• 界冥

【界冥】由比ヶ浜 小型狂気掃討作戦

マスター:貴島春介

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
6~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/07/21 07:30
完成日
2017/07/30 01:55

みんなの思い出

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オープニング

 北鎌倉駅。稲村ヶ崎。逗子マリーナ。
 相模湾を内包して巨大な二等辺三角形を描く3地点。そこに立てられた妨害電波アンテナ塔を破壊するべく大勢のハンターたちが動員される中、大量に出現した小型歪虚の掃討作戦が同時並行で進められていた。
 掃討作戦の実施地点は、多数の小型歪虚が確認された海岸線と定められた。
 由比ヶ浜。
 相模湾に面し、その背には鎌倉海浜公園を負う鎌倉屈指の歴史あるビーチである。
 長く伸びた海岸線、拓けた砂浜。かつて立ち並ぶ海の家と観光客で賑わったであろう場所には人影もなく、歪虚が我が物顔で漂うと異境と化していた。
 その歪虚は、狂気と呼称されている。
 グロテスクな数多の目が、波にもまれるクラゲのように空中を漂っていた。さびれた浜の宙に浮かぶ目、ひとつではなく、それはいくつもいくつも浮かんでいる。シュールレアリスム絵画と見紛う光景だが、リアルブルーの現実の風景である。
 と、ぶよぶよとした目どもが、突如として遊泳する魚の群れさながらの規律正しい動きを始めた。
 小型狂気が寄り集まり、人のかたちを取っていく。人型の狂気。その体長は2メートルちかくあり、さながら人間のグロテスクな戯画のようだ。そして、その人型たちは、人間が誰かを呼ぶ仕草をトレースして、浮遊する狂気たちを呼び寄せた。
 浮遊する狂気は、不格好な人型の周りにまといつくように漂い始める。
 人型狂気は、かつてリアルブルーの者たちが手にした銃器を手に、標的の姿を探しギョロギョロと体中の目を瞬かせた。

リプレイ本文

●A班の激闘
由比ヶ浜海岸海水浴場。
歪虚の気配のみなぎる砂浜に、場違いに明るい色合いの花柄レジャーシートがふわりと広がった。
道元 ガンジ(ka6005)の足下は、砂浜と言えばこれ、ビーチサンダル。
もちろんレジャーのためではない。砂場方向の目印のためと、うまいこと踏み込みの足場に使えたらラッキーってものだ。
人間どもがおかしな動きをしていると察知した小型狂気の群れが、体の目をさまよわせ、銃器を構え戦闘態勢を取る。
「……小型歪虚を放置しておいては今後の作戦に支障を来す。ここは速やかに殲滅するしかあるまい」
榊 兵庫(ka0010)は己の背丈ほどもある愛用の十文字槍を構え。
「ビーチは遊ぶ場所って決まってンだ、こうなったら存分にやろうぜ」
ガンジも不敵に口の端をつり上げ、戦籠手の拳部分を握り込む。
「では、掃除に掛かろうか」

(ここがリアルブルーにリアルブルーの海……何だか不思議な感じ。でも、ここにも歪虚の進行が進んでいるんですね。少しでも助けになれるように頑張らないと)
リアルブルーに感動しつつ、そこを脅かす歪虚から少しでもリアルブルーを守れるよう尽力を尽くすと意気込むドラグーンの少女、ユウ(ka6891)。
「敵の数が多いですね……ザイン、周囲への注意怠らないでね」
家族を気遣うように柔らかく、ユウは傍らの赤髪の小柄な少女――T-Sein(ka6936)に呼びかける。
そのザインにとっては初めてのリアルブルーだが……
「こう転移者の方々から聞く風景とは違いますね。まぁ目の前で浮かんでるクラゲ擬きと言いましょうか。それのせいなのは確定的に明らかなのですが」
ふぅ、と無表情のまま小さくため息。
「ザインに出来る事は何時も通り眼前の敵を滅ぼすだけ。では今回も参りましょう。『殲滅執行』」
その言葉を言うと同時に闘気を体から溢れさせ、ザインは浮遊型歪虚へと肉薄する。

ハンターたちに、浮遊型狂気のレーザーの照射と銃弾とが浴びせられる。
兵庫、ガンジ、ユウ、ザインはきらめくレーザーの雨の中を突っ切り、浮遊型に守られた人型狂気へと急接近する。
その頬に、腕に、肩に、股に、ぱっと鮮血がしぶく。
それでも、多少の傷など意に介さず。
十文字槍が空気を切り裂き唸りをあげる。浮遊型を何匹かと人型がまとめて吹き飛ばされて無力化された。人間無骨。兵庫愛用の業物である。
「防壁崩してやんぞ、ハハハッ」
混乱を来した群れの1匹1匹をガンジの拳が捉え、浮遊型が再び人型の防御役として合流することを阻む。触手をつかんで引きずり下ろし、引きちぎり、目を潰す荒々しい戦闘タイル。
目の前に敵が立つのを許さない、シンプルな闘争本能こそがガンジの真骨頂だ。
ユウは脚部にマテリアルを集中し、高速移動で攪乱しながら攻撃を仕掛ける。人型の側面背後を突くように常に移動を繰り返す。
人型は構えたサブマシンガンを掃射するが、ユウの速さを捉えきれない。そしてまた、背後からの霊氷剣の一撃が、人型を統制の取れていない浮遊型の群れへと変えていく。
司令塔である人型を失った浮遊型は焦ったようにレーザーを連射するがザインの体は傷つく様子がない。これぞ我流八極拳伍型『覚醒鉄鱗』。体内の気を高速循環させることにより防御を高める守りの技。生半可な攻撃はザインには通じない。
攻撃をものともせず、真っ直ぐに拳を打ち込み、ザインは浮遊型を粉砕した。
それでもハンターたちの手を逃れ、一度距離を取ろうとする浮遊型ではあったが。
「……どんどん寄ってこい! まとめてこの鋭鋒の餌食としてやろう」
兵庫のマテリアルが炎の如く燃え上がる。光に誘われる羽虫さながら、今度は小型狂気たちが兵庫に向かってレーザーを撃ちながら殺到する。
統率する人型ももはやなく、その攻撃には初撃の整然さも威力も削がれている。
ぶうん、と十文字槍が唸り、引きつけた小型歪虚を一斉になぎ払う。
「狂気殲滅! ビーチ返せ!」
兵庫が敵を引きつけた隙に、野生動物のような跳躍を見せたガンジの(ビーチサンダルによる)蹴りが巻き込みきれなかった浮遊型を捉え、群れを引き連れた4体の人型狂気はきれいに掃討された。

「……ザインは、自分が盾になってでもという覚悟をしていたのですが、あっという間に終わってしまいました」
ザインが歪虚の駆逐された状況を見て、淡々と言う。
「被害が少ないならいいことよ、ザイン。私は家族が無事でほっとしてる」
同じく、仲間のために、身を呈して庇うつもりでいたユウが微笑みかける。

●B班の奮戦
「ここがリアルブルー……鎌倉、か? たしかに向こうじゃあまり見かけないものが沢山有るな」
テオバルト・グリム(ka1824)は、漂い寄り集まっていく小型狂気の群れに目を細める。
恋人の故郷でもあるし、こんな状況じゃなきゃのんびり見て回りたかったけど。これは心中での独白。
「まずはお前達を追い出さないと駄目っぽいな……1体残らず掃除してやるぜ」
「そう言えば前も海の近くで戦ったな……ぁ、クラゲだからか?」
相手は歪虚、周りは気心知れたハンター仲間とあって、ステラ・レッドキャップ(ka5434)は可憐な容姿にまったくそぐわない乱暴な口調で言った。
「簡単な仕事だし、とっとと歪虚をぶっ潰していくか」
ジャカリ、と重い金属音を立てて愛用のアサルトライフルを構える。ステラ好みに命中重視でカスタマイズした、まさに愛銃だ。
その隣で南護 炎(ka6651)も武装を整えている。長大なグレートソードに、重々しく堅牢な全身鎧。準備は万端だ。
「小型狂気どもを速やかに倒す。慈悲は無い!」
「そういえば人型はばらりと小型狂気に分かれると聞いたのでな。人型が分離した小型に塗れて狂気感染もぞっとせん。レジストの使用は意外に大事かもしれんな」
ユーレン(ka6859)は魔法が魔法がすぐに使えるよう準備している。仲間が狂気に侵食されてしまう危険性への対処も怠らない。

こちらも、浮遊型による一斉のレーザー掃射で戦闘が始まった。
その浮遊型が破裂するような音を立ててひとつ、またひとつと撃ち抜かれていく。
銃撃弾を装填したアサルトライフルによる、ステラの正確無比な射撃。
由比ヶ浜海岸は妨害電波アンテナの描く三角形の一辺に当たっている。3つの塔が発する妨害電波の相乗効果はすさまじく、レーザーサイトとホロサイトは完全に機能がダウンしていた。
それでも驚異の命中率を保つステラの射撃は、まさに神業といっていい。
テオバルトは、なおも掃射を続ける浮遊型の群れに突撃する。激しくなるレーザーの雨がテオバルトを襲うが、まとった残像をむなしく穿つばかり。
スピードに乗り、すれ違いざまに切り伏せる。超重刀の刃が浮遊型をいともたやすく切り刻む。
「南護炎、行くぜ!!!」
威勢の良い叫びと共に炎も敵陣に突っ込んでいく。闇雲な突撃ではなく、エアリアルのリーチを生かして距離を取り、有利を取ることも忘れない。
「オラオラ!! 行くぜ! 行くぜ!!」
これこそ縦横無尽。リーチを味方につけながら大剣を振り回すことで、人型もろとも防御役の浮遊型をも巻き込む連続攻撃だ。
炎の攻撃を受けた人型は、ひとたまりもなく砂浜に叩きつけられ、その衝撃か、多数の浮遊型に分裂した。そのままの勢いで、結構な数の浮遊型がユーレンにべたべたと取り付く。
狂気感染が起こるかと思われたそのとき。ユーレンの体が淡く光を発し、ひっついたはずの浮遊型が自ら離れてゆく。
「なるほど、やはりレジストは重要であったな」
ニッと笑って浮遊型を体から引き剥がしたユーレン。その右手には剣呑なギザギザ面を持ったハンマーが握られている。
ハンマーの重さを利用して振りかぶり、重力と、マテリアルと、己の筋力を重ねて渾身の力で振り下ろす。
浮遊型が一撃で動かなくなったのは言うまでもない。
ステラの援護射撃、テオバルトと炎の広範囲への斬撃、ユーレンの魔法による補助、4人の連携が見事にはまった。浮遊型の数は瞬く間に減り、人型もダメージの蓄積が激しい。A班の方も順調に撃破を重ねている。
ハンター側の有利を見て取ったテオバルトは「実験」に取りかかる。
妨害電波の影響下で、副兵装の蒼機剣がちゃんと動くかの動作確認を行うのが目的だった。起動すれば光の刃を展開する武器だが、機械剣であることが禍してか、起動しなかった。これは、アンテナ破壊に向かったハンターたちの成功を祈るしかない。
「逃がしはしない!!」
炎の大剣が最期の人型にとどめを刺し、叶わないことを悟った浮遊型は蜘蛛の子を散らすように逃走を始めた。

「10年早いんだよ!!」
どや顔で決めポーズする炎。
戦線が崩壊し散らばって逃げていく狂気の群れに、高らかに自分たちの勝利を宣言するかたちになった。
それはそれは、すがすがしいどや顔であったという。

ステラには前々から、ひとつの疑問があった。
「なんで人型はリアルブルー製の銃を手にする?」
ガンマニアとして当然の疑問だ。ステラは人型狂気の携えていたサブマシンガンを鹵獲し、監察してみる。
リアルブルー製の軍用銃。製造番号がきっちりと入っている。管理され、手入れがされていた証拠だ。それはすなわち、使い方さえわかっていれば誰にでも使える銃器なのだとわかる。
リアルブルーの軍隊が歪虚に抵抗するために手に取った兵器だったのだろう。抵抗する相手に使われていては元も子もないが。
ここ由比ヶ浜での人型狂気は、浮遊型にレーザーを撃たせてはいたものの、人型本体が全身からレーザーを照射するなんて派手なことはやってこなかった。
小型狂気は、個体ではレーザー照射ができる。一方で人型になると統率能力の代わりにレーザー照射能力がなくなるのではないだろうか。
主たる攻撃能力がなくなるからこそ、新たなる攻撃手段として銃器を持つ必要があった。そして、使うならば撃てるかどうかわからない来歴不明の銃より、正式に管理された銃の方が都合がいい。
「一応は考えてるってことか? 脳味噌なんか入ってなさそうに見えたが……」
撃ち抜いた浮遊型の最期を思い出し、皮肉ってみる。

「さぶくらす、とやらを使えるよう、今後はもっと頑張らねばならんな……」
ユーレンはひとり生真面目につぶやく。
以前、イクシード・プライムを得たときに、大も小も1個ずつ不足だったから、今回こそは不足分を獲得したい。
そして、念願のさぶくらすを使えるようになるのだ。

 由比ヶ浜 小型狂気掃討作戦。
 作戦完了。

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重体一覧

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 献身的な旦那さま
    テオバルト・グリム(ka1824
    人間(紅)|20才|男性|疾影士
  • Rot Jaeger
    ステラ・レッドキャップ(ka5434
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士
  • 今日を笑顔で全力!
    道元 ガンジ(ka6005
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 覚悟の漢
    南護 炎(ka6651
    人間(蒼)|18才|男性|舞刀士
  • 黒鉱鎧の守護僧
    ユーレン(ka6859
    鬼|26才|女性|聖導士
  • 無垢なる守護者
    ユウ(ka6891
    ドラグーン|21才|女性|疾影士
  • 狂える牙
    冷泉 緋百合(ka6936
    オートマトン|13才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【無双相談卓】
道元 ガンジ(ka6005
人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2017/07/20 22:59:49
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/07/17 16:46:44