ゲスト
(ka0000)
大江家の動物たち、旧里へ引っ越す
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/25 09:00
- 完成日
- 2017/07/31 11:39
このシナリオは4日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●紅葉の見た夢
「ちょっといいかにゃ、紅葉」
大江 紅葉が最初に拾った虎猫の寅吉がなぜか座布団に正座している。
紅葉はおとなしく、寅吉の正面にある座布団に座る。
「この地域は我にゃのおかげでネズミも減り、虫も減った」
「そうですね」
「この地域の平和維持をするには我にゃの数が多すぎるにゃ」
「ぐっ」
「別に主を責めているわけではない。我にゃや犬や驢馬に主が寛大という良い下僕だということはよくわかっておる」
「……げぼっ……」
「我にゃは新しい地を目指すほうがいいと考えにゃのだ」
紅葉は首をかしげる。
「つまり、里への帰還について行くにゃ」
「……!」
「選別は主に任せる」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「下僕に拒否権はないにゃ! さあ、早速出かける準備をするにゃ!」
どどーんと寅吉は大きくなり、部屋を突き破る。紅葉は吹き飛ばされて――目が覚めた。
「お、重いです……暑いです」
寅吉と寅美、無名三号改め見虎がなぜか紅葉の足と胸、腹の上に乗っかっていた。
「……うううう」
「にゃあ」
寅吉が一鳴きすると全員が立ち去った。
「変な夢を見ました……本当に寅吉たちは旅に出ようとしているのでしょうか?」
里は人が住むことはできなくはない。ただ、まだ歪虚による汚染は残るため、龍脈を稼働させ何とかしないといけない。
「……これは、尻を叩かれましたね……」
紅葉は苦笑する。
地域の人たちも少しずつ戻れた時の準備を始めているのは知っている。
紅葉がすることは「武家のこと知らないから、とりあえず、勝手に戻ろう」ということである。そして、権威をつける意味も込めて陰陽寮の符術師である紅葉が浄化の儀式を執り行う。
それをすれば、形はつく。
武家へのけん制の意味も込め、やらねばならないのだ。別に対抗しているわけではないが、紅葉だって大江家の宗主という責任は感じているため、守るべきものは守りたいのだ。
「……ライブラリで見たあの里の情景を取り戻すために。従兄弟も妹もいない……でも、住む人間はいるのだから……」
紅葉は決心をした。
●せかされたのでやってみました
紅葉は事務処理やら陰陽寮の仕事の合間、計画を練っていたが、帰宅するたび、寅吉が何か訴えている。
近所の人たちは建築資材を持っていき、大江の住んでいた里を起点に作業をしたいらしい。手前の里ではない理由を問うと「大家様が一番筋を通してくれるとおもったから」と謎の信頼を得ていた。いや、逆に見れば好きなようにさせてくれると思っているのかもしれない。
そうはいっても、里も周囲も、大江に関係がないわけではない。お互いに必要なことを補いつつ生活をしてきたのだ。互いに利用するつもりで復興したほうがいいのだと紅葉は結論付ける。
そして、地域の人たちの計画を知って紅葉はペット移動の一計を案じる。
「ハンターを雇いましょう。妖怪の出没は少ないとはいえ、より一層安心できるでしょう。汚染地域……よりは安全とは言え」
この提案は周囲に受け入れられる。
「じい、虎猫と柴犬と驢馬の餌を約半数分かつ二週間分用意してください、あと馬車」
この提案に家令は「は」と命令を聞いたわけではなく、語尾上がりで説明を求めてきた。
「夢ですか……」
家令はさすがに渋い顔をしたが、数瞬考える。
「その夢で語っていることは事実です。ネズミが減るのは良いですが、自分たちで賄えないため餌代がかさみます。隣近所で好意で餌は頂いたいるようですが……」
「あー」
「減らしてもいいでしょう……驢馬なら草も食べますし」
「ヤギの方がいいですね……この場合」
「それはそれです。しかし、どうやって選別します? おりを用意しないといけませんし」
紅葉がとった行動は馬車を一台用意させる。
集まってきた虎猫と柴犬、驢馬に向かって一言告げる。
「近々、里に行く馬車です。念のため餌も約二週間分は積みます。海が近い里に移住される方はおりますか」
このやりとりを見た瞬間、家令や家臣たちはずっこけた。
「にゃあ」
「里は現在、日中しか出入りはできません。しかし、橋を作ることも検討しています。その方が平和な場合利点が多いからです」
紅葉、会話が成り立っているかわからないが、しゃべった。
寅吉がまず荷台に乗った。寅美と見虎も乗る。虎猫は計八匹と柴犬四匹、驢馬が四頭――上がろうとしたが乗る場所がちょっと足りなかった。
「……驢馬は歩いてください……荷物によっては柴犬たちも無理かもしれません」
紅葉は一言告げた。
「出発は決定次第報告します」
一同解散となった。
「……会話通じるんですか……」
「通じているのでしょうか?」
家令は宗主の新しい力と思いそわそわし、紅葉は寅吉に踊らされているだけと考えていた。
「ちょっといいかにゃ、紅葉」
大江 紅葉が最初に拾った虎猫の寅吉がなぜか座布団に正座している。
紅葉はおとなしく、寅吉の正面にある座布団に座る。
「この地域は我にゃのおかげでネズミも減り、虫も減った」
「そうですね」
「この地域の平和維持をするには我にゃの数が多すぎるにゃ」
「ぐっ」
「別に主を責めているわけではない。我にゃや犬や驢馬に主が寛大という良い下僕だということはよくわかっておる」
「……げぼっ……」
「我にゃは新しい地を目指すほうがいいと考えにゃのだ」
紅葉は首をかしげる。
「つまり、里への帰還について行くにゃ」
「……!」
「選別は主に任せる」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「下僕に拒否権はないにゃ! さあ、早速出かける準備をするにゃ!」
どどーんと寅吉は大きくなり、部屋を突き破る。紅葉は吹き飛ばされて――目が覚めた。
「お、重いです……暑いです」
寅吉と寅美、無名三号改め見虎がなぜか紅葉の足と胸、腹の上に乗っかっていた。
「……うううう」
「にゃあ」
寅吉が一鳴きすると全員が立ち去った。
「変な夢を見ました……本当に寅吉たちは旅に出ようとしているのでしょうか?」
里は人が住むことはできなくはない。ただ、まだ歪虚による汚染は残るため、龍脈を稼働させ何とかしないといけない。
「……これは、尻を叩かれましたね……」
紅葉は苦笑する。
地域の人たちも少しずつ戻れた時の準備を始めているのは知っている。
紅葉がすることは「武家のこと知らないから、とりあえず、勝手に戻ろう」ということである。そして、権威をつける意味も込めて陰陽寮の符術師である紅葉が浄化の儀式を執り行う。
それをすれば、形はつく。
武家へのけん制の意味も込め、やらねばならないのだ。別に対抗しているわけではないが、紅葉だって大江家の宗主という責任は感じているため、守るべきものは守りたいのだ。
「……ライブラリで見たあの里の情景を取り戻すために。従兄弟も妹もいない……でも、住む人間はいるのだから……」
紅葉は決心をした。
●せかされたのでやってみました
紅葉は事務処理やら陰陽寮の仕事の合間、計画を練っていたが、帰宅するたび、寅吉が何か訴えている。
近所の人たちは建築資材を持っていき、大江の住んでいた里を起点に作業をしたいらしい。手前の里ではない理由を問うと「大家様が一番筋を通してくれるとおもったから」と謎の信頼を得ていた。いや、逆に見れば好きなようにさせてくれると思っているのかもしれない。
そうはいっても、里も周囲も、大江に関係がないわけではない。お互いに必要なことを補いつつ生活をしてきたのだ。互いに利用するつもりで復興したほうがいいのだと紅葉は結論付ける。
そして、地域の人たちの計画を知って紅葉はペット移動の一計を案じる。
「ハンターを雇いましょう。妖怪の出没は少ないとはいえ、より一層安心できるでしょう。汚染地域……よりは安全とは言え」
この提案は周囲に受け入れられる。
「じい、虎猫と柴犬と驢馬の餌を約半数分かつ二週間分用意してください、あと馬車」
この提案に家令は「は」と命令を聞いたわけではなく、語尾上がりで説明を求めてきた。
「夢ですか……」
家令はさすがに渋い顔をしたが、数瞬考える。
「その夢で語っていることは事実です。ネズミが減るのは良いですが、自分たちで賄えないため餌代がかさみます。隣近所で好意で餌は頂いたいるようですが……」
「あー」
「減らしてもいいでしょう……驢馬なら草も食べますし」
「ヤギの方がいいですね……この場合」
「それはそれです。しかし、どうやって選別します? おりを用意しないといけませんし」
紅葉がとった行動は馬車を一台用意させる。
集まってきた虎猫と柴犬、驢馬に向かって一言告げる。
「近々、里に行く馬車です。念のため餌も約二週間分は積みます。海が近い里に移住される方はおりますか」
このやりとりを見た瞬間、家令や家臣たちはずっこけた。
「にゃあ」
「里は現在、日中しか出入りはできません。しかし、橋を作ることも検討しています。その方が平和な場合利点が多いからです」
紅葉、会話が成り立っているかわからないが、しゃべった。
寅吉がまず荷台に乗った。寅美と見虎も乗る。虎猫は計八匹と柴犬四匹、驢馬が四頭――上がろうとしたが乗る場所がちょっと足りなかった。
「……驢馬は歩いてください……荷物によっては柴犬たちも無理かもしれません」
紅葉は一言告げた。
「出発は決定次第報告します」
一同解散となった。
「……会話通じるんですか……」
「通じているのでしょうか?」
家令は宗主の新しい力と思いそわそわし、紅葉は寅吉に踊らされているだけと考えていた。
リプレイ本文
●集合
大江家の前や近くの道では馬車に荷物を載せ、しばらく離れる家族と別れを惜しむ人たちがいる。
ヴァイス(ka0364)は顔見知りの虎猫と柴犬を撫で繰り回してあいさつをする。
「無名三号、四号、芝六郎、よろしくな」
モフモフされた無名三号改め見虎と無名四号改め志虎は猫パンチを繰り出し、芝六郎は激しく尻尾を振る。
龍崎・カズマ(ka0178)は里人たちの資材や荷物を積んだ馬車と大江家のペットたちの馬車を見る。
「ずいぶんとまあ、大所帯だねぇ」
テントや鍋などの荷物は自身の馬に載せてある。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は大江家の移住ペット一覧と合わせ、実物をじっくり観察し、特徴を覚える。
「猫が一番やっかいだな」
荷物には必要なら放出する予定の猫缶や秘密のアイテムがあった。
ディーナ・フェルミ(ka5843)は来る前に里近辺に出そうな妖怪について、ハンターオフィスで調査をしていた。
「妖怪についてはみんなと共有するの……それよりも、お猫さまには運搬されてやってもいいやって思ってもらえると嬉しいの」
非常に大荷物で、虎猫のところにスキップしながらやってくる。
丸川ヒカル(ka3388)は日焼け止めをしかっりと塗ることを忘れない。
「ヒカルさんは不思議なのです。動物たちは自ら移住するみたいです」
馬車の上や周りでおとなしくしている。
宵待 サクラ(ka5561)はペットの柴犬二匹を同道させ、必要なら手伝ってもらえると考えたからだ。
「いいよねー、柴犬。うちは今、四十五匹いるんだよ」
無邪気な発言に大江家の者たちの気温が下がる。
「そんなにいたら傘張りか?」
「内職しないとまずいよな」
食費を気にする話が漏れる。
星野 ハナ(ka5852)は大江家が里に戻ろうとしていることから地域の浄化をするのではと興味津々であった。まずはペットの移動だが。
「犬は人につく、猫は家につくといいますぅ。可愛がってリードをつけて一緒に歩けば大抵の犬はついてくると思いますぅ。驢馬は多頭引きを嫌がる頑固気さんですけどぉ、村人さん一人一頭で荷物載せ、引けば付いてくると思いますぅ」
この発言により驢馬、しっかり働くこととなる。元から歩く予定であった。
フィロ(ka6966)は動物たちをながめ、ゆっくり手を伸ばして触る。
「犬、猫、驢馬……ですか? パルムといい馬といい、クリムゾンウェストにはずいぶんいろんな動物がいるんですね」
驢馬はじっとし、ぬくもりを伝えた。
●さて出発
アルトは大江家のペットのボスの存在のような寅吉に話をつけることにした。
「キミがこの集団のボスの寅吉だな」
「……」
「キミたち猫の自由は保証する。しかし、急にいなくなるのは困るんだ。だから、出かけるときは近くの人間に一声をかけてほしい」
ススッと猫餌の缶を前に置く。
「猫たちに急にいなくならないよう徹底させてほしい。これは前金だ」
固唾を飲んで返答を待つが反応がない。
「あの……当家の猫、缶詰を理解していないかもしれません」
家令がおずおずと声をかけてきた。
「なら、道中でもかゆいところを掻いてやる」
「にゃあ」
契約が成立したのかもしれない。
「はい、次は私なのー」
ディーナがアルトと替わり寅吉の前に立つ。
「寅吉さまー、みんなに上納なのー」
猫用のおもちゃやマタタビ、猫が落ち着く箱の山にリードがドンと置かれる。
「猫用のおもちゃは休憩中や到着後、たくさん遊べるのー。それと、箱は移動中ゆっくりできるし、到着後も何もない里でもくつろぎスペースになるのー」
馬車はより一層いっぱいになった。
「そういえば、夜間はお猫さまにリードして、荷台につないでおくの?」
ディーナは仲間に対して質問をした。
「特に考えてはいませんが……」
ヒカルは呟き、他の意見を待つ。
「気にしていなかった。テント張って夜休むとき、むしろ、猫のために隙間明けておいてやろうと思っていたくらいだ」
カズマが驚いている。
「なら、そのままでいいの?」
異論はなかった。
「柴犬用のリードだよ」
サクラは大江家の柴犬の首輪にリードをつけていくが、普段つけていないため嫌がって抜けようとする。
「駄目だよ、ほら、こうするんだ」
連れてきた自分の柴犬の太郎と次郎につけると、二頭とも何事もないように立っている。
「犬に慣れた里の人はいるのかな? 狩り犬を使う人とか?」
同行する里人たちは「散歩程度なら」という答えが返ってくる。
「それでも十分だよ。島にこの子たち住むなら、行き来する皆となれないといけないし」
里人たちは了解した。
「芝六郎、なかなか堂にはいっているぞ。こら、見虎、リードにじゃれるな。が、可愛いな」
ヴァイスはリードを嫌がっている芝六郎をほめて慣れさせようとしている。しかし、猫がプラプラするリードで遊んでしまう。
「可愛い、ですか……? そうですか、あれが、可愛い……了解しました」
フィロは状況をみて感情を理解しようとする。
動物の飼育や接する方法を学んできた。今回の任務は動物は世話すべき対象であり、それ以上でも以下でもないとはいえ、勉強したことを本日から実践の場だった。
「リードを持ってみて良いでしょうか」
「はいどうぞ」
サクラに手渡されフィロは心臓に当たるところがバクバクと音を立てるようだった。
「ところでー、紅葉さんは来るんですー? 里の浄化が気になるのですー」
ハナの言葉に家令は驚く。
「あの方はすでに出仕しています」
家令は慌てた。
「え? えええ? それは残念ですう。危険は少ないとはいえ、浄化したほうが安全ですよねー。一部だけしておきます? 私、符術師ですしー」
「必要そうなところがあれば……それはお願いします」
「分かりましたー」
ハナは動物たちに注意を傾けることにした。
●カエル
一行は日程通り集落の跡地に着く。
途中、柴犬が歩かなくなったが運べば終わる。驢馬に関してはのろのろ歩いていく。
幸い猫はおとなしく荷台にいた。
カズマはテントを組み立てると、虎猫が眺めている。
「お前たちも入るか」
組み立て終わって入り口を開けると元気よく近づいてくるが、入るときは恐る恐るであった。
「さて、食事は……あっちで始めているみたいだな。手伝おう」
カズマはたき火に向かった。
ハナが料理をはじめているところにフィロが手伝っている。
「ハナ様、これで良いでしょうか」
「うん、これが猫用ですぅ」
「はい、かしこまりました。猫用ですね」
「そうですよー」
下準備が着々と進んだ。
ヴァイスは池にいるカエル目当てに出かける。先日妖怪退治にやってきた池であり、カエルがたくさんいるというのを知っていた。
「お前たちも来るのか?」
前回ここまで冒険しに来た猫二匹と柴犬が御供に来る。
「新鮮なカエルを食べて英気を養おう」
ヴァイスは見回りもかねて出かけ、無事カエルも入手した。
サクラは残っている柴犬の世話を里人と行う。
「柴犬は小型でも猟犬だから、運動不足はダメだよ。ストレスになるとかんだり無駄吠えしたりするからね」
里人はしばらく一緒に過ごす柴犬について学んだ。
「こうやって遊ぶのもいいよ」
フリスビーを投げた。
大江家の柴犬、見送った。
「……え?」
「……」
里人もキョトンとする。
フリスビーに興味を持っていなかった。
ディーナは猫たちの点呼を行う。
「さっき、ヴァイスについて行ったのもいるの。それ以外はいるのか見るのー。まず、寅吉さまー、あ、寅吉さま、どこにでかけるのー」
寅吉はちらりと見た後、アルトの方に向かった。
「なるほど、そういうことになるの。確認するのー」
ディーナは近くにいる猫たちを抱きかかえ探すとテントで遊んでいるのを見つけ、そのまま餌のところに連れて行った。
「来てくれるのはいいいのだが」
アルトは足元に転がった寅吉に困惑しつつも楽しそうに、しゃがんでワシワシと掻くように撫でた。
ヒカルは見張りもかねて、すこしだけ離れたところに向かう。目をつむり呼吸を整える。
「ここで座禅はできないですね……ペットたち、きちんとついてくるので助かります」
一人になると落ち着いたが、戻って日課を行うことにした。
何事もなく、夜は静かに更けていく。
●逃亡
ハンターたちと里人たちはそれぞれ作った順番で見張りは一晩行っていた。
「気づかなかった!」
カズマがうめきつつ、寅吉を見ると目があったがそらされた。
「探すのですぅ」
ハナは符を握りしめる。
「いないのはリストによると寅江さまなのー」
ディーナが告げる。
「早く探そう。物資の出発は……」
「いえ、護衛の任がありますので、即急に猫を探すのが重要です」
ヴァイスにフィロが答えた。
「探しましょう」
ヒカルは走り出した。
「柴犬たち、探せる?」
念のためにサクラは問うが、大江家の柴犬は理解しなかった。
寅江の名前を呼び探す。
その中でアルトは荷物から七輪を取り出し、謎のサンマを焼き始めた。風向きによっては匂いも飛ばないかもしれないが、試してみることにした。
「寅江、出て来い」
パタパタとうちわであおぐと、火が上がりサンマの油が落ちる。
「……視線が痛い」
周囲の虎猫達がじわじわとアルトに近づいてくる。早く見つからないと襲われそうだ。
「見つけたぞー」
「式神ですぅ、悪い子は捕まえるのです」
「寅江さまー、さあ、ブラッシングを受けてください」
「ああ、柴犬たち、落ち着いてー」
「良かったです」
ハンターたちの声が重なってアルトのところまで届く。
「サンマはなかったことにする」
道具をしまうと、虎猫達が舌打ちしたような雰囲気が伝わった。
若干の遅れの後、出発した。
虎猫達は騒ぎなど嘘のように荷台に置かれた箱で眠りについている。
柴犬たちは前日よりリードに慣れたようだ。
驢馬たちは道の草を食ったり、突然止まったりはしている。それでも面倒を見る人やハンターが飼い葉などで動くように促してさほど遅れは出なかった。
「暑い時は干し梅がいいです。ぜひ食べてください」
ヒカルは里人に干し梅を差し出す。
「ぜひ頂戴なの。こういうのは作る人によってすごく違うから気になるの」
「そうですぅ。甘いのかしょっぱいのか……食べるまで分からないのです」
ディーナとハナが興味を持つ。
「そうですね。ではどうぞ」
ヒカルは差し出した。
「なんだか素敵な匂いで気になるわ」
柴犬たちとともにサクラがやってきた。
少しだけ休憩をした後、再び警備につく。
二度目の野営。
都から離れると汚染の名残が多いと感じる。
「非覚醒者でも問題はない程度なんだろうけれど、早く浄化の儀式やるならやった方がいいだろうな」
アルトは見回りで海辺にやってきた。昨年も同じように眺めた島は寂しそうだ。
「家が新しくなって、人が移るようになったら……の前に動物たちか」
紅葉の母が歪虚になっても執着していた場所。新しく生まれ変わることを願う。
ヴァイスは見回りをしながら、歪虚による傷跡が残る荒涼とした大地を見る。一方で現在未来への一歩を彼は運んでいる。
「まずは少しでも資材を持ちこむ。あの島を中心にここも復旧するのだろう」
元の姿は想像するしかない。
フィロはふと景色も見る。
「いろいろな生き物がいます。いろいろな地形があります」
先日の依頼でいたところは山があり、緑が広がる風景だった。今、ここは海があり、砂浜があり、枯れ草が主体の大地が広がる。目的地はその先、島だ。
カズマは見張りをする中、目的地が目の前ということで里人たちの気が緩んでいるのを感じた。
「仕方がないよな」
「復興はこれから……動物たちは雨風がしのげればいいのか」
島を見るが、壊れた家くらいしかないようだ。
「ペットたちに復興しろと尻を叩かれたようなもんだな」
苦笑がもれた。
潮騒が聞こえる中、朝まで過ごす。
何もないが、妖怪が住む範囲であるため、ハンターは緊張が高まる。
●島へ
「引き潮で道ができるんですね」
フィロは知識にあっても実際見ると違う。
「本当なのー。生き物が渡るのはいいけど、馬車は辛いの」
「むしろ、舟で運んだほうが早いですぅ?」
ディーナとハナの言葉を聞いて、里人はハッとしている。
「今回は運べるのだけ運ぶか」
「そうだな」
「どっちにしろ、こっち側で必要なんだし」
里人たちは緊急会議を行っている。
「決まりました」
「最低限だけにしておきます」
決定後ハンターたちは状況を確認する。ここが一番狙われやすい。なぜなら、馬車から下り荷物を持ちスピードが落ちる上、道幅が限られたところを歩かないとならない。
「特に動物たちだな」
ヴァイスが何気なく馬車を見ると、虎猫達はずんずん下りて行っている。
「行く気満々だし、上陸しよう」
アルトが宣言する。
驢馬と柴犬はそれぞれ引く係がいる為問題はなさそうだ。虎猫達は抱き抱えることも検討されたがぬかるんだところを歩きだしている。
「俺に続け」
ヴァイスは先導し、島の様子も見る為進む。
殿にカズマとフィロがついた。
何もなければそれはそれでいいが、半分ほど渡ったところで羽ばたきが聞こえる。この地域で鳥を見ていないため不自然さがある。
「お猫さまの安全は守るのー。お猫さまを抱えられない怒りはぶつけるのー」
ディーナはいつでも術をつかえるように敵を見据えた。
「空にいると迷惑よね」
サクラは手裏剣を手にする。
「ふふふっ、こういう時は術がさえるのです」
ハナは符を握りしめる。
「うん、そうです……私だって攻撃できるわ」
ヒカルは戦闘モードで自信をみなぎらせ、機導術を放てるようにした。
「近づいたとしても私が守り切ります」
フィロは敵の形状をしっかり見極めようとする。
どす黒い色合いの硬質そうな皮膚に、鳥のようだが顔はどこか人間の髑髏をほうふつとさせる妖怪だ。翼は皮膜の物であり、鳥というより蝙蝠に近い。
「数は三、大したことはないが油断はしない」
アルトは魔導ワイヤーをまずは握る。
――イツマデ……イツマデ……。
鳴き声はしゃがれた、集団で異様に響き不安を掻きたてる。
「いつまでもここにいていいものではない。還れ、自然の理に」
カズマはイツマデに対し諭すように告げる。
それは近づいてくると急降下し、脚で攻撃してくる。
ハンターは敵を近づけさせないよう攻撃し、近づいても護衛対象に傷を負わせないという気迫で立ち向かった。
術で接近を阻まれ、近づいてもすぐに切り倒され、それらは無に還ったのだ。
島に無事上がることができた。
今後も用心は必要ということであるが、まずは安心だろう。
何度か往復し、必要な荷物は運びこむ。
島で一晩明かすことになりそうで、片付けを少し手伝ったり、島の状況を見て回ることはできた。
また、動物たちの居場所も確認し、可愛がることもできたのだった。
大江家の前や近くの道では馬車に荷物を載せ、しばらく離れる家族と別れを惜しむ人たちがいる。
ヴァイス(ka0364)は顔見知りの虎猫と柴犬を撫で繰り回してあいさつをする。
「無名三号、四号、芝六郎、よろしくな」
モフモフされた無名三号改め見虎と無名四号改め志虎は猫パンチを繰り出し、芝六郎は激しく尻尾を振る。
龍崎・カズマ(ka0178)は里人たちの資材や荷物を積んだ馬車と大江家のペットたちの馬車を見る。
「ずいぶんとまあ、大所帯だねぇ」
テントや鍋などの荷物は自身の馬に載せてある。
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は大江家の移住ペット一覧と合わせ、実物をじっくり観察し、特徴を覚える。
「猫が一番やっかいだな」
荷物には必要なら放出する予定の猫缶や秘密のアイテムがあった。
ディーナ・フェルミ(ka5843)は来る前に里近辺に出そうな妖怪について、ハンターオフィスで調査をしていた。
「妖怪についてはみんなと共有するの……それよりも、お猫さまには運搬されてやってもいいやって思ってもらえると嬉しいの」
非常に大荷物で、虎猫のところにスキップしながらやってくる。
丸川ヒカル(ka3388)は日焼け止めをしかっりと塗ることを忘れない。
「ヒカルさんは不思議なのです。動物たちは自ら移住するみたいです」
馬車の上や周りでおとなしくしている。
宵待 サクラ(ka5561)はペットの柴犬二匹を同道させ、必要なら手伝ってもらえると考えたからだ。
「いいよねー、柴犬。うちは今、四十五匹いるんだよ」
無邪気な発言に大江家の者たちの気温が下がる。
「そんなにいたら傘張りか?」
「内職しないとまずいよな」
食費を気にする話が漏れる。
星野 ハナ(ka5852)は大江家が里に戻ろうとしていることから地域の浄化をするのではと興味津々であった。まずはペットの移動だが。
「犬は人につく、猫は家につくといいますぅ。可愛がってリードをつけて一緒に歩けば大抵の犬はついてくると思いますぅ。驢馬は多頭引きを嫌がる頑固気さんですけどぉ、村人さん一人一頭で荷物載せ、引けば付いてくると思いますぅ」
この発言により驢馬、しっかり働くこととなる。元から歩く予定であった。
フィロ(ka6966)は動物たちをながめ、ゆっくり手を伸ばして触る。
「犬、猫、驢馬……ですか? パルムといい馬といい、クリムゾンウェストにはずいぶんいろんな動物がいるんですね」
驢馬はじっとし、ぬくもりを伝えた。
●さて出発
アルトは大江家のペットのボスの存在のような寅吉に話をつけることにした。
「キミがこの集団のボスの寅吉だな」
「……」
「キミたち猫の自由は保証する。しかし、急にいなくなるのは困るんだ。だから、出かけるときは近くの人間に一声をかけてほしい」
ススッと猫餌の缶を前に置く。
「猫たちに急にいなくならないよう徹底させてほしい。これは前金だ」
固唾を飲んで返答を待つが反応がない。
「あの……当家の猫、缶詰を理解していないかもしれません」
家令がおずおずと声をかけてきた。
「なら、道中でもかゆいところを掻いてやる」
「にゃあ」
契約が成立したのかもしれない。
「はい、次は私なのー」
ディーナがアルトと替わり寅吉の前に立つ。
「寅吉さまー、みんなに上納なのー」
猫用のおもちゃやマタタビ、猫が落ち着く箱の山にリードがドンと置かれる。
「猫用のおもちゃは休憩中や到着後、たくさん遊べるのー。それと、箱は移動中ゆっくりできるし、到着後も何もない里でもくつろぎスペースになるのー」
馬車はより一層いっぱいになった。
「そういえば、夜間はお猫さまにリードして、荷台につないでおくの?」
ディーナは仲間に対して質問をした。
「特に考えてはいませんが……」
ヒカルは呟き、他の意見を待つ。
「気にしていなかった。テント張って夜休むとき、むしろ、猫のために隙間明けておいてやろうと思っていたくらいだ」
カズマが驚いている。
「なら、そのままでいいの?」
異論はなかった。
「柴犬用のリードだよ」
サクラは大江家の柴犬の首輪にリードをつけていくが、普段つけていないため嫌がって抜けようとする。
「駄目だよ、ほら、こうするんだ」
連れてきた自分の柴犬の太郎と次郎につけると、二頭とも何事もないように立っている。
「犬に慣れた里の人はいるのかな? 狩り犬を使う人とか?」
同行する里人たちは「散歩程度なら」という答えが返ってくる。
「それでも十分だよ。島にこの子たち住むなら、行き来する皆となれないといけないし」
里人たちは了解した。
「芝六郎、なかなか堂にはいっているぞ。こら、見虎、リードにじゃれるな。が、可愛いな」
ヴァイスはリードを嫌がっている芝六郎をほめて慣れさせようとしている。しかし、猫がプラプラするリードで遊んでしまう。
「可愛い、ですか……? そうですか、あれが、可愛い……了解しました」
フィロは状況をみて感情を理解しようとする。
動物の飼育や接する方法を学んできた。今回の任務は動物は世話すべき対象であり、それ以上でも以下でもないとはいえ、勉強したことを本日から実践の場だった。
「リードを持ってみて良いでしょうか」
「はいどうぞ」
サクラに手渡されフィロは心臓に当たるところがバクバクと音を立てるようだった。
「ところでー、紅葉さんは来るんですー? 里の浄化が気になるのですー」
ハナの言葉に家令は驚く。
「あの方はすでに出仕しています」
家令は慌てた。
「え? えええ? それは残念ですう。危険は少ないとはいえ、浄化したほうが安全ですよねー。一部だけしておきます? 私、符術師ですしー」
「必要そうなところがあれば……それはお願いします」
「分かりましたー」
ハナは動物たちに注意を傾けることにした。
●カエル
一行は日程通り集落の跡地に着く。
途中、柴犬が歩かなくなったが運べば終わる。驢馬に関してはのろのろ歩いていく。
幸い猫はおとなしく荷台にいた。
カズマはテントを組み立てると、虎猫が眺めている。
「お前たちも入るか」
組み立て終わって入り口を開けると元気よく近づいてくるが、入るときは恐る恐るであった。
「さて、食事は……あっちで始めているみたいだな。手伝おう」
カズマはたき火に向かった。
ハナが料理をはじめているところにフィロが手伝っている。
「ハナ様、これで良いでしょうか」
「うん、これが猫用ですぅ」
「はい、かしこまりました。猫用ですね」
「そうですよー」
下準備が着々と進んだ。
ヴァイスは池にいるカエル目当てに出かける。先日妖怪退治にやってきた池であり、カエルがたくさんいるというのを知っていた。
「お前たちも来るのか?」
前回ここまで冒険しに来た猫二匹と柴犬が御供に来る。
「新鮮なカエルを食べて英気を養おう」
ヴァイスは見回りもかねて出かけ、無事カエルも入手した。
サクラは残っている柴犬の世話を里人と行う。
「柴犬は小型でも猟犬だから、運動不足はダメだよ。ストレスになるとかんだり無駄吠えしたりするからね」
里人はしばらく一緒に過ごす柴犬について学んだ。
「こうやって遊ぶのもいいよ」
フリスビーを投げた。
大江家の柴犬、見送った。
「……え?」
「……」
里人もキョトンとする。
フリスビーに興味を持っていなかった。
ディーナは猫たちの点呼を行う。
「さっき、ヴァイスについて行ったのもいるの。それ以外はいるのか見るのー。まず、寅吉さまー、あ、寅吉さま、どこにでかけるのー」
寅吉はちらりと見た後、アルトの方に向かった。
「なるほど、そういうことになるの。確認するのー」
ディーナは近くにいる猫たちを抱きかかえ探すとテントで遊んでいるのを見つけ、そのまま餌のところに連れて行った。
「来てくれるのはいいいのだが」
アルトは足元に転がった寅吉に困惑しつつも楽しそうに、しゃがんでワシワシと掻くように撫でた。
ヒカルは見張りもかねて、すこしだけ離れたところに向かう。目をつむり呼吸を整える。
「ここで座禅はできないですね……ペットたち、きちんとついてくるので助かります」
一人になると落ち着いたが、戻って日課を行うことにした。
何事もなく、夜は静かに更けていく。
●逃亡
ハンターたちと里人たちはそれぞれ作った順番で見張りは一晩行っていた。
「気づかなかった!」
カズマがうめきつつ、寅吉を見ると目があったがそらされた。
「探すのですぅ」
ハナは符を握りしめる。
「いないのはリストによると寅江さまなのー」
ディーナが告げる。
「早く探そう。物資の出発は……」
「いえ、護衛の任がありますので、即急に猫を探すのが重要です」
ヴァイスにフィロが答えた。
「探しましょう」
ヒカルは走り出した。
「柴犬たち、探せる?」
念のためにサクラは問うが、大江家の柴犬は理解しなかった。
寅江の名前を呼び探す。
その中でアルトは荷物から七輪を取り出し、謎のサンマを焼き始めた。風向きによっては匂いも飛ばないかもしれないが、試してみることにした。
「寅江、出て来い」
パタパタとうちわであおぐと、火が上がりサンマの油が落ちる。
「……視線が痛い」
周囲の虎猫達がじわじわとアルトに近づいてくる。早く見つからないと襲われそうだ。
「見つけたぞー」
「式神ですぅ、悪い子は捕まえるのです」
「寅江さまー、さあ、ブラッシングを受けてください」
「ああ、柴犬たち、落ち着いてー」
「良かったです」
ハンターたちの声が重なってアルトのところまで届く。
「サンマはなかったことにする」
道具をしまうと、虎猫達が舌打ちしたような雰囲気が伝わった。
若干の遅れの後、出発した。
虎猫達は騒ぎなど嘘のように荷台に置かれた箱で眠りについている。
柴犬たちは前日よりリードに慣れたようだ。
驢馬たちは道の草を食ったり、突然止まったりはしている。それでも面倒を見る人やハンターが飼い葉などで動くように促してさほど遅れは出なかった。
「暑い時は干し梅がいいです。ぜひ食べてください」
ヒカルは里人に干し梅を差し出す。
「ぜひ頂戴なの。こういうのは作る人によってすごく違うから気になるの」
「そうですぅ。甘いのかしょっぱいのか……食べるまで分からないのです」
ディーナとハナが興味を持つ。
「そうですね。ではどうぞ」
ヒカルは差し出した。
「なんだか素敵な匂いで気になるわ」
柴犬たちとともにサクラがやってきた。
少しだけ休憩をした後、再び警備につく。
二度目の野営。
都から離れると汚染の名残が多いと感じる。
「非覚醒者でも問題はない程度なんだろうけれど、早く浄化の儀式やるならやった方がいいだろうな」
アルトは見回りで海辺にやってきた。昨年も同じように眺めた島は寂しそうだ。
「家が新しくなって、人が移るようになったら……の前に動物たちか」
紅葉の母が歪虚になっても執着していた場所。新しく生まれ変わることを願う。
ヴァイスは見回りをしながら、歪虚による傷跡が残る荒涼とした大地を見る。一方で現在未来への一歩を彼は運んでいる。
「まずは少しでも資材を持ちこむ。あの島を中心にここも復旧するのだろう」
元の姿は想像するしかない。
フィロはふと景色も見る。
「いろいろな生き物がいます。いろいろな地形があります」
先日の依頼でいたところは山があり、緑が広がる風景だった。今、ここは海があり、砂浜があり、枯れ草が主体の大地が広がる。目的地はその先、島だ。
カズマは見張りをする中、目的地が目の前ということで里人たちの気が緩んでいるのを感じた。
「仕方がないよな」
「復興はこれから……動物たちは雨風がしのげればいいのか」
島を見るが、壊れた家くらいしかないようだ。
「ペットたちに復興しろと尻を叩かれたようなもんだな」
苦笑がもれた。
潮騒が聞こえる中、朝まで過ごす。
何もないが、妖怪が住む範囲であるため、ハンターは緊張が高まる。
●島へ
「引き潮で道ができるんですね」
フィロは知識にあっても実際見ると違う。
「本当なのー。生き物が渡るのはいいけど、馬車は辛いの」
「むしろ、舟で運んだほうが早いですぅ?」
ディーナとハナの言葉を聞いて、里人はハッとしている。
「今回は運べるのだけ運ぶか」
「そうだな」
「どっちにしろ、こっち側で必要なんだし」
里人たちは緊急会議を行っている。
「決まりました」
「最低限だけにしておきます」
決定後ハンターたちは状況を確認する。ここが一番狙われやすい。なぜなら、馬車から下り荷物を持ちスピードが落ちる上、道幅が限られたところを歩かないとならない。
「特に動物たちだな」
ヴァイスが何気なく馬車を見ると、虎猫達はずんずん下りて行っている。
「行く気満々だし、上陸しよう」
アルトが宣言する。
驢馬と柴犬はそれぞれ引く係がいる為問題はなさそうだ。虎猫達は抱き抱えることも検討されたがぬかるんだところを歩きだしている。
「俺に続け」
ヴァイスは先導し、島の様子も見る為進む。
殿にカズマとフィロがついた。
何もなければそれはそれでいいが、半分ほど渡ったところで羽ばたきが聞こえる。この地域で鳥を見ていないため不自然さがある。
「お猫さまの安全は守るのー。お猫さまを抱えられない怒りはぶつけるのー」
ディーナはいつでも術をつかえるように敵を見据えた。
「空にいると迷惑よね」
サクラは手裏剣を手にする。
「ふふふっ、こういう時は術がさえるのです」
ハナは符を握りしめる。
「うん、そうです……私だって攻撃できるわ」
ヒカルは戦闘モードで自信をみなぎらせ、機導術を放てるようにした。
「近づいたとしても私が守り切ります」
フィロは敵の形状をしっかり見極めようとする。
どす黒い色合いの硬質そうな皮膚に、鳥のようだが顔はどこか人間の髑髏をほうふつとさせる妖怪だ。翼は皮膜の物であり、鳥というより蝙蝠に近い。
「数は三、大したことはないが油断はしない」
アルトは魔導ワイヤーをまずは握る。
――イツマデ……イツマデ……。
鳴き声はしゃがれた、集団で異様に響き不安を掻きたてる。
「いつまでもここにいていいものではない。還れ、自然の理に」
カズマはイツマデに対し諭すように告げる。
それは近づいてくると急降下し、脚で攻撃してくる。
ハンターは敵を近づけさせないよう攻撃し、近づいても護衛対象に傷を負わせないという気迫で立ち向かった。
術で接近を阻まれ、近づいてもすぐに切り倒され、それらは無に還ったのだ。
島に無事上がることができた。
今後も用心は必要ということであるが、まずは安心だろう。
何度か往復し、必要な荷物は運びこむ。
島で一晩明かすことになりそうで、片付けを少し手伝ったり、島の状況を見て回ることはできた。
また、動物たちの居場所も確認し、可愛がることもできたのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 5人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
作戦相談 丸川ヒカル(ka3388) 人間(リアルブルー)|19才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/07/24 23:33:17 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/24 16:30:11 |