• 郷祭1014

【郷祭】決戦! 炎の料理人

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2014/11/07 19:00
完成日
2014/11/19 03:02

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「り、料理対決……」
 ゴクリと生唾を呑み込みながら新米受付嬢は目を見開いた。
「はい、此度の村長祭に合わせて村で料理対決を行おうと企画しておりまして」
 そう相談を持ち掛けているのはジェオルジの農村の一つ「フレッド」、その村長祭の運営委員の男性であった。
「村長祭はジェオルジのお祭りではありますが、今回は様々な方面から多くの人が訪れると聞きます。せっかくのこの機会に、我らがフレッドの素晴らしい作物の事を皆さんに知っていただきたいなと思いまして」
「なるほど、それで料理対決ですか。で、その後相談でオフィスにいらした理由は?」
「それが恐縮なのですが、多くの方々を村にお呼びするにはやっぱり話題性と言うものが必要でして……一人はポルトワールの料理店を営む料理人の参加を取り付ける事には成功いたしました」
 そう言われ、ルミは手元の企画書に目を通した。
 企画書には「炎の料理人・アルフォンソ現る!」の文字と共に筋肉質の色男のスケッチが書き込まれていた。
「で、その対抗となる話題性にですね、ぜひハンターの皆さんに参加していただけないか……と。もちろん十分な報酬はご用意しております」
 もう一度目を通した企画書の炎の料理人の隣には「ラッツィオ島の英雄、ハンター達!(仮)」と走り書きがされていた。
「分かりました、依頼の案件としての体裁は整ってますし私たちの方で斡旋してみます。料理人ハンターさん達も居るので、興味のある方々はいらっしゃると思いますよ」
 そう言ってほほ笑むと、フレッド村の男性は「よろしくお願いします」と一礼をしてオフィスを後にしていった。

 相談カウンターに残ったルミはもう一度ペラペラと企画書に目を通すとガタリと椅子から立ち上がり、上司の元へと駆け寄っていく。そうして上目づかいでもじもじと、こう言うのだった。
「あのう……ルミちゃんお休みの申請をしたいんですけどぉ」
 後に振り返った同僚の証言によると、その時の彼女の瞳は飢えた狼のそれに似ていたという。


 そして、時は祭当日へ。
 フレッド村の中央広場に村中の、いや観光客も含めればもっと大勢の人々が集まっていた。

 彼らの視線の先には手作りの特設ステージ。2つの大きな机が「ハ」の字型に向かい合っており、それぞれの机の傍に料理人のような白衣を着た者達が腕を組んで立っていた。
「シニョーレシニョーリ、お待たせいたしました! この村きっての大イベント『リストランテ フレッド』の開幕になります!」
 ステージの中央でビシリとスーツで決めた男が声を張り上げる。同時に集まった観客に歓声の渦が沸き起こった。
「とてもビッグな今回の村長祭、皆様いかがお過ごしでしょうか? その熱気のピークが今、この村にもやって参ります。本日この村で採れたばかりの新鮮な作物たち。どれも村の人々が汗を流して作り、収穫した立派な作物ばかりです。その作物を使い、どれだけ人々の舌を、心を、そしてお腹を満足させることができるのか! 今ここに、二組のチャレンジャーが集いました!!」
 そう言いながらスーツの司会は両手を広げてそれぞれの料理人を指し示す。
「こちら、グループで参戦! この夏、ラッツィオ島付近で起こった一連の歪虚事件を見事解決して記憶に新しい――ハンターの皆さんです!」
 湧きあがる歓声と拍手。どこかこそばゆい気持ちを覚えながらもハンター達は一言ずつコメントを述べてゆく。一通りの挨拶が終わった後、スーツの司会は対岸に位置するテーブルを指し示す。
「対するは美食の街『ポルトワール』よりやって来た! トラットリア『エスプロジオーネ』を支える料理長! 炎の料理人・アルフォンソ!!」
 紹介と共にに筋肉質の色男がニコリとほほ笑んだ。同時に、再び沸き起こる歓声と拍手。
「この度はお招きいただきありがとうございます。産地の作物を文字通り採れたて新鮮なまま扱えると言う、料理人にとってこれ以上嬉しい事はありません。私の手でこの作物たち使って必ずや、皆様を幸せの魔法にかけてみせましょう」
 そう挨拶しながら再びニコリとほほ笑むアルフォンソ。白い歯がキラリと太陽に照らされて光輝いた。
「さぁさぁ、今回はこのライブ会場にて2組の料理人が熱い戦いを繰り広げてくれることでしょう! ルールは簡単。こちらの用意した3つの作物を使用し、それぞれで一品ずつ。計3品の料理を準備して頂き、一食分のメニューを構成して頂きます! それをこちらに居る審査員の方々が一人一票で投票! 勝敗を付けて頂きます!」
 同時に、中央の長テーブルに座った5人の男達が礼をする。
 右からフレッド村長。(自称)料理評論家のピエール。そして大柄な男、痩せた男、おじいちゃん。彼らはそれぞれ3つの作物を作った農家達だ。
「制限時間は1時間! その間に手際よく3つの料理を作り上げ、審査員の前にお運びください! それでは……スタートです!」
 そうして、料理対決の火ぶたは切って落とされたのであった。

リプレイ本文


「リゼリオでお菓子屋さんやってるハンターのジュードでーす! 皆さん、応援よろしくお願いしまーす!」
 観客席に向かって笑顔を振りまくジュード・エアハート(ka0410)の甘い名乗りと黄色い声援と共に対決の火ぶたは切って落とされた。プロの料理人と何かと話題の尽きないハンター達との料理対決。その一挙一動を見逃すまいと観客達の気合も十分である。
「本物のアルフォンソさんに会えるなんて……とっても嬉しいです!」
 その一方で調理服姿のアリソン・メープルウッド(ka2772)は対岸の料理人、筋肉質の伊達男・アルフォンソがジュードと同じように観客に手を振って応えていた。
 そんなアルフォンソを尻目にBridget・B(ka3117)は目の前に広げられた食材を見渡しながら静かに口元に手を当てる。
「さて、何から始めると致しましょうか」
 この料理対決の場に於いてメイド服を着た彼女の姿は非常に異色であった。もっとも本来の意味で言えば全く問題は無いのであるが、彼女がクリムゾンウエストを守っているハンターだからという事情を考えると、やはり目を引いてしまう。
「ああ言うお手伝いさんなら……ワシ、欲しいのう」
 ステージ上のフレッド村長がそう呟いたのを聞いていたのは幸い同じ審査員の4人だけであった事はせめてもの救いであっただろう。
「こういうのは勢いが大切。時間も有限、完成しない事こそが真の敗北じゃ」
 グラサンを掛けた強面のドワーフ・オウル(ka2420)はそう言うと食材のいくつかをむんずと掴むと一足先に調理台へと足を運ぶ。
「一先ずわしが3品作っておこう。それで万が一にも料理が揃わない事は防げるじゃろう」
 そう言いながらトレードマークのサングラスを外す。瞳に職人のそれに似た眼差しを灯しながら包丁を握るその姿は若干の威圧感を感じるものの、それは圧倒されるとでも言うべき確かな存在感を放っていた。
「オウルさんの言う通りだね。考えるよりもどんどん動いていかないと」
 金色の髪を時折吹くそよ風になびかせ、その手を空高くかざしながら、レベッカ・アマデーオ(ka1963)はわき目も振らずに天を仰いでそう口にした。
「そしてもちろん、やるからには勝利を目指さないとね♪」
 レベッカの喚起に答えるように天竜寺 詩(ka0396)が「頑張ろう、おーっ♪」と手を振りかざす。その掛け声に合わせて皆で拳を振り上げると、どこか抱いていたステージの緊張も解れ、それぞれがそれぞれの作業へと乗り出して行った。


「ほむほむ、いったいどんな料理ができるのか楽しみ~」
 露店で売っていたフライドポテトを頬張りながらルミは観客に紛れて勝負の行方を見守っていた。いつものオフィスの制服ではなく私服に身を包み――強請り取ったオフを満喫していた。
「アルフォンソさんは流石の包丁さばき。今度、お店に行ってみなきゃね」
 そんな彼女の視線の先でアルフォンソの振るう包丁さばきは審査員を、そして観客を魅了していた。筋肉質なその体に似合わず繊細な包丁づかいは無駄な動作が一つも無く最適化された、目まぐるしく忙しい大衆料理店のシェフならでわの精練された技がそこにはあった。
「……はっ、つい見とれてしまいました」
 観客と同じ顔をして見入っていたアリソンはふと我に返るとすぐに自分の作業へと戻る。手元の鍋の中ではコトコトとベネズッカが煮立てられていた。
「それにしてもベネズッカ、本当に芳醇な香りですね」
 立ち上る湯気の香りをうっとりと嗅ぎながらアリソンは静かに笑みを浮かべる。その隣ではジュードが1枚1枚丁寧に小麦粉製の生地を伸ばしている。
「ほう、なかなか薄いじゃないか。ウチのカカァのパイでもあそこまで薄くは無いぞ」
 ヒゲ面の農家さんがその顎髭を撫でながら唸って見せる。そんな評価を受けた上で、ジュードは甘いスマイルを浮かべてみせるとそれを指先に乗せてくるくると回し始める。
「おぉ、まさかさらに薄くなるのか!」
 生地は見る見るうちに薄くなり、まるで先が透けて見えてしまいそうな、そんな一層のパイ生地となる。ジュードはどんなもんだとウインクして見せると黄色い声援が観客席に木霊した。
「あちらは盛り上がってるね~」
 詩は楽しそうにニコニコと笑いながら料理に使う具材を籠に集める。その横でレベッカもまたポルトワールから運ばれてきた鮮魚達を吟味していた。季節の旬魚が並ぶ食材コーナーには遠洋から近海まで、このイベントのために様々な種類の魚介が集められていた。
「うん、鮮度も十分。これなら納得のいく料理が作れそうだよ」
 レベッカは中でも丸々と太った鮭を手に取ると自分の調理スペースへと持ってゆく。まな板の上の鮭を前に目を閉じるとひとつ、大きな息を吐く。

 ――お嬢、料理ってな、普通に作ってる姿で魅せるってのが最上なんだ。

 不意に、そんな過去の記憶が呼び起こされる。遥か昔、船の上でそんな話を聞いた覚えがある。その人は、何をするでもなくただじーっと調理姿を眺めていた自分に向かって、ただ一言、他に何も言葉を紡がず真摯に料理と向き合っていた。
「……さあ、始めようか!」
 自分にそこまでの技量があるかは分からない。それでも自分なりに真摯に料理に向き合おう、そう自分に言い聞かせレベッカは包丁を手に取った。
「それにしても、本当に松茸みたいな香だね。見事に日本人の心をくすぐるよ♪」
 プロフニ茸の香をすんと嗅ぎながら詩はえへへと思わず笑みを零す。
「故郷を離れて幾千里~ もう会えないと思ってたのに~♪」
 そう可愛らしい声で歌い上げながらひらりと舞を披露する。狙ったわけでは無く、思わず出てしまったその無邪気さは人知れず観客の心を癒して行く。ほんわりまったりとした空気が会場を包み込む。
「皆さん、良い感じに票を稼いでくれているみたいですわね」
 観客の心を掴むパフォーマンスを魅せるハンター達の隣でブリジットは慣れた手つきで寸胴の中身をかき混ぜながら、安心したように呟いた。彼女の寸胴の中で煮込まれているのは肉。それも一種類では無い。様々な種類の肉がゴロゴロ、所狭しとスープの中で踊っていた。
「この短時間で煮込み料理を出そうと言うのね。柔らかく肉を煮込むのは相当の時間が掛かると思うのだけれど……それでもチャレンジするその自身。ズバリ、その漬け液だと推理するわ!」
 (自称)料理評論家・ピエール(男)が睨みを効かせるその液体。ブリジットが鍋に入れる直前まで肉が漬かっていた、そしてそれ自体もスープの一部として鍋に投入されたやや酸味の効いた漬け液である。
「ジュードさんの用意していて下さったこの漬け液はとても助かりました。ヨーグルトやワインで肉の繊維がほぐされるおかげで、想定以内でより柔らかく煮込むことが出来そうですわ」
 そう言いながら、ブリジットは握っていたお玉から手を外し題目であるトマキーニを角切りに切り出してゆく。その手つきには微塵も迷いはなく、むしろ包丁を弄ぶかのようにくるくると回して見せたりして、料理自体を楽しんでいるようなそんな態を醸し出していた。
 そんなハンター達の姿を目に収めながら、アルフォンソもまた切り分けた具材を次々と鍋に投入して行く。
「あれは……鍋が3つ?」
 屋台で購入したリンゴ飴を齧りながら、ルミは彼のキッチンに並べられた3つの寸胴に目を奪われた。それらの寸胴にはそれぞれ別の色をしたスープが煮込まれており、一つは純白、一つは鮮やかなオレンジ、そしてもう一つは薄い紅がかった色。
「この段階まで来ればお気づきの方もいらっしゃるでしょう」
 ルミがそう呟いたと同時に、アルフォンソは観客へ、そいして審査員へ向かってそう口を開いた。
「私がこの度、皆さんの為に用意させて頂いたのは3つのスープです。肌寒いこの季節。暖かく、そして優しい3色のスープで皆様の身も心も私の魔法で温めてあげましょう――」


「それでは、頂くとするかのう」
 目の前に並ぶ料理の数々。ついに運命の試食の時がやって来たのだ。審査員達はまずハンター達の料理へと手を伸ばす。
「これはビーフシチュー、ですかね。ゴロッと大きなお肉が入っているのは男ととして嬉しいですねぇ」
 トマキーニ農家の男性が笑顔でその肉を頬張る。短時間ながらも漬け汁によって柔らかく煮込まれた肉は口の中でほろほろと解け甘い油の香が広がった。
「おや、牛かと思いましたがこれは鳥……? でも、こちらはまた違うお肉ですね」
 シチューの中をかき分けながら審査員達はその具材にクエスチョンマークを灯す。
「ジビエ、と言うのはご存知ですか? 所謂、狩りで捕る野生の動物たちなのですが。今回はシカやイノシシ、ハト、もちろん牛も含め、様々なジビエ肉をふんだんに使用してみました」
「ほう、狩り肉ですか」
 ブリジットの説明を受けて、改めて肉を口にする審査員達。
「うん、変な臭みも無くよくできてるわね。これもあの漬け汁のおかげかしら」
 そう薀蓄くさく語るともう一方の料理、ワイン蒸しへと手を付ける。
「本当にいい香りじゃのう。元々ではあるが、これだけ強い香りを楽しむことができるとは」
 村長は嬉しそうにほほ笑むとプロフニ茸と鮭をソースに絡め一口で頬張る。
「私の生まれた国の人達は、これに似たキノコが本当に大好きなの。だからできるだけおいしく楽しく食べられるように、いろいろと考えられてきたんだよ」
「蒸す、それがその方法の一つというわけですね」
 プロフニ茸農家の男性がうんうんと唸りがら感動したように漏らす。
「汁っ気の多いおかずでパンとの相性は十分ですね」
 そう言いながら最後のデザートへと皿を移した。
「懐かしいですねぇ、子供のころを思い出します」
「ウチでもこの季節になると子供たちが母親にせがむんですよ。ズッカのパイを焼いてくれって」
 そんな童心に帰った気持ちでパイを突く審査員達。
「サックサクですね。これもあの生地を薄く伸ばす技量の賜物でしょう」
「お菓子屋をやっているからパイ生地を作るのは得意なんだ。よかったら是非、リゼリオのお店も寄ってみてね」
 ちゃっかりお店の宣伝をしながらもジュードが笑顔で答える。
「加えてほんのりとした酸味と、これはお酒……かのう。ズッカのパイと言えば子供のおやつじゃが、これはどちらかと言えば大人の茶菓子のような印象じゃの」
「ズッカの強い甘みが口の中に広がったかと思えば果汁の酸っぱさ、そしてシナモンとお酒のほろ苦さが口の中を満たして行く。この味の変化は技アリね……素晴らしいわ!」
 評価を前にタネを担当したアリソンが深々とお辞儀をした。言葉を加える必要は無い。自分の成せる事はすべて皿の上の料理に表した。それを認めて貰える事が、何よりも嬉しいのだから。
「さて……では、アルフォンソさんのお料理を頂こうかのう」
「どうぞ、是非アツアツの内にお召し上がりください」
 そう言ってアルフォンソが用意した料理は『トマキーニと平目のアクアパッツァ』『プロフニ茸のホワイトチュー』『ベネズッカのポタージュ』の3つの汁料理。
「あれ……スプーンはどこかしら?」
 ピエールが手元を漁ると、アルフォンソはニコリとほほ笑みそっと添えられたパンを指さす。
「是非、添えましたパンを使って、お皿の縁に付きました一滴まで残さずお召し上がりください」
 そう恭しいお辞儀を交えて進めると、審査員達は驚きながらもパンを大きめにちぎり、スープを掬うようにして口へと運んだ。
「これは……どれも濃いめの味付けですね。そのまま食べてはしょっぱいくらいです」
「しかしバケットと共に食べる事で丁度良い味になり、かつ3種類と様々な味を楽しむ事ができる」
「どちらかと言えば、スープを食べているというよりはパンに様々なクリームを塗って食べているようじゃのう」 口々にする言葉に、アルフォンソはニッコリと微笑んだ。
「その通り。此度は私、皆様が慣れ親しんだパンをいかに美味しく食べる事ができるのか、それに拘って料理をおつくり致しました。普段の食卓が少しでも花やくよう、皆様の未来に魔法を掛けたのです」
「流石大衆料理店のシェフ。大衆と共にあるその精神、恐れ入ったわ!」
 非の打ち所のないコメントを前に、アルフォンソは感謝の意を込めて再びその高い頭を下げるのであった。
「さて……どちらも甲乙付けがたいが、結果を出さねばなるまいの。皆々様、決はお決まりか?」
 村長は他4人の審査員を見比べるようにして一つ頷くと、静かにその手を差し出した。
「それでは、より優れていると思った方へその手を翳すのじゃ」
 同時に振るわれる、審査員達の手――ピエールとトマキーニ農家はアルフォンソへ、村長含む残りの3人がハンター達へとその手を向けていた。
「勝った……の?」
 詩が夢でも見るかのようにそう呟いた。
「いいや、確かにそうだよ。僕たちが勝ったんだ!」
 ジュードの声で皆我へと帰り、こみ上げる自らの勝利を実感する。
「本当に勝てるなんてウソみたい……でも、どうして?」
 嬉しさ半分、困惑も半分見せるアリソンがどこか不安げに首を傾げる。事実を事実と受け入れられていないその問いに答えたのは、誰でも無いアルフォンソであった。
「その答えは審査員の方々の前のお皿を見れば一目瞭然です」
 そう彼が指示した試食皿達。アルフォンソの料理が半分くらい口を付けられているのに対し、ハンター達の料理はすべて綺麗に平らげられていた。
「一番大事なのはどうすりゃ最後まで美味く食ってもらえるか。あたしらは、完食して貰える料理を作ろうって、そう想って作ったんだ」
 レベッカがそう答えると、ハンター達はみな一様に頷いてみせる。その様子を見て、アルフォンソはニコリとほほ笑むとそっと手を差し伸べた。
「素晴らしい料理でした。私も一つ、学ばせて頂きましたよ。謙遜ではなく、ね」
「いえいえ、アルフォンソさんのお料理も素晴らしく。私、ファンになっちゃいました!」
 恥ずかしさを隠すように慌てて取り繕うアリソンであったが、抑えられない喜びが確かに表情から零しながらその手を取って握手を交わした。
「さて……散々見せつけられてお客さんもおなかが空いただろう。皆の分も料理を作っておいたから、たんと召し上がってくれ!」
 オウルはその強面の表情をいい笑顔で綻ばすと、大量に作っておいた料理の数々を観客達の前へと広げ始める。ハンター達が作った料理に加え『トマキーニのチーズ焼き』や『ベネズッカのハロウィンシチュー』『プロフニ茸の炊き込みごはん』など、たくさんの料理が並べられる。
「待ってました! ヨダレを押さえてずっと楽しみにしてたんだもの!」
 その言葉にルミ含め、観客達、そして料理人達も満面の笑みを浮かべながら作られた料理の数々とフレッドの特産品へと舌鼓を打つのであった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 嵐影海光
    レベッカ・アマデーオka1963
  • “技”の料理人
    アリソン・メープルウッドka2772

重体一覧

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 嵐影海光
    レベッカ・アマデーオ(ka1963
    人間(紅)|20才|女性|機導師
  • 酒場の親父
    オウル(ka2420
    ドワーフ|46才|男性|聖導士
  • “技”の料理人
    アリソン・メープルウッド(ka2772
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人

  • Bridget・B(ka3117
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン ルミさんに質問
ジュード・エアハート(ka0410
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/11/03 20:02:26
アイコン 相談卓
ジュード・エアハート(ka0410
人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/11/07 18:25:05
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/11/02 16:25:38