ゲスト
(ka0000)
【孤唱】独りの嘆きと枯れる木々
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/18 09:00
- 完成日
- 2017/07/24 11:40
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●まさかと思うが
グラズヘイム王国のとある地域、山の中に木々が枯れ始めているところがあるという。微々たるものであるため、何か害虫か病気によるものというもの考えられると近くの村の人は思っていた。それでも山全体に広まる前に対策は取らねばならない。
そこに何があるかという問いかけに、明確に答えられる人はいない。
かなり昔、貴族が家を建てて別荘にしたけど放置した――らしい。
道はあっても獣が多い場所であり、猟師と木こりが組んでいかないとならないくらい、最近は行かない場所だった。
ただ、二年くらい前から誰かいる気配がある上に、村の近くで貴族の少年らしい姿を見かけている。
昨年巨大な生き物が飛来したのが目撃されている。
ドラゴンだとかなんだの言われているが、大きな鳥ではない何かだったとしか言いようがなかった。
最近は犬や猫の鳴き声も響き渡ったこともある。
だから、村の代表者は調査に行くためにハンターを雇うことを決心する。
何が起こるか分からない。
途中で野営しないとならないという距離だという。いや、強行すればその家まではたどり着ける。正直言って、荒れるに任せたため危険な状況となってしまった。
ハンターへの依頼は調査に行く村人の護衛。行きの途中と現地で野営の予定であるが、帰りは道があるためその日のうちには戻ってこられるだろうと村の方は考えている。
勿論、食事は村持ちなので護衛をきちんとしてくれればいいとなっている。
何事もなければ山の散策で終わる仕事である。何もないことを祈りつつ、木々が枯れている理由が何か不安を胸に調査隊は出発することになる。
●真相、家の主
憂悦孤唱プエルは特にやることなく日々を送っていた。
とはいえ、王国を無に帰すとしてもどうすればいいのか、独りだけどどうにかしないといけないと必死に考えていた。
「うーん、クロフェドに会おう!」
手紙を書いたが、どう届けるのか悩んで日記帳に挟み込む。
それから元の検討課題に戻り、無に帰す方法をあれこれ考えた。
そして、飽きた。
「レチタティーヴォ様はやっぱりすごいヒトだったんだなぁ……僕は到底追いつけないのか……ううう」
プエルは地図をベッドの上に放り投げる。
「お菓子もなくなっちゃったよ……」
プエルを模したと思われる人形たちが周りで「えー」というようなしぐさをしている。手にはチラシを持って何かアピールしている。
「そうだ、買わないといけない! 新作のお菓子が出るんだった!」
人形たちが周りで踊る。
「……なんかおかしい?」
プエルは首をかしげる。
「まあいいや。僕、歪虚だし、領地のこととか考えなくていいんだし。自由にしていいんだよね! もちろん、レチタティーヴォ様へのあこがれは別だけど……そうだよ、生の情報って重要だ! 出かける準備だ」
人形たちが楽しそうに踊った。
「お前たちは留守番!」
嫌だというように人形たちは動く。
「なーんて、連れてくよ」
カバンに詰められるだけ詰めて、プエルは出かける。
村人に不審がられているなど露とも知らない。
グラズヘイム王国のとある地域、山の中に木々が枯れ始めているところがあるという。微々たるものであるため、何か害虫か病気によるものというもの考えられると近くの村の人は思っていた。それでも山全体に広まる前に対策は取らねばならない。
そこに何があるかという問いかけに、明確に答えられる人はいない。
かなり昔、貴族が家を建てて別荘にしたけど放置した――らしい。
道はあっても獣が多い場所であり、猟師と木こりが組んでいかないとならないくらい、最近は行かない場所だった。
ただ、二年くらい前から誰かいる気配がある上に、村の近くで貴族の少年らしい姿を見かけている。
昨年巨大な生き物が飛来したのが目撃されている。
ドラゴンだとかなんだの言われているが、大きな鳥ではない何かだったとしか言いようがなかった。
最近は犬や猫の鳴き声も響き渡ったこともある。
だから、村の代表者は調査に行くためにハンターを雇うことを決心する。
何が起こるか分からない。
途中で野営しないとならないという距離だという。いや、強行すればその家まではたどり着ける。正直言って、荒れるに任せたため危険な状況となってしまった。
ハンターへの依頼は調査に行く村人の護衛。行きの途中と現地で野営の予定であるが、帰りは道があるためその日のうちには戻ってこられるだろうと村の方は考えている。
勿論、食事は村持ちなので護衛をきちんとしてくれればいいとなっている。
何事もなければ山の散策で終わる仕事である。何もないことを祈りつつ、木々が枯れている理由が何か不安を胸に調査隊は出発することになる。
●真相、家の主
憂悦孤唱プエルは特にやることなく日々を送っていた。
とはいえ、王国を無に帰すとしてもどうすればいいのか、独りだけどどうにかしないといけないと必死に考えていた。
「うーん、クロフェドに会おう!」
手紙を書いたが、どう届けるのか悩んで日記帳に挟み込む。
それから元の検討課題に戻り、無に帰す方法をあれこれ考えた。
そして、飽きた。
「レチタティーヴォ様はやっぱりすごいヒトだったんだなぁ……僕は到底追いつけないのか……ううう」
プエルは地図をベッドの上に放り投げる。
「お菓子もなくなっちゃったよ……」
プエルを模したと思われる人形たちが周りで「えー」というようなしぐさをしている。手にはチラシを持って何かアピールしている。
「そうだ、買わないといけない! 新作のお菓子が出るんだった!」
人形たちが周りで踊る。
「……なんかおかしい?」
プエルは首をかしげる。
「まあいいや。僕、歪虚だし、領地のこととか考えなくていいんだし。自由にしていいんだよね! もちろん、レチタティーヴォ様へのあこがれは別だけど……そうだよ、生の情報って重要だ! 出かける準備だ」
人形たちが楽しそうに踊った。
「お前たちは留守番!」
嫌だというように人形たちは動く。
「なーんて、連れてくよ」
カバンに詰められるだけ詰めて、プエルは出かける。
村人に不審がられているなど露とも知らない。
リプレイ本文
●野営
昔は道だったところはせいぜい獣道で、枝を落としたり時には灌木を倒したりして進まざるを得なかった。ここまでは土も生き、木々も成長する普通の森であった。
村の代表として同行するカリューとキリーはハンターたちとテントを張り野営をする。
「ここまで険しい道でした。カリュー様、キリー様はお疲れではないでしょうか? 設営は私が行いますので、お休みください」
オートマトンのフィロ(ka6966)は目覚めてまだ間もなく、記録されたことをもとにメイドでありハンターとして行動する。
カリューとキリーは当初、敬称に困惑していたが現在は慣れたようだ。二人はフィロに礼を述べるとたき火のところに向かう。
「まさか、バイクが入れないほどとは思わなかったわ。……でも、子供が出入りしたの見たのよね?」
マリィア・バルデス(ka5848)はたき火から少し離れたところで警戒を行っている。慣れていれば軽々行き来は可能かもしれないし、通常用の別のルートもあるかもしれない。
「しっかし、辺鄙なところに屋敷を作ったものだな……資材を運ぶだけでも大変だろうに」
ラジェンドラ(ka6353)はテントを張り終えたき火のそばにきた。
「道はあったとしても今は獣道がせいぜいよね? 本当に誰かいるのかな?」
箍崎 来流未(ka2219)は見張りをしつつ、確認と疑問を口にした。
「村の周りも木々は茂っているのに、あのあたりだけ枯れるのか? こいつは調べる甲斐があるねぇ」
龍宮 アキノ(ka6831)はたき火のそばで休みながらつぶやいた。彼女は科学で説明できな怪異現象が好きである。
「……空を飛ぶものがいたっていうなら行動は楽だ……とはいえ、ドラゴンが出たらもっと話題になる」
ミリア・ラスティソード(ka1287)は嫌だなと空を見上げる。木が覆い茂っているため空はあまり見えない。
「うーん、実際見てみないとあれだが……ワイバーンはもういないんじゃないか?」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は脳内にプエル(kz0127)の姿がよぎった。
「ワイバーン自体は討伐したんだ……最近見ていないなら……でも、まあ、本人がいるかわわからないが」
念のためプエルの使う技なども共有しておいた。
夜は男子のテントにミリアが侵入したり、来流未とラジェンドラが互いに紅茶やコーヒーを交換していたりなど、平穏に過ぎて行った。
●対雑魔
マリィアは犬を連れて先に移動していた。土は固さも柔らかさも持ち合わせて、手に取れば生きている匂いが漂う。
現場に近づくと草木の元気がなくなっていくのは明らかだった。
不意に連れの犬がうなり声をあげるが、進行方向からも聞こえる。
「……α、こっちに来なさい」
マリィアは犬に戻るように指示し、武器に手を掛ける。離れたことによりうなり声は消える。
合流後、同行人と仲間に報告する。
「本当に何かいるのか」
「そうだね……心配かけないようにしないと」
来流未はちらりとラジェンドラを見て、自分に言い聞かせるように小さく言った。
枯れている草木が増えると同行人は不安そうになる。
「カリュー様、キリー様の警護を優先します」
フィロが安心させるように微笑みかける。
レイオスとミリアが少し先行し、木の陰から先を見る。手入れされているが枯れている庭と一軒の家があるのが見えた。
「……いるな」
レイオスは、背後にいる仲間に合図を出した。
庭に入った時点で獣のうなり声が近づいてきた。犬だった物と思われるものが三体、ハンターが武器を構えたところに攻撃を仕掛けてくる。
しかし、前に出ていたミリア、レイオス、来流未は回避をした。
屋根の上にいる黒い影が飛び降りるとともに攻撃してきた。こちらは後方にまで跳んだものもあり、一体はフィロを攻撃し、彼女は傷を受ける。
「……問題ありません」
ハンターたちは依頼人たる一般人がいる為、敵はすぐに殲滅する必要があった。
「行くぞ」
ミリアが先陣を切って攻撃を仕掛ける。続く攻撃は命中し、犬雑魔と猫雑魔一体ずつを残すだけになる。
再び雑魔が先手を取り、攻撃をする。猫雑魔はフィロにかまう。
犬雑魔は遠吠えをした。
「まさか仲間でも呼ぶのかい?」
アキノは研究者として雑魔に仲間が来るのか興味深いとは思った。
雑魔たちはハンターたちの攻撃に耐えられず、無に還った。
遠吠えにより敵が来るのか、暫くハンターたちは警戒していた。しかし、何か来る気配はなかった。
●調査
ラジェンドラは来流未の行動を視界に収めつつ、庭の調査をする。
「さっきの雑魔が草むしりはしないよな」
伸び放題で枯れたわけではなく、刈った後に枯れたと読み取った。
「……なんか、子供が遊んでいたような跡だよな」
転がっている籠のそばには棒とロープがあり、小鳥でも取るかのようだ。
「そんなのでとれるのかな?」
来流未が尋ねる。
「んー? 忍耐力が試されるか、な?」
「餌付けから始まる小鳥捕獲」
来流未は現実的ではないと思う。それだけ時間の余裕があるのか、よほど小鳥が好きでないとやれないだろう。
来流未は周囲の警戒に戻っていく。
ラジェンドラは木の棒にで作られたお墓もあるのを見つけた。
枯れているのは別の原因で、歪虚はいないということだろうかとラジェンドラは考えてしまう。雑魔がいたのは事実であり、家の中にいるのかもしれない。
マリィアは家から少し離れる。木々が枯れているところとの境界当たりに向かうと魔導カメラで観察した結果を納める。
「土は乾きすぎていないし、根元に不自然な穴もない。葉や皮に食害も見られないし、虫が大量発生していない……まあ目に見える範囲だと負のマテリアル……が多い、気がするわね」
つぶやくと暫く観察する。
アキノは庭の中で調査をしていた。
「確かにこの家を中心に立ち枯れしているねぇ」
歪虚がいればマテリアルの浸食により枯れていくのは実際ある。しかし、違う理由があって枯れている可能性も否定はしない。
「おや? こっちに抜ける道はあるのかな。人が一人通れるくらい……」
踏み固められているので使われていることは示している。
同行人にこの先がどこに続いているか戻って聞くことにした。
フィロは負傷を簡単に手当てして、依頼人である二人についている。
「ここが目的地ですね。家の中の方が安全かはまだわかりません。中に敵が潜んでいる可能性もあります。どうぞ、こちらにいてください」
カリューとキリーは雑魔がいておびえていたが、ハンターの活躍を目の当たりにし落ち着いているようには見える。
家の中に入ったミリアとレイオスは用心は続ける。隠れていて攻撃を受けることを危惧していた。
玄関の鍵が開いているという不用心極まりない状況であったが、この場所で鍵がいるかという疑問すらある。一方で窓はきちんと施錠されていた。
「……なんか見覚えがあるなあ」
転がっている人形が大きさ五十センチくらいで三頭身の形ばかりだ。それも、子供と赤毛の男という組み合わせ。羊のぬいぐるみは綿がはみ出て転がっている。
レイオスは窓のカギを開け放っていく。必要ならすぐに外に出られるようにという処置であった。
「……この人形もこれも……プエルいるな……おい、奴がいるかもしれないから注意をしろよ」
庭にいる人たちに声をかけた。
同行人のそばにいるフィロは神妙にうなずく。
「……なぜ、並べているんだ」
レイオスは中に一緒に来たミリアは赤毛の男の人形とプエル人形を居間に並べていた。
「特には……掃除のついで。この綿が出ている羊はいらないんだろうな」
分別していく。一晩明かすことになったとき家は使えあるし、ついでの掃除。
「食べ物の箱や袋が多い。その上、きちんとまとめられている……細かい」
ミリアは分析する。
「……やっぱり、プエルがいるのか」
表情が暗くなる。プエルは歪虚でも彼女の知っている限りではどこでもいる子供のように見えた。
「あいつ、集落一個消したことあるからな。それに人間平気で殺すぞ」
レイオスが指摘する。
「うーん。ぴんと来ないんだよ」
「まー、ボス死んだあと何もできていないみたいだからな。こっちは助かるが」
レイオスは二階に上がって調べることにした。
マリィアは調査の途中、鳥が警告の声をあげ飛び立ったのに気付いた。
鳥が声をあげ飛び立ったのだ。
「……何か来ているの?」
仲間と合流すべく戻る。
プエルはペットの遠吠えを耳にしていていた。
「……僕のおうちで何かあったんだ! 気を付けるよ」
足元にいるプエル人形たちはバタフライナイフを握りしめた。
家の周囲はのどかであった。鳥の声や動物の気配がないだけで、いたって普通だ。
アキノは道がある方向は別の集落につながっていると教わる。そして、少し見に行ってみようとした。
「ん? こんなところに子供?」
家の陰にちらりと何か見え、ラジェンドラが口にした。
「歪虚よ!」
マリィアが遠くから近寄りつつ警告の声をあげた。
「……っ! 襲撃です、迎撃します」
その時、フィロは声をあげた。
枯れた木の隙間から男の子の人形が三体現れてカリューとキリーを攻撃しようとしていた。フィロとラジェンドラ、来流未とアキノが素早く対応した。
「小さいから当てづらいだけで問題ないわっ」
来流未は覚醒状態であり、狂気に憑かれたような声音。
「それは言えているな……」
ラジェンドラの攻撃で人形は綿を出して粉々になる。
「動く人形、これは雑魔か」
アキノは機導砲で攻撃をした。
「余の家から出ていけ!!」
キンとした声でプエルは告げると同時に、闇のマテリアルの塊である矢を放った。
同行者に矢は向かうが、途中にいる来流未に命中する。
「っ! あらあ、痛い……」
ギラギラ輝く目を向け、プエルに打ちかかろうとするが、ラジェンドラが引き留める。
「矢がクルミに当たった後、弾けた。かろうじて後ろにいた二人には当たらなかったがな」
「……」
下手に刺激すると、プエルの反撃が恐ろしい結果を出すと理解した。
「人間の少年ですよね? でも、人形に近いような気がしますが?」
フィロは知識を引き出そうとしたが、依頼人たちを守ることに集中した。
「プエル、何やってんだ」
ミリアは家から飛び出して、プエルの前に立ちはだかる。ハンターを攻撃したことで、プエルがさらなる攻撃をしてくる可能性はある。そうなれば応戦する構えだ。
「お前! 余の家になんでいるんだ」
プエルは至近距離に来られると困るらしく、じりじり下がる。
「人形が人形持って出て行ったが……って、やっぱりお前か」
レイオスは武器を抜く。
居間にあった赤毛の人形を抱えたプエル人形たちはプエルの後ろに逃げ込んだ。
「ニコ……ラス?」
遠目から見たときは信じられなかったマリィアは近づいて目を見張った。
プエルはマリィアの方をちらりと見る。
「どうして余の名前を知っているんだ……ああ、まあ、父上とイノアがいるのだから当たり前か」
プエルは冷静な言葉を洩らした。
アキノは状況を見て内心笑みを深くし、依頼人を守る位置に待機した。
●撤収
レイオスはプエルを倒したいが、万全な状況ではないため様子をうかがう。
「木が枯れたのはお前が長く居ついたせいかよっ!」
「余だってこんな辺鄙なところにいたくはない。居心地はいいけど、町が遠すぎる」
レイオスがあきれたと突っ込んだ言葉にプエルは真顔で答える。
「今回はお前の討伐依頼じゃないが……攻撃をするなら容赦はしない」
ミリアは低く押し殺した声で告げる。
「……えー」
プエルは頬を膨らませる。
「ここは余の大切な家だよ。それだというのに大挙して来て、家探しするなんてひどいじゃないか」
「そういう理論か」
ラジェンドラはプエルが歪虚であるというのを差し引いて考えれば、成り立つ話だと理解はした。しかし、恋人が攻撃を受けて黙っているのもシャクである。
「最近は見ないと思ったら次の演目の準備でもしていたのか」
「……そそそうだ!」
質問したレイオスからため息が漏れた。この素直な反応があるため追い込みにくくなる。
「出て行ってくれる?」
プエルは小首をかしげて問う。
ハンターの答えは決まっている。集落の怯えのため、ここに歪虚がいると分かった時点で排除だ。
「せめて旅支度くらいさせてよ」
「へええ、歪虚でもそういうのは必要なのかねぇ?」
「必要さ! 余は人形を持っていきたいし」
「それをどうするんだい?」
「これはただの人形……大切にしまって、夜は抱きしめるんだ」
「ただの人形と違う人形があるのかい?」
「あったよ。去年壊れたのは特別な人形。今、うちにあるのはただの人形」
アキノが質問すると素直に返答がある。
「分かった、荷物まとめて出ていけ」
「え? いいの?」
プエルは用心しながら家の中に入る。そして、ミリアとレイオスが見ている中、トランクに洋服とティーセットや日記と地図をしまう。
「よいしょ」
プエル人形は歩いてついて行く。
「……父上のところにでも行こうかな」
プエルはとぼとぼ歩きだす、背中を見せないよう用心はしている。
「お前は王国に決闘状でも出すのか?」
ミリアの問いかけにプエルは笑う。
「なんで? 無に還るとしても楽しいことは楽しい方がいいよ」
答えになっていない答え。
「あー、こんなことなら爆発するとか仕掛け作れば良かった」
プエルは木々に隠れた。
「不吉なことを言いましたね」
フィロが恐る恐る家を見る。
「中に何もないと思うが」
レイオスはこれまでのプエルの行動から分析する。
「まあ、全員で入らなければ問題なかろう。ところで、本当にあれは歪虚で、どういった流れでなったのかとか気になるのだが」
アキノの質問に答えながらレイオスは家の探索再開する。
「……あのニコラスが」
マリィアはポイントしていた銃を下した。彼女が知っているのはプエルになる前のニコラスであり、それもライブラリではじき出された想像上であった。
「人を殺してきているのだから、歪虚だから倒さないといけない」
生前であり違う未来に歩ける世界を見たマリィアはうめいた。
「クルミ、痛いか?」
覚醒状態から戻ると、来流未は痛みを強く感じた。
「うん、大丈夫だよ」
「……守れなくて……」
「いえ。ラジェンドラさんはきちんと守ってくれました」
ラジェンドラは来流未を優しく抱きしめて、傷みを少しでも軽減できればと願った。
「これで無事終了でしょうか? あのプエルという歪虚が戻ってこないことが前提になりますが。カリュー様とキリー様の警護を行います。今のうちに調査してしまいましょう」
フィロは温和な雰囲気のまま力強く告げ、村人二人に促した。
特に変わったものは出てこなかった。
ここで生活をしていたというのは事実のようだという裏付けはされた。
昔は道だったところはせいぜい獣道で、枝を落としたり時には灌木を倒したりして進まざるを得なかった。ここまでは土も生き、木々も成長する普通の森であった。
村の代表として同行するカリューとキリーはハンターたちとテントを張り野営をする。
「ここまで険しい道でした。カリュー様、キリー様はお疲れではないでしょうか? 設営は私が行いますので、お休みください」
オートマトンのフィロ(ka6966)は目覚めてまだ間もなく、記録されたことをもとにメイドでありハンターとして行動する。
カリューとキリーは当初、敬称に困惑していたが現在は慣れたようだ。二人はフィロに礼を述べるとたき火のところに向かう。
「まさか、バイクが入れないほどとは思わなかったわ。……でも、子供が出入りしたの見たのよね?」
マリィア・バルデス(ka5848)はたき火から少し離れたところで警戒を行っている。慣れていれば軽々行き来は可能かもしれないし、通常用の別のルートもあるかもしれない。
「しっかし、辺鄙なところに屋敷を作ったものだな……資材を運ぶだけでも大変だろうに」
ラジェンドラ(ka6353)はテントを張り終えたき火のそばにきた。
「道はあったとしても今は獣道がせいぜいよね? 本当に誰かいるのかな?」
箍崎 来流未(ka2219)は見張りをしつつ、確認と疑問を口にした。
「村の周りも木々は茂っているのに、あのあたりだけ枯れるのか? こいつは調べる甲斐があるねぇ」
龍宮 アキノ(ka6831)はたき火のそばで休みながらつぶやいた。彼女は科学で説明できな怪異現象が好きである。
「……空を飛ぶものがいたっていうなら行動は楽だ……とはいえ、ドラゴンが出たらもっと話題になる」
ミリア・ラスティソード(ka1287)は嫌だなと空を見上げる。木が覆い茂っているため空はあまり見えない。
「うーん、実際見てみないとあれだが……ワイバーンはもういないんじゃないか?」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は脳内にプエル(kz0127)の姿がよぎった。
「ワイバーン自体は討伐したんだ……最近見ていないなら……でも、まあ、本人がいるかわわからないが」
念のためプエルの使う技なども共有しておいた。
夜は男子のテントにミリアが侵入したり、来流未とラジェンドラが互いに紅茶やコーヒーを交換していたりなど、平穏に過ぎて行った。
●対雑魔
マリィアは犬を連れて先に移動していた。土は固さも柔らかさも持ち合わせて、手に取れば生きている匂いが漂う。
現場に近づくと草木の元気がなくなっていくのは明らかだった。
不意に連れの犬がうなり声をあげるが、進行方向からも聞こえる。
「……α、こっちに来なさい」
マリィアは犬に戻るように指示し、武器に手を掛ける。離れたことによりうなり声は消える。
合流後、同行人と仲間に報告する。
「本当に何かいるのか」
「そうだね……心配かけないようにしないと」
来流未はちらりとラジェンドラを見て、自分に言い聞かせるように小さく言った。
枯れている草木が増えると同行人は不安そうになる。
「カリュー様、キリー様の警護を優先します」
フィロが安心させるように微笑みかける。
レイオスとミリアが少し先行し、木の陰から先を見る。手入れされているが枯れている庭と一軒の家があるのが見えた。
「……いるな」
レイオスは、背後にいる仲間に合図を出した。
庭に入った時点で獣のうなり声が近づいてきた。犬だった物と思われるものが三体、ハンターが武器を構えたところに攻撃を仕掛けてくる。
しかし、前に出ていたミリア、レイオス、来流未は回避をした。
屋根の上にいる黒い影が飛び降りるとともに攻撃してきた。こちらは後方にまで跳んだものもあり、一体はフィロを攻撃し、彼女は傷を受ける。
「……問題ありません」
ハンターたちは依頼人たる一般人がいる為、敵はすぐに殲滅する必要があった。
「行くぞ」
ミリアが先陣を切って攻撃を仕掛ける。続く攻撃は命中し、犬雑魔と猫雑魔一体ずつを残すだけになる。
再び雑魔が先手を取り、攻撃をする。猫雑魔はフィロにかまう。
犬雑魔は遠吠えをした。
「まさか仲間でも呼ぶのかい?」
アキノは研究者として雑魔に仲間が来るのか興味深いとは思った。
雑魔たちはハンターたちの攻撃に耐えられず、無に還った。
遠吠えにより敵が来るのか、暫くハンターたちは警戒していた。しかし、何か来る気配はなかった。
●調査
ラジェンドラは来流未の行動を視界に収めつつ、庭の調査をする。
「さっきの雑魔が草むしりはしないよな」
伸び放題で枯れたわけではなく、刈った後に枯れたと読み取った。
「……なんか、子供が遊んでいたような跡だよな」
転がっている籠のそばには棒とロープがあり、小鳥でも取るかのようだ。
「そんなのでとれるのかな?」
来流未が尋ねる。
「んー? 忍耐力が試されるか、な?」
「餌付けから始まる小鳥捕獲」
来流未は現実的ではないと思う。それだけ時間の余裕があるのか、よほど小鳥が好きでないとやれないだろう。
来流未は周囲の警戒に戻っていく。
ラジェンドラは木の棒にで作られたお墓もあるのを見つけた。
枯れているのは別の原因で、歪虚はいないということだろうかとラジェンドラは考えてしまう。雑魔がいたのは事実であり、家の中にいるのかもしれない。
マリィアは家から少し離れる。木々が枯れているところとの境界当たりに向かうと魔導カメラで観察した結果を納める。
「土は乾きすぎていないし、根元に不自然な穴もない。葉や皮に食害も見られないし、虫が大量発生していない……まあ目に見える範囲だと負のマテリアル……が多い、気がするわね」
つぶやくと暫く観察する。
アキノは庭の中で調査をしていた。
「確かにこの家を中心に立ち枯れしているねぇ」
歪虚がいればマテリアルの浸食により枯れていくのは実際ある。しかし、違う理由があって枯れている可能性も否定はしない。
「おや? こっちに抜ける道はあるのかな。人が一人通れるくらい……」
踏み固められているので使われていることは示している。
同行人にこの先がどこに続いているか戻って聞くことにした。
フィロは負傷を簡単に手当てして、依頼人である二人についている。
「ここが目的地ですね。家の中の方が安全かはまだわかりません。中に敵が潜んでいる可能性もあります。どうぞ、こちらにいてください」
カリューとキリーは雑魔がいておびえていたが、ハンターの活躍を目の当たりにし落ち着いているようには見える。
家の中に入ったミリアとレイオスは用心は続ける。隠れていて攻撃を受けることを危惧していた。
玄関の鍵が開いているという不用心極まりない状況であったが、この場所で鍵がいるかという疑問すらある。一方で窓はきちんと施錠されていた。
「……なんか見覚えがあるなあ」
転がっている人形が大きさ五十センチくらいで三頭身の形ばかりだ。それも、子供と赤毛の男という組み合わせ。羊のぬいぐるみは綿がはみ出て転がっている。
レイオスは窓のカギを開け放っていく。必要ならすぐに外に出られるようにという処置であった。
「……この人形もこれも……プエルいるな……おい、奴がいるかもしれないから注意をしろよ」
庭にいる人たちに声をかけた。
同行人のそばにいるフィロは神妙にうなずく。
「……なぜ、並べているんだ」
レイオスは中に一緒に来たミリアは赤毛の男の人形とプエル人形を居間に並べていた。
「特には……掃除のついで。この綿が出ている羊はいらないんだろうな」
分別していく。一晩明かすことになったとき家は使えあるし、ついでの掃除。
「食べ物の箱や袋が多い。その上、きちんとまとめられている……細かい」
ミリアは分析する。
「……やっぱり、プエルがいるのか」
表情が暗くなる。プエルは歪虚でも彼女の知っている限りではどこでもいる子供のように見えた。
「あいつ、集落一個消したことあるからな。それに人間平気で殺すぞ」
レイオスが指摘する。
「うーん。ぴんと来ないんだよ」
「まー、ボス死んだあと何もできていないみたいだからな。こっちは助かるが」
レイオスは二階に上がって調べることにした。
マリィアは調査の途中、鳥が警告の声をあげ飛び立ったのに気付いた。
鳥が声をあげ飛び立ったのだ。
「……何か来ているの?」
仲間と合流すべく戻る。
プエルはペットの遠吠えを耳にしていていた。
「……僕のおうちで何かあったんだ! 気を付けるよ」
足元にいるプエル人形たちはバタフライナイフを握りしめた。
家の周囲はのどかであった。鳥の声や動物の気配がないだけで、いたって普通だ。
アキノは道がある方向は別の集落につながっていると教わる。そして、少し見に行ってみようとした。
「ん? こんなところに子供?」
家の陰にちらりと何か見え、ラジェンドラが口にした。
「歪虚よ!」
マリィアが遠くから近寄りつつ警告の声をあげた。
「……っ! 襲撃です、迎撃します」
その時、フィロは声をあげた。
枯れた木の隙間から男の子の人形が三体現れてカリューとキリーを攻撃しようとしていた。フィロとラジェンドラ、来流未とアキノが素早く対応した。
「小さいから当てづらいだけで問題ないわっ」
来流未は覚醒状態であり、狂気に憑かれたような声音。
「それは言えているな……」
ラジェンドラの攻撃で人形は綿を出して粉々になる。
「動く人形、これは雑魔か」
アキノは機導砲で攻撃をした。
「余の家から出ていけ!!」
キンとした声でプエルは告げると同時に、闇のマテリアルの塊である矢を放った。
同行者に矢は向かうが、途中にいる来流未に命中する。
「っ! あらあ、痛い……」
ギラギラ輝く目を向け、プエルに打ちかかろうとするが、ラジェンドラが引き留める。
「矢がクルミに当たった後、弾けた。かろうじて後ろにいた二人には当たらなかったがな」
「……」
下手に刺激すると、プエルの反撃が恐ろしい結果を出すと理解した。
「人間の少年ですよね? でも、人形に近いような気がしますが?」
フィロは知識を引き出そうとしたが、依頼人たちを守ることに集中した。
「プエル、何やってんだ」
ミリアは家から飛び出して、プエルの前に立ちはだかる。ハンターを攻撃したことで、プエルがさらなる攻撃をしてくる可能性はある。そうなれば応戦する構えだ。
「お前! 余の家になんでいるんだ」
プエルは至近距離に来られると困るらしく、じりじり下がる。
「人形が人形持って出て行ったが……って、やっぱりお前か」
レイオスは武器を抜く。
居間にあった赤毛の人形を抱えたプエル人形たちはプエルの後ろに逃げ込んだ。
「ニコ……ラス?」
遠目から見たときは信じられなかったマリィアは近づいて目を見張った。
プエルはマリィアの方をちらりと見る。
「どうして余の名前を知っているんだ……ああ、まあ、父上とイノアがいるのだから当たり前か」
プエルは冷静な言葉を洩らした。
アキノは状況を見て内心笑みを深くし、依頼人を守る位置に待機した。
●撤収
レイオスはプエルを倒したいが、万全な状況ではないため様子をうかがう。
「木が枯れたのはお前が長く居ついたせいかよっ!」
「余だってこんな辺鄙なところにいたくはない。居心地はいいけど、町が遠すぎる」
レイオスがあきれたと突っ込んだ言葉にプエルは真顔で答える。
「今回はお前の討伐依頼じゃないが……攻撃をするなら容赦はしない」
ミリアは低く押し殺した声で告げる。
「……えー」
プエルは頬を膨らませる。
「ここは余の大切な家だよ。それだというのに大挙して来て、家探しするなんてひどいじゃないか」
「そういう理論か」
ラジェンドラはプエルが歪虚であるというのを差し引いて考えれば、成り立つ話だと理解はした。しかし、恋人が攻撃を受けて黙っているのもシャクである。
「最近は見ないと思ったら次の演目の準備でもしていたのか」
「……そそそうだ!」
質問したレイオスからため息が漏れた。この素直な反応があるため追い込みにくくなる。
「出て行ってくれる?」
プエルは小首をかしげて問う。
ハンターの答えは決まっている。集落の怯えのため、ここに歪虚がいると分かった時点で排除だ。
「せめて旅支度くらいさせてよ」
「へええ、歪虚でもそういうのは必要なのかねぇ?」
「必要さ! 余は人形を持っていきたいし」
「それをどうするんだい?」
「これはただの人形……大切にしまって、夜は抱きしめるんだ」
「ただの人形と違う人形があるのかい?」
「あったよ。去年壊れたのは特別な人形。今、うちにあるのはただの人形」
アキノが質問すると素直に返答がある。
「分かった、荷物まとめて出ていけ」
「え? いいの?」
プエルは用心しながら家の中に入る。そして、ミリアとレイオスが見ている中、トランクに洋服とティーセットや日記と地図をしまう。
「よいしょ」
プエル人形は歩いてついて行く。
「……父上のところにでも行こうかな」
プエルはとぼとぼ歩きだす、背中を見せないよう用心はしている。
「お前は王国に決闘状でも出すのか?」
ミリアの問いかけにプエルは笑う。
「なんで? 無に還るとしても楽しいことは楽しい方がいいよ」
答えになっていない答え。
「あー、こんなことなら爆発するとか仕掛け作れば良かった」
プエルは木々に隠れた。
「不吉なことを言いましたね」
フィロが恐る恐る家を見る。
「中に何もないと思うが」
レイオスはこれまでのプエルの行動から分析する。
「まあ、全員で入らなければ問題なかろう。ところで、本当にあれは歪虚で、どういった流れでなったのかとか気になるのだが」
アキノの質問に答えながらレイオスは家の探索再開する。
「……あのニコラスが」
マリィアはポイントしていた銃を下した。彼女が知っているのはプエルになる前のニコラスであり、それもライブラリではじき出された想像上であった。
「人を殺してきているのだから、歪虚だから倒さないといけない」
生前であり違う未来に歩ける世界を見たマリィアはうめいた。
「クルミ、痛いか?」
覚醒状態から戻ると、来流未は痛みを強く感じた。
「うん、大丈夫だよ」
「……守れなくて……」
「いえ。ラジェンドラさんはきちんと守ってくれました」
ラジェンドラは来流未を優しく抱きしめて、傷みを少しでも軽減できればと願った。
「これで無事終了でしょうか? あのプエルという歪虚が戻ってこないことが前提になりますが。カリュー様とキリー様の警護を行います。今のうちに調査してしまいましょう」
フィロは温和な雰囲気のまま力強く告げ、村人二人に促した。
特に変わったものは出てこなかった。
ここで生活をしていたというのは事実のようだという裏付けはされた。
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相談卓 ラジェンドラ(ka6353) 人間(リアルブルー)|26才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/07/18 00:58:13 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/17 22:21:13 |