ゲスト
(ka0000)
【転臨】知追う者、馬鈴薯を売る
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/08/29 07:30
- 完成日
- 2017/09/03 17:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●べリンガー家の考え
シャールズ・べリンガーは頭を悩ませている。イスルダ島奪還であれば、自分か息子が動くことは望ましい。
しかし、領主自ら出向くことのリスクと、まだ未熟な息子を送ることのリスク。領民すべての運命もかかってしまうというと大げさでもあるが、関連すると否定はできない。
「物資を送るにしても、うちの領地余剰があるかと言えば……あるのはラベンダーだな」
ラベンダー精油がいくら傷に効くと言っても、医薬品でもないし限度があるため役に立たない。
「さて……どうしよう」
ふとテーブルを見るとおやつとして妻が用意してくれたポテトチップスがあった。
「ポテト?」
ジャガイモなどどこから入手したのか? わざわざ茶請けに出てくる物でもない。
妻に問うと、息子のリシャール・べリンガーがクリシス家に出かけたときおすそ分けしてもらったという。
シャールズは友人のウィリアム・クリシスにそのことを問う。
「エトファリカの大江殿からもらったんだ」
との回答が得られた。
この近辺で物資を探しても数は限られる。それならばつてを頼って融通してもらうと良いだろう。
運ぶのも転移門を使えばいいが、荷物として運べる量は限られる。ユニットがあるほうがいいということになる。
戦闘に使えるようなユニットの入手は近隣の貴族に憶測を呼ぶ危険もある。いや、どれも使おうと思えば使えるが、用途を考えて行かないとならない。シャールズは悩んだがすぐにきっぱりと決め、まず、リシャールを呼ぶ。
しばらくすると訓練中だったらしく、小袖に袴といういで立ちでやってきた。
「父上、どうかしたのですか?」
「リシャールにユニットを借りてあげようと思う」
「え?」
「それと、エトファリカに行ってもらうことになると思う」
「ん?」
「いや、ジャガイモを買いに行ってもらうと思うから」
「……ユニットって結局……手押し車の代わりですよね」
「リシャール賢いな」
説明を聞いてリシャールは理解した。
「さすがに、イスルダ島に行く手伝いをすると言い出すことはしません。それで役に立てるなら頑張りたいです」
シャールズはホッと息を吐いた。
「魔導トラック」
リシャールはそれはそれで嬉しそうだった。
●大江家
大江 紅葉はそこでそのようなことをするつもりはなかった。
ハンターと付き合う上で、もっと自分も術を使える方がいいなとか、知識ばかりで術使えないのも嫌だなと向上心が生まれたからそこに向かったのだった。それに、そろそろ元住んでいたところで浄化もしちゃわないといけない事態だ。
そして、修業熱が湧いた紅葉はそのための場所を探した。天ノ都からちょっと行ったところにある山ぽいところに人気がなく、ちょうどよさそうな川と滝を見つけた。幸いなのが妖怪や動物が少ないことだ。
最初はまじめに滝行したり、術を試したりあれこれしていた。
そして、紅葉は気づいた。
その滝の前の空き地が結構広いということに。そして、土も固くなく何か育てられそうだなということに。
それからしばらくして、なんとなく「ジャガイモ」を仕入れて植えることにした。
ジャガイモの花を見た。
そして、収穫ができそうだった。すでに試しに収穫してみて一部おすそ分けもしていた。
「このジャガイモを見せたらじいたち驚きます」
自分一人でやり切ったことに紅葉は満足していた。
収穫するにしても刻令術の機械をここまで持ってこられない。距離があることと道幅が耐えられないだろうということ。そのため、背負い籠に入れて自分で持って帰らないとならない。
「最初は持って帰って驚かせるのです! その後、皆で収穫すればいいのです」
紅葉は上機嫌だった。
修業そっちのけでジャガイモの面倒を見ていた。
今日も水やりにやってきた。
「……ほ、掘り返されていますっ!?」
足跡はイノシシのようだ。
「で、でも妙に大きいです」
掘り返した後のジャガイモが転がっていることも気になった。イノシシなら食べるに違いない。
「……これは……」
さっさと水やりをして一旦帰ることにする。何かあったらすぐに術を使うんだと心に決めて。
幸い、何もなくたどり着いた。
「宗主、お客様がいらっしゃっています。家令が相手中です」
紅葉は手足を洗い、衣類を改め部屋に向かった。
「ああ、紅葉殿。突然の来訪を許されよ」
「いえ、べリンガーさん、お久しぶりです」
シャールズとあいさつを交わす。世間話をしたりした後、本題がやってきた。
「ところで、紅葉殿、ジャガイモってどのくらいあ――」
「じゃ、ジャガイモ!」
紅葉の声が裏返った。
家令は「そんなのありません」と否定しようとしたが、紅葉の反応を見て「うちの宗主何やらかしたんだ」という思いが去来している。
「……宗主、何をしたんですか? 怒らないので正直にお話しください」
紅葉が冷や汗をドバっとかく。
(ん? 家令が知らない? これは好機か?)
シャールズは思いながら聞いているが、あまりそこまで駆け引きが必要と思えない。
「えええと……実は……」
ジャガイモを植えた経緯を話した。
「宗主、なぜ、町の外に一人で出るんですか!」
「怒らないって言ったじゃないですか」
「言いましたが、ジャガイモのことは怒りません。町を一人で出ることは危険です! そのことを怒っているのです」
「ひどい……ま、間違っていないのが悔しいです」
紅葉は黙る。
「……べリンガーさん、ジャガイモ必要なのですか?」
「……え、ええ、兵糧として入手できればと」
「分かりました、お売りします!」
紅葉はキパリという。
「うちで食べる分だけは残してください。あとは売ります!」
「……出来が悪いとか」
「それはありません! 推定イノシシ雑魔が掘り返すほどです」
シャールズはその意味を理解した。こっそり植えたジャガイモで、ハンターにも依頼出せないならここで放出したほうがどちらのためにもなる、と。
「分かりました、値段交渉をしましょう」
紅葉はシャールズは相場と値段を突き合わせあれこれ言い合った。雑魔退治も必要ということでその経費を除いて決定された。
シャールズ・べリンガーは頭を悩ませている。イスルダ島奪還であれば、自分か息子が動くことは望ましい。
しかし、領主自ら出向くことのリスクと、まだ未熟な息子を送ることのリスク。領民すべての運命もかかってしまうというと大げさでもあるが、関連すると否定はできない。
「物資を送るにしても、うちの領地余剰があるかと言えば……あるのはラベンダーだな」
ラベンダー精油がいくら傷に効くと言っても、医薬品でもないし限度があるため役に立たない。
「さて……どうしよう」
ふとテーブルを見るとおやつとして妻が用意してくれたポテトチップスがあった。
「ポテト?」
ジャガイモなどどこから入手したのか? わざわざ茶請けに出てくる物でもない。
妻に問うと、息子のリシャール・べリンガーがクリシス家に出かけたときおすそ分けしてもらったという。
シャールズは友人のウィリアム・クリシスにそのことを問う。
「エトファリカの大江殿からもらったんだ」
との回答が得られた。
この近辺で物資を探しても数は限られる。それならばつてを頼って融通してもらうと良いだろう。
運ぶのも転移門を使えばいいが、荷物として運べる量は限られる。ユニットがあるほうがいいということになる。
戦闘に使えるようなユニットの入手は近隣の貴族に憶測を呼ぶ危険もある。いや、どれも使おうと思えば使えるが、用途を考えて行かないとならない。シャールズは悩んだがすぐにきっぱりと決め、まず、リシャールを呼ぶ。
しばらくすると訓練中だったらしく、小袖に袴といういで立ちでやってきた。
「父上、どうかしたのですか?」
「リシャールにユニットを借りてあげようと思う」
「え?」
「それと、エトファリカに行ってもらうことになると思う」
「ん?」
「いや、ジャガイモを買いに行ってもらうと思うから」
「……ユニットって結局……手押し車の代わりですよね」
「リシャール賢いな」
説明を聞いてリシャールは理解した。
「さすがに、イスルダ島に行く手伝いをすると言い出すことはしません。それで役に立てるなら頑張りたいです」
シャールズはホッと息を吐いた。
「魔導トラック」
リシャールはそれはそれで嬉しそうだった。
●大江家
大江 紅葉はそこでそのようなことをするつもりはなかった。
ハンターと付き合う上で、もっと自分も術を使える方がいいなとか、知識ばかりで術使えないのも嫌だなと向上心が生まれたからそこに向かったのだった。それに、そろそろ元住んでいたところで浄化もしちゃわないといけない事態だ。
そして、修業熱が湧いた紅葉はそのための場所を探した。天ノ都からちょっと行ったところにある山ぽいところに人気がなく、ちょうどよさそうな川と滝を見つけた。幸いなのが妖怪や動物が少ないことだ。
最初はまじめに滝行したり、術を試したりあれこれしていた。
そして、紅葉は気づいた。
その滝の前の空き地が結構広いということに。そして、土も固くなく何か育てられそうだなということに。
それからしばらくして、なんとなく「ジャガイモ」を仕入れて植えることにした。
ジャガイモの花を見た。
そして、収穫ができそうだった。すでに試しに収穫してみて一部おすそ分けもしていた。
「このジャガイモを見せたらじいたち驚きます」
自分一人でやり切ったことに紅葉は満足していた。
収穫するにしても刻令術の機械をここまで持ってこられない。距離があることと道幅が耐えられないだろうということ。そのため、背負い籠に入れて自分で持って帰らないとならない。
「最初は持って帰って驚かせるのです! その後、皆で収穫すればいいのです」
紅葉は上機嫌だった。
修業そっちのけでジャガイモの面倒を見ていた。
今日も水やりにやってきた。
「……ほ、掘り返されていますっ!?」
足跡はイノシシのようだ。
「で、でも妙に大きいです」
掘り返した後のジャガイモが転がっていることも気になった。イノシシなら食べるに違いない。
「……これは……」
さっさと水やりをして一旦帰ることにする。何かあったらすぐに術を使うんだと心に決めて。
幸い、何もなくたどり着いた。
「宗主、お客様がいらっしゃっています。家令が相手中です」
紅葉は手足を洗い、衣類を改め部屋に向かった。
「ああ、紅葉殿。突然の来訪を許されよ」
「いえ、べリンガーさん、お久しぶりです」
シャールズとあいさつを交わす。世間話をしたりした後、本題がやってきた。
「ところで、紅葉殿、ジャガイモってどのくらいあ――」
「じゃ、ジャガイモ!」
紅葉の声が裏返った。
家令は「そんなのありません」と否定しようとしたが、紅葉の反応を見て「うちの宗主何やらかしたんだ」という思いが去来している。
「……宗主、何をしたんですか? 怒らないので正直にお話しください」
紅葉が冷や汗をドバっとかく。
(ん? 家令が知らない? これは好機か?)
シャールズは思いながら聞いているが、あまりそこまで駆け引きが必要と思えない。
「えええと……実は……」
ジャガイモを植えた経緯を話した。
「宗主、なぜ、町の外に一人で出るんですか!」
「怒らないって言ったじゃないですか」
「言いましたが、ジャガイモのことは怒りません。町を一人で出ることは危険です! そのことを怒っているのです」
「ひどい……ま、間違っていないのが悔しいです」
紅葉は黙る。
「……べリンガーさん、ジャガイモ必要なのですか?」
「……え、ええ、兵糧として入手できればと」
「分かりました、お売りします!」
紅葉はキパリという。
「うちで食べる分だけは残してください。あとは売ります!」
「……出来が悪いとか」
「それはありません! 推定イノシシ雑魔が掘り返すほどです」
シャールズはその意味を理解した。こっそり植えたジャガイモで、ハンターにも依頼出せないならここで放出したほうがどちらのためにもなる、と。
「分かりました、値段交渉をしましょう」
紅葉はシャールズは相場と値段を突き合わせあれこれ言い合った。雑魔退治も必要ということでその経費を除いて決定された。
リプレイ本文
●上り坂
大江 紅葉(kz0163)の隠し畑のある場所の入り口にハンターや魔導トラックに乗ったリシャール・べリンガーが集合した。紅葉は籠に前もって必要と言われていた道具を背負い、へばっている。
「今度はクレハ、あなたからなのね。ミオと農業依頼をこなしてきたとこよ」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は露出部分は少ない山向き軽装、川瀬でも滑りにくいブーツと言ったハイキングにもってこいの格好だ。夏は仕事ばかりだったことから、「山だ川だ芋掘りだ」と遊び気分が大きい。やることはやる、仕事だから。
カーミンにミオと呼ばれたミオレスカ(ka3496)はニコニコと笑顔で紅葉に挨拶をする。
「はい、そうです。そういえば、紅葉さんは農具を借りていましたね。良い土地を見たら植えたくなってしまうのですね」
ミオレスカのまっすぐな瞳を受け、紅葉はたじろいだ。
ステラ・フォーク(ka0808)は山の様子を見て、慣れた手つきで小さくまとめリボンで結ぶ。
「これで準備は完了ですわ」
手入れされている山ではないため、木々に髪の毛が引っかかれば仕事に支障をきたす。
蒸し暑い空気であるが、山の方からは涼し気な空気が下りてくる。
龍宮 アキノ(ka6831)は好奇心から楽しそうな表情になる。
「雑魔が狙うってことはここの芋には何か秘密があるのかい? 面白そうだね」
「……ただのおじゃがです……」
紅葉、主張する。悪いことはしていない、と。
「それならば、雑魔は動物の習性を持っているということになるのか気になるねぇ」
「それは生前の物をなぞるとも言われています」
紅葉、目をきらーんと輝かせて説明を開始した。覚醒者や歪虚に興味があるアキノと知識喰いの異名も持つ紅葉が組み合わされば、どんどん話は進んで行く。
穂積 智里(ka6819)は魔導トラックを眺め、ちょこんと立っているリシャールに声をかける。
「リシャールさん15歳なのに車の運転できるんですか? すごいですね……」
「え? え? ハンターの人も大きなユニット操縦したりしますよね?」
「確かに……CAMなどにも興味はあるのですか?」
「……うっ……なくはないのですが……で、でも、領地の問題では不要な力だと思っています」
「す、すごい答えが返ってきました」
とはいえ、リシャールが必死に答えているのが見える為、智里は「背伸び中」と見て取れ、口元が緩む。
雪継・白亜(ka5403)は雑魔談義で盛り上がるアキノと紅葉を見て少し頭痛がしていた。
「収穫祭だな……と思っていたが……紅葉殿、そこでしゃべりすぎで疲れてしまうぞ? それに、時間が押すとリシャール殿が帰る時間が遅くなる」
割って入る。幸い話は止まり、一行は畑に向かうことになった。
●道中
紅葉を真ん中にして一行は登っていく。
カーミンは荷物運び用に驢馬を連れて行く。好物であるリンゴを見せ、じんわりと進む。
「それにしてもクレハって学者の家系と聞くけど、圧倒的に外の仕事が多いわよね」
紅葉は言われて首をかしげる。
「家の中は家臣がしますから、ハンターの皆さんの手を煩わせることもありません」
「書庫の整備とか」
紅葉がしおれる。
「里にはあったらしいですけれど、そのようなものは存在しません」
「あー、ごめん。でも、作るとか?」
「それは……そうですね、検討課題です」
紅葉は微笑んだ。
「大江さん、畑作るなんて、先見の明ですよね。これが家長の責任感なのでしょうか」
運搬に馬が使えると考え手綱を引き歩く智里。
紅葉は笑いながら、冷や汗をかいている。持ち主不明の土地に勝手にジャガイモ畑を作ったとは大きな声で言えない。
「お昼には少し調理して、掘りたてのジャガイモを食べましょう」
紅葉は話を変えた。
「塩だけでもおいしいですよね」
「それにアクセントが加わったハーブ塩もあるぞ。それとラクレットチーズもある」
「醤油にバターもおいしいですよ」
ミオレスカ、白亜そして智里が蒸かしたジャガイモの食べ方を述べた。
「しょ、醤油ですか!」
ミオレスカは智里を振り返る。
「お嫌いでした?」
「いえいえいえいえ! むしろ、食べたいです! バター醤油のジャガイモ」
ミオレスカは醤油が気に入っているため、楽しみが増えた。
会話をしながらも警戒はしている。とはいえ、特に何の気配はない。
「町や下の方は蒸し暑かったですけど、さすがに木々があると違いますわ」
ステラは周囲を警戒しながら、空気の違いを楽しんでいた。
風が吹けば木々が鳴り、遠くで鳥や獣の気配がする。紅葉の目撃情報から気にするべきは獣だと思われている。獣でも雑魔化していると厄介だ。
それ以外には虫が飛び、時々かすめるが、特に問題はない。
「ハチがいるみたいだな」
アキノは周囲の様子を伺いつつ告げる。
「巣が近くにあるならば警戒は必要だねぇ。まあ、中に入らなければ今のところ問題はないようだよ?」
見かけた数や飛び方から推測する。もし、木々が生い茂る中に入るならば、より一層の警戒が必要であり、ハチの巣のへ対応が求められるだろう。
「着いたな……これは、立派だな。素人が作ったとはわからない」
白亜が褒めると紅葉は嬉しそうであり、困った顔になる。
「我の姉上もそうなのだが、この手の育成ははまるととことんというか……」
「そうなのですか?」
「まあ、結果がしっかり出るのだから無理もないと思う」
白亜の感想と分析に紅葉は「なるほど」とうなずく。
「いいところですね……」
ステラは青々とした畑とその先の川の流れを見つめる。
「さて……掘ります。皆さん、あらかじめうかがっていた道具はここです」
籠から芋を掘るのに必要そうなものから、運ぶ時に入れる麻袋まで取り出す。ジャガイモ蒸かしようのアルミ箔はハンター持参だ。
「あの……私は手伝うべきなのでしょうか、おとなしく下で待っていればいいんでしょうか?」
リシャールはおずおずと問う。戦う準備もしてはある。
「ではリシャールさんに警戒しつつ馬や驢馬の番をお願いしてもいいのでしょうか? ただ、待っているのもつまらないですよね」
「そうか。見張りよろしくね。この子の周りに収穫物は置いちゃ駄目。何でも食べちゃうから」
智里とカーミンが木にそれぞれつないだところにリシャールはいることにした。馬は草をはみ始め、驢馬は「リンゴは?」と問いかけるようにカーミンを暫く見ていた。
●収穫と警戒
カーミンとアキノは紅葉と一緒にイノシシらしいものが出たあたりを見る。
「この辺りに出ているみたいです」
紅葉が指をさす。草地を踏み荒らし、畑もひっくり返っている。
「確かにイノシシにしては大きいわね」
カーミンは水場もあるため、通常の獣が来ることも想定する。そう考えても足跡は妙に大きい。
「食べたような痕もあると言えばあるねぇ」
アキノは研究のためと食べかけのようなジャガイモを回収する。何かわかるかもしれないし、ただのジャガイモかもしれない。
「さっさとジャガイモ回収しないと、全部やられそうね」
「それはもったいない」
カーミンとアキノはそれぞれ知識とともに調査する。
白亜は少し離れたところで、周囲を警戒する。銃を持ち、いつでも攻撃できるように。
「でも、このようなところに紅葉殿、一人で来ていたのか?」
川の流れの音が常時あり、時々風に揺れる枝音もする。警戒しやすいところではないし、紅葉のことだから、集中してジャガイモの世話をしていたに違いないと想像できる。
そうすると「家臣たち、相当心配になったに違いない」と白亜は苦笑した。
一方、この間に智里は川がある奥からジャガイモを掘り出す。
「しっかりしたジャガイモです。適度に世話をしていたんですね」
智里は周囲を警戒している仲間がいる間、できる限り抜いていく。
同じく、現在ジャガイモを掘り出しているステラは、ジャガイモを掘り返したときに生じる土の匂いに目を細めた。
「このような時でないと、土のにおいは感じませんわ……」
せせらぎの音、川の匂いもするし、農地の匂いもする。喧噪もなく、のんびりとする。心が落ち着く、仕事であっても仲間もいるし。
「お仕事だということを忘れてしまいそうです。はっ! これは非常に立派なジャガイモです。ぜひ味……毒見をしないといけませんね」
ミオレスカは運ぶ用の籠ではなく、別に置いた。
一定時間が経った頃、見張りとジャガイモ掘りの組を反転した。
カーミンは見張りを任せて、せっせとジャガイモを掘り出す。
「ここまで育てるなら、本人健康よね。日に焼……焼けていない!」
カーミンが見ると紅葉が首をかしげる。色白のままだ。いや、日に焼けていたら家臣たちがそうそうに気づいていたに違いない。
白亜は掘り出したジャガイモを一旦置く場所にもっていく。
「畑小さいとはいえ、それなりに取れている。掘りたても楽しみだ」
川があるのも幸いで、洗うのも水を飲むのもできる。
アキノは掘り起こしながら、妙に深く掘ってみたりする。
「そうそう面白いものは出てこないか」
出て来てもミミズ程度、土が立派だという証明にはなる。
警戒していたミオレスカは川側の木々の向こうが、離れているところに動くものを見つけた。
「皆さん……注意をしてください」
小さく声をかけた。
ステラは確実性を得る為に【超聴覚】を使う。周囲の音が様々入る。その中には複数の蜂の羽音、獣のような物が近づく音が聞こえる。
「蜂の巣でもあるみたいです」
「それだと、中で戦うのは危険ですね。畑も片付いてきていますし、そこで決着をつけれればいいですね」
智里がステラの言葉から告げた。それは他のハンターから異議も出ない。
敵が一体とは限らないため注意は怠らないが、その一点は特に注意し、武器を構える。
紅葉はリシャールのそばに移動する。そこで二人はもしもの時に備え、臨戦態勢には入った。
ドドド……。
足音が近づいてくる。
それが追われているならば別のものも気にしないとならない。
「一体だけのようです。蜂も動いていません」
「目視でも同様です」
ステラとミオレスカが告げた。
「問答無用で行くわよ」
カーミンの声がした直後、姿を現したイノシシ雑魔に対し、銃弾が叩き込まれ、魔法、武器が続いた。
それが倒されるのは一瞬だった。
しばらく何も起こらないことを確認し、日も高くなった頃なので休息をとることになった。
●お昼ご飯
「さて、ジャガイモ料理を堪能するわよ」
カーミンが食べる人と割り切りワクワクしながら皿とフォークを待って待つ。横で、紅葉が皿と箸を持っている。
「……紅葉どのは……いや……」
白亜は苦笑して突っ込むのはやめた。
「火を起こしておきますね! 指輪のおかげで火はつけやすいんですよね……もっと料理向上につながればいいんですけど……」
智里はため息交じりに木に火をつけて料理に必要な程度に大きくする。
「川がありますので洗いましょう」
ミオレスカが芋を持って川に向かう、それに紅葉がついて行く。さすがに待っているだけではいけないと思ったらしい、年上として。
「鍋と油もあるね」
「フライドポテトですね」
「揚げたてを塩で食べる」
「おいしいですわ」
ステラとアキノは準備をしていく。火は起きているため、別途たき火を作り、芋を切り鍋を置き準備する。
わいわいと女子会が開催される。
「……」
リシャールは遠巻きに馬と驢馬に挟まれて見つめる。
「……リシャールさんも」
智里が手招きする。
「いいんでしょうか? 私も一緒に頂いても……待ってください、これ、兵糧」
「……消費されるとしてもさほどではないと思いますよ? 六……いえ、八人が一食に食べるだけですし」
リシャールは智里の言葉により、「一つでも多く持って帰る」と「掘りたて食べてみたい」という意思の秤は大きく揺れ、心は決まった。年相応の少年の顔で嬉しそうにたき火の方に来た。
「これはアルミ箔で蒸し焼きしたのだ。何をつけるか?」
「塩もいいですし、バター醤油はいかがですか」
白亜に渡されたふかしたてのジャガイモにミオレスカが示したバターと醤油、それと塩もおいしそうだとリシャールは思った。紅葉が器用に分けて色々載せているのをまねることになった。
「ほくほくです……ああ、醤油とバターというのは何故合うのでしょうか」
ミオレスカは頬張りながらうっとりとしていた。
「ミオさん、醤油好きの本懐」
カーミンはわがことのように嬉しくなり笑った。
●下り坂
馬や驢馬に積み、積めないものは背負う。
「これで全部ですわね」
魔導トラックに積み終え、ステラはほっと息を吐く。そして、まとめていた髪をほどき、整えた。
「大江さん、来年は家臣団の人と一緒に農作業したら、みんなで収穫祭できるんじゃないでしょうか。その方がきっとみんなで楽しめると思います」
智里の言葉に紅葉は一瞬考えたのち、微笑んで「はい、そうですね」と答えた。
「その前に、この土地の主を見つけ出し、譲られないといけません」
非合法発言に智里はぎょっとする。聞かなかったことにする方がいいかもしれない。
「べリンガーさんのおかげで軍資金もできましたし……」
「買うんですね」
「秘密です」
紅葉は微笑み、ある方向を見つめた。
「紅葉さん、先に戻ります。今日はありがとうございました。では、失礼します」
丁寧にお辞儀したリシャールが魔導トラックとともに立ち去った。
「……ジャガイモ、王国行だっけ?」
「そうでしたっけ……依頼にはジャガイモ掘りしかないですし」
カーミンとミオレスカは「結果オーライ」だと考える。雑魔が出たとはいえ、ちょっとした休息になったことも事実だ。
「ああ、紅葉殿、疲れて座り込むのはやめてほしいんだが」
「……お馬で来れば良かったです」
白亜にせかされ何とか立ち上がる紅葉。
「そういえば朝の会話の続きだが」
「あ、雑魔のことですね!」
アキノに話しかけられ、妙に饒舌になりごまかされて元気になった紅葉を連れて、町に戻っていったのだった。
リシャールはジャガイモとともに無事自宅に戻った。
ジャガイモの味については秘密だったが、姉と弟妹にまとわりつかれることとなった。
大江 紅葉(kz0163)の隠し畑のある場所の入り口にハンターや魔導トラックに乗ったリシャール・べリンガーが集合した。紅葉は籠に前もって必要と言われていた道具を背負い、へばっている。
「今度はクレハ、あなたからなのね。ミオと農業依頼をこなしてきたとこよ」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)は露出部分は少ない山向き軽装、川瀬でも滑りにくいブーツと言ったハイキングにもってこいの格好だ。夏は仕事ばかりだったことから、「山だ川だ芋掘りだ」と遊び気分が大きい。やることはやる、仕事だから。
カーミンにミオと呼ばれたミオレスカ(ka3496)はニコニコと笑顔で紅葉に挨拶をする。
「はい、そうです。そういえば、紅葉さんは農具を借りていましたね。良い土地を見たら植えたくなってしまうのですね」
ミオレスカのまっすぐな瞳を受け、紅葉はたじろいだ。
ステラ・フォーク(ka0808)は山の様子を見て、慣れた手つきで小さくまとめリボンで結ぶ。
「これで準備は完了ですわ」
手入れされている山ではないため、木々に髪の毛が引っかかれば仕事に支障をきたす。
蒸し暑い空気であるが、山の方からは涼し気な空気が下りてくる。
龍宮 アキノ(ka6831)は好奇心から楽しそうな表情になる。
「雑魔が狙うってことはここの芋には何か秘密があるのかい? 面白そうだね」
「……ただのおじゃがです……」
紅葉、主張する。悪いことはしていない、と。
「それならば、雑魔は動物の習性を持っているということになるのか気になるねぇ」
「それは生前の物をなぞるとも言われています」
紅葉、目をきらーんと輝かせて説明を開始した。覚醒者や歪虚に興味があるアキノと知識喰いの異名も持つ紅葉が組み合わされば、どんどん話は進んで行く。
穂積 智里(ka6819)は魔導トラックを眺め、ちょこんと立っているリシャールに声をかける。
「リシャールさん15歳なのに車の運転できるんですか? すごいですね……」
「え? え? ハンターの人も大きなユニット操縦したりしますよね?」
「確かに……CAMなどにも興味はあるのですか?」
「……うっ……なくはないのですが……で、でも、領地の問題では不要な力だと思っています」
「す、すごい答えが返ってきました」
とはいえ、リシャールが必死に答えているのが見える為、智里は「背伸び中」と見て取れ、口元が緩む。
雪継・白亜(ka5403)は雑魔談義で盛り上がるアキノと紅葉を見て少し頭痛がしていた。
「収穫祭だな……と思っていたが……紅葉殿、そこでしゃべりすぎで疲れてしまうぞ? それに、時間が押すとリシャール殿が帰る時間が遅くなる」
割って入る。幸い話は止まり、一行は畑に向かうことになった。
●道中
紅葉を真ん中にして一行は登っていく。
カーミンは荷物運び用に驢馬を連れて行く。好物であるリンゴを見せ、じんわりと進む。
「それにしてもクレハって学者の家系と聞くけど、圧倒的に外の仕事が多いわよね」
紅葉は言われて首をかしげる。
「家の中は家臣がしますから、ハンターの皆さんの手を煩わせることもありません」
「書庫の整備とか」
紅葉がしおれる。
「里にはあったらしいですけれど、そのようなものは存在しません」
「あー、ごめん。でも、作るとか?」
「それは……そうですね、検討課題です」
紅葉は微笑んだ。
「大江さん、畑作るなんて、先見の明ですよね。これが家長の責任感なのでしょうか」
運搬に馬が使えると考え手綱を引き歩く智里。
紅葉は笑いながら、冷や汗をかいている。持ち主不明の土地に勝手にジャガイモ畑を作ったとは大きな声で言えない。
「お昼には少し調理して、掘りたてのジャガイモを食べましょう」
紅葉は話を変えた。
「塩だけでもおいしいですよね」
「それにアクセントが加わったハーブ塩もあるぞ。それとラクレットチーズもある」
「醤油にバターもおいしいですよ」
ミオレスカ、白亜そして智里が蒸かしたジャガイモの食べ方を述べた。
「しょ、醤油ですか!」
ミオレスカは智里を振り返る。
「お嫌いでした?」
「いえいえいえいえ! むしろ、食べたいです! バター醤油のジャガイモ」
ミオレスカは醤油が気に入っているため、楽しみが増えた。
会話をしながらも警戒はしている。とはいえ、特に何の気配はない。
「町や下の方は蒸し暑かったですけど、さすがに木々があると違いますわ」
ステラは周囲を警戒しながら、空気の違いを楽しんでいた。
風が吹けば木々が鳴り、遠くで鳥や獣の気配がする。紅葉の目撃情報から気にするべきは獣だと思われている。獣でも雑魔化していると厄介だ。
それ以外には虫が飛び、時々かすめるが、特に問題はない。
「ハチがいるみたいだな」
アキノは周囲の様子を伺いつつ告げる。
「巣が近くにあるならば警戒は必要だねぇ。まあ、中に入らなければ今のところ問題はないようだよ?」
見かけた数や飛び方から推測する。もし、木々が生い茂る中に入るならば、より一層の警戒が必要であり、ハチの巣のへ対応が求められるだろう。
「着いたな……これは、立派だな。素人が作ったとはわからない」
白亜が褒めると紅葉は嬉しそうであり、困った顔になる。
「我の姉上もそうなのだが、この手の育成ははまるととことんというか……」
「そうなのですか?」
「まあ、結果がしっかり出るのだから無理もないと思う」
白亜の感想と分析に紅葉は「なるほど」とうなずく。
「いいところですね……」
ステラは青々とした畑とその先の川の流れを見つめる。
「さて……掘ります。皆さん、あらかじめうかがっていた道具はここです」
籠から芋を掘るのに必要そうなものから、運ぶ時に入れる麻袋まで取り出す。ジャガイモ蒸かしようのアルミ箔はハンター持参だ。
「あの……私は手伝うべきなのでしょうか、おとなしく下で待っていればいいんでしょうか?」
リシャールはおずおずと問う。戦う準備もしてはある。
「ではリシャールさんに警戒しつつ馬や驢馬の番をお願いしてもいいのでしょうか? ただ、待っているのもつまらないですよね」
「そうか。見張りよろしくね。この子の周りに収穫物は置いちゃ駄目。何でも食べちゃうから」
智里とカーミンが木にそれぞれつないだところにリシャールはいることにした。馬は草をはみ始め、驢馬は「リンゴは?」と問いかけるようにカーミンを暫く見ていた。
●収穫と警戒
カーミンとアキノは紅葉と一緒にイノシシらしいものが出たあたりを見る。
「この辺りに出ているみたいです」
紅葉が指をさす。草地を踏み荒らし、畑もひっくり返っている。
「確かにイノシシにしては大きいわね」
カーミンは水場もあるため、通常の獣が来ることも想定する。そう考えても足跡は妙に大きい。
「食べたような痕もあると言えばあるねぇ」
アキノは研究のためと食べかけのようなジャガイモを回収する。何かわかるかもしれないし、ただのジャガイモかもしれない。
「さっさとジャガイモ回収しないと、全部やられそうね」
「それはもったいない」
カーミンとアキノはそれぞれ知識とともに調査する。
白亜は少し離れたところで、周囲を警戒する。銃を持ち、いつでも攻撃できるように。
「でも、このようなところに紅葉殿、一人で来ていたのか?」
川の流れの音が常時あり、時々風に揺れる枝音もする。警戒しやすいところではないし、紅葉のことだから、集中してジャガイモの世話をしていたに違いないと想像できる。
そうすると「家臣たち、相当心配になったに違いない」と白亜は苦笑した。
一方、この間に智里は川がある奥からジャガイモを掘り出す。
「しっかりしたジャガイモです。適度に世話をしていたんですね」
智里は周囲を警戒している仲間がいる間、できる限り抜いていく。
同じく、現在ジャガイモを掘り出しているステラは、ジャガイモを掘り返したときに生じる土の匂いに目を細めた。
「このような時でないと、土のにおいは感じませんわ……」
せせらぎの音、川の匂いもするし、農地の匂いもする。喧噪もなく、のんびりとする。心が落ち着く、仕事であっても仲間もいるし。
「お仕事だということを忘れてしまいそうです。はっ! これは非常に立派なジャガイモです。ぜひ味……毒見をしないといけませんね」
ミオレスカは運ぶ用の籠ではなく、別に置いた。
一定時間が経った頃、見張りとジャガイモ掘りの組を反転した。
カーミンは見張りを任せて、せっせとジャガイモを掘り出す。
「ここまで育てるなら、本人健康よね。日に焼……焼けていない!」
カーミンが見ると紅葉が首をかしげる。色白のままだ。いや、日に焼けていたら家臣たちがそうそうに気づいていたに違いない。
白亜は掘り出したジャガイモを一旦置く場所にもっていく。
「畑小さいとはいえ、それなりに取れている。掘りたても楽しみだ」
川があるのも幸いで、洗うのも水を飲むのもできる。
アキノは掘り起こしながら、妙に深く掘ってみたりする。
「そうそう面白いものは出てこないか」
出て来てもミミズ程度、土が立派だという証明にはなる。
警戒していたミオレスカは川側の木々の向こうが、離れているところに動くものを見つけた。
「皆さん……注意をしてください」
小さく声をかけた。
ステラは確実性を得る為に【超聴覚】を使う。周囲の音が様々入る。その中には複数の蜂の羽音、獣のような物が近づく音が聞こえる。
「蜂の巣でもあるみたいです」
「それだと、中で戦うのは危険ですね。畑も片付いてきていますし、そこで決着をつけれればいいですね」
智里がステラの言葉から告げた。それは他のハンターから異議も出ない。
敵が一体とは限らないため注意は怠らないが、その一点は特に注意し、武器を構える。
紅葉はリシャールのそばに移動する。そこで二人はもしもの時に備え、臨戦態勢には入った。
ドドド……。
足音が近づいてくる。
それが追われているならば別のものも気にしないとならない。
「一体だけのようです。蜂も動いていません」
「目視でも同様です」
ステラとミオレスカが告げた。
「問答無用で行くわよ」
カーミンの声がした直後、姿を現したイノシシ雑魔に対し、銃弾が叩き込まれ、魔法、武器が続いた。
それが倒されるのは一瞬だった。
しばらく何も起こらないことを確認し、日も高くなった頃なので休息をとることになった。
●お昼ご飯
「さて、ジャガイモ料理を堪能するわよ」
カーミンが食べる人と割り切りワクワクしながら皿とフォークを待って待つ。横で、紅葉が皿と箸を持っている。
「……紅葉どのは……いや……」
白亜は苦笑して突っ込むのはやめた。
「火を起こしておきますね! 指輪のおかげで火はつけやすいんですよね……もっと料理向上につながればいいんですけど……」
智里はため息交じりに木に火をつけて料理に必要な程度に大きくする。
「川がありますので洗いましょう」
ミオレスカが芋を持って川に向かう、それに紅葉がついて行く。さすがに待っているだけではいけないと思ったらしい、年上として。
「鍋と油もあるね」
「フライドポテトですね」
「揚げたてを塩で食べる」
「おいしいですわ」
ステラとアキノは準備をしていく。火は起きているため、別途たき火を作り、芋を切り鍋を置き準備する。
わいわいと女子会が開催される。
「……」
リシャールは遠巻きに馬と驢馬に挟まれて見つめる。
「……リシャールさんも」
智里が手招きする。
「いいんでしょうか? 私も一緒に頂いても……待ってください、これ、兵糧」
「……消費されるとしてもさほどではないと思いますよ? 六……いえ、八人が一食に食べるだけですし」
リシャールは智里の言葉により、「一つでも多く持って帰る」と「掘りたて食べてみたい」という意思の秤は大きく揺れ、心は決まった。年相応の少年の顔で嬉しそうにたき火の方に来た。
「これはアルミ箔で蒸し焼きしたのだ。何をつけるか?」
「塩もいいですし、バター醤油はいかがですか」
白亜に渡されたふかしたてのジャガイモにミオレスカが示したバターと醤油、それと塩もおいしそうだとリシャールは思った。紅葉が器用に分けて色々載せているのをまねることになった。
「ほくほくです……ああ、醤油とバターというのは何故合うのでしょうか」
ミオレスカは頬張りながらうっとりとしていた。
「ミオさん、醤油好きの本懐」
カーミンはわがことのように嬉しくなり笑った。
●下り坂
馬や驢馬に積み、積めないものは背負う。
「これで全部ですわね」
魔導トラックに積み終え、ステラはほっと息を吐く。そして、まとめていた髪をほどき、整えた。
「大江さん、来年は家臣団の人と一緒に農作業したら、みんなで収穫祭できるんじゃないでしょうか。その方がきっとみんなで楽しめると思います」
智里の言葉に紅葉は一瞬考えたのち、微笑んで「はい、そうですね」と答えた。
「その前に、この土地の主を見つけ出し、譲られないといけません」
非合法発言に智里はぎょっとする。聞かなかったことにする方がいいかもしれない。
「べリンガーさんのおかげで軍資金もできましたし……」
「買うんですね」
「秘密です」
紅葉は微笑み、ある方向を見つめた。
「紅葉さん、先に戻ります。今日はありがとうございました。では、失礼します」
丁寧にお辞儀したリシャールが魔導トラックとともに立ち去った。
「……ジャガイモ、王国行だっけ?」
「そうでしたっけ……依頼にはジャガイモ掘りしかないですし」
カーミンとミオレスカは「結果オーライ」だと考える。雑魔が出たとはいえ、ちょっとした休息になったことも事実だ。
「ああ、紅葉殿、疲れて座り込むのはやめてほしいんだが」
「……お馬で来れば良かったです」
白亜にせかされ何とか立ち上がる紅葉。
「そういえば朝の会話の続きだが」
「あ、雑魔のことですね!」
アキノに話しかけられ、妙に饒舌になりごまかされて元気になった紅葉を連れて、町に戻っていったのだった。
リシャールはジャガイモとともに無事自宅に戻った。
ジャガイモの味については秘密だったが、姉と弟妹にまとわりつかれることとなった。
依頼結果
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じゃが芋掘りと猪と蜂? 穂積 智里(ka6819) 人間(リアルブルー)|18才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/08/29 00:18:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/08/27 21:51:35 |