ゲスト
(ka0000)
青い瞳のエトランゼ
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/07/28 19:00
- 完成日
- 2017/08/05 00:17
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
彼女が目覚めた時、そこは見たこともない部屋の中だった。天井が見える。随分と生命の温もりを感じさせる素材で作られているようだ。
周囲を見回せばどこもそのような素材で作られている。確か“サーバー”がこんな感じだったはずだ。まさかサーバーで部屋を作ったのだろうか。それともここがサーバーの中なのだろうか。彼女はそれを確かめるべく、覚束ない足取りで外に出た。
●
話は少し前、エバーグリーン中枢部、セントラルの“サーバー”にハンター達が突入する頃に遡る。エバーグリーンの探索を何度か行っていたハンター達はそこで幾人かのオートマトン――もっともこの時点ではハンターシステムの改修が行われていないため、精霊がインストールされていたのではなく何か別の物、おそらくはカスケードの差し金で動いていたものだと思われるが――それと出会った。
彼女もそんな中の一人だった。身を最小限包むコンパクトな服装で、格闘士のような動きをしてきたこと、彼女と出会い戦うことになった建造物がカスケードの手により崩落させられた時、偶然か何かハンターを身を挺して守ってくれたこと、その時片腕がもげた事、そういった事が報告されていた。
調査のために回収され、クリムゾンウェストにやって来た彼女は研究施設に運ばれ調べられる。それにより幾つかのことがわかった。元々インストールされていた精霊の影響が残滓のように残っていること。彼女が建造物崩落時に動いたのはその影響とも考えられること……しかし、研究はここで終わった。
理由は簡単だ。トマーゾ教授がオートマトン技術をハンターシステムに組み合わせるために協力し始めたからである。オートマトン技術のオーソリティである教授が技術復活に手を貸したとなると、独自の研究の結果できあがるものは車輪の再発明でしか無いものが大半になる。
そして後々も役に立つであろうオートマトン修復技術の習得という現実的な理由と、腕を失った彼女に対する哀れみとが相まって、別に入手していたオートマトンの腕、もっともそれは彼女の肌の色とは全く合わない、塗装が禿げたのか鈍く光る素地がむき出しになったものだったのだが、それが取り付けられていた。
●
「ここ……どこ?……」
見知らぬ世界に放り出された彼女は、元々インストールされていた精霊の記憶の残滓の影響もあって混乱していた。彼女は自分の見知った記憶を探してこの街、リゼリオをふらふらと歩き回る。しかしここには彼女が知っているようなものはまるでなかった。あるわけもなかった。宛もなく街をさまよう彼女。片腕が鈍く光っているその容姿は随分と奇妙なのだが、街行く人々はその事には目もくれなかった。
●
「依頼です」
ハンターオフィスで受付嬢のモア・プリマクラッセ(kz0066)は集まったハンター達に説明していた。
「リゼリオのオートマトンに関する研究を行っていた施設から、オートマトンの素体が一つ消えました。盗まれた可能性もありますが、痕跡もないことから恐らく何らかの要因で勝手に起動して自分の足で出ていったものと思われます」
「勝手に起動って……そんなことあるのかよ」
「あります。実際の所大精霊の思し召しによりオートマトンの起動は決まりますので、我々ハンターオフィスも起動したオートマトンを全て把握できているわけではありません」
依頼に参加していたイバラキ(kz0159)の疑問にモアはそう答えた。
「外見的特徴は鈍く光る片腕と青い瞳ですね。元々エバーグリーンで彼女と出会ったハンター達による報告では格闘術を使っていたようです」
「へぇ! アタシはオートマトンとも手合わせしたかったんだ! コイツは楽しみだ!」
「イバラキさん、目的は彼女の保護です。殴り倒してはいけません」
というわけで街をさまよっているオートマトンの保護のためにハンター達はリゼリオの街へと向かったのであった。
●
「これ……見たことある……」
彼女がそうつぶやき立ち止まったのは、街角に合った格闘術を教える道場だった。中では門下生たちが鍛錬のために戦っている。それを見て彼女の中に記憶の残滓が蘇る。
エバーグリーンの一角にあった巨大な闘技場、かつての彼女はそこで戦う戦士だった。オートマトン同士で殴り合い、蹴り合う。肉体的労働を全てオートマトン達に押し付けたエバーグリーンの人々は、闘争本能の満足までもオートマトンに任せていた。
「私も……戦いたい……」
「なんだぁ? 道場破りかぁ?」
思わず道場内に入り込んだ彼女に道場の者達はそう声をかける。その中の一人が彼女をつまみ出そうと手を伸ばした瞬間だった。一瞬で身をかがめ懐に潜り込んだ彼女の拳が顎に炸裂し、その男は吹き飛ばされ壁に叩きつけられていた。
そんなことが起こっているとは露知らず、ハンター達とイバラキは彼女を探し始めていた。
彼女が目覚めた時、そこは見たこともない部屋の中だった。天井が見える。随分と生命の温もりを感じさせる素材で作られているようだ。
周囲を見回せばどこもそのような素材で作られている。確か“サーバー”がこんな感じだったはずだ。まさかサーバーで部屋を作ったのだろうか。それともここがサーバーの中なのだろうか。彼女はそれを確かめるべく、覚束ない足取りで外に出た。
●
話は少し前、エバーグリーン中枢部、セントラルの“サーバー”にハンター達が突入する頃に遡る。エバーグリーンの探索を何度か行っていたハンター達はそこで幾人かのオートマトン――もっともこの時点ではハンターシステムの改修が行われていないため、精霊がインストールされていたのではなく何か別の物、おそらくはカスケードの差し金で動いていたものだと思われるが――それと出会った。
彼女もそんな中の一人だった。身を最小限包むコンパクトな服装で、格闘士のような動きをしてきたこと、彼女と出会い戦うことになった建造物がカスケードの手により崩落させられた時、偶然か何かハンターを身を挺して守ってくれたこと、その時片腕がもげた事、そういった事が報告されていた。
調査のために回収され、クリムゾンウェストにやって来た彼女は研究施設に運ばれ調べられる。それにより幾つかのことがわかった。元々インストールされていた精霊の影響が残滓のように残っていること。彼女が建造物崩落時に動いたのはその影響とも考えられること……しかし、研究はここで終わった。
理由は簡単だ。トマーゾ教授がオートマトン技術をハンターシステムに組み合わせるために協力し始めたからである。オートマトン技術のオーソリティである教授が技術復活に手を貸したとなると、独自の研究の結果できあがるものは車輪の再発明でしか無いものが大半になる。
そして後々も役に立つであろうオートマトン修復技術の習得という現実的な理由と、腕を失った彼女に対する哀れみとが相まって、別に入手していたオートマトンの腕、もっともそれは彼女の肌の色とは全く合わない、塗装が禿げたのか鈍く光る素地がむき出しになったものだったのだが、それが取り付けられていた。
●
「ここ……どこ?……」
見知らぬ世界に放り出された彼女は、元々インストールされていた精霊の記憶の残滓の影響もあって混乱していた。彼女は自分の見知った記憶を探してこの街、リゼリオをふらふらと歩き回る。しかしここには彼女が知っているようなものはまるでなかった。あるわけもなかった。宛もなく街をさまよう彼女。片腕が鈍く光っているその容姿は随分と奇妙なのだが、街行く人々はその事には目もくれなかった。
●
「依頼です」
ハンターオフィスで受付嬢のモア・プリマクラッセ(kz0066)は集まったハンター達に説明していた。
「リゼリオのオートマトンに関する研究を行っていた施設から、オートマトンの素体が一つ消えました。盗まれた可能性もありますが、痕跡もないことから恐らく何らかの要因で勝手に起動して自分の足で出ていったものと思われます」
「勝手に起動って……そんなことあるのかよ」
「あります。実際の所大精霊の思し召しによりオートマトンの起動は決まりますので、我々ハンターオフィスも起動したオートマトンを全て把握できているわけではありません」
依頼に参加していたイバラキ(kz0159)の疑問にモアはそう答えた。
「外見的特徴は鈍く光る片腕と青い瞳ですね。元々エバーグリーンで彼女と出会ったハンター達による報告では格闘術を使っていたようです」
「へぇ! アタシはオートマトンとも手合わせしたかったんだ! コイツは楽しみだ!」
「イバラキさん、目的は彼女の保護です。殴り倒してはいけません」
というわけで街をさまよっているオートマトンの保護のためにハンター達はリゼリオの街へと向かったのであった。
●
「これ……見たことある……」
彼女がそうつぶやき立ち止まったのは、街角に合った格闘術を教える道場だった。中では門下生たちが鍛錬のために戦っている。それを見て彼女の中に記憶の残滓が蘇る。
エバーグリーンの一角にあった巨大な闘技場、かつての彼女はそこで戦う戦士だった。オートマトン同士で殴り合い、蹴り合う。肉体的労働を全てオートマトン達に押し付けたエバーグリーンの人々は、闘争本能の満足までもオートマトンに任せていた。
「私も……戦いたい……」
「なんだぁ? 道場破りかぁ?」
思わず道場内に入り込んだ彼女に道場の者達はそう声をかける。その中の一人が彼女をつまみ出そうと手を伸ばした瞬間だった。一瞬で身をかがめ懐に潜り込んだ彼女の拳が顎に炸裂し、その男は吹き飛ばされ壁に叩きつけられていた。
そんなことが起こっているとは露知らず、ハンター達とイバラキは彼女を探し始めていた。
リプレイ本文
●
「外見的特徴は鈍く光る片腕と青い瞳ですね。元々エバーグリーンで彼女と出会ったハンター達による報告では……」
その日、ハンターオフィスで依頼内容を聞いていた大伴 鈴太郎(ka6016)は、その探すべき対象の特徴を聞かされて見る見るうちに顔色が変わっていった。そしてモアが全てを説明し終える前に彼女は既に部屋を飛び出していた。
「ん? アイツどうしたんだ?」
「私は協力する。オートマンの保護に。エバーグリーンで大伴鈴を守るように動いた者ならば、尚のこと力にならなければならない」
彼女がそこまで慌てたことに疑問を呈したイバラキに、雨を告げる鳥(ka6258)はそう理由を説明していた。
「そういうこと、っと、まずは大伴君を追いかけないとね。モアさん、彼女の写真とか資料とか、貸してくれるかな。そんな遠くまでは行ってないと思うんだけど」
そう必要な物を受け取った岩井崎 メル(ka0520)は鈴太郎を追いかけて部屋を飛び出していく。
こうして残された七人は、改めて彼女の捜索方法を決めていた。と言ってもそれはレインの一言であっさりと決まった。今は一刻が惜しい、そのことは皆が分かっていた。
「私は提案する。リゼリオは広い。手分けして探す方がよい」
●
「彼女には助けられた恩があるわ。それに見知らぬ世界での不安は、他人事じゃないしね」
「ええ、皆思うところはあると思いますが、今はいち早く保護することを優先しましょう」
天王寺茜(ka4080)と狭霧 雷(ka5296)はイバラキと共に市場の方面へやってきていた。さまざまな露店が立ち並び活況を呈している。
「アタシが暴れたのってここだったっけ……っと、そういやその恩って何なんだ?」
バツが悪そうな表情を見せたイバラキは茜にそう問いかける。それに対し彼女はエバーグリーンで起こった事を説明し始める。サーバー復活のために異世界に渡った事、そこで恐らくカスケードに操作された形の彼女と出会った事、分が悪くなったことを悟ったカスケードが建物を崩落させたこと、そしてそれに対し彼女が腕を犠牲に守ってくれたこと……。
「ということがあったの。あ、こんにちはー。美味しそうな果物ですねー」
「なるほどねぇ。アタシにはなんとなくそいつの気持ちがわかる気がするよ。お、いい色してんな、オヤジ」
「へぇ、イバラキさんにはわかるの? ちょっと人探しをしてるんですけど……あ、この林檎ください♪」
「ああ、いい好敵手ってのは財産なのさ。多分そいつがアンタ達を認めたってことだと思うぜ。で、こんな腕をした女なんだけどオヤジ、知らないか?」
会話をしながら店主に尋ねる二人。一方その頃狭霧は買い物に来ていた婦人達に聞き込みをしていた。
「これぐらいの髪の長さで、青い瞳の女性なのですが……そして腕が鈍く光っているのですが」
「確かに変わった格好だけど、この街にはそういう人も結構いるからねぇ……ごめんなさいね」
「いえ、ありがとうございます」
捜索は難航しそうだった。
●
「行方不明の同族か……放っておくわけにはいくまい」
閃(ka6912)はオートマトンである。同族のよしみか、彼女のことは気になる。が、飛び出す前にどうするべきか、それを判断する冷静さもあった。
「顔立ちや背丈、それに服装に特徴は無いか?」
「瞳は青、背丈は一般的な女性のそれですね。服装は……どう説明しましょうか」
「研究所で確保して再起動までのチェックをしたのだ。技術屋が経過観察のために写真を撮らんわけがない。迷子探しは顔が分かった方が分かりやすい、さっさと出して貰おうか」
説明を始めたモアにルベーノ・バルバライン(ka6752)がそう横から入る。
「そうですね。実際に見てもらった方が早いでしょう」
写真を受け取った閃は龍堂 神火(ka5693)と共に街へと繰り出した。
龍堂は今もこの街を歩いているだろう彼女のことに思いを馳せていた。彼は転移の際に全ての記憶を失っていた。自分が何者なのかもわからず、見知らぬ世界に放り出される不安と恐怖、それは彼自身が痛いほど知ってた。
「……早く見つけたいですね」
だから放っておける訳も無かった。
龍堂は子どもに声をかける。好奇心旺盛な子どもなら大人が見過ごしてしまうような事も覚えているかもしれない。その期待にかけていた。
「変わった腕の女性は見ませんでしたか?」
「そう、こんな感じなのだが」
閃はそこに写真を見せ、二三言付け加える。
「こんな水着みたいな服のおねえさん知らないよ」
しかしその答えは芳しくない。
「あ、でもアイツがこんな感じのおねえさんが戦ってたって言ってたよ?」
「……やはりか」
閃は何が起きるか思いを巡らせていた。この世界のことを何も知らない彼女が一人街を歩いていたら、騒動になる可能性もある。ましてやまるで水着のような薄い服一枚だけを身に纏った彼女なら、あまり良からぬ者達の目を引くことも十分考えられた。
「それどちらですか?」
子どもたちが指差す方を見て頷いた二人は走り出す。
「急ぎましょう」
●
「この場を荒らした形跡なく失踪なら、迷子だろう……多分な。見つけるための手段は早ければ早い方が良い……常識も分からず怯えているだけかもしれんのだ、早く迎えに行ってやらねば可哀想だろう。見目麗しい分攫われる危険もあるのだからな」
ルベーノはレインと共に捜索に出ていた。二人が居るところは茜達とは別の商業地域。変化に目ざとい商売人の目に期待すると言う点で考えは一致していた。
「私は尋ねる。鈍く光った片腕を持つ少女を見かけなかったか。この街に初めて来たかのようにうろついていたようだ」
「ああ、かなり派手な……派手と言うのかね、白い水着のような服一枚で歩いてた娘かい?」
ルベーノは借り受けた写真を見直す。そこには間違いなく、ワンピース型の水着の様な服のみを身に纏った彼女の姿が写っていた。
「店主、どこに行った?」
「あっちの方だな。声をかける前に行っちまったよ」
店主は市街地の方を指差す。
「私は向かう。彼女は今も不安に苛まれている筈だ。急ごう」
「恩に着るぞ!」
そして二人は走り出した。
●
「だから! オレくらいの年と背でよ! こう……こんな顔したネーチャンだってば!」
鈴太郎は子供達に身振り手振りを交え説明していた。さらに似顔絵を描いてみせたが、それで伝えるには彼女の画力は少々不足していた。
「怯えてるよ、大伴君」
ただそうやっていた事で、メルが鈴太郎に追いつくだけの時間が出来た。そして彼女は鈴太郎のフォローに入る。
「こんな顔のお姉さんなんだけど。片腕が鈍く光っていたはずだよ」
メルもモアから写真を借りて来ていた。それを見せれば通りは早い。
「このお姉さんならあっちに居たよ」
「それでどこなんだ!」
「まあまあ抑えて、どこに居たのかな?」
食い気味に話す鈴太郎と、子供たちに飴玉を渡して落ち着かせるメル。
「あっち側にある道場に入っていったのを見たよ」
「やべぇ!」
「ああ、待って!」
鈴太郎のバイクの後部座席に慌ててメルが飛び乗る。
風景が流れる中、鈴太郎は彼女と出会った時の事を思い出す。
「格闘家の大事な片腕捨ててまで助けてくれた理由はワカンねぇ。けどアイツが拾ってくれた命で今のオレがある。それが全てだ」
「そうだね。私の恩人でもある。だからちゃんと保護しないとね」
程なくしてバイクは市街地の一角に滑り込んでいった。
●
「何でこんなコトになってンだよ!?」
道場に飛び込んだ二人が見たのは一言で言えば惨状だった。道場の者達があちらこちらに倒れている。二人が入った瞬間に見たものは、飛びかかった師範代を少女がパンチ一発でKOしたところだった。
「ちょ、たんま! 覚えてねぇのかよ!? サファイア!」
慌てて少女を抑えようと前に飛び出す鈴太郎。少女は構えを取ったまま
「……会いたかった」
次の瞬間左右の連打が鈴太郎に襲いかかっていた。
「……さて、見つけたのは良いが。これ以上、怪我人が増えるのは良くないな」
そこに閃と龍堂が駆けつける。閃はまず倒れている道場生と二人の間に立ち備える。一方の龍堂は
「縛れ、ジャルガっ……!」
カードを一枚抜き投げ放とうとした。だが。
「……どうして戦わないの?」
「……へっ?」
鈴太郎はまず落ち着かせるべく少女の拳を両腕で受け止め続けていた。強烈な衝撃の嵐にじんじんと痺れる。しかし反撃を返さない鈴太郎に少女は戸惑い突然攻撃を止める。それに鈴太郎も戸惑う。
「このオートマトンは前衛か! 世界に対する怯えを振り払うために拳を振るって自らの解を探すか! いい……実に良いぞ気に入った!」
そこにルベーノがレインと共に入ってきた。ルベーノは状況を一瞬だけ見て判断するとすぐさま鈴太郎の前に割り込み戦いを挑む。
「実に我好みの状況だ。拳に魂込めて殴りあうほど分かり合えるものはない。昏倒するまで語り合おうぞ!」
ルベーノの隆起した筋肉が光り輝く。そのマテリアルを拳に集め放つ。少女はそれを最小限の動きでかわすとカウンターの左フックをねじ込んだ。
吹き飛ばされるルベーノ。だが壁に叩きつけられる前に狭霧がそれを受け止めていた。
「手出しは無用だ!」
「周りに被害が出ないようにするためですよ」
そんな中密かにルベーノのダメージを龍堂は瑞鳥符で抑えていた。
「私たち、彼女に恩がありまして……できれば最初に手を差し伸べるのは、私たちでやりたいなって」
一方茜は一緒に来たイバラキにそう懇願していた。
「私たちが負けるまでは、待ってもらえませんか? すみません」
「アタシは人の戦いに手出しするほど無粋じゃないさ」
「ありがとうございます!」
そして茜は周囲を見回す。
「うわあ……し、死屍累々って感じねえ」
「いや、そうでも無いぞ」
そしてイバラキは近くで倒れていた門下生の頬を張った。
「ほら、そろそろ目を覚ませ」
それに呼応してか、門下生達が起き上がり始める。
「綺麗に顎を打ち抜いて意識だけを飛ばしたんだ。ダメージはさほど残ってないはずさ。しかし見事な腕前だ」
「そうなんですか?」
「私は推測する。おそらく起動時の混乱により、素体の本能に従っていると思われる。ただ素体に刻まれた技術は何ら衰えていないようだ」
レインは門下生の容態を確認するが、イバラキの言うとおりだった。深手を負った者は居なかった。
その頃戦いに戻ったルベーノはボディへパンチを繰り出す。互いの拳が交錯し土手っ腹に拳が突き刺さる。
「実に気分がいい! 楽しかろう、貴様も!」
苦痛が込み上げるがそれ以上にルベーノはこの状況は楽しんでいた。そして彼の推測どおり、少女も楽しんでいるかのようだった。彼女の表情は変わらないが何よりその拳が彼に彼女の思いを伝えてくれていた。
だから彼女は得意のコンビネーションを繰り出した。ボディへの一発でガードを下げさせ、空いた顎先を必殺の右ストレートで打ち抜く。
痛打を受け、なおもルベーノは戦おうとしていた。だが彼の意思とは裏腹に膝から力が抜け崩れる。
「その辺にしておきましょう」
そんな彼を狭霧は幻の手で掴みこちら側へ引き寄せた。
「次は……誰?」
その時、鈴太郎が進み出た。腹をくくり構えを取る。探るように拳を出せば急加速した少女の拳の雨が降り注ぐ。
だが鈴太郎も応戦する。連打に連打で応じる。何発受け止めて何発殴られたか、戦っている当人にもわからぬほどの高速の攻防。ひとしきり打ち合った後どう攻めてくるか。鈴太郎には分かっていた。
二人の動きはまるで鏡写しの様に同じだった。顎先へ向けて最短距離で右拳を伸ばす。先程ルベーノを倒した右ストレート、それを二人が放っていた。互いの拳が交錯する。
次に皆が見たのは、少女の拳が鈴太郎の頬にめり込んでいる姿だった。だが、鈴太郎の拳は少女に届いていなかった。以前と同じ光景。前との違いはメルの補助で鈴太郎が倒れなかったことと
「これ、覚えてますか」
追撃を放つ前に少女を龍堂の呼び出した蛇が拘束していたことだった。
●
「ボクは、貴方と友達になりたくてここに来ました」
拘束を解いた龍堂は少女にそう話しかける。先ほどの光景が嘘の様に少女は落ち着いていた。
「友達……?」
「えーっと、大切な存在と言うか何と言うか……」
鈴太郎の言葉に少女は口を挟む。
「パーツ代高いって聞いたからよ、カネ貯めてたンだ……やっぱ同じ腕のがいいか?」
「ううん、大丈夫。でも大切ならどうして拳を止めたの……?」
「だってサファイアは命の恩人だからさ……あ、サファイアって言うのはその青い瞳を見てルビーみたいだと思って……」
鈴太郎はまだ慌てながらこれまでの経緯を話す。それでややあやふやながら少女は理解したようだった。
「というわけでこちらでははじめましてなんだけど……まずは、一緒に謝ろっか」
「私は謝る。知人が迷惑をかけた。突然な環境の変化で記憶が混乱していたようだ」
茜が促した先では、レインが道場の人達に事情を説明していた。しかし
「いえ、謝られるなんてとんでもない、むしろ色々教えてほしいぐらいです!」
それは道場の者達によって遮られた。
「イバラキ君の言う通り、その技量は卓越した物があるようだね。それだけの技術があれば向いている生き方もあるんだけど」
何となく察したメルはそう少女に勧める。その言葉に龍堂やルベーノも合わせる。
「そうですね。……あの、ハンターになってみませんか?」
「殴りあいながら世界を知る最適解はハンターだ。お前もハンターになればいい。世界にはまだ殴りあったことのない強い輩がいる……会いたいだろう、お前も」
龍堂は鈴太郎に対して少女が示した反応で、彼女が鈴太郎の事をどう思っているかを察した。記憶を無くして、でも漠然としたある思いがあって……それはまるで自分の様だった。だから
「戦うことが好きなら、それに向かっていけばきっと、楽しい事が待ってると思うんだ」
その言葉にサファイアは一つ頷いた。
「それじゃあこれはプレゼント。今日から君はサファイア君だ」
メルは彼女の首にペンダントを付ける。胸元で瞳と同じ透き通った蒼い輝きが煌めいた。
最後に閃は同族として彼女に一つアドバイスする。
「私も、目覚めてからそう時間が経っているわけではない。尤もらしく助言できる立場では無いが、私の経験から言わせてもらえば……まずは目標を立てるべきだ。目指す方向が決まれば、為すべきことも自ずと決まってくるだろう」
「それなら……また二人と戦いたい。もっといい戦いをしたい」
その言葉に満足そうに頷くルベーノ。一方鈴太郎はどう返せばいいか戸惑っていた。その時イバラキは彼女の両肩に手をやり、こう言った。
「友達や恩人と同じぐらい、好敵手ってのは大切なもんだぜ?」
「外見的特徴は鈍く光る片腕と青い瞳ですね。元々エバーグリーンで彼女と出会ったハンター達による報告では……」
その日、ハンターオフィスで依頼内容を聞いていた大伴 鈴太郎(ka6016)は、その探すべき対象の特徴を聞かされて見る見るうちに顔色が変わっていった。そしてモアが全てを説明し終える前に彼女は既に部屋を飛び出していた。
「ん? アイツどうしたんだ?」
「私は協力する。オートマンの保護に。エバーグリーンで大伴鈴を守るように動いた者ならば、尚のこと力にならなければならない」
彼女がそこまで慌てたことに疑問を呈したイバラキに、雨を告げる鳥(ka6258)はそう理由を説明していた。
「そういうこと、っと、まずは大伴君を追いかけないとね。モアさん、彼女の写真とか資料とか、貸してくれるかな。そんな遠くまでは行ってないと思うんだけど」
そう必要な物を受け取った岩井崎 メル(ka0520)は鈴太郎を追いかけて部屋を飛び出していく。
こうして残された七人は、改めて彼女の捜索方法を決めていた。と言ってもそれはレインの一言であっさりと決まった。今は一刻が惜しい、そのことは皆が分かっていた。
「私は提案する。リゼリオは広い。手分けして探す方がよい」
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「彼女には助けられた恩があるわ。それに見知らぬ世界での不安は、他人事じゃないしね」
「ええ、皆思うところはあると思いますが、今はいち早く保護することを優先しましょう」
天王寺茜(ka4080)と狭霧 雷(ka5296)はイバラキと共に市場の方面へやってきていた。さまざまな露店が立ち並び活況を呈している。
「アタシが暴れたのってここだったっけ……っと、そういやその恩って何なんだ?」
バツが悪そうな表情を見せたイバラキは茜にそう問いかける。それに対し彼女はエバーグリーンで起こった事を説明し始める。サーバー復活のために異世界に渡った事、そこで恐らくカスケードに操作された形の彼女と出会った事、分が悪くなったことを悟ったカスケードが建物を崩落させたこと、そしてそれに対し彼女が腕を犠牲に守ってくれたこと……。
「ということがあったの。あ、こんにちはー。美味しそうな果物ですねー」
「なるほどねぇ。アタシにはなんとなくそいつの気持ちがわかる気がするよ。お、いい色してんな、オヤジ」
「へぇ、イバラキさんにはわかるの? ちょっと人探しをしてるんですけど……あ、この林檎ください♪」
「ああ、いい好敵手ってのは財産なのさ。多分そいつがアンタ達を認めたってことだと思うぜ。で、こんな腕をした女なんだけどオヤジ、知らないか?」
会話をしながら店主に尋ねる二人。一方その頃狭霧は買い物に来ていた婦人達に聞き込みをしていた。
「これぐらいの髪の長さで、青い瞳の女性なのですが……そして腕が鈍く光っているのですが」
「確かに変わった格好だけど、この街にはそういう人も結構いるからねぇ……ごめんなさいね」
「いえ、ありがとうございます」
捜索は難航しそうだった。
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「行方不明の同族か……放っておくわけにはいくまい」
閃(ka6912)はオートマトンである。同族のよしみか、彼女のことは気になる。が、飛び出す前にどうするべきか、それを判断する冷静さもあった。
「顔立ちや背丈、それに服装に特徴は無いか?」
「瞳は青、背丈は一般的な女性のそれですね。服装は……どう説明しましょうか」
「研究所で確保して再起動までのチェックをしたのだ。技術屋が経過観察のために写真を撮らんわけがない。迷子探しは顔が分かった方が分かりやすい、さっさと出して貰おうか」
説明を始めたモアにルベーノ・バルバライン(ka6752)がそう横から入る。
「そうですね。実際に見てもらった方が早いでしょう」
写真を受け取った閃は龍堂 神火(ka5693)と共に街へと繰り出した。
龍堂は今もこの街を歩いているだろう彼女のことに思いを馳せていた。彼は転移の際に全ての記憶を失っていた。自分が何者なのかもわからず、見知らぬ世界に放り出される不安と恐怖、それは彼自身が痛いほど知ってた。
「……早く見つけたいですね」
だから放っておける訳も無かった。
龍堂は子どもに声をかける。好奇心旺盛な子どもなら大人が見過ごしてしまうような事も覚えているかもしれない。その期待にかけていた。
「変わった腕の女性は見ませんでしたか?」
「そう、こんな感じなのだが」
閃はそこに写真を見せ、二三言付け加える。
「こんな水着みたいな服のおねえさん知らないよ」
しかしその答えは芳しくない。
「あ、でもアイツがこんな感じのおねえさんが戦ってたって言ってたよ?」
「……やはりか」
閃は何が起きるか思いを巡らせていた。この世界のことを何も知らない彼女が一人街を歩いていたら、騒動になる可能性もある。ましてやまるで水着のような薄い服一枚だけを身に纏った彼女なら、あまり良からぬ者達の目を引くことも十分考えられた。
「それどちらですか?」
子どもたちが指差す方を見て頷いた二人は走り出す。
「急ぎましょう」
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「この場を荒らした形跡なく失踪なら、迷子だろう……多分な。見つけるための手段は早ければ早い方が良い……常識も分からず怯えているだけかもしれんのだ、早く迎えに行ってやらねば可哀想だろう。見目麗しい分攫われる危険もあるのだからな」
ルベーノはレインと共に捜索に出ていた。二人が居るところは茜達とは別の商業地域。変化に目ざとい商売人の目に期待すると言う点で考えは一致していた。
「私は尋ねる。鈍く光った片腕を持つ少女を見かけなかったか。この街に初めて来たかのようにうろついていたようだ」
「ああ、かなり派手な……派手と言うのかね、白い水着のような服一枚で歩いてた娘かい?」
ルベーノは借り受けた写真を見直す。そこには間違いなく、ワンピース型の水着の様な服のみを身に纏った彼女の姿が写っていた。
「店主、どこに行った?」
「あっちの方だな。声をかける前に行っちまったよ」
店主は市街地の方を指差す。
「私は向かう。彼女は今も不安に苛まれている筈だ。急ごう」
「恩に着るぞ!」
そして二人は走り出した。
●
「だから! オレくらいの年と背でよ! こう……こんな顔したネーチャンだってば!」
鈴太郎は子供達に身振り手振りを交え説明していた。さらに似顔絵を描いてみせたが、それで伝えるには彼女の画力は少々不足していた。
「怯えてるよ、大伴君」
ただそうやっていた事で、メルが鈴太郎に追いつくだけの時間が出来た。そして彼女は鈴太郎のフォローに入る。
「こんな顔のお姉さんなんだけど。片腕が鈍く光っていたはずだよ」
メルもモアから写真を借りて来ていた。それを見せれば通りは早い。
「このお姉さんならあっちに居たよ」
「それでどこなんだ!」
「まあまあ抑えて、どこに居たのかな?」
食い気味に話す鈴太郎と、子供たちに飴玉を渡して落ち着かせるメル。
「あっち側にある道場に入っていったのを見たよ」
「やべぇ!」
「ああ、待って!」
鈴太郎のバイクの後部座席に慌ててメルが飛び乗る。
風景が流れる中、鈴太郎は彼女と出会った時の事を思い出す。
「格闘家の大事な片腕捨ててまで助けてくれた理由はワカンねぇ。けどアイツが拾ってくれた命で今のオレがある。それが全てだ」
「そうだね。私の恩人でもある。だからちゃんと保護しないとね」
程なくしてバイクは市街地の一角に滑り込んでいった。
●
「何でこんなコトになってンだよ!?」
道場に飛び込んだ二人が見たのは一言で言えば惨状だった。道場の者達があちらこちらに倒れている。二人が入った瞬間に見たものは、飛びかかった師範代を少女がパンチ一発でKOしたところだった。
「ちょ、たんま! 覚えてねぇのかよ!? サファイア!」
慌てて少女を抑えようと前に飛び出す鈴太郎。少女は構えを取ったまま
「……会いたかった」
次の瞬間左右の連打が鈴太郎に襲いかかっていた。
「……さて、見つけたのは良いが。これ以上、怪我人が増えるのは良くないな」
そこに閃と龍堂が駆けつける。閃はまず倒れている道場生と二人の間に立ち備える。一方の龍堂は
「縛れ、ジャルガっ……!」
カードを一枚抜き投げ放とうとした。だが。
「……どうして戦わないの?」
「……へっ?」
鈴太郎はまず落ち着かせるべく少女の拳を両腕で受け止め続けていた。強烈な衝撃の嵐にじんじんと痺れる。しかし反撃を返さない鈴太郎に少女は戸惑い突然攻撃を止める。それに鈴太郎も戸惑う。
「このオートマトンは前衛か! 世界に対する怯えを振り払うために拳を振るって自らの解を探すか! いい……実に良いぞ気に入った!」
そこにルベーノがレインと共に入ってきた。ルベーノは状況を一瞬だけ見て判断するとすぐさま鈴太郎の前に割り込み戦いを挑む。
「実に我好みの状況だ。拳に魂込めて殴りあうほど分かり合えるものはない。昏倒するまで語り合おうぞ!」
ルベーノの隆起した筋肉が光り輝く。そのマテリアルを拳に集め放つ。少女はそれを最小限の動きでかわすとカウンターの左フックをねじ込んだ。
吹き飛ばされるルベーノ。だが壁に叩きつけられる前に狭霧がそれを受け止めていた。
「手出しは無用だ!」
「周りに被害が出ないようにするためですよ」
そんな中密かにルベーノのダメージを龍堂は瑞鳥符で抑えていた。
「私たち、彼女に恩がありまして……できれば最初に手を差し伸べるのは、私たちでやりたいなって」
一方茜は一緒に来たイバラキにそう懇願していた。
「私たちが負けるまでは、待ってもらえませんか? すみません」
「アタシは人の戦いに手出しするほど無粋じゃないさ」
「ありがとうございます!」
そして茜は周囲を見回す。
「うわあ……し、死屍累々って感じねえ」
「いや、そうでも無いぞ」
そしてイバラキは近くで倒れていた門下生の頬を張った。
「ほら、そろそろ目を覚ませ」
それに呼応してか、門下生達が起き上がり始める。
「綺麗に顎を打ち抜いて意識だけを飛ばしたんだ。ダメージはさほど残ってないはずさ。しかし見事な腕前だ」
「そうなんですか?」
「私は推測する。おそらく起動時の混乱により、素体の本能に従っていると思われる。ただ素体に刻まれた技術は何ら衰えていないようだ」
レインは門下生の容態を確認するが、イバラキの言うとおりだった。深手を負った者は居なかった。
その頃戦いに戻ったルベーノはボディへパンチを繰り出す。互いの拳が交錯し土手っ腹に拳が突き刺さる。
「実に気分がいい! 楽しかろう、貴様も!」
苦痛が込み上げるがそれ以上にルベーノはこの状況は楽しんでいた。そして彼の推測どおり、少女も楽しんでいるかのようだった。彼女の表情は変わらないが何よりその拳が彼に彼女の思いを伝えてくれていた。
だから彼女は得意のコンビネーションを繰り出した。ボディへの一発でガードを下げさせ、空いた顎先を必殺の右ストレートで打ち抜く。
痛打を受け、なおもルベーノは戦おうとしていた。だが彼の意思とは裏腹に膝から力が抜け崩れる。
「その辺にしておきましょう」
そんな彼を狭霧は幻の手で掴みこちら側へ引き寄せた。
「次は……誰?」
その時、鈴太郎が進み出た。腹をくくり構えを取る。探るように拳を出せば急加速した少女の拳の雨が降り注ぐ。
だが鈴太郎も応戦する。連打に連打で応じる。何発受け止めて何発殴られたか、戦っている当人にもわからぬほどの高速の攻防。ひとしきり打ち合った後どう攻めてくるか。鈴太郎には分かっていた。
二人の動きはまるで鏡写しの様に同じだった。顎先へ向けて最短距離で右拳を伸ばす。先程ルベーノを倒した右ストレート、それを二人が放っていた。互いの拳が交錯する。
次に皆が見たのは、少女の拳が鈴太郎の頬にめり込んでいる姿だった。だが、鈴太郎の拳は少女に届いていなかった。以前と同じ光景。前との違いはメルの補助で鈴太郎が倒れなかったことと
「これ、覚えてますか」
追撃を放つ前に少女を龍堂の呼び出した蛇が拘束していたことだった。
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「ボクは、貴方と友達になりたくてここに来ました」
拘束を解いた龍堂は少女にそう話しかける。先ほどの光景が嘘の様に少女は落ち着いていた。
「友達……?」
「えーっと、大切な存在と言うか何と言うか……」
鈴太郎の言葉に少女は口を挟む。
「パーツ代高いって聞いたからよ、カネ貯めてたンだ……やっぱ同じ腕のがいいか?」
「ううん、大丈夫。でも大切ならどうして拳を止めたの……?」
「だってサファイアは命の恩人だからさ……あ、サファイアって言うのはその青い瞳を見てルビーみたいだと思って……」
鈴太郎はまだ慌てながらこれまでの経緯を話す。それでややあやふやながら少女は理解したようだった。
「というわけでこちらでははじめましてなんだけど……まずは、一緒に謝ろっか」
「私は謝る。知人が迷惑をかけた。突然な環境の変化で記憶が混乱していたようだ」
茜が促した先では、レインが道場の人達に事情を説明していた。しかし
「いえ、謝られるなんてとんでもない、むしろ色々教えてほしいぐらいです!」
それは道場の者達によって遮られた。
「イバラキ君の言う通り、その技量は卓越した物があるようだね。それだけの技術があれば向いている生き方もあるんだけど」
何となく察したメルはそう少女に勧める。その言葉に龍堂やルベーノも合わせる。
「そうですね。……あの、ハンターになってみませんか?」
「殴りあいながら世界を知る最適解はハンターだ。お前もハンターになればいい。世界にはまだ殴りあったことのない強い輩がいる……会いたいだろう、お前も」
龍堂は鈴太郎に対して少女が示した反応で、彼女が鈴太郎の事をどう思っているかを察した。記憶を無くして、でも漠然としたある思いがあって……それはまるで自分の様だった。だから
「戦うことが好きなら、それに向かっていけばきっと、楽しい事が待ってると思うんだ」
その言葉にサファイアは一つ頷いた。
「それじゃあこれはプレゼント。今日から君はサファイア君だ」
メルは彼女の首にペンダントを付ける。胸元で瞳と同じ透き通った蒼い輝きが煌めいた。
最後に閃は同族として彼女に一つアドバイスする。
「私も、目覚めてからそう時間が経っているわけではない。尤もらしく助言できる立場では無いが、私の経験から言わせてもらえば……まずは目標を立てるべきだ。目指す方向が決まれば、為すべきことも自ずと決まってくるだろう」
「それなら……また二人と戦いたい。もっといい戦いをしたい」
その言葉に満足そうに頷くルベーノ。一方鈴太郎はどう返せばいいか戸惑っていた。その時イバラキは彼女の両肩に手をやり、こう言った。
「友達や恩人と同じぐらい、好敵手ってのは大切なもんだぜ?」
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/23 12:56:56 |
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質問卓 大伴 鈴太郎(ka6016) 人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2017/07/27 19:31:04 |
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相談卓 大伴 鈴太郎(ka6016) 人間(リアルブルー)|22才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2017/07/28 16:51:39 |