• 界冥

【界冥】歪虚列車 緊急停止戦

マスター:紫月紫織

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
3~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/07/21 19:00
完成日
2017/08/03 09:27

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

◆蒼界へ臨む
 エバーグリーンで生み出され、クリムゾンウェストで目覚めたミモザにとって、異世界というのは関心事として大きな比重を占めていた。
 それは、リアルブルーの事であっても例外ではない。

 そんな彼女のもとにソサエティの一部グループからのささやきかけがあったのは、おそらく必然だったのだろう。



「鎌倉クラスタ……」

 ミモザを囲み、シルヴァとエリクシアはその話について考えを巡らせていた。
 発端はミモザが持ちかけられた話によるものだ。
 蒼界、リアルブルーにて行われる対歪虚拠点攻略戦。
 それに参加しないかという打診が、まだハンターとなって日の浅いミモザへと届いたのは、明らかに何かしらの意図あってのものだろう。

「どう見る、エリクシア? ソサエティ内部の動きは貴方の方が詳しいでしょう?」
「そう……ですね」

 しばらく思考を巡らせたエリクシアはミモザの方を見ると、少しだけ言いづらそうに口を開いた。

「おそらく、ミモザちゃんに戦力としての期待はされていないと思います。どちらかと言えば、"オートマトン"が人類の仲間となった、そして戦いに加わったこと。それを広告するための一手として考えているんでしょう」
「立場的にオフィス預かりのミモザは、それに持ち出す上で手頃だった、ってこと?」
「言い方は悪いかもしれませんが、その通りですね。ミモザちゃんは引っ張り出しやすい、そういう意味で目をつけられたのでしょう」

 現在、法的に見ればオートマトンに人権は存在しない。
 それを主張しているのは各国のユニオン――帝国であればAPV――とハンターオフィスである。
 そういう意味で、色々と実績を上げさせて既成事実としてそう認識させてしまうというのは政治における一つの手段だろう。
 オートマトンに人権を認めているハンターズソサエティとしては、そういう働きかけをするための手札がほしいと思う者もいる。
 世論を味方につけよう、ということだ。

「依頼の内容事態は、最前線に出るようなものではありません。これはおそらくですが、失敗のリスクを極力回避するためでしょうね」

 新たな仲間が心もとない、では広告として不十分ですから。
 そう続けるエリクシア。
 二人の視線がミモザを捉える、当の彼女は話の大筋自体は首を傾げていた。
 政治向きの話について、まだ深く考えるほどの世間を理解できているかと言えば怪しい所である。
 ただ一つ、ミモザが依頼に対して引かない理由があるとするならば、それが自分だから出来ることである、ということだけ。

「……返事は聞くまでもなさそうね?」

 目をキラキラと輝かせたミモザ、それがすべてを物語っている。

「うん、それが私にできることなら、精一杯やってみたい!」

 そう答えるミモザの前に、作戦概要をまとめた資料が置かれていた。

◆鹵獲路線
 湘南モノレールの路線上、眼下にある横須賀線を辿り、彼の視線は大船駅へと向く。

「まったく……鹵獲運用って言われれば確かにその通りだが、される側ってのは気に食わねえモンだな」

 線路上に巣喰う歪虚、それを望遠鏡で確認しながら、神座御 純一は不快さを隠そうともしないで吐き捨てた。
 電車は現代人類における生活の象徴の一つでもある。
 それを歪虚に好きなようにされているのは不愉快極まる、そんな感情が漏れてくるようだった。

 ただ、本当に苛立っている理由はおそらく歪虚に対してではなく、自身が所属する統一連合宙軍所属で対処できないという現実に対して、のほうが比重が大きいと言えるだろう。

「まぁ、そんなことを言っても現実は変わらねえからな……作戦の概要を再確認するぜ。本作戦は北鎌倉駅に存在するアンテナ塔の破壊支援だ。具体的にはこの路線を通ってやってくるであろう歪虚の増援を足止め、可能なら撃破することにある」
「増援の種類はわかってるんですか?」
「鹵獲された鉄道車両、列車だな」

 同行するシルヴァからの言葉に完結に返す純一。
 その言葉にシルヴァは、はてなと首を傾げた。
 隣りにいるミモザが、資料にあったよ、と突っ込んだのを、純一はそっと触れないことにした。

「……まあ、鉄製の馬車を大量につなげた代物だと思ってくれ。こいつは定められた経路しか通れない代わりにかなりの速度と輸送量を誇る、それが北鎌倉駅へ向かう場合、下の線路を通るって寸法だ」

 つまりこの場所が待ち伏せに最適ってことさ、と純一は続ける。
 乗り移るにしても、ここから直接攻撃するにしても、たしかにここ以上の立地は無いだろう。

「追加で調査してわかった情報だが、やっこさん、コアのある最前列車両はガッチガチに防御を固めてやがる。これを突破するのには相当の火力か、直接中に乗り込むかのどちらかが必要だろう、ってのが俺たちの出した結論だ。それから、歪虚列車がこの下を通る時間は十秒ほどだ、それも含めた上で対応を頼むぜ」

リプレイ本文

●純一准尉の憂鬱
 望遠鏡で覗く視界に、わらわらと大船駅に集まる狂気歪虚の姿が映る。
 乗車率なんて考えたくもねぇと毒づく純一の眼下では、普段なら思わず止めに入るような光景が広がっていた。
 ロープを伝って下へと下りた四人が思い思いに列車を妨害するための工作に勤しんでいる。
(注:路線へのイタズラは絶対におやめください、ってか……これ、後で俺が上の方に上手く言っとかないとなんだろうなあ)
 仕方がないこととはいえ、ちょっとブルー。
 歪虚相手に何もできない我が身を嘆き、純一はちょっと涙した。
 ボーナス……引かれないといいな。
 路線には着々と仕掛けが施されていく。
 作:メアリ・ロイド(ka6633)のレールとロープの土石和え。
 作:門垣 源一郎(ka6320)の瓦礫とワイヤーのガレット・デ・ロワ。
 作:ステラ=ライムライト(ka5122)のワイヤーとコンクリートブロックのカラメルソース仕立て。
 作:グリムバルド・グリーンウッド(ka4409)の路線のムニエル、鉄塊をそえて……。

 ――やめよう。

 自分に命名センスはないし、茶化してみれば胃痛も収まるかと思ったがそんなこともなかった、キリキリする。
 作戦の成功を祈りたいような、光景的に祈りたくなような、そんな複雑な心境である。
 心境といえばもう一つ、ハンター達にも純一の心を揺さぶる要因があった。
 半分ほどが、十代中頃の少年少女であるということだ。
 下に見るでも、侮るわけでもない。
 覚醒者の実力は十分に知っている。
 それでも、守りたかった人々の姿と特に重なる彼らの戦う姿は、純一の心を何処かざわつかせた。

「ミモザさん、大船に乗ったつもりで、気負わずにですよ!」
 ふんす、とばかりに鼻息の荒いアシェ-ル(ka2983)であるが、それもそのはず、新たに身に着けた力に自信が当社比三割増しぐらいである。
 初の本格的な歪虚との戦闘で気負いしていたミモザにとっては、ちょうどよい励ましだった。
 そんなミモザは現在絶賛ロス・バーミリオン(ka4718)のハグの対象となってはぐはぐされている。
「そうそう、アシェールちゃんの言うとおりよ。気負いすぎると思った以上に体がこわばるから、練習どおりにね。私達がいるんだから大丈夫よっ!」
「う、うん……がんばるっ」
「ミモザ」
 鞘を握る力が少し抜け、緊張も多少落ち着いたかという所で、ルベーノ・バルバライン(ka6752)が声を掛ける。
「ミモザ、お前も俺達と一緒に先頭車両まで行かないか」
 その言葉に、場に居た全員の視線が集中する。
「今のミモザの装備だと、前線に立つのは向かない気もしますけど?」
 シルヴァの言うとおり、スキル構成も補助寄りになっている、だがそれも承知だと頷いて彼は続ける。
「強くなれば滅多なことでは重体にもならなくなる。今の内だけなのだ。重体になるのも経験の内、そして依頼の結果を自分の目で見なくてはハンターとしての経験は深まらん…俺の持論だ」
 すさっ、とロゼとシルヴァがミモザに距離をとらせた。
 何やら誤解を招いたのかもしれない。
 ミモザはと言うと「なんかすごいこと言われた気がする」といった顔で目をぱちくりさせていた、あまり理解の及ばない様子だ。
「依頼の結果を自分で見ないと、ってのはわかるかな」
 イェルバート(ka1772)の言葉に、皆もそこには同意する。
「それはそうと、おめでとうミモザ」
 以前に会ったときに比べるとちゃんとした――やや初々しい――装備を身に着けた彼女にそう祝いの言葉をかける。
 自然、話題はそちらの方へと流れ、ミモザはコア破壊についていくが補助的に立ち回ることとなった。
「大丈夫だよ。ミモザ一人で戦うわけじゃない。一緒に戦う仲間がいるから」
 だから安心して、と。
 そんな皆の言葉に、戸惑いと不安と、ほんの少しの期待を混ぜた瞳が輝いた。

「……動きが変わったな、おおい! そろそろ戻ってくれ!」
 眼下に形成されていたのは普通の列車であればもう大惨事確定の光景である。
 そんなものを作っていた四人がそれぞれロープなどを伝って戻ってくるまでに数十秒もかからない。
「動きがあったか?」
「歪虚の連中が外に居なくなった。そろそろ来るぜ」
 門垣のシンプルな質問に望遠鏡を除きながら答える純一。
「横転してくれればいいけど、してくれるかな……」
「相手が狂気だしなぁ……」
「やっぱり楽観はできないよね」
 ステラの言葉にグリムバルドが思案げに答える、そこまでの成果を期待していいものか、という目算混じりの言葉に感じられた。
「ミモザさんは先頭車両のほうに来るのですね、では隊列は間に挟むように」
「上手く隊列を維持出来るといいんだがな……」
 メアリの言葉を遮るように門垣が横から言葉を差し込む。
 列車の大きさ、速さ、飛ぶ位置、運行状況。
 それらを考えると楽観視はできない。
「全員予定通りに着地できない可能性のほうが高いと思っていいだろう」
「バラける可能性のほうが高いってことか」
「そういうことだ、何もせず載せてくれるほど連中は親切ではあるまい」
 グリムバルドの言葉を肯定しつつ、こちらも罠を仕掛けているのだしなと付け加える。

 かちん、という小さな金具の音と共にイェルバートが懐中時計を開く。
 北鎌倉駅の作戦は順調だろうか……秒針はカチカチと規則正しく時を刻む、そして――

「来たっ!」
 望遠鏡を覗く純一から合図が飛ぶ。
 それと同時に皆が一斉に覚醒状態へと移行する。
「距離と速度を捕捉……推定67カウント後に交錯する!」
「大魔道士の力……お見せしましょう!」
 路線を見下ろせる場所に陣取り、純一のカウントに合わせより強力な魔法を発動させるべく長い詠唱へと入る。
「17……16……15……」

 ――神名をここへ、楔突き立て鎖を持って、縛り付ける戒めは逃るるものなし、森羅万象すべからく、戒め以て締め上げよ

 長い長い詠唱とともに開放されたアシェールの大魔法が周辺の空間ごとを歪ませた。
 交錯地点へと差し掛かった歪虚列車はその重力に押しつぶされその進行を大きく歪ませる。
 金属で金属を轢き潰すかのような耳障りな残響。
 本来ならありえぬ力をかけられて金属同士が悲鳴を上げているのだ。
 飛び散る火花までもが重力に捕われて地面へと散るなかで、その列車は大きくたわみ、歪み、そして仕掛けへと突き進んで大きく跳ね上がる。
 下を通るはずだった列車はその身を壁へ天井へとぶつけコンクリートを盛大に引き剥がしていく。
 純一の叫びは轟音に飲み込まれた。
 列車は脱線こそしなかったものの、速度を半分ほどに落としてなおも走行を続ける。
 そして、攻撃を受けたということを認識してその斜体のそこかしこから目玉を発生させたのだ。
 飛び移ろうとしたタイミングと、迎撃が開始されたのはほぼ同時、そしてそれは今まさに飛び降りようとしていたミモザへと集中する。
「ミモザっ!」
 とっさに身を割り込んだのはルベーノであった。
 無数に錯綜するレーザーに焼かれつつもミモザをかばい、先に飛び降りていたシルヴァめがけてミモザを空中から放るように投げたが、結果としてレーザーの直撃を受けて後方へと吹き飛ばされていった。

 崩壊しかかったモノレール線路から走り去っていった歪虚列車とハンター達を見送り、純一は小さく口にした。
「あとは頼むぜ……」

●車上の人々

 ――四両目
「おもったよりも前の方に移れたか」
「やだ、私ったらくノ一になれたりしないかしら!?」
「……素養はあるかもしれんな」
 身軽さに長けた疾影士の自分と同じように飛び移ってきたロゼをさらりと肯定し剣と盾を抜く、ロゼもそれに合わせるように刀を引き抜いた。
「あらほんと!? っていうか、なんか揺れひどくないっ!?」
 ガンガンと定期的に音を立てて大きく揺れる列車に、姿勢を低くしてバランスをとる。
「アシェールの一撃で車輪や車体が歪んだせいだろう。大きく減速させてくれたおかげで飛び移りやすかったが、その代償……というところか!」
 車体側面から這い上がろうとしてきた人型狂気を切り飛ばす。
「人型個体は飛べないって感じかしら、ねっ!」
 門垣とは反対側から登ってくる個体を切り払い線路へと蹴り落とす、車体から落とされ支柱へと直撃し盛大に吹き飛んだ。
 続けざまに周囲に寄ってくる小柄の個体を切り払う。
「すべてというわけではないだろうが、この場ではその認識で良さそうだ。俺はこのまま先頭車両を目指す」
「じゃあ私は後続組の道を作るわ」
 背中合わせに剣を構え、合図とともに駆け出した。

 ――六両目
「走行中の列車に飛び乗るとはまた、映画みたいですね」
「る、ルベーノおにいちゃん大丈夫かな?」
 心配そうに車両の後方を伺うと、三両ほど後ろに取り付いた姿が確認できてミモザはほっと息を漏らす。
「後で御礼を言っておきなさい。ま、ここから生きて帰ってからの話だけど……ね!」
 シルヴァの手から勢い良く放たれた符が一条のレーザーを打ち消して散る、あくまで守勢の符を補うように三条の光が迸り浮遊する目玉を撃墜した。
 わらわらと沸いて現れた浮遊型歪虚は、だがその大半が後部車両へと向かっているようだ。
「こりゃ、かなり注意が後ろの方に向いてるな」
「あの大魔法のあとだからなぁ、アシェールへの警戒度が上がってんだろ」
「すごかったもんね……前方の車両の方、なんか歪んでるしすっごい揺れてる」
「当初の予定どおり、俺達は前へ急ごう。後方は俺が請け負う」
「了解、前は任せて。ミモザさん、シルヴァさん、しっかりついてきてね!」
 共振する刀を手にステラが先陣を切る、左右から這い上がってくる人型歪虚を切り捨てつつ、進軍は開始された。

「数が多いな、過積載なんじゃないのか!」
「邪魔! どいてて!!」
 次から次へと湧いて出る歪虚を切り払い蹴り落とし、即座に前へと距離を詰める。
 こうして確保しなければ進むのもままならないほどに、列車は歪虚にまとわりつかれていた。
 いや、列車そのものが歪虚であると言っても過言ではないだろう。
「構ってる余裕なんて……!」
 空中をふよふよと飛び回る雑魚にまで回らぬ手だったが、銃声がステラの周囲に飛び回っていた個体を撃ち落とした。
 粗悪な銃でも最低限の威力はある、それをミモザの手の中の獲物が証明していた。
「援護はまかせて!」
 続けて聞こえる炸裂音、そして前から現れる赤い人影。
「こっから先はある程度払っておいたわ、行ってらっしゃいあなた達!」
「サンキューロゼ! みんな、駆け抜けるぞ!」

 ――七、八、九両目
 右腕、動く。
 左腕、動く。
 足も問題はない。
 九両目の側面にかろうじて取り付いたルベーノは天井まで上がって自身の状態を確認していた。
 ミモザをかばってレーザーの直撃こそ受けたものの、行動不能になるほどではない。
「ふむ……だいぶ後ろだな、急がねば」
 そんな行く先に、群がる大量の目玉と桃色の甲冑、車体と人型歪虚に絡む糸がその人影を支えている。
 一条の雷光が迸ったかと思えば目玉がボロボロと線路へと落ちていく。
 大魔導師は伊達ではない。
「ふぅぅぅぅ……破ァ!」
 裂帛の気合とともに放出されたマテリアルが蒼き竜となって車上を薙ぐ。
 いくらか見通しが良くなった。
「派手な狼煙を上げたからか大人気だな」
「あんまりうれしくない人気ですね」
 大量のレーザーやらなんやらに群がられ、鎧にはこれでもかと言うほどに焦げ跡がついている。ダメージもそこそこのようだが、まだまだ元気という様子に任せていいかと問うルベーノ。
 そんな彼にアシェールもまた笑顔で答えた。
「任せてください!」


 展開された攻性防壁に弾き飛ばされて線路へと落下した人型が引き潰れる音が流れていく。
 これで何体目だったかすでに数えることさえできそうもない、大部分が後部車両に流れてくる事もあってリロードの回数も何度目かわからない程である。
「精が出るなイェルバート!」
「ルベーノ、無事だったんだね」
 銃撃で目玉を撃墜しながら、背後から跳んできたルベーノへと視線を送る。
「通らせてもらうぞ、と言いたいところだが」
「さっきから数が多くてね、落としても落としてもキリがない」
 話しながらも発生した三条の光線が新たに現れた人型を撃墜する、だがすぐに脇から這い上がってきて同じことの繰り返しになった。
 注意を引きつけられているのは良いことだし確実に数は減らせている、だがこの状況ではルベーノが前に進めない。
「多少強引にでも突破させてもらおう」
「了解、援護は任せて!」
 言うが早いかイェルバートから電撃が迸る。

●破壊&破壊
 スキルを駆使し一番速く先頭車両に到達した門垣だったが、コア破壊には至っていなかった。
 というのも、内部に入るための扉をこじ開ける隙がないためだ。
 遅れを取るほどの相手がいるわけではないが、落ち着いてこじ開けれるものでもない、時折拳を叩きつけてみるものの、内部から補強されているのか芳しくない。
 盾と剣を巧みに使い先頭車両周辺の歪虚の撃墜に専念し後続を待っていた。
 そのさまは踊っているかのごとくである。
「――来たか」
「すまん、遅くなった!」
「扉が開かなくてな」
 簡素に済ませる意思疎通は、それだけで次にすることを決定させる。
「お陰で近づきやすかったぜ、この手の破壊はメアリとミモザが向いてそうか?」
「まっかせとけ! 合わせていくぜ!」
「うんっ!」
 あふれる光の奔流が扉を直撃する、だが――
「……マジかよ、歪んだだけとかどんだけかてーんだ」
「そこを変われ」
 いつの間にか追いついてきていたルベーノが歪んだ扉の隙間に手をかける。
 直後、みしみしと音を立てて扉がこじ開けられた。
「押してダメなら引いてみろ、だ」
「コアが見えた! 一気にいくぞ!」
 グリムバルドの掛け声に全員が車内になだれ込む。
「悪ぃな、無賃乗車の歪虚は――問答無用であの世行き。つーわけで、じゃあな」
「いくよ! 壊れちゃえっ!!」
 ありったけの攻撃を叩き込まれたむき出しのコアが耐えきれるわけもなく、あっけなく砕かれてそのマテリアルを散らすこととなった。

 再び屋上へと出る面々、だが止まる気配はない。
「……ところでコアを破壊したらこの列車どうなるんだろ。静かに停まってくれるのか?」
 そんなグリムバルドの言葉に答えるかのように、車体が大きく揺れ始める。
 激しくレールを跳ね、脱輪した盛大に車体が大きく傾ぐ。
「……そんな都合のいい話無いみたいだな!」
「はっは、最後まで映画みたいだな!」
「みんな飛び降りて!」
 ステラの叫びを合図に全員が空へと身を躍らせた。

 横転した車体に後続の車両が追突し、路線を完全に封鎖するように盛大な破壊を撒き散らす。

 鎌倉駅近辺の路線復旧にかなりの時間を要する事になるのは、また別の話である。

依頼結果

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MVP一覧

  • 東方帝の正室
    アシェ-ルka2983

重体一覧

参加者一覧

  • →Alchemist
    イェルバート(ka1772
    人間(紅)|15才|男性|機導師
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 友と、龍と、翔る
    グリムバルド・グリーンウッド(ka4409
    人間(蒼)|24才|男性|機導師
  • Lady Rose
    ロス・バーミリオン(ka4718
    人間(蒼)|32才|男性|舞刀士
  • 甘苦スレイヴ
    葛音 ステラ(ka5122
    人間(蒼)|19才|女性|舞刀士

  • 門垣 源一郎(ka6320
    人間(蒼)|30才|男性|疾影士
  • 天使にはなれなくて
    メアリ・ロイド(ka6633
    人間(蒼)|24才|女性|機導師
  • 我が辞書に躊躇の文字なし
    ルベーノ・バルバライン(ka6752
    人間(紅)|26才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【質問卓】教えてミモザさん!
アシェ-ル(ka2983
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/07/19 03:00:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/07/17 11:35:58
アイコン 相談卓
門垣 源一郎(ka6320
人間(リアルブルー)|30才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/07/21 18:08:06