• 初心

【初心】行き違いの遭遇戦

マスター:真太郎

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
LV1~LV20
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/07/12 15:00
完成日
2017/07/19 16:29

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 ハンターとしての経歴も長い更紗は、ドワーフのガッハソン、エルフのフリージア、リアルブルー人の小林と共にハンターオフィスで仕事を受けた。
 仕事内容は、近隣の村に出没するようになったオーガの討伐。
 4人はまず襲われた村々で聞き込みを行った。
 そのオーガは様々な動物を使役する厄介な奴らしい。
 そして出現位置や逃走方向から住処を割り出し、そこに向かった。
 しかし住処と思われた洞窟にはオーガの姿はなかった。
「当てが外れたかしら?」
「いんや、誰かが……いや何かが暮らしていた痕跡はあるぜ。ここが住処で間違いねぇな。匂いもまだ強く残ってる。ついさっきまでここにいやがったぜ」
 首を傾げる更紗に洞窟内の様子を見て取ったガッハソンが言う。
「では、我々の接近に気づいて逃げたのでしょうか?」
「私達が調査をしていた事をオーガが知り得たとも思えません。たまたま行き違いになっただけではないでしょうか」
 背広姿でメガネを掛け、サラリーマンにしか見えない小林の推論をフリージアが否定する。
「ならここで待ち伏せるか。罠を張って奇襲をしかけりゃ楽に倒せるぜ」
「ダメよ。オーガが出かけたって事はどこかに何かを襲いにいったって事だもの。ガッハソン、オーガがここを出ていったのはついさっきなのよね」
 更紗がガッハソンの案を却下して尋ねる。
「あぁ、奴らのくせー匂いが残ってやがるから1~2時間前ってところじゃねーかな」
「なら急げばまだ追いつけるはず。行くわよみんな」
「わしゃ待ってる方がいいんじゃがな」
「私は追いますよ。こんな臭い所で待ち伏せるなんて耐えられませんから」
「僕はリーダーに従います」
 1人渋るガッハソンを連れ、4人はオーガを追って洞窟を後にした。

 その頃、別のハンター達もハンターオフィスの依頼で近くにいた。
 依頼内容は遊牧部族の護衛。
 辺境には家畜を遊牧して暮らす部族もいる。
 彼らは歪虚の汚染や襲撃の多い場所を避けて各地を転々とし、家畜の乳や毛、乳製品や毛織物、肉などを売って生計を立てている。
 極力危険を避ける彼らだが、時には危険な場所を通らなければならない時もある。
 そんな時にはハンターを雇う事もあった。
 今回は近隣で狼やら熊やらオーガが出るという噂を聞き、念のため護衛を雇ったのだ。
「ハンターの皆さん、今日はよろしくお願いします」
 部族の長はハンター達に頭を下げると部族の事を紹介した。
 この場にいるのは家族の10人だけ。
 部族としてはもっと大勢いるらしいのだが、別の場所を放牧しているとの事だった。
 家畜は羊が約200頭。牧羊犬が4匹。
「小さな狼の群れ程度ならこの子達が追い払ってくれるんですが、熊やオーガなどは流石に手がでませんでな」
 長が牧羊犬の頭を撫でながら言う。
「ですがまぁ、熊だの狼だのオーガだのと内容が一定していない噂なんで恐らくデマでしょう。ですがもし出た時にはよろしくお願いします」
 長は再び頭を下げると、羊の群れの先導を始めた。
 道に長い長い羊の縦列ができ、メーメーと鳴き声が響く。
 牧羊犬が群れからはぐれる羊が出ないか目を配らせる。
 だが不意に牧羊犬達がある地点を見た。
 ハンター達もそちらを見る。
 土煙が立っていた。
 よく目を凝らすと、熊が見えた。
 いやおかしい。
 熊が走るだけであんなに土煙が立つ訳がない。
 更に目を凝らした。
 すると、その熊は何かを引っ張っているのが分かった。
 それは荷車だ。
 土煙は熊が荷車を引っ張って爆走していたため起こっていたのだ。
 しかも荷車の数は2台もあり、それぞれの荷台の上にはオーガの姿があった。
「オーガと熊が同時に来たじゃとーー!!」
 全く予期していなかった事態に長が取り乱す。
 だが事態は更に悪化する。
 荷車から狼も飛び出してきたのだ。
「更に狼もじゃとーー!! 噂は全部本当じゃったのかぁーー!!」
 しかしそれで終わった訳ではなかった。
 オーガの肩に止まっていた大鴉が飛び立った。
「大鴉ーー!? そんなもんは聞いとらんぞーー!!」
 羊の群れは大量の外敵の出現に統制を乱し始めた。
「ハンターさん! 群れはワシらで何とかします。早く奴らを退治しておくんなさいませー!!」
 焦って混乱しているのか口調が少しおかしくなった長がハンターに懇願した。

リプレイ本文

「あら……全部来てしまいました。こんな事もあるのですね」
 ファリン(ka6844)が土煙を上げて迫ってくる敵群を見て感心する。
「おーおー、こりゃまた団体さんだな、初仕事でこれたあ、やりがいがあるってもんじゃねえか」
 ヴォルフガング・ヴァンダム(ka6944)は喜声を上げたが、サクヤ・フレイヤ(ka5356)は嘆息した
「簡単な護衛任務かと思っていたんだけどな……。仕方ない、あたしはあたしの出来る事を全力でやるしかないか」
 しかしすぐに気持ちを切り替えてスローイングカードを抜いて構えた。
「うむ、民の命が懸っている故、気を引き締めていかねばならぬな」
 覚醒して口調をチンピラ風から侍風に変わったヴォルフガングもグレートソード「エアリアル」を抜く。
「長さんかなり焦ってますね……無理もない事ですが大丈夫でしょうか?」
 オリヴィア・ウェールズ(ka6828)が族長の様子を伺うと、慌てながらも犬を使って上手く羊の群れの誘導を行っていた。
「敵は二手に分かれています。こちらも二手に分かれた方がよいと進言します」
 T-Sein(ka6936)の戦況分析に従い、ハンター達も二手に分かれた。


●B班

「羊さんも族長さんにも、指一本触れさせません」
 マルセル=ヴァラン(ka6931)が敵の進行線上に立ちはだかると、荷車上のオーガが矢を放ってきた。
 マルセルは同班のSeinとファリンを守るために前に出ると、シールド「セラフィム・アッシュ」を掲げて受けた。
 しかし矢は盾を貫通して腕に突き刺さり、鋭い痛みが走る。
(防ぎきれなかった!?)
 オーガの膂力に戦慄したが、オーガばかり気にしてはいられない。
 3匹の狼が先行してきており、上空からは大鴉も急降下してくる。
「殲滅執行。眼前の敵を滅ぼします」
 Seinはボソリと呟いて意識を戦闘モードに切り替えると、まず『金剛』を発動。
 更に『練気』で高めたマテリアルを掌に集中させると、挑発の意味も込めて先頭の狼に『気功波』を放つ。
 気功で鼻面を殴打された狼はギャンと悲鳴を上げて転倒する。
 しかし残りの2匹が接近し、1匹はSeinの喉を狙って飛かかって来る
 左腕のレガース「アダーラ」に噛みつかせて防いだが、その間にもう一匹が足に噛みついた。
 牙が人工の皮膚を貫いて体内に喰い込む。
 オートマトンでも痛みは感じる。
 しかしSeinは全く表情を変えず、右腕の戦籠手「炎獄」を足に喰らいついている狼の背中に叩き込んだ。
 戦籠手が背中を貫き、背骨をへし折り、一撃で狼を絶命させる。
 更に、左腕に噛み付いたままの狼も地面に叩きつけた。
 狼の頭がレガースと地面に挟まれて潰れる。
 一方、ファリンはオートマチック「エタンドルE66」で大鴉を狙い撃っていた。
「少し数が多いですけれど、来てしまったものは仕方ありません」
 しかし大鴉は身を反らして避ける。
「私の腕じゃ牽制にしかならないか……。でも無いよりマシです」
 構わず撃ち続けてもヒラリヒラリと避けられる。
 だがマルセルは大鴉の回避機動を読んで『シャドウブリット』を発動。
 放たれた黒色の衝撃波が大鴉を打ち、地面に落下させた。
「やった!」
 マルセルが見た目に反した年相応の子供のような歓声を上げる。
 だが、不意にマルセルの脇腹に矢が突き立った。
 大鴉に注意を反れていたため盾での防御が間にあわなかったのだ。
 体の芯を激痛が走り、口から血まで溢れた。
 脂汗を滲ませながらも矢を引き抜き、自身に『ヒール』を施す。
 それで出血は止まり、激痛も動けるぐらいまで和らぐ。
 しかしその間に荷車が迫ってきていた。
 オーガが荷車と熊を繋ぐ縄を切断する。
 すると重荷から開放された熊が一気に加速したため、ハンター達は虚を突かれた。
 熊の巨体が迫ってくる。
 Seinが前に出た。
「ザインさん!?」
「ザインは機械。耐えられます」
 そう言われても納得できる訳がなく、マルセルは急ぎ『プロテクション』をSeinに施す。
 その直後、重くて鈍い衝突音が鳴る。
 Seinは腕を交差させて真正面から突進を受けた。
 もの凄い衝撃だったが、オートマトンの重さ故か吹っ飛ばされずに済んだ。
 そして腕も無傷で済んだのは『金剛』『プロテクション』のお陰だろう。
 熊が腕を薙ぎ払ってくる。
 左腕のレガースで受け、右の戦手甲で反撃。『練気』を乗せた正拳を胸部に叩き込む。
 しかし熊は攻撃に耐え、自身の巨体で押し潰すため諸手を挙げて伸し掛かってきた。
 Seinは咄嗟に熊の両腕を掴んで防ぐ。
 しかし熊はぐいぐいと体重を掛けてくる。
 オートマトンが重いとはいえ熊との体重差は圧倒的で、このままでは押し潰されるだろう。
「やらせません!」
 マルセルが熊の足に『シャドウブリット』を放ち、僅かに体勢を崩す。
 その隙を逃さず、Seinは跳躍すると足を熊の首に絡めて締め上げつつ、顔面を殴打した。
 熊は顔面がひしゃげたが、構わず両手の爪でSeinを引裂こうとする。
 しかし爪が届く前にマルセルの『シャドウブリット』が熊の後頭部に炸裂。
 熊は白目をむいて倒れ、そのまま絶命した。
「大丈夫ですかザインさん」
「大丈夫です。ありがとうございます」
 Seinは心配してくれたマルセルに応じつつも、その目は次の敵を探している。
 Seinには自分の身より敵の殲滅の方が重要なのだ。
 その頃、ファリンは拳銃を捨てて撃槍「阿」に持ち変え、オーガと1対1で戦っていた。
「便利は便利ですが……やはり軽いですね。あまり好きにはなれません……」
 そしてオーガの振り下ろしてきた斧を槍で受ける。
 しかし想像以上に重い攻撃で受けきれず、槍が弾かれて体を斬り裂かれる。
「っ!」
 痛みに顔を歪ませながらも『自己治癒』ですぐ完治させる。
 だがオーガは回復中にも横薙ぎで斧を振るってきた。
 槍を地面に突き立て、更に全身で支えるようにして受けた。
 衝撃で槍がたわみ、刃先が腕を傷つける。
 だが今度は槍が弾かれる事なく斧を受け切った。
「今度はこちらの番です!」
 『野生の瞳』で敵を見据えたファリンが槍先を『クラッシュブロウ』で斬り上げ、オーガの股間から顔面まで裂傷が刻む。
 オーガは構わず斧を振り下ろす。
 槍で受けるが、また弾かれて傷を負った。
 しかし弾かれた力を利用して体を回転させ、そのまま『クラッシュブロウ』で薙ぎ払う。
 オーガの右腕が切断され、斧ごと地面に落ちた。
 だがオーガは左手で短剣を抜いてファリンの腹部に突き立てた。
 ファリンは一旦オーガから距離を取って『自己治癒』を発動。
 オーガはその隙を見過ごさず追撃しようとする。
 だが熊を倒し終えたSeinがオーガに『気功波』を放つ。
 気功に殴打されたオーガが体勢を崩す。
 今度はファリンがその隙を逃さない。
「これで、終わりです!」
 『クラッシュブロウ』でオーガの喉を突し貫いた。
 それがトドメとなり、オーガは仰向けに倒れ伏したのだった。


●A班

 敵を待ち構えたB班とは対象的に、A班は前進して迎撃に出た。
「……鴉はあたしが片付けるから、少しの間別の敵の相手をお願い!」
「任された」
 サクヤの求めに応じてヴォルフガングは先頭に走り出ると、身を屈めて大剣を薙ぎ払った。
 狼までの距離は5m。
 普通なら到底届く距離ではないが、グレートソード「エアリアル」の刀身に渦巻くような光が帯び、それが伸びて狼の前足を斬り払った。
 前足を失った狼が前のめりに倒れる。
「まず1体」
 大剣を大上段から振り下ろし、倒れた狼にトドメを刺す。
(数の上ではこちらが不利、となると数的不利を覆す為にも、長さん達に安心してもらう為にも……最初から全力で臨みます)
 オリヴィアは『剣心一如』で呼吸を整えると、『疾風剣』で一気に狼との間合いを詰め、太刀「紫流葉」で眉間を刺し貫く。
 狼はその一撃で絶命した。
「獣程度に負けるわけにはいきません」
 しかし残る1体が大剣を振り下ろした直後のヴォルフガングの喉に牙を突き立てようと迫る。
 ヴォルフガングが咄嗟に腕で喉を庇う。
 牙は腕のドラグーンアーマーの皮を貫いて喰い込み、鮮血が滴る。
 ヴォルフガングは片手で大剣を振り上げ、腕に喰らいついたままの狼の体を両断した。
「これで狼は片付いたか」
 2人が狼の相手をしている間、サクヤは『スローイング』でスローイングカードを大鴉に放っていた。 
 だがカードは避けられ、大鴉がサクヤの目を狙って急降下してくる。
 身を屈めて辛くも避け、2枚目のカードを構えた、その時。左腕にオーガの放った矢が突き刺さった。
 矢は骨まで達しているのか激痛が走り、左腕に力が入らなくなる。
 上空の大鴉を注視していたため、オーガは完全に視界から外れていた。
(そうか、大鴉はオーガから注意を反らすための囮なんだ)
 だからといって大鴉も無視できない。
 再び急降下してきたため大鴉に構えていた2枚目のカードを『スローイング』で投擲。
 カードは翼を斬り裂き、大鴉はバランスを崩して地面に激突。しばらくもがいていたが、やがて動かなくなった。
 だがサクヤの耳が矢の風切り音を捉える。
 勘を頼りの避けるしかない。
 ドスッ、と矢の当たる音がした。
 しかし痛みはない。
 なぜなら矢は割って入ったオリヴィアの抱えていた狼の死体に刺さったからだ。
「間一髪間に合いましたね。さぁ、私の後についてきて下さい」
 オリヴィアは狼の死体を盾にしたまま熊が引くオーガの荷車に迫る。
 オーガは弓を捨てると熊を荷車から解き放った。
 重荷から解放された熊が猛烈な勢いで迫ってくる。
 ヴォルフガングは熊が間合いに入ってくる前に『電光石火』で斬りかかる。
 機動力を削ぐため脚を狙う。
 大剣の刃は皮を断ち、断を絶ち、だが骨で止まった。
 熊の機動力はほぼ衰えず、ヴォルフガングに突進してくる。
 大剣での防御は間にあわず直撃。
 肺の空気が全て吐き出されそうな衝撃を受けて吹っ飛んだ。
 地面を転がったが受け身を取ってすぐ立ち上がる。
「ごほっ……分厚い毛皮に筋肉、某の腕で骨を断つには厳しいものがあるが……」
 呼吸を整えつつ大剣を青眼に構え、熊との間合いを詰める。
 熊は前足を薙ぎ払ってきた。
 『受け流し』で反らし、ガラ空きになった脇の下を斬り上げる。
 先程より確かな手応えと共に大量の血が吹き出した。
「どのような敵にも必ず脆い場所はある」
 熊は激昂したのか後ろ足で立ち上がり、前足を振り下ろしてくる。
 それも『受け流しで』で反らし、熊の体勢が流れるのに合わせて横に回り込みつつ体も旋回させ、その勢いを乗せた剣戟を熊の首筋に叩き込んだ。
 切断には及ばなかったが、頸動脈が切れたのか大量の血が吹き上がる。
 しかしそれでも熊はまだ襲い掛かってくる。
「それだけの出血でまだ動けるとは大したものだ。しかし」
 失血で動きの鈍くなった熊の攻撃をくぐり抜けて懐に入り込むと、大剣を突き上げた。
「ここまでだ」
 大剣の刃は喉を貫通。頭と胴体が皮だけで繋がった状態になった熊は、地響きを立ててその場に倒れ伏した。

 オーガが弓を捨てて矢がもう来ないと分かったオリヴィアは狼の死体を捨てて二刀を構え直した。
 その直後、オーガが荷車を蹴って跳び、大上段に構えた斧を振り下ろしてくる。
 オリヴィアは咄嗟に『受け流し』を発動し、左の太刀で捌こうとした。
 しかしオーガの全体重を乗せた一撃は重く、衝撃で左腕がしびれ、刀が手から弾かれそうになる。
「オリヴィア流二刀剣術『陰影』!」
 それでもなんとか斧の機動を反らし、左の禍炎剣「レーヴァテイン」でオーガの胴を薙ぐ。
「二刀の利点として意識されても攻撃と防御を同時に行う事が可能、さぁどうしますかオーガさん?」
 オーガの対応は単純明快。
 縦、横、斜め、様々な角度から力任せの攻撃し続けてきた。
 その度にオリヴィアは攻撃を『受け流し』、カウンターでオーガを斬り刻んでゆく。
 サクヤもやや距離を取った位置からウィップ「エスプランドル」で『スラッシュエッジ』を叩き込む。
 一見、オリヴィアは無傷であるため、一方的な展開になっているように見える。
 だがオーガの攻撃は一撃が重く、受け流す度に衝撃で腕の筋繊維が断裂し、剣を振るどころか握っている事すら辛くなってきていた。
 手の握力がある内に『疾風剣』で一気に決めたいが、オーガは斧の間合いから離してくれないため使えない。
(一瞬でも隙ができれば……)
 オリヴィアの意図を読み取ったのか、サクヤが『エンタングル』を使って鞭をオーガの足に絡みつかせた。
「この間に攻撃を掛けて!」
 オーガが止まったのは少しの間だけ。
 だがオリヴィアが後ろに飛び退って距離を取るのは十分な時間だ。
 軽く屈んで下肢を力を込めつつ『剣心一如』で呼吸を整え、『疾風剣』で一気に飛び出す。
 オーガは斧の広い刃で身を庇った。
 しかし突き出された太刀の刃はそれを貫通し、オーガの胸に深々と突き刺さる。
 心臓を貫かれたオーガは大量の血を吐き出した。
「トドメです!」
 更に禍炎剣を一閃。
 刃が炎の尾を引きながら首を跳ね飛ばし、オーガの息の根を止めた。
「そちらも終わったか……」
 ヴォルフガングが話しかけてくる。
「オーガの話は色々と耳に入れていたが、直接相まみえるのは初めてであった。某の剣が何処まで通じるか試してみたくもあったのだが……」
 少し残念そうにオーガの死骸を見た後、大剣を仕舞った。


「大丈夫ですか長さん? 落ち着きましたか?」
 戦闘が終わった後も不安そうにしている族長をオリヴィアが宥める。
「は……はい。敵はもういないのでしょうか?」
「はい、全て片付けました。まさか噂通りとは言え全て同時に出てくるとは思わなかったですね」
「えぇ、はい、ホントにもう……貴方達には感謝してもしきれません」
 族長が安堵と歓喜の混じった顔で手を取り、感謝を示してくる。
「しかしこの地で初仕事になりますが、西方のオーガとは熊や鴉と言った様々な動物を従えているのですね。少々驚きました」
 残っていた『ヒール』で自分や仲間を治療していたマルセルが感慨にふける。
「それに何だかんだで訓練と実戦って違うもんだな。思い通りに動けやしねえ。もう少し型稽古もきっちりやらねえとな」
 覚醒を解いてチンピラ口調に戻ったヴォルフガングは早速大剣で素振りした。
「ザイン様、顔が汚れてますよ。女の子なんですから身なりはちゃんとしないと」
 ファリンはSeinの返り血を拭ってあげた。
(ザインは恐らく戦闘用のマシン。それなら身なりを気にする必要はないはず……)
 それでも甲斐甲斐しくされるのは嬉しくて、Seinはされるがままになっていた。

 こうして依頼を終えた一行がオフィスに戻ると、護衛の依頼料だけでなくオーガ退治の依頼料まで支給されたのだった。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 先輩疾影士
    サクヤ・フレイヤ(ka5356
    人間(紅)|20才|女性|疾影士

  • オリヴィア・ウェールズ(ka6828
    人間(紅)|20才|女性|舞刀士
  • 淡雪の舞姫
    ファリン(ka6844
    人間(紅)|15才|女性|霊闘士
  • 駆け出し龍神神官
    マルセル=ヴァラン(ka6931
    ドラグーン|19才|男性|聖導士
  • 狂える牙
    冷泉 緋百合(ka6936
    オートマトン|13才|女性|格闘士

  • ヴォルフガング・ヴァンダム(ka6944
    ドラグーン|18才|男性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/07/08 18:43:37
アイコン 相談卓
ヴォルフガング・ヴァンダム(ka6944
ドラグーン|18才|男性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2017/07/12 08:32:32