ゲスト
(ka0000)
無色透明、無垢なる復讐心
マスター:ことね桃

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/13 07:30
- 完成日
- 2017/07/22 01:48
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「……おーい、そっちに逃げたぞ!」
「よし、任せておけ! 魔法でブッ飛ばしてやる!!」
ある雨の日、小さな街の片隅でハンター達が多数の雑魔スライム相手に大捕物を展開していた。
ハンター達はこの地の地理に詳しいようで、雑魔の進む先に容易に回りこむと容赦なく攻撃を畳み込む。
「ギュッ! ギュイイ……」
ハンターに恐れをなした緑色のスライムが花売りの露店に逃げ込もうと身を低くする。そこへ顔に幼さの残るハンターが横道から飛び出し、不敵に笑うと腕を振り上げた。
「世界中のどこだろうと逃げても無駄だぜ。この世界に俺達ハンターがいるかぎりはな。行けっ、マジックアロー!!」
彼の練り上げた魔力の矢が指先から放たれ、スライムの急所を貫く。
「グ……グヂュ……」
緑スライムはほんの数秒でまるで何日も日に晒されたかのように色褪せ、ひび割れ、呆気なく崩れ去っていった。
「……これで終わりかな?」
少年ハンターがスライムの崩壊を確認すると小さく首を傾げる。そこに先輩ハンターが合流し、少年の癖の強い髪をくしゃっと撫でた。
「よくやった。……おそらくはもう大丈夫だろう。皆、それぞれ撃破に成功したようだからな」
「そうなんですか! それなら安心だ」
「ああ。それにお前も初陣でここまでやれりゃ大したもんだ、次もこの調子で頼むぞ」
「はい! 俺、次も頑張ります!」
朗らかな2人の声に作戦の成功を確信した町長の娘が屋敷から駆け出すなり、感謝の言葉を繰り返しながら少年に抱きついた。
美しい少女に抱きつかれた少年は先ほどまで凛々しかった顔をまるで熟れたリンゴのように赤らめて戸惑う。
初々しい少年少女の姿を先輩ハンターは明るく笑って見守っていた。
――そんな、まるで子供向けの冒険譚のごとき顛末を用水路の奥からじいっと見つめる者がいた。
無色透明の体にぽっかりと浮かぶ、小さな目玉2つ。
その下にあるぽっかりとした空洞はそれの口であろうか。ノコギリの刃のように小さくも無数の突起がびっしりと生えており、それが擦れあってはギチギチと耳障りな音を立てた。
「ギュイイ……」
空洞の中から漏れる音は風のようでいて、獣が唸る声にも似ている。
うつろな目玉は液体の中でぐるりぐるりと蠢くと、怨念を込めたかのようにひどく醜い声を放ちながら雨水とともに用水路の奥へと静かに流れていった。
それからしばらくして。
「先ほど、新しい依頼が入りました」
ハンターオフィスで受付嬢が書類を片手に解説を始める。
「ここから北へ1時間ほど移動した先に小さい街があるのですが、そこで大型の雑魔が発生しました」
受付嬢の話によるとその街は数日前にスライム雑魔の大量発生に見舞われており、そのほとんどが現地にいたハンターにより討伐されたという。
しかし今回現れた雑魔がそれらと同じスライム型のため、もしかしたら気づかぬ間に逃してしまった1体が長らえて戻ってきたのかもしれない、と依頼人である町長は怯えていたそうだ。
問題の雑魔は今のところ無人の旧市街地をのったりと周回しているが、いつ市街地に移動するかわからないため、住民達は近隣の村に避難して肩を寄せ合い震えているという話だった。
「雑魔にも雑魔なりの事情というものがあるのかもしれませんが、生ある全ての存在と彼らは共存ならぬもの。雑魔が罪を深める前に速やかな討伐を願います」
受付嬢はいつも通りの凛とした声でハンター達に呼びかけた。
「よし、任せておけ! 魔法でブッ飛ばしてやる!!」
ある雨の日、小さな街の片隅でハンター達が多数の雑魔スライム相手に大捕物を展開していた。
ハンター達はこの地の地理に詳しいようで、雑魔の進む先に容易に回りこむと容赦なく攻撃を畳み込む。
「ギュッ! ギュイイ……」
ハンターに恐れをなした緑色のスライムが花売りの露店に逃げ込もうと身を低くする。そこへ顔に幼さの残るハンターが横道から飛び出し、不敵に笑うと腕を振り上げた。
「世界中のどこだろうと逃げても無駄だぜ。この世界に俺達ハンターがいるかぎりはな。行けっ、マジックアロー!!」
彼の練り上げた魔力の矢が指先から放たれ、スライムの急所を貫く。
「グ……グヂュ……」
緑スライムはほんの数秒でまるで何日も日に晒されたかのように色褪せ、ひび割れ、呆気なく崩れ去っていった。
「……これで終わりかな?」
少年ハンターがスライムの崩壊を確認すると小さく首を傾げる。そこに先輩ハンターが合流し、少年の癖の強い髪をくしゃっと撫でた。
「よくやった。……おそらくはもう大丈夫だろう。皆、それぞれ撃破に成功したようだからな」
「そうなんですか! それなら安心だ」
「ああ。それにお前も初陣でここまでやれりゃ大したもんだ、次もこの調子で頼むぞ」
「はい! 俺、次も頑張ります!」
朗らかな2人の声に作戦の成功を確信した町長の娘が屋敷から駆け出すなり、感謝の言葉を繰り返しながら少年に抱きついた。
美しい少女に抱きつかれた少年は先ほどまで凛々しかった顔をまるで熟れたリンゴのように赤らめて戸惑う。
初々しい少年少女の姿を先輩ハンターは明るく笑って見守っていた。
――そんな、まるで子供向けの冒険譚のごとき顛末を用水路の奥からじいっと見つめる者がいた。
無色透明の体にぽっかりと浮かぶ、小さな目玉2つ。
その下にあるぽっかりとした空洞はそれの口であろうか。ノコギリの刃のように小さくも無数の突起がびっしりと生えており、それが擦れあってはギチギチと耳障りな音を立てた。
「ギュイイ……」
空洞の中から漏れる音は風のようでいて、獣が唸る声にも似ている。
うつろな目玉は液体の中でぐるりぐるりと蠢くと、怨念を込めたかのようにひどく醜い声を放ちながら雨水とともに用水路の奥へと静かに流れていった。
それからしばらくして。
「先ほど、新しい依頼が入りました」
ハンターオフィスで受付嬢が書類を片手に解説を始める。
「ここから北へ1時間ほど移動した先に小さい街があるのですが、そこで大型の雑魔が発生しました」
受付嬢の話によるとその街は数日前にスライム雑魔の大量発生に見舞われており、そのほとんどが現地にいたハンターにより討伐されたという。
しかし今回現れた雑魔がそれらと同じスライム型のため、もしかしたら気づかぬ間に逃してしまった1体が長らえて戻ってきたのかもしれない、と依頼人である町長は怯えていたそうだ。
問題の雑魔は今のところ無人の旧市街地をのったりと周回しているが、いつ市街地に移動するかわからないため、住民達は近隣の村に避難して肩を寄せ合い震えているという話だった。
「雑魔にも雑魔なりの事情というものがあるのかもしれませんが、生ある全ての存在と彼らは共存ならぬもの。雑魔が罪を深める前に速やかな討伐を願います」
受付嬢はいつも通りの凛とした声でハンター達に呼びかけた。
リプレイ本文
冷たい雨がハンター達の身体をしとどに濡らす。
ここは大型のスライムが徘徊している無人の街。まだ陽の高い時間であるのに不気味な空気が漂っている。
「雑魔の考えはわかりませんが、雨の中のスライムは、見つけやすそうですね。まずは水の切れ目、空間の歪みを……見逃しません」
少女らしい頬に雨水を滴らせたミオレスカ(ka3496)が大通りに到着すると早速「直感視」で眼を強化し、索敵を開始した。
「禍根か。確実に処理するべき依頼だな」
ジーナ(ka1643)は常人よりも優れた眼で周囲を観察しながら、僅かに苦味のある表情で呟いた。
(普段からそういうモノが残らないように慎重な仕事を心がけている。それに対峙する時こそ一瞬の油断が命取りになるからだ。ただの雑魔一匹といえど侮れない……)
ハンターとしての矜持がジーナの戦意を静かに高揚させていく。
玉兎 小夜(ka6009)は愛馬に跨り、仲間たちより僅かに高い視点で周りを見回した。そこで依頼人の報告を胸のうちで反芻すると「復讐」というキーワードに切なさを抱く自分に気づく。
(復讐かぁ。気持ちはわかるけどねー。うさぎもしたいし。……あの人が死んだ悲しみを兎は忘れてないし)
「小夜ちゃん、どうしちゃったの? なーんかワケありな顔しちゃって」
無意識に唇を噛んだ小夜に声をかけたのはレオナルド・テイナー(ka4157)だった。小夜は即座に気持ちを切り替え、わざと声を弾ませる。
「んー、なんでもない。……ん、いつだってヴォーパルバニーに容赦はないのだ!」
「ふーん、それならいいけど」
芝居じみた仕草で肩を竦めるレオナルド。彼の目は笑みのかたちを作っていたが、小夜から目を背けるとその視線が草を薙ぐように鋭く路地を見渡す。
一方、ヴァイス(ka0364)は大型スライムの他にも生き残りがいる可能性を視野に入れ探索を進める。
(報告書を読む限り、前回のスライム型はさほど脅威ではなかったようだな。だが、もし討ち漏らしの個体であるなら短期間に増えたのではなく大型化したこの個体自体の能力がありそうだ)
そんな思索に耽るヴァイスの前を歩く榊 兵庫(ka0010)が唐突に足を止めた。
「ん? どうした」
兵庫が黙して十文字槍の穂先を大通りに面した広場へ向ける。続く声は静かだが、明確な意思を含んでいた。
「……周りの被害は考慮しなくとも良いと言われたが、被害が少ないに越した事はないからな」
「ああ、なるほど。それに相手が大型となれば、それなりの戦場が必要だな」
ここは一直線の大通りと無数の小道で形成された旧市街。できるだけ視界の開けた安全性の高い区域で戦いたいと誰もが感じていた。
「それでは、あちらに行ってみましょうか。色々な道に繋がっていて、見通しが良いかもしれません」
ミオレスカが左右を確認しながら広場に向かって足を踏み出す。すると、彼女の表情がたちまち険しいものに変わった。
「皆さん、気をつけて! 前方から、来ますっ!!」
広場の向こうからやってきたのは「粘液の波」だった。
はじめは煉瓦道の溝を伝うゆるやかな雨水のように。それが小波のようにやわらかな波紋をつくり、徐々に高さを増しながらこちらに迫ってくる。
それはあまりにも巧妙だった。経験の浅いハンターであれば、気づかぬうちに足下を掬われていたかもしれない。
しかしスライムにとって不幸だったのは、獲物と判断した少女がもとより鋭敏な感覚をさらに研ぎ澄ませ、容易く彼を看破したこと。そして彼女が彼よりも数段、速いことだった。
「皆さん、今のうちに態勢を整えてっ!」
ミオレスカの銃から無数の弾丸が射出される。その勢いに圧されたのか波が止まり、一塊のスライムらしい姿が露わになった。
「お前の相手は俺だ!」
スライムが姿を現したその時、兵庫が炎によく似たオーラを纏い、敵の眼前に向けて駆け出す。彼が戦場に選んだその空間はかなりの広さで、障害物も存在しない。
(……僥倖だ。ここならば存分に戦っても住民を困らせることはあるまい)
誰も気づかない程度だが、口角を上げて槍を構える兵庫。その姿を粘液の中の眼球が恨めしげにじろりと睨んだ。
ヴァイスもまた、疾風のごとく駆ける。
「透明と話に聞いていたが、これほどとはな。もっとも、逃がす隙など与えないが!」
この広場には大通りだけではなく、いくつかの小道が繋がっている。逃げ道を塞ぐよう、彼は兵庫の対となる位置で魔導ワイヤーを構えた。
先の3人の慎重さと異なり、大胆な行動に出たのは小夜だった。彼女は身動きのとれない敵に馬に乗ったまま突撃する。馬上で呼吸を整えた小夜は刃を水平に構えると愛馬に囁いた。
「お前はここまで。あっちに行ってて」
馬の背を蹴り、宙に身を躍らせる小夜。馬はその意を察したのか、主の武運を祈るかのように高く嘶いて小道の向こうへと姿を消した。――まずは挨拶代わりの一撃だ。
「こんにちは、ヴォーパルバニーです!」
巨大な刀がスライムを一切の遠慮なしに2度貫く。その時、ぬらぬらした重い粘液が返り血のように刃に纏わりついたが、彼女が刀を勢い良く振り下ろすと「びちゃり」と路上へ叩きつけられた。
一方、激しさを増し始めた戦場で悠長にも感嘆のため息を漏らす男がいる。
「恨みつらみでここまで頑張れるなんて……すごい執念だねぇ……」
「レオナルドさん?」
拳銃に弾の再装填をするべく支度を始めたミオレスカが不思議そうに首を傾げる。レオナルドは楽しそうに笑った。
「ふふ。こういうのってやりがいがあるわよねってコト。さーてと、ボクも撃ち惜しみはナシでいきましょう!」
レオナルドが奇妙な形状の燭台を掲げる。何者かと対話するかのように言葉を紡ぐ彼の前に鮮烈な色の炎が現れた。
「さあさあ、紛らわしい水溜りごと蒸発しちゃいなよっ!!」
先ほどまでのフェミニンな喋りと全く違う苛烈な声。無数の炎弾が発射され、スライムの表面とその周辺の水が白い蒸気となり宙に消えた。
その時、ジーナは不思議なことに気がついた。小夜とレオナルドの攻撃で体積を失ったスライムが抉れた体を徐々に縮めて形を補っているのである。
(回復? いや、違うな。矮小化しているのか? いずれにしてもこのような厄介なモノを放っておくわけにはいかない)
しなやかな肉体に力を漲らせ、ジーナが駆け出した。
「さて、最初から全力でいかせて貰おう」
魔力を注ぎ込んだ槍を握りなおし、兵庫が真正面からスライムに渾身の一撃を叩き込んだ。
眼球を怯んだかのように奥ませた敵に猛攻を加えるのは小夜。
「追撃の二夜!」
彼女の放った連撃は粘液をまるで雨粒のように弾き飛ばす。
あまりに一方的な展開。ここでとどめとばかりにヴァイスが自らの生命力さえも炎に変えた姿で立った。
「出会ったばかりで悪いが早々に仕留めさせてもらおうか」
ワイヤーからも迸る黒い炎の力。それはまさにヴァイスの生命を燃やして生まれた破壊の力だ。
そのワイヤーが螺旋を描きながら放たれ、スライムを幾重にも絡めとっていく。
「これで、終わりだ!」
ヴァイスは一気に、炎が逆巻くワイヤーを引いた!
ブチブチブチィイイイッ!!
我が身を犠牲にしたその炎がスライムの体を易々と引き千切る。
「ギュ、ギュバアアッ!?」
悲鳴のような声。しかしまだ倒しきれていない。スライムは自らの肉体をさらに縮めて震えている。
「くっ、頑丈な奴め。まだ仕留めきれていないか」
「ならば、私が! ワイルドラッシュっ!!」
ジーナが力の昂ぶりを感じながら、刃で鋭く斬りつけた。
(どれだけ厄介な体を持っていようが、豪快に掻っ捌いてやる!)
駆動する鎖の刃が2度、スライムの体を抉る。その時、ついにスライムが動き始めた。ジーナの脚に粘液を絡ませ、捕らえたのだ。
「なにっ!?」
粘液の塊の中に突如、ぽっかりと穴が空く。その中には無数の透明な突起がびしりと生えていた。
ジーナの顔が青ざめる。剣を粘液に押し付けて何とか逃れようと足掻く。しかし相手の力は思ったよりも強い。
「――くっ!」
その時、乾いた音がした。ミオレスカが銃を持ち替え、スライムを撃ち抜いたのだ。
「ジーナさん、今のうちに!」
「ミオレスカ、恩に着るぞっ」
拘束の緩みを感じたジーナは自由な方の足で触手状の粘液を蹴り飛ばし、逃れた。彼女が一旦後方へ下がったのを確認すると、レオナルドがへらりと笑う。
彼が此度放ったのは強烈な冷気だった。先ほど放ったファイアーボールとヴァイスの炎で焼き千切れたスライムの破片が凍りつき、次々と砕け散る。その本体もか細く悲鳴を上げた。
「あたしはキミに恨みはないケド、来るなら最期までお付き合いしてあげる。だからそんな悲しい声を上げないで頂戴。……さっさと仲間の所に逝かせてやるよぉ……」
出会った頃と比べ、かなり小さくなった敵にレオナルドが満足そうに微笑む。しかし、次の異様な風景に思わず息を呑んだ。
スライムがじっと動かなくなったかと思うと、彼の周囲にある水溜りが忽然と消滅し、体が再び膨れ上がったのだ。
「……雨を受けて少しずつ回復していくのか。回復するより早く削り取っていくしかあるまい」
兵庫の言葉にジーナが応じ、再び前方に踏み出した。今度は盾を構え、防戦の構えだ。
「ああ、ならば回復手段のある私が囮となろう。その間に、奴にとどめを!」
その時、敵がジーナに意識を傾けたのか自分に背を向けたのを小夜は見過ごさなかった。
漆黒の巨大な刃を易々と構えて鋭くステップを踏み、敵を追う。
「お前は大きさは変わるし、色は見辛い! けど、ここはなにも変わらないでしょうが!」
繰り出されたのは疾風の二連撃だった。一度目は表面を軽く削ぎ、そして二度目は――。
「ギュアアアアア!!!」
虚ろな目のうちのひとつが、背後から潰された。眼球がどろどろとした白の流動体となり、地に流れ落ちる。敵の動きが再び止まるのをレオナルドは見逃さない。
「また回復するつもり? ダメダメ、これ以上悲劇の愛憎敵討ちなんで悲劇だわん。……一滴たりとも残しはしねぇよ」
彼の元から放たれる轟炎がスライムの周囲から水という水を蒸発させてしまう。
回復手段を絶たれたスライムは兵庫に飛び掛った。その動きは先ほどまでの鈍重な印象を裏切る鋭いものだった。
咄嗟に頭を腕で庇った兵庫。腕からつう、と血が流れる。
「……っ! 身体が縮んだ分、素早くなったか。だが着実に攻撃を当てていけば問題ないはずだ」
「はい、回復する以上のダメージを与えていけば、問題ありません。一網打尽……速攻です!」
ミオレスカの銃弾が変則的な動きを見せ、スライムを2度貫通した。
敵が怯むなり、兵庫は槍で強烈にそれを打ち据える。
「ギュ……ムウ!」
地に叩きつけられたスライムはすっかり小さくなっていた。その身体をぐっと立ち上がらせると、今度は前衛の隙を狙って身体を滑らせる。
「そっちには行かせんっ!!」
ヴァイスの鋭い突きがスライムを追う。しかしスライムは本気で逃げる算段なのだろう。スピードを犠牲にしながらもヴァイスのワイヤーの軌道よりも若干身を低くして地を滑り、なんとかやり過ごした。
しかし、その速度低下こそが命取りとなる。彼の形無き体を鷲掴みにする腕があったからだ。
「今度は私が……捕まえたぞ」
ジーナが伸ばした手と重なるように長く伸びた幻影の腕。それがスライムをしっかりと掴み取っていた。
「頼む、こいつをっ!」
幻影の手がぐん、とジーナの元に引き戻される。スライムは再び、ハンター達に囲まれることとなった。
小夜は今や自分より小さくなったスライムを目の前にして冷たく笑った。
「知っているか? ヴォーパルバニーからは逃げられない!」
「……逃さんよ。お前はここで俺達の手に掛かって倒されるのが定めだ」
ソウルトーチを再び発動させ、スライムの意識を引き寄せる兵庫。
そしてこちらに向かい静かに歩み寄るヴァイス。
スライムは破れかぶれとなり、自らの体を引きちぎって周囲にばら撒いた。
「……っ、何これっ」
ハンター達の体に強烈な粘液が纏わりつき、痛みと締め付けを与える。これをもっと早く使っていればスライムの運命はまた違ったものになっていたかもしれない。
しかし、時は既に遅かった。
ヴァイスの身体から再び炎が舞うのを見届けると、スライムは怒りと恨みに満ち満ちた心を全て焼き払われ、この世から消滅したのだった。
地面の上に残ったのは、手のひらにすっぽりと収まる大きさの目玉ひとつだった。
小夜が濡れた髪をかきあげながらそれに接近する。
雨の中で乾いていく不思議な目玉に、彼女は赤い包帯を巻きつけた人差し指を突きつけて言い放つ。
「復讐したい気持ちはわかるが! お前の敗因は、このヴォーパルバニーとエンカウントしてしまったことだ!」
その言葉を受けた瞬間に目玉は「パキ」と乾いた音を立てて、呆気なく割れた。
「皆も疲れていることと思うが、提案がある。住民をこちらに帰す前に一旦、街を一通り手分けして安全確認しておかないか? もしかしたらまだ雑魔の生き残りがいるかもしれない」
ヴァイスは一行の中で最も疲労の色が濃いにも関わらず、そう提案した。
ジーナが頷く。
「ああ。これで依頼完了と言いたいところだが、あれが最後の一匹とは限らない。住民の不安を考えれば、余力があるかぎりは見回っておくべきだろう」
「そうねえ、復讐の連鎖なんてベタなドラマはイマドキ流行らないもの。じゃあ、また後でね」
レオナルドはまるで散策に出かけるような気安さで街角に姿を消した。
小夜は馬を回収がてら、街の外周を確認するという。
頼もしい仲間たちの背に心の中で感謝を告げたヴァイスは自分の担当地域に向けて歩みだした。
兵庫が用水路の蓋を除け、散策中に拾った棒切れを水路の底に突っ込んだ。棒の動きを阻害する物は一切なく、水面に泥がパッと広がった。
彼の隣で万が一に備え、銃を構えていたミオレスカが安心したように手を下ろす。
「用水路にも、もう、いないようですね。皆さんの報告からも、もう大丈夫、のようです」
「少なくともこの街の周囲にあれの眷属がいなくなったのは確かだな。皆と合流したらここの住民が避難している村へ報告に行こう」
棒切れを道端の薪の山へ放り込む兵庫。その背にミオレスカがおもむろに呟いた。
「あの、思うところがあって、ハンターを狙ってきたのなら、意外ですね。時代と場所が違えば、彼らとも、分かり合える日がきたかも……」
その言葉に何とも言えない表情で振り返る兵庫。するとミオレスカは茶目っ気をこめておっとりと続けた。
「……ということは、おそらく、ないですよね。でも、何度現れても、私達が、みんなを守ります」
小さなエルフの少女の決意に兵庫は 力強く頷いた。
ここは大型のスライムが徘徊している無人の街。まだ陽の高い時間であるのに不気味な空気が漂っている。
「雑魔の考えはわかりませんが、雨の中のスライムは、見つけやすそうですね。まずは水の切れ目、空間の歪みを……見逃しません」
少女らしい頬に雨水を滴らせたミオレスカ(ka3496)が大通りに到着すると早速「直感視」で眼を強化し、索敵を開始した。
「禍根か。確実に処理するべき依頼だな」
ジーナ(ka1643)は常人よりも優れた眼で周囲を観察しながら、僅かに苦味のある表情で呟いた。
(普段からそういうモノが残らないように慎重な仕事を心がけている。それに対峙する時こそ一瞬の油断が命取りになるからだ。ただの雑魔一匹といえど侮れない……)
ハンターとしての矜持がジーナの戦意を静かに高揚させていく。
玉兎 小夜(ka6009)は愛馬に跨り、仲間たちより僅かに高い視点で周りを見回した。そこで依頼人の報告を胸のうちで反芻すると「復讐」というキーワードに切なさを抱く自分に気づく。
(復讐かぁ。気持ちはわかるけどねー。うさぎもしたいし。……あの人が死んだ悲しみを兎は忘れてないし)
「小夜ちゃん、どうしちゃったの? なーんかワケありな顔しちゃって」
無意識に唇を噛んだ小夜に声をかけたのはレオナルド・テイナー(ka4157)だった。小夜は即座に気持ちを切り替え、わざと声を弾ませる。
「んー、なんでもない。……ん、いつだってヴォーパルバニーに容赦はないのだ!」
「ふーん、それならいいけど」
芝居じみた仕草で肩を竦めるレオナルド。彼の目は笑みのかたちを作っていたが、小夜から目を背けるとその視線が草を薙ぐように鋭く路地を見渡す。
一方、ヴァイス(ka0364)は大型スライムの他にも生き残りがいる可能性を視野に入れ探索を進める。
(報告書を読む限り、前回のスライム型はさほど脅威ではなかったようだな。だが、もし討ち漏らしの個体であるなら短期間に増えたのではなく大型化したこの個体自体の能力がありそうだ)
そんな思索に耽るヴァイスの前を歩く榊 兵庫(ka0010)が唐突に足を止めた。
「ん? どうした」
兵庫が黙して十文字槍の穂先を大通りに面した広場へ向ける。続く声は静かだが、明確な意思を含んでいた。
「……周りの被害は考慮しなくとも良いと言われたが、被害が少ないに越した事はないからな」
「ああ、なるほど。それに相手が大型となれば、それなりの戦場が必要だな」
ここは一直線の大通りと無数の小道で形成された旧市街。できるだけ視界の開けた安全性の高い区域で戦いたいと誰もが感じていた。
「それでは、あちらに行ってみましょうか。色々な道に繋がっていて、見通しが良いかもしれません」
ミオレスカが左右を確認しながら広場に向かって足を踏み出す。すると、彼女の表情がたちまち険しいものに変わった。
「皆さん、気をつけて! 前方から、来ますっ!!」
広場の向こうからやってきたのは「粘液の波」だった。
はじめは煉瓦道の溝を伝うゆるやかな雨水のように。それが小波のようにやわらかな波紋をつくり、徐々に高さを増しながらこちらに迫ってくる。
それはあまりにも巧妙だった。経験の浅いハンターであれば、気づかぬうちに足下を掬われていたかもしれない。
しかしスライムにとって不幸だったのは、獲物と判断した少女がもとより鋭敏な感覚をさらに研ぎ澄ませ、容易く彼を看破したこと。そして彼女が彼よりも数段、速いことだった。
「皆さん、今のうちに態勢を整えてっ!」
ミオレスカの銃から無数の弾丸が射出される。その勢いに圧されたのか波が止まり、一塊のスライムらしい姿が露わになった。
「お前の相手は俺だ!」
スライムが姿を現したその時、兵庫が炎によく似たオーラを纏い、敵の眼前に向けて駆け出す。彼が戦場に選んだその空間はかなりの広さで、障害物も存在しない。
(……僥倖だ。ここならば存分に戦っても住民を困らせることはあるまい)
誰も気づかない程度だが、口角を上げて槍を構える兵庫。その姿を粘液の中の眼球が恨めしげにじろりと睨んだ。
ヴァイスもまた、疾風のごとく駆ける。
「透明と話に聞いていたが、これほどとはな。もっとも、逃がす隙など与えないが!」
この広場には大通りだけではなく、いくつかの小道が繋がっている。逃げ道を塞ぐよう、彼は兵庫の対となる位置で魔導ワイヤーを構えた。
先の3人の慎重さと異なり、大胆な行動に出たのは小夜だった。彼女は身動きのとれない敵に馬に乗ったまま突撃する。馬上で呼吸を整えた小夜は刃を水平に構えると愛馬に囁いた。
「お前はここまで。あっちに行ってて」
馬の背を蹴り、宙に身を躍らせる小夜。馬はその意を察したのか、主の武運を祈るかのように高く嘶いて小道の向こうへと姿を消した。――まずは挨拶代わりの一撃だ。
「こんにちは、ヴォーパルバニーです!」
巨大な刀がスライムを一切の遠慮なしに2度貫く。その時、ぬらぬらした重い粘液が返り血のように刃に纏わりついたが、彼女が刀を勢い良く振り下ろすと「びちゃり」と路上へ叩きつけられた。
一方、激しさを増し始めた戦場で悠長にも感嘆のため息を漏らす男がいる。
「恨みつらみでここまで頑張れるなんて……すごい執念だねぇ……」
「レオナルドさん?」
拳銃に弾の再装填をするべく支度を始めたミオレスカが不思議そうに首を傾げる。レオナルドは楽しそうに笑った。
「ふふ。こういうのってやりがいがあるわよねってコト。さーてと、ボクも撃ち惜しみはナシでいきましょう!」
レオナルドが奇妙な形状の燭台を掲げる。何者かと対話するかのように言葉を紡ぐ彼の前に鮮烈な色の炎が現れた。
「さあさあ、紛らわしい水溜りごと蒸発しちゃいなよっ!!」
先ほどまでのフェミニンな喋りと全く違う苛烈な声。無数の炎弾が発射され、スライムの表面とその周辺の水が白い蒸気となり宙に消えた。
その時、ジーナは不思議なことに気がついた。小夜とレオナルドの攻撃で体積を失ったスライムが抉れた体を徐々に縮めて形を補っているのである。
(回復? いや、違うな。矮小化しているのか? いずれにしてもこのような厄介なモノを放っておくわけにはいかない)
しなやかな肉体に力を漲らせ、ジーナが駆け出した。
「さて、最初から全力でいかせて貰おう」
魔力を注ぎ込んだ槍を握りなおし、兵庫が真正面からスライムに渾身の一撃を叩き込んだ。
眼球を怯んだかのように奥ませた敵に猛攻を加えるのは小夜。
「追撃の二夜!」
彼女の放った連撃は粘液をまるで雨粒のように弾き飛ばす。
あまりに一方的な展開。ここでとどめとばかりにヴァイスが自らの生命力さえも炎に変えた姿で立った。
「出会ったばかりで悪いが早々に仕留めさせてもらおうか」
ワイヤーからも迸る黒い炎の力。それはまさにヴァイスの生命を燃やして生まれた破壊の力だ。
そのワイヤーが螺旋を描きながら放たれ、スライムを幾重にも絡めとっていく。
「これで、終わりだ!」
ヴァイスは一気に、炎が逆巻くワイヤーを引いた!
ブチブチブチィイイイッ!!
我が身を犠牲にしたその炎がスライムの体を易々と引き千切る。
「ギュ、ギュバアアッ!?」
悲鳴のような声。しかしまだ倒しきれていない。スライムは自らの肉体をさらに縮めて震えている。
「くっ、頑丈な奴め。まだ仕留めきれていないか」
「ならば、私が! ワイルドラッシュっ!!」
ジーナが力の昂ぶりを感じながら、刃で鋭く斬りつけた。
(どれだけ厄介な体を持っていようが、豪快に掻っ捌いてやる!)
駆動する鎖の刃が2度、スライムの体を抉る。その時、ついにスライムが動き始めた。ジーナの脚に粘液を絡ませ、捕らえたのだ。
「なにっ!?」
粘液の塊の中に突如、ぽっかりと穴が空く。その中には無数の透明な突起がびしりと生えていた。
ジーナの顔が青ざめる。剣を粘液に押し付けて何とか逃れようと足掻く。しかし相手の力は思ったよりも強い。
「――くっ!」
その時、乾いた音がした。ミオレスカが銃を持ち替え、スライムを撃ち抜いたのだ。
「ジーナさん、今のうちに!」
「ミオレスカ、恩に着るぞっ」
拘束の緩みを感じたジーナは自由な方の足で触手状の粘液を蹴り飛ばし、逃れた。彼女が一旦後方へ下がったのを確認すると、レオナルドがへらりと笑う。
彼が此度放ったのは強烈な冷気だった。先ほど放ったファイアーボールとヴァイスの炎で焼き千切れたスライムの破片が凍りつき、次々と砕け散る。その本体もか細く悲鳴を上げた。
「あたしはキミに恨みはないケド、来るなら最期までお付き合いしてあげる。だからそんな悲しい声を上げないで頂戴。……さっさと仲間の所に逝かせてやるよぉ……」
出会った頃と比べ、かなり小さくなった敵にレオナルドが満足そうに微笑む。しかし、次の異様な風景に思わず息を呑んだ。
スライムがじっと動かなくなったかと思うと、彼の周囲にある水溜りが忽然と消滅し、体が再び膨れ上がったのだ。
「……雨を受けて少しずつ回復していくのか。回復するより早く削り取っていくしかあるまい」
兵庫の言葉にジーナが応じ、再び前方に踏み出した。今度は盾を構え、防戦の構えだ。
「ああ、ならば回復手段のある私が囮となろう。その間に、奴にとどめを!」
その時、敵がジーナに意識を傾けたのか自分に背を向けたのを小夜は見過ごさなかった。
漆黒の巨大な刃を易々と構えて鋭くステップを踏み、敵を追う。
「お前は大きさは変わるし、色は見辛い! けど、ここはなにも変わらないでしょうが!」
繰り出されたのは疾風の二連撃だった。一度目は表面を軽く削ぎ、そして二度目は――。
「ギュアアアアア!!!」
虚ろな目のうちのひとつが、背後から潰された。眼球がどろどろとした白の流動体となり、地に流れ落ちる。敵の動きが再び止まるのをレオナルドは見逃さない。
「また回復するつもり? ダメダメ、これ以上悲劇の愛憎敵討ちなんで悲劇だわん。……一滴たりとも残しはしねぇよ」
彼の元から放たれる轟炎がスライムの周囲から水という水を蒸発させてしまう。
回復手段を絶たれたスライムは兵庫に飛び掛った。その動きは先ほどまでの鈍重な印象を裏切る鋭いものだった。
咄嗟に頭を腕で庇った兵庫。腕からつう、と血が流れる。
「……っ! 身体が縮んだ分、素早くなったか。だが着実に攻撃を当てていけば問題ないはずだ」
「はい、回復する以上のダメージを与えていけば、問題ありません。一網打尽……速攻です!」
ミオレスカの銃弾が変則的な動きを見せ、スライムを2度貫通した。
敵が怯むなり、兵庫は槍で強烈にそれを打ち据える。
「ギュ……ムウ!」
地に叩きつけられたスライムはすっかり小さくなっていた。その身体をぐっと立ち上がらせると、今度は前衛の隙を狙って身体を滑らせる。
「そっちには行かせんっ!!」
ヴァイスの鋭い突きがスライムを追う。しかしスライムは本気で逃げる算段なのだろう。スピードを犠牲にしながらもヴァイスのワイヤーの軌道よりも若干身を低くして地を滑り、なんとかやり過ごした。
しかし、その速度低下こそが命取りとなる。彼の形無き体を鷲掴みにする腕があったからだ。
「今度は私が……捕まえたぞ」
ジーナが伸ばした手と重なるように長く伸びた幻影の腕。それがスライムをしっかりと掴み取っていた。
「頼む、こいつをっ!」
幻影の手がぐん、とジーナの元に引き戻される。スライムは再び、ハンター達に囲まれることとなった。
小夜は今や自分より小さくなったスライムを目の前にして冷たく笑った。
「知っているか? ヴォーパルバニーからは逃げられない!」
「……逃さんよ。お前はここで俺達の手に掛かって倒されるのが定めだ」
ソウルトーチを再び発動させ、スライムの意識を引き寄せる兵庫。
そしてこちらに向かい静かに歩み寄るヴァイス。
スライムは破れかぶれとなり、自らの体を引きちぎって周囲にばら撒いた。
「……っ、何これっ」
ハンター達の体に強烈な粘液が纏わりつき、痛みと締め付けを与える。これをもっと早く使っていればスライムの運命はまた違ったものになっていたかもしれない。
しかし、時は既に遅かった。
ヴァイスの身体から再び炎が舞うのを見届けると、スライムは怒りと恨みに満ち満ちた心を全て焼き払われ、この世から消滅したのだった。
地面の上に残ったのは、手のひらにすっぽりと収まる大きさの目玉ひとつだった。
小夜が濡れた髪をかきあげながらそれに接近する。
雨の中で乾いていく不思議な目玉に、彼女は赤い包帯を巻きつけた人差し指を突きつけて言い放つ。
「復讐したい気持ちはわかるが! お前の敗因は、このヴォーパルバニーとエンカウントしてしまったことだ!」
その言葉を受けた瞬間に目玉は「パキ」と乾いた音を立てて、呆気なく割れた。
「皆も疲れていることと思うが、提案がある。住民をこちらに帰す前に一旦、街を一通り手分けして安全確認しておかないか? もしかしたらまだ雑魔の生き残りがいるかもしれない」
ヴァイスは一行の中で最も疲労の色が濃いにも関わらず、そう提案した。
ジーナが頷く。
「ああ。これで依頼完了と言いたいところだが、あれが最後の一匹とは限らない。住民の不安を考えれば、余力があるかぎりは見回っておくべきだろう」
「そうねえ、復讐の連鎖なんてベタなドラマはイマドキ流行らないもの。じゃあ、また後でね」
レオナルドはまるで散策に出かけるような気安さで街角に姿を消した。
小夜は馬を回収がてら、街の外周を確認するという。
頼もしい仲間たちの背に心の中で感謝を告げたヴァイスは自分の担当地域に向けて歩みだした。
兵庫が用水路の蓋を除け、散策中に拾った棒切れを水路の底に突っ込んだ。棒の動きを阻害する物は一切なく、水面に泥がパッと広がった。
彼の隣で万が一に備え、銃を構えていたミオレスカが安心したように手を下ろす。
「用水路にも、もう、いないようですね。皆さんの報告からも、もう大丈夫、のようです」
「少なくともこの街の周囲にあれの眷属がいなくなったのは確かだな。皆と合流したらここの住民が避難している村へ報告に行こう」
棒切れを道端の薪の山へ放り込む兵庫。その背にミオレスカがおもむろに呟いた。
「あの、思うところがあって、ハンターを狙ってきたのなら、意外ですね。時代と場所が違えば、彼らとも、分かり合える日がきたかも……」
その言葉に何とも言えない表情で振り返る兵庫。するとミオレスカは茶目っ気をこめておっとりと続けた。
「……ということは、おそらく、ないですよね。でも、何度現れても、私達が、みんなを守ります」
小さなエルフの少女の決意に兵庫は 力強く頷いた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/11 17:51:30 |
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作戦相談卓 玉兎 小夜(ka6009) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2017/07/12 23:55:14 |