ゲスト
(ka0000)
霧の島:大幻獣との戦い
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 3~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2017/08/25 19:00
- 完成日
- 2017/09/04 22:28
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
グラウネーベル島の最深部。中央に開いた大空洞の最奥に当たる。そこは日の光も差し込まないほど深く、そして暗い……はずだった。
だが、今その場所は神々しい光に包まれている。グリフォンに乗ってここまで連れてこられたハンター達も思わず息をのむ。
彼らの目の前には、煌々と輝く6枚の翼を広げた雄々しいグリフォンの姿があった。
「さて、出直してきましたよ……今回は仲間を連れて、ですけどね」
グリフォンを見据えながら、第五師団長のロルフ・シュトライトは不敵に笑った。
●
グラウネーベル島。霧で包まれたこの島の近くの船上で、ロルフとハンターたちは最後の打ち合わせを行っていた。
島の主である、大幻獣フリーデン。これからハンターたちはフリーデンとの戦いに赴くのだ。何のためか。それは第5師団だけでなく、もっと多くの人にグリフォンの力を分け与える。その許可を取るためだ。
無論、そんなことをしなくとも、こちらに従ってくれるグリフォンはいるだろう。だからこれは、許可を取るためというよりは……大幻獣に対し筋を通すための戦いと言っていいだろう。
ロルフはこれまで幾度となくこのフリーデンに挑み、そして敗れ去っている。だが、戦いによって得られた情報は確実に蓄積している。
「まず、フリーデン……彼の武器は翼だ」
フリーデンは翼を持たないグリフォンだ。元々翼が無かったというわけではないだろう。長い年月を経て退化したか、朽ち果てたか……島の深層から動かないのはそのためかもしれない。
「だけど、戦闘になると彼は周囲のマテリアルを集めて、翼を作り出す」
その翼はマテリアルの塊であり、これを盾に、あるいは砲台として使用するのがフリーデンの戦い方なのだ。
「他にも魔法がいくつか使えると言っていた。ただ、実際に魔法を使っているのは見たことがない。それよりも翼で戦った方が早いんだろうね」
ある意味では戦いやすくなるかもしれない。攻撃手段が限られてくるなら対処のしようはあるはずだ。
「師団長! 大変です!!」
翼への対策を相談している、そんな時だった。帝国兵が慌てて船室に入ってきた。
「どうしたんだい?」
「霧が……霧が急に晴れて……」
「……何?」
ロルフたちが外に出てみると、島全体を包んでいた霧がすっかり晴れて、水平線が見えるようになっていた。
「……ウェルナー! すぐに周辺の監視を! 僕たちは今すぐ出る!」
同時に、ロルフのすぐそばにグリフォンが降り立つ。
「この霧はフリーデンが散布しているものだ。それが消えたということは……」
大幻獣の身に何かが起こった……わけではないだろう。これは意思表示。つまり……
「今回は本気で相手してくれるということだろうね」
そう呟き、ロルフがグリフォンに跨る。ハンター達もそれに倣った。
グラウネーベル島の最深部。中央に開いた大空洞の最奥に当たる。そこは日の光も差し込まないほど深く、そして暗い……はずだった。
だが、今その場所は神々しい光に包まれている。グリフォンに乗ってここまで連れてこられたハンター達も思わず息をのむ。
彼らの目の前には、煌々と輝く6枚の翼を広げた雄々しいグリフォンの姿があった。
「さて、出直してきましたよ……今回は仲間を連れて、ですけどね」
グリフォンを見据えながら、第五師団長のロルフ・シュトライトは不敵に笑った。
●
グラウネーベル島。霧で包まれたこの島の近くの船上で、ロルフとハンターたちは最後の打ち合わせを行っていた。
島の主である、大幻獣フリーデン。これからハンターたちはフリーデンとの戦いに赴くのだ。何のためか。それは第5師団だけでなく、もっと多くの人にグリフォンの力を分け与える。その許可を取るためだ。
無論、そんなことをしなくとも、こちらに従ってくれるグリフォンはいるだろう。だからこれは、許可を取るためというよりは……大幻獣に対し筋を通すための戦いと言っていいだろう。
ロルフはこれまで幾度となくこのフリーデンに挑み、そして敗れ去っている。だが、戦いによって得られた情報は確実に蓄積している。
「まず、フリーデン……彼の武器は翼だ」
フリーデンは翼を持たないグリフォンだ。元々翼が無かったというわけではないだろう。長い年月を経て退化したか、朽ち果てたか……島の深層から動かないのはそのためかもしれない。
「だけど、戦闘になると彼は周囲のマテリアルを集めて、翼を作り出す」
その翼はマテリアルの塊であり、これを盾に、あるいは砲台として使用するのがフリーデンの戦い方なのだ。
「他にも魔法がいくつか使えると言っていた。ただ、実際に魔法を使っているのは見たことがない。それよりも翼で戦った方が早いんだろうね」
ある意味では戦いやすくなるかもしれない。攻撃手段が限られてくるなら対処のしようはあるはずだ。
「師団長! 大変です!!」
翼への対策を相談している、そんな時だった。帝国兵が慌てて船室に入ってきた。
「どうしたんだい?」
「霧が……霧が急に晴れて……」
「……何?」
ロルフたちが外に出てみると、島全体を包んでいた霧がすっかり晴れて、水平線が見えるようになっていた。
「……ウェルナー! すぐに周辺の監視を! 僕たちは今すぐ出る!」
同時に、ロルフのすぐそばにグリフォンが降り立つ。
「この霧はフリーデンが散布しているものだ。それが消えたということは……」
大幻獣の身に何かが起こった……わけではないだろう。これは意思表示。つまり……
「今回は本気で相手してくれるということだろうね」
そう呟き、ロルフがグリフォンに跨る。ハンター達もそれに倣った。
リプレイ本文
●
「言葉は無意味だ。それならばとうにそうしていると知れ」
それは問答無用の攻撃だった。羽ばたきとともに6翼全てから無数の光線が発射され、ハンターたちを襲う。
「っと、挨拶も無しか……それじゃ、直接力を見せるしかないな!」
すぐさま飛退くグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)。戦闘へ意識を切り替え、加護符を手近な味方に付与していく。
(けど、よくよく考えれば当然か。あの状態を維持する時間は短い方がいいのだろう)
島を包むマテリアルを回収してまで戦闘力に回している。逆に言えば、その間島は無防備なのだ。ロルフが急ぐべきだと判断した理由もそこにあった。
「もう試練は始まっている、と……そういうことですね」
ムーバブルシールドによる効果で確実に攻撃を防御しながら、銃を構えるブリジット・B・バートランド(ka1800)。だが、当のフリーデンはすでに飛行状態に入っている。
「大幻獣……一筋縄ではいかねぇか……」
地上から離れる前に攻撃しようとしたリュー・グランフェスト(ka2419)はもろに攻撃に巻き込まれる。だが、ここは持ち前の頑強さで耐える。
「相手にとって不足はねぇ。胸を借りるつもりで行くぜ!!」
「不発……グラビティフォールで頭を押さえた方が良かったかのぅ」
ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549)はすぐさまカウンターマジックを使用していたが、効果は見られなかった。そのため、まずは回避行動に専念する。
「まずは下がるでござる。防御は引き受けた!」
そんなヴィルマを庇うように、盾を構えたミィリア(ka2689)が立つ。一緒に戦場を翔ける仲間として、背中を預けあうみたいに信頼しあえる戦友として……
(そんな風にグリフォンさんとも一緒に戦いたい!)
そんな思いを秘めたミィリア。盾を持つ手にも力が入る。
「これが大幻獣の戦い方か」
飛花を使用していたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、攻撃こそよけきれたもののその刃はフリーデンに届かない。本来であれば、名乗りを上げてから戦いを始めるつもりであったが、フリーデンの方がこう出てくるならそれに従うまで。
(己の戦士として持てるすべてを出すだけだ)
「立ち上がりがどうあれ、まずはフリーデン君を納得させることだ。人は翼を貸すに値するか、見せてあげようじゃないか」
Holmes(ka3813)も前に出て盾役。本来はマッスルトーチなり威を用いるなりして動きを制御したかったところだが、射程の短さが難点となっている。
「システムオールグリーン……さて、大幻獣……どんなもんかな」
仙堂 紫苑(ka5953)はマテリアルアーマーを使用。その直後、攻撃をまともに受ける。だが、そこまでダメージは無い。
「こちらの防御が堅いというだけではないな。距離を取るまでの……目くらましみたいなものか」
フリーデンは十分な高度を取っていた。この状態では近接攻撃を仕掛けるのは難しそうだ。
「さて、どうするかな……」
この様子を見ていたロルフは、思案するかのように小さく呟いた。
●
飛行し、距離を取ったフリーデン。それに対し、追いすがりながらもアルケミックパワーを付与した銃撃で対応するブリジット。多少間合いが遠いものの、スキルの効果があれば当てられなくはない。尤も、当たるのは翼ばかりなのだが。
「ですが、翼に当たってそれを削れれば無駄にはならないはずです……」
すべての翼を打ち砕けば地上戦に移行せざるを得ない。そうすれば近接組が機能する。これがブリジットなりの、この戦いにおける協力の形だった。
「その通り。だからこそ、今はとにかく攻撃あるのみ!」
グリムバルドは風雷陣を次々に使用。空から遠く離れた地の底で、雷鳴が轟く。
(やられる前にやる! 俺が倒れても仲間につなげばなんとかなる!)
そんな決意を秘めたグリムバルドの雷は、少しずつでもフリーデンに届き傷を負わせているはずだ。
「凍てつかせ噴舞せよ、霧裂け氷乱の嵐!」
ヴィルマは氷霧を使用して攻撃。ともに範囲攻撃で翼ごと攻撃していく。遠距離戦なら味方を巻き込む心配はない。
(フリーデン……我は、我の全力の魔法によって答えよう。霧の魔女の名に恥じぬ戦いをそなたと……)
その視線はどこか敬意のようなものを感じさせる。だが……いや、だからこそ、その魔力の奔流には手加減しようという気持ちは一切なかった。
加えて紫苑もマテリアルチャージャーを使用しつつ銃撃を行う。
(これで認めてもらえれば、正式にグリフォンたちが力を貸してくれるわけか……黙示騎士を倒すためにも、力を貸してもらわないとな)
一方、リューは刀を盾代わりにしながら敵の出方を窺う。
(遠距離戦ならこちらが有利……なんて思ってたんだけどな……)
実際は5分といったところか。
フリーデンは翼を羽ばたかせるとともに、そこから光線を打ち出してくる。一度に打ち出してくる数は多く、その割には威力が低い……と、思ったら思いのほか多くのダメージを受けたりする。
フリーデンは光線の数自体は最大限放出。これにより視覚的な圧迫感を与えつつ弾幕の役割を持たせる。そして、威力が低いとハンター側が見切ったところで一部の威力を高めることでダメージを与える。こういった手を取っていた。
都度調整が可能というのがこの攻撃の厄介なところだ。そのためきちんと防ぐなり避ける必要があった。
「ここは我慢のしどころ……だよな?」
リューの本領は近接戦にある。だからといって、現状接近戦に持ち込む手は無い。衝撃波という遠距離攻撃もあるが、ここは温存してチャンスを待つよりほかなかった。
「なんのこれしき、もっと本気でこーい!!」
ミィリアの方はそう言ってフリーデンを煽りつつ攻撃のタイミングをうかがう。もちろんそれだけではない。朧月による遠距離攻撃を行う。リューと違い、近接攻撃だけでないというところを見せて自身の危険度をアピールしつつ攻撃を行わせることで少しでもマテリアルを減らそうという作戦だ。
「ちっ……こうなると面倒だね」
遠距離攻撃手段が無く、スキルの射程も短いHolmesは攻撃を受けるほかない。無論、リジェネレーションで傷を治療できるうえ、守りも堅い。
(後はどれだけ耐えられるか……まぁ自分の身体だ。無茶の度合いもよくわかっているさ)
その目はいつまで続くかもわからない攻撃に、どれだけでも耐えてやるという覚悟の色を示しているかのようだった。
「埒が明かないな」
呟く紫苑。マテリアルチャージャーを使用してからのファイアスローワーを打ち込んでいく。
(どうも淡々とした撃ち合いになってきたが……)
近接に対し接近しないというのは定石である。そして、こちらには近接を重視した者も多い。となると、その戦力を遊ばせないためにも、どうにか地上に降ろさなければならないだろう。
「そろそろ……降りてもらわないとね」
アルトは遠距離での撃ち合いは互いに消耗戦になると考えた。フリーデンの攻撃もタイミングをある程度掴んだようで回避も問題ない。先手を打たれるぐらいならこちらから動こうとする。
「ちょっと待ってくれ。単独で動いてもいい的になるよ」
そのアルトを、ロルフが呼び止める。
「……何か手が?」
「大したことじゃないよ。行動を繋げてみようと……それだけさ」
●
フリーデンの方も延々空中にいるわけにはいかなかった。攻撃の多くが躱され、防がれているからだ。
このまま、離れた状態からの攻撃で持久戦ということも出来る。だが、そうなるとマテリアルの消費も馬鹿にならず、最終的には押し負ける可能性がある。有象無象が相手ならともかく、目の前にいるのは大幻獣が相手だとわかっていながらやってきた凄腕たちだ。
(マテリアルを無駄に消費していくぐらいなら、接近し高出力の攻撃を当てていくべきだ)
フリーデンがそう考え、射程を縮めるため降下するまでそうかからなかった。それが、反撃の契機となる。
「やっと、間合いに入ってくれたね」
一瞬、フリーデンは降下を止めた。強力な敵意を感じ取ったからだ。
これはHolmesの使用した威によるものだ。敵意を受け、一瞬フリーデンの行動に混乱が生じた。
その隙を逃がさない。グリムバルド、ブリジット、紫苑がそれぞれ遠距離攻撃を集中させる。
そのタイミングに合わせて……ロルフが跳ぶ。ジェットブーツだ。一時的にフリーデンとの距離を詰め、そこからファイアスローワーを使用。
フリーデンはこれらの攻撃を、翼を盾にして防ぐ。そして、地上のハンターに牽制しつつ、一枚の翼から通常より多くの光線を放出し、ロルフを攻撃。ロルフはこれが直撃し、地上に叩き落される。
「さぁ、共に戦うに値するか否か、見てもらおう!」
だが、本命はその後……アルトの攻撃だった。
踏鳴によって瞬時に味方から抜け出したアルトは、ロルフとは別方向から紅糸を用いて跳び、フリーデンを間合いに捉える。
跳び上がった勢いそのまま、アルトは蓮華による2連続攻撃を敢行する。
正面からの射撃攻撃、Holmesによるかく乱。そこからロルフによる横撃と受け続けたフリーデンの注意は散漫であり、1撃目、2撃目とまともに受け、その態勢を崩す。そのうち2撃目の反作用を利用して離脱を図るあたりアルトは抜け目ない。
だが、フリーデンも易々と逃がさない。態勢を崩しながらも翼から光線を放出し反撃。趣向を凝らしたアルトの動きでも、やはり空中だとその制動は十全とはいえず、直撃を受けて撃ち落とされる。
「しばし地に縫い付ける。高貴なそなたを墜とす無礼を許しておくれ」
この機を、ヴィルマは見逃さない。グラビティフォールを使用してフリーデンを攻撃。この場合はアルトやロルフが撃ち落とされたのが良い方向に働いた。味方を巻き込むこともない。態勢を戻すことも出来ず、フリーデンは墜落。そんな状態でも、フリーデンは光線を放出して反撃してきたが、ヴィルマの前にはHolmesが立ちふさがりこれを防いだ。
「手心を加えてくれるとはお優しい」
今までの攻撃と比べれば火力に比重が置かれている。ダメージはいままでの比ではない。だが、それでもHolmesは余裕を忘れない。それに、借りはすぐに味方が返してくれる。
落着したその場所には、すでにリューとミィリアが走りこんできていた。
「この一撃は天をも貫く! 天の龍槍『グングニル』!」
「渾身の力を込めて……刺突「散花一閃」!」
心の刃による強化を受けたリューの竜貫と、ミィリアによる全力の刺突が敵を穿つ。無論、その攻撃は防御される。すさまじい反応速度といえる。だが、その威力は防ぎきれるものではなく、1対の翼が砕け散った。
残り2対の翼から光線を全方位に放出するフリーデン。
「援護する、耐えてくれ!」
そう声を上げ、グリムバルドがミィリアに加護符を使用。リューの方はブリジットが防御障壁を使用して守る。
「この機を逃すわけにはいきません」
「分かっている。畳みかけるぞ」
ブリジットは即座にアルケミックパワーを使用。薄くなった防御の隙をつきフリーデン本体を狙って攻撃。
紫苑の方はマテリアルチャージャーによる強化が完了したファイアスローワーを使用。この時、囲みこむように方向を選んで攻撃するのを忘れない。
「再度飛ばれたら致命的だ。ここで決める!」
ヴィルマもアイスボルトを使用して攻撃。味方がフリーデンを囲むように展開しだしたため範囲攻撃はできないが、さしたる問題ではない。重要なのは、再度飛ばせないことだ。
ハンターたちの激しい連続攻撃に、フリーデンは翼を盾として防ぐ。光線による反撃は……ない。2翼を失ったことで、防御に専念せねばならないほど戦力が低下しているのだろう。
そこに再度リューとミィリアが二方向から衝撃波を放つ。この攻撃に耐えきれず、さらに1対が砕けた。
「残りの翼……この一撃で打ち破る!」
そこに走りこんできたアルト。必殺の散華が、フリーデンに届く……その瞬間だった。アルトの目の前に巨大な土壁が現れたのは。
●
「これは……アースウォールか?」
急停止し飛退くアルト。この時、フリーデンから殺気のようなものが消えていることに気づいた。
「終わりだ」
そう告げるとともに、壁が崩れる。その先には、その場に座り込んでいたフリーデンの姿が見えた。
その双翼は、徐々に砕けて散っていく。力を使い切ったからか……いや、違うようだ。
「……傷が消えていく?」
最前線にいたリューやアルト、ミィリアを始め、徐々に全員の傷が癒えていく。フリーデンが治療しているようだ。
「凄い……こんなことも出来るのね……で、ござる」
ミィリアが思わずつぶやいた。
すっかり傷が癒えたハンターたちはフリーデンのそばに集まってくる。光がすっかり小さくなり、フリーデンの周辺を照らすのみになっていたからだ。
「お眼鏡に適った……ということでしょうか?」
終わりと告げたフリーデン。その意をブリジットが問う。
「協力して戦うことの意味を知っていれば問題はない。それに、同胞をただ道具にすることを貴公らはしないだろう。後は当人しだいだ」
「当人? ……他のグリフォンということかい?」
「そうだ。私はあくまでグリフォンに協力を促すだけだ。それぞれが納得しなければまた武を持って従わせることだ」
Holmesの質問に、フリーデンはそう答えた。
「……? 空から……」
ふと紫苑が見上げると、羽ばたきとともにグリフォンが降りてきた。
戦闘の終了を察したのか、それともフリーデンが呼び寄せたのか……
「これ以上何かいうことはない。帰るがいい」
ヴィルマやグリムバルドは最後にフリーデンに触れたりしたかったようだが、フリーデンの態度からそれは無理だと判断し、グリフォンに乗り込む。
「いささか疲れた……少し休むとしよう…………」
その言葉を最後に、フリーデンの纏う光は消え、周囲は暗闇に包まれた。
こうして、ハンターたちはフリーデンとの戦いに勝利した。
これによりグリフォンたちは以前に増して、人々に協力的になるだろう。そしてそれは、ハンターはじめ、人類側の戦力強化に大きく寄与することは間違いなかった。
「言葉は無意味だ。それならばとうにそうしていると知れ」
それは問答無用の攻撃だった。羽ばたきとともに6翼全てから無数の光線が発射され、ハンターたちを襲う。
「っと、挨拶も無しか……それじゃ、直接力を見せるしかないな!」
すぐさま飛退くグリムバルド・グリーンウッド(ka4409)。戦闘へ意識を切り替え、加護符を手近な味方に付与していく。
(けど、よくよく考えれば当然か。あの状態を維持する時間は短い方がいいのだろう)
島を包むマテリアルを回収してまで戦闘力に回している。逆に言えば、その間島は無防備なのだ。ロルフが急ぐべきだと判断した理由もそこにあった。
「もう試練は始まっている、と……そういうことですね」
ムーバブルシールドによる効果で確実に攻撃を防御しながら、銃を構えるブリジット・B・バートランド(ka1800)。だが、当のフリーデンはすでに飛行状態に入っている。
「大幻獣……一筋縄ではいかねぇか……」
地上から離れる前に攻撃しようとしたリュー・グランフェスト(ka2419)はもろに攻撃に巻き込まれる。だが、ここは持ち前の頑強さで耐える。
「相手にとって不足はねぇ。胸を借りるつもりで行くぜ!!」
「不発……グラビティフォールで頭を押さえた方が良かったかのぅ」
ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549)はすぐさまカウンターマジックを使用していたが、効果は見られなかった。そのため、まずは回避行動に専念する。
「まずは下がるでござる。防御は引き受けた!」
そんなヴィルマを庇うように、盾を構えたミィリア(ka2689)が立つ。一緒に戦場を翔ける仲間として、背中を預けあうみたいに信頼しあえる戦友として……
(そんな風にグリフォンさんとも一緒に戦いたい!)
そんな思いを秘めたミィリア。盾を持つ手にも力が入る。
「これが大幻獣の戦い方か」
飛花を使用していたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は、攻撃こそよけきれたもののその刃はフリーデンに届かない。本来であれば、名乗りを上げてから戦いを始めるつもりであったが、フリーデンの方がこう出てくるならそれに従うまで。
(己の戦士として持てるすべてを出すだけだ)
「立ち上がりがどうあれ、まずはフリーデン君を納得させることだ。人は翼を貸すに値するか、見せてあげようじゃないか」
Holmes(ka3813)も前に出て盾役。本来はマッスルトーチなり威を用いるなりして動きを制御したかったところだが、射程の短さが難点となっている。
「システムオールグリーン……さて、大幻獣……どんなもんかな」
仙堂 紫苑(ka5953)はマテリアルアーマーを使用。その直後、攻撃をまともに受ける。だが、そこまでダメージは無い。
「こちらの防御が堅いというだけではないな。距離を取るまでの……目くらましみたいなものか」
フリーデンは十分な高度を取っていた。この状態では近接攻撃を仕掛けるのは難しそうだ。
「さて、どうするかな……」
この様子を見ていたロルフは、思案するかのように小さく呟いた。
●
飛行し、距離を取ったフリーデン。それに対し、追いすがりながらもアルケミックパワーを付与した銃撃で対応するブリジット。多少間合いが遠いものの、スキルの効果があれば当てられなくはない。尤も、当たるのは翼ばかりなのだが。
「ですが、翼に当たってそれを削れれば無駄にはならないはずです……」
すべての翼を打ち砕けば地上戦に移行せざるを得ない。そうすれば近接組が機能する。これがブリジットなりの、この戦いにおける協力の形だった。
「その通り。だからこそ、今はとにかく攻撃あるのみ!」
グリムバルドは風雷陣を次々に使用。空から遠く離れた地の底で、雷鳴が轟く。
(やられる前にやる! 俺が倒れても仲間につなげばなんとかなる!)
そんな決意を秘めたグリムバルドの雷は、少しずつでもフリーデンに届き傷を負わせているはずだ。
「凍てつかせ噴舞せよ、霧裂け氷乱の嵐!」
ヴィルマは氷霧を使用して攻撃。ともに範囲攻撃で翼ごと攻撃していく。遠距離戦なら味方を巻き込む心配はない。
(フリーデン……我は、我の全力の魔法によって答えよう。霧の魔女の名に恥じぬ戦いをそなたと……)
その視線はどこか敬意のようなものを感じさせる。だが……いや、だからこそ、その魔力の奔流には手加減しようという気持ちは一切なかった。
加えて紫苑もマテリアルチャージャーを使用しつつ銃撃を行う。
(これで認めてもらえれば、正式にグリフォンたちが力を貸してくれるわけか……黙示騎士を倒すためにも、力を貸してもらわないとな)
一方、リューは刀を盾代わりにしながら敵の出方を窺う。
(遠距離戦ならこちらが有利……なんて思ってたんだけどな……)
実際は5分といったところか。
フリーデンは翼を羽ばたかせるとともに、そこから光線を打ち出してくる。一度に打ち出してくる数は多く、その割には威力が低い……と、思ったら思いのほか多くのダメージを受けたりする。
フリーデンは光線の数自体は最大限放出。これにより視覚的な圧迫感を与えつつ弾幕の役割を持たせる。そして、威力が低いとハンター側が見切ったところで一部の威力を高めることでダメージを与える。こういった手を取っていた。
都度調整が可能というのがこの攻撃の厄介なところだ。そのためきちんと防ぐなり避ける必要があった。
「ここは我慢のしどころ……だよな?」
リューの本領は近接戦にある。だからといって、現状接近戦に持ち込む手は無い。衝撃波という遠距離攻撃もあるが、ここは温存してチャンスを待つよりほかなかった。
「なんのこれしき、もっと本気でこーい!!」
ミィリアの方はそう言ってフリーデンを煽りつつ攻撃のタイミングをうかがう。もちろんそれだけではない。朧月による遠距離攻撃を行う。リューと違い、近接攻撃だけでないというところを見せて自身の危険度をアピールしつつ攻撃を行わせることで少しでもマテリアルを減らそうという作戦だ。
「ちっ……こうなると面倒だね」
遠距離攻撃手段が無く、スキルの射程も短いHolmesは攻撃を受けるほかない。無論、リジェネレーションで傷を治療できるうえ、守りも堅い。
(後はどれだけ耐えられるか……まぁ自分の身体だ。無茶の度合いもよくわかっているさ)
その目はいつまで続くかもわからない攻撃に、どれだけでも耐えてやるという覚悟の色を示しているかのようだった。
「埒が明かないな」
呟く紫苑。マテリアルチャージャーを使用してからのファイアスローワーを打ち込んでいく。
(どうも淡々とした撃ち合いになってきたが……)
近接に対し接近しないというのは定石である。そして、こちらには近接を重視した者も多い。となると、その戦力を遊ばせないためにも、どうにか地上に降ろさなければならないだろう。
「そろそろ……降りてもらわないとね」
アルトは遠距離での撃ち合いは互いに消耗戦になると考えた。フリーデンの攻撃もタイミングをある程度掴んだようで回避も問題ない。先手を打たれるぐらいならこちらから動こうとする。
「ちょっと待ってくれ。単独で動いてもいい的になるよ」
そのアルトを、ロルフが呼び止める。
「……何か手が?」
「大したことじゃないよ。行動を繋げてみようと……それだけさ」
●
フリーデンの方も延々空中にいるわけにはいかなかった。攻撃の多くが躱され、防がれているからだ。
このまま、離れた状態からの攻撃で持久戦ということも出来る。だが、そうなるとマテリアルの消費も馬鹿にならず、最終的には押し負ける可能性がある。有象無象が相手ならともかく、目の前にいるのは大幻獣が相手だとわかっていながらやってきた凄腕たちだ。
(マテリアルを無駄に消費していくぐらいなら、接近し高出力の攻撃を当てていくべきだ)
フリーデンがそう考え、射程を縮めるため降下するまでそうかからなかった。それが、反撃の契機となる。
「やっと、間合いに入ってくれたね」
一瞬、フリーデンは降下を止めた。強力な敵意を感じ取ったからだ。
これはHolmesの使用した威によるものだ。敵意を受け、一瞬フリーデンの行動に混乱が生じた。
その隙を逃がさない。グリムバルド、ブリジット、紫苑がそれぞれ遠距離攻撃を集中させる。
そのタイミングに合わせて……ロルフが跳ぶ。ジェットブーツだ。一時的にフリーデンとの距離を詰め、そこからファイアスローワーを使用。
フリーデンはこれらの攻撃を、翼を盾にして防ぐ。そして、地上のハンターに牽制しつつ、一枚の翼から通常より多くの光線を放出し、ロルフを攻撃。ロルフはこれが直撃し、地上に叩き落される。
「さぁ、共に戦うに値するか否か、見てもらおう!」
だが、本命はその後……アルトの攻撃だった。
踏鳴によって瞬時に味方から抜け出したアルトは、ロルフとは別方向から紅糸を用いて跳び、フリーデンを間合いに捉える。
跳び上がった勢いそのまま、アルトは蓮華による2連続攻撃を敢行する。
正面からの射撃攻撃、Holmesによるかく乱。そこからロルフによる横撃と受け続けたフリーデンの注意は散漫であり、1撃目、2撃目とまともに受け、その態勢を崩す。そのうち2撃目の反作用を利用して離脱を図るあたりアルトは抜け目ない。
だが、フリーデンも易々と逃がさない。態勢を崩しながらも翼から光線を放出し反撃。趣向を凝らしたアルトの動きでも、やはり空中だとその制動は十全とはいえず、直撃を受けて撃ち落とされる。
「しばし地に縫い付ける。高貴なそなたを墜とす無礼を許しておくれ」
この機を、ヴィルマは見逃さない。グラビティフォールを使用してフリーデンを攻撃。この場合はアルトやロルフが撃ち落とされたのが良い方向に働いた。味方を巻き込むこともない。態勢を戻すことも出来ず、フリーデンは墜落。そんな状態でも、フリーデンは光線を放出して反撃してきたが、ヴィルマの前にはHolmesが立ちふさがりこれを防いだ。
「手心を加えてくれるとはお優しい」
今までの攻撃と比べれば火力に比重が置かれている。ダメージはいままでの比ではない。だが、それでもHolmesは余裕を忘れない。それに、借りはすぐに味方が返してくれる。
落着したその場所には、すでにリューとミィリアが走りこんできていた。
「この一撃は天をも貫く! 天の龍槍『グングニル』!」
「渾身の力を込めて……刺突「散花一閃」!」
心の刃による強化を受けたリューの竜貫と、ミィリアによる全力の刺突が敵を穿つ。無論、その攻撃は防御される。すさまじい反応速度といえる。だが、その威力は防ぎきれるものではなく、1対の翼が砕け散った。
残り2対の翼から光線を全方位に放出するフリーデン。
「援護する、耐えてくれ!」
そう声を上げ、グリムバルドがミィリアに加護符を使用。リューの方はブリジットが防御障壁を使用して守る。
「この機を逃すわけにはいきません」
「分かっている。畳みかけるぞ」
ブリジットは即座にアルケミックパワーを使用。薄くなった防御の隙をつきフリーデン本体を狙って攻撃。
紫苑の方はマテリアルチャージャーによる強化が完了したファイアスローワーを使用。この時、囲みこむように方向を選んで攻撃するのを忘れない。
「再度飛ばれたら致命的だ。ここで決める!」
ヴィルマもアイスボルトを使用して攻撃。味方がフリーデンを囲むように展開しだしたため範囲攻撃はできないが、さしたる問題ではない。重要なのは、再度飛ばせないことだ。
ハンターたちの激しい連続攻撃に、フリーデンは翼を盾として防ぐ。光線による反撃は……ない。2翼を失ったことで、防御に専念せねばならないほど戦力が低下しているのだろう。
そこに再度リューとミィリアが二方向から衝撃波を放つ。この攻撃に耐えきれず、さらに1対が砕けた。
「残りの翼……この一撃で打ち破る!」
そこに走りこんできたアルト。必殺の散華が、フリーデンに届く……その瞬間だった。アルトの目の前に巨大な土壁が現れたのは。
●
「これは……アースウォールか?」
急停止し飛退くアルト。この時、フリーデンから殺気のようなものが消えていることに気づいた。
「終わりだ」
そう告げるとともに、壁が崩れる。その先には、その場に座り込んでいたフリーデンの姿が見えた。
その双翼は、徐々に砕けて散っていく。力を使い切ったからか……いや、違うようだ。
「……傷が消えていく?」
最前線にいたリューやアルト、ミィリアを始め、徐々に全員の傷が癒えていく。フリーデンが治療しているようだ。
「凄い……こんなことも出来るのね……で、ござる」
ミィリアが思わずつぶやいた。
すっかり傷が癒えたハンターたちはフリーデンのそばに集まってくる。光がすっかり小さくなり、フリーデンの周辺を照らすのみになっていたからだ。
「お眼鏡に適った……ということでしょうか?」
終わりと告げたフリーデン。その意をブリジットが問う。
「協力して戦うことの意味を知っていれば問題はない。それに、同胞をただ道具にすることを貴公らはしないだろう。後は当人しだいだ」
「当人? ……他のグリフォンということかい?」
「そうだ。私はあくまでグリフォンに協力を促すだけだ。それぞれが納得しなければまた武を持って従わせることだ」
Holmesの質問に、フリーデンはそう答えた。
「……? 空から……」
ふと紫苑が見上げると、羽ばたきとともにグリフォンが降りてきた。
戦闘の終了を察したのか、それともフリーデンが呼び寄せたのか……
「これ以上何かいうことはない。帰るがいい」
ヴィルマやグリムバルドは最後にフリーデンに触れたりしたかったようだが、フリーデンの態度からそれは無理だと判断し、グリフォンに乗り込む。
「いささか疲れた……少し休むとしよう…………」
その言葉を最後に、フリーデンの纏う光は消え、周囲は暗闇に包まれた。
こうして、ハンターたちはフリーデンとの戦いに勝利した。
これによりグリフォンたちは以前に増して、人々に協力的になるだろう。そしてそれは、ハンターはじめ、人類側の戦力強化に大きく寄与することは間違いなかった。
依頼結果
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相談卓 仙堂 紫苑(ka5953) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/08/25 11:02:38 |
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質問卓 グリムバルド・グリーンウッド(ka4409) 人間(リアルブルー)|24才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/08/24 08:04:18 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/08/21 15:26:33 |