ゲスト
(ka0000)
紅葉に黒鹿
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/11/08 12:00
- 完成日
- 2014/11/15 14:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
万節の時機を過ぎると、山々も赤く色づき始めるものだ。
脈々と連なる山肌が、朱に染まるのは雄大さすら思わせる。
「猪鹿蝶、なるものがありましてな」
いつの日だったか、この村を訪れた者がそんなことを行っていた。
初老の男性であったが、故郷の遊びにちなんだ言葉だという。
「札を合わせて、遊ぶのですが。その札の中に、紅葉に鹿という札があるのですよ」
こちらです、といいながら小さな紙片を取り出した。
裏面はくすんだ赤色であったが、表面は色鮮やかな絵が描かれていた。
言葉通り、絵柄は紅葉と鹿だった。
小さかった私は、親に叱られながらも食い入るように札を見ていた。
「欲しいか? んー、そうだなぁ」
悩むような仕草を見せながら、男の心は決まっているようだった。
懐から同じものを一枚取り出し、手渡してくれた。
「手製の品でしてね。とりたてて価値はございませんが」
温かみのある絵だと、素直な感想を述べた。
男は、はにかみながらありがとうと言う。明くる日には、村を立っていた。
●
あの出来事から数年がたった。
あのときの札が、花札というものだと知ったのは最近の事だ。
今も手元にある「紅葉に鹿」を大事にしていた。
「今日も山へ行くのか?」
村の出口で、村長に声をかけられる。
農家の仕事が終われば、山へ行くのが日課だった。
その目的は狩猟でも、山菜採りでもない。
「シンバも飽きないねぇ。毎日、そんな荷物持って」
「街でコンテストがあるらしいので、力入れてるんですよ」
村長の視線を笑い流して、村を出る。
背中には、画材道具一式がのしかかっていた。
この花札を得て以来、私の趣味は絵になっていた。
「さて、今日はどうか」
いつも決まった場所に腰掛ける。
光が一番きれいに入る場所だった。木漏れ日が紅葉を照らして、一面が赤く輝いて見える。
切り株に腰を掛け、道具を広げる。
お気に入りの筆をシャッと振ってみたとき、ソイツが現れた。
「……鹿」
体躯の半分以上はありそうな角を持つ、鹿だった。
じっと赤い目で虚空を見上げる鹿を、食い入るようにシンバは描く。
脚から顔まで真っ黒な鹿が、鮮やかな紅葉の中に陰影のように現れる。
角と蹄だけが白く浮いていた。
「帰ろう」
鹿が虚空から視線を落としたのと同時、シンバは慌てて画材を片付けようとした。
だが、それより早く甲高い鳴き声が響く。同時に薄っすらと影を纏うように見えた。
「あ」
直感で、危険だと察する。
声を漏らし、描き上げたカンバスだけを持って、シンバは駈け出した。
画材をそのままに、ひたすら走り、村に辿り着いたと同時に崩れ落ちた。
「どうした、シンバ!」
慌てて駆け寄る村長に、シンバは絵を見せて言う。
「こいつが、山に……」
「……これは」
描かれた鹿は、生で見るのと寸分構わぬ力強さを有していた。
現実に黒い鹿がいると、思わせるのに十分であった。
息を呑む村長の前で、シンバは緊張が切れたのか、気を失った。
黒い鹿の話は、村中に広まり、すぐさま捜索隊が出された。
確認された数は、四体。
群れのように、固まって移動しているという。
「すぐさま危険はないようですが、芽は摘んでおくにこしたことはないのです」
ハンターオフィスのスタッフは、そう告げる。
何より、この村からコンテストのある街へは山を越えなければならない。
速急に対処してほしいとの依頼であった。
万節の時機を過ぎると、山々も赤く色づき始めるものだ。
脈々と連なる山肌が、朱に染まるのは雄大さすら思わせる。
「猪鹿蝶、なるものがありましてな」
いつの日だったか、この村を訪れた者がそんなことを行っていた。
初老の男性であったが、故郷の遊びにちなんだ言葉だという。
「札を合わせて、遊ぶのですが。その札の中に、紅葉に鹿という札があるのですよ」
こちらです、といいながら小さな紙片を取り出した。
裏面はくすんだ赤色であったが、表面は色鮮やかな絵が描かれていた。
言葉通り、絵柄は紅葉と鹿だった。
小さかった私は、親に叱られながらも食い入るように札を見ていた。
「欲しいか? んー、そうだなぁ」
悩むような仕草を見せながら、男の心は決まっているようだった。
懐から同じものを一枚取り出し、手渡してくれた。
「手製の品でしてね。とりたてて価値はございませんが」
温かみのある絵だと、素直な感想を述べた。
男は、はにかみながらありがとうと言う。明くる日には、村を立っていた。
●
あの出来事から数年がたった。
あのときの札が、花札というものだと知ったのは最近の事だ。
今も手元にある「紅葉に鹿」を大事にしていた。
「今日も山へ行くのか?」
村の出口で、村長に声をかけられる。
農家の仕事が終われば、山へ行くのが日課だった。
その目的は狩猟でも、山菜採りでもない。
「シンバも飽きないねぇ。毎日、そんな荷物持って」
「街でコンテストがあるらしいので、力入れてるんですよ」
村長の視線を笑い流して、村を出る。
背中には、画材道具一式がのしかかっていた。
この花札を得て以来、私の趣味は絵になっていた。
「さて、今日はどうか」
いつも決まった場所に腰掛ける。
光が一番きれいに入る場所だった。木漏れ日が紅葉を照らして、一面が赤く輝いて見える。
切り株に腰を掛け、道具を広げる。
お気に入りの筆をシャッと振ってみたとき、ソイツが現れた。
「……鹿」
体躯の半分以上はありそうな角を持つ、鹿だった。
じっと赤い目で虚空を見上げる鹿を、食い入るようにシンバは描く。
脚から顔まで真っ黒な鹿が、鮮やかな紅葉の中に陰影のように現れる。
角と蹄だけが白く浮いていた。
「帰ろう」
鹿が虚空から視線を落としたのと同時、シンバは慌てて画材を片付けようとした。
だが、それより早く甲高い鳴き声が響く。同時に薄っすらと影を纏うように見えた。
「あ」
直感で、危険だと察する。
声を漏らし、描き上げたカンバスだけを持って、シンバは駈け出した。
画材をそのままに、ひたすら走り、村に辿り着いたと同時に崩れ落ちた。
「どうした、シンバ!」
慌てて駆け寄る村長に、シンバは絵を見せて言う。
「こいつが、山に……」
「……これは」
描かれた鹿は、生で見るのと寸分構わぬ力強さを有していた。
現実に黒い鹿がいると、思わせるのに十分であった。
息を呑む村長の前で、シンバは緊張が切れたのか、気を失った。
黒い鹿の話は、村中に広まり、すぐさま捜索隊が出された。
確認された数は、四体。
群れのように、固まって移動しているという。
「すぐさま危険はないようですが、芽は摘んでおくにこしたことはないのです」
ハンターオフィスのスタッフは、そう告げる。
何より、この村からコンテストのある街へは山を越えなければならない。
速急に対処してほしいとの依頼であった。
リプレイ本文
●
紅葉舞い散る山の中を、複数のハンターが行く。
銀杏の葉を思わせる着物を纏い、先を行くのは上泉 澪(ka0518)。
ぬかるみすら感じさせる、足元に注意しつつ歩みを早める。
「よく逃げてこられたものですね……不幸中の幸いといったところですか」
足場の悪さを感じつつ、つぶやきを見せる。
ふと、振り返れば山狩りを提案したアルメイダ(ka2440)が続く。
側には、白主・アイノネ(ka2628)が警戒するように、鉄扇を片手についていた。
「そう言えば、あちらの世界では鹿肉をもみじ肉と言うらしい」
ライフルを片手に、アルメイダはそんなことを言う。
追いついた慈姑 ぽえむ(ka3243)とアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)が、それぞれに反応した。
「紅葉に鹿か……そういえばここも紅葉が綺麗ね」
「確かによい紅葉ですね。こういうときでなければ散策のし甲斐もあるのですが」
肉の名称の話は、紅葉と鹿という取り合わせの話に取って代わる。
ぽえむは、鹿は一匹じゃないみたいだけどと情報を思い出す。
「なあに、相手が連携してくるのならこちらは一匹ずつ確実に潰していけば連携も出来まい」
アルメイダは、気丈に言ってのけると、改めて辺りを見渡す。
「さて。鹿狩するのにちょうどいい場所があればいいんだが」
「そうね。任務において重要なのはただ標的を倒すことじゃないわ。結果を出すには準備も大切」
同じく射撃組の關 湊文(ka2354)も射線が確保できる場所を探る。
なるべく開けた場所がよいのだ。
やや離れ、不知火 陽炎(ka0460)が後ろを警戒しながら後を追う。
被害はないので、念のため駆除するのだといっても、仕事は仕事だ。
その意識で、足元のゆるみも気をつけていく。
目の前ではユキヤ・S・ディールス(ka0382)が、秋空に思いを馳せたりしていた。
ユキヤも、意識をスッと目の前のコトに戻していく。
シンバが鹿の群れと出会った場所は、通り過ぎていた。
緊張が走る中、先行していた澪が踵を返してきた。
「いました」
鹿の群れは、木々に紛れて佇んでいた。
やけに端然とした態度が不気味なほどだ。
その手前は、やや拓けた空間になっている。木々が不自然に折れているようにみえるのは、黒鹿が何かしたのだろうか。
各々、自分の位置取りを確認し、合図を出した。
澪が手裏剣を片手に、林を抜ける。
「参ります」
射程ギリギリの位置から、手裏剣を放てば風切音を纏って木へ突き刺さる。
これに、黒鹿は即座に反応した。
●
澪が手裏剣を投げ、おびき出す。
黒鹿の反応は、思ったよりも芳しかった。
木々の隙間から顔を覗かしていた黒鹿は、その全身を晒しながら広場へと躍り出る。
「素直ですね」
油断なくおびき寄せつつ、感想を漏らす。
同時に小動物の霊の力を借りる。目の前の鹿は黒いオーラを収縮するように、うねらせていた。
合図を受けて射程に先頭の鹿を収めるべく、アイノネたちが続く。
視線の先では、黒鹿たちが黒いオーラを塊のように紡ぎ、放っていた。
「僕に続いてください」
アイノネが鉄扇を広げ、後衛を守るようにして進む。
黒い魔弾を避けきった、澪がそれに気づいて射線をひらいた。
「それじゃあ、鹿狩りだ」
アルメイダが先手を打つ。
短銃身のライフルを手に一歩近づき、引き金を引く。
先頭を駆ける鹿の身体中心部分を弾丸が貫いた。
「思ったより速いんだね」
撃たれながらも、鹿は止まることなく、早くも澪に肉薄していた。
急接近した鹿の角を、避けきれないと悟り、斬馬刀で受け止める。
「下がって」
射程以上に、近づきすぎた面々にアイノネが声をかける。
自身は鉄扇を開き、後衛に魔弾や黒鹿自身が追いつかないよう、守りを固める。
「クンネ・ユク。あなたたちをポクナ・モシルへおおくりします」
黒鹿へ呼びかけながら、後ろの動きを気にする。
展開しながら、頭部を狙ってユキヤがホーリーライトを放つ。
「素早いですね」という間に、するりと黒鹿は避けてみせる。
「被害が出る前に早く倒さないと、ね」
意気込むぽえむの光弾すら、グッと跳ねて避けたが、三度はない。
右舷から回りこんでいたアデリシアが、跳んだところを打つ。
「さて、どうだ」
地面に降り立った鹿は、なおも健在。
同じく右側より狙う陽炎の弾丸、さらに後方から再度放たれたアルメイダの射撃をもかわしてみせた。
逆に、もてあそぶかのように脚力を溜めて、澪とアイノネを突き飛ばさんと突撃する。
澪が避けてみせる。
アイノネは巨躯な角の一部で突かれていた。鉄扇で叩きこむように、受け流したのだ。
「え」
この突進の先にいたのが、ぽえむだった。
突如として目の前まで接近した黒鹿に、驚きの声を漏らしつ、盾を構える。
(うぅ、やっぱり近くで見ると迫力あるわね)
プロテクションを自身にかけながら、ぽえむは正面からレイピアを振るう。
嘶く鹿の一撃を耐えしのぐ間に、澪とアイノネが囲うように追い立ててきた。
「負けるわけにも、この先に行かせるわけにもいかないんだから……っと」
包囲網を破ろうと、踵を返した鹿の背に、切込みを入れる。
側面からは澪が、身の丈はある刀に祖霊の力を込めて振り下ろす。
「まだ、動けますか」
だが、刃は空を切る。
アルメイダの弾丸も、宙を行くが、逃げ先を狭めるのには十分だった。
「ふっ」
一息に踏み込んだアイノネが、一閃。
「あなた達におくりのリムセとウポポをおくります」
黒鹿を下部から斜め上へと斬り伏せた。ドッと音を立てて、まずは一匹、地に帰る。
鎮魂のための舞を踊るように、アイノネは刀を振るう。
ウサギの着ぐるみを着込んでいたが、その目は真剣だ。
視線はすぐさま、次なる鹿へと向けられる。
●
最初の一体を屠る少し前、湊文は別方向を睨んでいた。
回りこむように二匹の鹿が、向かって来る。
「こっちは、こっちでやるだけよね」
仕留めるつもりで、先を行く一体を確実に狙う。
マテリアルで鋭敏化した、視覚と感覚が黒鹿をがっちりと捉える。
引き金を引けば、弾丸が黒鹿に吸い込まれていった。
「加勢します」と視線を送り、陽炎も湊文側へつく。
こちらは後方から迫る鹿を狙う。
抜き放ったアサルトライフルは、あいにく地面を抉っていた。
さらには影のような魔弾が、陽炎を襲う。防御障壁を展開し、被害を減らす。
落ち葉に足を取られないよう踏ん張りながら、やや身体を逸らした。
「どうぞ」
「お返し、ですね」
黒い魔弾を放つ瞬間、鹿の身体は一瞬硬直する。
ユキヤのホーリーライトが、その隙を突いて黒鹿を襲う。
片角が直撃を受け、半分にへし折られていた。
同時に背後で、何かが倒れる音……一瞬視線をやれば、澪たちが一体目を倒していた。
●
澪たちの側へは、速力を上げて残る黒鹿が力任せに突撃をしていた。
まずはアイノネ、攻撃を捌いて、澪へと矛先を変えながら縦横無尽に暴れまわる。
「手数で追い詰めなければ」
「うん」
斬馬刀が振り下ろされれば、アイノネの白露が横薙ぎに放たれる。
野生の勘か跳躍力がなせる技か、黒鹿は何とか連撃をかわしていた。
「こっちのも避けるね」
相手の連携は封じ、こちらは連携して攻撃する。
アルメイダの思惑通り、ことは進んでいた。あとは、当てるだけ。
「足場も不安定なのに」
やはり獣だからか、と思いながら狙いをつけるべく、接近していく。
その気配を感じたのか、機敏に黒鹿は距離を取ろうと動いた。
「逃がしませんからね」
回りこむように、ぽえむがすかさず間を埋める。
このとき、黒鹿の脳内で爆発的な発想力を産んだのかどうかはわからないが、黒鹿は敢えて突進攻撃をしかけた。
ぐわんと大回りするような形で、アイノネとぽえむへ迫っていくのだ!
●
「本当、角が厄介そうだな」
アデリシアはふと息を漏らし、チェーンウィップを構えた。
湊文に手負いにされながらも、こちらへ駆け寄る黒鹿へ、鞭を放つ。
それで止まるようなら苦労はない。
「だから、こうするのがいいだろう」
向かって来るなら、迎え撃つまで。
再度放った鞭は鹿の頭部、角へ絡めつかせた。
しっかりと絡みついた鞭を、グッと引き寄せるようにして、黒鹿を引き倒さんとする。
「力比べ、どうだ」
一発目の引き合いは、間もなく黒鹿に分があがる。
ズルっと落ち葉で滑りそうになる足を、地面に突き刺すように踏み込む。
体勢維持が精一杯というところだった。
鹿の方も、振りほどくわけでもなく、アルメイダを引きずらんと首を振るう。
しかし、今度はアデリシアが踏ん張りきり、攻撃の隙を与えない。
けれど、崩されるとすればアデリシアの方だということは、理解できた。
ウィップを振り解き、足元への牽制に切り替える。
「そのまま、留めてくれると楽でいいのよ」
力比べの様子を視覚を向上させ、湊文は眺めていた。
彼女が留めるまで、二度、弾丸は外れていた。
このチャンスは逃がすまいと、マテリアルを全身に注ぎ込み、感覚を引き上げる。
「まずは、もう一発」
銃声が響き、黒鹿には銃痕が残るのだった。
●
物静か、というのは語弊がある。
陽炎がアサルトライフルを動きを押し留めるような形で撃ち、ユキヤがホーリーライトを隙間なく撃ち込む。
互いの役割を、確かにこなす。ただ、それだけなのだ。
「そろそろ、でしょうか」
黒い魔弾を高速に動かした盾で、着実に防ぎ、予断なく弾丸を返す。
ユキヤが攻撃を先に行う隙をついては、弾丸を補充し、次に備える。
一方で、ユキヤは陽炎より少し後ろから、黒鹿をじっと観察し、魔弾に合わせて攻撃を行えていた。
その効果は、じわじわと現れてくる。業を煮やしたのか、最後の力か、黒鹿は陽炎へ突進を仕掛ける。
「迎え討ちましょう」
陽炎は残弾数のあるデリンジャーへ切り替えると、至近距離から雷撃を放った。
焼き切るような一撃で、黒鹿の動きを封じていく。
「……終わりです」
静かに告げたのはユキヤだ。
最後の光弾が、黒鹿の角を粉砕した。黒いオーラが消え失せ、地面に溶けるように倒れ込むのだった。
●
その様子を遠目で見た、湊文は前へと出た。
黒鹿の下部から顔をのぞかせていた、岩へと銃口を合わせる。
「アデリシアさん、そのまま、拘束してて」
アイコンタクトで了承を送り、アデリシアは鞭を振るう。
足元に絡ませ、その場に釘付けにする。
「終わりね」
弾丸は岩へと当たると、跳ね返り、黒鹿の下腹部を襲う。
予期しない場所からの攻撃に、混乱する黒鹿へ弾丸を重ねていく。
最後の一撃は、まっすぐに、頭部を貫いたのだった。
●
初撃は、ぽえむだった。
つつがなくプロテクションを重ね、黒鹿への攻撃に耐えて、カウンター気味の刺突。
「大人しく、してよ」
レイピアに足を突かれ、更に藻掻くように暴れる黒鹿に呆れるように告げる。
後ろ足を溜めれば、突撃が来る。
互いの手の内を明かしきるほどに、攻撃をし合ったためか、紅葉が地面から舞う中で、舞い踊るようにすら見える。
それでも、黒鹿は間があれば逃げる隙を伺っていた。
「逃すか!」
ぽえむやアイノネの間をすり抜けようとする黒鹿の前を、弾丸が飛ぶ。
少し離れたところからアルメイダが、狙っているのだ。
もはや、結界のような陣形に逃げ場はない。
「――っ」
一息溜めて放たれる、祖霊の力のこもった斬馬刀。
黒鹿の角を一閃し、半分に切り落とす。
「ポクナ・モシルへ、まよわぬよう」
鉄扇を閉じ、白露の刃がひらめく。
アイノネの一撃は、深々と刺さり、とどめとしては申し分がなかった。
引き抜けば、黒鹿は眠るように地に伏せるのであった。
●
「コンテストに出す絵が、今回の鹿なのですね」
ユキヤは納得したように頷いてみせた。
ハンターは山中で休憩をはさみながら、シンバを街へ護衛していた。
その途中、ユキヤがコンテストの絵について尋ねたのである。
黒の鹿、紅葉、そして秋の空、とても綺麗だと感じた。
「秋の空も、綺麗で、でも、何時もより少し遠く感じて」
ぽつりぽつりと絵から、空へ視線を移しユキヤは言う
「寂しさすら感じますよね」
シンバは、ユキヤの微笑みに頷き返すのだった。
「紅葉に鹿の絵……。遊び方は知りませんけど、花札を連想しますよね」
そういう陽炎にシンバは、紅葉の絵を描くきっかけを語った。
ソレこそまさしく、花札だと知り、陽炎はどこか親近感を得る。
「散策したくなるような紅葉というのは、どこでもあるのですね」
アデリシアが告げると、湊文も同意した。
「私はあまり芸術とかそういうのには縁がなかったけど。ここの景色というのも悪くないわね」
街につこうという時、ぽえむが思い出したように袋を手渡した。
「大事なもの……でしょ? ちゃんと回収しておいたわ」
「これは……ありがとうございます」
シンバが諦めかけていた絵の道具を、ぽえむが中心となり回収していたのだった。
「シンバさんが早く見つけてくれたおかげで、被害がなくてよかった。ありがとう」
「いえ、私は絵を書こうとしていただけですし」
謙遜するシンバに、そういうことにしておきましょとぽえむはいう。
「……コンテスト、頑張ってね……?」
もちろんです、と答えてシンバは街の中へ消えていった。
コンテストに盛り上がりを見せる街中で、澪は思う。
「私も何か絵でも描いてみますか」
画材も豊富に出回っているらしい。
夕焼けなきれいな場所でも探して、澪もまた街中へ消える。
一方でアルメイダのように、鑑賞して回るものもいる。
芸術の秋が、空気のように街中に流れているのだ。
最後まで護衛としてついていく、アイノネも、そんな芸術の匂いにオカリナを吹いてみたり、歌を歌っていた。
その歌に着想を得た絵が後々、有名になったらしいが、それはまた、別のお話。
紅葉舞い散る山の中を、複数のハンターが行く。
銀杏の葉を思わせる着物を纏い、先を行くのは上泉 澪(ka0518)。
ぬかるみすら感じさせる、足元に注意しつつ歩みを早める。
「よく逃げてこられたものですね……不幸中の幸いといったところですか」
足場の悪さを感じつつ、つぶやきを見せる。
ふと、振り返れば山狩りを提案したアルメイダ(ka2440)が続く。
側には、白主・アイノネ(ka2628)が警戒するように、鉄扇を片手についていた。
「そう言えば、あちらの世界では鹿肉をもみじ肉と言うらしい」
ライフルを片手に、アルメイダはそんなことを言う。
追いついた慈姑 ぽえむ(ka3243)とアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)が、それぞれに反応した。
「紅葉に鹿か……そういえばここも紅葉が綺麗ね」
「確かによい紅葉ですね。こういうときでなければ散策のし甲斐もあるのですが」
肉の名称の話は、紅葉と鹿という取り合わせの話に取って代わる。
ぽえむは、鹿は一匹じゃないみたいだけどと情報を思い出す。
「なあに、相手が連携してくるのならこちらは一匹ずつ確実に潰していけば連携も出来まい」
アルメイダは、気丈に言ってのけると、改めて辺りを見渡す。
「さて。鹿狩するのにちょうどいい場所があればいいんだが」
「そうね。任務において重要なのはただ標的を倒すことじゃないわ。結果を出すには準備も大切」
同じく射撃組の關 湊文(ka2354)も射線が確保できる場所を探る。
なるべく開けた場所がよいのだ。
やや離れ、不知火 陽炎(ka0460)が後ろを警戒しながら後を追う。
被害はないので、念のため駆除するのだといっても、仕事は仕事だ。
その意識で、足元のゆるみも気をつけていく。
目の前ではユキヤ・S・ディールス(ka0382)が、秋空に思いを馳せたりしていた。
ユキヤも、意識をスッと目の前のコトに戻していく。
シンバが鹿の群れと出会った場所は、通り過ぎていた。
緊張が走る中、先行していた澪が踵を返してきた。
「いました」
鹿の群れは、木々に紛れて佇んでいた。
やけに端然とした態度が不気味なほどだ。
その手前は、やや拓けた空間になっている。木々が不自然に折れているようにみえるのは、黒鹿が何かしたのだろうか。
各々、自分の位置取りを確認し、合図を出した。
澪が手裏剣を片手に、林を抜ける。
「参ります」
射程ギリギリの位置から、手裏剣を放てば風切音を纏って木へ突き刺さる。
これに、黒鹿は即座に反応した。
●
澪が手裏剣を投げ、おびき出す。
黒鹿の反応は、思ったよりも芳しかった。
木々の隙間から顔を覗かしていた黒鹿は、その全身を晒しながら広場へと躍り出る。
「素直ですね」
油断なくおびき寄せつつ、感想を漏らす。
同時に小動物の霊の力を借りる。目の前の鹿は黒いオーラを収縮するように、うねらせていた。
合図を受けて射程に先頭の鹿を収めるべく、アイノネたちが続く。
視線の先では、黒鹿たちが黒いオーラを塊のように紡ぎ、放っていた。
「僕に続いてください」
アイノネが鉄扇を広げ、後衛を守るようにして進む。
黒い魔弾を避けきった、澪がそれに気づいて射線をひらいた。
「それじゃあ、鹿狩りだ」
アルメイダが先手を打つ。
短銃身のライフルを手に一歩近づき、引き金を引く。
先頭を駆ける鹿の身体中心部分を弾丸が貫いた。
「思ったより速いんだね」
撃たれながらも、鹿は止まることなく、早くも澪に肉薄していた。
急接近した鹿の角を、避けきれないと悟り、斬馬刀で受け止める。
「下がって」
射程以上に、近づきすぎた面々にアイノネが声をかける。
自身は鉄扇を開き、後衛に魔弾や黒鹿自身が追いつかないよう、守りを固める。
「クンネ・ユク。あなたたちをポクナ・モシルへおおくりします」
黒鹿へ呼びかけながら、後ろの動きを気にする。
展開しながら、頭部を狙ってユキヤがホーリーライトを放つ。
「素早いですね」という間に、するりと黒鹿は避けてみせる。
「被害が出る前に早く倒さないと、ね」
意気込むぽえむの光弾すら、グッと跳ねて避けたが、三度はない。
右舷から回りこんでいたアデリシアが、跳んだところを打つ。
「さて、どうだ」
地面に降り立った鹿は、なおも健在。
同じく右側より狙う陽炎の弾丸、さらに後方から再度放たれたアルメイダの射撃をもかわしてみせた。
逆に、もてあそぶかのように脚力を溜めて、澪とアイノネを突き飛ばさんと突撃する。
澪が避けてみせる。
アイノネは巨躯な角の一部で突かれていた。鉄扇で叩きこむように、受け流したのだ。
「え」
この突進の先にいたのが、ぽえむだった。
突如として目の前まで接近した黒鹿に、驚きの声を漏らしつ、盾を構える。
(うぅ、やっぱり近くで見ると迫力あるわね)
プロテクションを自身にかけながら、ぽえむは正面からレイピアを振るう。
嘶く鹿の一撃を耐えしのぐ間に、澪とアイノネが囲うように追い立ててきた。
「負けるわけにも、この先に行かせるわけにもいかないんだから……っと」
包囲網を破ろうと、踵を返した鹿の背に、切込みを入れる。
側面からは澪が、身の丈はある刀に祖霊の力を込めて振り下ろす。
「まだ、動けますか」
だが、刃は空を切る。
アルメイダの弾丸も、宙を行くが、逃げ先を狭めるのには十分だった。
「ふっ」
一息に踏み込んだアイノネが、一閃。
「あなた達におくりのリムセとウポポをおくります」
黒鹿を下部から斜め上へと斬り伏せた。ドッと音を立てて、まずは一匹、地に帰る。
鎮魂のための舞を踊るように、アイノネは刀を振るう。
ウサギの着ぐるみを着込んでいたが、その目は真剣だ。
視線はすぐさま、次なる鹿へと向けられる。
●
最初の一体を屠る少し前、湊文は別方向を睨んでいた。
回りこむように二匹の鹿が、向かって来る。
「こっちは、こっちでやるだけよね」
仕留めるつもりで、先を行く一体を確実に狙う。
マテリアルで鋭敏化した、視覚と感覚が黒鹿をがっちりと捉える。
引き金を引けば、弾丸が黒鹿に吸い込まれていった。
「加勢します」と視線を送り、陽炎も湊文側へつく。
こちらは後方から迫る鹿を狙う。
抜き放ったアサルトライフルは、あいにく地面を抉っていた。
さらには影のような魔弾が、陽炎を襲う。防御障壁を展開し、被害を減らす。
落ち葉に足を取られないよう踏ん張りながら、やや身体を逸らした。
「どうぞ」
「お返し、ですね」
黒い魔弾を放つ瞬間、鹿の身体は一瞬硬直する。
ユキヤのホーリーライトが、その隙を突いて黒鹿を襲う。
片角が直撃を受け、半分にへし折られていた。
同時に背後で、何かが倒れる音……一瞬視線をやれば、澪たちが一体目を倒していた。
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澪たちの側へは、速力を上げて残る黒鹿が力任せに突撃をしていた。
まずはアイノネ、攻撃を捌いて、澪へと矛先を変えながら縦横無尽に暴れまわる。
「手数で追い詰めなければ」
「うん」
斬馬刀が振り下ろされれば、アイノネの白露が横薙ぎに放たれる。
野生の勘か跳躍力がなせる技か、黒鹿は何とか連撃をかわしていた。
「こっちのも避けるね」
相手の連携は封じ、こちらは連携して攻撃する。
アルメイダの思惑通り、ことは進んでいた。あとは、当てるだけ。
「足場も不安定なのに」
やはり獣だからか、と思いながら狙いをつけるべく、接近していく。
その気配を感じたのか、機敏に黒鹿は距離を取ろうと動いた。
「逃がしませんからね」
回りこむように、ぽえむがすかさず間を埋める。
このとき、黒鹿の脳内で爆発的な発想力を産んだのかどうかはわからないが、黒鹿は敢えて突進攻撃をしかけた。
ぐわんと大回りするような形で、アイノネとぽえむへ迫っていくのだ!
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「本当、角が厄介そうだな」
アデリシアはふと息を漏らし、チェーンウィップを構えた。
湊文に手負いにされながらも、こちらへ駆け寄る黒鹿へ、鞭を放つ。
それで止まるようなら苦労はない。
「だから、こうするのがいいだろう」
向かって来るなら、迎え撃つまで。
再度放った鞭は鹿の頭部、角へ絡めつかせた。
しっかりと絡みついた鞭を、グッと引き寄せるようにして、黒鹿を引き倒さんとする。
「力比べ、どうだ」
一発目の引き合いは、間もなく黒鹿に分があがる。
ズルっと落ち葉で滑りそうになる足を、地面に突き刺すように踏み込む。
体勢維持が精一杯というところだった。
鹿の方も、振りほどくわけでもなく、アルメイダを引きずらんと首を振るう。
しかし、今度はアデリシアが踏ん張りきり、攻撃の隙を与えない。
けれど、崩されるとすればアデリシアの方だということは、理解できた。
ウィップを振り解き、足元への牽制に切り替える。
「そのまま、留めてくれると楽でいいのよ」
力比べの様子を視覚を向上させ、湊文は眺めていた。
彼女が留めるまで、二度、弾丸は外れていた。
このチャンスは逃がすまいと、マテリアルを全身に注ぎ込み、感覚を引き上げる。
「まずは、もう一発」
銃声が響き、黒鹿には銃痕が残るのだった。
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物静か、というのは語弊がある。
陽炎がアサルトライフルを動きを押し留めるような形で撃ち、ユキヤがホーリーライトを隙間なく撃ち込む。
互いの役割を、確かにこなす。ただ、それだけなのだ。
「そろそろ、でしょうか」
黒い魔弾を高速に動かした盾で、着実に防ぎ、予断なく弾丸を返す。
ユキヤが攻撃を先に行う隙をついては、弾丸を補充し、次に備える。
一方で、ユキヤは陽炎より少し後ろから、黒鹿をじっと観察し、魔弾に合わせて攻撃を行えていた。
その効果は、じわじわと現れてくる。業を煮やしたのか、最後の力か、黒鹿は陽炎へ突進を仕掛ける。
「迎え討ちましょう」
陽炎は残弾数のあるデリンジャーへ切り替えると、至近距離から雷撃を放った。
焼き切るような一撃で、黒鹿の動きを封じていく。
「……終わりです」
静かに告げたのはユキヤだ。
最後の光弾が、黒鹿の角を粉砕した。黒いオーラが消え失せ、地面に溶けるように倒れ込むのだった。
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その様子を遠目で見た、湊文は前へと出た。
黒鹿の下部から顔をのぞかせていた、岩へと銃口を合わせる。
「アデリシアさん、そのまま、拘束してて」
アイコンタクトで了承を送り、アデリシアは鞭を振るう。
足元に絡ませ、その場に釘付けにする。
「終わりね」
弾丸は岩へと当たると、跳ね返り、黒鹿の下腹部を襲う。
予期しない場所からの攻撃に、混乱する黒鹿へ弾丸を重ねていく。
最後の一撃は、まっすぐに、頭部を貫いたのだった。
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初撃は、ぽえむだった。
つつがなくプロテクションを重ね、黒鹿への攻撃に耐えて、カウンター気味の刺突。
「大人しく、してよ」
レイピアに足を突かれ、更に藻掻くように暴れる黒鹿に呆れるように告げる。
後ろ足を溜めれば、突撃が来る。
互いの手の内を明かしきるほどに、攻撃をし合ったためか、紅葉が地面から舞う中で、舞い踊るようにすら見える。
それでも、黒鹿は間があれば逃げる隙を伺っていた。
「逃すか!」
ぽえむやアイノネの間をすり抜けようとする黒鹿の前を、弾丸が飛ぶ。
少し離れたところからアルメイダが、狙っているのだ。
もはや、結界のような陣形に逃げ場はない。
「――っ」
一息溜めて放たれる、祖霊の力のこもった斬馬刀。
黒鹿の角を一閃し、半分に切り落とす。
「ポクナ・モシルへ、まよわぬよう」
鉄扇を閉じ、白露の刃がひらめく。
アイノネの一撃は、深々と刺さり、とどめとしては申し分がなかった。
引き抜けば、黒鹿は眠るように地に伏せるのであった。
●
「コンテストに出す絵が、今回の鹿なのですね」
ユキヤは納得したように頷いてみせた。
ハンターは山中で休憩をはさみながら、シンバを街へ護衛していた。
その途中、ユキヤがコンテストの絵について尋ねたのである。
黒の鹿、紅葉、そして秋の空、とても綺麗だと感じた。
「秋の空も、綺麗で、でも、何時もより少し遠く感じて」
ぽつりぽつりと絵から、空へ視線を移しユキヤは言う
「寂しさすら感じますよね」
シンバは、ユキヤの微笑みに頷き返すのだった。
「紅葉に鹿の絵……。遊び方は知りませんけど、花札を連想しますよね」
そういう陽炎にシンバは、紅葉の絵を描くきっかけを語った。
ソレこそまさしく、花札だと知り、陽炎はどこか親近感を得る。
「散策したくなるような紅葉というのは、どこでもあるのですね」
アデリシアが告げると、湊文も同意した。
「私はあまり芸術とかそういうのには縁がなかったけど。ここの景色というのも悪くないわね」
街につこうという時、ぽえむが思い出したように袋を手渡した。
「大事なもの……でしょ? ちゃんと回収しておいたわ」
「これは……ありがとうございます」
シンバが諦めかけていた絵の道具を、ぽえむが中心となり回収していたのだった。
「シンバさんが早く見つけてくれたおかげで、被害がなくてよかった。ありがとう」
「いえ、私は絵を書こうとしていただけですし」
謙遜するシンバに、そういうことにしておきましょとぽえむはいう。
「……コンテスト、頑張ってね……?」
もちろんです、と答えてシンバは街の中へ消えていった。
コンテストに盛り上がりを見せる街中で、澪は思う。
「私も何か絵でも描いてみますか」
画材も豊富に出回っているらしい。
夕焼けなきれいな場所でも探して、澪もまた街中へ消える。
一方でアルメイダのように、鑑賞して回るものもいる。
芸術の秋が、空気のように街中に流れているのだ。
最後まで護衛としてついていく、アイノネも、そんな芸術の匂いにオカリナを吹いてみたり、歌を歌っていた。
その歌に着想を得た絵が後々、有名になったらしいが、それはまた、別のお話。
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作戦相談 上泉 澪(ka0518) 人間(クリムゾンウェスト)|19才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/11/08 09:30:08 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/11/04 21:52:59 |