしまった……」
「えーい!」
片膝をついて敵を切り、太刀を収めつつ立ち上がるオリヴィア。背後では緋色が念のためハンマーどーん。
「ザイン、やるアル!」
「……『執行、完了』」
ひらっとマルチステップでかわしたアルカに、そのスペースに突っ込み敵に逃げられないよう、河原に叩きつけるように螺旋突を放ったザイン。
これでもう、動いている敵はなくなった。
「ふぅ、何とか倒せたねぇお疲れ様ですー」
「それでは回復しましょう。あなた、無茶したわね?」
くたっ、と腰から砕けてその場に座り込むユイ。早速吹雪が近寄る。「だってひーちゃんを……」とかヒールを受けつつ友人を探すユイ。
「案山子、ボロボロになった……」
緋色は、倒した案山子を確認。倒した直後、経年劣化した姿に戻っていた。形がなくなり風で跡形もなく崩れたという感じだ。
「少し広いし……風に乗りそうね」
その横をトリエステが通り過ぎ、川辺に腰をかがめ水を手ですくう。
口に含んでのどを潤し立ち上がると、顎を上げ瞳を伏せ腹の底から声を出すのだ。
「♪~♪♪~♪……」
歌声が風に乗る。
自由に舞う風に、龍園から出て来たわが身を重ねるように。
「いい歌声あるな」
ほかに危険はないか崖の林を見回っていたアルカにも歌声は届いた。
そして再び河原。
「つまらぬものかは知らぬが、こういうのをよく斬るのか?」
「き、聞こえたのか?」
実戦慣れしているのか興味のあったザインに聞かれ、オリヴィアは独り言を聞かれた恥ずかしさにわたわた。
「そ、そういうキャラがいるとか……言いたかったんです、言ってみたかったんです……」
「……?」
逃げるようにぽそぽそ言うオリヴィアに無言のザイン。顔は無表情のままではあるが。
「どう、何か出てきた?」
ここで初華がやって来る。
「初華さん、これ……」
緋色、案山子の中から出て来た小袋を見せた。
「いらないかもですけど、せっかくですから……」
緋色、村に戻って小袋を返した。
「おお! しぶとく抜けた歯は生きとったか。ワシの歯もおかげで今も健在じゃ」
長老が中にあった歯を取り出しニコニコして感謝したという。
なお、ほかに中から出てきたものはない。
護身用のナイフや金はないので、やはりそれが目当てで案山子は盗難され山中に放棄。その後、長い年月をかけて歪虚化したのだろう。
●おまけ
「この称号、どういうことアルか?」
「隠しておきたいのですが」
アルカと吹雪が初華に詰め寄っている。
「ああん、私がそう呼んだだけだから~っ」
必要なら隠して、と初華。
「むむ?!」
「ボクたちはいい感じだよねぇ?」
緋色とユイはきゃいきゃい♪
「私? 別にいいわよ」
「私は歓迎だけどザインさん、『殲滅執行』って……」
トリエステは色っぽく髪を手櫛で流す。オリヴィエはザインを気にするが……。
「初華様が言うなら、別にいいでしょう」
「な、なぜに尊大!」
偉そうに言うザインに、初華はががん!
もちろん、ザインは偉そうに言ったつもりは全くない。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
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案山子ハンター(相談卓) トリエステ・ウェスタ(ka6908) ドラグーン|21才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/07/07 09:56:40 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/05 12:04:23 |