ゲスト
(ka0000)
にせもの
マスター:須崎なう

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~4人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/08/08 19:00
- 完成日
- 2017/08/17 04:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●はじまり
とある旅人が、小さな集落に訪れた。
山をいくつか越えてきたというその旅人は疲労困憊といった様子だったため、住人の勧めもあり、集落に数日滞在することとなる。
しかし、旅人は一日と持たずして、人けのない場所で斬殺死体となって発見された。
それから五日後、旅人と同じような殺され方で集落の住人の遺体が見つかったという。
●断り
「えっと、ごめんね、ダイル。ちょっと今日は親の手伝いがあるからさ、遊べないんだ」
彼女――シュカの家の前で佇むダイルに対し、申し訳なさそうに両手を合わせた。
幼馴染三人。シュカ、ダイル、それと今ここにはいないがアリアナという女の子。齢一二となるこの三人はよく一緒に遊んでいるのだが、今日は珍しくダイルが二人っきりで遊びたいと言ってきたのだ。
「ん。それは今日一日ずっとか?」
ダイルは表情を曇らせながら聞いてくる。
「うーん、そうなりそうかなぁ」
「……わかった。じゃあしょうがない、よな」
ダイルは軽く頭を掻きながら背を向けて、とぼとぼと歩き出した。
シュカは首をひねりながらダイルを見送る。
(うん? 今日は珍しくつっかかってこなかったなぁ)
ダイルはガキ大将のような性格であり、結構わがままだ。いつもならもっとしつこく尋ねてくるのだが……。
「シュカぁ、ちょっとここ、押さえてくれるー?」
「はーい!」
家の奥のほうから母親の声が響く。
シュカは僅かな違和感はとりあえず脇へと逸らし、親の手伝いをするべく開きっぱなしだった入り口の戸を閉めた。
●遊びに
「意外と早く終わっちゃったなー」
んーっ! と両手を上げ、伸びをしながらシュカは空を見上げた。
太陽は多少傾いているものの、まだ空はオレンジ色にはなっておらず、雲ひとつない空は青く澄んでいる。
(今ならまだ、遊べそう?)
伸びの体勢のまま体を捻らせ、奥で夕餉の準備に取り掛かろうとしている母へと向く。
「おかあさーん、今からちょっとダイルのところに遊びに行ってきていーい?」
「いいわよ~。暗くなる前に帰ってきてね~」
「はぁい!」
●発見
(おやおやぁ)
ダイルを探そうと思って家を飛び出して少し。ダイルとアリアナを発見した。
ダイルが二人で遊びたい。と言っていたためアリアナを誘おうか迷っていたのだが、アリアナがいるのならいつもの面子だ。
シュカは二人にさっそく声を掛けようとしたのだが、ちょっとした悪戯心が芽生え、こっそり二人の後をつけることにした。
(バッと飛び出て二人を驚かしてやろう、っと)
気弱なアリアナが驚くであろうことは確実。ダイルもまだまだ子供だから、きっとびっくりするだろう。
にしし、とシュカは歳相応の悪い笑みを浮かべた。
「あ、あの、その。ダイルくん、今日はどうしたの急に……」
「ちょっと二人でしかやれない面白い遊びを思いついたからさー。家が近いからシュカを先に誘ったんだけど、親の手伝いがあるんだと」
「それで、わたしに……」
「そそっ!」
二人の会話を盗み聞きしながらシュカは内心でダイルに毒づく。
(ちょっとダイル! もっと言い方考えなさいよ! アリアナはアンタに惚れてるのよ! まぁ、ダイル本人は知らないだろうけどさ……)
ダイルの無神経さに呆れつつ、シュカは尾行を続けた。
やがて二人は、人けのない空き家へと辿り着く。
どうやらここで遊ぶらしい。
(そういえば、ダイルの言っていた二人でしかできない遊びって……?)
まぁ、見ていれば分かるだろう。
すると、ダイルはアリアナを連れ込むようにして空き家の中へ消えていく。
(こんな密室に男女が二人きり。まさか……! ……って、ないか。だってダイルだし)
そう思いつつ、どこからか中を覗けないかを探すシュカ。
異変は、そのときだった。
バダン! という衝撃音が鳴る。
「ん! ――んん!」
続いて、どこかくぐもった、アリアナの悲鳴のような音。
シュカはアリアナがダイルに乱暴されているのではないのかと瞬時に思い浮かべ、空き家の入り口へと向かう。
しかし空き家の中の光景は、シュカの想像を絶するものだった。
●恐怖
アリアナが四肢と口元を押さえつけられている。
四肢を押さえつけるのは、水っぽく光を反射する触手のような何かだ。
そしてその触手は――――ダイルの口から生えていた。
「んんっ! んッ、んん――!!」
アリアナは抵抗するように体をくねらせるが、触手はびくともしない。
ダイルは意思がないように棒立ちをしていた。が、アリアナの抵抗では拘束を破れないことを確かめたかのように、次の行動をおこす。
アリアナを拘束する触手はそのままに、ダイルの口元で粘着質のソレが肥大化する。
ぼとり、と地面へ落ちたそれはぬめりと光る表面から新たな触手を形成し始めると、その触手を、凪ぐようにしてダイルの腹部を斬りつけた。
鮮血が横一線に飛び散り、その一部がアリアナへとかかる。
ダイルは斬られた衝撃で後方へと仰向けに倒れ、そのままピクリとも動くことはない。
「んんん!!」
すでに絶望で染まっていたアリアナの瞳から、涙が零れ落ちる。
粘液質のソレはアリアナの体を這うようにのぼり始める。
それが何を意味するか、この光景を見たものであれば辿り着くのは簡単だった。
「ん――!! んん゛!! んん゛!!! 」
頭部へとまとわり着いたソレに抵抗することすらできず、アリアナは呼吸困難に陥り白目をむく。
すべてがアリアナの体内に入りきると、空き家に残ったのはダイルの死体と血、アリアナだけとなった。
アリアナは足に力を入れ、弱弱しく立ち上がる。何事もなかったかのようにみえるアリアナだったが、空き家の惨状を加味すれば、それは異常の塊でしかない。
アリアナは、空き家の入り口へと視線を向けた。
そこには、だれもいなかった。
しかし、『アリアナは』知っていた。粘液質のアレには見えなかったかも知れないが、『アリアナは見ていた』
押さえつけられるアリアナを見て、何をすることもなく、恐怖に震えていたシュカを。
アリアナはシュカが覗いていた場所を眺めると、うっすらとその口角を吊り上げた。およそ少女では浮かべることのないような、気味の悪い顔だった。
●逃走
(なんなのよなんなのよなんなのよ! あれは!!)
シュカは走る。
自分がどの方角に向かっているか、意識することなく。
それほどまでに異常だった。
それほどまでに非現実的だった。
それほどまでに、恐怖した。
シュカは走った。
しかしそれは、集落のある方向とはまったく逆だった。
●偽りの証言
その日の夜。ダイルという少年が死体となって発見された。
これで二人目となる住人の死。十日前に死んだ旅人を合わせれば三人目となる。
その現場を目撃したと発言する少女――アリアナが、悲しむ住民の前で言った。
「シュカちゃんが……シュカちゃんがダイルくんを殺してたの!」
とある旅人が、小さな集落に訪れた。
山をいくつか越えてきたというその旅人は疲労困憊といった様子だったため、住人の勧めもあり、集落に数日滞在することとなる。
しかし、旅人は一日と持たずして、人けのない場所で斬殺死体となって発見された。
それから五日後、旅人と同じような殺され方で集落の住人の遺体が見つかったという。
●断り
「えっと、ごめんね、ダイル。ちょっと今日は親の手伝いがあるからさ、遊べないんだ」
彼女――シュカの家の前で佇むダイルに対し、申し訳なさそうに両手を合わせた。
幼馴染三人。シュカ、ダイル、それと今ここにはいないがアリアナという女の子。齢一二となるこの三人はよく一緒に遊んでいるのだが、今日は珍しくダイルが二人っきりで遊びたいと言ってきたのだ。
「ん。それは今日一日ずっとか?」
ダイルは表情を曇らせながら聞いてくる。
「うーん、そうなりそうかなぁ」
「……わかった。じゃあしょうがない、よな」
ダイルは軽く頭を掻きながら背を向けて、とぼとぼと歩き出した。
シュカは首をひねりながらダイルを見送る。
(うん? 今日は珍しくつっかかってこなかったなぁ)
ダイルはガキ大将のような性格であり、結構わがままだ。いつもならもっとしつこく尋ねてくるのだが……。
「シュカぁ、ちょっとここ、押さえてくれるー?」
「はーい!」
家の奥のほうから母親の声が響く。
シュカは僅かな違和感はとりあえず脇へと逸らし、親の手伝いをするべく開きっぱなしだった入り口の戸を閉めた。
●遊びに
「意外と早く終わっちゃったなー」
んーっ! と両手を上げ、伸びをしながらシュカは空を見上げた。
太陽は多少傾いているものの、まだ空はオレンジ色にはなっておらず、雲ひとつない空は青く澄んでいる。
(今ならまだ、遊べそう?)
伸びの体勢のまま体を捻らせ、奥で夕餉の準備に取り掛かろうとしている母へと向く。
「おかあさーん、今からちょっとダイルのところに遊びに行ってきていーい?」
「いいわよ~。暗くなる前に帰ってきてね~」
「はぁい!」
●発見
(おやおやぁ)
ダイルを探そうと思って家を飛び出して少し。ダイルとアリアナを発見した。
ダイルが二人で遊びたい。と言っていたためアリアナを誘おうか迷っていたのだが、アリアナがいるのならいつもの面子だ。
シュカは二人にさっそく声を掛けようとしたのだが、ちょっとした悪戯心が芽生え、こっそり二人の後をつけることにした。
(バッと飛び出て二人を驚かしてやろう、っと)
気弱なアリアナが驚くであろうことは確実。ダイルもまだまだ子供だから、きっとびっくりするだろう。
にしし、とシュカは歳相応の悪い笑みを浮かべた。
「あ、あの、その。ダイルくん、今日はどうしたの急に……」
「ちょっと二人でしかやれない面白い遊びを思いついたからさー。家が近いからシュカを先に誘ったんだけど、親の手伝いがあるんだと」
「それで、わたしに……」
「そそっ!」
二人の会話を盗み聞きしながらシュカは内心でダイルに毒づく。
(ちょっとダイル! もっと言い方考えなさいよ! アリアナはアンタに惚れてるのよ! まぁ、ダイル本人は知らないだろうけどさ……)
ダイルの無神経さに呆れつつ、シュカは尾行を続けた。
やがて二人は、人けのない空き家へと辿り着く。
どうやらここで遊ぶらしい。
(そういえば、ダイルの言っていた二人でしかできない遊びって……?)
まぁ、見ていれば分かるだろう。
すると、ダイルはアリアナを連れ込むようにして空き家の中へ消えていく。
(こんな密室に男女が二人きり。まさか……! ……って、ないか。だってダイルだし)
そう思いつつ、どこからか中を覗けないかを探すシュカ。
異変は、そのときだった。
バダン! という衝撃音が鳴る。
「ん! ――んん!」
続いて、どこかくぐもった、アリアナの悲鳴のような音。
シュカはアリアナがダイルに乱暴されているのではないのかと瞬時に思い浮かべ、空き家の入り口へと向かう。
しかし空き家の中の光景は、シュカの想像を絶するものだった。
●恐怖
アリアナが四肢と口元を押さえつけられている。
四肢を押さえつけるのは、水っぽく光を反射する触手のような何かだ。
そしてその触手は――――ダイルの口から生えていた。
「んんっ! んッ、んん――!!」
アリアナは抵抗するように体をくねらせるが、触手はびくともしない。
ダイルは意思がないように棒立ちをしていた。が、アリアナの抵抗では拘束を破れないことを確かめたかのように、次の行動をおこす。
アリアナを拘束する触手はそのままに、ダイルの口元で粘着質のソレが肥大化する。
ぼとり、と地面へ落ちたそれはぬめりと光る表面から新たな触手を形成し始めると、その触手を、凪ぐようにしてダイルの腹部を斬りつけた。
鮮血が横一線に飛び散り、その一部がアリアナへとかかる。
ダイルは斬られた衝撃で後方へと仰向けに倒れ、そのままピクリとも動くことはない。
「んんん!!」
すでに絶望で染まっていたアリアナの瞳から、涙が零れ落ちる。
粘液質のソレはアリアナの体を這うようにのぼり始める。
それが何を意味するか、この光景を見たものであれば辿り着くのは簡単だった。
「ん――!! んん゛!! んん゛!!! 」
頭部へとまとわり着いたソレに抵抗することすらできず、アリアナは呼吸困難に陥り白目をむく。
すべてがアリアナの体内に入りきると、空き家に残ったのはダイルの死体と血、アリアナだけとなった。
アリアナは足に力を入れ、弱弱しく立ち上がる。何事もなかったかのようにみえるアリアナだったが、空き家の惨状を加味すれば、それは異常の塊でしかない。
アリアナは、空き家の入り口へと視線を向けた。
そこには、だれもいなかった。
しかし、『アリアナは』知っていた。粘液質のアレには見えなかったかも知れないが、『アリアナは見ていた』
押さえつけられるアリアナを見て、何をすることもなく、恐怖に震えていたシュカを。
アリアナはシュカが覗いていた場所を眺めると、うっすらとその口角を吊り上げた。およそ少女では浮かべることのないような、気味の悪い顔だった。
●逃走
(なんなのよなんなのよなんなのよ! あれは!!)
シュカは走る。
自分がどの方角に向かっているか、意識することなく。
それほどまでに異常だった。
それほどまでに非現実的だった。
それほどまでに、恐怖した。
シュカは走った。
しかしそれは、集落のある方向とはまったく逆だった。
●偽りの証言
その日の夜。ダイルという少年が死体となって発見された。
これで二人目となる住人の死。十日前に死んだ旅人を合わせれば三人目となる。
その現場を目撃したと発言する少女――アリアナが、悲しむ住民の前で言った。
「シュカちゃんが……シュカちゃんがダイルくんを殺してたの!」
リプレイ本文
●集落へ
「まったく、性質の悪い雑魔もいたもんです」
「ですね。寄生して知人を――まして今回は友人を目の前で手にかけています。非道極まりないですね」
依頼のあった集落に一足早く到着したソフィア =リリィホルム(ka2383)がふとこぼした呟きに、丸川ヒカル(ka3388)がやや怒気を孕ませた声音で返した。
依頼を受けて相談を終えた二人は、急ぎ足で問題の集落へと向かった。理由は無論、集落の人々に注意を促すためだ。集落の人々も薄々、この事件が雑魔の仕業ではと感づいているだろう。しかし、それが確信でない以上、長時間放置するのは集落の人々の安全を考えると得策ではない。
さらに厄介なことに、今回の雑魔は人に寄生する。
万が一にでも、ハンターがいないタイミングで宿主を変えられようものなら、この依頼の難易度は一気に跳ね上がってしまうのだ。
「とりあえずは事情聴取と、集落の人への説明ですっ」
シュカとアリアナの件は伏せた状態で、だが。
ささっと計算された愛らしい笑顔を浮かべ、ソフィアは「では行きましょう!」とヒカルに呼びかける。
「そうですね。……頼まれたこともありますし」
ヒカルもぎこちなく笑みを浮かべて返した。
●来訪
「ここがシュカ殿のご実家じゃな!」
ででん! と大きく胸を張ってディヤー・A・バトロス(ka5743)は戸の前に立つ。
ここに来たのは、シュカの両親に彼女の無事を伝えるため。そして、シュカに変装するための衣服を借り受けるためだった。
ヒカルが頼まれていたことというのは、シュカの家を特定することだったのだ。
戸に手をかけ、大げさに開け放つ。
「たのもーうっ!」
なぜ道場破り風? と突っ込んではいけない。
びくりと家の中にいた者が肩を震わせたが、ディヤーの姿を見て安心したような表情を見せる。
ヒカルが事前にある程度のことを説明しておいてくれたのだ。
●熟考
「シュカ、って人はどんな人なんです?」
「その子が被害者を殺す理由は?」
「それ以前の、二件の事件も彼女が? 大人相手にどうやって?」
と、集落の人々を説得するため遠回しな質問して回っているソフィアを眺めつつ、皐月=A=カヤマ(ka3534)も聞き込みを行っていた。
世間話や笑い話を交えつつ、なるだけ警戒されないように意識しながら。
(うーん。やっぱり五日がこの雑魔の宿主を変える周期とみていいかな……?)
村に来たという旅人が殺されて五日後に集落から最初に犠牲者が出、そして二人目の犠牲者であるダイル少年が殺されたのも、前の犠牲者から五日後だという。
確信をもって言えるわけではないが、ただの偶然とも決めつけられないのも確かだ。
さらに、ダイルが殺されて五日後というのは、今日だったりするのだ。
(もし本当に寄生対象を変えるのが五日周期だとしたら、動くのは今日中ってことになるよなあ)
そんなことをぼんやりと考えつつ、ふと視界の端に映ったアリアナという少女をみた。
知らない人たちが集落にきて、慣れない人たちに対し怯えているように見える。それが演技とは思えないほど、人間らしい。
にょろ~り。
アリアナの首が、まるで軟体動物が身体をねじらせるかのように滑らかにふりかえる。
しかしその視線の先には誰もいない。
アリアナは小首を傾げると、どこかへと歩いて行ってしまった。
「うっわぁ。何、今の動き」
皐月は隠れていた物陰からそっと現れると、アリアナが去った方向を半目で眺めつつ、奇怪なものでも見たように細く息を吐いた。
●彼の作戦
「これでどうじゃ! ちゃんとシュカ殿に見えるかの」
ヒカルに違和感がないかを見てもうため、シュカの衣服を纏ったディヤーがくるりと一回転してみせる。
「今のですこしウィッグがずれましたよ」
ヒカルは苦笑してウィッグの位置を整えた。
雑魔に寄生されたアリアナをおびき寄せるため、シュカに変装して囮をする。これはそのための準備となる。
「肌の色も何とかなったし、これで見た目はばっちりじゃの!」
腰をひねって変装に違和感が無いか自分でも確認したディヤーは、「あとは……」と小さく呟いて、何度か咳払いをする。
「わしはシュカ殿わしはシュカ殿……」
自分に言い聞かせるようにして、何度も呟き始める。
まさかこれは……! と息を呑むヒカル。
しかし。
「あたしはシュカ!(ドヤッ! しかし地声)」
「惜しいです!」
演技はともかく、声質の方はどうにもならないようだった。
囮の際は、無言を徹底することになるらしい。
●偽物の目撃
「…………っ!」
アリアナは一瞬だけ――しかも視界の隅っこに写り込んだだけだというのに、その後ろ姿をはっきりと認識した。
それは数日前に姿を眩ませたアリアナの友人、シュカのうしろ姿だった。
アリアナ――いや、彼女の中に潜む雑魔はちょうどいい機会だと、そう本能的に思考し、ほくそ笑む。
このまま集落にいてもハンターがいるために他人を襲うことができない。
しかし、このままでは五日というタイムリミットを迎えてしまう。もしそうなってしまえば、アリアナの肉体は雑魔を留める器としての限界に達し、壊れてしまう。
迷っている時間さえ惜しいのだ。
集落の大人には「お花を摘みに……」という意味合いの言葉を伝えて、アリアナはシュカの消えた方向……森の中へと駆け出した。
●薄暗い森の中
「……うわぁ」
ソフィアはその光景を見て、心底気分が悪そうに表情を歪める。
眼前には見事罠にはまり、寄生対象を変えようとしている銀色のスライムのような雑魔が蠢いていた。その体積は、予想以上に大きいサイズだ。アリアナの口から湧き出した銀色のそれは、いまやアリアナとさして変わらないほどの大きさになっていた。
ヒカルの方は、純粋に怒りを宿した双眸でどこか睨むようにして見ていた。
見ると、シュカに変装し囮をやっているディヤーもちょっと驚いているようだ。
「ねぇ、二人とも前に出過ぎてない?」
ハンターの中では割と平静だった皐月が、ソフィアとヒカルに声をかける。
皐月が思ったより冷静を保っていたのは、集落で聞き込みを行っていた際に、すでに片鱗のようなものを見ていたからこそだろう。
三人はそのまま隠れて静観する。
もしかしたら、アリアナから完全に雑魔を引きはがせるタイミングがあるかもしれないのだ。
ハンターたちは、ぎりぎりまで耐え。そして。
その瞬間が、来る。
●戦闘
ぼとり巨大な水塊のような雑魔が地面に落ちた。
瞬時に触手を生成するが――――その触手はあらぬ方向から飛来した電撃纏った弾丸をはじく。しかし伸ばした触手は破裂し、雑魔は痺れたように動きがぎこちなくなった。
「ディヤー君、今だよ!」
ソフィアが叫ぶ。
「了解したのじゃ!」
ディヤーは麻痺している雑魔の横を走り抜け、倒れるアリアナの身体を抱き寄せるとそのまま雑魔との距離をとった。
離れたところにアリアナを寝かせると、アースウォールで石の壁を雑魔からアリアナを守るような形で配置した。
ソフィアもアリアナの元までやってくると、アリアナに加護符を施す。
その間、皐月とヒカルは雑魔の麻痺が回復しても対処できるように警戒していた。
すぐに麻痺から回復した雑魔が大量の触手を展開し、刃を形成。最も近くにいた皐月、ヒカルの二人へと襲い掛かる。
「食らうかボケェ!」
皐月から放たれた弾丸がピンポイントで直撃し、同時に冷気を発生させた。一瞬で凝結した触手の刃が砕け散る。落としきれなかった触手攻撃は回避する。
「――――くっ!」
ヒカルも瞬時にムーバブルシールドを使って、多くの触手を防いで見せたが、しなるように盾をすり抜けた触手の刃が彼女の肌に細い切れ目を無数に刻んだ。
アリアナのために前線から離れていたソフィアとディヤーが復帰する。
触手の対処をするために、ソフィア、ディヤー、皐月は行動を阻害する効果を兼ね備えた遠距離攻撃である、エレクトリックショック、アイスボルト、レイターコールドショットを使い、ヒカルもデルタレイや機導砲を撃ち込む。
しかし、どれも本体までは届かない。
初撃ではヒットしたソフィアのエレクトリックショックも、被弾した触手を本体から切り離すことで雑魔は対処していた。ほかの攻撃も触手に阻まれるか、軌道をそらされて雑魔に当たることがない。
このままでは埒が明かない、と思われたが……。
「なんだか、攻撃の手数が減ってきてる?」
ソフィアの呟きが他のみんなにも届いたのか、注意深く雑魔を観察する。
「おいおい! 雑魔の奴ぁ、小そうなっとるやんか!」
皐月の声に、ハンター各々が雑魔本体を注意深く見る。
これまで無数の触手に対処していたため気づかなかったが、雑魔本体の体積が明らかに小さくなっていた。元々のサイズから二回り以上小さくなっている。
それは単に、雑魔の触手がハンターたちの攻撃によって悉く消滅させられたことが原因だろう。本体の延長である触手が消滅すれば、自然と新たに作られる触手は本体を削って作られるというわけだ。
「このまま攻撃すれば行けるのじゃ!」
触手の量が減れば、受けるダメージも少なくなる。ほぼすべての攻撃を対処しきっていたソフィアを除き、ディヤー、皐月、ヒカルは触手の刃によってつけられた小さな切り傷受けている。どれも些細なレベルの負傷だったのは、彼らが上手く攻撃を捌いた賜物だろう。
触手の量が減ったことにより、ソフィアは守りを攻性防壁に任せて射程内まで接近し、ガンブレイズでダメージを与える。
四人の攻撃は触手の数をどんどん減らしていき……。雑魔が最後のあがきと繰り出した自爆も負傷することなく切り抜けたのだった。
●報告
「とまあ、こういう事情なのじゃ!」
「「「は、はあ」」」
集落に戻ったハンターたちは事件の真相を集落のみんなに説明して回った。
その中に、ソフィアの姿はない。今回の依頼ではみんな軽症レベルの怪我しか負っていなかったが、一応、その中でもっとも負傷していない彼女が意識を失ったアリアナを医療施設まで運ぶことになったのだ。ちなみにその足で、ハンターズオフィスで待っているシュカにも事件が解決したことを報せるのだという。
雑魔に寄生されていたアリアナがいつ回復するのかは、わからない。おそらく、なんらかの負荷がアリアナの身体に掛かっていたことは間違いないだろう。そうでなければ、寄生する雑魔がわざわざ危険を冒して宿主を変える必要がないからだ。
それにもし回復したとしても、精神的に追い込まれていることは間違いない。寄生されている間に犯したこともそうだが、目の前で想い人を無残に殺されているのだ。
シュカであれば、アリアナを支えられるのか、それはハンターたちにはわからなかったがそこは信じるしかないのだろう。
「まったく、性質の悪い雑魔もいたもんです」
「ですね。寄生して知人を――まして今回は友人を目の前で手にかけています。非道極まりないですね」
依頼のあった集落に一足早く到着したソフィア =リリィホルム(ka2383)がふとこぼした呟きに、丸川ヒカル(ka3388)がやや怒気を孕ませた声音で返した。
依頼を受けて相談を終えた二人は、急ぎ足で問題の集落へと向かった。理由は無論、集落の人々に注意を促すためだ。集落の人々も薄々、この事件が雑魔の仕業ではと感づいているだろう。しかし、それが確信でない以上、長時間放置するのは集落の人々の安全を考えると得策ではない。
さらに厄介なことに、今回の雑魔は人に寄生する。
万が一にでも、ハンターがいないタイミングで宿主を変えられようものなら、この依頼の難易度は一気に跳ね上がってしまうのだ。
「とりあえずは事情聴取と、集落の人への説明ですっ」
シュカとアリアナの件は伏せた状態で、だが。
ささっと計算された愛らしい笑顔を浮かべ、ソフィアは「では行きましょう!」とヒカルに呼びかける。
「そうですね。……頼まれたこともありますし」
ヒカルもぎこちなく笑みを浮かべて返した。
●来訪
「ここがシュカ殿のご実家じゃな!」
ででん! と大きく胸を張ってディヤー・A・バトロス(ka5743)は戸の前に立つ。
ここに来たのは、シュカの両親に彼女の無事を伝えるため。そして、シュカに変装するための衣服を借り受けるためだった。
ヒカルが頼まれていたことというのは、シュカの家を特定することだったのだ。
戸に手をかけ、大げさに開け放つ。
「たのもーうっ!」
なぜ道場破り風? と突っ込んではいけない。
びくりと家の中にいた者が肩を震わせたが、ディヤーの姿を見て安心したような表情を見せる。
ヒカルが事前にある程度のことを説明しておいてくれたのだ。
●熟考
「シュカ、って人はどんな人なんです?」
「その子が被害者を殺す理由は?」
「それ以前の、二件の事件も彼女が? 大人相手にどうやって?」
と、集落の人々を説得するため遠回しな質問して回っているソフィアを眺めつつ、皐月=A=カヤマ(ka3534)も聞き込みを行っていた。
世間話や笑い話を交えつつ、なるだけ警戒されないように意識しながら。
(うーん。やっぱり五日がこの雑魔の宿主を変える周期とみていいかな……?)
村に来たという旅人が殺されて五日後に集落から最初に犠牲者が出、そして二人目の犠牲者であるダイル少年が殺されたのも、前の犠牲者から五日後だという。
確信をもって言えるわけではないが、ただの偶然とも決めつけられないのも確かだ。
さらに、ダイルが殺されて五日後というのは、今日だったりするのだ。
(もし本当に寄生対象を変えるのが五日周期だとしたら、動くのは今日中ってことになるよなあ)
そんなことをぼんやりと考えつつ、ふと視界の端に映ったアリアナという少女をみた。
知らない人たちが集落にきて、慣れない人たちに対し怯えているように見える。それが演技とは思えないほど、人間らしい。
にょろ~り。
アリアナの首が、まるで軟体動物が身体をねじらせるかのように滑らかにふりかえる。
しかしその視線の先には誰もいない。
アリアナは小首を傾げると、どこかへと歩いて行ってしまった。
「うっわぁ。何、今の動き」
皐月は隠れていた物陰からそっと現れると、アリアナが去った方向を半目で眺めつつ、奇怪なものでも見たように細く息を吐いた。
●彼の作戦
「これでどうじゃ! ちゃんとシュカ殿に見えるかの」
ヒカルに違和感がないかを見てもうため、シュカの衣服を纏ったディヤーがくるりと一回転してみせる。
「今のですこしウィッグがずれましたよ」
ヒカルは苦笑してウィッグの位置を整えた。
雑魔に寄生されたアリアナをおびき寄せるため、シュカに変装して囮をする。これはそのための準備となる。
「肌の色も何とかなったし、これで見た目はばっちりじゃの!」
腰をひねって変装に違和感が無いか自分でも確認したディヤーは、「あとは……」と小さく呟いて、何度か咳払いをする。
「わしはシュカ殿わしはシュカ殿……」
自分に言い聞かせるようにして、何度も呟き始める。
まさかこれは……! と息を呑むヒカル。
しかし。
「あたしはシュカ!(ドヤッ! しかし地声)」
「惜しいです!」
演技はともかく、声質の方はどうにもならないようだった。
囮の際は、無言を徹底することになるらしい。
●偽物の目撃
「…………っ!」
アリアナは一瞬だけ――しかも視界の隅っこに写り込んだだけだというのに、その後ろ姿をはっきりと認識した。
それは数日前に姿を眩ませたアリアナの友人、シュカのうしろ姿だった。
アリアナ――いや、彼女の中に潜む雑魔はちょうどいい機会だと、そう本能的に思考し、ほくそ笑む。
このまま集落にいてもハンターがいるために他人を襲うことができない。
しかし、このままでは五日というタイムリミットを迎えてしまう。もしそうなってしまえば、アリアナの肉体は雑魔を留める器としての限界に達し、壊れてしまう。
迷っている時間さえ惜しいのだ。
集落の大人には「お花を摘みに……」という意味合いの言葉を伝えて、アリアナはシュカの消えた方向……森の中へと駆け出した。
●薄暗い森の中
「……うわぁ」
ソフィアはその光景を見て、心底気分が悪そうに表情を歪める。
眼前には見事罠にはまり、寄生対象を変えようとしている銀色のスライムのような雑魔が蠢いていた。その体積は、予想以上に大きいサイズだ。アリアナの口から湧き出した銀色のそれは、いまやアリアナとさして変わらないほどの大きさになっていた。
ヒカルの方は、純粋に怒りを宿した双眸でどこか睨むようにして見ていた。
見ると、シュカに変装し囮をやっているディヤーもちょっと驚いているようだ。
「ねぇ、二人とも前に出過ぎてない?」
ハンターの中では割と平静だった皐月が、ソフィアとヒカルに声をかける。
皐月が思ったより冷静を保っていたのは、集落で聞き込みを行っていた際に、すでに片鱗のようなものを見ていたからこそだろう。
三人はそのまま隠れて静観する。
もしかしたら、アリアナから完全に雑魔を引きはがせるタイミングがあるかもしれないのだ。
ハンターたちは、ぎりぎりまで耐え。そして。
その瞬間が、来る。
●戦闘
ぼとり巨大な水塊のような雑魔が地面に落ちた。
瞬時に触手を生成するが――――その触手はあらぬ方向から飛来した電撃纏った弾丸をはじく。しかし伸ばした触手は破裂し、雑魔は痺れたように動きがぎこちなくなった。
「ディヤー君、今だよ!」
ソフィアが叫ぶ。
「了解したのじゃ!」
ディヤーは麻痺している雑魔の横を走り抜け、倒れるアリアナの身体を抱き寄せるとそのまま雑魔との距離をとった。
離れたところにアリアナを寝かせると、アースウォールで石の壁を雑魔からアリアナを守るような形で配置した。
ソフィアもアリアナの元までやってくると、アリアナに加護符を施す。
その間、皐月とヒカルは雑魔の麻痺が回復しても対処できるように警戒していた。
すぐに麻痺から回復した雑魔が大量の触手を展開し、刃を形成。最も近くにいた皐月、ヒカルの二人へと襲い掛かる。
「食らうかボケェ!」
皐月から放たれた弾丸がピンポイントで直撃し、同時に冷気を発生させた。一瞬で凝結した触手の刃が砕け散る。落としきれなかった触手攻撃は回避する。
「――――くっ!」
ヒカルも瞬時にムーバブルシールドを使って、多くの触手を防いで見せたが、しなるように盾をすり抜けた触手の刃が彼女の肌に細い切れ目を無数に刻んだ。
アリアナのために前線から離れていたソフィアとディヤーが復帰する。
触手の対処をするために、ソフィア、ディヤー、皐月は行動を阻害する効果を兼ね備えた遠距離攻撃である、エレクトリックショック、アイスボルト、レイターコールドショットを使い、ヒカルもデルタレイや機導砲を撃ち込む。
しかし、どれも本体までは届かない。
初撃ではヒットしたソフィアのエレクトリックショックも、被弾した触手を本体から切り離すことで雑魔は対処していた。ほかの攻撃も触手に阻まれるか、軌道をそらされて雑魔に当たることがない。
このままでは埒が明かない、と思われたが……。
「なんだか、攻撃の手数が減ってきてる?」
ソフィアの呟きが他のみんなにも届いたのか、注意深く雑魔を観察する。
「おいおい! 雑魔の奴ぁ、小そうなっとるやんか!」
皐月の声に、ハンター各々が雑魔本体を注意深く見る。
これまで無数の触手に対処していたため気づかなかったが、雑魔本体の体積が明らかに小さくなっていた。元々のサイズから二回り以上小さくなっている。
それは単に、雑魔の触手がハンターたちの攻撃によって悉く消滅させられたことが原因だろう。本体の延長である触手が消滅すれば、自然と新たに作られる触手は本体を削って作られるというわけだ。
「このまま攻撃すれば行けるのじゃ!」
触手の量が減れば、受けるダメージも少なくなる。ほぼすべての攻撃を対処しきっていたソフィアを除き、ディヤー、皐月、ヒカルは触手の刃によってつけられた小さな切り傷受けている。どれも些細なレベルの負傷だったのは、彼らが上手く攻撃を捌いた賜物だろう。
触手の量が減ったことにより、ソフィアは守りを攻性防壁に任せて射程内まで接近し、ガンブレイズでダメージを与える。
四人の攻撃は触手の数をどんどん減らしていき……。雑魔が最後のあがきと繰り出した自爆も負傷することなく切り抜けたのだった。
●報告
「とまあ、こういう事情なのじゃ!」
「「「は、はあ」」」
集落に戻ったハンターたちは事件の真相を集落のみんなに説明して回った。
その中に、ソフィアの姿はない。今回の依頼ではみんな軽症レベルの怪我しか負っていなかったが、一応、その中でもっとも負傷していない彼女が意識を失ったアリアナを医療施設まで運ぶことになったのだ。ちなみにその足で、ハンターズオフィスで待っているシュカにも事件が解決したことを報せるのだという。
雑魔に寄生されていたアリアナがいつ回復するのかは、わからない。おそらく、なんらかの負荷がアリアナの身体に掛かっていたことは間違いないだろう。そうでなければ、寄生する雑魔がわざわざ危険を冒して宿主を変える必要がないからだ。
それにもし回復したとしても、精神的に追い込まれていることは間違いない。寄生されている間に犯したこともそうだが、目の前で想い人を無残に殺されているのだ。
シュカであれば、アリアナを支えられるのか、それはハンターたちにはわからなかったがそこは信じるしかないのだろう。
依頼結果
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事態解決しよう! ソフィア =リリィホルム(ka2383) ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト) |
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