ゲスト
(ka0000)
外出すれば、雑魔に当たる
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/08/22 19:00
- 完成日
- 2017/08/28 13:54
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ラカ、外出する
龍園において神官であるラカ・ベルフは渋面を作っていた。
彼女の目の前にあるのは「飛竜観察日記」というノートだ。
「これを届ける……のですよね?」
ただそれだけでなぜ渋面になるのか。
それは、龍園の外に出かけないとならないからだ。
通常であれば転移門が使える人物に頼むの常だが、知り合いが出かけていなかったし、ハンターにも出会わない。
「……」
そして、彼女の中で今知る中、確実に届けることが実はできる人物が一人だけいる――自分だ。
「う、ううううう」
ラカは龍園の外が苦手だった。
龍園の外から来るものも苦手だった。
そのため、ここで非常に悩んでいる。
これまでの経験でハンターは怖くない、外にも興味はあると、五ミリくらい何かを認めてはいる。認めたとはいえたった五ミリであり、全体は一メートルほどあるラカの気持ちなのだ。
あれこれごねているが、まあ、彼女が不安の塊になっており、外出を拒みたいだけなのだ。
「しかし、しかし」
どうやらグラズヘイム王国の子と何かの縁があったらしい子が書き込んだこのノート。その子たちのために届けてあげたい気は大いにある。
「うううううう」
きっとグラズヘイムの子は、このノートを楽しみにしているに違いない。
「どうしたらいいのですうう」
青龍様がいらしたらどういうのでしょうか、など考える。
『はよ行け』
まあ、こんな言い方はしないだろう、偉大なる青龍様は。
「行ってきます」
ラカはしぶしぶ出かける。
龍園の服装のまま。
●待っている子
グラズヘイム王国の中央寄り東北寄りの小さな町フォークベリー。
魔術師の弟子ルゥルはワクワクして待っていた。師匠のマーナが龍園に行ったとき知り合ったという人の子どもから龍園についてのレポートを届けてもらえることになっているのだ。
その代わりルゥルは自分が住む町のことやグラズヘイム王国について書いたノートを作った。届けてくれる人に託せばいいという約束になっていた。
図書館で調べたり、自分で言って調べたり色々したのだ。ルゥル、渾身の一冊である。
「生の証言なのです! リアルブルーもですが、クリムゾンウェストも行ったことがないところがたくさんあるのです」
ルゥルの世界は今広がりつつある。
なお、先日あった催しの帰り道、ユグディラがついてきていることに気づいたのだった。白い毛並みで、首や足の付け根の隠れるところが黒いユグディラだった。薬草園にいたのを見たことがあり、催しの時に触ったユグディラだった。
どうやら、ルゥルについて行きたいということ。名前はキソシロというということも知った。
師匠に告げたら「飼ってもよい」という許可が出たし、キソシロはちょっとスキルを持っているおかげでルゥルがもし冒険に出ても役に立つとされる。
それに普段からキソシロはしっかりしているのが明らかだった。ルゥルが勉強をさぼると叱ってくる。しかし、遊ぶ時は一緒。
だから、キソシロにペットのパルムやフェレットといれば、もっと広い世界に出かけられる気がしてくる。
「嬉しいですう。早く、龍園レポート届かないでしょうか」
キソシロがぺちぺちと机をたたいたため、ルゥルは一人前の魔術師になるべく、勉強にいそしんだ。
●溶けた
ラカは無事、小さな町の一歩手前までやってきていた。
「暑い……です」
大きな町のハンターズソサエティの支部でラカは膝を付いた。不覚にもこのような状況になるとは考えもしなかった。
「え? 暑いですか? まあ、夏ですし……過ごしやすい方ですよ」
職員のロビン・ドルトスがラカが立てるように手を差し出す。その瞬間、彼女の服装を見て「そりゃ、暑いよ」と心の中で叫んだ。
「どこから来たのですか?」
「龍園」
ロビンは「なぜリサーチしてこない!」と驚く。
真冬並みの装備ではないが、ラカの服装は冬に近い。
「し、心頭滅却すれば火も涼し、ということわざがあると聞いたことあります」
ラカはすくっとたち、街に出た。
心配そうにロビンは見送る。
「あ、どこまで行くのか知りませんが、雑魔注意報が出ていますので気を付けてくださいね」
今のところ雑魔を見たという話はあっても、馬車についてこられないらしく襲われたという話はなかった。たぶん、ラカも馬車に乗るだろうと思ったため、ロビンはそれ以上追求しなかった。
その上、その雑魔退治の依頼でハンターはそろそろ来るだろう。だから、受付男子のロビンは待っているのだから。
そのラカは町の位置や地図は覚えている。しかし、縮尺がわかっていなかった。
街道を東に進み小さな町に向かう。
「暑いです」
とぼとぼと進むこと三十分。大きな町も見えなくなった。小さな町はまだまだ見えない。
「おかしいです……」
ブヒ、ブヒ……。
変な音を聞いた。
「あれ? 動物でしょうか?」
意識がもうろうとするラカはぼんやりとそれらを見つめた。
家畜の豚のような気がするが、何かおかしい。
「ぞ、雑魔ですわね。このわたくしが相手してさしあげますわっ」
モーニングスターを分厚いドレスの下から取り出すと、構えようとした。普段振り回す武器であるが非常に重い。
「……くらくらします、何か変な術でも使ってきたのでしょうか」
それは熱中症の初期症状だと、告げる人物は誰もいなかった。
龍園において神官であるラカ・ベルフは渋面を作っていた。
彼女の目の前にあるのは「飛竜観察日記」というノートだ。
「これを届ける……のですよね?」
ただそれだけでなぜ渋面になるのか。
それは、龍園の外に出かけないとならないからだ。
通常であれば転移門が使える人物に頼むの常だが、知り合いが出かけていなかったし、ハンターにも出会わない。
「……」
そして、彼女の中で今知る中、確実に届けることが実はできる人物が一人だけいる――自分だ。
「う、ううううう」
ラカは龍園の外が苦手だった。
龍園の外から来るものも苦手だった。
そのため、ここで非常に悩んでいる。
これまでの経験でハンターは怖くない、外にも興味はあると、五ミリくらい何かを認めてはいる。認めたとはいえたった五ミリであり、全体は一メートルほどあるラカの気持ちなのだ。
あれこれごねているが、まあ、彼女が不安の塊になっており、外出を拒みたいだけなのだ。
「しかし、しかし」
どうやらグラズヘイム王国の子と何かの縁があったらしい子が書き込んだこのノート。その子たちのために届けてあげたい気は大いにある。
「うううううう」
きっとグラズヘイムの子は、このノートを楽しみにしているに違いない。
「どうしたらいいのですうう」
青龍様がいらしたらどういうのでしょうか、など考える。
『はよ行け』
まあ、こんな言い方はしないだろう、偉大なる青龍様は。
「行ってきます」
ラカはしぶしぶ出かける。
龍園の服装のまま。
●待っている子
グラズヘイム王国の中央寄り東北寄りの小さな町フォークベリー。
魔術師の弟子ルゥルはワクワクして待っていた。師匠のマーナが龍園に行ったとき知り合ったという人の子どもから龍園についてのレポートを届けてもらえることになっているのだ。
その代わりルゥルは自分が住む町のことやグラズヘイム王国について書いたノートを作った。届けてくれる人に託せばいいという約束になっていた。
図書館で調べたり、自分で言って調べたり色々したのだ。ルゥル、渾身の一冊である。
「生の証言なのです! リアルブルーもですが、クリムゾンウェストも行ったことがないところがたくさんあるのです」
ルゥルの世界は今広がりつつある。
なお、先日あった催しの帰り道、ユグディラがついてきていることに気づいたのだった。白い毛並みで、首や足の付け根の隠れるところが黒いユグディラだった。薬草園にいたのを見たことがあり、催しの時に触ったユグディラだった。
どうやら、ルゥルについて行きたいということ。名前はキソシロというということも知った。
師匠に告げたら「飼ってもよい」という許可が出たし、キソシロはちょっとスキルを持っているおかげでルゥルがもし冒険に出ても役に立つとされる。
それに普段からキソシロはしっかりしているのが明らかだった。ルゥルが勉強をさぼると叱ってくる。しかし、遊ぶ時は一緒。
だから、キソシロにペットのパルムやフェレットといれば、もっと広い世界に出かけられる気がしてくる。
「嬉しいですう。早く、龍園レポート届かないでしょうか」
キソシロがぺちぺちと机をたたいたため、ルゥルは一人前の魔術師になるべく、勉強にいそしんだ。
●溶けた
ラカは無事、小さな町の一歩手前までやってきていた。
「暑い……です」
大きな町のハンターズソサエティの支部でラカは膝を付いた。不覚にもこのような状況になるとは考えもしなかった。
「え? 暑いですか? まあ、夏ですし……過ごしやすい方ですよ」
職員のロビン・ドルトスがラカが立てるように手を差し出す。その瞬間、彼女の服装を見て「そりゃ、暑いよ」と心の中で叫んだ。
「どこから来たのですか?」
「龍園」
ロビンは「なぜリサーチしてこない!」と驚く。
真冬並みの装備ではないが、ラカの服装は冬に近い。
「し、心頭滅却すれば火も涼し、ということわざがあると聞いたことあります」
ラカはすくっとたち、街に出た。
心配そうにロビンは見送る。
「あ、どこまで行くのか知りませんが、雑魔注意報が出ていますので気を付けてくださいね」
今のところ雑魔を見たという話はあっても、馬車についてこられないらしく襲われたという話はなかった。たぶん、ラカも馬車に乗るだろうと思ったため、ロビンはそれ以上追求しなかった。
その上、その雑魔退治の依頼でハンターはそろそろ来るだろう。だから、受付男子のロビンは待っているのだから。
そのラカは町の位置や地図は覚えている。しかし、縮尺がわかっていなかった。
街道を東に進み小さな町に向かう。
「暑いです」
とぼとぼと進むこと三十分。大きな町も見えなくなった。小さな町はまだまだ見えない。
「おかしいです……」
ブヒ、ブヒ……。
変な音を聞いた。
「あれ? 動物でしょうか?」
意識がもうろうとするラカはぼんやりとそれらを見つめた。
家畜の豚のような気がするが、何かおかしい。
「ぞ、雑魔ですわね。このわたくしが相手してさしあげますわっ」
モーニングスターを分厚いドレスの下から取り出すと、構えようとした。普段振り回す武器であるが非常に重い。
「……くらくらします、何か変な術でも使ってきたのでしょうか」
それは熱中症の初期症状だと、告げる人物は誰もいなかった。
リプレイ本文
●人がいる?
雑魔退治の依頼を受けたハンターたちは、現場の街道は人通りもあるいうこともあり、急いで向かった。
マリィア・バルデス(ka5848)はルゥル(kz0210)の住む町の近くでの依頼ということから、町にでも連れて行ってあげようとサイドカー付きのバイクで来ていた。
「生活道に雑魔……早く片付けてしまいましょう」
藤堂 小夏(ka5489)は街道の脇に人影と動物のような影を見つける。
「なんかものすごく暑そうな格好をした人がいるんだけど……熱中症とか大丈夫なの?」
そのつぶやきにより周囲を警戒してた他のメンバーがそちらに目を向ける。
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は暑さに少しばて気味でまだ視線が鈍い。
「ん? なんで道の外に人影があんだ……」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)は雑魔退治とダイエットの一石二鳥と考えて仕事を選んだ。
「本来の仕事に含まれていないけど、放っておくのもアレか」
T-Sein(ka6936)は状況を整理していく。
「そうですね、まずは雑魔退治と被害者の保護です。何はともあれ、今日も元気に眼前の敵を滅ぼしましょう。『殲滅執行』」
南護 炎(ka6651)は先行し始める。
「急ぐぜ。俺が被害者と雑魔の間に割って入るぜ」
彼の言葉とともに、誰だどのように行動をするか手短にすり合わせ、急行した。
●惨劇は防がれる
マリィアはバイクを止めると魔導銃を構え【制圧射撃】を行う。
「まずはこれをくらいなさい」
これにより、雑魔は敵が来たということを知ることとなる。だからと言って、牙を向ける方向を変えるとは限らない。
「そこの人、加勢するよー」
小夏は声をかけ【ソウルトーチ】を使った。雑魔がマテリアルに反応するかはわからないが可能性があればよいと考える。
「あれは……ラカちゃんじゃん!?」
ヴォーイは雑魔に【ファントムハンド】を使うと手ごたえは感じた。
わずかな隙間ができたのを見て、炎がラカ・ベルフと雑魔の間に割って入る。
「何者ですっ」
ラカが強い語調で告げるが、炎が見た彼女は初対面でも本調子でないと見て取れる。
「あんた、体調不良だろう!」
「そんなことありません……目の前が赤いですけれど」
「それまずいから!」
炎はラカを背にかばって立った。介抱するにしても前の雑魔をどうにかしないとならない。
T-Seinは雑魔の近くに来たところで我流八拳の【覚醒闘争】と【覚醒鉄鱗】を発動させる。マテリアルを練り上げて己の力を増す。
「どうぞ、いつでも相手になります」
雑魔たちは弱っているラカを取り上げられて、怒りの矛先をハンターに向けるか逃げるしかない。しかし、逃げる選択肢はそれらにはなかった。
「あー、みんな先に行ってね」
アルスレーテは少し離れたところで下馬すると、聖拳を構え乗馬馬――名前は宮本 馬刺――に向かってマテリアルを放つ。
「ヒッ、ヒーン」
ただの乗馬はかろうじて回避し、逃亡を選択した。
「この私から逃げようだなんて馬刺なのにやるじゃない。【縮地瞬動】」
「……馬刺し!? 戦闘に集中だ」
マリィアは素早くリロードをしつつ、敵を狙って銃弾を叩き込んでいるが、アルスレーテの声を聞き何が起こっているのか気になる。仲間を信じて敵に集中することにはした。
雑魔と対峙しているメンバーのそばに馬が走って来て、それを追いかけたアルスレーテがやってくる。
ヴォーイはぎょっとしたが、近づいてきた敵を攻撃する。
「何があったんだ!」
「敵を討ちます」
「おう」
ヴォーイが叩いたものをT-Seinがとどめをさした。
この二人をすり抜け、小夏が前に出て武器を振った。一直線上にいた敵で、銃弾により弱っていたものが倒れる。
「この雑魔の元、ブタだよね。とんかつ食べたくなってきた」
小夏はふと思い出しながら攻撃するが、特に何事もなく雑魔は霧散し消えた。
「近づくんじゃねぇ!」
炎は雑魔に対して威嚇する。ラカから離れることはしないで様子を見る。
「これで終わるかしら」
マリィアが素早くリロードし、再び銃弾を叩き込んだ。
「殲滅完了です。お疲れ様でした」
T-Seinの声が終わりを告げた。
「え、ええええ?」
アルスレーテは膝から崩れ落ち、その間に乗馬馬・宮本 馬刺は逃げた。
「……ちょっとー! あー」
アルスレーテは逃げている馬より、人命を優先し立ち止まった。
●熱中症
炎はぐったりするラカの額に手を当てる。
「この状況で考えられるのは」
「熱中症だよね」
あとを継ぐように小夏が言う。
「ほらこれ飲んで」
炎はミネラルウォーターの蓋を開けると、ラカに押し付ける。
「あと、緩めないと服」
ミネラルウォーターを素直に飲んでいるラカの手が邪魔でボタンに手は届かないため、炎は「これで良かったと」女性陣に譲る。
「ラカちゃん、無事?」
ヴォーイがしゃがみ込んでラカの様子を見る。見事な水の一気飲みだった。
アルスレーテはラカの様子を伺い、彼女の分厚いマントのすそを手に眉が中央に寄る。
「体温調整できていないわけよね? まあ、気休めかもしれないけど【母なるミゼリア】」
有無を言わせず、アルスレーテは「熱中症も抜けるかもしれない」と技を使う。技は成功したが、ラカの状況に何も変化はない。
「そう簡単に治るなら、病気も消えているわよね」
アルスレーテは納得し、ラカの様子を見守る。
「まず、日陰に移動しましょう。上着は脱がなきゃだめよ。熱中症で人は簡単に死ねるんだから。死にたくなければ行くことを聞く……ほらほら。それと冷たい水でタオルか何か冷やして……」
マリィアが有無を言わせず、水を飲んでほっと一息ついたラカを急き立てる。
「……ねっちゅーしょー?」
ラカがきょとんとした。
この瞬間、彼女がこのような事態を想定していないことをハンター全員理解した。
「詳しい説明は後にしよう。今の状況だよ、暑さに負けたね。あ、ヴォーイの知り合いなんだっけ?」
小夏はラカが起きるのを手伝う。
「龍園に住んでいるんだ、ラカちゃん」
「寒いところに住んでいると、汗かきにくいのよね」
ヴォーイの言葉にマリィアが納得したとうなずく。
「なぜこの時期にこのような服装だったのか……納得しました。ザインもきっとこういう状態だったのですね」
T-Seinは大きくうなずく。自分の少し前の状況とラカの状況を重ね合わせ、親近感を覚えた。
「冷たい水ならこれで行ける。湿らせるものを貸してくれ」
炎は【節制蒸留水】を使い水を出現させ、渡された手ぬぐいを湿らせた。
その間に木陰に移動したラカから女性陣がコートとマントは脱がす。ロングスカートの下の長袖は脱がせば多少はいいのかとあれこれ引っ張ったり、ラカに文句言われたりしていた。結局、厚手の服の袖は腕まくりさせられ、外気で少しでも冷やそうとしている。すると龍人であると分かる鱗が見える。
「これでいいか?」
炎が濡らした手ぬぐいを渡すとマリィアはラカの首元と脇の下に当てる。
「……うううう」
「まったく、なんでこんな格好で来たのかしら」
(ルゥルと同じおバカ可愛いタイプというか……大人なのかわからない龍人なわけで)
胸中複雑にマリィアはてきぱき動く。
「ラカちゃん、なんで無茶したんだ?」
ヴォーイが改めて問うと、ラカの視線が泳ぎ「届け物があったのです」と返ってくる。
「……まあ、無事でよかった。チーズも塩気あるから少し食べられるか?」
「干し肉もあるわよ?」
ヴォーイとマリィアに勧められラカは一口だけ口に含んだ。
ラカの様子が落ち着くまで暫く警戒しつつたたずむ。
乾燥した涼しい風が吹き抜ける。日差しは強く暑いが、木陰だと十分涼しかった。
牧草地帯であり、遠くには羊や牛が見え、比較的近いところでは馬が草をはむ情景が見られる。
「馬刺!」
アルスレーテが素早く駆け抜ける。
「……なんで馬刺」
ヴォーイが「まさか非常食」と続ける。
「名前らしいわね」
マリィアはそばで聞いたため確証に近い口調だ。
「とんかつが食べたい」
小夏は雑魔から想像し、ラカの手当てで忘れていたことを思い出した。とんかつを食べられそうな店はこの近辺にはなさそうだ。
「とんかつか……何故だ」
「いや、だってさっきの雑魔」
「ブタぽかったな」
小夏に指摘され炎は苦笑する。雑魔は倒したはずだし、人命救助もしたとあれば、空腹もやってこなくはない。
「そういわれると腹減った」
炎はぽつりとつぶやいた。そして、ラカを見ると、ボーとしているのが良いのか、最初見たときより楽そうだ。
見ていると無事、乗馬馬を捕獲してアルスレーテが戻ってくる。
「偉いな、乗馬馬」
「長く生きろよ」
炎とヴォーイに慰められる乗馬馬・宮本 馬刺。
「そろそろ行きます」
ふらふらと立ち上がるラカに、T-Seinは手を伸ばし、支える。
「どこに向かうのですか?」
「フォークベリーです」
「この先の町ですね」
大きな町と小さな町を結ぶ街道であるとハンターたちは記憶している。
「なら、送っていくよ? ふらふらしているし、馬もあるし」
「それなら、サイドカーもあるから町のどこに知らないけれど運んであげてもいいわよ」
「それは便利」
小夏とマリィアの言葉にラカは安堵とも不安ともつかぬ顔になる。
「雑魔は五体と決まっていないし、街道進んで戻っても足があるわけだしな」
乗り掛かった舟だと炎が言う。
「ダイエットついでよね」
アルスレーテは乗馬馬は不満そうに「ブヒヒ」と鳴いた。
「さあ、再度出発じゃん」
ヴォーイは勢いよく立ち上がった。
ハンターたちは周囲の警戒をしつつ、街道を進む。小さな町へは一本道。町の手前で別の道も交差しているが、迷うこともない。
牧草地や林を眺めて進む。
「気持ち悪いです」
ラカはガタゴト揺れるサイドカーの上でぼそりつぶやいた。
「え?」
「……おえ……」
「と、停まるから」
マリィア慌てた。そして、熱中症による体力不足からの体調不良か、元から乗り物に弱いのか。
「ラカちゃん……乗り物弱いとか」
ヴォーイは思い出そうとするが、馬に相乗りにしたことはあったはずだ。
「熱中症の続きね」
アルスレーテはけだるげに告げた。
●配達
小さな町に到着し安堵する。城壁をくぐり、教会の脇にある家に一行は向かう。
「お届け物です」
T-Seinは玄関で声をかける。
開け放たれた窓からルゥルが顔をのぞかせる。顔見知りであるマリィアが手を振ると、ハンター一行ということを理解し、一階の窓から出てきた。
「こんにちはです」
「ルゥル元気していた?」
「ハイです! キソシロ、ハンターさんです」
二足歩行の猫が出てくる。
「ユグディラ? すごいわね」
「はいです。それで、お届け物は?」
ラカは真っ青な状態であるが、袋を取り出した。
「お、お姉さん、満身創痍です。お、おうちで休んでください」
「こ、これくらいは……」
「はいはい、えと、ルゥルちゃん、上がらせてもらうじゃん」
「そうしたほうがいいよ、ね」
虚勢を張るラカをヴォーイと小夏がなだめ、ルゥルについて中に入る。
「ついでに休憩していいのかしら?」
「お姉さんたちもどうぞです」
「ありがとう……ああ、涼しい」
アルスレーテは部屋に入り、ほっと息を吐く。
ルゥルは台所でお湯を沸かしている。
「僭越ながらお手伝いいたします」
「いえいえ、お客様なのです」
押し問答の末、T-Seinは部屋の隅に立った。
「お姉さん、これを飲んでくださいです。スーとするですよ? マリィアさんたちもどうぞ」
器がバラバラなのはご愛敬。
ミント入っているらしくすっとしているが、とげとげせずすっきり飲める。
「これが噂の龍園、生レポートです……ワイバーンについてが半分です」
ルゥルが喜んでいる。
「これを持って行ってくれるんですよね?」
「……え?」
別のノートを見てラカはキョトンとする。
「このノートを書いてくれた人に、私が書いたグラズヘイムとこの町のことです」
「……あ……」
「キソシロが来てくれたので、ユグジラのことも書けました」
ラカはルゥルの説明にしおれる。
「どうしたですか? どこか痛いのですか?」
「いえ、大丈夫です」
おろおろするルゥルにマリィアが肩をポンとやり「大丈夫だから少し涼ませてあげて」と告げた。
「なあ、ラカちゃん。ルゥルちゃんが書いたノート、写させてもらたらどうじゃん?」
「まあ、写さなくても見せてもらうことはいいな」
「せっかくこうして龍園の外にも来たじゃん?」
「それも縁でグラズヘイムまで来たんだ」
「今後来るか来ないかは別だし、今度ルゥルちゃんが行くかもしれないじゃん」
ヴォーイと炎の勧めを聞きながら、ラカはバツが悪そうにグラスをもてあそぶ。
龍園は外とつながったのも事実。すでに外に出て活動している龍人も多い。
「誰でもなれないことは失敗するし、次から気をつければいいんだよ……でも、なんでこんなコート着て来たの?」
小夏は尋ねる、原因がわからなければ何も伝えることもできない。
「……まさか、ここまで暑いとは知らなかったのです」
ラカの消え入りそうな声。
「うんうん、今回と似たようなことがあるときは、その地域のこと調べてきた方がいいよ? それにあった服着てこないと」
「……はい」
さすがにラカ素直に答える。
「無事でよかった」
「そうだな」
炎とヴォーイはお茶を飲みほした。
「あら、これおいしそうね」
「これは、私が作りました」
アルスレーテはルゥルが出した茶菓子代わりの手作りのパンケーキのような物をつまんだ。
「運動の後のおやつはおいしい……ん」
アルスレーテ、すこし、頭を抱えた。
「どうして困るのですか」
「……大きくなると分かるわよ、うん」
「そうですか」
ルゥルはアルスレーテの言葉を真に受けた。
「ルゥル様、お茶を淹れようと思います」
「はいです、淹れるです」
「ですから……」
T-Seinと再び掛け合う。
「ルゥル、町まで遊びにく?」
「うーん、お勉強が終わっていないのです」
キソシロが遊びに行く以前の問題という風に首を横に振り、テーブルの上をたたく。
「……そのユグディラすごく大人だな」
炎が言うとキソシロはうなずいた。
ハンターたちはしばらく休んだ後、大きな町に向けて戻っていった。ついでにラカも連れて。
雑魔退治の依頼を受けたハンターたちは、現場の街道は人通りもあるいうこともあり、急いで向かった。
マリィア・バルデス(ka5848)はルゥル(kz0210)の住む町の近くでの依頼ということから、町にでも連れて行ってあげようとサイドカー付きのバイクで来ていた。
「生活道に雑魔……早く片付けてしまいましょう」
藤堂 小夏(ka5489)は街道の脇に人影と動物のような影を見つける。
「なんかものすごく暑そうな格好をした人がいるんだけど……熱中症とか大丈夫なの?」
そのつぶやきにより周囲を警戒してた他のメンバーがそちらに目を向ける。
ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)は暑さに少しばて気味でまだ視線が鈍い。
「ん? なんで道の外に人影があんだ……」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)は雑魔退治とダイエットの一石二鳥と考えて仕事を選んだ。
「本来の仕事に含まれていないけど、放っておくのもアレか」
T-Sein(ka6936)は状況を整理していく。
「そうですね、まずは雑魔退治と被害者の保護です。何はともあれ、今日も元気に眼前の敵を滅ぼしましょう。『殲滅執行』」
南護 炎(ka6651)は先行し始める。
「急ぐぜ。俺が被害者と雑魔の間に割って入るぜ」
彼の言葉とともに、誰だどのように行動をするか手短にすり合わせ、急行した。
●惨劇は防がれる
マリィアはバイクを止めると魔導銃を構え【制圧射撃】を行う。
「まずはこれをくらいなさい」
これにより、雑魔は敵が来たということを知ることとなる。だからと言って、牙を向ける方向を変えるとは限らない。
「そこの人、加勢するよー」
小夏は声をかけ【ソウルトーチ】を使った。雑魔がマテリアルに反応するかはわからないが可能性があればよいと考える。
「あれは……ラカちゃんじゃん!?」
ヴォーイは雑魔に【ファントムハンド】を使うと手ごたえは感じた。
わずかな隙間ができたのを見て、炎がラカ・ベルフと雑魔の間に割って入る。
「何者ですっ」
ラカが強い語調で告げるが、炎が見た彼女は初対面でも本調子でないと見て取れる。
「あんた、体調不良だろう!」
「そんなことありません……目の前が赤いですけれど」
「それまずいから!」
炎はラカを背にかばって立った。介抱するにしても前の雑魔をどうにかしないとならない。
T-Seinは雑魔の近くに来たところで我流八拳の【覚醒闘争】と【覚醒鉄鱗】を発動させる。マテリアルを練り上げて己の力を増す。
「どうぞ、いつでも相手になります」
雑魔たちは弱っているラカを取り上げられて、怒りの矛先をハンターに向けるか逃げるしかない。しかし、逃げる選択肢はそれらにはなかった。
「あー、みんな先に行ってね」
アルスレーテは少し離れたところで下馬すると、聖拳を構え乗馬馬――名前は宮本 馬刺――に向かってマテリアルを放つ。
「ヒッ、ヒーン」
ただの乗馬はかろうじて回避し、逃亡を選択した。
「この私から逃げようだなんて馬刺なのにやるじゃない。【縮地瞬動】」
「……馬刺し!? 戦闘に集中だ」
マリィアは素早くリロードをしつつ、敵を狙って銃弾を叩き込んでいるが、アルスレーテの声を聞き何が起こっているのか気になる。仲間を信じて敵に集中することにはした。
雑魔と対峙しているメンバーのそばに馬が走って来て、それを追いかけたアルスレーテがやってくる。
ヴォーイはぎょっとしたが、近づいてきた敵を攻撃する。
「何があったんだ!」
「敵を討ちます」
「おう」
ヴォーイが叩いたものをT-Seinがとどめをさした。
この二人をすり抜け、小夏が前に出て武器を振った。一直線上にいた敵で、銃弾により弱っていたものが倒れる。
「この雑魔の元、ブタだよね。とんかつ食べたくなってきた」
小夏はふと思い出しながら攻撃するが、特に何事もなく雑魔は霧散し消えた。
「近づくんじゃねぇ!」
炎は雑魔に対して威嚇する。ラカから離れることはしないで様子を見る。
「これで終わるかしら」
マリィアが素早くリロードし、再び銃弾を叩き込んだ。
「殲滅完了です。お疲れ様でした」
T-Seinの声が終わりを告げた。
「え、ええええ?」
アルスレーテは膝から崩れ落ち、その間に乗馬馬・宮本 馬刺は逃げた。
「……ちょっとー! あー」
アルスレーテは逃げている馬より、人命を優先し立ち止まった。
●熱中症
炎はぐったりするラカの額に手を当てる。
「この状況で考えられるのは」
「熱中症だよね」
あとを継ぐように小夏が言う。
「ほらこれ飲んで」
炎はミネラルウォーターの蓋を開けると、ラカに押し付ける。
「あと、緩めないと服」
ミネラルウォーターを素直に飲んでいるラカの手が邪魔でボタンに手は届かないため、炎は「これで良かったと」女性陣に譲る。
「ラカちゃん、無事?」
ヴォーイがしゃがみ込んでラカの様子を見る。見事な水の一気飲みだった。
アルスレーテはラカの様子を伺い、彼女の分厚いマントのすそを手に眉が中央に寄る。
「体温調整できていないわけよね? まあ、気休めかもしれないけど【母なるミゼリア】」
有無を言わせず、アルスレーテは「熱中症も抜けるかもしれない」と技を使う。技は成功したが、ラカの状況に何も変化はない。
「そう簡単に治るなら、病気も消えているわよね」
アルスレーテは納得し、ラカの様子を見守る。
「まず、日陰に移動しましょう。上着は脱がなきゃだめよ。熱中症で人は簡単に死ねるんだから。死にたくなければ行くことを聞く……ほらほら。それと冷たい水でタオルか何か冷やして……」
マリィアが有無を言わせず、水を飲んでほっと一息ついたラカを急き立てる。
「……ねっちゅーしょー?」
ラカがきょとんとした。
この瞬間、彼女がこのような事態を想定していないことをハンター全員理解した。
「詳しい説明は後にしよう。今の状況だよ、暑さに負けたね。あ、ヴォーイの知り合いなんだっけ?」
小夏はラカが起きるのを手伝う。
「龍園に住んでいるんだ、ラカちゃん」
「寒いところに住んでいると、汗かきにくいのよね」
ヴォーイの言葉にマリィアが納得したとうなずく。
「なぜこの時期にこのような服装だったのか……納得しました。ザインもきっとこういう状態だったのですね」
T-Seinは大きくうなずく。自分の少し前の状況とラカの状況を重ね合わせ、親近感を覚えた。
「冷たい水ならこれで行ける。湿らせるものを貸してくれ」
炎は【節制蒸留水】を使い水を出現させ、渡された手ぬぐいを湿らせた。
その間に木陰に移動したラカから女性陣がコートとマントは脱がす。ロングスカートの下の長袖は脱がせば多少はいいのかとあれこれ引っ張ったり、ラカに文句言われたりしていた。結局、厚手の服の袖は腕まくりさせられ、外気で少しでも冷やそうとしている。すると龍人であると分かる鱗が見える。
「これでいいか?」
炎が濡らした手ぬぐいを渡すとマリィアはラカの首元と脇の下に当てる。
「……うううう」
「まったく、なんでこんな格好で来たのかしら」
(ルゥルと同じおバカ可愛いタイプというか……大人なのかわからない龍人なわけで)
胸中複雑にマリィアはてきぱき動く。
「ラカちゃん、なんで無茶したんだ?」
ヴォーイが改めて問うと、ラカの視線が泳ぎ「届け物があったのです」と返ってくる。
「……まあ、無事でよかった。チーズも塩気あるから少し食べられるか?」
「干し肉もあるわよ?」
ヴォーイとマリィアに勧められラカは一口だけ口に含んだ。
ラカの様子が落ち着くまで暫く警戒しつつたたずむ。
乾燥した涼しい風が吹き抜ける。日差しは強く暑いが、木陰だと十分涼しかった。
牧草地帯であり、遠くには羊や牛が見え、比較的近いところでは馬が草をはむ情景が見られる。
「馬刺!」
アルスレーテが素早く駆け抜ける。
「……なんで馬刺」
ヴォーイが「まさか非常食」と続ける。
「名前らしいわね」
マリィアはそばで聞いたため確証に近い口調だ。
「とんかつが食べたい」
小夏は雑魔から想像し、ラカの手当てで忘れていたことを思い出した。とんかつを食べられそうな店はこの近辺にはなさそうだ。
「とんかつか……何故だ」
「いや、だってさっきの雑魔」
「ブタぽかったな」
小夏に指摘され炎は苦笑する。雑魔は倒したはずだし、人命救助もしたとあれば、空腹もやってこなくはない。
「そういわれると腹減った」
炎はぽつりとつぶやいた。そして、ラカを見ると、ボーとしているのが良いのか、最初見たときより楽そうだ。
見ていると無事、乗馬馬を捕獲してアルスレーテが戻ってくる。
「偉いな、乗馬馬」
「長く生きろよ」
炎とヴォーイに慰められる乗馬馬・宮本 馬刺。
「そろそろ行きます」
ふらふらと立ち上がるラカに、T-Seinは手を伸ばし、支える。
「どこに向かうのですか?」
「フォークベリーです」
「この先の町ですね」
大きな町と小さな町を結ぶ街道であるとハンターたちは記憶している。
「なら、送っていくよ? ふらふらしているし、馬もあるし」
「それなら、サイドカーもあるから町のどこに知らないけれど運んであげてもいいわよ」
「それは便利」
小夏とマリィアの言葉にラカは安堵とも不安ともつかぬ顔になる。
「雑魔は五体と決まっていないし、街道進んで戻っても足があるわけだしな」
乗り掛かった舟だと炎が言う。
「ダイエットついでよね」
アルスレーテは乗馬馬は不満そうに「ブヒヒ」と鳴いた。
「さあ、再度出発じゃん」
ヴォーイは勢いよく立ち上がった。
ハンターたちは周囲の警戒をしつつ、街道を進む。小さな町へは一本道。町の手前で別の道も交差しているが、迷うこともない。
牧草地や林を眺めて進む。
「気持ち悪いです」
ラカはガタゴト揺れるサイドカーの上でぼそりつぶやいた。
「え?」
「……おえ……」
「と、停まるから」
マリィア慌てた。そして、熱中症による体力不足からの体調不良か、元から乗り物に弱いのか。
「ラカちゃん……乗り物弱いとか」
ヴォーイは思い出そうとするが、馬に相乗りにしたことはあったはずだ。
「熱中症の続きね」
アルスレーテはけだるげに告げた。
●配達
小さな町に到着し安堵する。城壁をくぐり、教会の脇にある家に一行は向かう。
「お届け物です」
T-Seinは玄関で声をかける。
開け放たれた窓からルゥルが顔をのぞかせる。顔見知りであるマリィアが手を振ると、ハンター一行ということを理解し、一階の窓から出てきた。
「こんにちはです」
「ルゥル元気していた?」
「ハイです! キソシロ、ハンターさんです」
二足歩行の猫が出てくる。
「ユグディラ? すごいわね」
「はいです。それで、お届け物は?」
ラカは真っ青な状態であるが、袋を取り出した。
「お、お姉さん、満身創痍です。お、おうちで休んでください」
「こ、これくらいは……」
「はいはい、えと、ルゥルちゃん、上がらせてもらうじゃん」
「そうしたほうがいいよ、ね」
虚勢を張るラカをヴォーイと小夏がなだめ、ルゥルについて中に入る。
「ついでに休憩していいのかしら?」
「お姉さんたちもどうぞです」
「ありがとう……ああ、涼しい」
アルスレーテは部屋に入り、ほっと息を吐く。
ルゥルは台所でお湯を沸かしている。
「僭越ながらお手伝いいたします」
「いえいえ、お客様なのです」
押し問答の末、T-Seinは部屋の隅に立った。
「お姉さん、これを飲んでくださいです。スーとするですよ? マリィアさんたちもどうぞ」
器がバラバラなのはご愛敬。
ミント入っているらしくすっとしているが、とげとげせずすっきり飲める。
「これが噂の龍園、生レポートです……ワイバーンについてが半分です」
ルゥルが喜んでいる。
「これを持って行ってくれるんですよね?」
「……え?」
別のノートを見てラカはキョトンとする。
「このノートを書いてくれた人に、私が書いたグラズヘイムとこの町のことです」
「……あ……」
「キソシロが来てくれたので、ユグジラのことも書けました」
ラカはルゥルの説明にしおれる。
「どうしたですか? どこか痛いのですか?」
「いえ、大丈夫です」
おろおろするルゥルにマリィアが肩をポンとやり「大丈夫だから少し涼ませてあげて」と告げた。
「なあ、ラカちゃん。ルゥルちゃんが書いたノート、写させてもらたらどうじゃん?」
「まあ、写さなくても見せてもらうことはいいな」
「せっかくこうして龍園の外にも来たじゃん?」
「それも縁でグラズヘイムまで来たんだ」
「今後来るか来ないかは別だし、今度ルゥルちゃんが行くかもしれないじゃん」
ヴォーイと炎の勧めを聞きながら、ラカはバツが悪そうにグラスをもてあそぶ。
龍園は外とつながったのも事実。すでに外に出て活動している龍人も多い。
「誰でもなれないことは失敗するし、次から気をつければいいんだよ……でも、なんでこんなコート着て来たの?」
小夏は尋ねる、原因がわからなければ何も伝えることもできない。
「……まさか、ここまで暑いとは知らなかったのです」
ラカの消え入りそうな声。
「うんうん、今回と似たようなことがあるときは、その地域のこと調べてきた方がいいよ? それにあった服着てこないと」
「……はい」
さすがにラカ素直に答える。
「無事でよかった」
「そうだな」
炎とヴォーイはお茶を飲みほした。
「あら、これおいしそうね」
「これは、私が作りました」
アルスレーテはルゥルが出した茶菓子代わりの手作りのパンケーキのような物をつまんだ。
「運動の後のおやつはおいしい……ん」
アルスレーテ、すこし、頭を抱えた。
「どうして困るのですか」
「……大きくなると分かるわよ、うん」
「そうですか」
ルゥルはアルスレーテの言葉を真に受けた。
「ルゥル様、お茶を淹れようと思います」
「はいです、淹れるです」
「ですから……」
T-Seinと再び掛け合う。
「ルゥル、町まで遊びにく?」
「うーん、お勉強が終わっていないのです」
キソシロが遊びに行く以前の問題という風に首を横に振り、テーブルの上をたたく。
「……そのユグディラすごく大人だな」
炎が言うとキソシロはうなずいた。
ハンターたちはしばらく休んだ後、大きな町に向けて戻っていった。ついでにラカも連れて。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/08/18 19:27:47 |
|
![]() |
相談卓 アルスレーテ・フュラー(ka6148) エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2017/08/21 08:33:32 |